説明

ホース乾燥柱

【課題】最小限のスペースで多くの消防用ホースを吊下げ乾燥できると共に、消防用ホースを干したときに風の抵抗を受けることが少なく、風圧荷重を最低限に抑えることができ、しかも、消防用ホースを乾燥させる機能の他に防災機能を有し、災害時等に救援施設や通信施設等としても使用できるようにする。
【解決手段】地面に立設した外観形状が四角形の支柱1と、支柱1の周りに支柱1に沿って昇降自在に配設され、複数本の消防用ホースを二つ折りの状態で支柱1の少なくとも三つの側面にそれぞれ沿わせて吊下げるホース吊下げ装置2と、支柱1の下部に設けられ、ホース吊下げ装置2を支柱1に沿って昇降させるウインチ3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防署の敷地内や消防団施設及び公民館等の建物に隣接した場所に設置され、使用済みの濡れた消防用ホースを二つ折りの状態で吊り下げて乾燥させる柱型のホース乾燥柱の改良に係り、特に、最小限のスペースで多くの消防用ホースを吊下げ乾燥できると共に、消防用ホースを干したときに風の抵抗を受けることが少なく、風圧荷重を最低限に抑えることができ、しかも、スピーカー及びサイレン等の防災機器とこれらの防災機器に電気を供給する発電装置等を備え、消防用ホースの乾燥機能の他に防災機能を有する外部電源を必要としない多機能のホース乾燥柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、消火活動や消火訓練等に使用された濡れた消防用ホースを自然乾燥させる場合、消防署等の建物の壁面に沿って設置したホースリフター(例えば、非特許文献1)や消防署の敷地内等に設置した柱型のホース乾燥柱(例えば、特許文献1の図3及び図4、非特許文献2)が使用されている。
【0003】
前者の記ホースリフターは、建物が無ければ設置することができず、また、ホースリフターを使用したときに発生する振動により、建物の壁面部分(ホースリフターを壁面に固定するためのボルト止め部分)に破損等が発生し、雨漏り等の不具合を発生させると言う問題があるうえ、ホースリフターを改修又は移設する際や建物の改修又は建替えの際には、ホースリフターと建物を同時に改修又は移設しなければならず、多くの手間と経費がかかると言う問題がある。
【0004】
一方、後者のホース乾燥柱は、ホースリフターの上述したような問題を生じることは無いが、地面に立設した支柱に消防用ホースを吊り下げて乾燥させる際、支柱の前面又は側面に支柱から金属製アーム等の支持金具を張り出し、これに消防用ホースを一列に並べて干す構造となっているため、比較的広いスペースを必要とするうえ、消防用ホースに当たる風圧荷重が非常に大きく、突風等が吹いたときにホース乾燥柱の部品が破損したりすると言う問題がある。
また、ホース乾燥柱は、支柱から張り出した支持金具に消防用ホースを吊り下げる構造となっているため、吊り上げ時、吊り下げ時、乾燥時に支持金具に吊り下げている消防用ホースが風にあおられることがあり、安全性に劣ると共に、作業性も悪くなると言う問題がある。
【0005】
更に、ホースリフター及びホース乾燥柱は、何れも消防用ホースを乾燥させる専用装置としての機能しか有していないため、消防用ホースを乾燥させていないときには不要であり、有効利用されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−156863号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】流通産業株式会社のホームページ内のホースリフター、[平成22年7月15日検索]、インターネット<URL:http://www15.ocn.ne.jp/~ryutsu/02/index.htm>
