ホログラム光学素子の製造方法、ホログラム光学素子、ホログラム基板、光源ユニットおよび照明装置
【課題】高NAのレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子22を容易に実現し、明るい光を出射することが可能な光源ユニットおよび照明装置を実現する。
【解決手段】基板21の回転軸Bに対して偏心した位置にホログラムエレメント51を形成する工程と、回転軸Bを中心にして基板21を所定角度だけ回転させる工程とを繰り返すことにより、基板21上に複数のホログラムエレメント51を形成する。各ホログラムエレメント51は、基板21上に形成されるホログラム感光材料22aを2光束L1・L2で露光することによって形成される。光束L1は、基板21の回転軸B上またはその近傍の点から発散してホログラム感光材料22aに入射する光束である。一方、光束L2は、ホログラム感光材料22aに対する照射スポットR2が光束L1の露光領域R1と重なる領域を有し、かつ、回転軸Bに対して偏心する位置に形成される光束である。
【解決手段】基板21の回転軸Bに対して偏心した位置にホログラムエレメント51を形成する工程と、回転軸Bを中心にして基板21を所定角度だけ回転させる工程とを繰り返すことにより、基板21上に複数のホログラムエレメント51を形成する。各ホログラムエレメント51は、基板21上に形成されるホログラム感光材料22aを2光束L1・L2で露光することによって形成される。光束L1は、基板21の回転軸B上またはその近傍の点から発散してホログラム感光材料22aに入射する光束である。一方、光束L2は、ホログラム感光材料22aに対する照射スポットR2が光束L1の露光領域R1と重なる領域を有し、かつ、回転軸Bに対して偏心する位置に形成される光束である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積位相型の透過型ホログラム光学素子を基板上に形成するホログラム光学素子の製造方法と、その製造方法によって製造されるホログラム光学素子と、そのホログラム光学素子を有するホログラム基板と、そのホログラム基板を有する光源ユニットと、上記ホログラム基板を有する照明装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ホログラム感光材料に対して局所的な露光を繰り返すことによって全体として1つのホログラム光学素子を作製するホログラム光学素子の製造方法が提案されている。例えば、特許文献1では、ホログラム感光材料を回転させる回転テーブルの回転角、露光面に平行な面内および露光面に垂直な方向における回転テーブルの位置や、露光時に用いる2本の光束の強度、露光面に対する入射角度、2光束の相対角度等を適切に制御することにより、2光束の干渉領域をホログラム感光材料中で相対的に移動させ、ホログラム感光材料中に集合的な干渉縞を形成して全体として所望の光学特性を有するホログラム光学素子を作製している。
【0003】
【特許文献1】特開平5−6134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば体積位相型の透過型ホログラム光学素子は、入射光を回折させて偏向することから、これにレンズとしての機能を持たせることが可能である。例えば、発散光を出射する光源(例えばLED)の前方にホログラム光学素子を配置して1つのユニットを構成することにより、光源から出射される光よりも発散角を小さくしてユニットから出射させることが可能となる。このとき、発散角の大きな光を出射する光源を用いる場合、その光の利用効率を高めてユニットから明るい光を出射させるためには、ホログラム光学素子を高NAのレンズ、つまり、光学的パワーの大きなレンズとして機能させることが必要である。
【0005】
しかし、特許文献1には、高NAのレンズと同等のホログラム光学素子を作製する手法は開示されていない。また、特許文献1に記載の製法は、露光時の2光束をともに収束させて微細な干渉縞を繰り返し形成する手法であるため、その手法で高NAのレンズと同等のホログラム光学素子を作製するとなると、上記した各パラメータの制御が複雑になることが予想される。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、高NAのレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子を容易に実現することができるホログラム光学素子の製造方法と、その製法によって作製されるホログラム光学素子と、そのホログラム光学素子を有するホログラム基板と、そのホログラム基板を有し、発散角の大きな光を出射する光源を用いた場合でも明るい光を出射することが可能な光源ユニットおよび照明装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のホログラム光学素子の製造方法は、体積位相型の透過型ホログラム光学素子を基板上に形成するホログラム光学素子の製造方法であって、基板の回転軸に対して偏心した位置に、上記ホログラム光学素子を構成する一単位となるホログラムエレメントを形成する工程と、上記回転軸を中心にして基板を所定角度だけ回転させる工程とを繰り返すことにより、基板上に複数のホログラムエレメントを形成し、各ホログラムエレメントは、基板上に形成されるホログラム感光材料を2光束で露光することによって形成されており、上記2光束のうちの一方の光束は、基板の回転軸上またはその近傍の点から発散してホログラム感光材料に入射する光束であり、上記2光束のうちの他方の光束は、ホログラム感光材料に対する照射スポットが上記一方の光束の露光領域と重なる領域を有し、かつ、基板の回転軸に対して偏心する位置に形成される光束であることを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、基板の各回転位置ごとにホログラムエレメントを形成することにより、基板上に複数のホログラムエレメントからなる体積位相型の透過型ホログラム光学素子が形成される。各ホログラムエレメントは、基板上のホログラム感光材料を2光束で露光することによって形成される。
【0009】
このとき、上記2光束のうちの一方の光束は発散光であるので、ホログラム光学素子の使用時には、露光時の一方の光束の出射ポイントに対応する位置に発光ダイオード(以下、LEDとも称する)のような一定の放射角度で光を出射する光源を配置して、光源から出射される光(発散光)をホログラム光学素子にて偏向(回折)させることができる。
【0010】
ここで、上記一方の光束は、特に、基板の回転軸上またはその近傍の点から発散してホログラム感光材料に入射する発散光である。また、他方の光束は、ホログラム感光材料に対する照射スポットが一方の光束の露光領域と重なる領域を有し、かつ、基板の回転軸に対して偏心する位置に形成される光束である。なお、他方の光束は、発散光、平行光、収束光のいずれの状態でホログラム感光材料に入射してもよい。
【0011】
このように、1つのホログラムエレメントを形成する際に用いる2光束がそれぞれ上述した光束であるので、基板の回転によって複数のホログラムエレメントを形成し、作製したホログラム光学素子の使用時には、回転軸に対して互いに反対側(例えば点対称)に位置する2つのホログラムエレメントに同時に入射する発散光を出射するような光源を用いることができる。つまり、露光時に用いた一方の光束(発散光)よりも確実に大きな発散角の光を出射する光源を、露光時の一方の光束の出射ポイントに対応する位置に配置して使用することができる。これにより、高NA(例えばNA>0.7)のレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子を(複雑な制御を行うことなく)容易に実現することができる。そして、そのホログラム光学素子と光源とを組み合わせて、明るい光を出射する光源ユニット(光源の支持体と光学素子とが一体化されているもの)や照明装置(光源の支持体と光学素子とが離間しているもの)を実現することができる。
【0012】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、上記一方の光束は、発散角を張る2光線の一方が基板の回転軸上を進行し、他方の光線が他方の光束と交わる光束であってもよい。
【0013】
この場合、露光時に用いた一方の光束(発散光)の発散角の2倍の角度が、使用時にホログラム光学素子(複数のホログラムエレメント)にて偏向させることができる、入射光(発散光)の最大発散角となる。したがって、高NAのホログラム光学素子を確実に実現することができる。
【0014】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、ホログラム感光材料の露光時に用いる2光束の光路は、固定されていることが望ましい。この場合、2光束の光路を露光ごとに変化させる従来のように製造光学系の構成や光路制御が複雑になることがなく、低コストでホログラム光学素子を得ることができる。
【0015】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、基板の回転前後で2つのホログラムエレメントの一部が重複して形成される角度だけ、ホログラムエレメントの形成ごとに基板を回転させるようにしてもよい。
【0016】
基板の回転前後で2つのホログラムエレメントの一部が重複するように基板を回転させて複数のホログラムエレメントを形成すると、各ホログラムエレメントにおいて基板の回転軸から最も離れた点を順に結んでできる図形が、基板1回転あたり形成するホログラムエレメントの個数が多いほど円形に近づく。これにより、使用時にホログラム光学素子に入射させる光として断面円形の光を出射する光源を用いた場合に、その光利用効率を向上させることができる(入射光をホログラム光学素子にて効率よく偏向(回折)させることができる)。
【0017】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、ホログラム感光材料において2光束で露光される領域のうち、隣り合うホログラムエレメントと重複して露光される領域に入射する光の少なくとも一部を遮光する遮光部材をホログラム感光材料の光入射側の光路中に配置し、各ホログラムエレメントの形成ごとに、遮光部材を介してホログラム感光材料を2光束で露光するようにしてもよい。
【0018】
このように遮光部材を介してホログラム感光材料を2光束で露光することにより、隣り合うホログラムエレメントと重複して露光される領域を極力小さくすることができる。重複して露光される領域では、回折効率の低下が生じ、使用時に光利用効率が低下するが、上記の露光の仕方により、そのような不都合を回避することができる。
【0019】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、ホログラム感光材料を2光束で露光する際の露光エネルギーは、全てのホログラムエレメント形成時で等しいことが望ましい。
【0020】
このような露光方法によってホログラム光学素子を製造することにより、基板の回転軸に対して回折効率が回転対称となる。したがって、より高精度で高NAの光学素子としてホログラム光学素子を使用することができるとともに、上記ホログラム光学素子を例えば照明光学系の集光レンズとして用いる場合でも、より均一な光を出射する照明光学系を実現することができる。また、重複露光領域を小さくすべく、遮光部材を用いてホログラム感光材料を露光する際に上記の露光方法を適用すれば、基板の回転方向において回折効率にムラが生じるのを極力抑えることができ、さらに高精度な光学素子を実現することができる。
【0021】
本発明のホログラム光学素子は、上述した本発明の製造方法によって製造されてなることを特徴としている。上記の製法によれば、高NA(例えばNA>0.7)のレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子を容易に実現することができるので、そのホログラム光学素子と光源とを組み合わせて、明るい光を出射する光源ユニットや照明装置を容易に実現することができる。
【0022】
本発明のホログラム光学素子において、複数のホログラムエレメントは全体として、基板に垂直な軸を光軸とするレンズとして機能してもよい。この場合、使用時の光学系(例えば投影光学系や接眼光学系)と同軸でホログラム光学素子を使用することが可能となる。つまり、上記光学系と組み合わせてホログラム光学素子を容易に使用することが可能となる。
【0023】
本発明のホログラム基板は、上述した本発明のホログラム光学素子と、上記ホログラム光学素子が形成される基板とを有していることを特徴としている。この構成によれば、ホログラム基板を例えば光源と組み合わせることで、光源ユニットまたは照明装置を容易に実現することができる。
【0024】
本発明の光源ユニットは、上記した本発明のホログラム基板と、上記ホログラム基板に向けて光を出射する光源と、上記光源を支持する支持体とを有しており、上記ホログラム基板は、上記支持体と一体化して設けられていることを特徴としている。この構成により、明るい光を出射する光源ユニットを実現することができる。
【0025】
本発明の光源ユニットにおいて、上記光源から出射される光の強度ピーク波長は、上記ホログラム基板の各ホログラムエレメントにおける回折ピーク波長と略一致していることが望ましい。この場合、光源から出射される光を各ホログラムエレメントにて効率よく回折させて偏向することができ、光利用効率の高い光源ユニットを実現することができる。
【0026】
