説明

ホログラム付き印画物及びその作成方法

【目的】 昇華性染料インキによるフルカラーの昇華転写画像を含む転写画像上にセキュリティー性を付与するためにホログラムなどを積層したIDカード等の印画物において、長期間保管或いは使用しても昇華転写画像に滲みなどを発生せず、耐久性に優れたホログラム付き印画物及びその作成方法を提供する。
【構成】 カード材料等の受像シート1上に昇華性染料インキによる転写画像2、又は、昇華性染料インキによる転写画像2と熱溶融性インキによる転写画像3を設け、その上を覆うように保護層4を熱転写等により設けた後、その上にホログラム層5を熱転写シートから熱転写するか、或いはホログラム層を含有する積層体、例えば熱接着性のホログラムラベル(シール)等を熱板または熱ロールにより加熱・加圧し、熱接着させて作成するホログラム付き印画物及びその作成方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、昇華性染料インキ、または、昇華性染料インキと熱溶融性インキとの組み合わせの熱転写により画像を形成した印画物の上に、ホログラムを積層して偽造或いは変造防止性能を付与した印画物及びその作成方法に関し、更に詳しくは、特にIDカードやパスポートなど写真調画像を含む印画物について、その画像上に耐久性のある形でホログラムを積層し、優れた偽造或いは変造防止性を有し、且つ、長期保管性を向上させた印画物とその作成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】種々の熱転写記録方式の中で、基材フィルム上に、顔料等の色材およびワックス等のビヒクルを含有する熱溶融性インキ層、或いは、昇華性染料および樹脂等からなる昇華性染料インキ層などを設けた熱転写フィルムを用いて、画像情報に応じてサーマルヘッド、レーザーなどの加熱手段により受像シートなどに色材を転写して画像を得る記録方式が知られている。特に、昇華性染料インキ層を設けた熱転写フィルムを用いる昇華型感熱転写記録方式は、濃度階調の表現が可能で、画像が極めて鮮明であり、且つ、中間調の色再現性、階調再現性に優れており、銀塩写真に匹敵する画質の画像を形成できることから各種の用途に急速にその市場を拡大している。
【0003】これらの熱転写方式では、各種の画像を簡便に形成できることから、印画枚数が比較的少ない印刷物、例えば、身分証明書等のIDカードの作成等の分野で好適に利用されている。そして、IDカードなどの分野では、特にそのセキュリティー性が重要であることから、上記のような熱転写フィルムを用いて形成したID画像上に、改ざん防止機能を付与する目的でホログラム画像を設けることが提案(特開平3−159794)されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の目的でIDカードなどの昇華性染料インキによる転写画像上に、直接ホログラム転写層をサーマルヘッドやホットスタンプなどで転写したり、或いは、ホログラム層を含有する熱接着性積層シート、即ち、熱接着性ホログラムラベル(シール)を熱板または熱ロールなどで加熱・加圧して積層した場合、当面は問題がなくても長期間使用している中に、ホログラムが積層されている部分の昇華転写画像に滲みを発生し、使用に耐えなくなるという問題があった。これは昇華性染料による転写画像の上に熱転写或いは熱接着されるホログラム層或いはホログラム層を含有する積層体の接着剤層に、その転写或いは熱接着を容易にするための低ガラス転移点樹脂や可塑剤など昇華性染料の滲みを生じ易くする材料が含まれるために発生するものと考えられた。
【0005】本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、IDカードなどのようにセキュリティー性を必要とする印画物において、熱転写方式で形成するフルカラーの画像が鮮明で、中間色の色再現性、階調再現性に優れると共に、その上に偽造、変造を防止するためのホログラムなどの光回折構造を積層してセキュリティー性を付与し、長期間保管或いは使用しても転写画像に滲み等を発生せず、耐久性にも優れたホログラム付き印画物及びその作成方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、以下の本発明により達成される。即ち、本請求項1の発明は、受像シート上に、昇華性染料インキによる転写画像、または、昇華性染料インキ及び熱溶融性インキによる転写画像と、保護層とが順に設けられ、該保護層の上にホログラム層が積層されていることを特徴とするホログラム付き印画物からなる。本請求項2の発明は、前記ホログラム層が、ホログラム層を含有する積層体、例えば熱接着性のホログラムラベル(シール)であることを特徴とする請求項1記載のホログラム付き印画物からなる。そして、上記において昇華性染料インキによる転写画像面に接する、保護層の材質、特にその接着層の材質には、可塑剤や低ガラス転移点の樹脂などの材料を含有しない材質で構成したものである。
【0007】また、本請求項3の発明は、受像シート上に、昇華性染料インキによる転写画像、または、昇華性染料インキ及び熱溶融性インキによる転写画像を設け、該転写画像の上に保護層を設けた後に、該保護層の上にホログラムの熱転写シートからサーマルヘッド、ホットスタンパー(熱板)、熱ロールの中のいずれかの手段によりホログラム層を転写し、積層することを特徴とするホログラム付き印画物の作成方法である。そして、本請求項4の発明は、受像シート上に、昇華性染料インキによる転写画像、または、昇華性染料インキ及び熱溶融性インキによる転写画像を設け、該転写画像の上に保護層を設けた後に、該保護層の上にホログラム層を含有する積層体、例えば熱接着性のホログラムラベル(シール)を熱板または熱ロールにより加熱・加圧して積層することを特徴とするホログラム付き印画物の作成方法からなる。
【0008】
【作用】本発明のホログラム付き印画物は、受像シート上に昇華性染料インキによる転写画像、または、昇華性染料インキ及び熱溶融性インキによる転写画像と、保護層とが順に設けられ、その保護層の上にホログラム層、またはホログラム層を含有する積層体、即ち、ホログラムのラベル(シール)を熱接着させて積層した構成である。従って、ホログラム層、またはホログラム層を含有する積層体が印画物にセキュリティー性を付与し、また、昇華性染料インキによる転写画像上に設けられた保護層が、その接着層の中にも、可塑剤や低ガラス転移点の樹脂などを含有せず、昇華性染料の滲みを発生させない材質であるため、印画物を長期間使用或いは保存しても昇華転写画像に染料の溶出、移行による滲みなどが発生せず、印画物の耐久性を向上させる。
【0009】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1、図2は、それぞれ本発明のホログラム付き印画物の一実施例の構成を示す模式断面図である。尚、図1R>1は、本請求項1の発明のホログラム付き印画物の構成に該当し、また、図2は、本請求項2の発明のホログラム付き印画物の構成に該当するものである。図1において、受像シート1は、熱転写フィルムを用いて画像を形成するための被転写材となるものであり、通常、基材シートの一方の面に染料受容層を設け、更に必要に応じて、その反対側の面(裏面)に受像シート1の滑り性の調整や、積み重ねて保存した時の昇華性染料の裏面への移行による汚染の防止などのための裏面層を設けて構成される。
【0010】そして、この基材シートとしては、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネートなどのプラスチックフィルムまたはシートが使用できる。特に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体シートの場合は、この樹脂自体が昇華性染料に対して良好な染着性を有するため、染料受容層を省略することができる。また逆に、これらのプラスチックシートが単独で昇華性染料に対して十分な染着性を示さない場合には、染料受容層を設ければよいが、その他の方法として、樹脂中に可塑剤等を添加して染着性等を調整することもできる。また、基材シートとして上記以外に、紙や、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維等の合成繊維からなる織布または不織布なども使用でき、これらに染料受容層を設けたシートも使用できる。
