説明

ホログラムメモリ装置およびこの装置に適用されるホログラムリフレッシュ方法

【課題】 多重記憶するホログラム数を多くしても記憶密度を上げることが可能な、装置構成が簡単なホログラムメモリ装置を提供する。
【解決手段】 第1のフォトリフラクティブ媒質1に、空間光変調器17によって信号光の空間位相情報を変化させながら信号光5を入力すると共に、信号光5と交わる方向から信号光の干渉用の参照光6を入力し、参照光6と信号光5との干渉により第1のフォトリフラクティブ媒質1にホログラムを多重記録する。その後、信号光5を非入力状態として第1のフォトリフラクティブ媒質1に参照光6を入力してホログラムの多重回折光7を形成し、多重回折光7を第2のフォトリフラクティブ媒質2に入力して多重回折光7の位相共役光8を発生し、該位相共役光8を第1のフォトリフラクティブ媒質1に入力することによりホログラムを一括して再記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリフラクティブ媒質などの書き換え可能な媒質を用いたホログラフィックメモリにおける多重記録・再生、および多重記録されたホログラムのリフレッシュ(再記録)を行うホログラムメモリ装置およびこの装置に適用されるホログラムリフレッシュ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィックメモリは、DVD、青紫光ディスク等の記録メディアに続く次世代の高速・大容量ストレージとして期待され、現在多くの研究開発がなされている。ホログラフィックメモリは、二次元の画像情報(現状の空間光変調器と光検出器では1000×1000bit程度)を持つホログラムを一つの空間に多数記録でき、それぞれの二次元データは一度の光照射で並列に記録・再生されるため、TByteオーダの記録容量、Gbpsオーダの高速データ転送を達成できる。
【0003】
特に、データの消去や書き換えが可能なホログラフィック媒質として、フォトリフラクティブ効果を用いたものが最も有力である。フォトリフラクティブ媒質中に記録されたホログラムは揮発性であり、光を照射することによって消去できるため、何度でも書き換え可能であるという特長を持つ。
【0004】
しかし、それは、読出し光を照射することによっても徐々にホログラムの再生劣化が起こることを意味し、記録寿命が短いという問題がある。これを克服する手段として、これまで熱定着、電界定着、あるいは二色記録等のように、記録したホログラムを定着し、光に対して一時的に不感にする処理を用いる方法が提案されている(例えば、非特許文献1、2、3、参照。)。
【0005】
なお、これらの手法を用いたメモリは、書き換え可能であるが、仮に一つの空間に多重記録されたそれぞれのホログラムに対して任意に書き換え操作をしようとすると、他のホログラムにも劣化が起こる。したがって、上記の手法ではランダムに書き換え操作を行うことは困難であるため、書き換えの際には、一度多重記録されたデータを一括消去することになる。
【0006】
そこで、上記のような定着技術を用いず、再生時に、信号光と等価な情報を持つ位相共役光を用いてホログラムをリフレッシュ(再記録)することによって、フォトリフラクティブ結晶に記録されたホログラムを非破壊再生する手法、および劣化したホログラムを全光学的に修復するための手法が提案されている。なお、信号光の例として、空間光変調器によってディジタルの二次元輝度情報が変調された物体光等が挙げられる。
【0007】
この位相共役光を用いた手法をホログラムメモリ装置に適用すると、任意のホログラムに対して書き換えをした場合にも、再生劣化を防ぐことができる。(例えば、非特許文献4、5、参照。)。
【0008】
なお、ホログラムの再記録動作、選択消去技術等に関し、様々な提案が成されている(例えば、非特許文献6〜10、参照。)。
【0009】
【非特許文献1】X. An, D. Psaltis “Thermal fixing of10,000 holograms in LiNbO3: Fe”: Appl. Opt., Vol.38,No.2, pp.386-392 (1999).
【非特許文献2】J. Ma, T. Chang, J. Hong and R. Neurgaonkar“Electrical fixing of 1000 angle-multiplexed holograms in SBN: 75”: Opt. Lett., Vol.22, No.14, pp.1116-1118 (1997).
【非特許文献3】A. Adibi, K. Buse,D. Psaltis “Two-center holographic recording”: JOSAB, Vol.18, Issue 5, pp.584-601 (2001).
【非特許文献4】T. Dellwig, C. Denz,T. Rauch and T. Tschudi “Coherent refreshment andupdating for dynamic photorefractive optical memories using phase conjugation”:Opt. Comm., Vol.119, pp.333-340 (1995).
【非特許文献5】Y. Qiao, D. Psaltis,C. Gu, J. Hong, P. Yeh andR. R.Neurgaonkar, “Phase-locked sustainmentof photorefractive holograms using phase conjugation,” J. Appl.Phys., Vol.70, Issue 8, pp.4646-4648, (1991).
【非特許文献6】P.Yeh, “Introductionto Photorefractive Nonlinear Optics”, (John Wiley & Sons, Inc. 1993).
【非特許文献7】S. Campbell, P.Yeh, C. Gu,S. H. Lin, C. Cheng and K.Y. Hsu :“Optical restoration of photorefractiveholograms through self-enhanced diffration”: Opt. Lett., Vol.20, pp.330-332 (1995).