本発明の照明装置は、上述した本発明のホログラム基板と、上記ホログラム基板に向けて光を出射する光源と、上記光源を支持する支持体とを有しており、上記ホログラム基板は、上記支持体と離間して設けられていることを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、明るい光を出射する照明装置を実現することができる。また、使用時の形態に応じてホログラム基板と支持体との距離を調整することが可能となる。さらに、光源が発散光を出射する場合には、支持体とホログラム基板との距離を大きくするほど、ホログラム基板に入射する光束径が広がるので、そのような広い光束径の光を偏向させて使用する場合には、本発明の照明装置は非常に有効となる。
【0028】
本発明の照明装置において、上記光源から出射される光の強度ピーク波長は、上記ホログラム基板の各ホログラムエレメントにおける回折ピーク波長と略一致していることが望ましい。この場合、光源から出射される光を各ホログラムエレメントにて効率よく回折させて偏向することができ、光利用効率の高い照明装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高NAのレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子を容易に実現することができる。そして、そのホログラム光学素子と光源とを組み合わせて、明るい光を出射する光源ユニットや照明装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0031】
(1.光源ユニットおよび照明装置について)
図2は、本実施形態に係る光源ユニット1の概略の構成を示す断面図である。この光源ユニット1は、光源モジュール10と、ホログラム基板20とを有しており、光源モジュール10から出射される光がホログラム基板20を介して外部に取り出される構成となっている。
【0032】
光源モジュール10は、筐体11内に光源12を有している。光源12は、ホログラム基板20に向けて光を出射するものであり、例えば強度ピーク波長(光強度がピークとなる中心波長)が520nmの光を出射するLEDで構成されている。光源12は、放射角度が強度半値でも±60度(全角120度)となる広い放射角度特性を有しており、基板13上に形成された金属パターンからなる電極14上に実装されている。このことから、基板13は、電極14を介して光源12を支持する支持体を構成していると言える。また、基板13上には、金属パターンからなる他の電極15が形成されており、光源12と電極15とはAuワイヤ16で接続されている。筐体11内部は、樹脂モールドされている。
【0033】
ホログラム基板20は、例えばガラスやプラスチック材料からなる透明な基板21上にホログラム光学素子22を有して構成されている。このホログラム基板20は、基板21に対してホログラム光学素子22が光源12側となるように、光源モジュール10の表面に粘着層(図示せず)を介して接着され、光源モジュール10の基板13と筐体11を介して一体化されている。この結果、ホログラム基板20は、光源12の前方に配置されることになる。ホログラム光学素子22は、後述する製法で作製される体積位相型の透過型ホログラム光学素子で構成されている。
【0034】
上記の構成において、光源12から出射された光(発散光)は、ホログラム光学素子22にて回折、偏向され、その後、基板21を透過して外部に出射される。これにより、射出角度の小さい良好な配向特性(偏向特性)の光源ユニット1を実現することができる。また、ホログラム光学素子22は、薄型で安価であるので、そのようなホログラム光学素子22を用いることにより、光源ユニット1を小型で安価に実現することができる。さらに、ホログラム光学素子22は、後述する製法によって作製されることにより、高NAのレンズと同等の機能を発揮するので、発散角の大きな光を出射する光源12を用いて、明るい光を出射する光源ユニット1を実現することができる。
【0035】
また、図3は、本実施形態に係る照明装置2の概略の構成を示す断面図である。この照明装置2は、図2の光源ユニット1において、光源モジュール10の筐体11およびその内部の封入樹脂を取り去り、ホログラム基板20を基板13に対して空気層を介して離間して配置したものである。
【0036】
上記構成の照明装置2は、基本的な構成は図2の光源ユニット1と同じであるため、上記した光源ユニット1と同様の効果を得ることができる。それに加え、照明装置2では、ホログラム基板20が基板13に支持されないため、使用時の形態に応じてホログラム基板20と基板13との距離を調整することが可能となり、利便性に優れたものとなる。さらに、光源12が発散光を出射する場合には、基板13とホログラム基板20との距離を大きくするほど、ホログラム基板20に入射する光の光束径が広がるので、そのような広い光束径の光を偏向させて使用する場合には、本実施形態の照明装置2は非常に有効となる。
【0037】
上記構成の光源ユニット1や照明装置2は、投影装置やヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDと略称する)の照明部に適用することが可能である。例えば、図4は、照明装置2を有する投影装置6の概略の構成を示す断面図である。この投影装置6は、照明装置2と、表示素子(例えばLCD)3と、投影光学系4と、スクリーン5とを備えている。この構成では、照明装置2から出射される光は、表示素子3に入射してそこで画像データに応じて変調され、映像光として出射されて投影光学系4を介してスクリーン5に導かれる。これにより、表示素子3にて表示された映像がスクリーン5上に拡大投影される。
【0038】
一方、図5は、照明装置2を有するHMD8の概略の構成を示す断面図である。このHMDは、照明装置2と、表示素子3と、接眼光学系7とを備えている。このHMDでは、照明装置2からの光は、表示素子3に入射してそこで画像データに応じて変調され、映像光として出射されて接眼光学系7を介して光学瞳Eに導かれる。したがって、光学瞳Eの位置では、観察者は、表示素子3に表示された映像の拡大虚像を観察することが可能となる。
【0039】
(2.ホログラム光学素子について)
次に、上記したホログラム光学素子22の詳細な構成について説明する。図6は、ホログラム光学素子22の詳細な構成を示す断面図である。ホログラム光学素子22は、ホログラム非構成領域31と、ホログラム構成領域32とを有している。
【0040】
ホログラム非構成領域31は、入射光を回折、偏向させるホログラムが構成されていない領域である。したがって、ホログラム非構成領域31は、そこに光が入射したときにその光を単に透過させる透過領域として機能する。一方、ホログラム構成領域32は、入射光を回折、偏向させるホログラムが構成されている領域である。より具体的には、ホログラム構成領域32には、光源12を点光源と考えたときの発光点に相当する点Pからの発散光を回折、偏向し、光軸に平行な光束として射出するようなホログラムが形成されている。なお、ホログラム光学素子22の使用時における光軸とは、点Pを通り、ホログラム光学素子22の光入射面22bに対して垂直な軸Aを指すものとする。ホログラム構成領域32は、ホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むように形成されている。
【0041】
ここで、上記のホログラムは、基板21(図2参照)上に保持されたフィルム状のホログラム感光材料22a(図1(a)参照)を、干渉性を有する2光束で露光することにより形成されるものである。つまり、ホログラムは、2光束干渉によって形成される干渉縞で構成される。したがって、ホログラム非構成領域31は、上記干渉縞を有していない領域であり、ホログラム構成領域32は、上記干渉縞を有する領域であるとも言える。
【0042】
また、ホログラム光学素子22を作製する元となるホログラム感光材料22aとしては、フォトポリマー、銀塩材料、重クロム酸ゼラチンなどを用いることができるが、ここでは、ホログラム光学素子22をドライプロセスで容易に製造可能なフォトポリマーを用いている。
【0043】
なお、後述する製法を採用することにより、上述したホログラム非構成領域31を形成せずに、ホログラム構成領域32のみからなるホログラム光学素子22を作製することも可能である。このようなホログラム光学素子22においては、ホログラム光学素子22に入射した光は全て、ホログラム構成領域32にて回折、偏向されて出射されることになる。
【0044】
(3.ホログラム光学素子の製造方法について)
次に、ホログラム光学素子22の製造方法について、まず大まかに説明する。図7は、ホログラム光学素子22を製造する際に用いる露光光学系全体の概略の構成を示す説明図である。この露光光学系は、レーザ光源41と、シャッタ42と、ビームエキスパンダ43と、ビームスプリッタ44と、ミラー45と、集光レンズ46と、ミラー47・48とを有している。
【0045】
レーザ光源41から出射される可干渉性を有するレーザ光は、シャッタ42を通過した後、ビームエキスパンダ43にて光束径を拡大され、平行光のままビームスプリッタ44に入射し、そこで2光束に分離される。このとき、シャッタ42のON/OFFにより、レーザ光の露光時間がコントロールされる。
【0046】
ビームスプリッタ44にて分離された一方の光束L1は、ミラー45にて反射された後、集光レンズ46にて後述するミラー48の近傍の点に一旦集光され、そこから発散光となってホログラム感光材料22aに照射される。一方、ビームスプリッタ44にて分離された他方の光束L2は、ミラー47・48にて順に反射された後、基板21上のホログラム感光材料22aに平行光の状態で照射される。このように、ホログラム感光材料22aに対して同じ側(基板21とは反対側)から2光束L1・L2を照射することにより、ホログラム感光材料22aに干渉縞が形成され(ホログラム構成領域32が形成され)、体積位相型で透過型のホログラム光学素子22が基板21上に作製される。
【0047】
なお、用いるホログラム感光材料22aの特性に応じて後処理が必要である。例えば、ホログラム感光材料22aとしてフォトポリマーを用いた場合には、紫外線照射による定着処理と、ベイク処理とが必要である。また、複数波長に対応するホログラム光学素子22を作製する場合には、複数波長に対応したレーザ光源を用い、多重露光によりホログラム光学素子22を作製するか、それぞれの露光波長で作製した素子を貼り合わせることでホログラム光学素子22を作製すればよい。
【0048】
なお、図7では、基板21に対してホログラム感光材料22aを2光束L1・L2の入射側に位置させているが、これらの位置関係は逆であってもよい。つまり、ホログラム感光材料22aに対して基板21を2光束L1・L2の入射側に位置させ、基板21を介してホログラム感光材料22aを露光するようにしてもよい。要は、使用時の形態に合うように基板21を配置してホログラム感光材料22aを露光すればよい。
【0049】
つまり、使用形態が、光源12からの光を基板21を介さずにホログラム光学素子22に入射させる形態であれば、図7のように、基板21に対してホログラム感光材料22aを2光束L1・L2の入射側に位置させて露光すればよい。一方、使用形態が、光源12からの光を基板21を介してホログラム光学素子22に入射させる形態の場合には、ホログラム感光材料22aに対して基板21を2光束L1・L2の入射側に位置させて露光すればよい。
【0050】
次に、ホログラム光学素子22の製造方法の詳細について説明する。図1(a)(b)(c)は、ホログラム光学素子22の製造方法の各具体例を示す説明図であり、それぞれ、露光光学系の主要部と、ホログラム感光材料22aに入射する2光束L1・L2の光路とを示している。なお、これらの図1(a)(b)(c)の相互間では、2光束L1・L2のホログラム感光材料22aへの入射のさせ方(入射位置)が少しずつ異なっているが、その詳細については後述する。
【0051】
本実施形態では、ホログラムエレメント形成工程と基板回転工程とを繰り返すことにより、基板21上に複数のホログラムエレメント51を形成するようにしている。ここで、ホログラムエレメント形成工程とは、基板21の回転軸Bに対して偏心した位置にホログラムエレメント51を形成する工程のことである。なお、ホログラムエレメント51とは、ホログラム光学素子22(ホログラム構成領域32)を構成する一単位を指すが、その形成手法については以下に個別に説明する。一方、基板回転工程とは、回転軸Bを中心にして基板21を所定角度だけ回転させる工程のことである。ちなみに、図1(a)(b)(c)では、回転軸Bを中心に基板21を90度ずつ回転させている。
【0052】
このように、ホログラムエレメント形成工程と基板回転工程とを繰り返す、つまり、ホログラムエレメント51を形成するごとに基板21を例えば90度ずつ回転させることにより、回転軸B周りに複数のホログラムエレメント51が形成され、複数のホログラムエレメント51の集合体からなるホログラム光学素子22(ホログラム構成領域32)が形成されることとなる。
【0053】
なお、図1(a)(b)(c)では、基板21上に4つのホログラムエレメント51が形成されているが、これらを各々区別するときは、その形成順にホログラムエレメント51a・51b・51c・51dと称することとする。
【0054】
ところで、各ホログラムエレメント51は、その回折ピーク波長(回折効率がピークとなるときの波長)が使用時に用いる光源12の強度ピーク波長と略一致するように形成される。つまり、使用時の光源12の強度ピーク波長は上述のように520nmであるので、露光時に用いるレーザ光源41として、例えば520±20nmの範囲内に強度ピークが存在するものを用い、形成される各ホログラムエレメント51の回折ピーク波長と使用時の光源12の強度ピーク波長とを略一致させている。これにより、光源12から出射される光を各ホログラムエレメント51にて効率よく回折させて偏向することができ、光利用効率の高い光源ユニット1(図2参照)や照明装置2(図3参照)を実現することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、各ホログラムエレメント51を形成する際に、レーザ光源41(図7参照)の発光エネルギーを一定とし、シャッタ42(図7参照)のON/OFFでコントロールされる露光時間も一定としている。したがって、ホログラム感光材料22aを2光束L1・L2で露光する際の露光エネルギーは、全てのホログラムエレメント51の形成時で等しいと言える。このような露光の仕方による効果については後述する。