【0011】染料受容層を設ける場合には、従来知られている昇華型感熱転写記録用受容層樹脂であれば使用可能であり、特にビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリビニルアセタール系樹脂が昇華性染料を受容し、形成された画像を維持するという点で好ましい。また、本発明の印画物をカード用途に使用する場合には、受像シートに予めエンボスやサイン用の筆記性層、ICメモリー、磁気層、その他印刷等が施されていてもよく、また、保護層転写後にエンボスやサイン用の筆記性層、ICメモリー、磁気層等を設けることも可能である。
【0012】次に、受像シート1の上には、昇華性染料インキによる転写画像2、または、昇華性染料インキによる転写画像2と熱溶融性インキによる転写画像3とを設け、続いて転写画像2、または転写画像2、3の上には、熱溶融性透明インキの転写により保護層4を設ける。これらはいずれもそれぞれの熱転写シートを使用して、サーマルヘッドなどを用いた感熱転写プリンターにより設けることができる。そして、上記保護層4の上に、セキュリティー性を付与するためのホログラム層5をホログラムの熱転写シート(図5参照)を使用して、サーマルヘッド、ホットスタンパー、熱ロールの中のいずれかの手段により転写して積層した構成である。
【0013】また、図2のホログラム付き印画物の構成は、受像シート1上に転写画像2、または転写画像2、3を設け、その上に保護層4を設ける迄は、前記図1の構成の場合と材料、作成方法とも同一であり、保護層4の上に積層したホログラム層5のみを、ホログラムの熱転写シートから転写により積層するのでなく、ホログラム層を含有する積層体6(図6参照)、即ち、熱接着性のホログラムラベル(シール)を用いて、これを熱板または熱ロールにより保護層4の上に加熱・加圧して積層した構成である。
【0014】前記図1、2において、昇華性染料インキによる転写画像2、熱溶融性インキによる転写画像3、熱溶融性透明インキによる保護層4は、それぞれ別々に作成した熱転写シートを使用して、順次熱転写シートを取り替えながら転写してもよく、また、例えば昇華性染料インキ層、熱溶融性インキ層、熱溶融性透明インキ層を同一基材フィルム上に面順次に設けた熱転写シートを作成し、これを使用してサーマルヘッドを用いた感熱転写プリンターにより、転写画像2、3および保護層4を一工程で転写してもよい。尚、保護層用熱転写シートを別体として作成する場合は、サーマルヘッドなどによる感熱転写プリンター以外にホットスタンパーや熱ロールなどによっても転写できる。
【0015】図3は、転写画像を形成するために使用する熱転写シートの一実施例の構成を示す模式断面図である。また、図4は、転写画像の上に設ける保護層の転写に使用する熱転写シートの一実施例の構成を示す模式断面図である。図3に示した熱転写シートは、同一基材フィルム上に昇華性染料インキ層(イエロー、マゼンタ、シアンの3色)と熱溶融性インキ層(例えばブラック)を面順次に配列して設けた熱転写シートの構成を示している。即ち、基材フィルム7の一方の面に昇華性染料をバインダーに担持させてなる昇華性染料インキ層を、例えば昇華性イエローインキ層8(Y) 、昇華性マゼンタインキ層8(M) 、昇華性シアンインキ層8(C) の順に面順次に設け、続いて昇華性シアンインキ層8(C) に隣接して熱溶融性インキ層領域12を設けたものである。この構成の熱転写シートでは、昇華性染料インキのイエロー、マゼンタ、シアンにより、例えば顔写真などのカラー画像を形成し、熱溶融性インキの例えばブラックにより高濃度で明瞭な文字や記号を印字しようとするものである。尚、熱溶融性インキ層領域12は、通常、図3に示されているように基材フィルム7側から離型層10a 、剥離保護層11a 、熱溶融性インキ層9を順に積層して構成することが好ましい。また、基材フィルム7の熱転写インキ層を設けた面の反対側の面(裏面)には、サーマルヘッドとの融着防止、走行性の改良のほか、熱転写シートをロール状に巻き取った時に、熱転写インキ層と裏面とが接着しないように耐熱滑性と離型性を付与する耐熱滑性層13を設けた構成である。この耐熱滑性層13は必ずしも必須ではないが、必要に応じて設けることが好ましい。
【0016】上記の熱転写シートにおいて各層の構成材料としては、従来、昇華型転写シート、或いは、熱溶融型転写シートに使用されている公知の材料がいずれも使用できる。基材フィルム7としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムを始めとするポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリカーボネートフィルム、セルロース系樹脂フィルムなどのプラスチックフィルムのほか、紙や各種加工紙なども使用できる。これらの中でポリエステルフィルムが好ましく、その中でもポリエチレンテレフタレートフィルムが更に好ましい。そして、その厚さは2〜50μm程度の範囲であり、好ましくは3〜10μm程度である。また、図には示していないが、基材フィルム7の一方または両方の面に、必要に応じて熱転写インキ層や耐熱滑性層との接着性を向上させるためのプライマー層を設けることも好ましい。このような基材フィルム7は、上記のような熱転写性インキシートの基材フィルムとしてだけでなく、次の図4で説明する受像シートの転写画像の上に設ける保護層の転写に使用する熱転写シートの基材フィルムとして、また、その後で説明するホログラムの転写シートの基材フィルムとして、更には、ホログラム層を含有する積層体の最外層に積層されている透明フィルムとしても共通に使用できる。
【0017】また、図3において、基材フィルム7の熱転写インキ層を設ける面の反対側に設ける耐熱滑性層13は、例えば、硬化性シリコーンオイル、硬化性シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの離型性、耐熱性の良好な材料から形成される。また、−OH基や−COOH基を有する熱可塑性樹脂にアミノ基を2個以上もつ化合物、またはジイソシアネートもしくはトリイソシアネートを反応させて架橋硬化させたものを用いてもよい。更に、耐熱滑性層中に燐酸エステル系の界面活性剤やタルク、雲母等のへき壊性を有するフィラーを添加することにより、更に滑り性を向上させることができる。
【0018】次に、前記昇華性染料インキ層、即ち、昇華性イエローインキ層8(Y) 、昇華性マゼンタインキ層8(M) 、昇華性シアンインキ層8(C) に使用する染料としては、熱により溶融、拡散若しくは昇華移行する染料であって、従来公知の熱転写フィルムに使用されている染料は、いずれも本発明においても有効に使用できるが、色相、耐光性、バインダーへの溶解性を考慮して選択することが好ましい。このような染料としては、例えばジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メロシアニン等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレン、トリシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラールアゾ、イミダゾールアゾ、チオジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系、スピロピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンラクタム系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系などの染料が挙げられる。