【非特許文献8】舟越久敏,岡本 淳,佐藤邦宏:”フォトリフラクティブメモリにおける光フィードバック回路を用いた全光学的非破壊再生手法”, 信学論 C, J86-C, 3, pp.236-243 (2003).
【非特許文献9】T. Ito, A. Okamoto, H. Funakoshi “Noise Reduced Refreshment forDynamic Holographic Memory with Phase Conjugation in a BaTiO3 Crystal” Proc.9th Optoelectronics and Communications Conference / 3rd InternationalConference on Optical Internet (OECC/COIN2004), no.E2-2, pp.872-873, Yokohama,Japan, Jul. 2004.
【非特許文献10】H. Sasaki, J. Ma, Y. Fainman, and S. Lee “Fastupdate of dynamic holographic memory”: Opt. Lett.Vol.17, No.20, pp.1468-1470 (1992).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記位相共役光を用いた従来のホログラムの多重記録方法は、ホログラムメモリ装置に多重記録するホログラムの数を増やして記録密度を上げるにしたがって、以下の第1から第3の理由により、リフレッシュの効果が著しく低下するため、再生劣化を完全に防ぐことが困難であるという問題があり、そのため、非破壊再生可能なホログラム多重数は事実上制限されてきた。
【0011】
つまり、第1に、位相共役光を用いた従来のホログラムの多重記録方法は、多重されたホログラムのアドレス指定に参照光の角度や位相など位相情報の変化を用いているため、位相共役光によるリフレッシュ効果は位相整合条件を満たす一つのホログラムのみに働き、それ以外の位相不整合となるホログラムに対しては消去効果のみが働くため、リフレッシュの効率が悪くなる。
【0012】
第2に、位相共役光を用いた従来のホログラムの多重記録方法は、全ての記録情報を維持するためには、全てのホログラムに対して周期的にリフレッシュを行う必要があり、そのため、多重数の増加に比例してリフレッシュの時間間隔が長くなる。また、全てのホログラムに対して周期的にリフレッシュを行うためには、メモリ装置以外にリフレッシュ動作を制御するための回路が必要となり、装置構成を簡単にすることができない。
【0013】
第3に、位相共役光を用いた従来のホログラムの多重記録方法は、Mページ(Mは1以上の整数)のホログラムを一箇所に多重記録する場合、1ページあたりの屈折率変化量は一つのホログラムだけを記録させた場合の屈折率変化の1/Mとなる。その結果、回折効率はおよそ1/Mに減少する。したがってホログラム多重数Mの増加に伴い、リフレッシュするために必要な回折光強度、および位相共役光強度を得ることができなくなる。
【0014】
また、仮に信号光(例えば物体光)側の角度を変化させて多重記録しようとすると、読み出し光を照射した時に全てのホログラムからの回折光が同時に出力されるため、これらを空間的に分離しなければならない。したがって、この手法を用いてホログラム多重記録を行った場合、出力光を検出するための位置合わせが困難である上、完全に分離するには空間フィルタリングを用いる必要がある等の幾何的な制約が生じ、一つのスポットに記録できる情報量が制限されるため、実用的ではない。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、多重記憶するホログラム数を多くして記録密度を上げることが可能であり、必要に応じて所望のホログラムを選択的に再生できる、装置構成が簡単なホログラムメモリ装置およびその装置に適用されるホログラムリフレッシュ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。すなわち、第1の発明のホログラムメモリ装置は、ホログラフィック媒質と、該ホログラフィック媒質に信号光を入力する信号光入力部と、前記信号光の空間位相情報を変化させる空間位相制御部と、前記ホログラフィック媒質に前記信号光と交わる方向から信号光干渉用の参照光を入力する参照光入力部と、前記ホログラフィック媒質に位相共役光を入力する1つ以上の位相共役器と、前記空間位相制御部による制御によって空間位相情報を変化させながら前記ホログラフィック媒質に信号光を入力して該信号光と前記参照光との干渉により前記第ホログラフィック媒質にホログラムを多重記録するホログラム多重記録制御部と、前記ホログラムの多重記録後に前記信号光を非入力状態として前記ホログラフィック媒質に前記参照光を入力して前記ホログラムの多重回折光を形成し、該多重回折光を前記位相共役器に入力して前記多重回折光の位相共役光を発生し、該位相共役光を前記ホログラフィック媒質に入力することにより該ホログラフィック媒質に前記ホログラムを一括して再記録するホログラム再記録制御部とを有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0017】
また、第2の発明のホログラムメモリ装置は、上記第1の発明の構成に加え、前記位相共役器はホログラフィック媒質と間隔を介し信号光の入力側と反対側に配設される相互励起型位相共役器とした構成をもって課題を解決する手段としている。