【0056】
次に、ホログラムエレメント51の個々の形成手法について説明する。
(図1(a)の形成手法)
図1(a)の露光光学系では、光束L1の集光点Qが基板21の回転軸B上に位置するように集光レンズ46が配置されている。したがって、光束L1は、回転軸B上の集光点Qから発散してホログラム感光材料22aに入射する。しかも、光束L1は、発散角を張る2光線L1a・L1bの一方(例えば光線L1a)が基板21の回転軸B上を進行し、他方の光線(例えば光線L1b)が他方の光束L2と交わる光束となっている。
【0057】
また、光束L2を反射させるミラー48は、集光点Qの近傍に光束L1と干渉しないように配置されている。しかも、ミラー48は、そこで反射された光束L2が、回転軸Bにかからないように、かつ、回転軸Bに沿って平行光の状態でホログラム感光材料22aに入射するように、回転軸Bに対して傾斜して配置されている。この結果、ミラー48にて反射された光束L2は、ホログラム感光材料22aに対する照射スポットR2が光束L1の露光領域R1と重なる領域を有し、かつ、基板21の回転軸Bに対して偏心する位置に形成されるように、ホログラム感光材料22aに入射する。
【0058】
このような2光束L1・L2で基板21上のホログラム感光材料22aを露光することにより、2光束L1・L2が回転軸Bに対して偏心した位置で互いに干渉する。これにより、上記偏心した位置に干渉縞、すなわち、ホログラムエレメント51を形成することができる。なお、ホログラムエレメント51の形成ごとに基板21を90度ずつ回転させることにより、隣り合う2つのホログラムエレメント51(例えばホログラムエレメント51a・51b)は、その一部が重複しながら形成されることになる。
【0059】
なお、光束L2は、回転軸Bにかからずに回転軸Bに沿ってホログラム感光材料22aに入射するので、基板21の中央、つまり、ホログラム感光材料22aにおける回転軸B付近には一方の光束L1しか入射しない。したがって、ホログラム感光材料22aにおける回転軸B付近には、2光束L1・L2の露光干渉による干渉縞が形成されず、この結果、ホログラム非構成領域31が形成されることになる。つまり、図1(a)の露光光学系によってホログラム感光材料22aを露光すると、ホログラム非構成領域31を回転軸B周りに取り囲むように複数のホログラムエレメント51(ホログラム構成領域32)が基板21上に形成されることになる。
【0060】
(図1(b)の形成手法)
図1(b)の形成手法では、用いる露光光学系は図1(a)と同じであるが、基板21の配置位置が図1(a)とは異なっている。より具体的には、図1(b)では、回転軸Bが光束L1の内部に位置し、かつ、光束L2に接するように、図1(a)の状態から基板21を回転軸Bに垂直な方向に移動させて配置している。したがって、図1(b)の状態では、光束L1は、基板21の回転軸Bの近傍の点から発散し、ホログラム感光材料22aにおいて回転軸Bを含む領域に入射し、光束L2は、回転軸Bと接しながら平行光の状態でホログラム感光材料22aに入射する。
【0061】
よって、このような2光束L1・L2で基板21上のホログラム感光材料22aを露光することによっても、2光束L1・L2が回転軸Bに対して偏心した位置で互いに干渉するので、そのような偏心した位置にホログラムエレメント51を形成することができる。
【0062】
ただし、光束L2は、回転軸Bと接しながらホログラム感光材料22aに入射するので、図1(a)とは異なり、基板21の中央、つまり、ホログラム感光材料22aにおける回転軸B付近にも、2光束L1・L2の露光干渉による干渉縞が形成される。言い換えれば、基板21の中央には、図1(a)で示したようなホログラム非構成領域31は形成されない。したがって、図1(b)の形成手法では、ホログラム構成領域32のみからなるホログラム光学素子22が基板21上に形成されることになる。
【0063】
また、図1(b)では、図1(a)の場合よりも、光束L2が基板21の内側(回転軸B側)に入射するので、2光束L1・L2の干渉領域(各ホログラムエレメント51)も基板21の内側に寄り、全体として図1(a)よりもホログラム光学素子22が小さく形成される。また、各ホログラムエレメント51が基板21の内側に寄るので、隣り合う2つのホログラムエレメント51の重畳領域の面積が図1(a)に比べて増大することとなる。
【0064】
(図1(c)の形成手法)
図1(c)の形成手法では、用いる露光光学系は図1(a)(b)と同じであるが、基板21の配置位置が図1(a)(b)とは異なっている。より具体的には、図1(c)では、回転軸Bが両方の光束L1および光束L2の内部に位置するように、図1(b)の状態からさらに基板21を回転軸Bに垂直な方向に移動させて配置している。したがって、図1(c)の状態においても、光束L1は、基板21の回転軸Bの近傍の点から発散し、ホログラム感光材料22aにおいて回転軸Bを含む領域に入射する一方、光束L2は、回転軸Bを含む領域に平行光の状態でホログラム感光材料22aに入射する。なお、回転軸Bと光束L2の光軸(中心主光線)とは、回転軸Bに垂直な方向にずれて位置している。
【0065】
このような2光束L1・L2で基板21上のホログラム感光材料22aを露光することによっても、2光束L1・L2が回転軸Bに対して偏心した位置で互いに干渉するので、そのような偏心した位置にホログラムエレメント51を形成することができる。
【0066】
なお、図1(c)の手法では、光束L1および光束L2ともにホログラム感光材料22aにおける回転軸Bを含む領域に入射するので、基板21の中央にも干渉縞が形成される。したがって、この手法でも、ホログラム構成領域32のみからなるホログラム光学素子22が基板21上に形成されることになる。
【0067】
また、図1(c)では、図1(b)の場合よりも、光束L2が基板21のさらに内側(回転軸B側)に入射するので、2光束L1・L2の干渉領域(各ホログラムエレメント51)も基板21の内側に寄り、全体として図1(b)よりもさらに小さくホログラム光学素子22が形成される。また、各ホログラムエレメント51が基板21のさらに内側に寄るので、隣り合う2つのホログラムエレメント51の重畳領域の面積が図1(b)に比べて増大することとなる。
【0068】
(4.効果について)
以上のように、本実施形態のホログラム光学素子22の製造方法において、ホログラム感光材料22aを露光する2光束のうちの一方の光束L1は発散光であるので、ホログラム光学素子22の使用時には、光束L1の出射ポイント(集光点Q)に対応する位置(図6の点P)に光源12を配置して、光源12から出射される発散光をホログラム光学素子22にて偏向(回折)させることができる。
【0069】
また、特に光束L1は、基板21の回転軸B上またはその近傍の点から発散してホログラム感光材料22aに入射する発散光であり、光束L2は、その照射スポットR2が光束L1の露光領域R1と重なる領域を有し、かつ、基板21の回転軸Bに対して偏心する位置に形成される光束である。これにより、上述したホログラムエレメント形成工程と基板回転工程とを繰り返して複数のホログラムエレメント51を形成したホログラム光学素子22の使用時には、回転軸Bに対して互いに反対側(例えば点対称)に位置する2つのホログラムエレメント51(例えばホログラムエレメント51a・51c)に同時に入射する発散光を出射するような光源12を用いることができる。つまり、露光時に用いた光束L1よりも確実に大きな発散角の光を出射する光源12を、集光点Qに対応する位置(点P)に配置して使用することができる。
【0070】
その結果、高NA(例えばNA>0.7≒sin45°)のレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子22、すなわち、例えば発散角が90度を越える光を平行光に変換するホログラム光学素子22を実現することができる。そして、そのような発散角の大きい光を偏向させる、光利用効率の高いホログラム光学素子22と光源12とを組み合わせて、明るい光を出射する光源ユニット1(図2参照)や照明装置2(図3参照)を実現することができる。
【0071】
また、図1(a)の手法では、露光時に用いる一方の光束L1は、発散角を張る2光線L1a・L1bの一方(例えば)が基板21の回転軸B上を進行し、他方の光線L1bが他方の光束L2と交わる光束であるので、光束L1の発散角の2倍の角度が、使用時にホログラム光学素子22にて偏向させることができる、入射光(発散光)の最大発散角となる。したがって、高NAのホログラム光学素子22を確実に実現することができる。
【0072】
また、図1(a)(b)(c)および図7に示すように、ホログラム感光材料22aの露光時に用いる2光束L1・L2の光路は固定されている。これにより、2光束の光路を露光ごとに変化させる従来のように製造光学系の構成や光路制御が複雑になることがなく、低コストでホログラム光学素子22を得ることができる。
【0073】
また、図1(a)の手法で形成されるホログラム光学素子22は、回転軸B上の集光点Qに対応する位置(点P)に光源12を配置して使用したときに、光源12からの光を回折、偏向させる高NAのレンズと同等の機能を発揮することから、複数のホログラムエレメント51は、全体として、基板21に垂直な軸(回転軸B)を光軸とするレンズとして機能していると言える。この場合、使用時の光学系(例えば図4の投影光学系4や図5の接眼光学系7)と同軸でホログラム光学素子22を使用することが可能となり、その使用が容易となる。
【0074】
なお、露光時の光束の光路と使用時の光束(光源12からの光)の光路とが異なると、ホログラム光学素子22の回折効率が低下する。しかし、ホログラム光学素子22は、角度選択性にある程度の幅を持っているので、この幅の範囲内では、実際上の問題はほとんどないと言える。そこで、図1(b)(c)の手法でホログラム光学素子22を形成した場合、使用時の光源12の位置を、露光時の集光点Qではなく、基板21の回転軸B上としてもよい。ただし、この場合、光源12からの光をホログラム光学素子22にて平行光に回折させることができなくなるため、図1(b)(c)の手法は、光束に精度が要求されない用途(例えば照明光学系)でのホログラム光学素子22の製造に用いることが望ましい。なお、図1(b)(c)の手法において、露光時の集光点Qと基板21の回転軸Bとを近づけて、ホログラム光学素子22の回折効率の低下を極力抑えるようにしてもよい。
【0075】
なお、隣り合うホログラムエレメント51と重複して露光される領域では、回折効率の低下が生じ、使用時に光利用効率が低下することが懸念される。このような光利用効率の低下を抑える点では、図1(a)(b)(c)のうち、隣り合う2つのホログラムエレメント51の重畳領域の面積が一番少ない図1(a)の手法が最も望ましく、次に重畳領域の面積が小さい図1(b)の手法が望ましい。
【0076】
また、上述したように、露光エネルギーを一定として複数のホログラムエレメント51を形成することにより、基板21の回転軸Bに対して回折効率が回転対称となるホログラム光学素子22を得ることができ、より高精度で高NAのホログラム光学素子22を実現することができる。したがって、ホログラム光学素子22を例えば光源ユニット1や照明装置2の集光レンズとして用いた場合でも、ホログラム光学素子22からより均一な光を出射させることができる。
【0077】
(5.変形例について)
ところで、図8は、図1(a)のホログラムエレメント51の形成手法の変形例を示す説明図である。図8の形成手法は、基板21の回転角度を小さくした点、ホログラム感光材料22aに入射する光束L2の照射スポットR2を楕円にした点以外は、図1(a)と同様である。
【0078】
具体的には、図8の形成手法では、ホログラムエレメント51の形成ごとに基板21を45度ずつ回転させ、8個のホログラムエレメント51を回転軸Bの周りに形成している。この結果、隣り合う2個のホログラムエレメント51の重畳領域の面積が、図1(a)の場合よりも増大している。なお、光束L2の照射スポットR2が仮に円形であったとしても、図8の形成手法によれば、隣り合う2個のホログラムエレメント51の重畳領域の面積は図1(a)の場合よりも増大する。
【0079】
図1(a)および図8より、各ホログラムエレメント51において基板21の回転軸Bから最も離れた点を順に結んでできる図形は、基板1回転あたりに形成するホログラムエレメント51が4つ(基板21の回転角度は90度)の場合、正方形となり、ホログラムエレメント51が8つ(基板21の回転角度は45度)の場合、正八角形となる。このことから、基板21の回転前後で2つのホログラムエレメント51の一部が重複して形成される角度だけ、ホログラムエレメント51の形成ごとに基板21を回転させると、基板1回転あたり形成するホログラムエレメント51の個数が多いほど(基板21の回転角度が小さいほど)、上記図形を円形に近づけることができると言える。これにより、使用時にホログラム光学素子22に入射させる光として断面円形の光を出射する光源12を用いた場合に、入射光をホログラム光学素子22にて効率よく偏向(回折)させることができ、光利用効率を向上させることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、露光時に、ホログラム感光材料22aに入射させる一方の光束L1を発散光とし、他方の光束L2を平行光としているが、光束L2は、発散光であってもよく、また、収束光であってもよい。