【0019】具体的には例えば次のような染料が用いられる。
CI(Color Index) ディスパースイエロー 51,3,54,79,60,23,7,141CIディスパースブルー 24,56,14,301,334,165,19,72,87,287,154,26,354CIディスパースレッド 135,146,59,1,73,60,167CIディスパースオレンジ 149CIディスパースバイオレット 4,13,26,36,56,31CIディスパースイエロー 56,14,16,29,201CIソルベントブルー 70,35,63,36,50,49,111,105,97,11CIソルベントレッド 135,81,18,25,19,23,24,143,146,182CIソルベントバイオレット 13CIソルベントブラック 3CIソルベントグリーン 3例えば、シアン染料としては、カヤセットブルー 714(日本化薬製、ソルベントブルー63)、フォロンブリリアントブルーS−R(サンド製、ディスパースブルー 354)ワクソリンAP−FW(ICI製、ソルベントブルー 36 )、マゼンタ染料としては、MS−RED G(三井東圧製、ディスパースレッド 60 )、マクロレックスバイオレットR(バイエル製、ディスパースバイオレット 26 )、イエロー染料としては、フォロンブリリアントイエローS−6GL(サンド製、ディスパースイエロー 231)、マクロレックスイエロー6G(バイエル製、ディスパースイエロー 201)等の染料が使用できる。
【0020】上記のような染料を担持するためのバインダー樹脂としては、既知のものが使用可能であり、例えばエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、これらの単独または混合物を任意に用いることができる。尚、これらの中ではポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールが染料移行性、熱転写フィルムの保存性の点から好ましい。
【0021】また、本発明においては、次のような離型性グラフトコポリマーをバインダーとして、または、バインダーに添加する離型剤として、或いは、昇華性染料インキ層の最外層に必要に応じて設けられる離型性樹脂を含む層に用いることができる。これらの離型性グラフトコポリマーは、ポリマー主鎖にポリシロキサンセグメント、フッ化炭素セグメント、フッ化炭化水素セグメント、または長鎖アルキルセグメントから選択された少なくとも一種の離型性セグメントをグラフト重合させてなるものである。これらの中、特に好ましいのはポリビニルアセタール樹脂からなる主鎖にポリシロキサンセグメントをグラフトさせて得られたグラフトコポリマーである。
【0022】上記グラフトコポリマーを製造するには、例えば、官能基を有するポリシロキサンとジイソシアネートとを反応させてグラフト用のシリコーン鎖を製造し、このグラフト用シリコーン鎖をポリビニルアセタールにグラフトさせることによって得られる。具体的には例えばヘキサメチレンジイソシアネートと片末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサンをメチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンとを1:1の割合で混合した溶媒中において、錫系触媒(例えばジブチル錫)を用いて0.01〜100℃程度の温度で反応させてグラフト用シリコーン鎖を製造する。次に、このグラフト用シリコーン鎖とポリビニルアセタール樹脂とをメチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンとを1:1の割合で混合した溶媒中で反応させることによって、シリコーングラフトポリビニルアセタール樹脂を製造することができる。
【0023】このようなグラフトコポリマーを昇華性染料インキ層の離型剤として用いる場合において、該離型剤における離型性セグメントの含有量は、グラフトコポリマー中で離型性セグメントの量が10〜80重量%となる割合が好ましく、離型性セグメントの量が少なすぎると離型性が不十分となり、一方多すぎるとバインダーとの相溶性が低下し、染料の移行性などに問題が生じるので好ましくない。また、上記離型剤を昇華性染料インキ層に添加する場合は、単独でも混合物としても使用することができ、その添加量はバインダー樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましい。添加量が少なすぎると離型効果が不十分であり、多すぎると昇華性染料インキ層の染料の移行性や皮膜強度が低下し、また、昇華性染料インキ層中の染料の変色や熱転写フィルムの保存性の問題が生じて好ましくない。
【0024】前記昇華性染料インキ層、即ち、昇華性イエローインキ層8(Y) 、昇華性マゼンタインキ層8(M) 、昇華性シアンインキ層8(C) は、好ましくは上記のような染料およびバインダー樹脂に、更に必要に応じて各種の添加剤を加え、適当な有機溶剤に溶解、或いは、有機溶剤や水に分散した分散体をグラビア印刷法、スクリーン印刷法、また、単色の場合にはグラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の手段により、前記基材フィルム上に塗布、乾燥してそれぞれの昇華性染料インキ層を形成することができる。この場合、1回の塗布で設けてもよいが、2回の塗布で設けてもよい。このように形成することにより、単位面積当たりの染料濃度を高めることが可能となる。また、図には示していないが、昇華性染料インキ層の最外層に上記のような離型性樹脂を含む層を付加することにより、印字時に離型性成分が乏しいプラスチックカード等の受像体に印字した場合でも昇華性染料インキ層が熱融着することを防止できる。上記のように形成した昇華性染料インキ層の厚さは0.2〜5.0μm程度の範囲であり、好ましくは0.4〜2μmの厚さが適当である。
【0025】次に、図3において、昇華性シアンインキ層8(C) に隣接させて設けた熱溶融性インキ層領域12の最内層の離型層10a は、後述する熱溶融性インキ層9のビヒクルに使用するワックス類や、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアルコール、ウレタン樹脂等の離型性を有する樹脂で形成でき、これらは単独または混合して用いてもよい。離型層10a の形成方法は、前記昇華性染料インキ層の形成方法と同様でよく、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの手段で形成でき、その厚さは0.1〜5μm程度で十分である。
【0026】上記離型層10a の上に設ける剥離保護層11a は、例えばアクリル樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂等の透明性、耐摩耗性、耐薬品性等に優れた樹脂から形成することが望ましい。剥離保護層11a の形成方法は、前記昇華性染料インキ層と同様に適当な樹脂の溶液を調整し、これを前記の印刷方法などで、0.2〜10μm程度の厚さで形成すればよい。これらの剥離保護層11a を形成する場合、熱転写時における膜切れ性を良好にするため、シリカやアルミナ等の充填剤を加えることもできる。また、耐摩耗性や滑り性を向上させる必要のある時には、剥離保護層11a 中にポリエチレンワックス等のワックス類を添加することもできる。尚、剥離保護層11a と基材フィルム7との剥離性が十分な場合には、前記離型層10a は省略しても構わない。
