ホログラム記録装置および遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法
【課題】ホログラム記録媒体に形成された干渉縞の歪みによる再生像の劣化を補償する技術を提供する。
【解決手段】ホログラム記録装置1は、白と黒の2値画像を記録した記録媒体12に照射される参照光の波面状態を変化させて反射する波面制御器13と、反射した参照光が照射された記録媒体12により再生される白と黒の2値画像の再生光を撮像するCCD24と、計測制御装置25とを備え、計測制御装置25は、撮像された再生データの画像ごとに、白および黒について、平均輝度、標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、白の変動係数の自乗と黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する白および黒の平均輝度の差を示すFitを、遺伝的アルゴリズムの適応度としてそれぞれ算出し、算出したFitを遺伝的アルゴリズムにより最適な値にしたときに波面制御器13に出力していた波面制御信号を、記録媒体12の干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求める。
【解決手段】ホログラム記録装置1は、白と黒の2値画像を記録した記録媒体12に照射される参照光の波面状態を変化させて反射する波面制御器13と、反射した参照光が照射された記録媒体12により再生される白と黒の2値画像の再生光を撮像するCCD24と、計測制御装置25とを備え、計測制御装置25は、撮像された再生データの画像ごとに、白および黒について、平均輝度、標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、白の変動係数の自乗と黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する白および黒の平均輝度の差を示すFitを、遺伝的アルゴリズムの適応度としてそれぞれ算出し、算出したFitを遺伝的アルゴリズムにより最適な値にしたときに波面制御器13に出力していた波面制御信号を、記録媒体12の干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィに係り、特に、ホログラム記録装置、ホログラム再生装置および遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速・大容量を目指したホログラム記録再生方式を利用した種々の多重記録再生装置が提案され、例えば図19に示す光学系を備えたホログラム記録装置が知られている。図19に示すホログラム記録装置101において、レーザ102から出射されたレーザ光は、ビームエキスパンダ103、コリメートレンズ104、半波長板105を通過してミラー106で反射して偏光ビームスプリッタ107に入射する。そして、レーザ光は、偏光ビームスプリッタ107により物体光と参照光に分けられる。このうち物体光は、偏光ビームスプリッタ108を透過し、空間光変調素子109上に照射される。そして、物体光は、空間光変調素子109に表示された画像(ページデータ)で変調され、ページデータの情報が担持された信号光として偏光ビームスプリッタ108に戻る。
【0003】
この信号光は、偏光ビームスプリッタ108で反射して、シャッタ110を通過して集光用のレンズ111を介して記録媒体(ホログラム記録媒体)112に到達する。一方、参照光はミラー121で反射し、変調されずにシャッタ122を通過して記録媒体112に到達する。そして、信号光と参照光が形成する干渉縞を記録媒体112に記録することにより、ページデータを記録することができる。記録媒体112に記録されたページデータを再生する場合、参照光のみを記録媒体112に照射すると、この参照光は記録媒体112で回折し、ページデータの信号が付加されている再生光(ページデータの再生像)が得られる。このページデータの再生像は、例えば、CCD(Charge Couple Device)124等の二次元撮像素子により撮像することができる。
【0004】
ところで、記録媒体112としてフォトポリマー媒体を使用した場合には、記録時に記録媒体112に歪み(媒体歪み)が生じてしまうことが知られている。また、記録時の媒体温度と再生時の媒体温度とが異なる場合、記録時と再生時の記録媒体112の歪み度合いも異なったものとなる。そのため、再生時において、記録時の条件と同様の条件で参照光を記録媒体112に入射したとしても、記録したページデータを誤りなく再生することが困難であり、再生された画像(再生データ)が劣化してしまうことになる。そこで、記録媒体112としてフォトポリマー媒体を使用した場合においても、記録媒体112の歪みによる再生データの劣化を低減可能とするような適応光学を用いた補償方法が検討されている(非特許文献1参照)。
【0005】
非特許文献1に記載の制御方法では、薄膜ミラーを上下方向(光軸方向)に動かす複数のピンを有したデフォーマブルミラー(Deformable Mirror:可変形鏡)で反射した参照光を記録媒体に照射することでホログラムの記録および再生を行っている。また、デフォーマブルミラーの設定値とホログラムからの再生光との関係は非線形なので、伝達関数が複雑になりフィードバック制御は困難であるため、遺伝的アルゴリズムを用いた制御を行っている。なお、このような非線形性な光学系ではフィードバック制御が困難であることは非特許文献2に記載されている。
【0006】
遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)では、複数の個体(Individual)からなる個体群である集団(Population)を想定している。また、各個体の形質を規定する要素として遺伝子(Gene)や複数の遺伝子の集まりである染色体(Chromosome)が定義され、遺伝子レベルの複製(reproduction)、交叉(Crossover)、突然変異(Mutation)等が繰り返し実行される。そして、適応度(Fitness)に基づいて環境に最もよく適合した個体が、次世代(generation)を形成していく。
【0007】
非特許文献1に記載の制御方法では、デフォーマブルミラーの表面の薄膜ミラーの状態を個体(Individual)、各ピンの駆動位置の値を遺伝子(Gene)としている。そして、非特許文献1に記載の制御方法では、記録媒体112としてフォトポリマー媒体を使用した場合に、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により、記録媒体112の歪みによる再生データの劣化を低減できることを示すことを主眼としている。そのため、物体光を変調するために表示されるページデータが、すべてのビットがオンである白色画像であるものと仮定し、適応度は、再生像のS/N比(SNR:Signal to Noise ratio)に関連するように、再生像の白の平均輝度μおよび標準偏差σから得られる変動係数の逆数μ/σであるものとしている。なお、白色画像の補償では、適応度は、このような再生画像の輝度均一性を評価する変動係数のほか、例えば、再生光波面のゼルニケ係数のRMSを用いる場合もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T. Muroi, et.al.,”Improved Intensity and Distribution in Reconstructed Beam Using Adaptive Optics in Holographic Data Storage”, Tech. Dig. ISOM’07, Th-K-02, p. 280-287, 2007
【非特許文献2】T. Muroi, et. al.,”Compensation and Improvement of Intensity and Distribution in Reconstructed Image Using Adaptive Optics in Holographic Data Storage", Jpn. J. Appl. Phys.,Vol. 47, No. 7, p. 5900-5903, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1に記載の制御方法では、フォトポリマー媒体を使用するときに、ページデータが白色画像であり、かつ、それに対応した適応度μ/σを仮定してSNRを向上させているため、ページデータが、白と黒のビットパターンによる2値画像である場合には、それに対応した新たな適応度が必要となる。この新たな適応度としては、再生像の白の平均輝度μ1および標準偏差σ1と、黒の平均輝度μ0および標準偏差σ0とを用いて、再生像のSNRに対応するように定義しなければならない。新たな適応度の定義によっては、遺伝的アルゴリズムの処理過程で、波面の状態が変化した結果として、記録媒体から再生された暗い再生像を撮像してしまった場合に、その再生像の適応度が高いものと判定されてしまい、記録媒体112の歪みによる再生像の劣化を補償できないばかりか、最終的に暗い画像が得られてしまう場合が生じ得る。そのため、フォトポリマー媒体を使用し、ページデータが、白と黒のビットパターンによる2値画像であっても、記録媒体112の歪みによる再生像の劣化を補償できる技術が要望されている。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、ホログラム記録媒体に形成された干渉縞の歪みによる再生像の劣化を補償する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、まず、請求項1に記載のホログラム記録装置は、レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備え、ホログラム再生の前段階の処理として、遺伝的アルゴリズムにより、記録媒体への参照光の照射、再生光の撮像、撮像された再生データの画像の輝度の計測、参照光の波面制御の一連の処理を繰り返し行うホログラム記録装置であって、前記計測制御装置が、前記再生データの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含むパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度としてそれぞれ算出し、前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出したパラメータを最適な値にし、前記パラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めることとした。
【0012】
かかる構成によれば、ホログラム記録装置は、波面制御器によって反射した参照光を記録媒体に照射し、撮像装置によって、記録媒体から再生された白と黒のビットパターンによる2次元離散データの再生光を撮像し、計測制御装置によって、撮像された再生データの画像の輝度を計測し、波面制御信号を波面制御器に出力する一連の処理を繰り返す。そして、ホログラム記録装置は、撮像された再生データの画像ごとに、計測制御装置によって、白の変動係数の自乗と黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する白および黒の平均輝度の差を含むパラメータを、遺伝的アルゴリズムの適応度として算出し、このパラメータが最適な値になったときの波面制御信号を求める。遺伝的アルゴリズムの適応度に用いるパラメータをこのように定義したので、遺伝的アルゴリズムの処理過程で、波面の状態が変化した結果として、記録媒体から再生された暗い再生像を撮像してしまったとしても、その再生像の適応度は高いものと判定されることはなく、SNRを向上させることができる。したがって、パラメータが最適な値になったときの波面制御信号を波面制御器に出力したときに最適化された参照光の波面の状態が得られる。この最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。
【0013】
また、請求項2に記載のホログラム記録装置は、レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備え、ホログラム再生の前段階の処理として、遺伝的アルゴリズムにより、記録媒体への参照光の照射、再生光の撮像、撮像された再生データの画像の輝度の計測、参照光の波面制御の一連の処理を繰り返し行うホログラム記録装置であって、前記計測制御装置が、前記再生データの画像を、複数のブロックに分割し、前記ブロックの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータをそれぞれ算出し、前記ブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータについての平均値、標準偏差および変動係数を算出し、前記第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出し、前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出した第2のパラメータを最適な値にし、前記第2のパラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めることとした。
【0014】
かかる構成によれば、ホログラム記録装置は、波面制御器によって反射した参照光を記録媒体に照射し、撮像装置によって、記録媒体から再生された白と黒のビットパターンによる2次元離散データの再生光を撮像し、計測制御装置によって、撮像された再生データの画像を複数のブロックに分割した上でブロック別に輝度を計測し、波面制御信号を波面制御器に出力する一連の処理を繰り返す。そして、ホログラム記録装置は、分割したブロックの画像ごとに、計測制御装置によって、白の変動係数の自乗と黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する白および黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータを算出し、ブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータについての平均値、標準偏差および変動係数を算出する。そして、計測制御装置は、第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを遺伝的アルゴリズムの適応度として算出し、このパラメータが最適な値になったときの波面制御信号を求める。ここで、遺伝的アルゴリズムの適応度に用いる第2のパラメータを算出する前に求められるブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータは、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理を考慮して適応度が正しいSNRを反映する方向に収束することを保証する。すなわち、遺伝的アルゴリズムの処理過程で、波面の状態が変化した結果として、記録媒体から再生された暗い再生像を撮像してしまったとしても、その再生像の適応度は高いものと判定されることはない。また、第2のパラメータを遺伝的アルゴリズムの適応度に用いるので、SNRを向上させることができる。したがって、パラメータが最適になったときの波面制御信号を波面制御器に出力したときに最適化された参照光の波面の状態が得られる。この最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。また、再生画像を分割したので、レーザ光の輝度分布に起因する再生画像全体の輝度分布の影響を低減して評価することができる。
【0015】
また、請求項3に記載のホログラム記録装置は、請求項1または請求項2に記載のホログラム記録装置であって、前記計測制御装置が、前記遺伝的アルゴリズムの適応度を最適な値にする際に、前記光学系において前記物体光と前記参照光により前記2次元離散データが複数ページにわたって多重記録された記録媒体に対して再生データを得るために参照光を照射したときの波面制御器の反射面の状態を示す情報を、前記遺伝的アルゴリズムにおける個体の情報として用いて、個体群である集団の初期値の世代の初期状態に対して、前記記録媒体に再生対象ページの2次元離散データが記録されたときの波面制御器の反射面の状態に対応した個体と、前記記録時とは無関係にランダムに設定した波面制御器の反射面の状態に対応した個体とを含む初期集団を決定し、前記初期集団を起点にして、前記個体ごとに算出した適応度が集団の中で高い個体群を残すように集団の世代を順次交代し、最終的に残した集団の中で適応度が最大の個体の遺伝子を当該再生対象ページにおける前記波面制御信号として求め、前記再生対象ページが2ページ目以降である場合に、当該再生対象ページよりも前のページにおいて適応度が最大の個体として求められた個体をさらに含めて当該再生対象ページの初期集団を決定することとした。
【0016】
かかる構成によれば、ホログラム記録装置は、計測制御装置によって、2ページ目以降の再生対象ページについての初期集団に、以前のページにおいて最適化された個体を含めた上で、遺伝的アルゴリズムを実行する。そのため、適応度が最大値に収束するまでの世代交代数は、2ページ目以降については1ページ目よりも低減できる。その理由は、記録媒体に、複数のページデータを角度多重やシフト多重を用いて多重記録した場合、隣り合ったページ間や近い範囲のページ間では記録媒体の歪み方が類似するからである。このように、前ページまでのページデータの補償の最適条件を用いて2ページ目以降の再生対象ページの補償を行うことにより、多重記録された複数のページデータ全体を速く補償することができる。
【0017】
また、請求項4に記載のホログラム記録装置は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のホログラム記録装置であって、前記波面制御器を搭載したステージを有して前記ステージの回転角度の位置を示す角度制御信号に基づいて前記ステージを回転させて、前記波面制御器に入射する参照光の入射角度を変化させる回転器をさらに備え、前記計測制御装置が、前記角度制御信号を前記回転器に出力し、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測の結果に基づいて輝度分布が最も良好となったときの回転角度を求め、求めた回転角度の位置に前記ステージを固定させた上で、前記遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により前記波面制御信号を求めることとした。
【0018】
かかる構成によれば、ホログラム記録装置は、計測制御装置によって、角度制御信号を回転器に出力し、回転器によって、波面制御器を搭載したステージを回転させて、記録媒体に入射する参照光の入射角度を変化させる。そして、計測制御装置は、撮像された再生データの画像の輝度を計測した結果に基づいて輝度分布が最も良好となったときの回転角度の位置にステージを固定させる。これにより、記録媒体の全記録領域に亘って生じる歪みによる再生像の劣化を補償することができる。そして、ホログラム記録装置は、波面制御器のステージ位置を固定した上で、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により波面制御信号を求める。これにより、記録媒体の個別の記録領域によって生じる歪みによる再生像の劣化を補償することができる。
【0019】
また、請求項5に記載のホログラム記録装置は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のホログラム記録装置であって、前記波面制御器で反射した参照光が照射された前記記録媒体により再生される2次元離散データの再生光の波面の状態を第2の波面制御信号に基づいて変化させて反射する第2の波面制御器をさらに備え、前記撮像装置が、前記第2の波面制御器で反射した再生光を撮像し、前記計測制御装置が、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、前記遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により前記再生データの画像ごとに、前記波面制御信号および前記第2の波面制御信号をそれぞれ求め、求めた波面制御信号を前記波面制御器にそれぞれ出力すると共に、前記第2の波面制御信号を前記第2の波面制御器にそれぞれ出力することとした。
【0020】
かかる構成によれば、ホログラム記録装置は、第2の波面制御器によって、記録媒体から再生される2次元離散データの再生光の波面の状態を変化させて反射し、撮像装置によって、反射した再生光を撮像し、計測制御装置によって、撮像された再生データの画像の輝度を計測し、再生データの画像ごとに、波面制御信号および第2の波面制御信号を求める。したがって、ホログラム記録装置は、波面制御器によって、参照光を制御することで再生光を間接的に制御すると共に、第2の波面制御器によって、再生光の波面を直接的に制御することで、記録媒体に記録された干渉縞の歪みを補償することができる。
【0021】
また、請求項6に記載のホログラムの参照光の制御方法は、レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記記録媒体から再生された再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データを計測する計測制御装置とを備えるホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法であって、前記ホログラム記録装置が、ホログラム再生の前段階の処理として、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、第4ステップととからなる一連の処理を繰り返し行うこととした。
【0022】