【0081】
例えば図9(a)は、ホログラムエレメント51の他の形成手法を示すものであって、露光光学系の主要部と、ホログラム感光材料22aに入射する2光束L1・L2の光路とを示す説明図である。なお、図9(a)の手法は、光束L2をホログラム感光材料22aに発散光の状態で入射させる以外は、図1(a)と全く同様である。つまり、図9(a)では、ミラー48の前段において、図示しない集光レンズにより光束L2を一旦集光し、発散光の状態でミラー48に入射させている。そして、ミラー48にて反射した光束L2を発散光の状態でホログラム感光材料22aに入射させている。
【0082】
このような2光束L1・L2でホログラム感光材料22aを露光し、ホログラム光学素子22を作製することにより、図9(b)に示すように、使用時に、光束L1の集光点Qに対応する点Pに光源12を配置し、光源12からの光(発散光)をホログラム光学素子22に入射させれば、ホログラム光学素子22から、例えば入射光よりも発散角度の小さい発散光を射出させることができる。したがって、図9(a)の手法で作製したホログラム光学素子22は、使用時にそのような光(発散光)が要求される光学系に好適となる。
【0083】
一方、図10(a)は、ホログラムエレメント51のさらに他の形成手法を示すものであって、露光光学系の主要部と、ホログラム感光材料22aに入射する2光束L1・L2の光路とを示す説明図である。なお、図10(a)の手法は、光束L2をホログラム感光材料22aに収束光の状態で入射させる以外は、図1(a)と全く同様である。つまり、図10(a)では、ミラー48の前段において、図示しない集光レンズにより光束L2を収束させ、その状態でミラー48に入射させている。そして、ミラー48にて反射した光束L2を収束光の状態でホログラム感光材料22aに入射させている。なお、ホログラム感光材料22aと上記集光レンズとの光学的な距離(光路を展開したときの距離)は、上記集光レンズの焦点距離よりも短い。
【0084】
このような2光束L1・L2でホログラム感光材料22aを露光し、ホログラム光学素子22を作製することにより、図10(b)に示すように、使用時に、光束L1の集光点Qに対応する点Pに光源12を配置し、光源12からの光(発散光)をホログラム光学素子22に入射させれば、ホログラム光学素子22から収束光を射出させることができる。したがって、図10(a)の手法で作製したホログラム光学素子22は、使用時にそのような光(収束光)が要求される光学系に好適となる。
【0085】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0086】
図11は、本実施形態のホログラム光学素子22の製造方法の具体例を示す説明図であり、露光光学系の主要部と、ホログラム感光材料22aに入射する2光束L1・L2の光路とを示している。本実施形態の製法は、ホログラム感光材料22aの光入射側に遮光部材61を配置してホログラム感光材料22aを露光する以外は、実施の形態1の図8の手法と全く同様である。
【0087】
遮光部材61は、ホログラム感光材料22aにおいて2光束L1・L2で露光される領域のうち、隣り合うホログラムエレメント51と重複して露光される領域に入射する光の少なくとも一部を遮光するマスクである。この遮光部材61は、図11では、平面視で二等辺三角形の形状となっている。
【0088】
本実施形態のように、遮光部材61をホログラム感光材料22aの光入射側の光路中に配置し、各ホログラムエレメント51の形成ごとに、回転軸Bを中心にして基板21を45度ずつ回転させ、遮光部材61を介してホログラム感光材料22aを2光束L1・L2で露光することにより、隣り合うホログラムエレメント51・51間で重複して露光される領域を極力小さくすることができる。重複して露光される領域では、回折効率の低下が生じ、使用時に光利用効率が低下するが、上記の露光の仕方により、そのような不都合を回避することができ、実施の形態1の図8の手法よりも光利用効率の高いホログラム光学素子22を作製することができる。
【0089】
ところで、遮光部材61の平面形状は、上記の二等辺三角形に限定されるわけではない。例えば、遮光部材61は、隣り合うホログラムエレメント51・51が重複しないように、つまり、ホログラム感光材料22aにおいて2光束L1・L2で露光される領域のうち、隣り合うホログラムエレメント51と重複して露光される領域に入射する光の全てを遮光する形状で形成されてもよい。以下、このような遮光部材61について、図12(a)(b)〜図14(a)(b)に基づいて説明する。
【0090】
図12(a)は、遮光部材61の他の形状を模式的に示す平面図である。この遮光部材61は、1回の露光によって形成されるホログラムエレメント51が遮光部材61が無ければ円形であるとしたときに、基板21を90度回転させる前後で形成される2つのホログラムエレメント51の重畳領域全体を遮光できる形状となっている。
【0091】
図12(a)のように遮光部材61の形状を設定した場合、ホログラムエレメント51を形成するごとに基板21を90度ずつ回転させれば、図12(b)に示すように、隣り合うホログラムエレメント51において重複領域が無く、かつ隙間の無い状態で、ホログラムエレメント51を基板21の1回転で4個形成することができる。
【0092】
また、図13(a)および図14(a)は、遮光部材61のさらに他の形状を模式的に示す平面図である。これらの遮光部材61は両方とも、1回の露光によって形成されるホログラムエレメント51が遮光部材61が無ければ破線で示す楕円形であるとしたときに、基板21を45度回転させる前後で形成される2つのホログラムエレメント51の重畳領域全体を遮光できる形状となっている。なお、図14(a)の遮光部材61は、中心角45度の扇形であり、図13(a)の遮光部材61に比べて形状が単純で作りやすく、低コストで得ることができる。
【0093】
図13(a)および図14(a)のように遮光部材61の形状を設定した場合、ホログラムエレメント51を形成するごとに基板21を45度ずつ回転させれば、図13(b)および図14(b)に示すように、隣り合うホログラムエレメント51において重複領域が無く、かつ隙間の無い状態で、ホログラムエレメント51を基板21の1回転で渦巻状(図13(b)参照)または放射状(図14(b)参照)に8個形成することができる。なお、図13(a)および図14(a)のどちらの遮光部材61を用いてホログラム感光材料22aを露光した場合でも、形成される8個のホログラムエレメント51は、全体として、円形となる。
【0094】
このように、隣り合うホログラムエレメント51・51間で重複領域が無く、かつ隙間の無い状態で、複数のホログラムエレメント51を形成することにより、各ホログラムエレメント51(ホログラム光学素子22)での回折効率の低下ひいては使用時の光利用効率の低下を回避できる効果を最大限に得ることができる。
【0095】
また、遮光部材61を用いて露光を行う本実施形態においても、実施の形態1と同様に、露光エネルギーを一定として複数のホログラムエレメント51を形成すれば、基板21の回転方向において回折効率にムラが生じるのを抑える、もしくはそのムラを無くすことができ、さらに高精度なホログラム光学素子22を実現することができる。
【0096】
なお、以上の各実施の形態で説明した構成や手法を適宜組み合わせてホログラム光学素子22ひいては光源ユニット1や照明装置2を構成したり、ホログラム光学素子22を製造することも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の製法により作製されるホログラム光学素子やホログラム基板は、例えば光源ユニットや照明装置に利用可能であり、ひいては投影装置やHMDに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】(a)は、本発明の実施の一形態に係るホログラム光学素子の製造方法の一例であって、ホログラムエレメントの形成手法の一例を示す説明図であり、(b)は、ホログラム光学素子の製造方法の他の例であって、ホログラムエレメントの形成手法の他の例を示す説明図であり、(c)は、ホログラム光学素子の製造方法のさらに他の例であって、ホログラムエレメントの形成手法のさらに他の例を示す説明図である。
【図2】上記ホログラム光学素子を有する光源ユニットの概略の構成を示す断面図である。
【図3】上記ホログラム光学素子を有する照明装置の概略の構成を示す断面図である。
【図4】上記照明装置を有する投影装置の概略の構成を示す断面図である。
【図5】上記照明装置を有するHMDの概略の構成を示す断面図である。
【図6】上記ホログラム光学素子の詳細な構成を示す断面図である。
【図7】上記ホログラム光学素子を製造する際に用いる露光光学系全体の概略の構成を示す説明図である。
【図8】図1(a)のホログラムエレメントの形成手法の変形例を示す説明図である。
【図9】(a)は、ホログラムエレメントの形成手法のさらに他の例を示す説明図であり、(b)は、上記形成手法にてホログラムエレメントが形成されたホログラム光学素子の使用時における入射光および射出光の光路を示す説明図である。
【図10】(a)は、ホログラムエレメントの形成手法のさらに他の例を示す説明図であり、(b)は、上記形成手法にてホログラムエレメントが形成されたホログラム光学素子の使用時における入射光および射出光の光路を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係るホログラム光学素子の製造方法の一例であって、遮光部材を用いてホログラムエレメントを形成する手法の一例を示す説明図である。
【図12】(a)は、上記遮光部材の他の形状を模式的に示す平面図であり、(b)は、上記遮光部材を用いた露光によって形成されるホログラム光学素子の平面図である。
【図13】(a)は、上記遮光部材のさらに他の形状を模式的に示す平面図であり、(b)は、上記遮光部材を用いた露光によって形成されるホログラム光学素子の平面図である。
【図14】(a)は、上記遮光部材のさらに他の形状を模式的に示す平面図であり、(b)は、上記遮光部材を用いた露光によって形成されるホログラム光学素子の平面図である。
【符号の説明】
【0099】
1 光源ユニット
2 照明装置
12 光源
13 支持体
20 ホログラム基板
21 基板
22 ホログラム光学素子
22a ホログラム感光材料
51 ホログラムエレメント
61 遮光部材
B 回転軸
L1 光束
L1a 光線
L1b 光線
L2 光束
R1 露光領域
R2 照射スポット
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積位相型の透過型ホログラム光学素子を基板上に形成するホログラム光学素子の製造方法と、その製造方法によって製造されるホログラム光学素子と、そのホログラム光学素子を有するホログラム基板と、そのホログラム基板を有する光源ユニットと、上記ホログラム基板を有する照明装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ホログラム感光材料に対して局所的な露光を繰り返すことによって全体として1つのホログラム光学素子を作製するホログラム光学素子の製造方法が提案されている。例えば、特許文献1では、ホログラム感光材料を回転させる回転テーブルの回転角、露光面に平行な面内および露光面に垂直な方向における回転テーブルの位置や、露光時に用いる2本の光束の強度、露光面に対する入射角度、2光束の相対角度等を適切に制御することにより、2光束の干渉領域をホログラム感光材料中で相対的に移動させ、ホログラム感光材料中に集合的な干渉縞を形成して全体として所望の光学特性を有するホログラム光学素子を作製している。
【0003】
【特許文献1】特開平5−6134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば体積位相型の透過型ホログラム光学素子は、入射光を回折させて偏向することから、これにレンズとしての機能を持たせることが可能である。例えば、発散光を出射する光源(例えばLED)の前方にホログラム光学素子を配置して1つのユニットを構成することにより、光源から出射される光よりも発散角を小さくしてユニットから出射させることが可能となる。このとき、発散角の大きな光を出射する光源を用いる場合、その光の利用効率を高めてユニットから明るい光を出射させるためには、ホログラム光学素子を高NAのレンズ、つまり、光学的パワーの大きなレンズとして機能させることが必要である。
【0005】
しかし、特許文献1には、高NAのレンズと同等のホログラム光学素子を作製する手法は開示されていない。また、特許文献1に記載の製法は、露光時の2光束をともに収束させて微細な干渉縞を繰り返し形成する手法であるため、その手法で高NAのレンズと同等のホログラム光学素子を作製するとなると、上記した各パラメータの制御が複雑になることが予想される。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、高NAのレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子を容易に実現することができるホログラム光学素子の製造方法と、その製法によって作製されるホログラム光学素子と、そのホログラム光学素子を有するホログラム基板と、そのホログラム基板を有し、発散角の大きな光を出射する光源を用いた場合でも明るい光を出射することが可能な光源ユニットおよび照明装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のホログラム光学素子の製造方法は、体積位相型の透過型ホログラム光学素子を基板上に形成するホログラム光学素子の製造方法であって、基板の回転軸に対して偏心した位置に、上記ホログラム光学素子を構成する一単位となるホログラムエレメントを形成する工程と、上記回転軸を中心にして基板を所定角度だけ回転させる工程とを繰り返すことにより、基板上に複数のホログラムエレメントを形成し、各ホログラムエレメントは、基板上に形成されるホログラム感光材料を2光束で露光することによって形成されており、上記2光束のうちの一方の光束は、基板の回転軸上またはその近傍の点から発散してホログラム感光材料に入射する光束であり、上記2光束のうちの他方の光束は、ホログラム感光材料に対する照射スポットが上記一方の光束の露光領域と重なる領域を有し、かつ、基板の回転軸に対して偏心する位置に形成される光束であることを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、基板の各回転位置ごとにホログラムエレメントを形成することにより、基板上に複数のホログラムエレメントからなる体積位相型の透過型ホログラム光学素子が形成される。各ホログラムエレメントは、基板上のホログラム感光材料を2光束で露光することによって形成される。