【非特許文献2】株式会社日本ネットワークサポートのホームページ内の金属製品(ホース乾燥柱)、[平成22年7月15日検索]、インターネット<URL:http://www.nnets.co.jp/itemlist/metal/e/hospole.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、最小限のスペースで多くの消防用ホースを吊下げ乾燥できると共に、消防用ホースを干したときに風の抵抗を受けることが少なく、風圧荷重を最低限に抑えることができ、しかも、消防用ホースを乾燥させる機能の他に防災機能を有し、災害時等に救援施設や通信施設等としても使用できるようにした外部電源を必要としない多機能のホース乾燥柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、地面に立設した外観形状が四角形の支柱と、支柱の周りに支柱に沿って昇降自在に配設され、複数本の消防用ホースを二つ折りの状態で支柱の少なくとも三つの側面にそれぞれ沿わせて吊下げるホース吊下げ装置と、支柱の下部に設けられ、ホース吊下げ装置を支柱に沿って昇降させるウインチとを備えていることに特徴がある。
【0010】
本発明の請求項2の発明は、請求項1に記載の発明に於いて、支柱がメッキを施した角形の鋼管から成り、また、ウインチが電動ウインチ又は手動ウインチから成り、前記支柱内にウインチを操作可能に収納できる構成としたことに特徴がある。
【0011】
本発明の請求項3の発明は、請求項1に記載の発明に於いて、ホース吊下げ装置が、支柱の外周面に遊嵌状態で嵌められたプレート状で且つ四角枠状のホース吊下げ移動金具と、ホース吊下げ移動金具の内周縁部に回転自在に取り付けられ、支柱の四つの側面に沿って転動する複数のガイドローラと、ホース吊下げ移動金具の少なくとも三つの辺にそれぞれ開閉自在に取り付けられ、複数本の消防用ホースを二つ折りの状態で吊り下げる横コ字状のホース吊下げ金具とから構成されていることに特徴がある。
【0012】
本発明の請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明に於いて、ホース吊下げ装置を吊下げるウインチのワイヤーロープが、支柱の上部に設けた複数個の滑車に吊下げられ、一端部がホース吊下げ装置に連結されていると共に、他端部が一つにまとめられた四本の子ワイヤーロープと、子ワイヤーロープの一つにまとめられた他端部に連結され、ウインチのドラムに巻き取られる一本の親ワイヤーロープとから成ることに特徴がある。
【0013】
本発明の請求項5の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明に於いて、支柱に、警報機能、通信機能、表示機能又は照明機能を有する防災機器と、太陽電池又は風力発電機若しくは太陽電池及び風力発電機から成る発電装置と、発電装置により得られた電力を蓄えてこれをウインチ及び防災機器へ供給する蓄電装置とを配設したことに特徴がある。
【0014】
本発明の請求項6の発明は、請求項5に記載の発明に於いて、防災機器が、スピーカー、サイレン、アンテナ、LED表示盤、防犯灯、回転灯、投光器又は無線機から成り、これらのうちの少なくとも一つを支柱に設置する構成としたことに特徴がある。
【0015】
本発明の請求項7の発明は、請求項2又は請求項5に記載の発明に於いて、防災機器及び発電装置の各コントローラと蓄電装置の何れか一方又は両方を、角形の鋼管から成る支柱内に収納可能に構成したことに特徴がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1のホース乾燥柱は、地面に立設した外観形状が四角形の支柱に、複数本の消防用ホースを二つ折りの状態で支柱の少なくとも三つの側面にそれぞれ沿わせて吊下げるホース吊り下げ装置を昇降自在に配設し、当該ホース吊下げ装置をウインチにより支柱に沿って昇降させる構成としているため、複数本の消防用ホースを支柱の少なくとも三つの側面に沿う状態で吊下げ乾燥させることができる。
その結果、本発明の請求項1のホース乾燥柱は、最小限のスペースでより多くの消防用ホースを吊下げ乾燥させることができる。
