説明

ボイラのスケール検出装置

【課題】 水管温度を検出することで水管内のスケール付着判断を行うボイラのスケール検出装置において、検出精度をさらに高める。
【解決手段】 燃焼量の調節が可能な燃焼装置4を持ち、燃焼装置4で発生した熱によって水管3内の缶水を加熱するようにしているボイラであって、水管3の温度を検出する温度センサ12と、温度センサ12にて検出した水管温度に基づいてスケール付着の有無を判断するスケール判断部13を持ち、水管温度が基準値より高いとスケール付着との判定を行うようにしているボイラのスケール検出装置において、スケール判断部13には燃焼装置4による燃焼量の情報が入力されるようにしておき、スケール判断部13では、燃焼装置4による燃焼量に応じて前記の基準値を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水管温度を検出することで水管内のスケール付着を検出するようにしているボイラのスケール検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第3006449号公報に記載があるように、ボイラを構成している水管の所定箇所に温度センサを設け、水管温度を検出することで水管でのスケール付着を判定することが行われている。ボイラでは燃焼装置が発生した熱によって水管を外側から加熱し、水管内の缶水へ熱を伝えることで缶水温度を上昇させるようにしている。ボイラの水管にスケールが付着すると、水管外側面からの熱が缶水に伝わりにくくなり、水管温度上昇によるボイラ寿命の短縮や、ボイラ効率の低下を招くことになる。スケールの付着は、水管温度の上昇を検出することで判断できるため、上記のように水管温度を検出してスケールの付着を判断するスケール検出装置が使用されている。
【0003】
ただし、水管温度が上昇する要因はスケール付着以外にもある。特許第3006449号公報に記載の発明では、ボイラの蒸気圧力上昇によって水管内の缶水温度は上昇するため、蒸気圧力に応じて異なる水管温度の基準値を設定しておき、基準値を変更しながらスケール付着を判断することが記載されている。蒸気圧力値に基づき水管温度の基準値を補正すれば、缶水温度による水管温度の変化によってスケール付着を誤検出することがなく、スケール検出の精度を高めることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3006449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、水管温度を検出することで水管内のスケール付着判断を行うボイラのスケール検出装置において、検出精度をさらに高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
燃焼量の調節が可能な燃焼装置を持ち、燃焼装置で発生した熱によって水管内の缶水を加熱するようにしているボイラであって、水管の温度を検出する温度センサと、温度センサにて検出した水管温度に基づいてスケール付着の有無を判断するスケール判断部を持ち、水管温度が基準値より高いとスケール付着との判定を行うようにしているボイラのスケール検出装置において、スケール判断部には燃焼装置による燃焼量の情報が入力されるようにしておき、スケール判断部では、燃焼装置による燃焼量に応じて前記の基準値を変更する。
【発明の効果】
【0007】
燃焼量の変更を可能としているボイラでは、燃焼量の変更によって燃焼ガス温度が変動し、燃焼ガス温度の変動に伴って水管温度も変動する。そのため、燃焼量に応じてスケール付着を判断する基準値を異ならせておき、水管温度と燃焼量に応じた基準値に基づいてスケール付着を判断することで、燃焼ガス温度の変動によるスケール付着検出の誤りをなくすことができ、スケール付着判定の精度をより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を実施しているボイラのフロー図
【図2】スケール付着なし時での水管温度と基準値の関係説明図
【図3】スケール付着あり時での水管温度と基準値の関係説明図
【図4】温度センサ設置状況の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例におけるボイラのフロー図、図2と図3は燃焼ガス温度と水管温度を示したものであって、図2はスケールが付着していない状態での水管温度とスケール付着を判断する基準値との関係説明図、図3はスケールが付着している状態での水管温度とスケール付着を判断する基準値との関係説明図、図4は一実施例での温度センサ設置状況の説明図である。
【0010】