【0009】
このとき、上記2光束のうちの一方の光束は発散光であるので、ホログラム光学素子の使用時には、露光時の一方の光束の出射ポイントに対応する位置に発光ダイオード(以下、LEDとも称する)のような一定の放射角度で光を出射する光源を配置して、光源から出射される光(発散光)をホログラム光学素子にて偏向(回折)させることができる。
【0010】
ここで、上記一方の光束は、特に、基板の回転軸上またはその近傍の点から発散してホログラム感光材料に入射する発散光である。また、他方の光束は、ホログラム感光材料に対する照射スポットが一方の光束の露光領域と重なる領域を有し、かつ、基板の回転軸に対して偏心する位置に形成される光束である。なお、他方の光束は、発散光、平行光、収束光のいずれの状態でホログラム感光材料に入射してもよい。
【0011】
このように、1つのホログラムエレメントを形成する際に用いる2光束がそれぞれ上述した光束であるので、基板の回転によって複数のホログラムエレメントを形成し、作製したホログラム光学素子の使用時には、回転軸に対して互いに反対側(例えば点対称)に位置する2つのホログラムエレメントに同時に入射する発散光を出射するような光源を用いることができる。つまり、露光時に用いた一方の光束(発散光)よりも確実に大きな発散角の光を出射する光源を、露光時の一方の光束の出射ポイントに対応する位置に配置して使用することができる。これにより、高NA(例えばNA>0.7)のレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子を(複雑な制御を行うことなく)容易に実現することができる。そして、そのホログラム光学素子と光源とを組み合わせて、明るい光を出射する光源ユニット(光源の支持体と光学素子とが一体化されているもの)や照明装置(光源の支持体と光学素子とが離間しているもの)を実現することができる。
【0012】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、上記一方の光束は、発散角を張る2光線の一方が基板の回転軸上を進行し、他方の光線が他方の光束と交わる光束であってもよい。
【0013】
この場合、露光時に用いた一方の光束(発散光)の発散角の2倍の角度が、使用時にホログラム光学素子(複数のホログラムエレメント)にて偏向させることができる、入射光(発散光)の最大発散角となる。したがって、高NAのホログラム光学素子を確実に実現することができる。
【0014】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、ホログラム感光材料の露光時に用いる2光束の光路は、固定されていることが望ましい。この場合、2光束の光路を露光ごとに変化させる従来のように製造光学系の構成や光路制御が複雑になることがなく、低コストでホログラム光学素子を得ることができる。
【0015】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、基板の回転前後で2つのホログラムエレメントの一部が重複して形成される角度だけ、ホログラムエレメントの形成ごとに基板を回転させるようにしてもよい。
【0016】
基板の回転前後で2つのホログラムエレメントの一部が重複するように基板を回転させて複数のホログラムエレメントを形成すると、各ホログラムエレメントにおいて基板の回転軸から最も離れた点を順に結んでできる図形が、基板1回転あたり形成するホログラムエレメントの個数が多いほど円形に近づく。これにより、使用時にホログラム光学素子に入射させる光として断面円形の光を出射する光源を用いた場合に、その光利用効率を向上させることができる(入射光をホログラム光学素子にて効率よく偏向(回折)させることができる)。
【0017】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、ホログラム感光材料において2光束で露光される領域のうち、隣り合うホログラムエレメントと重複して露光される領域に入射する光の少なくとも一部を遮光する遮光部材をホログラム感光材料の光入射側の光路中に配置し、各ホログラムエレメントの形成ごとに、遮光部材を介してホログラム感光材料を2光束で露光するようにしてもよい。
【0018】
このように遮光部材を介してホログラム感光材料を2光束で露光することにより、隣り合うホログラムエレメントと重複して露光される領域を極力小さくすることができる。重複して露光される領域では、回折効率の低下が生じ、使用時に光利用効率が低下するが、上記の露光の仕方により、そのような不都合を回避することができる。
【0019】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、ホログラム感光材料を2光束で露光する際の露光エネルギーは、全てのホログラムエレメント形成時で等しいことが望ましい。
【0020】
このような露光方法によってホログラム光学素子を製造することにより、基板の回転軸に対して回折効率が回転対称となる。したがって、より高精度で高NAの光学素子としてホログラム光学素子を使用することができるとともに、上記ホログラム光学素子を例えば照明光学系の集光レンズとして用いる場合でも、より均一な光を出射する照明光学系を実現することができる。また、重複露光領域を小さくすべく、遮光部材を用いてホログラム感光材料を露光する際に上記の露光方法を適用すれば、基板の回転方向において回折効率にムラが生じるのを極力抑えることができ、さらに高精度な光学素子を実現することができる。
【0021】
本発明のホログラム光学素子は、上述した本発明の製造方法によって製造されてなることを特徴としている。上記の製法によれば、高NA(例えばNA>0.7)のレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子を容易に実現することができるので、そのホログラム光学素子と光源とを組み合わせて、明るい光を出射する光源ユニットや照明装置を容易に実現することができる。
【0022】
本発明のホログラム光学素子において、複数のホログラムエレメントは全体として、基板に垂直な軸を光軸とするレンズとして機能してもよい。この場合、使用時の光学系(例えば投影光学系や接眼光学系)と同軸でホログラム光学素子を使用することが可能となる。つまり、上記光学系と組み合わせてホログラム光学素子を容易に使用することが可能となる。
【0023】
本発明のホログラム基板は、上述した本発明のホログラム光学素子と、上記ホログラム光学素子が形成される基板とを有していることを特徴としている。この構成によれば、ホログラム基板を例えば光源と組み合わせることで、光源ユニットまたは照明装置を容易に実現することができる。
【0024】
本発明の光源ユニットは、上記した本発明のホログラム基板と、上記ホログラム基板に向けて光を出射する光源と、上記光源を支持する支持体とを有しており、上記ホログラム基板は、上記支持体と一体化して設けられていることを特徴としている。この構成により、明るい光を出射する光源ユニットを実現することができる。
【0025】
本発明の光源ユニットにおいて、上記光源から出射される光の強度ピーク波長は、上記ホログラム基板の各ホログラムエレメントにおける回折ピーク波長と略一致していることが望ましい。この場合、光源から出射される光を各ホログラムエレメントにて効率よく回折させて偏向することができ、光利用効率の高い光源ユニットを実現することができる。
【0026】
本発明の照明装置は、上述した本発明のホログラム基板と、上記ホログラム基板に向けて光を出射する光源と、上記光源を支持する支持体とを有しており、上記ホログラム基板は、上記支持体と離間して設けられていることを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、明るい光を出射する照明装置を実現することができる。また、使用時の形態に応じてホログラム基板と支持体との距離を調整することが可能となる。さらに、光源が発散光を出射する場合には、支持体とホログラム基板との距離を大きくするほど、ホログラム基板に入射する光束径が広がるので、そのような広い光束径の光を偏向させて使用する場合には、本発明の照明装置は非常に有効となる。
【0028】
本発明の照明装置において、上記光源から出射される光の強度ピーク波長は、上記ホログラム基板の各ホログラムエレメントにおける回折ピーク波長と略一致していることが望ましい。この場合、光源から出射される光を各ホログラムエレメントにて効率よく回折させて偏向することができ、光利用効率の高い照明装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高NAのレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子を容易に実現することができる。そして、そのホログラム光学素子と光源とを組み合わせて、明るい光を出射する光源ユニットや照明装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0031】
(1.光源ユニットおよび照明装置について)
図2は、本実施形態に係る光源ユニット1の概略の構成を示す断面図である。この光源ユニット1は、光源モジュール10と、ホログラム基板20とを有しており、光源モジュール10から出射される光がホログラム基板20を介して外部に取り出される構成となっている。
【0032】
光源モジュール10は、筐体11内に光源12を有している。光源12は、ホログラム基板20に向けて光を出射するものであり、例えば強度ピーク波長(光強度がピークとなる中心波長)が520nmの光を出射するLEDで構成されている。光源12は、放射角度が強度半値でも±60度(全角120度)となる広い放射角度特性を有しており、基板13上に形成された金属パターンからなる電極14上に実装されている。このことから、基板13は、電極14を介して光源12を支持する支持体を構成していると言える。また、基板13上には、金属パターンからなる他の電極15が形成されており、光源12と電極15とはAuワイヤ16で接続されている。筐体11内部は、樹脂モールドされている。
【0033】
ホログラム基板20は、例えばガラスやプラスチック材料からなる透明な基板21上にホログラム光学素子22を有して構成されている。このホログラム基板20は、基板21に対してホログラム光学素子22が光源12側となるように、光源モジュール10の表面に粘着層(図示せず)を介して接着され、光源モジュール10の基板13と筐体11を介して一体化されている。この結果、ホログラム基板20は、光源12の前方に配置されることになる。ホログラム光学素子22は、後述する製法で作製される体積位相型の透過型ホログラム光学素子で構成されている。
【0034】
上記の構成において、光源12から出射された光(発散光)は、ホログラム光学素子22にて回折、偏向され、その後、基板21を透過して外部に出射される。これにより、射出角度の小さい良好な配向特性(偏向特性)の光源ユニット1を実現することができる。また、ホログラム光学素子22は、薄型で安価であるので、そのようなホログラム光学素子22を用いることにより、光源ユニット1を小型で安価に実現することができる。さらに、ホログラム光学素子22は、後述する製法によって作製されることにより、高NAのレンズと同等の機能を発揮するので、発散角の大きな光を出射する光源12を用いて、明るい光を出射する光源ユニット1を実現することができる。
【0035】
また、図3は、本実施形態に係る照明装置2の概略の構成を示す断面図である。この照明装置2は、図2の光源ユニット1において、光源モジュール10の筐体11およびその内部の封入樹脂を取り去り、ホログラム基板20を基板13に対して空気層を介して離間して配置したものである。
【0036】
上記構成の照明装置2は、基本的な構成は図2の光源ユニット1と同じであるため、上記した光源ユニット1と同様の効果を得ることができる。それに加え、照明装置2では、ホログラム基板20が基板13に支持されないため、使用時の形態に応じてホログラム基板20と基板13との距離を調整することが可能となり、利便性に優れたものとなる。さらに、光源12が発散光を出射する場合には、基板13とホログラム基板20との距離を大きくするほど、ホログラム基板20に入射する光の光束径が広がるので、そのような広い光束径の光を偏向させて使用する場合には、本実施形態の照明装置2は非常に有効となる。
【0037】