また、本発明の請求項1のホース乾燥柱は、消防用ホースを支柱の側面に沿わせて干せるため、消防用ホースにかかる風圧抵抗が最小限に抑えられることになり、支柱にかかる荷重も小さくなり、風圧荷重によってホース乾燥柱の部品が破損したりすると言うことがない。
更に、本発明の請求項1のホース乾燥柱は、風を受けたときに消防用ホースを支柱の側面で受け止めることができるため、消防用ホースの吊上げ時、吊下げ時、乾燥時に消防用ホースが風にあおられることがなく、安全性及び作業性に優れたものとなる。
加えて、本発明の請求項1のホース乾燥柱は、消防署等の建物から独立した格好になっているため、ホースリフターに比較して施工、管理、改修を簡単に行え、建物に影響を及ぼすことなく使用することができる。
【0017】
本発明の請求項2〜請求項7のホース乾燥柱は、上記効果に加えて更に次のような優れた効果を奏することができる。
即ち、本発明の請求項2のホース乾燥柱は、支柱がメッキを施した角形の鋼管から成り、また、ウインチが電動ウインチ又は手動ウインチから成り、前記支柱内にウインチを操作可能に収納する構成としているため、技術的に確立された鋼、メッキの劣化診断が可能となり、安全性や立て替えの時期の把握が容易に行えると共に、支柱内の空間を最大限に活かすことができる。特に、支柱内にウインチを収納した場合には、支柱の四つの側面全てに複数本の消防用ホースを吊下げ乾燥させることができるため、より多くの消防用ホースを吊下げ乾燥させることができる。
【0018】
本発明の請求項3のホース乾燥柱は、消防用ホースを支柱の側面に沿って吊下げるホース吊下げ装置がガイドローラを備えているため、ホースの吊上げ及び吊下げを良好且つ円滑に行える。
また、本発明の請求項3のホース乾燥柱は、ホース吊下げ装置が複数本の消防用ホースを二つ折りの状態で吊下げる開閉自在な横コ字状のホース吊下げ金具を備えているため、消防用ホースをホース吊下げ金具に簡単且つ容易に引っ掛けることができる。
【0019】
本発明の請求項4のホース乾燥柱は、ホース吊下げ装置を吊下げるウインチのワイヤーロープが、支柱の上部に設けた複数個の滑車に吊下げられ、一端部がホース吊下げ装置に連結されていると共に、他端部が一つにまとめられた四本の子ワイヤーロープと、子ワイヤーロープの一つにまとめられた他端部に連結され、ウインチのドラムに巻き取られる一本の親ワイヤーロープとから成るため、ホース吊下げ装置を子ワイヤーロープにより安定した姿勢で吊下げ支持することができると共に、ドラムに巻き取られるワイヤーロープも親ワイヤーロープの一本だけで済み、ワイヤーロープがウインチのドラム部分で輻輳すると言うこともない。
【0020】
本発明の請求項5のホース乾燥柱は、支柱に、警報機能、通信機能、表示機能又は照明機能を有する防災機器と、太陽電池又は風力発電機若しくは太陽電池及び風力発電機から成る発電装置と、発電装置により得られた電力を蓄えてこれを防災機器へ供給する蓄電装置とを配設する構成としているため、消防用ホースを乾燥させる機能の他に防災機能を有することになり、災害時等に救援施設や通信施設等としても使用でき、より公共性が増すと共に、効率的・効果的な使用が実現できる。
また、本発明の請求項5のホース乾燥柱は、発電装置により得られた電力を蓄える蓄電装置を備えているため、外部電源を一切使用することがなく、災害時等の停電時に於いても支柱に設けた各種防災機器や電動ウインチに電気を供給することができると共に、余った電気を非常災害時の仮設電源として外部コンセントからその他の電気製品に電気を供給することができる。
更に、本発明の請求項5のホース乾燥柱は、発電装置が太陽電池及び風力発電機の両方を備えている場合には、天候や風量に左右され難く、蓄電装置に確実に充電することができる。
【0021】
本発明の請求項6のホース乾燥柱は、防災機器が、スピーカー、サイレン、アンテナ、LED表示盤、防犯灯、回転灯、投光器又は無線機から成り、これらのうちの少なくとも一つを支柱に設置する構成としているため、大規模な災害等が発生したときに被災者に必要な情報を提供し、また、被災者から対策本部等の救援施設へ容易に連絡することができる。