かかる手順によれば、ホログラム記録装置は、第1ステップにて、前記光学系によって、前記参照光を前記波面制御器に照射し、第2ステップにて、前記波面制御器によって、前記入射した参照光の波面の状態を変化させて前記記録媒体に照射する。そして、ホログラム記録装置は、第3ステップにて、前記撮像装置によって、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像し、第4ステップにて、前記計測制御装置によって、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する。そして、ホログラム記録装置は、前記第4ステップにおいて、前記計測制御装置が、前記再生データの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含むパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出するステップと、前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出したパラメータを最適な値にするステップと、前記パラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めるステップとを含んで実行する。したがって、最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。
【0023】
また、請求項7に記載のホログラムの参照光の制御方法は、レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記記録媒体から再生された再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データを計測する計測制御装置とを備えるホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法であって、前記ホログラム記録装置が、ホログラム再生の前段階の処理として、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、第4ステップととからなる一連の処理を繰り返し行うこととした。
【0024】
かかる手順によれば、ホログラム記録装置は、第1ステップにて、前記光学系によって、前記参照光を前記波面制御器に照射し、第2ステップにて、前記波面制御器によって、前記入射した参照光の波面の状態を変化させて前記記録媒体に照射する。そして、ホログラム記録装置は、第3ステップにて、前記撮像装置によって、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像し、第4ステップにて、前記計測制御装置によって、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する。そして、ホログラム記録装置は、前記第4ステップにおいて、前記計測制御装置が、前記再生データの画像を、複数のブロックに分割し、前記ブロックの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータをそれぞれ算出するステップと、前記ブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータについての平均値、標準偏差および変動係数を算出し、前記第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出するステップと、前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出した第2のパラメータを最適な値にするステップと、前記第2のパラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めるステップとを含んで実行する。したがって、最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。
【0025】
また、請求項8に記載のホログラムの参照光の制御方法は、請求項6または請求項7に記載のホログラムの参照光の制御方法であって、前記遺伝的アルゴリズムの適応度を最適な値にするステップに、初期集団決定ステップと、世代交代ステップとを含むこととした。
【0026】
かかる手順によれば、ホログラム記録装置は、前記計測制御装置が、初期集団決定ステップにて、前記光学系において前記物体光と前記参照光により前記2次元離散データが複数ページにわたって多重記録された記録媒体に対して再生データを得るために参照光を照射したときの波面制御器の反射面の状態を示す情報を、前記遺伝的アルゴリズムにおける個体の情報として用いて、個体群である集団の初期値の世代の初期状態に対して、前記記録媒体に再生対象ページの2次元離散データが記録されたときの波面制御器の反射面の状態に対応した個体と、前記記録時とは無関係にランダムに設定した波面制御器の反射面の状態に対応した個体とを含む初期集団を決定する。そして、前記計測制御装置は、世代交代ステップにて、前記初期集団を起点にして、前記個体ごとに算出した適応度が集団の中で高い個体群を残すように集団の世代を順次交代し、最終的に残した集団の中で適応度が最大の個体の遺伝子を当該再生対象ページにおける前記波面制御信号として求める。そして、前記計測制御装置が、前記初期集団決定ステップにて、前記再生対象ページが2ページ目以降である場合に、当該再生対象ページよりも前のページにおいて前記世代交代ステップで適応度が最大の個体として求められた個体をさらに含めて当該再生対象ページの初期集団を決定する。
【0027】
したがって、本発明のホログラムの参照光の制御方法では、2ページ目以降の再生対象ページについての初期集団に、以前のページにおいて最適化された個体を含めた上で、遺伝的アルゴリズムを実行するので、適応度が最大値に収束するまでの世代交代数は、2ページ目以降については1ページ目よりも低減できる。このように、前ページまでのページデータの補償の最適条件を用いて2ページ目以降の再生対象ページの補償を行うことにより、多重記録された複数のページデータ全体を速く補償することができる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1または請求項6に記載の発明によれば、ホログラム記録装置は、遺伝的アルゴリズムの適応度として、白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、白の変動係数の自乗と黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する白および黒の平均輝度の差を含むパラメータを算出する。したがって、フォトポリマー媒体を用いて白と黒のビットパターンによる2値画像をページデータとして採用したとしても、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理による誤判定を防止してSNRを向上させることができる。そして、遺伝的アルゴリズムで最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。そのため、干渉縞の歪みによる再生像の劣化は補償されている。
【0029】
請求項2または請求項7に記載の発明によれば、ホログラム記録装置は、再生データの画像を複数のブロックに分割し、ブロックの画像ごとに、白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、白の変動係数の自乗と黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する白および黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータを算出し、遺伝的アルゴリズムの適応度として、第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを算出する。したがって、フォトポリマー媒体を用いて白と黒のビットパターンによる2値画像をページデータとして採用したとしても、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理による誤判定を防止すると共にSNRを向上させることができる。そして、遺伝的アルゴリズムで最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。そのため、干渉縞の歪みによる再生像の劣化は補償されている。
【0030】
請求項3または請求項8に記載の発明によれば、ホログラム記録装置は、2ページ目以降の再生対象ページについての初期集団に、以前のページにおいて最適化された個体を含めた上で、遺伝的アルゴリズムを実行する。したがって、適応度が最大値に収束するまでの世代交代数は、2ページ目以降については1ページ目よりも低減できる。その結果、多重記録された複数のページデータ全体を速く補償することができる。
【0031】
請求項4に記載の発明によれば、ホログラム記録装置は、回転器によって、波面制御器を搭載したステージを回転させて、波面制御器に入射する参照光の入射角度を最適にした上で、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により波面制御信号を求める。したがって、回転器の調整で、記録媒体の全記録領域に亘って生じる歪みによる再生光の波面の乱れを補償し、波面制御信号により、記録媒体の個別の記録領域によって生じる歪みによる再生光の波面の乱れを補償することができる。
【0032】
請求項5に記載の発明によれば、ホログラム記録装置は、波面制御器によって、参照光を制御することで再生光を間接的に制御すると共に、第2の波面制御器によって、再生光の波面を直接的に制御することで、記録媒体に記録された干渉縞の歪みを補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。
【図2】図1に示した波面制御器による効果の説明図である。
【図3】図1に示した計測制御装置が実行する遺伝的アルゴリズムの説明図である。
【図4】図1に示した計測制御装置が算出する適応度の説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置で算出された世代とパラメータFitnessとの関係の一例を示すグラフである。
【図7】本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置で再生された再生データの画像の一例を示す図であって、(a)は補償前、(b)は補償後をそれぞれ示している。
【図8】本発明の第2実施形態に係るホログラム記録装置による適応度の算出処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置で算出された世代と適応度Fitとの関係の一例を示すグラフである。
【図11】本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置で再生された再生データの画像の一例を示す図であって、(a)は補償前、(b)は補償後をそれぞれ示している。
【図12】本発明の第4実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による複数のページデータの補償の流れを示す説明図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による1ページ目の補償の具体例を示す説明図である。
【図15】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による2ページ目以降の補償の具体例を示す説明図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置で算出された1ページ目の世代交代数と適応度との関係の一例を示すグラフである。
【図17】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置で算出された2ページ目の世代交代数と適応度との関係の一例を示すグラフである。
【図18】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による2ページ目以降の補償の変形例を示す説明図である。
【図19】従来のホログラム記録装置の光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明のホログラム記録装置を実施するための形態(以下「実施形態」という)について詳細に説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。ホログラム記録装置1は、ホログラム用の記録媒体への干渉縞の形成の動作と、この干渉縞が形成された記録媒体を用いた再生像の劣化を補償した高品位な像を再生するための前段階の処理(以下、単に前処理という)の動作とを行うものである。なお、本実施形態では、ホログラム記録装置1は、前処理の結果としての高品位な像の再生機能をも有している。このホログラム記録装置1では、記録媒体12として、フォトポリマーを使用する。また、ホログラム記録装置1は、従来のホログラム記録装置101(図19参照)と比較すると、ミラー121(図19参照)の代わりに、波面制御器13を備えており、さらに、この波面制御器13およびCCD24とそれぞれ接続された計測制御装置25を備えている点が異なっている。
【0036】
計測制御装置25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えた一般的なパーソナルコンピュータ、および、HDD(Hard Disk Drive)に記憶されRAMに展開されるプログラムを備えている。計測制御装置25は、前記したハードウェア資源とソフトウェアとが協働することにより後記する各機能が実現されるものである。また、このプログラムは、通信回線を介して提供することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0037】
ここで、波面制御器13の概要について図2を参照して説明する。図2は、図1に示した波面制御器による効果を示す説明図である。記録媒体12としてフォトポリマーを使用すると、干渉縞形成時(記録時)において、図2(a)に示すように、白と黒のビットパターン201による2次元離散データ(以下、単に、ビットパターンという)の情報を担持した信号光をレンズ11で集光し、平面波の参照光と干渉させて記録媒体12に形成する干渉縞には、符号202で示すように歪みが生じてしまう。再生時において、仮に波面制御器13が無い場合、図2(b)に示すように、干渉縞形成時に照射した平面波の参照光を記録媒体12に照射することで再生される再生光を、CCD24で撮影した場合、記録されたビットパターンは干渉縞の歪みの影響により部分的に得られない。例えば、CCD撮影像203では、符号204で示す位置の情報が得られず、SNRが低下してしまう。
【0038】
波面制御器13は、例えば、デフォーマブルミラーから構成される。この場合、波面制御器13は、図2(c)に示すように、薄膜ミラーからなる表面13aが、上下方向(光軸方向)に動く複数(図では19本)のピン(駆動部)13bにより動かされることで、入射光の波面の状態を変化させて反射することができる。なお、ピン13bは、例えばピエゾアクチュエータで駆動される。
【0039】
この波面制御器13のピン13bの上下の駆動位置の値がそれぞれ最適に定められると、波面制御器13の表面13aへ入射する光の波面の状態を最適な状態に変化させて反射することが可能である。したがって、波面制御器13のピン13bの駆動位置を最適な状態(波面制御器13が最適な状態)としたときに、波面制御器13に対して、図2(b)に示した平面波の参照光を入射すると、波面制御器13の表面13aで反射した参照光の波面は干渉縞の歪みを補償する形状になる。そして、この波面制御された参照光を記録媒体12に照射することで再生される再生光は、干渉縞の歪みの影響が取り除かれる。この再生光を、レンズ23を通してCCD24で撮影すると、符号205で示す再生像が得られる。これにより、再生像を改善することができる。なお、波面制御器13を最適な状態に設定するために、後記するように、計測制御装置25がCCD24で撮影された再生データを計測して、計測結果に応じた制御信号を波面制御器13に出力する試行(処理)を遺伝的アルゴリズムにより繰り返す。
【0040】
図1に戻って、ホログラム記録装置1の説明を続ける。
<干渉縞形成時>
ホログラム記録装置1において、レーザ(レーザ光源)2から出射されたレーザ光は、ビームエキスパンダ3によりビーム径が拡大され、コリメートレンズ4により平行光にされ、半波長板5で偏光方向を変換されてミラー6で反射して偏光ビームスプリッタ7に入射する。そして、レーザ光は、偏光ビームスプリッタ7により物体光と参照光に分けられる。このうち物体光は、偏光ビームスプリッタ8を透過し、空間光変調素子9上に照射される。そして、物体光は、空間光変調素子9に表示された白と黒のビットパターンによる2次元離散データの画像(ページデータ)で変調され、白と黒の2値画像の情報が担持された信号光として偏光ビームスプリッタ8に戻る。
【0041】
この信号光は、偏光ビームスプリッタ8で反射して、シャッタ10を通過して集光用のレンズ11を介して記録媒体(ホログラム記録媒体)12に到達する。一方、参照光は、波面制御器13に入射し、その波面が変化した状態で反射し、シャッタ22を通過して記録媒体12に到達する。なお、参照光の光路中のシャッタ22の前後にはレンズ14、16が配設されている。そして、信号光と参照光との干渉により記録媒体12に干渉縞が形成される。この干渉縞により記録媒体12にページデータを記録することができる。
【0042】
<前処理>
ホログラム記録装置1は、記録媒体12に記録されたページデータを、干渉縞の歪みによる劣化を補償した高品位な像として再生するために、前処理として、遺伝的アルゴリズムを用いて参照光の波面の状態を事前に最適化しておく。前処理において、波面制御器13は、計測制御装置25からの波面制御信号に基づいて参照光の波面の状態を変化させて反射する。波面制御器13で反射した参照光が記録媒体12に照射されることにより、記録媒体12から2次元離散データが再生される。この再生光はレンズ23を介してCCD(CCD撮像装置)24により撮像される。計測制御装置25は、撮像された再生データの画像の輝度を計測し、波面制御信号を求め、求めた波面制御信号を波面制御器13に出力する。このように、記録媒体12への参照光の照射、再生光の撮像、撮像された再生データの画像の輝度の計測、参照光の波面制御の一連の動作を繰り返しながら、計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により、再生データの画像ごとに波面制御信号をそれぞれ求める。ホログラム記録装置1は、この一連の動作の繰り返しにより、高品位な像として再生するための最適な波面制御信号を決定する。
【0043】
ここで、遺伝的アルゴリズムと、波面制御器13との関係について図3を参照して説明する。図3は、図1に示した計測制御装置が実行する遺伝的アルゴリズムの説明図である。この遺伝的アルゴリズムにおいて、集団Pは、複数の個体Iから構成される。ここで、波面制御器13の表面13a(図2(c)参照)の状態を個体Iとする。図3(a)に示すように、第k世代の集団Pkは、例えば、10個の個体I1〜I10から構成される。図3(a)に示す個体Iは、駆動部ナンバー301と、遺伝子302とを有している。駆動部ナンバー301は、波面制御器13のピン13b(図2(c)参照)の識別子である。遺伝子302は、波面制御器13のピン13b(図2(c)参照)の上下方向(光軸方向)の駆動位置を示す値である。図3(a)に示す個体Iは、一例として、8個の遺伝子、つまり、8本のピンを備えている。
【0044】
計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムの処理において、例えば、「複製」、「交叉」、「突然変異」を行う。計測制御装置25は、「複製」の処理において、第k世代の集団Pkの全ての個体Iを選択して複製する。例えば、個体I1と個体I10の複製は、図3(b)に示すように、個体303、304が生成される。
【0045】
計測制御装置25は、「交叉」の処理において、第k世代の集団Pkから選択した任意の2個の個体Iを交叉する。例えば、個体I1と、個体I10とが選択された場合、交叉により、図3(c)に示すように、個体305、306が生成される。なお、図3(c)に示した例は、符号307で示す位置を交叉点とした一点交叉により生成されたものである。なお、交叉については、例えば、二点交叉、多点交叉、一様交叉を用いてもよい。
【0046】
計測制御装置25は、「突然変異」の処理において、第k世代の集団Pkから任意の1個の個体Iをランダムに選択し、その個体Iの任意の1個の遺伝子の値をランダムに書き換える。突然変異を起こす確率Fmは、例えば、0.01のように予め設定することができる。この場合、100個の個体につき1個の個体が突然変異することになる。なお、選択する個体Iの個数や遺伝子の個数は、これに限定されない。また、選択方法は、ランダムに選択する代わりに予め定めた規則により選択するようにしてもよい。
【0047】
ここで、計測制御装置25の算出する遺伝的アルゴリズムの適応度について図4を参照して説明する。図4は、図1に示した計測制御装置が算出する適応度の説明図である。
図4(a)は、実際のホログラム記録で用いられるページデータ(2次元離散データ)の再生像の一例である。再生データのSNRを改善するために、遺伝的アルゴリズムの適応度として、仮に式(1)に示すSNRを単純に用いた場合には、このSNRが最大になるように最適化を行えばよいと考えられる。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、μ1、σ1はオンビット(白)の平均輝度および標準偏差、μ0、σ0はオフビット(黒)の平均輝度および標準偏差を表している。μ1、σ1、μ0、σ0の一例を図4(b)に示す。
【0050】
式(1)を適応度とし、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理を用いて最適化を行うときに、暗い再生像が測定されると、オンビットの標準偏差σ1が小さくなる。そのため、式(1)のSNRの値が高いにも関わらず、再生像は暗く、ビットが検出できない。暗い再生像に対応した輝度分布の他の例を図4(c)に示す。輝度の度数分布が輝度の低い側(左側)に極端に移動し、分布の広がりが小さくなるばかりではなく、オンビットとオフビットとの境界が検出できなくなる。このように、適応度として式(1)のSNRを単純に用いた場合、再生像を補償することができない場合がある。
【0051】