ボイラ1は中央に設置した燃焼室2の周囲を多数の垂直な水管3で囲んでおき、燃焼室の上部に燃焼装置4を設けた構成である。燃焼装置4は燃焼室2へ向けて下向きに火炎を発生し、火炎からの熱と高温の燃焼ガスによって水管3の加熱を行う。水管3は上部と下部に設けた環状の管寄せに接続しており、下部管寄せ7へ給水を行い、垂直水管部で缶水を加熱し、蒸気は上部管寄せ8へ集合させる。水管は隣り合った水管間をヒレ5でつないだ環状の内側水管列と外側水管列からなり、環状に並べた2列の水管列間に燃焼ガスを通す燃焼ガス通路6を形成している。
【0011】
燃焼装置4による燃焼によって発生した燃焼ガスは、燃焼室周囲の水管表面に沿って流れる際に水管3を加熱する。水管を環状に2列並べた構造の場合、燃焼装置4で発生させた燃焼ガスは、燃焼室2から燃焼ガス通路6へ入り、内側水管列と外側水管列の間にできる燃焼ガス通路6に燃焼ガスを通すことで水管3を加熱し、水管と熱交換を行うことで温度の低下した排ガスはボイラ外へ排出される。内側水管列の場合、一方の面は燃焼室2に面し、他方の面は燃焼ガス通路6に面しているため、両方の面から加熱することになる。外側水管列の場合は、一方の面は燃焼ガス通路6に面しているが、他方の面は燃焼ガスが通らないため片方の面からのみ加熱することになる。
【0012】
上部管寄せ8には、蒸気とともに垂直水管部分から沸き上がってきた缶水が送られるため、上部管寄せ8とは連絡管で接続した気水分離器9で蒸気と缶水の分離を行う。気水分離器9で分離した蒸気は気水分離器上部から取り出し、缶水は気水分離器9底部と下部管寄せ7をつないだ還水管を通してボイラの下部管寄せ7へ戻す。
【0013】
燃焼装置4は、高燃焼・中燃焼・低燃焼・燃焼停止の四位置で燃焼制御を行うものであり、ボイラから供給する蒸気圧力の値に応じて燃焼量を決定する。燃焼装置の運転を制御する運転制御装置10は、ボイラの蒸気圧力値を検出する圧力検出装置11からの信号を受けて燃焼量を決定し、決定した燃焼量となるように燃料と燃焼用空気の供給を行う。運転制御装置10では、蒸気圧力値が低い場合には燃焼量が最も大きな高燃焼とし、蒸気圧力値が一段階高くなると燃焼量を一段階下げることで中燃焼、蒸気圧力値がもう一段階高くなると最小の燃焼量となる低燃焼とし、蒸気圧力値が制御範囲の上限まで達すると燃焼停止とする。
【0014】
スケール検出装置は、水管温度を検出する温度センサ12と、検出した水管温度に基づいてスケール付着の有無を判定するスケール判断部13からなり、スケール判断部13はボイラの運転制御装置10に設置しておく。水管3には水管温度を検出する温度センサ12を設けておき、温度センサ12にて検出した水管温度の情報は運転制御装置10のスケール判断部13へ出力する。
【0015】
温度センサ12は図4に記載しているように、外側水管列のさらに外側から水管の燃焼ガス通路6に面した部分に感温部を差し込む構造としておき、水管の燃焼ガス通路に面した部分には棒状の感温部を差し込むための穴を開けた取付台座14を設けておく。温度センサ12は外側水管をつないでいるヒレ5を貫通させて取り付けるようにしており、温度センサ12の感温部を取付台座14の穴に差し込むことで水管の温度を検出することができるようにする。
【0016】
スケールの付着を判断するスケール判断部13は、温度センサ12で検出している水管温度の値に加え、圧力検出装置11が検出した蒸気圧力値によって定まるボイラ燃焼量の情報に基づいて判断を行う。水管の内側にスケールが付着すると、スケールの熱伝達率は金属性の水管に比べて大幅に低いため、水管から缶水への熱の移動が妨げられる。水管から缶水への熱の移動が減少すると水管温度が上昇するので、水管温度が基準値より低い場合にはスケール付着はなく、水管温度が基準値より高い場合にはスケール付着があると判定することができる。
【0017】
温度センサ12設置部分での水管温度は、燃焼ガスからの熱供給と缶水による熱吸収があるため、燃焼ガス温度と缶水温度の間の温度となる。燃焼装置4での燃焼量が変動すると、燃焼ガス温度も変動する。燃焼量が最も大きな高燃焼であると燃焼ガス温度は高くなるため、水管の温度は高くなる。燃焼量が高燃焼より一段階小さな中燃焼になると、燃焼ガス温度は一段階低くなり、水管温度も一段階低くなる。燃焼量が更に小さな低燃焼になると、燃焼ガス温度もさらに一段階低くなり、水管温度もさらに低くなる。
【0018】
そのため、水管温度が一つの基準値よりも高いか低いかでスケール付着の有無を判断していた場合には、スケールが付着していなくても燃焼ガス温度が高いために水管温度が基準値以上になった時には、スケール付着との誤判断を行うことがある。また、逆にスケールが付着していても燃焼ガス温度が低いために水管温度が低いという時には、スケール付着なしとの誤判断を行うことがあった。