【0027】上記剥離保護層11a の上に形成する熱溶融性インキ層9は、着色剤とビヒクルからなり、必要に応じて任意の添加剤を加えたものでもよい。上記着色剤としては、有機または無機の顔料、若しくは染料の中、記録材料として良好な特性を有するもの、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度等により変褪色しないものが好ましい。着色剤としては、イエロー、マゼンタ、シアン等も使用できるが、本発明の目的には高濃度で明瞭な文字や記号等を印字できるブラックの着色剤が好ましい。
【0028】使用するビヒクルとしては、ワックスを主成分とし、その他ワックスと、乾性油、樹脂、鉱油、セルロースおよびゴムの誘導体との混合物が用いられる。ワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、パラフィンワックス等が挙げられ、他にフィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等、種々のワックスを用いることができる。しかし、本発明の場合、カードなどへの接着性、耐スクラッチ性の観点からブラックインキ層などのビヒクルとしては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、またはアクリル樹脂、またはアクリル樹脂に塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂の少なくとも一種を混合してなる樹脂を使用することがより好ましい。
【0029】基材フィルム7に設けた剥離保護層11a 上に熱溶融性インキ層9を形成する方法としては、パターン状にコートする場合は、例えばグラビア版を用いたホットメルトコート法のほか、ホットラッカーコート法、グラビアコート法など従来公知の方法で塗布することができ、全面ベタなどの場合は、上記のほかにグラビアリバースコート法、ロールコート法などでも塗布することができる。形成する熱溶融性インキ層の厚さは、必要な色濃度と熱感度の調和がとれるように決定する必要があり、通常、0.2〜10μmの範囲で形成することが好ましい。
【0030】次に、図4は、転写画像の上に保護層4を設けるために別体として作成した熱転写シートの構成を示すものであり、基材フィルム7の一方の面に離型層10b を設け、その上に剥離透明樹脂層14と接着層15とを順に積層してなる保護層4を設け、更に、基材フィルム7のもう一方の面に必要に応じて耐熱滑性層13を設けた構成である。このような構成を採ることにより保護層の転写性を一層良好なものにすることができる。図4において、離型層10b は、前記熱溶融性インキ層のビヒクルに挙げたワックス類、或いはシリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール等を主成分とする塗布液を用い、グラビアコート法、グラビアリバースコート法など従来公知の方法により塗布、乾燥して形成することができる。この離型層10b の厚さは0.1〜2μm程度で十分である。また、転写後の印画物において艶消し保護層が望ましい場合は、離型層10b の中に各種の粒子を含有させるか、或いは、離型層が薄い場合には離型層形成面をマット処理した基材フィルム7を使用することにより、保護層4を転写した印画物の表面をマット調にすることができる。尚、この離型層10b は、保護層4の剥離透明樹脂層14と基材フィルム7との剥離性が良好な場合には省略することもできる。
【0031】保護層4を構成する剥離透明樹脂層14には、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、およびこれらの樹脂の混合物などを使用することが可能であり、更に、耐可塑剤性に優れた電離放射線硬化型樹脂を使用することもできる。また、これらの樹脂に添加剤として、ワックス、滑剤、酸化防止剤及び/又は蛍光増白剤を加えることによって、被覆する画像面の滑り性、光沢、耐光性、耐侯性、白さなどを向上させることができる。このような剥離透明樹脂層14は、前記離型層10b と同様公知のコーティング法により設けることができ、その厚さは0.5〜5μm程度の範囲である。また、印画物の耐光性を特に向上させたい場合には紫外線遮断層を別に設けることもできる。
【0032】次に、保護層4の転写性を良好にするための接着層15には、例えばアクリル系樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂などの熱時接着性の良好な樹脂を用いることができるが、本発明においては、転写画像に滲みを発生させないため、添加剤などに可塑剤を用いず、また、樹脂についても特に、低ガラス転移点の樹脂を用いないか、或いは用いた場合でも、その含有量をできるだけ少量に抑えた構成とすることが好ましい。保護層4の接着層15は、上記のような樹脂の溶液を保護層4と同様、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法など従来公知の方法で塗布、乾燥して設けることができ、その厚さは0.1〜5μm程度の範囲が適当である。
【0033】次に、ホログラム層について図5、図6を基に説明する。図5は、ホログラム層の転写に使用するホログラム熱転写シート21の一実施例の構成を示す模式断面図であり、基材フィルム7の一方の面に必要に応じて耐熱滑性層13を設け、その反対側の面に剥離保護層11b 、ホログラム形成層16、反射性薄膜層17、接着剤層18を順に設けた構成である。これらの層間には、接着性が不足する場合プライマー層(図示せず)を設けてもよい。図5において、基材フィルム7および耐熱滑性層13は、図3に示した画像形成用の熱転写シートに使用した材料をそのまま使用でき、既に説明済みであるため省略する。只、基材フィルム7の厚さは、転写手段がホットスタンパー(熱板)や熱ロールである場合には、ある程度剛性のあることが好ましく、例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合には12〜50μm程度の厚さが好ましい。
【0034】剥離保護層11b は、基材フィルム7に対して適度の剥離性を有し、転写後はホログラム形成層16を保護する役割を果たすものであり、基材フィルム7が2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合は、例えば酢酸セルロース樹脂にメチロール化メラミン樹脂などを少量添加した系の樹脂などが良好に使用でき、このような樹脂の溶液を塗布、乾燥することによって設けることができる。このほか、通常、保護層形成用樹脂として知られているアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、およびこれらの混合物なども基材フィルムに応じて適宜使用することができる。また、耐可塑剤性に優れた電離放射線硬化型樹脂を用いることもできる。更に、これらの樹脂に添加剤として、ワックス、滑剤、酸化防止剤、或いは蛍光増白剤を加えることによって、被覆される画像面の滑り性、耐光性、耐候性、白色度などを向上させることができる。
【0035】剥離保護層11b の上に設けるホログラム形成層16は、一般に樹脂の層で構成されるが、この層自体は単一構造でもよく、また多層構造でもよい。そして、ホログラム形成層は、平面型ホログラムでも体積型ホログラムでもよく、平面型ホログラムの場合、なかでもレリーフホログラムが量産性およびコストの面から好ましい。その他、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザー再生ホログラム、および、レインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、更にそれらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子等を用いることができる。