そこで、計測制御装置25は、再生像の輝度の計測において、再生データの画像ごとに、白の平均輝度μ1、輝度の標準偏差σ1および変動係数c1(=σ1/μ1)と、黒の平均輝度μ0、輝度の標準偏差σ0および変動係数c0(=σ0/μ0)とをそれぞれ算出すると共に、再生データの画像ごとに、式(2)に示すパラメータFitを、遺伝的アルゴリズムの適応度としてそれぞれ算出する。
【0052】
【数2】
【0053】
さらに、計測制御装置25は、算出したパラメータFitを遺伝的アルゴリズムにより最大化したときに(最適な値にしたときに)波面制御器13に出力されていた波面制御信号を、記録媒体12に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号(最適解)として求める。なお、計測制御装置25は、SNR[dB]に対応させて、式(3)のパラメータFitnessを算出することができ、これを遺伝的アルゴリズムの適応度にすることもできる。その他、式(2)および式(3)において、定数を加算したり定数倍したりしてもよいことは勿論である。
【0054】
【数3】
【0055】
<再生時>
前記した前処理の後、記録媒体12に記録されたページデータを再生する場合、計測制御装置25は、前処理で求められた最適解の波面制御信号を波面制御器13に出力する。波面制御器13は、最適解の波面制御信号に基づいて参照光の波面の状態を変化させて反射する。この波面制御器13で反射した参照光を記録媒体12に照射すると、参照光は記録媒体12で回折し、2次元離散データ(ページデータ)の信号が付加されている再生光(白と黒の2値画像)が高品位な再生像として得られる。
【0056】
[ホログラム記録装置の動作]
次に、図1に示したホログラム記録装置1の動作について、図5を参照(適宜図1ないし図3参照)して説明する。図5は、本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムの動作を示すフローチャートである。ホログラム記録装置1は、前提として、記録媒体12へ干渉縞を形成した後に、次の第1ステップ〜第4ステップの一連の処理を行う。すなわち、第1ステップにて、図1に示す光学系によって、参照光を波面制御器13に照射する。そして、第2ステップにて、波面制御器13によって、入射した参照光の波面の状態を変化させて記録媒体12に照射する。そして、第3ステップにて、CCD24によって、波面の状態が変化した参照光が照射された記録媒体12から再生された2次元離散データの再生光を撮像する。そして、第4ステップにて、計測制御装置25によって、撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を波面制御器13に出力する。
【0057】
前記した第1ステップ〜第4ステップの一連の処理の中で、第4ステップにおいて、ホログラム記録装置1は、計測制御装置25によって、世代kを初期化する(ステップS1)。すなわち、k=0とする。そして、計測制御装置25は、個体数nからなる第0世代の集団P0(初期状態の集団P0)を決定し、初期状態の集団(初期集団)P0に属す個体の1つに記録時(干渉縞形成時)の波面制御器13の状態を含ませ、その他の個体の遺伝子はランダムに決定する(ステップS2)。すなわち、1つの個体は、干渉縞形成時の波面制御器13の表面13aの状態を生み出したそれぞれのピン(駆動部)13bの設定値をそのまま遺伝子として含ませ、他の個体については、波面制御器13のピン(駆動部)13bの設定値をランダムに決定する。そして、計測制御装置25は、第k世代の集団Pkから選択した任意の2個体に対して、「複製」と「交叉」をすることで4個体を生成し(ステップS3)、ステップS3の処理を(n/2)回繰り返したか否かを判別する(ステップS4)。
【0058】
ステップS3の処理を(n/2)回繰り返して実行していない場合(ステップS4:No)、計測制御装置25は、ステップS3に戻る。ステップS3の処理を(n/2)回繰り返して実行した場合(ステップS4:Yes)、1回ごとに4個体生成されるので、合計2n個(=4×(n/2)個)の個体が生成されることになる。計測制御装置25は、この生成した合計2n個の個体からなる集団Pk’に対して、確率Fmで突然変異を起こす個体を選択し、その個体の遺伝子をランダムに決定し直す(ステップS5)。そして、計測制御装置25は、突然変異を起こした個体を含む個体数2nからなる集団Pk”に属す各個体の遺伝子(数値)を波面制御器13の各ピン(駆動部)13bの値として設定する(ステップS6)。計測制御装置25は、設定した遺伝子(各駆動部の値)を制御信号として波面制御器13に出力する。
【0059】
続いて、ホログラム記録装置1は、各ピン(駆動部)13bの値が設定された波面制御器13を用いて、ページデータの再生光をCCD24で撮像する(ステップS7)。そして、ホログラム記録装置1は、計測制御装置25によって、撮像された再生データの画像に基づいて、集団Pk”に属す個体ごとに、適応度を算出する(ステップS8)。具体的には、ホログラム記録装置1は、前記した第1ステップ〜第4ステップの一連の処理を繰り返すので、ステップS7とステップS8とを交互に繰り返すことになる。このうち、ステップS8において、計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムに従って、前記した式(2)で示すFitをそれぞれ算出するステップを実行する。
【0060】
そして、計測制御装置25は、算出した適応度の上位n個の個体からなる集団を次世代の集団として決定し(ステップS9)、収束条件を満足したか否かを判別する(ステップS10)。本実施形態では、世代kが所定の回数(例えばk=30)以上になったか否かを判別する。収束条件を満たさない場合(ステップS10:No)、計測制御装置25は、kの値に1を加え(ステップS11)、ステップS9で決定した集団の世代(世代数)を、このインクリメントしたk(k=k+1)として、ステップS3に戻る。つまり、計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムにより一連の処理を行うときに対象とするすべての再生データの画像のうちで、算出したパラメータを最適な値にするステップを実行する。
【0061】
一方、ステップS10において、収束条件を満たした場合(ステップS10:Yes)、計測制御装置25は、第k世代においてステップS9で決定した集団に属す適応度最大の個体の遺伝子を、波面制御器13の各ピン(駆動部)13bの設定値として確定し(ステップS12)、処理を終了する。このステップS12は、パラメータが最適な値になったときに波面制御器13に出力されていた波面制御信号を、記録媒体12に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めるステップである。
【0062】
[具体例1]
前提条件を以下の通りにした。波面制御器13は19本のピン(駆動部)13bを有し、駆動部の駆動位置が「0」〜「192」に設定可能であるものとした。遺伝的アルゴリズムの処理において、集団Pが20個の個体Iからなるものとした。なお、個体Iの遺伝子の個数は「19」、遺伝子の値は「0」〜「192」である。突然変異の確率Fmを「0.1」とした。計測制御装置25は、世代kが「30」以上であるときに収束条件を満たすものと判定した。
【0063】
<適応度と世代の関係>
図6は、第1実施形態に係るホログラム記録装置1で算出された世代とパラメータFitnessとの関係の一例を示すグラフである。前記した式(3)のパラメータFitnessは、図6に示すように、計測制御装置25の処理前、すなわち、補償前(世代k=0)のときに「16.1[dB]」であった。パラメータFitnessの値は、補償により増加し、20世代以降は、値が飽和し、最終的に、補償後(世代k=30)のときに「24.0[dB]」であった。
【0064】
<撮像されたページデータの具体例>
図7は、第1実施形態に係るホログラム記録装置1で再生された再生データの画像の一例を示す図であって、(a)は補償前、(b)は補償後をそれぞれ示している。図7(a)および図7(b)では、枠内の画像データを補償した。補償前には、図7(a)に示すように、枠内の左半分にオンビット(白)がほとんど現れなかった。補償後には、図7(b)に示すように、枠内のオンビット(白)の輝度均一性が向上した。なお、図7(b)のビットデータの画像がデコードされることで有意味の画像が表示されることになる。
【0065】
第1実施形態のホログラム記録装置1によれば、遺伝的アルゴリズムの適応度として、式(2)に示すFitを算出するので、フォトポリマー媒体を用いて白と黒のビットパターンによる2値画像をページデータとして採用したとしても、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理による誤判定を防止してSNRを向上させることができる。また、遺伝的アルゴリズムで最適化された波面の参照光が記録媒体12に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体12に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。そのため、干渉縞の歪みによる再生像の劣化は補償されている。また、ホログラム記録装置1による制御方法(遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法)は、従来のホログラム記録装置に対して容易に適用することができ、従来よりも大容量記録を実現するホログラム記録装置を提供することが可能となる。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態のホログラム記録装置1Aは、遺伝的アルゴリズムの適応度が異なり、計測制御装置25の処理が異なっているものの、構成が第1実施形態と同じなので、図面および構成の説明を省略する。また、ホログラム記録装置1Aの動作は、図5を参照して説明したホログラム記録装置1の動作と同様である。ただし、前記したステップS8における計測制御装置25の処理が異なる。以下、その相違点について、図8を参照(適宜図1および図2参照)して説明する。
【0067】
図8は、本発明の第2実施形態に係るホログラム記録装置による適応度の算出処理を示すフローチャートである。ホログラム記録装置1Aは、前記したステップS7に続いて、計測制御装置25によって、適応度の算出処理を実行する(ステップS21〜S31)。計測制御装置25は、突然変異後の個体数2nからなる集団Pk”に属す個体Ii(i=1〜2n)の遺伝子が設定された波面制御器13を用いて再生データをそれぞれ取得する(ステップS21)。具体的には、ホログラム記録装置1Aは、波面制御器13によって反射した参照光を記録媒体12に照射し、CCD24によって、記録媒体12から再生された白と黒のビットパターンによる2次元離散データの再生光を撮像し、計測制御装置25によって、撮像された再生データの画像の輝度を計測し、波面制御信号を波面制御器13に出力する一連の処理を繰り返す。この中で、計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムに従って、以下の動作を行う。
【0068】
計測制御装置25は、個体の識別子iを初期化する(ステップS22)。すなわち、i=1とする。そして、計測制御装置25は、個体Iiを用いて取得した再生データの画像をM個のブロックBj(j=1〜M)に分割する(ステップS23)。例えば、1つのブロックが128×128画素の複数個のブロックに分割する。ここで、計測制御装置25は、ブロック識別子jを「1」とする(ステップS24)。そして、計測制御装置25は、その時点のブロック識別子jのブロックBjにおいて、前記した式(2)に示すFitをブロック識別子jに関連付けた第1のパラメータFit(j)として算出する(ステップS25)。そして、計測制御装置25は、すべてのブロックを選択したか(j=Mであるか)否かを判別する(ステップS26)。選択していないブロックがある(j≠Mである)場合(ステップS26:No)、計測制御装置25は、jの値に1を加え(ステップS27)、ステップS25に戻る。
【0069】
一方、すべてのブロックを選択した(j=Mである)場合(ステップS26:Yes)、計測制御装置25は、選択した各ブロックのFit(j)の平均値と標準偏差を求め、求めたFit(j)の平均値と標準偏差から、個体Iiに対応した変動係数c(i)を算出する(ステップS28)。なお、変動係数c(i)は、i番目の再生データについてのFit(j)の標準偏差を、Fit(j)の平均値で除したものである。さらに、計測制御装置25は、変動係数c(i)の逆数を含む第2のパラメータF(i)を個体Iiに対応した適応度として算出する(ステップS29)。
【0070】
続いて、計測制御装置25は、個体Iiを用いて取得した再生データの画像をすべて選択したか(i=2nであるか)否かを判別する(ステップS30)。まだ選択していない再生データの画像がある(i≠2nである)場合(ステップS30:No)、計測制御装置25は、iの値に1を加え(ステップS31)、ステップS23に戻る。一方、再生データの画像をすべて選択した(i=2nである)場合(ステップS30:Yes)、突然変異後の個体数2nからなる集団Pk”に属す各個体Iiに対応した適応度がそれぞれ算出されたことになるので、計測制御装置25は、前記したステップS9(図5参照)に戻る。
【0071】
[具体例2]
第1実施形態の具体例1として示した図7(a)および図7(b)において、枠内の画像を256×256ブロックに分割して求め、これを具体例2とした。ブロック内のSNRは、補償前に「−19.4[dB]」であったが、補償後に「3.3[dB]」に増加した。
【0072】
第2実施形態のホログラム記録装置1Aによれば、再生データの画像を複数のブロックに分割し、ブロックの画像ごとに、式(2)に示すFitを第1のパラメータとして算出し、遺伝的アルゴリズムの適応度として、第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを算出する。したがって、フォトポリマー媒体を用いて白と黒のビットパターンによる2値画像をページデータとして採用したとしても、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理による誤判定を防止してSNRを向上させることができる。また、遺伝的アルゴリズムで最適化された波面の参照光が記録媒体12に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体12に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。そのため、干渉縞の歪みによる再生像の劣化は補償されている。また、再生画像を分割したので、レーザ光の輝度分布に起因する再生画像全体の輝度分布の影響を低減して評価することができる。
【0073】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。第3実施形態のホログラム記録装置1Bは、回転器26を備え、計測制御装置25の機能が異なる点を除いて、構成が第1実施形態と同じなので、同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0074】
回転器26は、波面制御器13を搭載したステージを有して、このステージの回転角度の位置を示す角度制御信号に基づいてステージを回転させて、波面制御器13に入射する参照光の入射角度を変化させるものである。回転器26は、例えば、ステージ(敷設台)の略中心位置を回転軸として回動自在とされてなる。
【0075】
計測制御装置25は、角度制御信号を回転器26に出力し、このときCCD24で撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測の結果に基づいて輝度分布が最も良好となったときの回転角度を求め、求めた回転角度の位置にステージを固定させるための角度制御信号を回転器26に出力する。これにより、記録媒体12の全記録領域に亘って生じる歪みによる再生光の波面の乱れを補償するように制御がなされることになる。
【0076】
そして、回転器26が、ステージすなわち波面制御器13を最適な回転角度の位置に固定した上で、計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により波面制御信号を求める。これにより、記録媒体12の個別の記録領域に生じる歪みによる再生光の波面の乱れを補償するように制御がなされることになる。なお、ホログラム記録装置1Bの動作は、図5を参照して説明したホログラム記録装置1の動作と同様であり、計測制御装置25が波面制御信号を求める方法は、第1実施形態または第2実施形態の方法と同様である。したがって、その説明を省略する。
【0077】
[具体例3]
具体例1と同様な前提条件を用いて、適応度と世代の関係を求めると共に、ページデータを補償した。ただし、収束条件はk=29とした。
<適応度と世代の関係>
図10は、本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置で算出された世代と適応度Fitとの関係の一例を示すグラフである。前記した式(2)のパラメータFitは、図10に示すように、計測制御装置の処理前、すなわち、補償前(世代k=0)のときに「21.9」であった。パラメータFitの値は、補償により増加し、25世代以降は、値が飽和し、最終的に、補償後(世代k=29)のときに「27.8」であった。
【0078】
<撮像されたページデータの具体例>
図11は、本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置で再生された再生データの画像の一例を示す図であって、(a)は補償前、(b)は補償後をそれぞれ示している。補償前には、図11(a)に示すように、中央にだけオンビット(白)が現れていた。補償後には、図11(b)に示すように、中央だけではなく全領域にオンビット(白)が現れ、輝度均一性が向上した。ここで、画像を128×128ブロックに分割して求めた。128×128ブロック内のSNRの最小値は、補償前には「−2.5[dB]」であったが、補償後には、「2.0[dB]」に増加した。
【0079】
第3実施形態のホログラム記録装置1Bによれば、回転器26によって、波面制御器13を搭載したステージを回転させて、波面制御器13に入射する参照光の入射角度を最適にした上で、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により波面制御信号を求める。したがって、回転器26の調整で、記録媒体12の全記録領域に亘って生じる歪みによる再生像の劣化を補償し、波面制御信号により、記録媒体12の個別の記録領域によって生じる歪みによる再生像の劣化を補償することができる。
【0080】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。第4実施形態のホログラム記録装置1Cは、記録媒体12から再生される再生光がレンズ23に入射した後にCCD24に直接撮像されるのではなく、波面制御器27に反射され、さらに、ミラー28で反射された後でCCD24に撮像されるように構成され、計測制御装置25が波面制御器27をも制御する点を除いて、構成が第1実施形態と同じなので、同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0081】
波面制御器(第2の波面制御器)27は、波面制御器13で反射した参照光が照射された記録媒体12により再生される2次元離散データの再生光の波面の状態を第2の波面制御信号に基づいて変化させて反射するものである。この波面制御器27は、波面制御器13と同様に例えばデフォーマブルミラーにより構成される。
【0082】
計測制御装置25は、CCD24で撮像された再生データの画像の輝度を計測し、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により再生データの画像ごとに、波面制御信号および第2の波面制御信号をそれぞれ求め、求めた波面制御信号を波面制御器13にそれぞれ出力すると共に、第2の波面制御信号を波面制御器27にそれぞれ出力する。第4実施形態では、計測制御装置25は、はじめに波面制御器13の制御を行って、波面制御器13の最適な条件を求め、この条件下において、波面制御器27の制御を行い、波面制御器27に最適な条件を求める。
【0083】
第4実施形態のホログラム記録装置1Cによれば、波面制御器13によって、参照光を制御することで再生光を間接的に制御すると共に、波面制御器27によって、再生光の波面を直接的に制御することで、記録媒体12に記録された干渉縞の歪みを補償することができる。
【0084】
(第5実施形態)
ホログラム記録では、角度多重やシフト多重を用いて記録媒体内に複数のページデータが記録される。つまり、記録媒体内には複数の再生対象ページがある。媒体収縮による歪みは、隣り合ったページデータ間や近い範囲のページデータ間では、歪み方が類似する。しかしながら、離れたページデータ間では歪み方が異なる。このような理由から、1ページ目のページデータで補償した結果(1ページ目の最適値)を、2ページ目以降の各ページデータに適応しても、すべてのページデータにとって望ましい結果がそれぞれ得られるわけではない。すべてのページデータにとって最も望ましい結果を得るためには、各ページごとに独立に補償を行えばよいが、ページ数が多くなればなるほど、補償のために要する時間が線形増加してしまうという問題がある。
【0085】
第5実施形態のホログラム記録装置1Dは、計測制御装置25の処理において、記録媒体に多重記録された2ページ目以降のページデータに対する処理が1ページ目と異なっているものの、遺伝的アルゴリズムの適応度および装置構成が第1実施形態と同じなので、構成の図面および構成の説明を省略する(図1および図5を適宜参照)。
【0086】
図13は、本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による複数のページデータの補償の流れを示す説明図である。
(P1)初めに、1ページ目のページデータの補償を行う。ここでは、初期集団を、記録条件と同じ遺伝子を持つ個体(図13では単に記録条件と表記した)と、ランダムに設定された遺伝子を持つ個体(図13では単にランダムと表記した)とから構成する。そして、図5に示すフローチャートに従って、遺伝的アルゴリズムにより各パラメータを最適化する(P1a)。最終的には最大の適応度を有する個体を、1ページ目を補償する最適値(1ページ目の最適値)として求める。