【0018】
さらに、第3の発明のホログラムメモリ装置は、上記第1または第2の発明の構成に加え、前記空間位相制御部は、信号光の入力光路に交わる態様で設けられて前記信号光にランダムな空間位相分布を付加する拡散板と、該拡散板を前記信号光の進行方向に対して交わる方向に変位させる拡散板変位手段とを有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0019】
さらに、第4の発明のホログラムメモリ装置は、上記第1または第2または第3の発明の構成に加え、前記ホログラフィック媒質はフォトリフラクティブ媒質により形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0020】
さらに、第5の発明のホログラムメモリ装置は、上記第2乃至第4のいずれか一つの発明の構成に加え、前記相互励起型位相共役器はフォトリフラクティブ媒質を有して構成され、前記相互励起型位相共役器にホログラフィック媒質から再生される多重回折光と読出し光とを入力して前記多重回折光の位相共役光を発生する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0021】
さらに、第6の発明のホログラムリフレッシュ方法は、信号光の空間位相情報を変化させながらホログラフィック媒質に信号光を入力すると共に前記ホログラフィック媒質に前記信号光と交わる方向から信号光干渉用の参照光を入力し、該参照光と前記信号光との干渉により前記ホログラフィック媒質にホログラムを多重記録した後、前記信号光を非入力状態として前記ホログラフィック媒質に前記参照光を入力して前記ホログラムの多重回折光を形成し、該多重回折光を位相共役器に入力して前記多重回折光の位相共役光を発生し、該位相共役光を前記ホログラフィック媒質に入力することにより該ホログラフィック媒質に前記ホログラムを一括して再記録する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0022】
さらに、第7の発明のホログラムリフレッシュ方法は、上記第6の発明の構成に加え、前記ホログラフィック媒質に入力した位相共役光のうち前記ホログラフィック媒質を透過する透過光の位相空間情報を選択的に変化させ、対応するホログラムを再生する構成をもって課題を解決する手段としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、信号光の空間位相情報を変化させながらホログラフィック媒質に信号光を入力すると共に、前記ホログラフィック媒質に前記信号光と交わる方向から信号光干渉用の参照光を入力することにより、該参照光と前記信号光との干渉により前記ホログラフィック媒質にホログラムを多重記録することができる。つまり、信号光の空間位相情報を変化させると、記録対象のホログラム同士の相関を低くすることができ、ホログラフィック媒質にホログラムを多重記録できる。
【0024】
そして、本発明によれば、ホログラムの多重記録後に、前記信号光を非入力状態として前記ホログラフィック媒質に前記参照光を入力して前記ホログラムの多重回折光を形成し、該多重回折光を位相共役器に入力して前記多重回折光の位相共役光を発生し、該位相共役光を前記ホログラフィック媒質に入力することにより、前記位相共役光とその自己回折光との干渉、および前記参照光とその自己回折光との干渉により、ホログラフィック媒質に前記ホログラムを一括して再記録することができる。
【0025】
すなわち、本発明では、参照光の位相等を変化させずに、信号光の空間位相情報のみを変化させてホログラムの多重記録を行い、この多重記録後に参照光によりホログラムの多重回折光を発生させており、多重記録されたホログラムに対して一つずつリフレッシュを行うのではなく、前記多重回折光の位相共役光をホログラフィック媒質に入力することにより、位相共役光の波面補正作用を用いてホログラムを読み出しながら、全てのホログラムを容易に一括して効率的に再記録することができる。
【0026】
従来の参照光側の位相情報を変化させるタイプの多重記録方式を用いたリフレッシュ手法では、一度にリフレッシュ可能なホログラムが一つだけであるので、多重記録されたホログラム全体のリフレッシュを行うためには、多重記録されたホログラムを一枚ずつ順番にリフレッシュする必要がある(スケジューリング)。
【0027】
そのため、多重記録されたホログラム全体をリフレッシュするためには多くの時間と、複雑な外部装置(電子制御装置など)が必要になる。また、この方式では、あるホログラムをリフレッシュしている間は、他のホログラムがその光線により劣化してしまうため、リフレッシュによるホログラムの回復力とホログラム多重数は相反することになり、性能面でも大きな制限がある。
【0028】
これに対して、本発明では、記録されたすべてのホログラムに対して一括にリフレッシュが行われるため、上記スケジューリングが必要なくなり、制御用の外部装置が不要になると共に、リフレッシュ性能を向上することできる(高速化と多重数の増加)。
【0029】
つまり、本発明によれば、多重記録されたホログラムの非破壊再生を容易にすることができ、多重記憶するホログラム数を多くして記録密度を上げることができるし、ホログラムメモリ装置以外にホログラムの周期的なリフレッシュ動作を制御するための外部装置の回路が不要であり、位相共役光のリフレッシュ効果のみを用いているため、光電気変換を伴わない純光学的な制御が可能であり、装置構成を簡単にできる。