【0022】
本発明の請求項7のホース乾燥柱は、支柱内に防災機器及び発電装置のコントローラと蓄電装置の何れか一方又は両方の収納を可能とする構成としているため、支柱内の空間を最大限に活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るホース乾燥柱の正面図である。
【図2】同じくホース乾燥柱の側面図である。
【図3】ホース乾燥柱の要部の拡大正面図である。
【図4】ホース乾燥柱の要部の拡大側面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】図4のB−B線断面図図である。
【図7】消防用ホースを支柱に沿って吊上げる状態を示し、一部の消防用ホースを省略したホース乾燥柱の要部の拡大背面図である。
【図8】複数本の消防用ホースを支柱に沿って吊下げた状態を示し、風力発電機を省略したホース乾燥柱の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の実施の形態に係るホース乾燥柱を示し、当該ホース乾燥柱は、地面に立設した外観形状が四角形の支柱1と、支柱1の周りに支柱1に沿って昇降自在に配設され、複数本の消防用ホースHを二つ折りの状態で支柱1の少なくとも三つの側面にそれぞれ沿わせて吊下げるホース吊下げ装置2と、支柱1の下部に設けられ、ホース吊下げ装置2を支柱1に沿って昇降させるウインチ3と、支柱1の上部に配設され、警報機能、通信機能、表示機能又は照明機能を有する防災機器4と、支柱1の上部に配設され、太陽電池5′又は風力発電機5″若しくは太陽電池5′及び風力発電機5″から成る発電装置5と、支柱1の下部に配設され、発電装置5により得られた電力を蓄えてこれを防災機器4へ供給する蓄電装置6(バッテリー)とを備えており、消防用ホースHを乾燥させる機能の他に防災機能を有し、災害時等に救援施設や通信施設等としても使用できるようにしたものである。
【0025】
前記支柱1は、図5及び図6に示す如く、メッキ(例えば、溶融亜鉛メッキ)を施した角形の鋼管により形成されており、その基端部(下端部)側が消防署の敷地内や消防団施設及び公民館等の建物に隣接した敷地内の地面に形成した基礎7内に埋設固定されている。これによって、支柱1は、消防署の敷地内等に縦向き姿勢で立設されることになる。
また、支柱1の下端部位置で且つ三つの側面には、消防用ホースHを二つ折りの状態でホース吊下げ装置2により支柱1に沿って吊下げたときに、消防用ホースHのホース本体Haの両端部が挿入係止されて消防用ホースHの両端部を振れ止めすると共に、消防用ホースHのホース本体Haの両端部にそれぞれ設けた差込み式の雄型金具Hb及び差込み式の雌型金具Hcを抜け止めするためのホース係止金具8が取り付けられている(図6及び図7参照)。このホース係止金具8は、金属棒をコ字状に折り曲げることにより形成されており、その両端部が支柱1の側面に溶接により固着されている。
【0026】
尚、支柱1を支持する基礎7は、図1及び図2に示す如く、地面に形成した掘削穴の底面に敷設した砕石7aと、砕石7a上に打設した捨てコンクリート7bと、捨てコンクリート7b上に打設されて複数本の鉄筋7cを配置した基礎コンクリート7d等から構成されている。
【0027】
前記ホース吊下げ装置2は、図3、図4、図5及び図7に示す如く、支柱1の外周面に遊嵌状態で嵌められたプレート状で且つ四角枠状のホース吊下げ移動金具9と、ホース吊下げ移動金具9の内周縁部に回転自在に取り付けられ、支柱1の四つの側面に沿って転動する複数のガイドローラ10と、ホース吊下げ移動金具9の少なくとも三つの辺に開閉自在に取り付けられ、複数本の消防用ホースHを二つ折りの状態で吊り下げる横コ字状の三つのホース吊下げ金具11とから構成されている。
【0028】
具体的には、ホース吊下げ移動金具9は、図5に示す如く、金属板により四角枠状に形成されており、ホース吊下げ移動金具9の外周縁部の一辺には、後述するウインチ3のワイヤーロープ3cの親ワイヤーロープ3c″を通すための凹部9aが形成され、また、ホース吊下げ移動金具9の残りの三つの辺には、ホース吊下げ金具11の遊端部が挿入係止される切欠部9bがそれぞれ形成されている。