【0087】
(P2)次に、2ページ目のページデータの補償を行う。ここでは、2ページ目の初期集団を、記録条件と同じ遺伝子を持つ個体と、ランダムに設定された遺伝子を持つ個体と、1ページ目において最大の適応度を有する個体(1ページ目の最適値)とから構成する。そして、同様にして遺伝的アルゴリズムにより各パラメータを最適化する(P2a)。最終的には最大の適応度を有する個体を、2ページ目を補償する最適値として求める。
【0088】
(Pm)以下、同様にして、一般にmページ目のページデータの補償を行う場合、mページ目の初期集団を、記録条件と同じ遺伝子を持つ個体と、ランダムに設定された遺伝子を持つ個体と、m−1ページ目において最大の適応度を有する個体(m−1ページ目の最適値)とから構成する。そして、同様にして遺伝的アルゴリズムにより各パラメータを最適化する(Pma)。最終的には最大の適応度を有する個体を、mページ目を補償する最適値として求める。
【0089】
[具体例]
図14は、本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による1ページ目の補償の具体例を示す説明図であり、図15は、2ページ目以降の補償の具体例を示す説明図である。ここでは、遺伝的アルゴリズムで用いるパラメータは、例えば、それぞれ、以下の値をもつものとした。すなわち、集団に属す個体の個数nを20個、遺伝子を波面制御器13の複数の駆動部の設定値0〜192とする。また、世代交代数を1ページ目については30世代、2ページ目以降については3世代とする。つまり、2ページ目以降の世代交代数は、1ページ目の世代交代数よりも小さい。その理由については後記する実験例で説明する。
【0090】
この場合、1ページ目の補償では、図14に示すように、世代k=0の初期集団P0は、1ページ目のページデータの記録条件と同じ遺伝子を持つ1個の個体I1Wと、ランダムに設定された遺伝子を持つ19個の個体とから構成される。ここで、個体I1Wは、図2(c)に示すような波面制御器13の表面13aの状態に対応している。つまり、反射面の状態を示す情報を、遺伝的アルゴリズムにおける個体の情報として用いている。この初期集団P0から、前記したように、複製と交叉により、個体数2n=40の集団P0’が構成され、さらに、例えば、確率Fm=0.1で突然変異を起こした個体を含む個体数2n=40からなる集団P0”が構成される。そして、集団P0”において、適応度(式(2)に示すパラメータFit)の上位20個が世代k=1の初期集団P1となる。
【0091】
そして、同様に世代交代を繰り返すと、最後に、世代交代数が30となったときの集団P30”において、適応度最大(第1位)の個体が、最適化された個体I1Rとして求められる。この個体I1Rの遺伝子、すなわち、波面制御器13の駆動部13bが設定値(0〜192のいずれか)となるように指示する波面制御信号が計測制御装置25から出力される。これにより、1ページ目のホログラム再生時に、1ページ目の再生画像を補償することができる。
【0092】
次に、2ページ目(以下では、ページ数を(2)のように表記する)の補償では、図15に示すように、2ページ目において、世代k=0の個体数n=20の初期集団P0(2)は、2ページ目のページデータの記録条件と同じ遺伝子を持つ1個の個体I2Wと、1ページ目の最適値である1個の個体I1Rと、ランダムに設定された遺伝子を持つ18個の個体とから構成される。
【0093】
2ページ目の初期集団P0(2)についても、1ページ目と同様にして世代交代を繰り返す。最後に、世代交代数が3となったときの集団P3”(2)において、適応度最大(第1位)の個体が、2ページ目の最適化された個体I2Rとして求められる。これにより、2ページ目のホログラム再生時に、2ページ目の再生画像を補償することができる。
【0094】
同様に、3ページ目の補償では、図15に示すように、3ページ目において、世代k=0の個体数n=20の初期集団P0(3)は、3ページ目のページデータの記録条件と同じ遺伝子を持つ1個の個体I3Wと、直前のページである2ページ目の最適値である1個の個体I2Rと、ランダムに設定された遺伝子を持つ18個の個体とから構成される。世代交代を繰り返した結果、最後には、世代交代数が3となったときの集団P3”(3)において、適応度最大(第1位)の個体が、3ページ目の最適化された個体I3Rとして求められる。これにより、3ページ目のホログラム再生時に、3ページ目の再生画像を補償することができる。4ページ目以降も同様に処理される。
【0095】
[実験例]
図16は、本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置で算出された1ページ目の世代交代数と適応度との関係の一例を示すグラフであり、図17は、2ページ目の世代交代数と適応度との関係の一例を示すグラフである。図16および図17のグラフでは、横軸は世代交代数、縦軸は、任意単位[arb. unit]の適応度を示している。図5のフローチャートにしたがって各ページとも50世代まで世代交代を繰り返して補償を行った。50世代までの各世代の最大適応度(式(2)のfit)をそれぞれ求め、最終50世代の最大適応度を1に正規化してグラフを作成した。なお、世代交代数0は、補償前を意味する。
【0096】
1ページ目の補償については、そのページデータに対して、5回の試行を行った(試行結果をe,f,g,h,kで示す)。このように1ページ目のページデータに対して複数回の試行を行った理由は、初期集団には、ランダム設定された多数の個体が存在するために、初期集団に属す個体群によって、最適化されるまでの適応度の変化が異なるからである。図16に示すように、試行結果e〜kにおいて適応度が最適値「1」の95%になるときの世代交代数は、6〜21世代程度であった。
【0097】
2ページ目の補償については、そのページデータに対して4回の試行を行った(a,b,c,d)。図17に示すように、試行a〜dにおいて適応度が最適値「1」の95%になるときの世代交代数は、3世代以内であった。2ページ目の補償では、初期集団に記録条件、ランダム設定値と共に1ページ目の最適値を含めている。
【0098】
一方、図16に示す試行結果e〜kは、別の観点からは、2ページ目のページデータの補償を行う際に、1ページ目の最適値を含めなかった場合に相当する。つまり、図17のグラフの比較例になっていると言える。これらの比較から、1ページ目のページデータの補償の最適条件を含ませて初期集団を構成することにより、最適条件を含ませない初期集団より速く補償できると結論できる。以上の考察から、前記した具体例では、2ページ目の初期集団P0(2)についての世代交代数を「3」として、1ページ目の世代交代数「30」よりも小さいものとした。なお、ここに挙げた世代交代数は一例である。
【0099】
第5実施形態のホログラム記録装置1Dによれば、前ページのページデータの補償の最適条件を用いて補償を行うことにより、ホログラム記録装置において生じる再生光の輝度分布の不均一性、再生データの劣化あるいは波面の乱れを補償するときの補償速度を向上させることができる。これにより、ホログラムから再生された2次元離散データのSNRが改善され、その補償速度が向上する。また、ホログラム記録装置1Dによるホログラムの参照光の制御方法は、従来のホログラム記録技術の光学系の中に容易に組み込むことができる。さらに、この参照光の制御方法は、ホログラム記録装置に限らずに、入力波面に対して非線形な光学歪みを生じさせる素子を含む光学系に対しても利用することが可能である。
【0100】
[第5実施形態の変形例]
図18は、本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による2ページ目以降の補償の変形例を示す説明図である。この変形例では、図18に示すように、2ページ目の最適化された個体I2Rが求められたときに、2ページ目の再生画像を補償するだけではなく、さらに、次のページである3ページ目のホログラム再生時に、3ページ目の再生画像を補償するために利用する。つまり、この場合、3ページ目については、遺伝的アルゴリズム(図5のフローチャートの処理)を省略し、3ページ目についての適応度最大の個体I3Rは、2ページ目についての適応度最大の個体I2Rと同じであるとみなす。
【0101】
続いて、4ページ目の補償では、図18に示すように、世代k=0の個体数n=20の初期集団P0(4)は、4ページ目のページデータの記録条件と同じ遺伝子を持つ1個の個体I4Wと、2つ前のページである2ページ目の最適値である1個の個体I2Rと、ランダムに設定された遺伝子を持つ18個の個体とから構成される。そして、遺伝的アルゴリズムにより4ページ目の最適化された個体I4Rを求める。これは、4ページ目の再生画像を補償するだけではなく、さらに、次のページである5ページ目のホログラム再生時に、5ページ目の再生画像を補償するためにも利用する。以下、同様に、遺伝的アルゴリズムの実行と、その省略とをページごとに交互に繰り返す。
【0102】
前記した例では4ページ目以降については、偶数ページにおいて2ページ前の最適値を初期集団に含めるようにして、奇数ページについては遺伝的アルゴリズムの実行を省略するものとした。つまり、基準とするページ(ここでは偶数ページ:m−1)で得られた最適値を次のページ(m)とその次のページ(m+1)で利用するものとした。これに限らず、多重記録されているページ数によっても変動するが、基準とするページ(m−1)で得られた最適値を、例えば、その後の3ページ「m、m+1、m+2」にわたって利用してもよい。ただし、補償性能と補償時間とは、トレードオフの関係になる。そのため 、遺伝的アルゴリズム(図5のフローチャートの処理)を省略するページを増やすことで全ページに係る補償時間の低減を重視するか、あるいは、全ページに係る補償時間よりもページデータの再生画像から媒体収縮による歪みの影響を除去する補償性能を重視するか、については実装の都合に合わせて適宜選択することができる。
【0103】
この変形例によれば、多重記録された全ページの再生画像を補償するときに、遺伝的アルゴリズム(図5のフローチャートの処理)を省略する分だけ、全ページに係る補償時間をさらに低減できる。
【0104】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲でさまざまに実施することができる。例えば、各実施形態では、波面制御器13(27)をデフォーマブルミラーとして説明したが、デフォーマブルミラーの代わりに液晶素子を使用することも可能である。また、各実施形態では、再生光の強度分布(輝度分布)を計測して参照光を制御するものとしたが、これに加えて再生光の波面を計測する波面センサを設けて、計測された再生光の波面の状態も考慮して参照光を制御することもできる。
【0105】
また、第4実施形態では、波面制御器13の制御を行ってから波面制御器27の制御を行うものとしたが、2つの波面制御器13、27を同時に制御するように構成することも可能である。この場合、例えば、遺伝子を、波面制御器13、27のピン(駆動部)の値として設定し、また、波面制御器13、27の各表面の状態を一度に想定した状態を個体として設定することで、適応度が最適になるように制御することができる。
【0106】
また、第5実施形態では、第1実施形態と同様な装置構成であるものとして説明したが、第3または第4実施形態と同様な装置構成でも実現できる。また、第5実施形態では、適応度を前記した式(2)のFitを算出するものとして説明したが、前記した式(3)のFitnessを算出するようにしてもよい。
【0107】
また、各実施形態では、遺伝的アルゴリズムの処理の一例を示す図5のフローチャートにおいて、ステップS10の収束条件を満足したか否かを判別する処理を、世代交代数が所定の回数(例えばk=30)以上になったか否かを判別するものとしたが、これに限定されない。例えば、直前のステップS9で決定した集団に属する個体群の適応度の最大値が、予め定めた値以上になったか否かを判別することとしてもよい。これにより、遺伝的アルゴリズムにおいて、記録媒体ごと、ページごと、あるいは、試行ごとにそれぞれ初期集団が異なるにも関わらず、多重記録された各ページの補償性能を均一化できる。
【符号の説明】
【0108】
1、1B、1C ホログラム記録装置
2 レーザ
3 ビームエキスパンダ
4 コリメートレンズ
5 半波長板
6、28 ミラー
7、8 偏光ビームスプリッタ
9 空間光変調素子
10、22 シャッタ
11、14、15、16、23 レンズ
12 記録媒体
13、27 波面制御器
13a 表面
13b ピン(駆動部)
24 CCD
25 計測制御装置
26 回転器
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィに係り、特に、ホログラム記録装置、ホログラム再生装置および遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速・大容量を目指したホログラム記録再生方式を利用した種々の多重記録再生装置が提案され、例えば図19に示す光学系を備えたホログラム記録装置が知られている。図19に示すホログラム記録装置101において、レーザ102から出射されたレーザ光は、ビームエキスパンダ103、コリメートレンズ104、半波長板105を通過してミラー106で反射して偏光ビームスプリッタ107に入射する。そして、レーザ光は、偏光ビームスプリッタ107により物体光と参照光に分けられる。このうち物体光は、偏光ビームスプリッタ108を透過し、空間光変調素子109上に照射される。そして、物体光は、空間光変調素子109に表示された画像(ページデータ)で変調され、ページデータの情報が担持された信号光として偏光ビームスプリッタ108に戻る。
【0003】
この信号光は、偏光ビームスプリッタ108で反射して、シャッタ110を通過して集光用のレンズ111を介して記録媒体(ホログラム記録媒体)112に到達する。一方、参照光はミラー121で反射し、変調されずにシャッタ122を通過して記録媒体112に到達する。そして、信号光と参照光が形成する干渉縞を記録媒体112に記録することにより、ページデータを記録することができる。記録媒体112に記録されたページデータを再生する場合、参照光のみを記録媒体112に照射すると、この参照光は記録媒体112で回折し、ページデータの信号が付加されている再生光(ページデータの再生像)が得られる。このページデータの再生像は、例えば、CCD(Charge Couple Device)124等の二次元撮像素子により撮像することができる。
【0004】
ところで、記録媒体112としてフォトポリマー媒体を使用した場合には、記録時に記録媒体112に歪み(媒体歪み)が生じてしまうことが知られている。また、記録時の媒体温度と再生時の媒体温度とが異なる場合、記録時と再生時の記録媒体112の歪み度合いも異なったものとなる。そのため、再生時において、記録時の条件と同様の条件で参照光を記録媒体112に入射したとしても、記録したページデータを誤りなく再生することが困難であり、再生された画像(再生データ)が劣化してしまうことになる。そこで、記録媒体112としてフォトポリマー媒体を使用した場合においても、記録媒体112の歪みによる再生データの劣化を低減可能とするような適応光学を用いた補償方法が検討されている(非特許文献1参照)。
【0005】
非特許文献1に記載の制御方法では、薄膜ミラーを上下方向(光軸方向)に動かす複数のピンを有したデフォーマブルミラー(Deformable Mirror:可変形鏡)で反射した参照光を記録媒体に照射することでホログラムの記録および再生を行っている。また、デフォーマブルミラーの設定値とホログラムからの再生光との関係は非線形なので、伝達関数が複雑になりフィードバック制御は困難であるため、遺伝的アルゴリズムを用いた制御を行っている。なお、このような非線形性な光学系ではフィードバック制御が困難であることは非特許文献2に記載されている。
【0006】
遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)では、複数の個体(Individual)からなる個体群である集団(Population)を想定している。また、各個体の形質を規定する要素として遺伝子(Gene)や複数の遺伝子の集まりである染色体(Chromosome)が定義され、遺伝子レベルの複製(reproduction)、交叉(Crossover)、突然変異(Mutation)等が繰り返し実行される。そして、適応度(Fitness)に基づいて環境に最もよく適合した個体が、次世代(generation)を形成していく。
【0007】
非特許文献1に記載の制御方法では、デフォーマブルミラーの表面の薄膜ミラーの状態を個体(Individual)、各ピンの駆動位置の値を遺伝子(Gene)としている。そして、非特許文献1に記載の制御方法では、記録媒体112としてフォトポリマー媒体を使用した場合に、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により、記録媒体112の歪みによる再生データの劣化を低減できることを示すことを主眼としている。そのため、物体光を変調するために表示されるページデータが、すべてのビットがオンである白色画像であるものと仮定し、適応度は、再生像のS/N比(SNR:Signal to Noise ratio)に関連するように、再生像の白の平均輝度μおよび標準偏差σから得られる変動係数の逆数μ/σであるものとしている。なお、白色画像の補償では、適応度は、このような再生画像の輝度均一性を評価する変動係数のほか、例えば、再生光波面のゼルニケ係数のRMSを用いる場合もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T. Muroi, et.al.,”Improved Intensity and Distribution in Reconstructed Beam Using Adaptive Optics in Holographic Data Storage”, Tech. Dig. ISOM’07, Th-K-02, p. 280-287, 2007
【非特許文献2】T. Muroi, et. al.,”Compensation and Improvement of Intensity and Distribution in Reconstructed Image Using Adaptive Optics in Holographic Data Storage", Jpn. J. Appl. Phys.,Vol. 47, No. 7, p. 5900-5903, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1に記載の制御方法では、フォトポリマー媒体を使用するときに、ページデータが白色画像であり、かつ、それに対応した適応度μ/σを仮定してSNRを向上させているため、ページデータが、白と黒のビットパターンによる2値画像である場合には、それに対応した新たな適応度が必要となる。この新たな適応度としては、再生像の白の平均輝度μ1および標準偏差σ1と、黒の平均輝度μ0および標準偏差σ0とを用いて、再生像のSNRに対応するように定義しなければならない。新たな適応度の定義によっては、遺伝的アルゴリズムの処理過程で、波面の状態が変化した結果として、記録媒体から再生された暗い再生像を撮像してしまった場合に、その再生像の適応度が高いものと判定されてしまい、記録媒体112の歪みによる再生像の劣化を補償できないばかりか、最終的に暗い画像が得られてしまう場合が生じ得る。そのため、フォトポリマー媒体を使用し、ページデータが、白と黒のビットパターンによる2値画像であっても、記録媒体112の歪みによる再生像の劣化を補償できる技術が要望されている。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、ホログラム記録媒体に形成された干渉縞の歪みによる再生像の劣化を補償する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、まず、請求項1に記載のホログラム記録装置は、レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備え、ホログラム再生の前段階の処理として、遺伝的アルゴリズムにより、記録媒体への参照光の照射、再生光の撮像、撮像された再生データの画像の輝度の計測、参照光の波面制御の一連の処理を繰り返し行うホログラム記録装置であって、前記計測制御装置が、前記再生データの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含むパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度としてそれぞれ算出し、前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出したパラメータを最適な値にし、前記パラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めることとした。
【0012】
かかる構成によれば、ホログラム記録装置は、波面制御器によって反射した参照光を記録媒体に照射し、撮像装置によって、記録媒体から再生された白と黒のビットパターンによる2次元離散データの再生光を撮像し、計測制御装置によって、撮像された再生データの画像の輝度を計測し、波面制御信号を波面制御器に出力する一連の処理を繰り返す。そして、ホログラム記録装置は、撮像された再生データの画像ごとに、計測制御装置によって、白の変動係数の自乗と黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する白および黒の平均輝度の差を含むパラメータを、遺伝的アルゴリズムの適応度として算出し、このパラメータが最適な値になったときの波面制御信号を求める。遺伝的アルゴリズムの適応度に用いるパラメータをこのように定義したので、遺伝的アルゴリズムの処理過程で、波面の状態が変化した結果として、記録媒体から再生された暗い再生像を撮像してしまったとしても、その再生像の適応度は高いものと判定されることはなく、SNRを向上させることができる。したがって、パラメータが最適な値になったときの波面制御信号を波面制御器に出力したときに最適化された参照光の波面の状態が得られる。この最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。