【0030】
また、本発明のホログラムメモリ装置において、位相共役器はホログラフィック媒質と間隔を介して信号光の入力側と反対側に配設される相互励起型位相共役器とした構成によれば、相互励起型位相共役器を用いて、上記優れた効果を奏するホログラムメモリ装置を簡単な装置構成で実現できる。
【0031】
さらに、本発明のホログラムメモリ装置において、空間位相制御部は、信号光の入力光路に交わる態様で設けられて前記信号光にランダムな空間位相分布を付加する拡散板と、該拡散板を前記信号光の進行方向に対して交わる方向に変位させる拡散板変位手段とを有する構成によれば、簡単な構成で空間位相制御部を形成でき、上記優れた効果を奏するホログラムメモリ装置を簡単な装置構成で実現できる。
【0032】
また、拡散板を用いる利点として、フォトリフラクティブ効果の回折効率を高くしようとする場合に問題となるファニング現象による背景ノイズや、その他の光学ノイズも拡散(低減)できることが挙げられる。その結果、出力のSN比を向上させることができるので、記録密度・転送速度の性能を向上することができる。
【0033】
さらに、本発明のホログラムメモリ装置において、ホログラフィック媒質はフォトリフラクティブ媒質により形成されている構成によれば、フォトリフラクティブ媒質のホログラフィック効果を用いて容易に、かつ、的確にホログラムメモリ装置を構成できる。
【0034】
さらに、本発明のホログラムメモリ装置において、相互励起型位相共役器はフォトリフラクティブ媒質を有して構成され、前記相互励起型位相共役器にホログラフィック媒質から再生される多重回折光と読出し光とを入力して前記多重回折光の位相共役光を発生する構成によれば、相互励起型位相共役器にフォトリフラクティブ媒質を適用し、フォトリフラクティブ媒質のホログラフィック効果を用いることにより、より一層的確にホログラムメモリ装置を構成できる。
【0035】
さらに、本発明のホログラムリフレッシュ方法において、ホログラフィック媒質に入力した位相共役光のうち前記ホログラフィック媒質を透過する透過光の位相空間情報を選択的に変化させ、対応するホログラムを再生する構成によれば、所望のホログラムを的確に選択的に再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0037】
図1には、本発明に係るホログラムメモリ装置の一実施形態例が、ホログラム記録動作と共に示されている。また、図2には、本実施形態例のホログラムメモリ装置が、ホログラムの再記録動作と共に示されている。
【0038】
これら図1、図2に示すように、本実施形態例のホログラムメモリ装置は、互いに間隔を介して配置された第1と第2のフォトリフラクティブ媒質1,2と、レーザ光源10、空間光変調器17、光検出器20、拡散板18、拡散板移動手段19、ビームスプリッタ11,12,13、ミラー14,15,16、レンズ21〜25を有している。
【0039】
第1のフォトリフラクティブ媒質1は、ホログラムの多重記録用のホログラフィック媒質として機能し、第2のフォトリフラクティブ媒質2は、相互励起型の位相共役器として機能する。
【0040】
本実施形態例において、図1に示すホログラム多重記録動作時には、レーザ光源10から出力されるレーザ光は、ビームスプリッタ11により信号光(物体光)と参照光とに分岐される。つまり、レーザ光の一部がビームスプリッタ11で反射して空間光変調器17側に入力され、残りがビームスプリッタ11を通過し、ビームスプリッタ12で反射してミラー15に入力される。
【0041】
なお、実際は、ビームスプリッタ12を通過する光をミラー16に入力されないように途中で遮断する、あるいは、ミラー16の反射光を遮断する等して、レーザ光が第2のフォトリフラクティブ媒質2に入力されないようにすることが行われるが、図1では、説明を分かりやすくするために、ビームスプリッタ12の通過光を省略している。
【0042】
空間光変調器17は、レーザ光源10から出力される光に二次元の空間輝度データを入力して信号光(物体光)5とするものであり、空間光変調器17によってデータ入力された信号光5は、ミラー14により第1のフォトリフラクティブ媒質1側に反射される。本実施形態例では、ミラー14の反射面が信号光5の入力部35と成し、信号光5は、レンズ21、拡散板18、レンズ22,23を順に介して、上記第1のフォトリフラクティブ媒質1に入力される。
【0043】
拡散板18は信号光5にランダムな空間位相分布を付加するものであり、拡散板18は信号光の入力光路に交わる態様で設けられている。本実施形態例では、この拡散板18と、拡散板18を信号光5の進行方向に対して交わる方向(図1の矢印E方向)に変位させる拡散板変位手段19とを有して、信号光5の空間位相情報を変化させる空間位相制御部4が形成されている。
【0044】
また、前記ミラー15の反射面は、第1のフォトリフラクティブ媒質1に、前記信号光5と交わる方向から信号光干渉用の参照光6を入力する参照光入力部36として機能する。参照光6は、第1のフォトリフラクティブ媒質1の信号光入射面に斜めの方向から入力される。
【0045】
また、本実施形態例では、図示されていないホログラム多重記録制御部が設けられており、図1に示すように、前記空間位相制御部4による制御(拡散板18を矢印E方向に変位させること)によって信号光の空間位相情報を変化させながら、第1のフォトリフラクティブ媒質1に信号光を入力し、該信号光5と前記参照光6との干渉により第1のフォトリフラクティブ媒質1にホログラムを多重記録する。