【0029】
また、ガイドローラ10は、図3、図4及び図5に示す如く、ウレタン又はナイロン等のプラスチック材により円柱状に形成されており、ホース吊下げ移動金具9の四つの辺の内周縁部にそれぞれブラケット12を介して回転自在に取り付けられ、支柱1の側面に沿って転動するようになっている。
【0030】
更に、ホース吊下げ金具11は、図3、図4及び図5に示す如く、金属棒をコ字状に折り曲げることにより形成されており、ホース吊下げ移動金具9の凹部9aを形成していない三つの辺にそれぞれ開閉自在に取り付けられている。
即ち、各ホース吊下げ金具11は、その一端部がホース吊下げ移動金具9の下面側からホース吊下げ移動金具9の外周縁部に回転自在に挿通されてナット13により抜け止めされ、また、その他端部がホース吊下げ移動金具9の外周縁部に形成した切欠部9bに挿入されて蝶ナット14により切欠部9b内に固定保持されており、蝶ナット14を弛めてホース吊下げ金具11を外方又は内方へ回動させることによりホース吊下げ金具11をホース吊下げ移動金具9に対して開閉することができるようになっている(図5の一点鎖線参照)。
尚、ホース吊下げ金具11の幅は、消防用ホースHを四本干せる幅に形成されている。
【0031】
前記ウインチ3は、モータ3a、ドラム3b、減速機構(図示省略)、ブレーキ機構(図示省略)及びワイヤーロープ3c等を備えた電動ウインチから成り、作業の邪魔にならない場所に取り付けられている。
【0032】
この実施の形態では、ウインチ3は、図3及び図4に示す如く、ホース吊下げ装置2のホース吊下げ金具11を設けていない支柱1の下部側面に取り付けられており、上方が開放されたステンレス材製のウインチカバー15により覆われた格好になっている。
また、ウインチ3のワイヤーロープ3cは、図1及び図2に示す如く、支柱1の上端に設けた金属板製の上部プレート16の下面側に配置された複数個の滑車17に吊下げられ、一端部がホース吊下げ装置2のホース吊下げ移動金具9の四隅にアイボルト18を介して連結されていると共に、他端部がステンレス製のリング19により一つにまとめられた四本のステンレス製の子ワイヤーロープ3c′と、四本の子ワイヤーロープ3c′の他端部を一つにまとめたリング19に連結され、ドラム3bに巻き取られる一本のステンレス製の親ワイヤーロープ3c″とから成る。
更に、ウインチ3の制御機器(図示省略)は、ウインチ3を設置した支柱1の側面と同じ側面で且つウインチカバー15の下方位置に取り付けたステンレス製の開閉自在な収納ボックス20内に収納されている。その結果、ウインチ3の制御機器は、雨や風等の影響を受けることがなく、故障する確立が低くなる。
【0033】
上記の実施の形態に於いては、ウインチ3を支柱1の側面に取り付けたが、他の実施の形態に於いては、ウインチ3自体を支柱1の下端部内方に収納してホース吊下げ装置2を支柱1に沿って昇降させるようにしても良い。この場合には、支柱1の四つの側面全てに複数本の消防用ホースHを吊下げ乾燥させることができるため、より多くの消防用ホースHを乾燥させることができる。
また、上記の実施の形態に於いては、ウインチ3に電動ウインチを使用するようにしたが、他の実施の形態に於いては、ウインチ3に手動ウインチを使用するようにしても良い。
尚、ウインチ3(電動ウインチ又は手動ウインチ)を支柱1の下端部内方に収納した場合、ウインチ3を支柱1の外方から操作できるようにすることは勿論である。
【0034】
前記防災機器4は、支柱1の上端部に取り付けられており、警報機能、通信機能、表示機能又は照明機能を有するものである。
この実施の形態では、防災機器4して日常の地域情報や災害時の避難情報等の各種情報を発信するスピーカーが使用されており、上部プレート16に立設した柱材21に四つのスピーカー(図1及び図2に於いては一部のスピーカーを省略)が90度間隔ごとに取り付けられ、全ての方向に各種情報を発信できるようになっている。