【0013】
また、請求項2に記載のホログラム記録装置は、レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備え、ホログラム再生の前段階の処理として、遺伝的アルゴリズムにより、記録媒体への参照光の照射、再生光の撮像、撮像された再生データの画像の輝度の計測、参照光の波面制御の一連の処理を繰り返し行うホログラム記録装置であって、前記計測制御装置が、前記再生データの画像を、複数のブロックに分割し、前記ブロックの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータをそれぞれ算出し、前記ブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータについての平均値、標準偏差および変動係数を算出し、前記第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出し、前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出した第2のパラメータを最適な値にし、前記第2のパラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めることとした。
【0014】
かかる構成によれば、ホログラム記録装置は、波面制御器によって反射した参照光を記録媒体に照射し、撮像装置によって、記録媒体から再生された白と黒のビットパターンによる2次元離散データの再生光を撮像し、計測制御装置によって、撮像された再生データの画像を複数のブロックに分割した上でブロック別に輝度を計測し、波面制御信号を波面制御器に出力する一連の処理を繰り返す。そして、ホログラム記録装置は、分割したブロックの画像ごとに、計測制御装置によって、白の変動係数の自乗と黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する白および黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータを算出し、ブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータについての平均値、標準偏差および変動係数を算出する。そして、計測制御装置は、第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを遺伝的アルゴリズムの適応度として算出し、このパラメータが最適な値になったときの波面制御信号を求める。ここで、遺伝的アルゴリズムの適応度に用いる第2のパラメータを算出する前に求められるブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータは、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理を考慮して適応度が正しいSNRを反映する方向に収束することを保証する。すなわち、遺伝的アルゴリズムの処理過程で、波面の状態が変化した結果として、記録媒体から再生された暗い再生像を撮像してしまったとしても、その再生像の適応度は高いものと判定されることはない。また、第2のパラメータを遺伝的アルゴリズムの適応度に用いるので、SNRを向上させることができる。したがって、パラメータが最適になったときの波面制御信号を波面制御器に出力したときに最適化された参照光の波面の状態が得られる。この最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。また、再生画像を分割したので、レーザ光の輝度分布に起因する再生画像全体の輝度分布の影響を低減して評価することができる。
【0015】
また、請求項3に記載のホログラム記録装置は、請求項1または請求項2に記載のホログラム記録装置であって、前記計測制御装置が、前記遺伝的アルゴリズムの適応度を最適な値にする際に、前記光学系において前記物体光と前記参照光により前記2次元離散データが複数ページにわたって多重記録された記録媒体に対して再生データを得るために参照光を照射したときの波面制御器の反射面の状態を示す情報を、前記遺伝的アルゴリズムにおける個体の情報として用いて、個体群である集団の初期値の世代の初期状態に対して、前記記録媒体に再生対象ページの2次元離散データが記録されたときの波面制御器の反射面の状態に対応した個体と、前記記録時とは無関係にランダムに設定した波面制御器の反射面の状態に対応した個体とを含む初期集団を決定し、前記初期集団を起点にして、前記個体ごとに算出した適応度が集団の中で高い個体群を残すように集団の世代を順次交代し、最終的に残した集団の中で適応度が最大の個体の遺伝子を当該再生対象ページにおける前記波面制御信号として求め、前記再生対象ページが2ページ目以降である場合に、当該再生対象ページよりも前のページにおいて適応度が最大の個体として求められた個体をさらに含めて当該再生対象ページの初期集団を決定することとした。
【0016】
かかる構成によれば、ホログラム記録装置は、計測制御装置によって、2ページ目以降の再生対象ページについての初期集団に、以前のページにおいて最適化された個体を含めた上で、遺伝的アルゴリズムを実行する。そのため、適応度が最大値に収束するまでの世代交代数は、2ページ目以降については1ページ目よりも低減できる。その理由は、記録媒体に、複数のページデータを角度多重やシフト多重を用いて多重記録した場合、隣り合ったページ間や近い範囲のページ間では記録媒体の歪み方が類似するからである。このように、前ページまでのページデータの補償の最適条件を用いて2ページ目以降の再生対象ページの補償を行うことにより、多重記録された複数のページデータ全体を速く補償することができる。
【0017】
また、請求項4に記載のホログラム記録装置は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のホログラム記録装置であって、前記波面制御器を搭載したステージを有して前記ステージの回転角度の位置を示す角度制御信号に基づいて前記ステージを回転させて、前記波面制御器に入射する参照光の入射角度を変化させる回転器をさらに備え、前記計測制御装置が、前記角度制御信号を前記回転器に出力し、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測の結果に基づいて輝度分布が最も良好となったときの回転角度を求め、求めた回転角度の位置に前記ステージを固定させた上で、前記遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により前記波面制御信号を求めることとした。
【0018】
かかる構成によれば、ホログラム記録装置は、計測制御装置によって、角度制御信号を回転器に出力し、回転器によって、波面制御器を搭載したステージを回転させて、記録媒体に入射する参照光の入射角度を変化させる。そして、計測制御装置は、撮像された再生データの画像の輝度を計測した結果に基づいて輝度分布が最も良好となったときの回転角度の位置にステージを固定させる。これにより、記録媒体の全記録領域に亘って生じる歪みによる再生像の劣化を補償することができる。そして、ホログラム記録装置は、波面制御器のステージ位置を固定した上で、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により波面制御信号を求める。これにより、記録媒体の個別の記録領域によって生じる歪みによる再生像の劣化を補償することができる。
【0019】
また、請求項5に記載のホログラム記録装置は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のホログラム記録装置であって、前記波面制御器で反射した参照光が照射された前記記録媒体により再生される2次元離散データの再生光の波面の状態を第2の波面制御信号に基づいて変化させて反射する第2の波面制御器をさらに備え、前記撮像装置が、前記第2の波面制御器で反射した再生光を撮像し、前記計測制御装置が、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、前記遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により前記再生データの画像ごとに、前記波面制御信号および前記第2の波面制御信号をそれぞれ求め、求めた波面制御信号を前記波面制御器にそれぞれ出力すると共に、前記第2の波面制御信号を前記第2の波面制御器にそれぞれ出力することとした。
【0020】
かかる構成によれば、ホログラム記録装置は、第2の波面制御器によって、記録媒体から再生される2次元離散データの再生光の波面の状態を変化させて反射し、撮像装置によって、反射した再生光を撮像し、計測制御装置によって、撮像された再生データの画像の輝度を計測し、再生データの画像ごとに、波面制御信号および第2の波面制御信号を求める。したがって、ホログラム記録装置は、波面制御器によって、参照光を制御することで再生光を間接的に制御すると共に、第2の波面制御器によって、再生光の波面を直接的に制御することで、記録媒体に記録された干渉縞の歪みを補償することができる。
【0021】
また、請求項6に記載のホログラムの参照光の制御方法は、レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記記録媒体から再生された再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データを計測する計測制御装置とを備えるホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法であって、前記ホログラム記録装置が、ホログラム再生の前段階の処理として、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、第4ステップととからなる一連の処理を繰り返し行うこととした。
【0022】
かかる手順によれば、ホログラム記録装置は、第1ステップにて、前記光学系によって、前記参照光を前記波面制御器に照射し、第2ステップにて、前記波面制御器によって、前記入射した参照光の波面の状態を変化させて前記記録媒体に照射する。そして、ホログラム記録装置は、第3ステップにて、前記撮像装置によって、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像し、第4ステップにて、前記計測制御装置によって、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する。そして、ホログラム記録装置は、前記第4ステップにおいて、前記計測制御装置が、前記再生データの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含むパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出するステップと、前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出したパラメータを最適な値にするステップと、前記パラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めるステップとを含んで実行する。したがって、最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。
【0023】
また、請求項7に記載のホログラムの参照光の制御方法は、レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記記録媒体から再生された再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データを計測する計測制御装置とを備えるホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法であって、前記ホログラム記録装置が、ホログラム再生の前段階の処理として、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、第4ステップととからなる一連の処理を繰り返し行うこととした。
【0024】
かかる手順によれば、ホログラム記録装置は、第1ステップにて、前記光学系によって、前記参照光を前記波面制御器に照射し、第2ステップにて、前記波面制御器によって、前記入射した参照光の波面の状態を変化させて前記記録媒体に照射する。そして、ホログラム記録装置は、第3ステップにて、前記撮像装置によって、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像し、第4ステップにて、前記計測制御装置によって、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する。そして、ホログラム記録装置は、前記第4ステップにおいて、前記計測制御装置が、前記再生データの画像を、複数のブロックに分割し、前記ブロックの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータをそれぞれ算出するステップと、前記ブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータについての平均値、標準偏差および変動係数を算出し、前記第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出するステップと、前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出した第2のパラメータを最適な値にするステップと、前記第2のパラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めるステップとを含んで実行する。したがって、最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。
【0025】
また、請求項8に記載のホログラムの参照光の制御方法は、請求項6または請求項7に記載のホログラムの参照光の制御方法であって、前記遺伝的アルゴリズムの適応度を最適な値にするステップに、初期集団決定ステップと、世代交代ステップとを含むこととした。
【0026】
かかる手順によれば、ホログラム記録装置は、前記計測制御装置が、初期集団決定ステップにて、前記光学系において前記物体光と前記参照光により前記2次元離散データが複数ページにわたって多重記録された記録媒体に対して再生データを得るために参照光を照射したときの波面制御器の反射面の状態を示す情報を、前記遺伝的アルゴリズムにおける個体の情報として用いて、個体群である集団の初期値の世代の初期状態に対して、前記記録媒体に再生対象ページの2次元離散データが記録されたときの波面制御器の反射面の状態に対応した個体と、前記記録時とは無関係にランダムに設定した波面制御器の反射面の状態に対応した個体とを含む初期集団を決定する。そして、前記計測制御装置は、世代交代ステップにて、前記初期集団を起点にして、前記個体ごとに算出した適応度が集団の中で高い個体群を残すように集団の世代を順次交代し、最終的に残した集団の中で適応度が最大の個体の遺伝子を当該再生対象ページにおける前記波面制御信号として求める。そして、前記計測制御装置が、前記初期集団決定ステップにて、前記再生対象ページが2ページ目以降である場合に、当該再生対象ページよりも前のページにおいて前記世代交代ステップで適応度が最大の個体として求められた個体をさらに含めて当該再生対象ページの初期集団を決定する。
【0027】
したがって、本発明のホログラムの参照光の制御方法では、2ページ目以降の再生対象ページについての初期集団に、以前のページにおいて最適化された個体を含めた上で、遺伝的アルゴリズムを実行するので、適応度が最大値に収束するまでの世代交代数は、2ページ目以降については1ページ目よりも低減できる。このように、前ページまでのページデータの補償の最適条件を用いて2ページ目以降の再生対象ページの補償を行うことにより、多重記録された複数のページデータ全体を速く補償することができる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1または請求項6に記載の発明によれば、ホログラム記録装置は、遺伝的アルゴリズムの適応度として、白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、白の変動係数の自乗と黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する白および黒の平均輝度の差を含むパラメータを算出する。したがって、フォトポリマー媒体を用いて白と黒のビットパターンによる2値画像をページデータとして採用したとしても、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理による誤判定を防止してSNRを向上させることができる。そして、遺伝的アルゴリズムで最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。そのため、干渉縞の歪みによる再生像の劣化は補償されている。
【0029】
請求項2または請求項7に記載の発明によれば、ホログラム記録装置は、再生データの画像を複数のブロックに分割し、ブロックの画像ごとに、白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、白の変動係数の自乗と黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する白および黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータを算出し、遺伝的アルゴリズムの適応度として、第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを算出する。したがって、フォトポリマー媒体を用いて白と黒のビットパターンによる2値画像をページデータとして採用したとしても、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理による誤判定を防止すると共にSNRを向上させることができる。そして、遺伝的アルゴリズムで最適化された波面の参照光が記録媒体に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。そのため、干渉縞の歪みによる再生像の劣化は補償されている。
【0030】
請求項3または請求項8に記載の発明によれば、ホログラム記録装置は、2ページ目以降の再生対象ページについての初期集団に、以前のページにおいて最適化された個体を含めた上で、遺伝的アルゴリズムを実行する。したがって、適応度が最大値に収束するまでの世代交代数は、2ページ目以降については1ページ目よりも低減できる。その結果、多重記録された複数のページデータ全体を速く補償することができる。
【0031】
請求項4に記載の発明によれば、ホログラム記録装置は、回転器によって、波面制御器を搭載したステージを回転させて、波面制御器に入射する参照光の入射角度を最適にした上で、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により波面制御信号を求める。したがって、回転器の調整で、記録媒体の全記録領域に亘って生じる歪みによる再生光の波面の乱れを補償し、波面制御信号により、記録媒体の個別の記録領域によって生じる歪みによる再生光の波面の乱れを補償することができる。
【0032】
請求項5に記載の発明によれば、ホログラム記録装置は、波面制御器によって、参照光を制御することで再生光を間接的に制御すると共に、第2の波面制御器によって、再生光の波面を直接的に制御することで、記録媒体に記録された干渉縞の歪みを補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。
【図2】図1に示した波面制御器による効果の説明図である。
【図3】図1に示した計測制御装置が実行する遺伝的アルゴリズムの説明図である。
【図4】図1に示した計測制御装置が算出する適応度の説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置で算出された世代とパラメータFitnessとの関係の一例を示すグラフである。
【図7】本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置で再生された再生データの画像の一例を示す図であって、(a)は補償前、(b)は補償後をそれぞれ示している。
【図8】本発明の第2実施形態に係るホログラム記録装置による適応度の算出処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置で算出された世代と適応度Fitとの関係の一例を示すグラフである。
【図11】本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置で再生された再生データの画像の一例を示す図であって、(a)は補償前、(b)は補償後をそれぞれ示している。
【図12】本発明の第4実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による複数のページデータの補償の流れを示す説明図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による1ページ目の補償の具体例を示す説明図である。
【図15】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による2ページ目以降の補償の具体例を示す説明図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置で算出された1ページ目の世代交代数と適応度との関係の一例を示すグラフである。
【図17】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置で算出された2ページ目の世代交代数と適応度との関係の一例を示すグラフである。
【図18】本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による2ページ目以降の補償の変形例を示す説明図である。