【0036】干渉縞を記録するためのホログラム形成用感光材料としては、銀塩、重クロム酸ゼラチン、サーモプラスチックス、ジアゾ系感光材料フォトレジスト、強誘電体、フォトクロミックス材料、カルコゲンガラス等が使用できる。また、ホログラム形成層の材質として、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、そして、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂を硬化させたもの、或いは、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物が使用可能である。
【0037】更に、ホログラム形成層の材質として、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質が使用可能であり、これには次の2種類のものがある。
〔1〕ガラス転移点が0〜250℃のポリマー中にラジカル重合性不飽和基を有するもの、更に具体的にはポリマーとしては以下の化合物■〜■を重合もしくは共重合させたものに対し、後述する方法(イ)〜(ニ)によりラジカル重合性不飽和基を導入したものを用いることができる。
■水酸基を有する単量体:N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなど。
■カルボキシル基を有する単量体:アクリル酸、メタクリル酸、アクリロイルオキシエチルモノサクシネートなど。
■エポキシ基を有する単量体:グリシジルメタクリレートなど。
■アジリジニル基を有する単量体:2−アジリジニルエチルメタクリレート、2−アジリジニルプロピオン酸アリルなど。
■アミノ基を有する単量体:アクリルアミド、メタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなど。
■スルフォン基を有する単量体:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸など。
■イソシアネート基を有する単量体:2,4−トルエンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの1モル対1モル附加物などのジイソシアネートと活性水素を有するラジカル重合単量体との附加物など。
■更に、上記の重合もしくは共重合体のガラス転移点を調節したり、硬化膜の物性を調節したりするために、上記化合物と、その化合物と共重合可能な以下のような単量体と共重合させることもできる。このような共重合可能な単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0038】次に、上述のようにして得られた重合体を以下に述べる方法(イ)〜(ニ)により反応させ、ラジカル重合性不飽和基を導入することによって、ホログラム形成樹脂を得ることができる。
(イ)水酸基を有する単量体の重合体または共重合体の場合にはアクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基を有する単量体などを縮合反応させる。
(ロ)カルボキシル基、スルフォン基を有する単量体の重合体または共重合体の場合には前述の水酸基を有する単量体を縮合反応させる。
(ハ)エポキシ基、イソシアネート基或いはアジリジニル基を有する単量体の重合体または共重合体の場合には前述の水酸基を有する単量体もしくはカルボキシル基を有する単量体を付加反応させる。
(ニ)水酸基或いはカルボキシル基を有する単量体の重合体または共重合体の場合にはエポキシ基を有する単量体或いはアジリジニル基を有する単量体或いはジイソシアネート化合物と水酸基含有アクリル酸エステル単量体の1モル対1モルの付加物を付加反応させる。
【0039】上記の反応を行うには、微量のハイドロキノンなどの重合禁止剤を加えて乾燥空気を送りながら行うことが好ましい。
〔2〕融点が0〜250℃でありラジカル重合性不飽和基を有する化合物、具体的にはステアリル(メタ)アクリレート、トリアクリルイソシアヌレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、スピログリコールジ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。また、前記〔1〕、〔2〕を混合して用いることもでき、更に、それらに対してラジカル重合性不飽和単量体を加えることもできる。このラジカル重合性不飽和単量体は、電離放射線照射の際、架橋密度を向上させ耐熱性を向上させるものであって、前述の単量体の他にエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジンエーテルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラグリシジルエーテルテトラ(メタ)アクリレートなどを用いることができ、前記した共重合体混合物の固形分100重量部に対して、0.1〜100重量部で用いることが好ましい。また、上記のものは電子線により充分に硬化可能であるが、紫外線照射で硬化させる場合には、増感剤としてベンゾキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル類、ハロゲン化アセトフェノン類、ビアチル類などの紫外線照射によりラジカルを発生するものも用いることができる。
【0040】ホログラム形成層16は、従来既知の方法によって形成することができる。例えば、透明型ホログラムがレリーフホログラムである場合、干渉縞が凹凸の形で記録されたホログラム原版をプレス型として用い、このホログラム原版上にホログラム形成用樹脂シートを置き、加熱ロールなどの手段によって両者を加熱圧着し、ホログラム形成用樹脂シート表面にホログラム原版の凹凸模様を複製する方法によってレリーフ形成面を有するホログラム形成層16を得ることができる。
【0041】ホログラム形成層16に反射性薄膜層17を設ける態様はレリーフホログラムの場合に限られず、他のホログラムにも同様に適用される。反射性薄膜層17はホログラム効果を発現でき、しかも下層の画像などを隠蔽しない材質であればいかなるものも使用でき、例えば、ホログラム形成層16とは屈折率の異なる透明材料や、厚さが200Å以下の反射性金属薄膜層等が挙げられる。前者の場合、屈折率はホログラム形成層16よりも大きくても小さくてもよいが、屈折率の差は0.1以上が好ましく、0.5以上が更に好ましい。このように屈折率の異なる透明薄膜層を設けることにより、ホログラム効果を発現させると共に、下層の画像を隠蔽させない作用が行われる。また、後者の場合は反射性金属薄膜層ではあるが、厚さが200Å以下であるため光波の透過率が大きく、そのため部分反射によるホログラム効果発現作用と共に、透過による画像非隠蔽作用を発揮する。
【0042】反射性薄膜層17の材質として、例えば、次の(1)〜(6)の材質のものが使用できる。
(1)ホログラム形成層16よりも屈折率の大きい透明薄膜層。
これには、可視領域で透明なものと、赤外または紫外領域で透明なものとがあり、それぞれ代表的なものの材質と括弧内にその屈折率(n)を示す〔以下、(2)〜(5)においても同様〕。可視領域透明体としては、Sb2 5 (3.0)、Fe2 3 (2.7)、PbO(2.6)、ZnSe(2.6)、CdS(2.6)、Bi2 3 (2.4)、TiO2 (2.3)、PbCl2 (2.3)、ZnS(2.1)、ZnO(2.1)、CdO(2.1)、SiO(2.0)、TiO(1.9)などが挙げられる。赤外または紫外領域透明体としては、CdSe(3.5)、CdTe(2.6)Ge(4.0〜4.4)、PbTe(5.6)、Si(3.4)、Te(4.9)、TlCl(2.9)、ZnTe(2.8)などが挙げられる。
【0043】(2)ホログラム形成層16よりも屈折率の大きい透明強誘電体。
具体的にはCuCl(2.0)、CuBr(2.2)、GaP(3.3〜3.5)、KH2 AsO4 (1.6)、N4(CH2)4 (1.6)、NH4 2 PO4(1.5)、LiNbO3 (2.3)、BaTiO3 (2.4)、SrTiO3(2.4)などが挙げられる。