【0046】
ここで、ホログラムの記憶動作を、図3の座標系を用いて説明すると、以下のようになる。つまり、前記信号光入力部35(同図には図示せず)から第1のフォトリフラクティブ媒質1に向かって進む信号光(物体光)5は、幅dを持ってレンズ21に入射し、レンズ21の焦点距離fだけ離れた位置にあるランダム拡散板18の表面(入射面)Bに集光して入射される。j番目に記録するホログラムに対応する信号光の面Aにおける振幅分布をa0j(x,y)とすると、拡散板18の表面Bでの振幅a1j(x,y)はレンズのフーリエ変換作用により、次式(数1)と表される。
【0047】
【数1】

【0048】
ここでF{ }はフーリエ変換を表す。そして、信号光5に、拡散板18の位置に応じた空間位相情報が付加される。透過関数をt(x,y)(単位振幅)とすると、拡散板18の背面Cでの振幅a2j(x,y)は、次式(数2)となる。
【0049】
【数2】

【0050】
ここでは、拡散板18として、すりガラスのような表面にランダムな凹凸を持つものを仮定する。拡散板18の厚みの平均をH、厚みのxy分布をH+h(x,y)とすると、透過関数tj(x,y)は近軸において、次式(数3)と書くことができる。
【0051】
【数3】

【0052】
ここで、iは虚数単位、kは真空中での光波の波数、nは拡散板の屈折率、h(x,y)の平均は0で、その空間分布はランダムであるとする。
【0053】
前記の如く、第1のフォトリフラクティブ媒質1へのホログラムの記録は、信号光5と参照光6とを、記録媒質中、つまり、ここでは、第1のフォトリフラクティブ媒質1の面Dで干渉させて行われる。拡散板18と面Dまでの距離が4fの光学システムとすると、面Cの振幅分布a2jと面Dの振幅分布a3jとは、a3j(x,y)=a2j(−x,−y)と関係づけられる。
【0054】
多重記録の際には、拡散板18を、その相関距離(すりガラスであれば数μm程度)以上、信号光5と交わる方向(図1〜3の矢印E方向)に変位させてから順次ホログラムを重ねて記録する。この操作によって、信号光5に付加する空間位相分布が変化し、互いの相関を低くすることができる。
【0055】
なお、拡散板の相関距離とは、信号光が照射されるスポットにおいて屈折率の空間分布の自己相関関数の値が1/eとなる距離として定義されるものである。言い換えれば、透過関数t(x、y)の自己相関関数R(x、y)が、1/eになる距離であり、Rは次式(数4)により表される。なお、(数4)において、*は複素共役を表し、x,yは、それぞれ積分変数を表す。ホログラムを再生したときの出力光強度の値も、このR(x、y)にほぼ比例して変化する。
【0056】
【数4】

【0057】
また、本実施形態例では、ホログラムを一括にリフレッシュするために、参照光6の位相情報は変化させず、どの入力データに対しても同一の参照光6を入射させるものであり、参照光6の振幅をarefとすると、M枚多重記録されたホログラムの振幅は、次式(数5)で表される。なお、(数5)および以下の数式においても、*は複素共役を表す。
【0058】
【数5】

【0059】
次に、ホログラムのリフレッシュ、および選択再生について述べる。本実施形態例では、図示されていないホログラム再記録制御部が設けられており、前記ホログラムの多重記録後に、図2に示すように、前記信号光5を非入力状態として前記第1のフォトリフラクティブ媒質1に前記参照光6(つまり、書き込み時と同一の参照光6)を入力して前記ホログラムの多重回折光を形成する。
【0060】
つまり、図2に示すように、ホログラムの再記録動作時には、前記ホログラム再記録制御部の制御によって、レーザ光源10から出力されるレーザ光は、ビームスプリッタ11を通過し(ビームスプリッタ11で反射する光は前記空間光変調器17への入力が行われないような手段がとられ)、その一部がビームスプリッタ12で反射してミラー15に入力され、第1のフォトリフラクティブ媒質1へのホログラム書き込み時と同様に、参照光6として第1のフォトリフラクティブ媒質1に斜めの方向から入力され、ホログラムの多重回折光7が形成される。
【0061】
この多重回折光7は、図3において、第1のフォトリフラクティブ媒質1の面Dで参照光6によって読み出された回折光であり、全てのホログラムからの回折光の重ね合わせΣa3j(x,y)となり、相互励起型位相共役器としての第2のフォトリフラクティブ媒質2に入射する。
【0062】
一方、レーザ光のうち、ミラー15側に反射せずにビームスプリッタ12を通過した光は、ミラー16で反射して、第2のフォトリフラクティブ媒質2に入射する。ミラー16から第2のフォトリフラクティブ媒質2に入射するレーザ光は、読み出し光9として機能するものであり、ミラー16の反射面が、第2のフォトリフラクティブ媒質2にホログラムの読み出し光9を入力する読み出し光入力部39として機能する。
【0063】
そして、読み出し光9は、第2のフォトリフラクティブ媒質2で多重回折光7と干渉し、多重回折光7の位相共役光8が発生する。
【0064】
つまり、上記多重回折光7が第2のフォトリフラクティブ媒質2に入射すると、第2のフォトリフラクティブ媒質2に相互励起型位相共役器となるホログラムを誘起し、読み出し光9は、多重回折光7の位相共役光8、すなわち全ての信号光の位相共役光として、第1のフォトリフラクティブ媒質1側に回折される。そして、上記多重回折光7が光の重ね合わせΣa3j(x,y)であるのに対して位相共役な光波の重ね合わせΣa3j(x,y)が、位相共役光8として第1のフォトリフラクティブ媒質1に返される。