【0035】
尚、上記の実施の形態に於いては、防災機器4としてスピーカーを使用し、これを支柱1に取り付けるようにしたが、他の実施の形態に於いては、スピーカーの他に避難警告用のサイレン、受信用のアンテナ、夜間に自動点灯される防犯灯、視覚情報手段としてのLED表示盤、夜間照明用の投光器、通信用の無線機等の防犯機器の何れか一つ又は二つ以上を支柱1に取り付けるようにしても良い。
【0036】
前記発電装置5は、図1及び図2に示す如く、支柱1の上端部に設けた上部プレート16に斜め上向きの状態で設置され、太陽光により発電する太陽電池5′と、柱材21の上端部に立設したシャフト22に回転自在に取り付けられ、風力により発電する風力発電機5″とから成り、太陽電池5′のコントローラ(図示省略)及び風力発電機5″のコントローラ(図示省略)は、何れも雨や風等の影響を受けないように収納ボックス20内に収納されている。
【0037】
尚、上記の実施の形態に於いては、発電装置5を太陽電池5′及び風力発電機5″から構成したが、他の実施の形態に於いては、発電装置5を太陽電池5′又は風力発電機5″の何れか一方で構成しても良い。
【0038】
前記蓄電装置6(バッテリー)は、図2に示す如く、雨や風等の影響を受けないように収納ボックス20内に収納されて太陽電池5′、風力発電機5″、ウインチ3(電動ウインチ)及び各種防災機器4にケーブル(図示省略)を介して接続されており、発電装置5により得られた電力を蓄えてこれをウインチ3及び防災機器4へ供給するものである。
この蓄電装置6に蓄電された電力は、直接直流電源として又は収納ボックス20内に配設したインバータ(図示省略)により交流電源に変換してからウインチ3及び各種防災機器4へ供給するようになっている。
また、余った電気を非常災害時の仮設電源として収納ボックス20内に配設した外部コンセント(図示省略)からその他の電気製品に電気を供給することができるようになっている。
【0039】
次に、上述したホース乾燥柱を使用して使用済みの濡れた消防用ホースHを乾燥させる場合について説明する。
先ず、ホース吊下げ装置2が支柱1の上端部位置にある場合には、ウインチ3によりホース吊下げ金具11を支柱1の下端部位置まで下降させる。
【0040】
次に、ホース吊下げ装置2の各ホース吊下げ金具11をホース吊下げ移動金具9に対して開放すると共に、消防用ホースHを二つ折りの状態にしてその折り曲げた部分をホース係止金具8の下方側からホース係止金具8に挿通した後、消防用ホースHの折り曲げた部分を開放状態にあるホース吊下げ金具11に引っ掛ける。
このとき、ホース吊下げ装置2のホース吊下げ金具11がホース吊下げ移動金具9に対して開閉自在となっているため、消防用ホースHをホース吊下げ金具11に簡単且つ容易に引っ掛けることができる。
【0041】
各ホース吊下げ金具11にそれぞれ四本の消防用ホースHを引っ掛けたら、ホース吊下げ金具11をホース吊下げ移動金具9に対して閉じた状態にする。
【0042】
その後、ウインチ3を操作してホース吊下げ装置2を支柱1に沿って支柱1の上端部位置まで上昇させる。そうすると、図7に示す如く、ホース吊下げ装置2のホース吊下げ金具11に吊下げられた消防用ホースHが二つ折りの状態で支柱1に沿って吊上げられて行く(図7に於いては一部の消防用ホースHを省略)。
このとき、ホース吊下げ装置2がガイドローラ10を備えているため、ホースの吊上げを良好且つ円滑に行える。
また、ホース吊下げ装置2を四本の子ワイヤーロープ3c′で吊下げ、各子ワイヤーロープ3c′を支柱1の上端部に設けた複数の滑車17を通してリング19で一つにまとめ、このリング19に親ワイヤーロープ3c″を連結してウインチ3のドラム3bに巻き付けるようにしているため、ホース吊下げ装置2を子ワイヤーロープ3c′により安定した姿勢で吊下げ支持することができると共に、ドラム3bに巻き取られるワイヤーロープ3cも親ワイヤーロープ3c″の一本だけで済み、ワイヤーロープ3cがウインチ3のドラム3b部分で輻輳すると言うこともない。