(3)ホログラム形成層16よりも屈折率の小さい透明薄膜層。
具体的には、LiF(1.4)、MgF(1.4)、3NaF・AlF3 (1.4)、AlF3 (1.4)、GaF2 (1.3)、NaF(1.3)が挙げられる。
(4)厚さ200Å以下の反射性金属薄膜層。
この反射性金属薄膜は複素屈折率を有し、該複素屈折率n*はn*=n−iKで表される。nは屈折率、Kは吸収係数を示す。具体的には下記の材質を使用でき、それぞれのnおよびKを括弧内に示す。Be(n=2.7,K=0.9)、Mg(n=0.6,K=6.1)、Ca(n=0.3,K=8.1)、Sr(n=0.6,K=3.2)、Ra(n=0.9,K=1.7)、La(n=1.8,K=1.9)、Ce(n=1.7,K=1.4)、Cr(n=3.3,K=1.3)、Mn(n=2.5,K=1.3)、Cu(n=0.7,K=2.4)、Ag(n=0.1,K=3.3)、Au(n=0.3,K=2.4)、Al(n=0.8,K=5.3)、Sb(n=3.0,K=5.3)、Ni(n=1.8,K=1.8)などである。その他の材料として、Sn、In、Te、Ti、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se等が使用可能である。また上記に挙げた金属の酸化物、窒化物等も使用可能であり、更に、金属、その酸化物、窒化物等は単独で用いられる他に、それぞれを2種以上組み合わせて用いることができる。
【0044】(5)ホログラム形成層と屈折率の異なる樹脂。
ホログラム形成層16に対して屈折率が大きいものでも小さいものでもよい。これらの例を以下に示す。括弧内は屈折率である。ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリクロルトリフルオロエチレン(1.43)、酢酸ビニル樹脂(1.45〜1.47)、ポリエチレン(1.50〜1.54)、ポリプロピレン(1.49)、メチルメタアクリレート樹脂(1.49)、ナイロン(1.53)、ポリスチレン(1.60)、ポリ塩化ビニリデン(1.60〜1.63)ビニルブチラール樹脂(1.48)、ビニルホルマール樹脂(1.50)、ポリ塩化ビニル(1.52〜1.55)、ポリエステル樹脂(1.52〜1.57)などである。上記の他、一般的な合成樹脂が使用可能であるが、特にホログラム形成層との屈折率の差の大きい樹脂が好ましい。
【0045】(6)上記(1)〜(5)の材質を適宜組み合わせてなる積層体。
上記(1)〜(5)の組み合わせは任意であり、また、層構成における各層の上下位置関係も任意に選択できる。上記した(1)〜(6)の反射性薄膜層17の中、(4)の反射性薄膜層の厚さは200Å以下であるが、(1)〜(3)および(5)、(6)の反射性薄膜層の厚さは、薄膜を形成する材料の透明領域であればよく、一般的には10〜10000Åが好ましく、100〜5000Åが更に好ましい。上記反射性薄膜層17をホログラム形成層16に形成する方法として、反射性薄膜層17が上記(1)〜(4)の材質の場合は、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、電気メッキ法等の一般的薄膜形成手段を用いることができ、また、反射性薄膜層17が上記(5)の材質の場合は、一般的なコーティング方法等を用いることができる。反射性薄膜層17が上記(6)の材質(積層体)である場合は、上記した各手段、方法等を適宜組み合わせて用いられる。尚、上記(5)の材質の場合には、透明材料である限り薄膜でなくてもよく、別の実施例として薄膜以上の厚さを有する樹脂層をホログラム形成層16に設けてもよい。
【0046】接着剤層18の材質としては、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー樹脂等を主成分とする従来既知の接着剤が広く使用でき、その膜厚は0.1〜50μmの範囲であり、1〜10μmが好ましい。また、反射性薄膜層17と接着剤層18との間の接着性を高めるため、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等からなるアンカー層(図示せず)を反射性薄膜層17と接着剤層18との間に設けてもよい。
【0047】上記のように構成されるホログラム熱転写シート21を用いて、本発明のホログラム付き印画物を作成する方法は、前述したように、受像シート上に、昇華性染料インキによる転写画像、または、昇華性染料インキ及び熱溶融性インキによる転写画像を設け、該転写画像の上に保護層を設けた後に、該保護層の上に上記ホログラム熱転写シート21の接着剤層18面が保護層面に接するように重ね合わせて置き、ホログラム熱転写シート21の背面側からサーマルヘッド、ホットスタンパー(熱板)、熱ロールの中のいずれかの手段により加熱・加圧などで転写することにより作成できる。このホログラム層は、印画物の全面に転写されてもよいし、印画物の一部分に転写されてもよい。この際、部分的にホログラム層を設けるには、サーマルヘッドもしくはホットスタンプの手段を用いることが望ましく、全面に設ける場合は熱ロール方式が望ましい。例えば、熱板による場合、ホログラム熱転写シート21の接着剤層18面が被転写体表面、即ち、受像シートの転写画像の上に形成した保護層面に接するように重ね合わせて置き、ホログラム熱転写シート21の背面側から熱板で加熱、加圧して接着させた後、基材フィルム7を剥がすことにより透明型ホログラムが転写された印画物を得ることができる。
【0048】図6は、受像シートの保護層上に積層するためのホログラム層を含有する積層体6、即ち、熱接着性のホログラムラベル(シール)の一実施例の構成を示す模式断面図である。このようなホログラム層を含有する積層体6は、通常、透明フィルム19を基材とし、その一方の面に必要に応じてプライマー層20を設け、その上にホログラム形成層16、反射性薄膜層17、接着剤層18を順に積層することにより作成できる。図6において透明フィルム19は、材質としては図3の基材フィルム7に挙げたプラスチックフィルムの透明タイプのものを共通して使用でき、その厚さは3.5〜300μmのものを使用できる。また、プライマー層20は、基材の透明フィルム19の種類により、必要に応じて設けるものであり、例えば、ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリル系樹脂等を主成分とする従来既知のプライマー用樹脂を適宜選定して塗布して形成できる。透明フィルム19が2軸延伸PETフィルムの場合には、ウレタン樹脂にイソシアネートを配合した塗布液を塗布することにより良好なプライマー層を形成できる。また、ホログラム形成層16、反射性薄膜層17、接着剤層18は、前記図5のホログラム熱転写シート21で説明したものをそのまま適用できる。
【0049】このようにして作成したホログラム層を含有する積層体6を用いて、本発明のホログラム付き印画物を作成する方法は、受像シート上に昇華性染料インキによる転写画像、または、昇華性染料インキ及び熱溶融性インキによる転写画像をサーマルヘッドなどにより設け、該転写画像上に保護層を熱転写により設けた後、その保護層上にホログラム層を含有する積層体6を、その接着剤層18が保護層面に接するように重ね合わせて置き、熱板または熱ロールにより加熱・加圧して熱接着させることによりホログラム付き印画物を得ることができる。
【0050】以下に具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。尚、文中、「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本実施例では、長尺の熱転写シート(基材フィルム)において、その短尺方向を縦、長尺方向を横と呼ぶこととする。
〔実施例1〕