【図19】従来のホログラム記録装置の光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明のホログラム記録装置を実施するための形態(以下「実施形態」という)について詳細に説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。ホログラム記録装置1は、ホログラム用の記録媒体への干渉縞の形成の動作と、この干渉縞が形成された記録媒体を用いた再生像の劣化を補償した高品位な像を再生するための前段階の処理(以下、単に前処理という)の動作とを行うものである。なお、本実施形態では、ホログラム記録装置1は、前処理の結果としての高品位な像の再生機能をも有している。このホログラム記録装置1では、記録媒体12として、フォトポリマーを使用する。また、ホログラム記録装置1は、従来のホログラム記録装置101(図19参照)と比較すると、ミラー121(図19参照)の代わりに、波面制御器13を備えており、さらに、この波面制御器13およびCCD24とそれぞれ接続された計測制御装置25を備えている点が異なっている。
【0036】
計測制御装置25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えた一般的なパーソナルコンピュータ、および、HDD(Hard Disk Drive)に記憶されRAMに展開されるプログラムを備えている。計測制御装置25は、前記したハードウェア資源とソフトウェアとが協働することにより後記する各機能が実現されるものである。また、このプログラムは、通信回線を介して提供することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0037】
ここで、波面制御器13の概要について図2を参照して説明する。図2は、図1に示した波面制御器による効果を示す説明図である。記録媒体12としてフォトポリマーを使用すると、干渉縞形成時(記録時)において、図2(a)に示すように、白と黒のビットパターン201による2次元離散データ(以下、単に、ビットパターンという)の情報を担持した信号光をレンズ11で集光し、平面波の参照光と干渉させて記録媒体12に形成する干渉縞には、符号202で示すように歪みが生じてしまう。再生時において、仮に波面制御器13が無い場合、図2(b)に示すように、干渉縞形成時に照射した平面波の参照光を記録媒体12に照射することで再生される再生光を、CCD24で撮影した場合、記録されたビットパターンは干渉縞の歪みの影響により部分的に得られない。例えば、CCD撮影像203では、符号204で示す位置の情報が得られず、SNRが低下してしまう。
【0038】
波面制御器13は、例えば、デフォーマブルミラーから構成される。この場合、波面制御器13は、図2(c)に示すように、薄膜ミラーからなる表面13aが、上下方向(光軸方向)に動く複数(図では19本)のピン(駆動部)13bにより動かされることで、入射光の波面の状態を変化させて反射することができる。なお、ピン13bは、例えばピエゾアクチュエータで駆動される。
【0039】
この波面制御器13のピン13bの上下の駆動位置の値がそれぞれ最適に定められると、波面制御器13の表面13aへ入射する光の波面の状態を最適な状態に変化させて反射することが可能である。したがって、波面制御器13のピン13bの駆動位置を最適な状態(波面制御器13が最適な状態)としたときに、波面制御器13に対して、図2(b)に示した平面波の参照光を入射すると、波面制御器13の表面13aで反射した参照光の波面は干渉縞の歪みを補償する形状になる。そして、この波面制御された参照光を記録媒体12に照射することで再生される再生光は、干渉縞の歪みの影響が取り除かれる。この再生光を、レンズ23を通してCCD24で撮影すると、符号205で示す再生像が得られる。これにより、再生像を改善することができる。なお、波面制御器13を最適な状態に設定するために、後記するように、計測制御装置25がCCD24で撮影された再生データを計測して、計測結果に応じた制御信号を波面制御器13に出力する試行(処理)を遺伝的アルゴリズムにより繰り返す。
【0040】
図1に戻って、ホログラム記録装置1の説明を続ける。
<干渉縞形成時>
ホログラム記録装置1において、レーザ(レーザ光源)2から出射されたレーザ光は、ビームエキスパンダ3によりビーム径が拡大され、コリメートレンズ4により平行光にされ、半波長板5で偏光方向を変換されてミラー6で反射して偏光ビームスプリッタ7に入射する。そして、レーザ光は、偏光ビームスプリッタ7により物体光と参照光に分けられる。このうち物体光は、偏光ビームスプリッタ8を透過し、空間光変調素子9上に照射される。そして、物体光は、空間光変調素子9に表示された白と黒のビットパターンによる2次元離散データの画像(ページデータ)で変調され、白と黒の2値画像の情報が担持された信号光として偏光ビームスプリッタ8に戻る。
【0041】
この信号光は、偏光ビームスプリッタ8で反射して、シャッタ10を通過して集光用のレンズ11を介して記録媒体(ホログラム記録媒体)12に到達する。一方、参照光は、波面制御器13に入射し、その波面が変化した状態で反射し、シャッタ22を通過して記録媒体12に到達する。なお、参照光の光路中のシャッタ22の前後にはレンズ14、16が配設されている。そして、信号光と参照光との干渉により記録媒体12に干渉縞が形成される。この干渉縞により記録媒体12にページデータを記録することができる。
【0042】
<前処理>
ホログラム記録装置1は、記録媒体12に記録されたページデータを、干渉縞の歪みによる劣化を補償した高品位な像として再生するために、前処理として、遺伝的アルゴリズムを用いて参照光の波面の状態を事前に最適化しておく。前処理において、波面制御器13は、計測制御装置25からの波面制御信号に基づいて参照光の波面の状態を変化させて反射する。波面制御器13で反射した参照光が記録媒体12に照射されることにより、記録媒体12から2次元離散データが再生される。この再生光はレンズ23を介してCCD(CCD撮像装置)24により撮像される。計測制御装置25は、撮像された再生データの画像の輝度を計測し、波面制御信号を求め、求めた波面制御信号を波面制御器13に出力する。このように、記録媒体12への参照光の照射、再生光の撮像、撮像された再生データの画像の輝度の計測、参照光の波面制御の一連の動作を繰り返しながら、計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により、再生データの画像ごとに波面制御信号をそれぞれ求める。ホログラム記録装置1は、この一連の動作の繰り返しにより、高品位な像として再生するための最適な波面制御信号を決定する。
【0043】
ここで、遺伝的アルゴリズムと、波面制御器13との関係について図3を参照して説明する。図3は、図1に示した計測制御装置が実行する遺伝的アルゴリズムの説明図である。この遺伝的アルゴリズムにおいて、集団Pは、複数の個体Iから構成される。ここで、波面制御器13の表面13a(図2(c)参照)の状態を個体Iとする。図3(a)に示すように、第k世代の集団Pkは、例えば、10個の個体I1〜I10から構成される。図3(a)に示す個体Iは、駆動部ナンバー301と、遺伝子302とを有している。駆動部ナンバー301は、波面制御器13のピン13b(図2(c)参照)の識別子である。遺伝子302は、波面制御器13のピン13b(図2(c)参照)の上下方向(光軸方向)の駆動位置を示す値である。図3(a)に示す個体Iは、一例として、8個の遺伝子、つまり、8本のピンを備えている。
【0044】
計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムの処理において、例えば、「複製」、「交叉」、「突然変異」を行う。計測制御装置25は、「複製」の処理において、第k世代の集団Pkの全ての個体Iを選択して複製する。例えば、個体I1と個体I10の複製は、図3(b)に示すように、個体303、304が生成される。
【0045】
計測制御装置25は、「交叉」の処理において、第k世代の集団Pkから選択した任意の2個の個体Iを交叉する。例えば、個体I1と、個体I10とが選択された場合、交叉により、図3(c)に示すように、個体305、306が生成される。なお、図3(c)に示した例は、符号307で示す位置を交叉点とした一点交叉により生成されたものである。なお、交叉については、例えば、二点交叉、多点交叉、一様交叉を用いてもよい。
【0046】
計測制御装置25は、「突然変異」の処理において、第k世代の集団Pkから任意の1個の個体Iをランダムに選択し、その個体Iの任意の1個の遺伝子の値をランダムに書き換える。突然変異を起こす確率Fmは、例えば、0.01のように予め設定することができる。この場合、100個の個体につき1個の個体が突然変異することになる。なお、選択する個体Iの個数や遺伝子の個数は、これに限定されない。また、選択方法は、ランダムに選択する代わりに予め定めた規則により選択するようにしてもよい。
【0047】
ここで、計測制御装置25の算出する遺伝的アルゴリズムの適応度について図4を参照して説明する。図4は、図1に示した計測制御装置が算出する適応度の説明図である。
図4(a)は、実際のホログラム記録で用いられるページデータ(2次元離散データ)の再生像の一例である。再生データのSNRを改善するために、遺伝的アルゴリズムの適応度として、仮に式(1)に示すSNRを単純に用いた場合には、このSNRが最大になるように最適化を行えばよいと考えられる。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、μ1、σ1はオンビット(白)の平均輝度および標準偏差、μ0、σ0はオフビット(黒)の平均輝度および標準偏差を表している。μ1、σ1、μ0、σ0の一例を図4(b)に示す。
【0050】
式(1)を適応度とし、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理を用いて最適化を行うときに、暗い再生像が測定されると、オンビットの標準偏差σ1が小さくなる。そのため、式(1)のSNRの値が高いにも関わらず、再生像は暗く、ビットが検出できない。暗い再生像に対応した輝度分布の他の例を図4(c)に示す。輝度の度数分布が輝度の低い側(左側)に極端に移動し、分布の広がりが小さくなるばかりではなく、オンビットとオフビットとの境界が検出できなくなる。このように、適応度として式(1)のSNRを単純に用いた場合、再生像を補償することができない場合がある。
【0051】
そこで、計測制御装置25は、再生像の輝度の計測において、再生データの画像ごとに、白の平均輝度μ1、輝度の標準偏差σ1および変動係数c1(=σ1/μ1)と、黒の平均輝度μ0、輝度の標準偏差σ0および変動係数c0(=σ0/μ0)とをそれぞれ算出すると共に、再生データの画像ごとに、式(2)に示すパラメータFitを、遺伝的アルゴリズムの適応度としてそれぞれ算出する。
【0052】
【数2】
【0053】
さらに、計測制御装置25は、算出したパラメータFitを遺伝的アルゴリズムにより最大化したときに(最適な値にしたときに)波面制御器13に出力されていた波面制御信号を、記録媒体12に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号(最適解)として求める。なお、計測制御装置25は、SNR[dB]に対応させて、式(3)のパラメータFitnessを算出することができ、これを遺伝的アルゴリズムの適応度にすることもできる。その他、式(2)および式(3)において、定数を加算したり定数倍したりしてもよいことは勿論である。
【0054】
【数3】
【0055】
<再生時>
前記した前処理の後、記録媒体12に記録されたページデータを再生する場合、計測制御装置25は、前処理で求められた最適解の波面制御信号を波面制御器13に出力する。波面制御器13は、最適解の波面制御信号に基づいて参照光の波面の状態を変化させて反射する。この波面制御器13で反射した参照光を記録媒体12に照射すると、参照光は記録媒体12で回折し、2次元離散データ(ページデータ)の信号が付加されている再生光(白と黒の2値画像)が高品位な再生像として得られる。
【0056】
[ホログラム記録装置の動作]
次に、図1に示したホログラム記録装置1の動作について、図5を参照(適宜図1ないし図3参照)して説明する。図5は、本発明の第1実施形態に係るホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムの動作を示すフローチャートである。ホログラム記録装置1は、前提として、記録媒体12へ干渉縞を形成した後に、次の第1ステップ〜第4ステップの一連の処理を行う。すなわち、第1ステップにて、図1に示す光学系によって、参照光を波面制御器13に照射する。そして、第2ステップにて、波面制御器13によって、入射した参照光の波面の状態を変化させて記録媒体12に照射する。そして、第3ステップにて、CCD24によって、波面の状態が変化した参照光が照射された記録媒体12から再生された2次元離散データの再生光を撮像する。そして、第4ステップにて、計測制御装置25によって、撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を波面制御器13に出力する。
【0057】
前記した第1ステップ〜第4ステップの一連の処理の中で、第4ステップにおいて、ホログラム記録装置1は、計測制御装置25によって、世代kを初期化する(ステップS1)。すなわち、k=0とする。そして、計測制御装置25は、個体数nからなる第0世代の集団P0(初期状態の集団P0)を決定し、初期状態の集団(初期集団)P0に属す個体の1つに記録時(干渉縞形成時)の波面制御器13の状態を含ませ、その他の個体の遺伝子はランダムに決定する(ステップS2)。すなわち、1つの個体は、干渉縞形成時の波面制御器13の表面13aの状態を生み出したそれぞれのピン(駆動部)13bの設定値をそのまま遺伝子として含ませ、他の個体については、波面制御器13のピン(駆動部)13bの設定値をランダムに決定する。そして、計測制御装置25は、第k世代の集団Pkから選択した任意の2個体に対して、「複製」と「交叉」をすることで4個体を生成し(ステップS3)、ステップS3の処理を(n/2)回繰り返したか否かを判別する(ステップS4)。
【0058】
ステップS3の処理を(n/2)回繰り返して実行していない場合(ステップS4:No)、計測制御装置25は、ステップS3に戻る。ステップS3の処理を(n/2)回繰り返して実行した場合(ステップS4:Yes)、1回ごとに4個体生成されるので、合計2n個(=4×(n/2)個)の個体が生成されることになる。計測制御装置25は、この生成した合計2n個の個体からなる集団Pk’に対して、確率Fmで突然変異を起こす個体を選択し、その個体の遺伝子をランダムに決定し直す(ステップS5)。そして、計測制御装置25は、突然変異を起こした個体を含む個体数2nからなる集団Pk”に属す各個体の遺伝子(数値)を波面制御器13の各ピン(駆動部)13bの値として設定する(ステップS6)。計測制御装置25は、設定した遺伝子(各駆動部の値)を制御信号として波面制御器13に出力する。
【0059】
続いて、ホログラム記録装置1は、各ピン(駆動部)13bの値が設定された波面制御器13を用いて、ページデータの再生光をCCD24で撮像する(ステップS7)。そして、ホログラム記録装置1は、計測制御装置25によって、撮像された再生データの画像に基づいて、集団Pk”に属す個体ごとに、適応度を算出する(ステップS8)。具体的には、ホログラム記録装置1は、前記した第1ステップ〜第4ステップの一連の処理を繰り返すので、ステップS7とステップS8とを交互に繰り返すことになる。このうち、ステップS8において、計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムに従って、前記した式(2)で示すFitをそれぞれ算出するステップを実行する。
【0060】
そして、計測制御装置25は、算出した適応度の上位n個の個体からなる集団を次世代の集団として決定し(ステップS9)、収束条件を満足したか否かを判別する(ステップS10)。本実施形態では、世代kが所定の回数(例えばk=30)以上になったか否かを判別する。収束条件を満たさない場合(ステップS10:No)、計測制御装置25は、kの値に1を加え(ステップS11)、ステップS9で決定した集団の世代(世代数)を、このインクリメントしたk(k=k+1)として、ステップS3に戻る。つまり、計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムにより一連の処理を行うときに対象とするすべての再生データの画像のうちで、算出したパラメータを最適な値にするステップを実行する。
【0061】
一方、ステップS10において、収束条件を満たした場合(ステップS10:Yes)、計測制御装置25は、第k世代においてステップS9で決定した集団に属す適応度最大の個体の遺伝子を、波面制御器13の各ピン(駆動部)13bの設定値として確定し(ステップS12)、処理を終了する。このステップS12は、パラメータが最適な値になったときに波面制御器13に出力されていた波面制御信号を、記録媒体12に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めるステップである。
【0062】
[具体例1]
前提条件を以下の通りにした。波面制御器13は19本のピン(駆動部)13bを有し、駆動部の駆動位置が「0」〜「192」に設定可能であるものとした。遺伝的アルゴリズムの処理において、集団Pが20個の個体Iからなるものとした。なお、個体Iの遺伝子の個数は「19」、遺伝子の値は「0」〜「192」である。突然変異の確率Fmを「0.1」とした。計測制御装置25は、世代kが「30」以上であるときに収束条件を満たすものと判定した。
【0063】
<適応度と世代の関係>
図6は、第1実施形態に係るホログラム記録装置1で算出された世代とパラメータFitnessとの関係の一例を示すグラフである。前記した式(3)のパラメータFitnessは、図6に示すように、計測制御装置25の処理前、すなわち、補償前(世代k=0)のときに「16.1[dB]」であった。パラメータFitnessの値は、補償により増加し、20世代以降は、値が飽和し、最終的に、補償後(世代k=30)のときに「24.0[dB]」であった。
【0064】
<撮像されたページデータの具体例>
図7は、第1実施形態に係るホログラム記録装置1で再生された再生データの画像の一例を示す図であって、(a)は補償前、(b)は補償後をそれぞれ示している。図7(a)および図7(b)では、枠内の画像データを補償した。補償前には、図7(a)に示すように、枠内の左半分にオンビット(白)がほとんど現れなかった。補償後には、図7(b)に示すように、枠内のオンビット(白)の輝度均一性が向上した。なお、図7(b)のビットデータの画像がデコードされることで有意味の画像が表示されることになる。
【0065】
第1実施形態のホログラム記録装置1によれば、遺伝的アルゴリズムの適応度として、式(2)に示すFitを算出するので、フォトポリマー媒体を用いて白と黒のビットパターンによる2値画像をページデータとして採用したとしても、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理による誤判定を防止してSNRを向上させることができる。また、遺伝的アルゴリズムで最適化された波面の参照光が記録媒体12に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体12に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。そのため、干渉縞の歪みによる再生像の劣化は補償されている。また、ホログラム記録装置1による制御方法(遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法)は、従来のホログラム記録装置に対して容易に適用することができ、従来よりも大容量記録を実現するホログラム記録装置を提供することが可能となる。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態のホログラム記録装置1Aは、遺伝的アルゴリズムの適応度が異なり、計測制御装置25の処理が異なっているものの、構成が第1実施形態と同じなので、図面および構成の説明を省略する。また、ホログラム記録装置1Aの動作は、図5を参照して説明したホログラム記録装置1の動作と同様である。ただし、前記したステップS8における計測制御装置25の処理が異なる。以下、その相違点について、図8を参照(適宜図1および図2参照)して説明する。
【0067】
図8は、本発明の第2実施形態に係るホログラム記録装置による適応度の算出処理を示すフローチャートである。ホログラム記録装置1Aは、前記したステップS7に続いて、計測制御装置25によって、適応度の算出処理を実行する(ステップS21〜S31)。計測制御装置25は、突然変異後の個体数2nからなる集団Pk”に属す個体Ii(i=1〜2n)の遺伝子が設定された波面制御器13を用いて再生データをそれぞれ取得する(ステップS21)。具体的には、ホログラム記録装置1Aは、波面制御器13によって反射した参照光を記録媒体12に照射し、CCD24によって、記録媒体12から再生された白と黒のビットパターンによる2次元離散データの再生光を撮像し、計測制御装置25によって、撮像された再生データの画像の輝度を計測し、波面制御信号を波面制御器13に出力する一連の処理を繰り返す。この中で、計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムに従って、以下の動作を行う。
【0068】
計測制御装置25は、個体の識別子iを初期化する(ステップS22)。すなわち、i=1とする。そして、計測制御装置25は、個体Iiを用いて取得した再生データの画像をM個のブロックBj(j=1〜M)に分割する(ステップS23)。例えば、1つのブロックが128×128画素の複数個のブロックに分割する。ここで、計測制御装置25は、ブロック識別子jを「1」とする(ステップS24)。そして、計測制御装置25は、その時点のブロック識別子jのブロックBjにおいて、前記した式(2)に示すFitをブロック識別子jに関連付けた第1のパラメータFit(j)として算出する(ステップS25)。そして、計測制御装置25は、すべてのブロックを選択したか(j=Mであるか)否かを判別する(ステップS26)。選択していないブロックがある(j≠Mである)場合(ステップS26:No)、計測制御装置25は、jの値に1を加え(ステップS27)、ステップS25に戻る。