【0065】
なお、フォトリフラクティブ媒質を用いた位相共役読み出しには、信号光と平面参照光で記録したホログラムに完全に対向入射する読み出し光の回折によって位相共役光を出力させるもの(縮退四波混合)と、例えば上記非特許文献6に示されているような、フォトリフラクティブ媒質中でのファニング現象を介して位相共役光を発生させるもの(自己励起型、相互励起型位相共役器等)とがあるが、本実施形態例では、第1のフォトリフラクティブ媒質1の信号光入力側と反対側に配置した第2のフォトリフラクティブ媒質2を相互励起型位相共役器として機能させて位相共役光を発生させる。
【0066】
そして、上記位相共役光8が第1のフォトリフラクティブ媒質1に入力すると、位相共役光8の自己回折と前記参照光6との干渉による再書き込み効果によって、第1のフォトリフラクティブ媒質1に前記ホログラムを一括して再記録することができ、全てのホログラムは同時にリフレッシュされ、ホログラムの劣化を抑えることができる(上記非特許文献7、8参照。)。
【0067】
ところで、上記の位相共役光8によるリフレッシュ効果を用いて、ホログラム再生劣化を完全に抑えるためには、記録媒質(ここでは第1のフォトリフラクティブ媒質1)と位相共役器(ここでは第2のフォトリフラクティブ媒質2)に高い結合強度が必要となる。そこで、本実施形態例では、第1と第2のフォトリフラクティブ媒質1,2の結合効率を、ホログラム再生劣化を完全に抑えることが可能な結合効率としている。なお、結合強度とは、フォトリフラクティブ媒質の電気光学係数や光線入射角度によって決定される結合係数と、光線の相互作用長との積によって表されるパラメータである。
【0068】
記録媒質、位相共役器の結合強度が十分に高い場合には、再書き込みによるリフレッシュの効果が、読出し光照射によるホログラム消去効果を上回り、ホログラムの非破壊再生が可能となる。
【0069】
さらに、非破壊再生の条件を満たしている場合、リフレッシュを続けることで、記録媒質の回折効率、位相共役器の回折効率(または反射率)は、フォトリフラクティブ効果の増幅作用により、徐々に増幅される。
【0070】
すなわち、本実施形態例の方式においても、記録媒質にM枚のホログラムを書き込んだ直後は、通常の多重記録と同様に、回折効率は1/Mに減少するが、リフレッシュを続けて定常状態に達すると、各ホログラムからの回折効率の和は、1枚のホログラムを記録した場合の回折効率と同程度まで増幅される。したがって、一枚当たりの回折効率は1/Mとなり、初期状態のM倍まで増幅することが可能である。
【0071】
以上のように、本実施形態例によれば、定常状態では、各ホログラムからの回折効率の和は、1枚のホログラムを記録した時と同じになるため、ホログラム1枚あたりの回折効率は1/Mとなり、同数のホログラムを多重した場合、従来法に比べてM倍の回折効率まで増幅することができるので、様々な位相共役光を用いたリフレッシュ手法を、多重数の大きい、大容量のホログラフィックメモリに適用可能になる。
【0072】
また、本実施形態例において、多重回折光7の位相共役光8は、再度、拡散板18を通過することにより空間分離できるものであり、以下に、ホログラムの選択再生動作について説明する。
【0073】
位相共役光8は、第1のフォトリフラクティブ媒質1を透過し、この光(多重位相共役光)28は振幅Σa2j(x,y)をもって、図3の面Cから拡散板18に入射する。このとき、拡散板18がk番目のホログラムを記録した時と同位置にあるとき、拡散板18の表面Bから出射する透過光a(x、y)は、次式(数6)に表される。
【0074】
【数6】

【0075】
つまり、拡散板18を透過する光は、k番目に対応する信号光(入力物体光)5の位相alk(x,y)の位相共役成分alk(x,y)と他のホログラムからの回折光成分に分離される。位相共役成分alk(x,y)は出力光29となる。ここで、式(数6)の右辺第2項の位相はランダムであるため、拡散して白色ノイズとなる。さらに、レンズ21の面Aでは、レンズの逆フーリエ変換により、次式(数7)となる。
【0076】
【数7】

【0077】
ただし、(数7)のn(x,y)は、次式(数8)により表される。
【0078】
【数8】

【0079】
(数8)において、記号★は畳み込み演算である。ここで、信号光5の入力面Aでの位相共役光成分a0k(x,y)を光検出器20で観測することによって、k番目に記録した信号光5のデータ、つまり、ここでは、物体光(信号光5)の二次元データのみを選択的に再生することができる。
【0080】
すなわち、本実施形態例において読み出されるホログラムは、記録媒質である第1のフォトリフラクティブ媒質1中での光波のブラッグ条件によってではなく、多重回折光7のもつ空間位相分布と、拡散板18の空間位相分布の相互相関によって決定される。なお、ここで、式(数6)において、観測面Aでのノイズ成分n(x,y)の一部は信号光5と重なりあい、これが、ノイズの主要因となる。
【0081】
一般に、すりガラスのようなランダム位相物体によって散乱された光は、互いに干渉し合うことで、遠視野ではコントラストの高い斑点状の強度分布を形成する。このような強度分布はスペックルと呼ばれる。
【0082】
本実施形態例では、不要な多重回折光から発生するスペックルノイズ30を出力光29と重ならないようにすることで、ノイズの大部分を回避することができる。具体的には、高いランダム性を持つ拡散板18を用いて拡散角を大きくし、レンズ21と拡散板18との距離を広げ、レンズ21の面Aにおける信号光5の開口径を小さくすることにより、高いSN比が得られる。