上記構成の光源ユニット1や照明装置2は、投影装置やヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDと略称する)の照明部に適用することが可能である。例えば、図4は、照明装置2を有する投影装置6の概略の構成を示す断面図である。この投影装置6は、照明装置2と、表示素子(例えばLCD)3と、投影光学系4と、スクリーン5とを備えている。この構成では、照明装置2から出射される光は、表示素子3に入射してそこで画像データに応じて変調され、映像光として出射されて投影光学系4を介してスクリーン5に導かれる。これにより、表示素子3にて表示された映像がスクリーン5上に拡大投影される。
【0038】
一方、図5は、照明装置2を有するHMD8の概略の構成を示す断面図である。このHMDは、照明装置2と、表示素子3と、接眼光学系7とを備えている。このHMDでは、照明装置2からの光は、表示素子3に入射してそこで画像データに応じて変調され、映像光として出射されて接眼光学系7を介して光学瞳Eに導かれる。したがって、光学瞳Eの位置では、観察者は、表示素子3に表示された映像の拡大虚像を観察することが可能となる。
【0039】
(2.ホログラム光学素子について)
次に、上記したホログラム光学素子22の詳細な構成について説明する。図6は、ホログラム光学素子22の詳細な構成を示す断面図である。ホログラム光学素子22は、ホログラム非構成領域31と、ホログラム構成領域32とを有している。
【0040】
ホログラム非構成領域31は、入射光を回折、偏向させるホログラムが構成されていない領域である。したがって、ホログラム非構成領域31は、そこに光が入射したときにその光を単に透過させる透過領域として機能する。一方、ホログラム構成領域32は、入射光を回折、偏向させるホログラムが構成されている領域である。より具体的には、ホログラム構成領域32には、光源12を点光源と考えたときの発光点に相当する点Pからの発散光を回折、偏向し、光軸に平行な光束として射出するようなホログラムが形成されている。なお、ホログラム光学素子22の使用時における光軸とは、点Pを通り、ホログラム光学素子22の光入射面22bに対して垂直な軸Aを指すものとする。ホログラム構成領域32は、ホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むように形成されている。
【0041】
ここで、上記のホログラムは、基板21(図2参照)上に保持されたフィルム状のホログラム感光材料22a(図1(a)参照)を、干渉性を有する2光束で露光することにより形成されるものである。つまり、ホログラムは、2光束干渉によって形成される干渉縞で構成される。したがって、ホログラム非構成領域31は、上記干渉縞を有していない領域であり、ホログラム構成領域32は、上記干渉縞を有する領域であるとも言える。
【0042】
また、ホログラム光学素子22を作製する元となるホログラム感光材料22aとしては、フォトポリマー、銀塩材料、重クロム酸ゼラチンなどを用いることができるが、ここでは、ホログラム光学素子22をドライプロセスで容易に製造可能なフォトポリマーを用いている。
【0043】
なお、後述する製法を採用することにより、上述したホログラム非構成領域31を形成せずに、ホログラム構成領域32のみからなるホログラム光学素子22を作製することも可能である。このようなホログラム光学素子22においては、ホログラム光学素子22に入射した光は全て、ホログラム構成領域32にて回折、偏向されて出射されることになる。
【0044】
(3.ホログラム光学素子の製造方法について)
次に、ホログラム光学素子22の製造方法について、まず大まかに説明する。図7は、ホログラム光学素子22を製造する際に用いる露光光学系全体の概略の構成を示す説明図である。この露光光学系は、レーザ光源41と、シャッタ42と、ビームエキスパンダ43と、ビームスプリッタ44と、ミラー45と、集光レンズ46と、ミラー47・48とを有している。
【0045】
レーザ光源41から出射される可干渉性を有するレーザ光は、シャッタ42を通過した後、ビームエキスパンダ43にて光束径を拡大され、平行光のままビームスプリッタ44に入射し、そこで2光束に分離される。このとき、シャッタ42のON/OFFにより、レーザ光の露光時間がコントロールされる。
【0046】
ビームスプリッタ44にて分離された一方の光束L1は、ミラー45にて反射された後、集光レンズ46にて後述するミラー48の近傍の点に一旦集光され、そこから発散光となってホログラム感光材料22aに照射される。一方、ビームスプリッタ44にて分離された他方の光束L2は、ミラー47・48にて順に反射された後、基板21上のホログラム感光材料22aに平行光の状態で照射される。このように、ホログラム感光材料22aに対して同じ側(基板21とは反対側)から2光束L1・L2を照射することにより、ホログラム感光材料22aに干渉縞が形成され(ホログラム構成領域32が形成され)、体積位相型で透過型のホログラム光学素子22が基板21上に作製される。
【0047】
なお、用いるホログラム感光材料22aの特性に応じて後処理が必要である。例えば、ホログラム感光材料22aとしてフォトポリマーを用いた場合には、紫外線照射による定着処理と、ベイク処理とが必要である。また、複数波長に対応するホログラム光学素子22を作製する場合には、複数波長に対応したレーザ光源を用い、多重露光によりホログラム光学素子22を作製するか、それぞれの露光波長で作製した素子を貼り合わせることでホログラム光学素子22を作製すればよい。
【0048】
なお、図7では、基板21に対してホログラム感光材料22aを2光束L1・L2の入射側に位置させているが、これらの位置関係は逆であってもよい。つまり、ホログラム感光材料22aに対して基板21を2光束L1・L2の入射側に位置させ、基板21を介してホログラム感光材料22aを露光するようにしてもよい。要は、使用時の形態に合うように基板21を配置してホログラム感光材料22aを露光すればよい。
【0049】
つまり、使用形態が、光源12からの光を基板21を介さずにホログラム光学素子22に入射させる形態であれば、図7のように、基板21に対してホログラム感光材料22aを2光束L1・L2の入射側に位置させて露光すればよい。一方、使用形態が、光源12からの光を基板21を介してホログラム光学素子22に入射させる形態の場合には、ホログラム感光材料22aに対して基板21を2光束L1・L2の入射側に位置させて露光すればよい。
【0050】
次に、ホログラム光学素子22の製造方法の詳細について説明する。図1(a)(b)(c)は、ホログラム光学素子22の製造方法の各具体例を示す説明図であり、それぞれ、露光光学系の主要部と、ホログラム感光材料22aに入射する2光束L1・L2の光路とを示している。なお、これらの図1(a)(b)(c)の相互間では、2光束L1・L2のホログラム感光材料22aへの入射のさせ方(入射位置)が少しずつ異なっているが、その詳細については後述する。
【0051】
本実施形態では、ホログラムエレメント形成工程と基板回転工程とを繰り返すことにより、基板21上に複数のホログラムエレメント51を形成するようにしている。ここで、ホログラムエレメント形成工程とは、基板21の回転軸Bに対して偏心した位置にホログラムエレメント51を形成する工程のことである。なお、ホログラムエレメント51とは、ホログラム光学素子22(ホログラム構成領域32)を構成する一単位を指すが、その形成手法については以下に個別に説明する。一方、基板回転工程とは、回転軸Bを中心にして基板21を所定角度だけ回転させる工程のことである。ちなみに、図1(a)(b)(c)では、回転軸Bを中心に基板21を90度ずつ回転させている。
【0052】
このように、ホログラムエレメント形成工程と基板回転工程とを繰り返す、つまり、ホログラムエレメント51を形成するごとに基板21を例えば90度ずつ回転させることにより、回転軸B周りに複数のホログラムエレメント51が形成され、複数のホログラムエレメント51の集合体からなるホログラム光学素子22(ホログラム構成領域32)が形成されることとなる。
【0053】
なお、図1(a)(b)(c)では、基板21上に4つのホログラムエレメント51が形成されているが、これらを各々区別するときは、その形成順にホログラムエレメント51a・51b・51c・51dと称することとする。
【0054】
ところで、各ホログラムエレメント51は、その回折ピーク波長(回折効率がピークとなるときの波長)が使用時に用いる光源12の強度ピーク波長と略一致するように形成される。つまり、使用時の光源12の強度ピーク波長は上述のように520nmであるので、露光時に用いるレーザ光源41として、例えば520±20nmの範囲内に強度ピークが存在するものを用い、形成される各ホログラムエレメント51の回折ピーク波長と使用時の光源12の強度ピーク波長とを略一致させている。これにより、光源12から出射される光を各ホログラムエレメント51にて効率よく回折させて偏向することができ、光利用効率の高い光源ユニット1(図2参照)や照明装置2(図3参照)を実現することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、各ホログラムエレメント51を形成する際に、レーザ光源41(図7参照)の発光エネルギーを一定とし、シャッタ42(図7参照)のON/OFFでコントロールされる露光時間も一定としている。したがって、ホログラム感光材料22aを2光束L1・L2で露光する際の露光エネルギーは、全てのホログラムエレメント51の形成時で等しいと言える。このような露光の仕方による効果については後述する。
【0056】
次に、ホログラムエレメント51の個々の形成手法について説明する。
(図1(a)の形成手法)
図1(a)の露光光学系では、光束L1の集光点Qが基板21の回転軸B上に位置するように集光レンズ46が配置されている。したがって、光束L1は、回転軸B上の集光点Qから発散してホログラム感光材料22aに入射する。しかも、光束L1は、発散角を張る2光線L1a・L1bの一方(例えば光線L1a)が基板21の回転軸B上を進行し、他方の光線(例えば光線L1b)が他方の光束L2と交わる光束となっている。
【0057】
また、光束L2を反射させるミラー48は、集光点Qの近傍に光束L1と干渉しないように配置されている。しかも、ミラー48は、そこで反射された光束L2が、回転軸Bにかからないように、かつ、回転軸Bに沿って平行光の状態でホログラム感光材料22aに入射するように、回転軸Bに対して傾斜して配置されている。この結果、ミラー48にて反射された光束L2は、ホログラム感光材料22aに対する照射スポットR2が光束L1の露光領域R1と重なる領域を有し、かつ、基板21の回転軸Bに対して偏心する位置に形成されるように、ホログラム感光材料22aに入射する。
【0058】
このような2光束L1・L2で基板21上のホログラム感光材料22aを露光することにより、2光束L1・L2が回転軸Bに対して偏心した位置で互いに干渉する。これにより、上記偏心した位置に干渉縞、すなわち、ホログラムエレメント51を形成することができる。なお、ホログラムエレメント51の形成ごとに基板21を90度ずつ回転させることにより、隣り合う2つのホログラムエレメント51(例えばホログラムエレメント51a・51b)は、その一部が重複しながら形成されることになる。
【0059】
なお、光束L2は、回転軸Bにかからずに回転軸Bに沿ってホログラム感光材料22aに入射するので、基板21の中央、つまり、ホログラム感光材料22aにおける回転軸B付近には一方の光束L1しか入射しない。したがって、ホログラム感光材料22aにおける回転軸B付近には、2光束L1・L2の露光干渉による干渉縞が形成されず、この結果、ホログラム非構成領域31が形成されることになる。つまり、図1(a)の露光光学系によってホログラム感光材料22aを露光すると、ホログラム非構成領域31を回転軸B周りに取り囲むように複数のホログラムエレメント51(ホログラム構成領域32)が基板21上に形成されることになる。
【0060】
(図1(b)の形成手法)
図1(b)の形成手法では、用いる露光光学系は図1(a)と同じであるが、基板21の配置位置が図1(a)とは異なっている。より具体的には、図1(b)では、回転軸Bが光束L1の内部に位置し、かつ、光束L2に接するように、図1(a)の状態から基板21を回転軸Bに垂直な方向に移動させて配置している。したがって、図1(b)の状態では、光束L1は、基板21の回転軸Bの近傍の点から発散し、ホログラム感光材料22aにおいて回転軸Bを含む領域に入射し、光束L2は、回転軸Bと接しながら平行光の状態でホログラム感光材料22aに入射する。
【0061】
よって、このような2光束L1・L2で基板21上のホログラム感光材料22aを露光することによっても、2光束L1・L2が回転軸Bに対して偏心した位置で互いに干渉するので、そのような偏心した位置にホログラムエレメント51を形成することができる。
【0062】
ただし、光束L2は、回転軸Bと接しながらホログラム感光材料22aに入射するので、図1(a)とは異なり、基板21の中央、つまり、ホログラム感光材料22aにおける回転軸B付近にも、2光束L1・L2の露光干渉による干渉縞が形成される。言い換えれば、基板21の中央には、図1(a)で示したようなホログラム非構成領域31は形成されない。したがって、図1(b)の形成手法では、ホログラム構成領域32のみからなるホログラム光学素子22が基板21上に形成されることになる。
【0063】
また、図1(b)では、図1(a)の場合よりも、光束L2が基板21の内側(回転軸B側)に入射するので、2光束L1・L2の干渉領域(各ホログラムエレメント51)も基板21の内側に寄り、全体として図1(a)よりもホログラム光学素子22が小さく形成される。また、各ホログラムエレメント51が基板21の内側に寄るので、隣り合う2つのホログラムエレメント51の重畳領域の面積が図1(a)に比べて増大することとなる。
【0064】
(図1(c)の形成手法)