【0019】
スケール判断部13では、高燃焼用基準値・中燃焼用基準値・低燃焼用基準値を設定しておき、燃焼装置4での燃焼量に基づいて基準温度を変更する。燃焼ガス温度が高い高燃焼時には高く設定した高燃焼用基準値を用いてスケール付着を判断、中間の燃焼ガス温度である中燃焼時には中間に設定した中燃焼用基準値を用いてスケール付着を判断、燃焼ガス温度が低い低燃焼時には低く設定した低燃焼用基準値を用いてスケール付着を判断する。このようにすれば、燃焼ガス温度の変動による水管温度の変動によってスケール付着を誤判定することを防止できる。
【0020】
図2はスケール付着がない状態での燃焼ガス温度及び水管温度と、スケール付着を判定する基準値の関係を示している。例えば燃焼量が高燃焼であったとすると、燃焼ガス温度はほかの燃焼量の場合よりも高くなる。水管温度は水管内の缶水によって冷やされているために燃焼ガス温度に比べると低くなるが、燃焼ガス温度の高い高燃焼での水管温度はほかの燃焼量時に比べると高くなる。高燃焼の場合、スケール付着を判断する基準値は高燃焼用基準値を用いる。図2の場合、高燃焼時の水管温度は中燃焼用基準値や低燃焼用基準値より高くなっているが、高燃焼時用基準値よりは低いためにスケール付着なしとの判断が行える。
【0021】
図3はスケール付着がある状態での燃焼ガス温度及び水管温度と、スケール付着を判定する基準値を示している。燃焼量が高燃焼であり、燃焼ガス温度は図2と同じであったとしても、スケールの付着があると水管から缶水への熱の伝達が妨げられるために水管温度は高くなる。高燃焼の場合には水管温度が高く設定している高燃焼用基準値との比較になるが、水管温度が高燃焼用基準値以上になると、スケール付着と判断する。
【0022】
同様に、燃焼状態が中燃焼であれば中燃焼用基準値を用いてスケール付着を判断し、燃焼状態が低燃焼であれば低燃焼用基準値を用いてスケール付着を判断する。燃焼量が小さくなると燃焼ガス温度が低くなり、水管温度もスケールありの場合となしの場合の両方で高燃焼時より低くなる。水管温度がその時の燃焼状態での基準値よりも高いが低いかでスケール付着を判断する。
【0023】
中燃焼や低燃焼では高燃焼より燃焼ガス温度が低くなるため、水管温度はスケールが付着している場合でも高燃焼用基準値より低くなっている。もしも燃焼状態に関係なくただ一つの基準値に基づいてスケール付着を判断していた場合には、スケール付着状態の判断を誤ることがある。例えばすべての燃焼状態において、中燃焼用基準値の値のみでスケール付着を判断していた場合には、図2での高燃焼時にはスケールが付着していなくても水管温度は基準値よりも高いためにスケールありとの誤った判定が行われる。同様に図3での低燃焼時にはスケールが付着していても水管温度は基準値よりも低いためにスケールなしとの誤った判定が行われる。燃焼ガス温度が変動すれば水管温度も変動するため、燃焼状態に応じて定めた基準値に基づいて判断することで、正確にスケール付着の有無を判断することができる。
【0024】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 ボイラ
2 燃焼室
3 水管
4 燃焼装置
5 ヒレ
6 燃焼ガス通路
7 下部管寄せ
8 上部管寄せ
9 気水分離器
10 運転制御装置
11 圧力検出装置
12 温度センサ
13 スケール判断部
14 取付台座


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼量の調節が可能な燃焼装置を持ち、燃焼装置で発生した熱によって水管内の缶水を加熱するようにしているボイラであって、水管の温度を検出する温度センサと、温度センサにて検出した水管温度に基づいてスケール付着の有無を判断するスケール判断部を持ち、水管温度が基準値より高いとスケール付着との判定を行うようにしているボイラのスケール検出装置において、スケール判断部には燃焼装置による燃焼量の情報が入力されるようにしておき、スケール判断部では、燃焼装置による燃焼量に応じて前記の基準値を変更するようにしていることを特徴とするボイラのスケール検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36688(P2013−36688A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173481(P2011−173481)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000130651)株式会社サムソン (164)