【0083】
(実施例1)
図4に、本発明を実施するための光学系の一例(実施例1)を示す。この実施例1において、上記実施形態例と同一名称部分には同一符号が付してある。第1と第2のフォトリフラクティブ媒質1,2は、チタン酸バリウム結晶により形成し、レーザ光源10は波長514nmのアルゴンイオンレーザを用いている。
【0084】
この実施例1では、チタン酸バリウムの高い結合係数を得るために、それぞれの光波の偏光は異常光としており、それに伴い、実施例1では、上記実施形態例におけるビームスプリッタ11,12の代わりに偏光ビームスプリッタ41,42を設け、それぞれの偏光ビームスプリッタ41,42の入射側に半波長板51,52を、反射光出射側に半波長板53,54を設けている。
【0085】
また、ミラー16の反射側にミラー27を設けて、ミラー16で反射した光をさらにミラー27で反射して第2のフォトリフラクティブ媒質2に入射するように構成され、また、拡散板18やレンズ21がミラー14の入射側に設けられているが、実施例1の要部構成(光学的基本構成)は上記実施形態例と同様に構成されており、上記実施形態例と同様の動作により同様の効果を奏する。
【0086】
(実施例2)
図5に、本発明を実施するための光学系の別の例(実施例2)を示す。この実施例2において、上記実施形態例および実施例1と同一名称部分には同一符号が付してある。実施例2では、第3のフォトリフラクティブ媒質3を設けてこの第3のフォトリフラクティブ媒質3も位相共役器として機能させる構成とし、共振器のように配置することで、記録媒質と位相共役器を分離して用いる。
【0087】
この場合、ホログラムを非破壊再生できるための条件は二つの位相共役器(ここでは第2と第3のフォトリフラクティブ媒質2,3)の結合強度で決まり、記録媒質(第1のフォトリフラクティブ媒質1)側の結合強度は低くても構わない。
【0088】
なお、図5において、符号、55〜60は半波長板、44,45は偏光ビームスプリッタ、31はビームスプリッタ、61〜64は、それぞれポンプ光を示す。
【0089】
実施例2は、2つの位相共役器を設けて共振器のように機能させるが、ホログラムの多重記録や再記録、再生に関する基本動作は上記実施例1と同様であり、実施例2も、同様の効果を奏することができる。
【0090】
なお、以下に、実施例2の動作について簡単に説明する。実施例2でも、レーザ光源10から発信されたレーザ光と、半波長板44〜60、偏光ビームスプリッタ41〜44、ミラー14〜16,27とを用い、信号光5、参照光6、ポンプ光61〜64を形成する。
【0091】
信号光5と参照光6を、第1のフォトリフラクティブ媒質1(ホログラム記録媒質)中で干渉させ、第1のフォトリフラクティブ媒質1にホログラムを多重記録する。ここで、全てのホログラムの記録時において同一の参照光6を用い、拡散板18を変位させることによって、信号光5の空間位相分布を変化させてから、互いに相関のないホログラムを多重記録する。
【0092】
その後、信号光5を遮断し、第1のフォトリフラクティブ媒質1には参照光6のみを入射し、多重回折光7(7a)を発生させて、該多重回折光7aを第1の位相共役器として機能する第2のフォトリフラクティブ媒質2に入力し、ポンプ光61とポンプ光62とを用いて多重回折光7aに対する位相共役光8の多重回折光7(7b)を発生させる。そして、第1のフォトリフラクティブ媒質1を透過した多重回折光7bの一部をビームスプリッタ31で反射して前記拡散板18側に進ませ、残りの多重回折光7bをビームスプリッタ31が透過し、第2の位相共役器として機能する第3のフォトリフラクティブ媒質3に入力する。
【0093】
そして、ポンプ光63とポンプ光64とを用いて、上記と同様に、多重回折光7bの位相共役光の多重回折光7(7c)を発生させる。この多重回折光7cは、前記多重回折光7aと等価な光波である。そして、この多重回折光7cと参照光6とにより第1のフォトリフラクティブ媒質1の多重ホログラムを一括して再記録(リフレッシュ)する。
【0094】
また、前記拡散板18側に進んだ光は、拡散板18を所望のホログラムが記録されたときの位置に変化させることによって、選択的に二次元データを再生する。
【0095】
なお、本発明は、上記実施形態例に限定されることはなく、様々な実施の態様を採り得る。例えば上記実施形態例では、信号光(物体光)のフーリエ面Bに拡散板18を配置することで信号光に空間位相分布を付加したが、空間位相分布を与える面はフーリエ平面に限定されない。
【0096】
また、上記実施形態例および実施例1では、第2のフォトリフラクティブ媒質2から成る位相共役器は、相互励起型位相共役器としたが、位相共役器は、位相共役光が発生できる様々な構成を適用できる。
【0097】
さらに、本発明を形成する光学系は、上記実施形態例および実施例1、2に限定されるものではなく、適宜設定されるものであり、例えば、位相共役器を3つ以上設けた光学系や、一つのフォトリフラクティブ媒質に複数の相互作用領域を形成する光学系、上記非特許文献4、5、9に記載されている光学系等、様々な光学系が考えられる。
【0098】
さらに、本発明は、上記非特許文献10に示されているようなホログラムの選択消去技術と組み合わせることができる。つまり、本発明は、多重ホログラムに対してランダムに書き換え操作を行った場合にも再生劣化を防ぐことができるので、上記選択消去技術と組み合わせることにより、任意のホログラムに対して書き換え可能なホログラフィックランダムアクセスメモリへ応用することができる。