【0069】
一方、すべてのブロックを選択した(j=Mである)場合(ステップS26:Yes)、計測制御装置25は、選択した各ブロックのFit(j)の平均値と標準偏差を求め、求めたFit(j)の平均値と標準偏差から、個体Iiに対応した変動係数c(i)を算出する(ステップS28)。なお、変動係数c(i)は、i番目の再生データについてのFit(j)の標準偏差を、Fit(j)の平均値で除したものである。さらに、計測制御装置25は、変動係数c(i)の逆数を含む第2のパラメータF(i)を個体Iiに対応した適応度として算出する(ステップS29)。
【0070】
続いて、計測制御装置25は、個体Iiを用いて取得した再生データの画像をすべて選択したか(i=2nであるか)否かを判別する(ステップS30)。まだ選択していない再生データの画像がある(i≠2nである)場合(ステップS30:No)、計測制御装置25は、iの値に1を加え(ステップS31)、ステップS23に戻る。一方、再生データの画像をすべて選択した(i=2nである)場合(ステップS30:Yes)、突然変異後の個体数2nからなる集団Pk”に属す各個体Iiに対応した適応度がそれぞれ算出されたことになるので、計測制御装置25は、前記したステップS9(図5参照)に戻る。
【0071】
[具体例2]
第1実施形態の具体例1として示した図7(a)および図7(b)において、枠内の画像を256×256ブロックに分割して求め、これを具体例2とした。ブロック内のSNRは、補償前に「−19.4[dB]」であったが、補償後に「3.3[dB]」に増加した。
【0072】
第2実施形態のホログラム記録装置1Aによれば、再生データの画像を複数のブロックに分割し、ブロックの画像ごとに、式(2)に示すFitを第1のパラメータとして算出し、遺伝的アルゴリズムの適応度として、第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを算出する。したがって、フォトポリマー媒体を用いて白と黒のビットパターンによる2値画像をページデータとして採用したとしても、遺伝的アルゴリズムの繰り返し処理による誤判定を防止してSNRを向上させることができる。また、遺伝的アルゴリズムで最適化された波面の参照光が記録媒体12に照射されたときに生成される再生光は、記録媒体12に形成された干渉縞の歪みが補償されたときの光である。そのため、干渉縞の歪みによる再生像の劣化は補償されている。また、再生画像を分割したので、レーザ光の輝度分布に起因する再生画像全体の輝度分布の影響を低減して評価することができる。
【0073】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。第3実施形態のホログラム記録装置1Bは、回転器26を備え、計測制御装置25の機能が異なる点を除いて、構成が第1実施形態と同じなので、同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0074】
回転器26は、波面制御器13を搭載したステージを有して、このステージの回転角度の位置を示す角度制御信号に基づいてステージを回転させて、波面制御器13に入射する参照光の入射角度を変化させるものである。回転器26は、例えば、ステージ(敷設台)の略中心位置を回転軸として回動自在とされてなる。
【0075】
計測制御装置25は、角度制御信号を回転器26に出力し、このときCCD24で撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測の結果に基づいて輝度分布が最も良好となったときの回転角度を求め、求めた回転角度の位置にステージを固定させるための角度制御信号を回転器26に出力する。これにより、記録媒体12の全記録領域に亘って生じる歪みによる再生光の波面の乱れを補償するように制御がなされることになる。
【0076】
そして、回転器26が、ステージすなわち波面制御器13を最適な回転角度の位置に固定した上で、計測制御装置25は、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により波面制御信号を求める。これにより、記録媒体12の個別の記録領域に生じる歪みによる再生光の波面の乱れを補償するように制御がなされることになる。なお、ホログラム記録装置1Bの動作は、図5を参照して説明したホログラム記録装置1の動作と同様であり、計測制御装置25が波面制御信号を求める方法は、第1実施形態または第2実施形態の方法と同様である。したがって、その説明を省略する。
【0077】
[具体例3]
具体例1と同様な前提条件を用いて、適応度と世代の関係を求めると共に、ページデータを補償した。ただし、収束条件はk=29とした。
<適応度と世代の関係>
図10は、本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置で算出された世代と適応度Fitとの関係の一例を示すグラフである。前記した式(2)のパラメータFitは、図10に示すように、計測制御装置の処理前、すなわち、補償前(世代k=0)のときに「21.9」であった。パラメータFitの値は、補償により増加し、25世代以降は、値が飽和し、最終的に、補償後(世代k=29)のときに「27.8」であった。
【0078】
<撮像されたページデータの具体例>
図11は、本発明の第3実施形態に係るホログラム記録装置で再生された再生データの画像の一例を示す図であって、(a)は補償前、(b)は補償後をそれぞれ示している。補償前には、図11(a)に示すように、中央にだけオンビット(白)が現れていた。補償後には、図11(b)に示すように、中央だけではなく全領域にオンビット(白)が現れ、輝度均一性が向上した。ここで、画像を128×128ブロックに分割して求めた。128×128ブロック内のSNRの最小値は、補償前には「−2.5[dB]」であったが、補償後には、「2.0[dB]」に増加した。
【0079】
第3実施形態のホログラム記録装置1Bによれば、回転器26によって、波面制御器13を搭載したステージを回転させて、波面制御器13に入射する参照光の入射角度を最適にした上で、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により波面制御信号を求める。したがって、回転器26の調整で、記録媒体12の全記録領域に亘って生じる歪みによる再生像の劣化を補償し、波面制御信号により、記録媒体12の個別の記録領域によって生じる歪みによる再生像の劣化を補償することができる。
【0080】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態に係るホログラム記録装置の光学系を示す図である。第4実施形態のホログラム記録装置1Cは、記録媒体12から再生される再生光がレンズ23に入射した後にCCD24に直接撮像されるのではなく、波面制御器27に反射され、さらに、ミラー28で反射された後でCCD24に撮像されるように構成され、計測制御装置25が波面制御器27をも制御する点を除いて、構成が第1実施形態と同じなので、同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0081】
波面制御器(第2の波面制御器)27は、波面制御器13で反射した参照光が照射された記録媒体12により再生される2次元離散データの再生光の波面の状態を第2の波面制御信号に基づいて変化させて反射するものである。この波面制御器27は、波面制御器13と同様に例えばデフォーマブルミラーにより構成される。
【0082】
計測制御装置25は、CCD24で撮像された再生データの画像の輝度を計測し、遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により再生データの画像ごとに、波面制御信号および第2の波面制御信号をそれぞれ求め、求めた波面制御信号を波面制御器13にそれぞれ出力すると共に、第2の波面制御信号を波面制御器27にそれぞれ出力する。第4実施形態では、計測制御装置25は、はじめに波面制御器13の制御を行って、波面制御器13の最適な条件を求め、この条件下において、波面制御器27の制御を行い、波面制御器27に最適な条件を求める。
【0083】
第4実施形態のホログラム記録装置1Cによれば、波面制御器13によって、参照光を制御することで再生光を間接的に制御すると共に、波面制御器27によって、再生光の波面を直接的に制御することで、記録媒体12に記録された干渉縞の歪みを補償することができる。
【0084】
(第5実施形態)
ホログラム記録では、角度多重やシフト多重を用いて記録媒体内に複数のページデータが記録される。つまり、記録媒体内には複数の再生対象ページがある。媒体収縮による歪みは、隣り合ったページデータ間や近い範囲のページデータ間では、歪み方が類似する。しかしながら、離れたページデータ間では歪み方が異なる。このような理由から、1ページ目のページデータで補償した結果(1ページ目の最適値)を、2ページ目以降の各ページデータに適応しても、すべてのページデータにとって望ましい結果がそれぞれ得られるわけではない。すべてのページデータにとって最も望ましい結果を得るためには、各ページごとに独立に補償を行えばよいが、ページ数が多くなればなるほど、補償のために要する時間が線形増加してしまうという問題がある。
【0085】
第5実施形態のホログラム記録装置1Dは、計測制御装置25の処理において、記録媒体に多重記録された2ページ目以降のページデータに対する処理が1ページ目と異なっているものの、遺伝的アルゴリズムの適応度および装置構成が第1実施形態と同じなので、構成の図面および構成の説明を省略する(図1および図5を適宜参照)。
【0086】
図13は、本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による複数のページデータの補償の流れを示す説明図である。
(P1)初めに、1ページ目のページデータの補償を行う。ここでは、初期集団を、記録条件と同じ遺伝子を持つ個体(図13では単に記録条件と表記した)と、ランダムに設定された遺伝子を持つ個体(図13では単にランダムと表記した)とから構成する。そして、図5に示すフローチャートに従って、遺伝的アルゴリズムにより各パラメータを最適化する(P1a)。最終的には最大の適応度を有する個体を、1ページ目を補償する最適値(1ページ目の最適値)として求める。
【0087】
(P2)次に、2ページ目のページデータの補償を行う。ここでは、2ページ目の初期集団を、記録条件と同じ遺伝子を持つ個体と、ランダムに設定された遺伝子を持つ個体と、1ページ目において最大の適応度を有する個体(1ページ目の最適値)とから構成する。そして、同様にして遺伝的アルゴリズムにより各パラメータを最適化する(P2a)。最終的には最大の適応度を有する個体を、2ページ目を補償する最適値として求める。
【0088】
(Pm)以下、同様にして、一般にmページ目のページデータの補償を行う場合、mページ目の初期集団を、記録条件と同じ遺伝子を持つ個体と、ランダムに設定された遺伝子を持つ個体と、m−1ページ目において最大の適応度を有する個体(m−1ページ目の最適値)とから構成する。そして、同様にして遺伝的アルゴリズムにより各パラメータを最適化する(Pma)。最終的には最大の適応度を有する個体を、mページ目を補償する最適値として求める。
【0089】
[具体例]
図14は、本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による1ページ目の補償の具体例を示す説明図であり、図15は、2ページ目以降の補償の具体例を示す説明図である。ここでは、遺伝的アルゴリズムで用いるパラメータは、例えば、それぞれ、以下の値をもつものとした。すなわち、集団に属す個体の個数nを20個、遺伝子を波面制御器13の複数の駆動部の設定値0〜192とする。また、世代交代数を1ページ目については30世代、2ページ目以降については3世代とする。つまり、2ページ目以降の世代交代数は、1ページ目の世代交代数よりも小さい。その理由については後記する実験例で説明する。
【0090】
この場合、1ページ目の補償では、図14に示すように、世代k=0の初期集団P0は、1ページ目のページデータの記録条件と同じ遺伝子を持つ1個の個体I1Wと、ランダムに設定された遺伝子を持つ19個の個体とから構成される。ここで、個体I1Wは、図2(c)に示すような波面制御器13の表面13aの状態に対応している。つまり、反射面の状態を示す情報を、遺伝的アルゴリズムにおける個体の情報として用いている。この初期集団P0から、前記したように、複製と交叉により、個体数2n=40の集団P0’が構成され、さらに、例えば、確率Fm=0.1で突然変異を起こした個体を含む個体数2n=40からなる集団P0”が構成される。そして、集団P0”において、適応度(式(2)に示すパラメータFit)の上位20個が世代k=1の初期集団P1となる。
【0091】
そして、同様に世代交代を繰り返すと、最後に、世代交代数が30となったときの集団P30”において、適応度最大(第1位)の個体が、最適化された個体I1Rとして求められる。この個体I1Rの遺伝子、すなわち、波面制御器13の駆動部13bが設定値(0〜192のいずれか)となるように指示する波面制御信号が計測制御装置25から出力される。これにより、1ページ目のホログラム再生時に、1ページ目の再生画像を補償することができる。
【0092】
次に、2ページ目(以下では、ページ数を(2)のように表記する)の補償では、図15に示すように、2ページ目において、世代k=0の個体数n=20の初期集団P0(2)は、2ページ目のページデータの記録条件と同じ遺伝子を持つ1個の個体I2Wと、1ページ目の最適値である1個の個体I1Rと、ランダムに設定された遺伝子を持つ18個の個体とから構成される。
【0093】
2ページ目の初期集団P0(2)についても、1ページ目と同様にして世代交代を繰り返す。最後に、世代交代数が3となったときの集団P3”(2)において、適応度最大(第1位)の個体が、2ページ目の最適化された個体I2Rとして求められる。これにより、2ページ目のホログラム再生時に、2ページ目の再生画像を補償することができる。
【0094】
同様に、3ページ目の補償では、図15に示すように、3ページ目において、世代k=0の個体数n=20の初期集団P0(3)は、3ページ目のページデータの記録条件と同じ遺伝子を持つ1個の個体I3Wと、直前のページである2ページ目の最適値である1個の個体I2Rと、ランダムに設定された遺伝子を持つ18個の個体とから構成される。世代交代を繰り返した結果、最後には、世代交代数が3となったときの集団P3”(3)において、適応度最大(第1位)の個体が、3ページ目の最適化された個体I3Rとして求められる。これにより、3ページ目のホログラム再生時に、3ページ目の再生画像を補償することができる。4ページ目以降も同様に処理される。
【0095】
[実験例]
図16は、本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置で算出された1ページ目の世代交代数と適応度との関係の一例を示すグラフであり、図17は、2ページ目の世代交代数と適応度との関係の一例を示すグラフである。図16および図17のグラフでは、横軸は世代交代数、縦軸は、任意単位[arb. unit]の適応度を示している。図5のフローチャートにしたがって各ページとも50世代まで世代交代を繰り返して補償を行った。50世代までの各世代の最大適応度(式(2)のfit)をそれぞれ求め、最終50世代の最大適応度を1に正規化してグラフを作成した。なお、世代交代数0は、補償前を意味する。
【0096】
1ページ目の補償については、そのページデータに対して、5回の試行を行った(試行結果をe,f,g,h,kで示す)。このように1ページ目のページデータに対して複数回の試行を行った理由は、初期集団には、ランダム設定された多数の個体が存在するために、初期集団に属す個体群によって、最適化されるまでの適応度の変化が異なるからである。図16に示すように、試行結果e〜kにおいて適応度が最適値「1」の95%になるときの世代交代数は、6〜21世代程度であった。
【0097】
2ページ目の補償については、そのページデータに対して4回の試行を行った(a,b,c,d)。図17に示すように、試行a〜dにおいて適応度が最適値「1」の95%になるときの世代交代数は、3世代以内であった。2ページ目の補償では、初期集団に記録条件、ランダム設定値と共に1ページ目の最適値を含めている。
【0098】
一方、図16に示す試行結果e〜kは、別の観点からは、2ページ目のページデータの補償を行う際に、1ページ目の最適値を含めなかった場合に相当する。つまり、図17のグラフの比較例になっていると言える。これらの比較から、1ページ目のページデータの補償の最適条件を含ませて初期集団を構成することにより、最適条件を含ませない初期集団より速く補償できると結論できる。以上の考察から、前記した具体例では、2ページ目の初期集団P0(2)についての世代交代数を「3」として、1ページ目の世代交代数「30」よりも小さいものとした。なお、ここに挙げた世代交代数は一例である。
【0099】
第5実施形態のホログラム記録装置1Dによれば、前ページのページデータの補償の最適条件を用いて補償を行うことにより、ホログラム記録装置において生じる再生光の輝度分布の不均一性、再生データの劣化あるいは波面の乱れを補償するときの補償速度を向上させることができる。これにより、ホログラムから再生された2次元離散データのSNRが改善され、その補償速度が向上する。また、ホログラム記録装置1Dによるホログラムの参照光の制御方法は、従来のホログラム記録技術の光学系の中に容易に組み込むことができる。さらに、この参照光の制御方法は、ホログラム記録装置に限らずに、入力波面に対して非線形な光学歪みを生じさせる素子を含む光学系に対しても利用することが可能である。
【0100】
[第5実施形態の変形例]
図18は、本発明の第5実施形態に係るホログラム記録装置による2ページ目以降の補償の変形例を示す説明図である。この変形例では、図18に示すように、2ページ目の最適化された個体I2Rが求められたときに、2ページ目の再生画像を補償するだけではなく、さらに、次のページである3ページ目のホログラム再生時に、3ページ目の再生画像を補償するために利用する。つまり、この場合、3ページ目については、遺伝的アルゴリズム(図5のフローチャートの処理)を省略し、3ページ目についての適応度最大の個体I3Rは、2ページ目についての適応度最大の個体I2Rと同じであるとみなす。
【0101】
続いて、4ページ目の補償では、図18に示すように、世代k=0の個体数n=20の初期集団P0(4)は、4ページ目のページデータの記録条件と同じ遺伝子を持つ1個の個体I4Wと、2つ前のページである2ページ目の最適値である1個の個体I2Rと、ランダムに設定された遺伝子を持つ18個の個体とから構成される。そして、遺伝的アルゴリズムにより4ページ目の最適化された個体I4Rを求める。これは、4ページ目の再生画像を補償するだけではなく、さらに、次のページである5ページ目のホログラム再生時に、5ページ目の再生画像を補償するためにも利用する。以下、同様に、遺伝的アルゴリズムの実行と、その省略とをページごとに交互に繰り返す。
【0102】
前記した例では4ページ目以降については、偶数ページにおいて2ページ前の最適値を初期集団に含めるようにして、奇数ページについては遺伝的アルゴリズムの実行を省略するものとした。つまり、基準とするページ(ここでは偶数ページ:m−1)で得られた最適値を次のページ(m)とその次のページ(m+1)で利用するものとした。これに限らず、多重記録されているページ数によっても変動するが、基準とするページ(m−1)で得られた最適値を、例えば、その後の3ページ「m、m+1、m+2」にわたって利用してもよい。ただし、補償性能と補償時間とは、トレードオフの関係になる。そのため 、遺伝的アルゴリズム(図5のフローチャートの処理)を省略するページを増やすことで全ページに係る補償時間の低減を重視するか、あるいは、全ページに係る補償時間よりもページデータの再生画像から媒体収縮による歪みの影響を除去する補償性能を重視するか、については実装の都合に合わせて適宜選択することができる。
【0103】
この変形例によれば、多重記録された全ページの再生画像を補償するときに、遺伝的アルゴリズム(図5のフローチャートの処理)を省略する分だけ、全ページに係る補償時間をさらに低減できる。
【0104】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲でさまざまに実施することができる。例えば、各実施形態では、波面制御器13(27)をデフォーマブルミラーとして説明したが、デフォーマブルミラーの代わりに液晶素子を使用することも可能である。また、各実施形態では、再生光の強度分布(輝度分布)を計測して参照光を制御するものとしたが、これに加えて再生光の波面を計測する波面センサを設けて、計測された再生光の波面の状態も考慮して参照光を制御することもできる。
【0105】
また、第4実施形態では、波面制御器13の制御を行ってから波面制御器27の制御を行うものとしたが、2つの波面制御器13、27を同時に制御するように構成することも可能である。この場合、例えば、遺伝子を、波面制御器13、27のピン(駆動部)の値として設定し、また、波面制御器13、27の各表面の状態を一度に想定した状態を個体として設定することで、適応度が最適になるように制御することができる。
【0106】
また、第5実施形態では、第1実施形態と同様な装置構成であるものとして説明したが、第3または第4実施形態と同様な装置構成でも実現できる。また、第5実施形態では、適応度を前記した式(2)のFitを算出するものとして説明したが、前記した式(3)のFitnessを算出するようにしてもよい。
【0107】
また、各実施形態では、遺伝的アルゴリズムの処理の一例を示す図5のフローチャートにおいて、ステップS10の収束条件を満足したか否かを判別する処理を、世代交代数が所定の回数(例えばk=30)以上になったか否かを判別するものとしたが、これに限定されない。例えば、直前のステップS9で決定した集団に属する個体群の適応度の最大値が、予め定めた値以上になったか否かを判別することとしてもよい。これにより、遺伝的アルゴリズムにおいて、記録媒体ごと、ページごと、あるいは、試行ごとにそれぞれ初期集団が異なるにも関わらず、多重記録された各ページの補償性能を均一化できる。
