説明

ホログラム箔接着用組成物、ホログラム箔接着製品及びキット

【課題】ホログラム箔を、ガラス等の接着に困難な素材に対しても、強固に接着し得るホログラム箔接着用組成物を提供すること。
【解決手段】樹脂を主成分としたベース基材、及び、接着成分を混合して得られたホログラム箔接着用の組成物であって、前記接着成分が、シランカップリング剤、好ましくは、γグリシドキシプロリルトリメトキシシランであり、前記ベース基材(g)/前記接着成分(ml)が、(20/0.02)〜(20/0.06)(g/ml)の範囲にある組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム箔接着用組成物、ホログラム箔接着製品及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホログラム箔は、再生が困難であるため、偽造防止性に優れ、又、その意匠性の高いことから、パッケージ、ラベル、ステーショナリー、ICカード、磁気カード、おもちゃ、雑貨、電気機器又は携帯電話等に利用されている。
【0003】
しかし、ホログラム箔は、通常の接着剤で接着しても、充分な接着力を得ることができず、剥離してしまう。特に、ガラスに接着するのが困難であり、その解決方法は、未だ見いだされていない。
【0004】
ホログラム箔接着技術として、特許文献1には、専用の貼り付け機により、ICカードにホログラム箔を加熱加圧し、更に、その表面一体に、紫外線硬化樹脂層を設け、ホログラム箔の密着接合性を強固にするホログラム箔の添付方法が記載されている。しかし、この方法では、専用の貼り付け機を必要とし、更に、表面が平坦でないものに接着する際に、加圧の圧力が分散し、均一な接着を行なうことができない。しかも、ホログラム箔上に、紫外線硬化樹脂層を設ける必要がある。
【0005】
別の従来技術として、特許文献2には、プリブレグ、金属張積層板、樹脂金属箔等に用いられる樹脂組成物が記載されている。特許文献2に記載された樹脂組成物には、熱硬化性樹脂、フィラー、及び、エポキシシランカップリング剤が含有されている。しかし、エポキシシランカップリング剤は、無機フィラーの表面をコーティングして吸水率を抑えるために使用されている湿度防止剤であって、接着成分ではない。又、接着の困難なガラスに対して接着できる旨の記載はない。
【特許文献1】特開2003−132319号公報
【特許文献2】特開2008−13618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ホログラム箔を、ガラス等の接着困難な素材に対して強固に接着し得るホログラム箔接着用組成物を提供することである。
【0007】
本発明のもう一つの課題は、強固な接着力でホログラム箔を接着した製品、特にガラス製品を提供することである。
【0008】
本発明の更にもう一つの課題は、ホログラム箔接着用組成物を構成する成分について、安定に保存でき、しかも、使用に際しは、各自が任意にホログラム箔接着用組成物を調整し得るホログラム箔接着用組成物のキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述する課題を解決するため、本発明に係る組成物は、樹脂を主成分としたベース基材と接着成分とを混合して得られたホログラム箔接着用の組成物であって、前記接着成分が、シランカップリング剤である。
【0010】
本発明の組成物によれば、従来、接着が難しいとされていたホログラム箔の接着を実現することができる。しかも、本発明に係る組成物は、耐水性を備えるため、水周りで使用されることが多い化粧品のガラス瓶等の製品に、例えば、装飾用として、ホログラム箔を接着する場合にも適している。
【0011】
本発明に係るホログラム箔は、ホログラム箔、透明ホログラム箔、ホログラム箔フィルム等を含む。本発明に係るシランカップリング剤は、その構造中に、エポキシ基、及び、シラン(Si)を含有するものであり、好ましくは、下記(i)、(ii)から選択される。
【0012】
(i)β−(3,4 エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン


【0013】
(ii)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン


【0014】
特に好ましくは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、その作用効果については、データをもって後述する。
【0015】
本発明において、ベース基材(g)/接着成分(ml)は、好ましくは、(20/0.02)〜20/0.06(g/ml)の範囲にある。ベース基材(g)/接着成分(ml)が、(20/0.02)(g/ml)より大きい範囲では、要求する適度な接着力を得ることができない。(20/0.06)(g/ml)より小さい範囲では、粘度が高くなりすぎ、ホログラム箔接着用として、ガラスビンなどにスクリーン印刷する際に均一に塗布することができない。この点については、データをもって後述する。
【0016】
本発明に係る組成物は、好ましくは、前記ホログラム箔をガラス製品に接着されるために用いられる。本発明において、接着とは、製品の通常使用できるとされる期間内に剥離することがない性質を指す。
【0017】
本発明において、接着成分とは、それ単独で接着効果を有するものを指し、接着促進剤等の補助的な接着剤は含まない。
【0018】
本発明に係るベース基材は、市販されている樹脂インク等から選択することができる。好ましくは、No.1000(株式会社フェロ・ジャパン製)、1000 710ブラックインキ(株式会社セイコーアドバンス)、1000NC510アメリカンレッド(株式会社セイコーアドバンス)、1000 120ホワイトインキ(株式会社セイコーアドバンス)、を使用することができる。
【0019】
本発明に係る樹脂は、従来、接着剤に使用され得るものから選択することができる。好ましくは、エポキシ系樹脂、アクリル樹脂、又は、ポリエチレン樹脂等から選択された少なくても1種類である。
【0020】
本発明に係る組成物は、希釈剤、硬化剤、着色料等を含有することができる。本発明において、希釈剤とは、本発明に係る組成物の粘度を調整するために用いられるものであり、通常、使用されているものから選択することができる。好ましくは、有機溶媒であり、特に、キシレン、ブチルセルソルブ、1、3、5トリメチルベンゼン、Nブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、芳香族炭化水素溶剤、ケトン溶剤から選択される少なくとも1種類である。
【0021】
本発明に係る硬化剤は、通常使用されているものから選択することができ、特に限定するものではない。例えば、脂肪族系樹脂が挙げられる。本発明に係る着色料は、通常使用されているものから選択することができ、特に限定するものではない。好ましくは、酸化チタン、有機赤色系顔料、硫酸バリウム、カーボンブラックである。
【0022】
本発明は、更に、ホログラム箔を接着(箔押)した製品を提供する。この製品において、ホログラム箔は、本発明に係る組成物によって、前記製品に接着されている。前記製品は、ガラス、パッケージ、ラベル、ステーショナリー、ICカード、磁気カード、おもちゃ、雑貨、電気機器、携帯電話等から選択される。好ましい対象製品は、従来、ホログラム箔が接着できないとされていたガラス製品である。
【0023】
本発明に係る組成物は、第1の容器と、第2の容器を含むホログラム箔接着用のキットの形態をとり得る。前記第1の容器は、樹脂を主成分とするベース基材を収納しており、前記第2の容器は、シランカップリング剤を含有する調整剤を収納している。上記キットによれば、本発明に係る組成物の調整に当たり、前記第1の容器に収納されたベース基材に、第2の容器に収納された調整剤を添加し、混合することにより、要求される接着力、粘度等に合わせて、任意の組成比をもつ組成物を調整することができる。キットは、第1の容器、及び、第2の容器にそれぞれ、ベース基材、及び、調整剤を収納してあるので、使用前に硬化、又は、分離等の変化を起こすことなく、安定して管理することができる。
【0024】
ベース基材は樹脂を含有し、調整剤はシランカップリング剤を含有する。第1の容器に収納されているベース基材、又は、第2の容器に収納されている調整剤には、使用の目的に応じて、粘度調整剤、硬化剤等を加えてもよい。これとは別に、粘度調整剤、硬化剤等を、ベース基材、又は、調整剤に混合せず、新たな第3の容器、又は、第4の容器を準備して、それらに収納してもよい。この場合は、キットは、第1の容器乃至第4の容器の組み合わせとなる。
【発明の効果】
【0025】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)ホログラム箔を、ガラス等の接着に困難な素材に対しても強固に接着し得るホログラム箔接着用組成物を提供することができる。
(b)ホログラム箔を、ガラス等の接着に困難な素材に対しても強固に接着した製品を提供することができる。
(c)ホログラム箔接着用組成物を構成する各成分について、安定に保存でき、しかも、使用に際しは、各自が任意にホログラム箔接着用組成物を調整し得るキットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<ホログラム箔接着用組成物の準備>
まず、ベース基材となるNo1000(株式会社フェロ・ジャパン製)20gに、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを、0.02、0.04、0.06、0、08(ml)のように、0.02(ml)の刻みで変えて添加し、混合することにより、サンプル1〜4を得た。No1000(株式会社フェロ・ジャパン製)の組成分及び組成比は、表1に示すとおりである。
【0027】
【表1】

【0028】
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの添加量と得られた組成物のサンプルの関係は、表2に示す通りである。
【0029】
【表2】