■画像形成用熱転写シートの作成基材フィルムとして、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート長尺フィルム(以下PETフィルムと表示)(ルミラー:東レ製)を用い、その一方の面に、下記の組成の耐熱滑性層用塗布液を乾燥時の塗布量が1.0g/m2 となるように、全面ベタ版を用いたグラビアコート法により塗布、乾燥して、耐熱滑性層を設け、更に60℃にて5日間オーブン中で加熱して硬化処理を行った。
耐熱滑性層用塗布液の組成 ポリビニルブチラール(エスレックBX−1 積水化学工業製) 3.6部 ポリイソシアネート(バーノックD750 大日本インキ製) 8.4部 燐酸エステル系界面活性剤 (プライサーフA208S 第一工業製薬製) 2.8部 タルク(ミクロエースP−3 日本タルク製) 0.6部 トルエン/メチルエチルケトン(重量比 1:1) 190部
【0051】次に、基材フィルムの耐熱滑性層とは反対側の面に、下記組成の昇華性染料インキを、1色が縦10cm、横14cmの大きさとなるようにイエロー、マゼンタ、シアンの3色を1セットとして長尺方向に面順次に、また、短尺方向には多列でグラビア印刷により、それぞれ乾燥時の塗布量が1.3g/m2 となるように印刷して昇華性染料インキ層を設けた。尚、それぞれのセット間には熱溶融性インキ層(ブラック)を設けるために16cmの間隔をあけておいた。
昇華性イエローインキの組成 染料(FORON BRILLIANT YELLOW S-6GL) 5.5部 ポリビニルアセトアセタール(KS−5 積水化学工業製) 4.5部 ポリエチレンワックス 0.1部 トルエン/メチルエチルケトン(重量比 1:1) 89.0部昇華性マゼンタインキの組成前記昇華性イエローインキの組成において、染料のみをマゼンタ染料(MSRED−Gを1.5部、MACROLEX RED VIOLET Rを2.0部)に換え、その他はイエローインキと同じ組成で昇華性マゼンタインキとした。
昇華性シアンインキの組成前記昇華性イエローインキの組成において、染料の種類のみをシアン染料(カヤセットブルー714)に換え、その他はイエローインキと同じ組成で昇華性シアンインキとした。
【0052】次に、前記昇華性染料インキ層のセット間に設けた各16cmの間隔のスペース(それぞれ縦10cm、横16cmの大きさ)に熱溶融性ブラックインキ層を設けるべく、先ず、下記の組成の離型層用塗布液をグラビアコーターにより、乾燥時の塗布量が1.0g/m2 となるように塗布、乾燥して離型層を形成した。
離型層用塗布液の組成 ウレタン樹脂(ハイドロランAP−40 大日本インキ製) 70部 ポリビニルアルコール(ゴーセノールC-500 日本合成化学製) 30部 蛍光増白剤(Uvitex C.F.チバガイギー製) 0.5部 水/エチルアルコール(重量比 2:1) 300部更に、上記離型層の上に昇華性シアンインキ層に隣接して、離型層と同じ大きさで剥離保護層と熱溶融性インキ層(ブラック)を設けるべく、下記の組成の剥離保護層用塗布液および熱溶融性インキ層用インキをグラビアコーターにより、乾燥時の塗布量がどちらも1.0g/m2 となるように塗布、乾燥して熱溶融性インキ層領域を形成した。
【0053】
剥離保護層用塗布液の組成 アクリル樹脂(BR−85 三菱レイヨン製) 88部 ポリエチレンワックス 11.5部 ポリエステル 0.5部 蛍光増白剤(Uvitex O.B.チバガイギー製) 0.5部 トルエン/メチルエチルケトン(重量比 1:1) 300部 熱溶融性インキ層用インキの組成 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂 60部 カーボンブラック 40部 トルエン/メチルエチルケトン(重量比 1:1) 200部
【0054】■保護層形成用熱転写シートの作成厚さ6μmのPETフィルム(ルミラー 東レ製)を基材フィルムとし、その一方の面に前記と同じ耐熱滑性層用塗布液を全面ベタ版を用いたグラビアコーターにより乾燥時の塗布量が1g/m2 となるように塗布、乾燥し、更に前記と同条件で硬化処理を行い耐熱滑性層を設けた。そして、基材フィルムのもう一方の面には、前記熱溶融性インキ層領域を設ける際に用いたものと同じ組成の離型層用塗布液を用いてグラビアコーターにより、乾燥時の塗布量が1g/m2 となるように全面に塗布、乾燥して離型層を設けた後、その離型層の上に下記組成の剥離透明樹脂層用塗布液をグラビアコーターにより、乾燥時の塗布量が1.5g/m2 となるように塗布し、更にその上に下記組成の接着層用塗布液を乾燥時の塗布量が1g/m2 となるように塗布して、剥離透明樹脂層、接着層を設けて保護層転写フィルムを作成した。
【0055】
剥離透明樹脂層用塗布液の組成 アクリル樹脂(BR−83 三菱レイヨン製) 95部 ポリエチレンワックス 5部 ポリエステル 0.5部 トルエン/メチルエチルケトン(重量比 1:1) 300部 接着層用塗布液の組成 ウレタン樹脂 20部 トルエン/メチルエチルケトン(重量比 1:1) 80部
【0056】■ホログラム熱転写シートの作成厚さ25μmのPETフィルム(ルミラー 東レ製)を基材フィルムとし、その一方の面に、順次剥離保護層、ホログラム形成層、反射性薄膜層(透明)、接着剤層を従来既知の方法で形成しホログラム熱転写シートを作成した。尚、反射性薄膜層は、スパッタリング法により厚さ1000Åに形成した。各層の形成に用いた塗布液の組成、或いは材料は下記の通りである。尚、ホログラム形成層は、樹脂層を塗布により形成した後、レリーフホログラムとして構成した。
剥離保護層用塗布液の組成 酢酸セルロース樹脂 5部 メチルアルコール 25部 メチルエチルケトン 45部 トルエン 25部 メチロール化メラミン樹脂 0.5部 パラトルエンスルフォン酸 0.05部
【0057】
ホログラム形成層用塗布液の組成 アクリル樹脂 40部 メラミン樹脂 10部 アノン 50部 メチルエチルケトン 50部 反射性薄膜層(透明)の材質 Zn S 接着剤層用塗布液の組成 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂 20部 アクリル樹脂 10部 酢酸エチル 20部 トルエン 50部
【0058】■ホログラム付き印画物の作成上記の各熱転写シートを用いて画像の形成およびホログラムの熱転写を行うための受像シートとして、安定化剤等の添加剤を約10重量%含有するポリ塩化ビニル(重合度800)コンパウンド100部、白色顔料(酸化チタン)10部、可塑剤(DOP)0.5部からなるカード基材(カードの寸法は縦5.5cm×横9cm)を用意した。このカード基材の表面に、前記■で作成した画像形成用熱転写シートを用いて、感熱転写プリンターにより顔写真を色分解して得た電気信号に連結したサーマルヘッドで熱エネルギーを加えて昇華性染料インキによるフルカラー顔写真画像を形成し、また、熱溶融性ブラックインキによる身分証明書用文字などを印字した。
【0059】続いて、前記■で作成した保護層形成用熱転写シートを用いて、フルカラー顔写真画像上に同じくプリンターのサーマルヘッドで熱エネルギーを加えて保護層を転写した。次に、上記フルカラー顔写真画像上の保護層の上に、■で作成したホログラム熱転写シートの接着剤層が接するように重ね合わせた後、ホログラム熱転写シートの基材フィルム側に熱板を当て、150℃、1Kg/cm2の条件で加熱・加圧し、冷却後基材フィルムを剥がして透明型ホログラムをカード表面の保護層上に転写した。このようにして得た実施例1のホログラム付き印画物を観察したところ、ホログラムの上から転写画像を見ることができると共に、角度を変えて見ることによりホログラムの立体再生像が明瞭に見られた。
【0060】〔実施例2〕実施例1の構成において、カード表面の保護層の上に設けたホログラム層のみを、熱転写によるものでなく、下記のように作成した熱接着性のホログラム層を含有する積層体に変え、これを熱板により150℃、1Kg/cm2の条件で加熱・加圧して積層することにより実施例2のホログラム付き印画物を作成した。このホログラム付き印画物も実施例1の場合と同様に、ホログラムの積層体を通して転写画像を見ることができ、また、ホログラムの立体再生像も明瞭に認識できた。