図1(c)の形成手法では、用いる露光光学系は図1(a)(b)と同じであるが、基板21の配置位置が図1(a)(b)とは異なっている。より具体的には、図1(c)では、回転軸Bが両方の光束L1および光束L2の内部に位置するように、図1(b)の状態からさらに基板21を回転軸Bに垂直な方向に移動させて配置している。したがって、図1(c)の状態においても、光束L1は、基板21の回転軸Bの近傍の点から発散し、ホログラム感光材料22aにおいて回転軸Bを含む領域に入射する一方、光束L2は、回転軸Bを含む領域に平行光の状態でホログラム感光材料22aに入射する。なお、回転軸Bと光束L2の光軸(中心主光線)とは、回転軸Bに垂直な方向にずれて位置している。
【0065】
このような2光束L1・L2で基板21上のホログラム感光材料22aを露光することによっても、2光束L1・L2が回転軸Bに対して偏心した位置で互いに干渉するので、そのような偏心した位置にホログラムエレメント51を形成することができる。
【0066】
なお、図1(c)の手法では、光束L1および光束L2ともにホログラム感光材料22aにおける回転軸Bを含む領域に入射するので、基板21の中央にも干渉縞が形成される。したがって、この手法でも、ホログラム構成領域32のみからなるホログラム光学素子22が基板21上に形成されることになる。
【0067】
また、図1(c)では、図1(b)の場合よりも、光束L2が基板21のさらに内側(回転軸B側)に入射するので、2光束L1・L2の干渉領域(各ホログラムエレメント51)も基板21の内側に寄り、全体として図1(b)よりもさらに小さくホログラム光学素子22が形成される。また、各ホログラムエレメント51が基板21のさらに内側に寄るので、隣り合う2つのホログラムエレメント51の重畳領域の面積が図1(b)に比べて増大することとなる。
【0068】
(4.効果について)
以上のように、本実施形態のホログラム光学素子22の製造方法において、ホログラム感光材料22aを露光する2光束のうちの一方の光束L1は発散光であるので、ホログラム光学素子22の使用時には、光束L1の出射ポイント(集光点Q)に対応する位置(図6の点P)に光源12を配置して、光源12から出射される発散光をホログラム光学素子22にて偏向(回折)させることができる。
【0069】
また、特に光束L1は、基板21の回転軸B上またはその近傍の点から発散してホログラム感光材料22aに入射する発散光であり、光束L2は、その照射スポットR2が光束L1の露光領域R1と重なる領域を有し、かつ、基板21の回転軸Bに対して偏心する位置に形成される光束である。これにより、上述したホログラムエレメント形成工程と基板回転工程とを繰り返して複数のホログラムエレメント51を形成したホログラム光学素子22の使用時には、回転軸Bに対して互いに反対側(例えば点対称)に位置する2つのホログラムエレメント51(例えばホログラムエレメント51a・51c)に同時に入射する発散光を出射するような光源12を用いることができる。つまり、露光時に用いた光束L1よりも確実に大きな発散角の光を出射する光源12を、集光点Qに対応する位置(点P)に配置して使用することができる。
【0070】
その結果、高NA(例えばNA>0.7≒sin45°)のレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子22、すなわち、例えば発散角が90度を越える光を平行光に変換するホログラム光学素子22を実現することができる。そして、そのような発散角の大きい光を偏向させる、光利用効率の高いホログラム光学素子22と光源12とを組み合わせて、明るい光を出射する光源ユニット1(図2参照)や照明装置2(図3参照)を実現することができる。
【0071】
また、図1(a)の手法では、露光時に用いる一方の光束L1は、発散角を張る2光線L1a・L1bの一方(例えば)が基板21の回転軸B上を進行し、他方の光線L1bが他方の光束L2と交わる光束であるので、光束L1の発散角の2倍の角度が、使用時にホログラム光学素子22にて偏向させることができる、入射光(発散光)の最大発散角となる。したがって、高NAのホログラム光学素子22を確実に実現することができる。
【0072】
また、図1(a)(b)(c)および図7に示すように、ホログラム感光材料22aの露光時に用いる2光束L1・L2の光路は固定されている。これにより、2光束の光路を露光ごとに変化させる従来のように製造光学系の構成や光路制御が複雑になることがなく、低コストでホログラム光学素子22を得ることができる。
【0073】
また、図1(a)の手法で形成されるホログラム光学素子22は、回転軸B上の集光点Qに対応する位置(点P)に光源12を配置して使用したときに、光源12からの光を回折、偏向させる高NAのレンズと同等の機能を発揮することから、複数のホログラムエレメント51は、全体として、基板21に垂直な軸(回転軸B)を光軸とするレンズとして機能していると言える。この場合、使用時の光学系(例えば図4の投影光学系4や図5の接眼光学系7)と同軸でホログラム光学素子22を使用することが可能となり、その使用が容易となる。
【0074】
なお、露光時の光束の光路と使用時の光束(光源12からの光)の光路とが異なると、ホログラム光学素子22の回折効率が低下する。しかし、ホログラム光学素子22は、角度選択性にある程度の幅を持っているので、この幅の範囲内では、実際上の問題はほとんどないと言える。そこで、図1(b)(c)の手法でホログラム光学素子22を形成した場合、使用時の光源12の位置を、露光時の集光点Qではなく、基板21の回転軸B上としてもよい。ただし、この場合、光源12からの光をホログラム光学素子22にて平行光に回折させることができなくなるため、図1(b)(c)の手法は、光束に精度が要求されない用途(例えば照明光学系)でのホログラム光学素子22の製造に用いることが望ましい。なお、図1(b)(c)の手法において、露光時の集光点Qと基板21の回転軸Bとを近づけて、ホログラム光学素子22の回折効率の低下を極力抑えるようにしてもよい。
【0075】
なお、隣り合うホログラムエレメント51と重複して露光される領域では、回折効率の低下が生じ、使用時に光利用効率が低下することが懸念される。このような光利用効率の低下を抑える点では、図1(a)(b)(c)のうち、隣り合う2つのホログラムエレメント51の重畳領域の面積が一番少ない図1(a)の手法が最も望ましく、次に重畳領域の面積が小さい図1(b)の手法が望ましい。
【0076】
また、上述したように、露光エネルギーを一定として複数のホログラムエレメント51を形成することにより、基板21の回転軸Bに対して回折効率が回転対称となるホログラム光学素子22を得ることができ、より高精度で高NAのホログラム光学素子22を実現することができる。したがって、ホログラム光学素子22を例えば光源ユニット1や照明装置2の集光レンズとして用いた場合でも、ホログラム光学素子22からより均一な光を出射させることができる。
【0077】
(5.変形例について)
ところで、図8は、図1(a)のホログラムエレメント51の形成手法の変形例を示す説明図である。図8の形成手法は、基板21の回転角度を小さくした点、ホログラム感光材料22aに入射する光束L2の照射スポットR2を楕円にした点以外は、図1(a)と同様である。
【0078】
具体的には、図8の形成手法では、ホログラムエレメント51の形成ごとに基板21を45度ずつ回転させ、8個のホログラムエレメント51を回転軸Bの周りに形成している。この結果、隣り合う2個のホログラムエレメント51の重畳領域の面積が、図1(a)の場合よりも増大している。なお、光束L2の照射スポットR2が仮に円形であったとしても、図8の形成手法によれば、隣り合う2個のホログラムエレメント51の重畳領域の面積は図1(a)の場合よりも増大する。
【0079】
図1(a)および図8より、各ホログラムエレメント51において基板21の回転軸Bから最も離れた点を順に結んでできる図形は、基板1回転あたりに形成するホログラムエレメント51が4つ(基板21の回転角度は90度)の場合、正方形となり、ホログラムエレメント51が8つ(基板21の回転角度は45度)の場合、正八角形となる。このことから、基板21の回転前後で2つのホログラムエレメント51の一部が重複して形成される角度だけ、ホログラムエレメント51の形成ごとに基板21を回転させると、基板1回転あたり形成するホログラムエレメント51の個数が多いほど(基板21の回転角度が小さいほど)、上記図形を円形に近づけることができると言える。これにより、使用時にホログラム光学素子22に入射させる光として断面円形の光を出射する光源12を用いた場合に、入射光をホログラム光学素子22にて効率よく偏向(回折)させることができ、光利用効率を向上させることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、露光時に、ホログラム感光材料22aに入射させる一方の光束L1を発散光とし、他方の光束L2を平行光としているが、光束L2は、発散光であってもよく、また、収束光であってもよい。
【0081】
例えば図9(a)は、ホログラムエレメント51の他の形成手法を示すものであって、露光光学系の主要部と、ホログラム感光材料22aに入射する2光束L1・L2の光路とを示す説明図である。なお、図9(a)の手法は、光束L2をホログラム感光材料22aに発散光の状態で入射させる以外は、図1(a)と全く同様である。つまり、図9(a)では、ミラー48の前段において、図示しない集光レンズにより光束L2を一旦集光し、発散光の状態でミラー48に入射させている。そして、ミラー48にて反射した光束L2を発散光の状態でホログラム感光材料22aに入射させている。
【0082】
このような2光束L1・L2でホログラム感光材料22aを露光し、ホログラム光学素子22を作製することにより、図9(b)に示すように、使用時に、光束L1の集光点Qに対応する点Pに光源12を配置し、光源12からの光(発散光)をホログラム光学素子22に入射させれば、ホログラム光学素子22から、例えば入射光よりも発散角度の小さい発散光を射出させることができる。したがって、図9(a)の手法で作製したホログラム光学素子22は、使用時にそのような光(発散光)が要求される光学系に好適となる。
【0083】
一方、図10(a)は、ホログラムエレメント51のさらに他の形成手法を示すものであって、露光光学系の主要部と、ホログラム感光材料22aに入射する2光束L1・L2の光路とを示す説明図である。なお、図10(a)の手法は、光束L2をホログラム感光材料22aに収束光の状態で入射させる以外は、図1(a)と全く同様である。つまり、図10(a)では、ミラー48の前段において、図示しない集光レンズにより光束L2を収束させ、その状態でミラー48に入射させている。そして、ミラー48にて反射した光束L2を収束光の状態でホログラム感光材料22aに入射させている。なお、ホログラム感光材料22aと上記集光レンズとの光学的な距離(光路を展開したときの距離)は、上記集光レンズの焦点距離よりも短い。
【0084】
このような2光束L1・L2でホログラム感光材料22aを露光し、ホログラム光学素子22を作製することにより、図10(b)に示すように、使用時に、光束L1の集光点Qに対応する点Pに光源12を配置し、光源12からの光(発散光)をホログラム光学素子22に入射させれば、ホログラム光学素子22から収束光を射出させることができる。したがって、図10(a)の手法で作製したホログラム光学素子22は、使用時にそのような光(収束光)が要求される光学系に好適となる。
【0085】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
【0086】
図11は、本実施形態のホログラム光学素子22の製造方法の具体例を示す説明図であり、露光光学系の主要部と、ホログラム感光材料22aに入射する2光束L1・L2の光路とを示している。本実施形態の製法は、ホログラム感光材料22aの光入射側に遮光部材61を配置してホログラム感光材料22aを露光する以外は、実施の形態1の図8の手法と全く同様である。
【0087】
遮光部材61は、ホログラム感光材料22aにおいて2光束L1・L2で露光される領域のうち、隣り合うホログラムエレメント51と重複して露光される領域に入射する光の少なくとも一部を遮光するマスクである。この遮光部材61は、図11では、平面視で二等辺三角形の形状となっている。
【0088】
本実施形態のように、遮光部材61をホログラム感光材料22aの光入射側の光路中に配置し、各ホログラムエレメント51の形成ごとに、回転軸Bを中心にして基板21を45度ずつ回転させ、遮光部材61を介してホログラム感光材料22aを2光束L1・L2で露光することにより、隣り合うホログラムエレメント51・51間で重複して露光される領域を極力小さくすることができる。重複して露光される領域では、回折効率の低下が生じ、使用時に光利用効率が低下するが、上記の露光の仕方により、そのような不都合を回避することができ、実施の形態1の図8の手法よりも光利用効率の高いホログラム光学素子22を作製することができる。
【0089】
ところで、遮光部材61の平面形状は、上記の二等辺三角形に限定されるわけではない。例えば、遮光部材61は、隣り合うホログラムエレメント51・51が重複しないように、つまり、ホログラム感光材料22aにおいて2光束L1・L2で露光される領域のうち、隣り合うホログラムエレメント51と重複して露光される領域に入射する光の全てを遮光する形状で形成されてもよい。以下、このような遮光部材61について、図12(a)(b)〜図14(a)(b)に基づいて説明する。
【0090】
図12(a)は、遮光部材61の他の形状を模式的に示す平面図である。この遮光部材61は、1回の露光によって形成されるホログラムエレメント51が遮光部材61が無ければ円形であるとしたときに、基板21を90度回転させる前後で形成される2つのホログラムエレメント51の重畳領域全体を遮光できる形状となっている。
【0091】