【0030】
<ホログラム箔接着製品の製造>
次に、得られた組成物のサンプル1〜4をスクリーン印刷法によって、ガラス板の一面上に、均一な膜厚となるように印刷し、50〜70℃で20分加熱を行った。
【0031】
次に、乾燥後の組成物塗膜に、ホログラム箔(村田金箔グループ製)を箔押し、その後、160℃で20〜40分加熱を行ない、ホログラム箔接着製品を得た。サンプル1〜3の組成物を用いて製造されたホログラム箔接着製品を実施例1〜3とし、サンプル4の組成物を用いて製造されたホログラム箔接着製品を比較例1とする。
【0032】
<接着性試験>
試験は、JIS K 5600−5−6:1999 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節付着性(クロスカット法)に準じ行なわれた。試験数は、3(ホログラム箔の両端、中央の3点)であり、カットの間隔は1mmとし、単一刃切込み工具を使用した。実施例1〜3、及び、比較例1の接着性試験結果は、表3に記載する通りである。結果は0〜4の5段階で表し、0が最も良好である。
【0033】
【表3】

【0034】
表3に示した通り、実施例1〜3までは、試験結果は良好であり、試験数3(ホログラム箔の両端、中央の3点)の何れにおいても、剥離は見られなかった。このことより、最適な接着力を示すベース基材(g)/接着成分(ml)は、(20/0.02)〜(20/0.06)(g/ml)の範囲であることが分かった。
【0035】
ベース基材(g)/接着成分(ml)が、(20/0.02)(g/ml)より大きい範囲(即ち、ベース基材20gを基準とした場合、接着成分が0.02mlよりも小さくなる範囲)では、要求される適度な接着力を得ることができない。
【0036】
ベース基材(g)/接着成分(ml)が、(20/0.06)(g/ml)より小さい範囲では、比較例1が示すように、試験数3(ホログラム箔の両端、中央の3点)のうち、2箇所において、評価の分類2を示しており、接着力の低下が見られる。これは、ベース基材に対する接着成分の量が増えたために、組成物としての粘度が上がり、例えばスクリーン印刷などで塗布する際に、均一に塗布することができなくなるためと推測される。
【0037】
表1に示した通り、サンプル1〜4に使用した組成物には、樹脂、硬化剤、着色料、希釈剤、及び、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのみが含有され、従来、接着剤として使用されていたものが含まれていない。
【0038】
ところが、実際には、実施例1〜3に示すように、接着試験では、強固な接着力を発揮した。このことより、従来、接着促進のための補助剤として使用されてきたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、表3に示した通り、接着剤としての効力があることが分かる。これは、本発明の組成物では、ベース基材と、シランカップリング剤との間に化学反応が発生し、それが接着力を生じたものではないかと考えられる。
【0039】
<耐水性試験>
実施例1〜3のホログラム箔接着製品を、充分浸る程度に水道水に浸け、10時間放置した。10時間後、実施例1〜3のホログラム箔接着製品を引き上げ、乾燥させた後、ホログラム箔の接着状態を観察した。実施例1〜3のいずれのホログラム箔にも、剥がれは見えず、強固な接着力を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を主成分としたベース基材と、接着成分とを混合して得られたホログラム箔接着用の組成物であって、前記接着成分が、シランカップリング剤である、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載された組成物であって、前記シランカップリング剤は、r−グリシドキシプロリルトリメトキシシランである、組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された組成物であって、
前記ベース基材(g)/前記接着成分(ml)が、
(20/0.02)〜(20/0.06)(g/ml)の範囲にある、
組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載された組成物であって、前記ホログラム箔をガラスに接着するために用いられる、組成物。
【請求項5】
ホログラム箔を接着した製品であって、ガラス、パッケージ、ラベル、ステーショナリー、ICカード、磁気カード、おもちゃ、雑貨、電気機器又は携帯電話から選択された何れか一種であり、
前記ホログラム箔は、請求項1乃至4の何れかに記載された組成物によって、前記製品に接着されている、
製品。
【請求項6】
請求項5に記載された製品であって、ガラス製である、製品。
【請求項7】
第1の容器と、第2の容器を含むホログラム箔接着用のキットであって、
前記第1の容器は、樹脂を主成分とするベース基材を収納しており、
前記第2の容器は、シランカップリング剤を含有する調整剤を収納している、
キット。

【公開番号】特開2009−235251(P2009−235251A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83578(P2008−83578)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508092990)
【出願人】(508093012)
【Fターム(参考)】