(熱接着性のホログラム層を含有する積層体の作成)厚さ25μmの透明PETフィルムの一方の面に下記の組成のプライマー層用塗布液をグラビアコーターにより乾燥時の塗布量が1g/m2 になるように塗布、乾燥し、その上に実施例1のホログラム熱転写シートの場合と同様にホログラム形成層、反射性薄膜層、接着剤層を順次積層してホログラム層を含有する積層体を作成した。
プライマー層用塗布液の組成 ウレタン樹脂 19部 イソシアネート 1部 トルエン/メチルエチルケトン(重量比 1:1) 80部
【0061】〔実施例3〕厚さ125μmの白色PETフィルムの一方の面に、下記の組成の染料受容層用塗布液をグラビアコーターにより乾燥時の塗布量が3g/m2 となるように塗布、乾燥して染料受容層を設けた後、縦10cm×横14cmの寸法にカットしてカード用受像シートを作成した。
染料受容層用塗布液の組成 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂 20部 アミノ変性シリコーン 0.2部 エポキシ変性シリコーン 1部 トルエン/メチルエチルケトン(重量比 1:1) 80部
【0062】上記受像シートの染料受容層面に実施例1で作成した画像形成用熱転写シートと保護層形成用熱転写シートを用いて、感熱転写プリンターのサーマルヘッドにより実施例1と同様にしてフルカラーの顔写真画像と文字画像の転写を行い、その上に保護層を設けた。次に、厚さ75μmの透明PETフィルムの一方の面に下記組成のプライマー層用塗布液を乾燥時の塗布量が1g/m2 になるように塗布した後、その上に実施例1と同様にしてホログラム形成層、反射性薄膜層、接着剤層を順次積層してホログラム層を含有する積層体を作成した。
プライマー層用塗布液の組成 ウレタン樹脂 19部 イソシアネート 1部 トルエン/メチルエチルケトン(重量比 1:1) 80部このホログラム層を含有する積層体の接着剤層面を、先の転写画像と保護層とを設けた受像シートの保護層面に重ね合わせて150℃、1Kg/cm2の条件で加熱・加圧して熱接着させた後、縦5.5cm×横9cmのカードサイズにカットして実施例3のホログラム付き印画物を作成した。この印画物についても、ホログラム層を通して転写画像を見ることができると共に、ホログラムの再生像も明瞭に見ることができた。
【0063】〔比較例1〕実施例1のホログラム付き印画物の構成において、転写画像上に設けた保護層を除き、昇華性染料インキおよび熱溶融性インキによる転写画像上に直接ホログラム層を熱転写により積層したほかは、総て実施例1と同様にして比較例1のホログラム付き印画物を作成した。
【0064】〔比較例2〕実施例3のホログラム付き印画物の構成において、転写画像上に設けた保護層を除き、昇華性染料インキおよび熱溶融性インキによる転写画像上に直接ホログラム層を含有する積層体を熱接着させたほかは、総て実施例3と同様にして比較例2のホログラム付き印画物を作成した。
【0065】以上のようにして作成した実施例1〜3および比較例1、2の各ホログラム付き印画物を試料として、その保存安定性を評価するため下記の促進試験を実施した。
試験方法各試料を40℃および50℃に温度設定したオーブン中で14日間保存した後、目視にて転写画像の滲みなど試料の変化を未処理の試料と比較し、下記の基準で評価した。
評価基準○:変化のないもの△:僅かに変化のあるもの×:変化のあるもの上記の評価結果を下記の表1にまとめて示した。
(以下余白)
【0066】
【表1】 (評価結果)


【0067】
【発明の効果】以上詳しく説明したように、本発明のホログラム付き印画物及びその作成方法では、受像シート上に昇華性染料インキ、または昇華性染料インキ及び熱溶融性インキによる転写画像を設け、その上に保護層を設けた後に、更にその上にホログラム層を熱転写シートから転写するか、或いは、ホログラム層を含有する積層体を熱接着させてホログラム付き印画物を構成している。このような構成および作成方法を採ることにより、昇華性染料インキによる転写画像面に直接接する層が、ホログラム層の接着剤層ではなく、保護層の接着層であるため、可塑剤や低ガラス転移点の樹脂など昇華転写画像の染料を滲ませ易い材料を含有しない材質で構成でき、長期間使用或いは保管しても転写画像に染料の滲みなどによる品質の低下がなく、色再現性、階調再現性に優れたフルカラーの画像を鮮明に維持でき、耐久性に優れると共に、ホログラムによるセキュリティー性にも優れたホログラム付き印画物、およびその作成方法を提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のホログラム付き印画物の一実施例の構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明のホログラム付き印画物の別の一実施例の構成を示す模式断面図である。
【図3】転写画像を形成するために使用する熱転写シートの一実施例の構成を示す模式断面図である。
【図4】転写画像の上に設ける保護層の転写に使用する熱転写シートの一実施例の構成を示す模式断面図である。
【図5】保護層の上に積層するホログラム層の転写に使用するホログラム転写シートの一実施例の構成を示す模式断面図である。
【図6】保護層の上に積層するホログラム層を含有する積層体の一実施例の構成を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1 受像シート
2 昇華性染料インキによる転写画像
3 熱溶融性インキによる転写画像
4 保護層
5 ホログラム層
6 ホログラム層を含有する積層体
7 基材フィルム
8(Y) 昇華性イエローインキ層
8(M) 昇華性マゼンタインキ層
8(C) 昇華性シアンインキ層
9 熱溶融性インキ層
10a 、10b 離型層
11a 、11b 剥離保護層
12 熱溶融性インキ層領域
13 耐熱滑性層
14 剥離透明樹脂層
15 接着層
16 ホログラム形成層
17 反射性薄膜層
18 接着剤層
19 透明フィルム
20 プライマー層
21 ホログラム熱転写シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】 受像シート上に、昇華性染料インキによる転写画像、または、昇華性染料インキ及び熱溶融性インキによる転写画像と、保護層とが順に設けられ、該保護層の上にホログラム層が積層されていることを特徴とするホログラム付き印画物。
【請求項2】 前記ホログラム層が、ホログラム層を含有する積層体であることを特徴とする請求項1記載のホログラム付き印画物。
【請求項3】 受像シート上に、昇華性染料インキによる転写画像、または、昇華性染料インキ及び熱溶融性インキによる転写画像を設け、該転写画像の上に保護層を設けた後に、該保護層の上にホログラムの熱転写シートからサーマルヘッド、ホットスタンパー、熱ロールの中のいずれかの手段によりホログラム層を転写し、積層することを特徴とするホログラム付き印画物の作成方法。
【請求項4】 受像シート上に、昇華性染料インキによる転写画像、または、昇華性染料インキ及び熱溶融性インキによる転写画像を設け、該転写画像の上に保護層を設けた後に、該保護層の上にホログラム層を含有する積層体を熱板または熱ロールにより加熱・加圧して積層することを特徴とするホログラム付き印画物の作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平8−310170
【公開日】平成8年(1996)11月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−142414
【出願日】平成7年(1995)5月18日
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)