【0043】
そして、ホース吊下げ装置2が支柱1の上端部に達した時点で、親ワイヤーロープ3c″に取り付けた叩き具(図示省略)がウインチ3付近に設置したリミットスイッチ(図示省略)を作動させ、ウインチ3を安全且つ自動的に停止させる。そうすると、各消防用ホースHは二つ折りの状態で支柱1の三つの側面に沿って吊下げられることになる(図8参照)。また、消防用ホースHの両端部は、ホース係止金具8により振れ止め及び抜け止めされた状態となっている。これによって、各消防用ホースHを天日により自然乾燥させることができる。
【0044】
尚、消防用ホースHが乾燥したら、ウインチ3によりホース吊下げ装置2を支柱1の下端部の所定の位置まで下降させ、ホース吊下げ装置2のホース吊下げ金具11を開放して消防用ホースHの二つ折りの部分をホース吊下げ金具11から外すと共に、ホース本体Haをホース係止金具8から引き抜いた後、当該消防用ホースHを所定場所に格納する。
【0045】
上述した構成のホース乾燥柱は、複数本の消防用ホースHが支柱1の三つの側面に沿ってそれぞれ吊下げられるので、最小限のスペースでより多くの消防用ホースHを吊下げ乾燥させることができる。もしも、ホース乾燥柱の支柱1に円形のものを使用し、この円形の支柱1の外周面に沿って消防用ホースHを吊下げた場合には、消防用ホースHの吊下げられる本数が四角形の支柱1よりも少なくなる。
また、ホース乾燥柱は、消防用ホースHを支柱1の側面に沿って干せるので、消防用ホースHにかかる風圧抵抗が最小限に抑えられることになり、支柱1にかかる荷重も小さくなり、突風等によってホース乾燥柱の部品が破損したりすると言うことがない。
更に、ホース乾燥柱は、風を受けたときに消防用ホースHを支柱1の側面で受け止めることができるため、消防用ホースHの吊上げ時、吊下げ時、乾燥時に消防用ホースHが風にあおられることがなく、安全性及び作業性に優れたものとなる。
しかも、ホース乾燥柱の鋼製の支柱1は、メッキが施されているため、技術的に確立された鋼、メッキの劣化診断が可能となり、安全性や立て替えの時期の把握が容易に行えることになる。
【0046】
そして、上述した構成のホース乾燥柱は、支柱1に、警報機能、通信機能、表示機能又は照明機能を有する防災機器4と、太陽電池5′及び風力発電機5″から成る発電装置5と、発電装置5により得られた電力を蓄えてこれを防災機器4へ供給する蓄電装置6とを設けているため、平時には通信施設として使用することができ、また、大規模な災害が発生してライフラインが寸断されたり、或いは孤立状態となった地域があった場合には、被災者に必要な情報を提供したり、被災者から対策本部等の救援施設への連絡が常時簡単にできるようになり、災害時の救援施設、通信施設として使用することができ、より公共性が増すと共に、効率的・効果的な使用が実現できる。
特に、ホース乾燥柱の支柱1にスピーカーとLED表示盤の両方を設置した場合には、視覚、聴覚に障害のある人でも容易に各種情報が得られることになる。
また、ホース乾燥柱は、外観形状が四角形の支柱1の側面に沿って消防用ホースHを吊下げ乾燥させているため、消防用ホースHにかかる風の抵抗が最小限に抑えられるので、支柱1にかかる荷重が少なくなり、その結果、支柱1により多くの防災機器4を設置することができる。
【0047】
尚、LED表示盤は、ホース乾燥柱が消防用ホースHを支柱1に沿って吊下げ乾燥させる構造となっているので、余裕のできたスペース(消防用ホースHを吊下げた外方部分)に設置する。
【0048】
また、ホース乾燥柱は、発電装置5により得られた電力を蓄える蓄電装置6を備えているため、外部電源を一切使用することがなく、災害時等の停電時に於いても支柱1に設けた各種防災機器4や電動ウインチ3に電気を供給することができると共に、余った電気を非常災害時の仮設電源として外部コンセントからその他の電気製品に電気を供給することができる。
【0049】
更に、ホース乾燥柱は、太陽電池5′及び風力発電機5″の両方を備えているため、天候や風量にされ難く、蓄電装置6に確実に充電することができる。