【0099】
さらに、上記実施形態例ではホログラフィック媒質をフォトリフラクティブ媒質1により形成したが、ホログラフィック媒質は、書き換え可能なホログラフィック媒質であればよく、フォトリフラクティブ媒質に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係るホログラムメモリ装置の一実施形態例を、ホログラム多重記録動作と共に示す説明図である。
【図2】上記実施形態例のホログラムメモリ装置を、ホログラム読み出し動作と共に示す説明図である。
【図3】上記実施形態例のホログラムメモリ装置におけるホログラム多重記憶動作および再記録動作を説明するための座標系の説明図である。
【図4】本発明に係るホログラムメモリ装置の一実施例を示す光学系の説明図である。
【図5】本発明に係るホログラムメモリ装置の他の実施例を示す光学系の説明図である。
【符号の説明】
【0101】
1 第1のフォトリフラクティブ媒質
2 第2のフォトリフラクティブ媒質
2 第3のフォトリフラクティブ媒質
4 空間位相制御部
5 信号光
6 参照光
7 多重回折光
8 位相共役光
9 読み出し光
10 レーザ光源
11,12,13 ビームスプリッタ
14,15,16,27 ミラー
17 空間光変調器
18 拡散板
19 拡散板変位手段
20 光検出器
28 多重位相共役光
29 出力光
61〜64 ポンプ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィック媒質と、該ホログラフィック媒質に信号光を入力する信号光入力部と、前記信号光の空間位相情報を変化させる空間位相制御部と、前記ホログラフィック媒質に前記信号光と交わる方向から信号光干渉用の参照光を入力する参照光入力部と、前記ホログラフィック媒質に位相共役光を入力する1つ以上の位相共役器と、前記空間位相制御部による制御によって空間位相情報を変化させながら前記ホログラフィック媒質に信号光を入力して該信号光と前記参照光との干渉により前記第ホログラフィック媒質にホログラムを多重記録するホログラム多重記録制御部と、前記ホログラムの多重記録後に前記信号光を非入力状態として前記ホログラフィック媒質に前記参照光を入力して前記ホログラムの多重回折光を形成し、該多重回折光を前記位相共役器に入力して前記多重回折光の位相共役光を発生し、該位相共役光を前記ホログラフィック媒質に入力することにより該ホログラフィック媒質に前記ホログラムを一括して再記録するホログラム再記録制御部とを有することを特徴とするホログラムメモリ装置。
【請求項2】
位相共役器はホログラフィック媒質と間隔を介して信号光の入力側と反対側に配設される相互励起型位相共役器としたことを特徴とする請求項1記載のホログラムメモリ装置。
【請求項3】
空間位相制御部は、信号光の入力光路に交わる態様で設けられて前記信号光にランダムな空間位相分布を付加する拡散板と、該拡散板を前記信号光の進行方向に対して交わる方向に変位させる拡散板変位手段とを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のホログラムメモリ装置。
【請求項4】
ホログラフィック媒質はフォトリフラクティブ媒質により形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のホログラムメモリ装置。
【請求項5】
相互励起型位相共役器はフォトリフラクティブ媒質を有して構成され、前記相互励起型位相共役器にホログラフィック媒質から再生される多重回折光と読出し光とを入力して前記多重回折光の位相共役光を発生することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一つに記載のホログラムメモリ装置。
【請求項6】
信号光の空間位相情報を変化させながらホログラフィック媒質に信号光を入力すると共に前記ホログラフィック媒質に前記信号光と交わる方向から信号光干渉用の参照光を入力し、該参照光と前記信号光との干渉により前記ホログラフィック媒質にホログラムを多重記録した後、前記信号光を非入力状態として前記ホログラフィック媒質に前記参照光を入力して前記ホログラムの多重回折光を形成し、該多重回折光を位相共役器に入力して前記多重回折光の位相共役光を発生し、該位相共役光を前記ホログラフィック媒質に入力することにより該ホログラフィック媒質に前記ホログラムを一括して再記録することを特徴とするホログラムリフレッシュ方法。
【請求項7】
ホログラフィック媒質に入力した位相共役光のうち前記ホログラフィック媒質を透過する透過光の位相空間情報を選択的に変化させ、対応するホログラムを再生することを特徴とする請求項6記載のホログラムリフレッシュ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−343586(P2006−343586A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169796(P2005−169796)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(391025730)岡野電線株式会社 (55)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】