【符号の説明】
【0108】
1、1B、1C ホログラム記録装置
2 レーザ
3 ビームエキスパンダ
4 コリメートレンズ
5 半波長板
6、28 ミラー
7、8 偏光ビームスプリッタ
9 空間光変調素子
10、22 シャッタ
11、14、15、16、23 レンズ
12 記録媒体
13、27 波面制御器
13a 表面
13b ピン(駆動部)
24 CCD
25 計測制御装置
26 回転器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備え、ホログラム再生の前段階の処理として、遺伝的アルゴリズムにより、記録媒体への参照光の照射、再生光の撮像、撮像された再生データの画像の輝度の計測、参照光の波面制御の一連の処理を繰り返し行うホログラム記録装置であって、
前記計測制御装置は、
前記再生データの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含むパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度としてそれぞれ算出し、
前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出したパラメータを最適な値にし、
前記パラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めることを特徴とするホログラム記録装置。
【請求項2】
レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備え、ホログラム再生の前段階の処理として、遺伝的アルゴリズムにより、記録媒体への参照光の照射、再生光の撮像、撮像された再生データの画像の輝度の計測、参照光の波面制御の一連の処理を繰り返し行うホログラム記録装置であって、
前記計測制御装置は、
前記再生データの画像を、複数のブロックに分割し、前記ブロックの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータをそれぞれ算出し、
前記ブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータについての平均値、標準偏差および変動係数を算出し、前記第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出し、
前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出した第2のパラメータを最適な値にし、
前記第2のパラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めることを特徴とするホログラム記録装置。
【請求項3】
前記計測制御装置は、
前記遺伝的アルゴリズムの適応度を最適な値にする際に、
前記光学系において前記物体光と前記参照光により前記2次元離散データが複数ページにわたって多重記録された記録媒体に対して再生データを得るために参照光を照射したときの波面制御器の反射面の状態を示す情報を、前記遺伝的アルゴリズムにおける個体の情報として用いて、個体群である集団の初期値の世代の初期状態に対して、前記記録媒体に再生対象ページの2次元離散データが記録されたときの波面制御器の反射面の状態に対応した個体と、前記記録時とは無関係にランダムに設定した波面制御器の反射面の状態に対応した個体とを含む初期集団を決定し、
前記初期集団を起点にして、前記個体ごとに算出した適応度が集団の中で高い個体群を残すように集団の世代を順次交代し、最終的に残した集団の中で適応度が最大の個体の遺伝子を当該再生対象ページにおける前記波面制御信号として求め、
前記再生対象ページが2ページ目以降である場合に、当該再生対象ページよりも前のページにおいて適応度が最大の個体として求められた個体をさらに含めて当該再生対象ページの初期集団を決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホログラム記録装置。
【請求項4】
前記波面制御器を搭載したステージを有して前記ステージの回転角度の位置を示す角度制御信号に基づいて前記ステージを回転させて、前記波面制御器に入射する参照光の入射角度を変化させる回転器をさらに備え、
前記計測制御装置は、
前記角度制御信号を前記回転器に出力し、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測の結果に基づいて輝度分布が最も良好となったときの回転角度を求め、求めた回転角度の位置に前記ステージを固定させた上で、前記遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により前記波面制御信号を求めることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のホログラム記録装置。
【請求項5】
前記波面制御器で反射した参照光が照射された前記記録媒体により再生される2次元離散データの再生光の波面の状態を第2の波面制御信号に基づいて変化させて反射する第2の波面制御器をさらに備え、
前記撮像装置は、前記第2の波面制御器で反射した再生光を撮像し、
前記計測制御装置は、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、前記遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により前記再生データの画像ごとに、前記波面制御信号および前記第2の波面制御信号をそれぞれ求め、求めた波面制御信号を前記波面制御器にそれぞれ出力すると共に、前記第2の波面制御信号を前記第2の波面制御器にそれぞれ出力することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のホログラム記録装置。
【請求項6】
レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備えるホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法であって、
前記ホログラム記録装置は、ホログラム再生の前段階の処理として、
前記光学系によって、前記参照光を前記波面制御器に照射する第1ステップと、
前記波面制御器によって、前記入射した参照光の波面の状態を変化させて前記記録媒体に照射する第2ステップと、
前記撮像装置によって、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する第3ステップと、
前記計測制御装置によって、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する第4ステップとからなる一連の処理を繰り返し行い、
前記第4ステップにおいて、前記計測制御装置は、
前記再生データの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含むパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出するステップと、
前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出したパラメータを最適な値にするステップと、
前記パラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めるステップとを含んで実行することを特徴とするホログラムの参照光の制御方法。
【請求項7】
レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備えるホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法であって、
前記ホログラム記録装置は、ホログラム再生の前段階の処理として、
前記光学系によって、前記参照光を前記波面制御器に照射する第1ステップと、
前記波面制御器によって、前記入射した参照光の波面の状態を変化させて前記記録媒体に照射する第2ステップと、
前記撮像装置によって、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する第3ステップと、
前記計測制御装置によって、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する第4ステップとからなる一連の処理を繰り返し行い、
前記第4ステップにおいて、前記計測制御装置は、
前記再生データの画像を、複数のブロックに分割し、前記ブロックの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータをそれぞれ算出するステップと、
前記ブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータについての平均値、標準偏差および変動係数を算出し、前記第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出するステップと、
前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出した第2のパラメータを最適値にするステップと、
前記第2のパラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めるステップとを含んで実行することを特徴とするホログラムの参照光の制御方法。
【請求項8】
前記遺伝的アルゴリズムの適応度を最適な値にするステップは、
前記光学系において前記物体光と前記参照光により前記2次元離散データが複数ページにわたって多重記録された記録媒体に対して再生データを得るために参照光を照射したときの波面制御器の反射面の状態を示す情報を、前記遺伝的アルゴリズムにおける個体の情報として用いて、個体群である集団の初期値の世代の初期状態に対して、前記記録媒体に再生対象ページの2次元離散データが記録されたときの波面制御器の反射面の状態に対応した個体と、前記記録時とは無関係にランダムに設定した波面制御器の反射面の状態に対応した個体とを含む初期集団を決定する初期集団決定ステップと、
前記初期集団を起点にして、前記個体ごとに算出した適応度が集団の中で高い個体群を残すように集団の世代を順次交代し、最終的に残した集団の中で適応度が最大の個体の遺伝子を当該再生対象ページにおける前記波面制御信号として求める世代交代ステップとを含み、
前記初期集団決定ステップは、
前記再生対象ページが2ページ目以降である場合に、当該再生対象ページよりも前のページにおいて前記世代交代ステップで適応度が最大の個体として求められた個体をさらに含めて当該再生対象ページの初期集団を決定することを特徴とする請求項6または請求項7に記載のホログラムの参照光の制御方法。
【請求項1】
レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備え、ホログラム再生の前段階の処理として、遺伝的アルゴリズムにより、記録媒体への参照光の照射、再生光の撮像、撮像された再生データの画像の輝度の計測、参照光の波面制御の一連の処理を繰り返し行うホログラム記録装置であって、
前記計測制御装置は、
前記再生データの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含むパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度としてそれぞれ算出し、
前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出したパラメータを最適な値にし、
前記パラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めることを特徴とするホログラム記録装置。
【請求項2】
レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備え、ホログラム再生の前段階の処理として、遺伝的アルゴリズムにより、記録媒体への参照光の照射、再生光の撮像、撮像された再生データの画像の輝度の計測、参照光の波面制御の一連の処理を繰り返し行うホログラム記録装置であって、
前記計測制御装置は、
前記再生データの画像を、複数のブロックに分割し、前記ブロックの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータをそれぞれ算出し、
前記ブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータについての平均値、標準偏差および変動係数を算出し、前記第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出し、
前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出した第2のパラメータを最適な値にし、
前記第2のパラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めることを特徴とするホログラム記録装置。
【請求項3】
前記計測制御装置は、
前記遺伝的アルゴリズムの適応度を最適な値にする際に、
前記光学系において前記物体光と前記参照光により前記2次元離散データが複数ページにわたって多重記録された記録媒体に対して再生データを得るために参照光を照射したときの波面制御器の反射面の状態を示す情報を、前記遺伝的アルゴリズムにおける個体の情報として用いて、個体群である集団の初期値の世代の初期状態に対して、前記記録媒体に再生対象ページの2次元離散データが記録されたときの波面制御器の反射面の状態に対応した個体と、前記記録時とは無関係にランダムに設定した波面制御器の反射面の状態に対応した個体とを含む初期集団を決定し、
前記初期集団を起点にして、前記個体ごとに算出した適応度が集団の中で高い個体群を残すように集団の世代を順次交代し、最終的に残した集団の中で適応度が最大の個体の遺伝子を当該再生対象ページにおける前記波面制御信号として求め、
前記再生対象ページが2ページ目以降である場合に、当該再生対象ページよりも前のページにおいて適応度が最大の個体として求められた個体をさらに含めて当該再生対象ページの初期集団を決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホログラム記録装置。
【請求項4】
前記波面制御器を搭載したステージを有して前記ステージの回転角度の位置を示す角度制御信号に基づいて前記ステージを回転させて、前記波面制御器に入射する参照光の入射角度を変化させる回転器をさらに備え、
前記計測制御装置は、
前記角度制御信号を前記回転器に出力し、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測の結果に基づいて輝度分布が最も良好となったときの回転角度を求め、求めた回転角度の位置に前記ステージを固定させた上で、前記遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により前記波面制御信号を求めることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のホログラム記録装置。
【請求項5】
前記波面制御器で反射した参照光が照射された前記記録媒体により再生される2次元離散データの再生光の波面の状態を第2の波面制御信号に基づいて変化させて反射する第2の波面制御器をさらに備え、
前記撮像装置は、前記第2の波面制御器で反射した再生光を撮像し、
前記計測制御装置は、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、前記遺伝的アルゴリズムを用いた適応光学により前記再生データの画像ごとに、前記波面制御信号および前記第2の波面制御信号をそれぞれ求め、求めた波面制御信号を前記波面制御器にそれぞれ出力すると共に、前記第2の波面制御信号を前記第2の波面制御器にそれぞれ出力することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のホログラム記録装置。
【請求項6】
レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備えるホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法であって、
前記ホログラム記録装置は、ホログラム再生の前段階の処理として、
前記光学系によって、前記参照光を前記波面制御器に照射する第1ステップと、
前記波面制御器によって、前記入射した参照光の波面の状態を変化させて前記記録媒体に照射する第2ステップと、
前記撮像装置によって、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する第3ステップと、
前記計測制御装置によって、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する第4ステップとからなる一連の処理を繰り返し行い、
前記第4ステップにおいて、前記計測制御装置は、
前記再生データの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含むパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出するステップと、
前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出したパラメータを最適な値にするステップと、
前記パラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めるステップとを含んで実行することを特徴とするホログラムの参照光の制御方法。
【請求項7】
レーザ光から分離された物体光に白と黒のビットパターンによる2次元離散データを担持させた信号光と、前記レーザ光から分離された参照光とをホログラム用の記録媒体に照射可能に構成された光学系と、入射した前記参照光の波面の状態を変化させて反射して前記2次元離散データが記録された記録媒体に照射する波面制御器と、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する撮像装置と、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する計測制御装置とを備えるホログラム記録装置における遺伝的アルゴリズムを用いたホログラムの参照光の制御方法であって、
前記ホログラム記録装置は、ホログラム再生の前段階の処理として、
前記光学系によって、前記参照光を前記波面制御器に照射する第1ステップと、
前記波面制御器によって、前記入射した参照光の波面の状態を変化させて前記記録媒体に照射する第2ステップと、
前記撮像装置によって、前記波面の状態が変化した参照光が照射された前記記録媒体から再生された前記2次元離散データの再生光を撮像する第3ステップと、
前記計測制御装置によって、前記撮像された再生データの画像の輝度を計測し、計測結果に基づいて生成した波面制御信号を前記波面制御器に出力する第4ステップとからなる一連の処理を繰り返し行い、
前記第4ステップにおいて、前記計測制御装置は、
前記再生データの画像を、複数のブロックに分割し、前記ブロックの画像ごとに、前記ビットパターンにおける白および黒について、平均輝度、輝度の標準偏差および変動係数をそれぞれ算出し、当該白の変動係数の自乗と当該黒の変動係数の自乗との和の平方根に対する当該白および当該黒の平均輝度の差を含む第1のパラメータをそれぞれ算出するステップと、
前記ブロックの画像ごとに算出した第1のパラメータについての平均値、標準偏差および変動係数を算出し、前記第1のパラメータについての変動係数の逆数を含む第2のパラメータを、前記遺伝的アルゴリズムの適応度として前記再生データの画像ごとにそれぞれ算出するステップと、
前記遺伝的アルゴリズムにより前記一連の処理を行うときに対象とするすべての前記再生データの画像のうちで、前記算出した第2のパラメータを最適値にするステップと、
前記第2のパラメータが最適な値になったときに前記波面制御器に出力されていた波面制御信号を、前記記録媒体に形成された干渉縞の歪みを補償する波面制御信号として求めるステップとを含んで実行することを特徴とするホログラムの参照光の制御方法。
【請求項8】
前記遺伝的アルゴリズムの適応度を最適な値にするステップは、
前記光学系において前記物体光と前記参照光により前記2次元離散データが複数ページにわたって多重記録された記録媒体に対して再生データを得るために参照光を照射したときの波面制御器の反射面の状態を示す情報を、前記遺伝的アルゴリズムにおける個体の情報として用いて、個体群である集団の初期値の世代の初期状態に対して、前記記録媒体に再生対象ページの2次元離散データが記録されたときの波面制御器の反射面の状態に対応した個体と、前記記録時とは無関係にランダムに設定した波面制御器の反射面の状態に対応した個体とを含む初期集団を決定する初期集団決定ステップと、
前記初期集団を起点にして、前記個体ごとに算出した適応度が集団の中で高い個体群を残すように集団の世代を順次交代し、最終的に残した集団の中で適応度が最大の個体の遺伝子を当該再生対象ページにおける前記波面制御信号として求める世代交代ステップとを含み、
前記初期集団決定ステップは、
前記再生対象ページが2ページ目以降である場合に、当該再生対象ページよりも前のページにおいて前記世代交代ステップで適応度が最大の個体として求められた個体をさらに含めて当該再生対象ページの初期集団を決定することを特徴とする請求項6または請求項7に記載のホログラムの参照光の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図7】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図7】
【図11】
【公開番号】特開2010−40161(P2010−40161A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39898(P2009−39898)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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