【符号の説明】
【0050】
1は支柱、2はホース吊下げ装置、3はウインチ、3cはワイヤーロープ、3c′は子ワイヤーロープ、3c″は親ワイヤーロープ、4は防災機器、5は発電装置、5′は太陽電池、5″は風力発電機、6は蓄電装置。9はホース吊下げ移動金具、10はガイドローラ、11はホース吊下げ金具、17は滑車、Hは消防用ホース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に立設した外観形状が四角形の支柱(1)と、支柱(1)の周りに支柱(1)に沿って昇降自在に配設され、複数本の消防用ホース(H)を二つ折りの状態で支柱(1)の少なくとも三つの側面にそれぞれ沿わせて吊下げるホース吊下げ装置(2)と、支柱(1)の下部に設けられ、ホース吊下げ装置(2)を支柱(1)に沿って昇降させるウインチ(3)とを備えていること特徴とするホース乾燥柱。
【請求項2】
支柱(1)は、メッキを施した角形の鋼管から成り、また、ウインチ(3)は、電動ウインチ又は手動ウインチから成り、前記支柱(1)内にウインチ(3)を操作可能に収納できる構成としたことを特徴とする請求項1に記載のホース乾燥柱。
【請求項3】
ホース吊下げ装置(2)は、支柱(1)の外周面に遊嵌状態で嵌められたプレート状で且つ四角枠状のホース吊下げ移動金具(9)と、ホース吊下げ移動金具(9)の内周縁部に回転自在に取り付けられ、支柱(1)の四つの側面に沿って転動する複数のガイドローラ(10)と、ホース吊下げ移動金具(9)の少なくとも三つの辺にそれぞれ開閉自在に取り付けられ、複数本の消防用ホース(H)を二つ折りの状態で吊り下げる横コ字状のホース吊下げ金具(11)とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のホース乾燥柱。
【請求項4】
ホース吊下げ装置(2)を吊下げるウインチ(3)のワイヤーロープ(3c)は、支柱(1)の上部に設けた複数個の滑車(17)に吊下げられ、一端部がホース吊下げ装置(2)に連結されていると共に、他端部が一つにまとめられた四本の子ワイヤーロープ(3c′)と、子ワイヤーロープ(3c′)の一つにまとめられた他端部に連結され、ウインチ(3)のドラム(3b)に巻き取られる一本の親ワイヤーロープ(3c″)とから成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のホース乾燥柱。
【請求項5】
支柱(1)に、警報機能、通信機能、表示機能又は照明機能を有する防災機器(4)と、太陽電池(5′)又は風力発電機(5″)若しくは太陽電池(5′)及び風力発電機(5″)から成る発電装置(5)と、発電装置(5)により得られた電力を蓄えてこれをウインチ(3)及び防災機器(4)へ供給する蓄電装置(6)とを配設したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のホース乾燥柱。
【請求項6】
防災機器(4)が、スピーカー、サイレン、アンテナ、LED表示盤、防犯灯、回転灯、投光器又は無線機から成り、これらのうちの少なくとも一つを支柱1に設置する構成としたことを特徴とする請求項5に記載のホース乾燥柱。
【請求項7】
防災機器(4)及び発電装置(5)の各コントローラと蓄電装置(6)の何れか一方又は両方を、角形の鋼管から成る支柱(1)内に収納可能に構成したことを特徴とする請求項2又は請求項5に記載のホース乾燥柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−40086(P2012−40086A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182105(P2010−182105)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(390031554)株式会社横井製作所 (9)
【Fターム(参考)】