図12(a)のように遮光部材61の形状を設定した場合、ホログラムエレメント51を形成するごとに基板21を90度ずつ回転させれば、図12(b)に示すように、隣り合うホログラムエレメント51において重複領域が無く、かつ隙間の無い状態で、ホログラムエレメント51を基板21の1回転で4個形成することができる。
【0092】
また、図13(a)および図14(a)は、遮光部材61のさらに他の形状を模式的に示す平面図である。これらの遮光部材61は両方とも、1回の露光によって形成されるホログラムエレメント51が遮光部材61が無ければ破線で示す楕円形であるとしたときに、基板21を45度回転させる前後で形成される2つのホログラムエレメント51の重畳領域全体を遮光できる形状となっている。なお、図14(a)の遮光部材61は、中心角45度の扇形であり、図13(a)の遮光部材61に比べて形状が単純で作りやすく、低コストで得ることができる。
【0093】
図13(a)および図14(a)のように遮光部材61の形状を設定した場合、ホログラムエレメント51を形成するごとに基板21を45度ずつ回転させれば、図13(b)および図14(b)に示すように、隣り合うホログラムエレメント51において重複領域が無く、かつ隙間の無い状態で、ホログラムエレメント51を基板21の1回転で渦巻状(図13(b)参照)または放射状(図14(b)参照)に8個形成することができる。なお、図13(a)および図14(a)のどちらの遮光部材61を用いてホログラム感光材料22aを露光した場合でも、形成される8個のホログラムエレメント51は、全体として、円形となる。
【0094】
このように、隣り合うホログラムエレメント51・51間で重複領域が無く、かつ隙間の無い状態で、複数のホログラムエレメント51を形成することにより、各ホログラムエレメント51(ホログラム光学素子22)での回折効率の低下ひいては使用時の光利用効率の低下を回避できる効果を最大限に得ることができる。
【0095】
また、遮光部材61を用いて露光を行う本実施形態においても、実施の形態1と同様に、露光エネルギーを一定として複数のホログラムエレメント51を形成すれば、基板21の回転方向において回折効率にムラが生じるのを抑える、もしくはそのムラを無くすことができ、さらに高精度なホログラム光学素子22を実現することができる。
【0096】
なお、以上の各実施の形態で説明した構成や手法を適宜組み合わせてホログラム光学素子22ひいては光源ユニット1や照明装置2を構成したり、ホログラム光学素子22を製造することも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の製法により作製されるホログラム光学素子やホログラム基板は、例えば光源ユニットや照明装置に利用可能であり、ひいては投影装置やHMDに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】(a)は、本発明の実施の一形態に係るホログラム光学素子の製造方法の一例であって、ホログラムエレメントの形成手法の一例を示す説明図であり、(b)は、ホログラム光学素子の製造方法の他の例であって、ホログラムエレメントの形成手法の他の例を示す説明図であり、(c)は、ホログラム光学素子の製造方法のさらに他の例であって、ホログラムエレメントの形成手法のさらに他の例を示す説明図である。
【図2】上記ホログラム光学素子を有する光源ユニットの概略の構成を示す断面図である。
【図3】上記ホログラム光学素子を有する照明装置の概略の構成を示す断面図である。
【図4】上記照明装置を有する投影装置の概略の構成を示す断面図である。
【図5】上記照明装置を有するHMDの概略の構成を示す断面図である。
【図6】上記ホログラム光学素子の詳細な構成を示す断面図である。
【図7】上記ホログラム光学素子を製造する際に用いる露光光学系全体の概略の構成を示す説明図である。
【図8】図1(a)のホログラムエレメントの形成手法の変形例を示す説明図である。
【図9】(a)は、ホログラムエレメントの形成手法のさらに他の例を示す説明図であり、(b)は、上記形成手法にてホログラムエレメントが形成されたホログラム光学素子の使用時における入射光および射出光の光路を示す説明図である。
【図10】(a)は、ホログラムエレメントの形成手法のさらに他の例を示す説明図であり、(b)は、上記形成手法にてホログラムエレメントが形成されたホログラム光学素子の使用時における入射光および射出光の光路を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係るホログラム光学素子の製造方法の一例であって、遮光部材を用いてホログラムエレメントを形成する手法の一例を示す説明図である。
【図12】(a)は、上記遮光部材の他の形状を模式的に示す平面図であり、(b)は、上記遮光部材を用いた露光によって形成されるホログラム光学素子の平面図である。
【図13】(a)は、上記遮光部材のさらに他の形状を模式的に示す平面図であり、(b)は、上記遮光部材を用いた露光によって形成されるホログラム光学素子の平面図である。
【図14】(a)は、上記遮光部材のさらに他の形状を模式的に示す平面図であり、(b)は、上記遮光部材を用いた露光によって形成されるホログラム光学素子の平面図である。
【符号の説明】
【0099】
1 光源ユニット
2 照明装置
12 光源
13 支持体
20 ホログラム基板
21 基板
22 ホログラム光学素子
22a ホログラム感光材料
51 ホログラムエレメント
61 遮光部材
B 回転軸
L1 光束
L1a 光線
L1b 光線
L2 光束
R1 露光領域
R2 照射スポット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積位相型の透過型ホログラム光学素子を基板上に形成するホログラム光学素子の製造方法であって、
基板の回転軸に対して偏心した位置に、上記ホログラム光学素子を構成する一単位となるホログラムエレメントを形成する工程と、上記回転軸を中心にして基板を所定角度だけ回転させる工程とを繰り返すことにより、基板上に複数のホログラムエレメントを形成し、
各ホログラムエレメントは、基板上に形成されるホログラム感光材料を2光束で露光することによって形成されており、
上記2光束のうちの一方の光束は、基板の回転軸上またはその近傍の点から発散してホログラム感光材料に入射する光束であり、
上記2光束のうちの他方の光束は、ホログラム感光材料に対する照射スポットが上記一方の光束の露光領域と重なる領域を有し、かつ、基板の回転軸に対して偏心する位置に形成される光束であることを特徴とするホログラム光学素子の製造方法。
【請求項2】
上記一方の光束は、発散角を張る2光線の一方が基板の回転軸上を進行し、他方の光線が他方の光束と交わる光束であることを特徴とする請求項1に記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項3】
ホログラム感光材料の露光時に用いる2光束の光路は、固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項4】
基板の回転前後で2つのホログラムエレメントの一部が重複して形成される角度だけ、ホログラムエレメントの形成ごとに基板を回転させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項5】
ホログラム感光材料において2光束で露光される領域のうち、隣り合うホログラムエレメントと重複して露光される領域に入射する光の少なくとも一部を遮光する遮光部材をホログラム感光材料の光入射側の光路中に配置し、各ホログラムエレメントの形成ごとに、遮光部材を介してホログラム感光材料を2光束で露光することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項6】
ホログラム感光材料を2光束で露光する際の露光エネルギーは、全てのホログラムエレメント形成時で等しいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の製造方法によって製造されてなることを特徴とするホログラム光学素子。
【請求項8】
複数のホログラムエレメントは全体として、基板に垂直な軸を光軸とするレンズとして機能することを特徴とする請求項7に記載のホログラム光学素子。
【請求項9】
請求項7または8に記載のホログラム光学素子と、
上記ホログラム光学素子が形成される基板とを有していることを特徴とするホログラム基板。
【請求項10】
請求項9に記載のホログラム基板と、
上記ホログラム基板に向けて光を出射する光源と、
上記光源を支持する支持体とを有しており、
上記ホログラム基板は、上記支持体と一体化して設けられていることを特徴とする光源ユニット。
【請求項11】
上記光源から出射される光の強度ピーク波長は、上記ホログラム基板の各ホログラムエレメントにおける回折ピーク波長と略一致していることを特徴とする請求項10に記載の光源ユニット。
【請求項12】
請求項9に記載のホログラム基板と、
上記ホログラム基板に向けて光を出射する光源と、
上記光源を支持する支持体とを有しており、
上記ホログラム基板は、上記支持体と離間して設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項13】
上記光源から出射される光の強度ピーク波長は、上記ホログラム基板の各ホログラムエレメントにおける回折ピーク波長と略一致していることを特徴とする請求項12に記載の照明装置。
【請求項1】
体積位相型の透過型ホログラム光学素子を基板上に形成するホログラム光学素子の製造方法であって、
基板の回転軸に対して偏心した位置に、上記ホログラム光学素子を構成する一単位となるホログラムエレメントを形成する工程と、上記回転軸を中心にして基板を所定角度だけ回転させる工程とを繰り返すことにより、基板上に複数のホログラムエレメントを形成し、
各ホログラムエレメントは、基板上に形成されるホログラム感光材料を2光束で露光することによって形成されており、
上記2光束のうちの一方の光束は、基板の回転軸上またはその近傍の点から発散してホログラム感光材料に入射する光束であり、
上記2光束のうちの他方の光束は、ホログラム感光材料に対する照射スポットが上記一方の光束の露光領域と重なる領域を有し、かつ、基板の回転軸に対して偏心する位置に形成される光束であることを特徴とするホログラム光学素子の製造方法。
【請求項2】
上記一方の光束は、発散角を張る2光線の一方が基板の回転軸上を進行し、他方の光線が他方の光束と交わる光束であることを特徴とする請求項1に記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項3】
ホログラム感光材料の露光時に用いる2光束の光路は、固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項4】
基板の回転前後で2つのホログラムエレメントの一部が重複して形成される角度だけ、ホログラムエレメントの形成ごとに基板を回転させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項5】
ホログラム感光材料において2光束で露光される領域のうち、隣り合うホログラムエレメントと重複して露光される領域に入射する光の少なくとも一部を遮光する遮光部材をホログラム感光材料の光入射側の光路中に配置し、各ホログラムエレメントの形成ごとに、遮光部材を介してホログラム感光材料を2光束で露光することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項6】
ホログラム感光材料を2光束で露光する際の露光エネルギーは、全てのホログラムエレメント形成時で等しいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の製造方法によって製造されてなることを特徴とするホログラム光学素子。
【請求項8】
複数のホログラムエレメントは全体として、基板に垂直な軸を光軸とするレンズとして機能することを特徴とする請求項7に記載のホログラム光学素子。
【請求項9】
請求項7または8に記載のホログラム光学素子と、
上記ホログラム光学素子が形成される基板とを有していることを特徴とするホログラム基板。
【請求項10】
請求項9に記載のホログラム基板と、
上記ホログラム基板に向けて光を出射する光源と、
上記光源を支持する支持体とを有しており、
上記ホログラム基板は、上記支持体と一体化して設けられていることを特徴とする光源ユニット。
【請求項11】
上記光源から出射される光の強度ピーク波長は、上記ホログラム基板の各ホログラムエレメントにおける回折ピーク波長と略一致していることを特徴とする請求項10に記載の光源ユニット。
【請求項12】
請求項9に記載のホログラム基板と、
上記ホログラム基板に向けて光を出射する光源と、
上記光源を支持する支持体とを有しており、
上記ホログラム基板は、上記支持体と離間して設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項13】
上記光源から出射される光の強度ピーク波長は、上記ホログラム基板の各ホログラムエレメントにおける回折ピーク波長と略一致していることを特徴とする請求項12に記載の照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−72148(P2010−72148A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237573(P2008−237573)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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