説明

ボイラのブロー制御装置およびブロー制御方法

【課題】 ボイラの負荷,あるいは供給水やブロー排出水の状態等に関する広い範囲の変動に対しても、缶水の異常を防止し、ボイラ缶水の安定した状態を確保できること。
【解決手段】 ボイラ1への供給水の流量調整機構2,ブローの流量調整機構3,供給水とブロー排出水の熱交換を行うブロー熱交換器4,缶水の電気伝導度を測定する電気伝導度検出器5,ボイラ水の水位を測定する水位検出器6,および演算・制御器7を備え、電気伝導度検出器5の出力を指標としてブローを制御し、水位検出器6の出力を基に演算された第1制御出力を指標として供給水の流量を比例制御するとともに、第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力を指標としてブローの流量の比例制御を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラのブロー制御装置およびブロー制御方法に関し、特に比例給水方式における間欠ブローを用いたボイラのブロー制御装置およびブロー制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラを運転して蒸気を発生させると、ボイラの給水中に含まれる不純物がボイラの缶水中に残り、徐々に濃縮してキャリオーバー現象を引き起こす。さらに、濃縮が進行すると、伝熱面にスケールが形成され伝熱を阻害し、伝熱面の温度上昇によるボイラ破損という重大事故に至る場合がある。このため、ブロー電磁弁を備え、缶水の濃縮度が上昇するとブロー電磁弁を開けて缶水を排出し、缶水の濃縮度が低下するとブロー電磁弁を閉め、これにより、缶水の濃縮度を規定値に保持するようにしたブロー制御装置をボイラに備えて、前記キャリオーバー現象を防止することが広く行われている。このとき、ボイラ缶体に設けられた電気伝導度検出器によって缶水の電気伝導度を測定し、この測定値がブロー開始伝導度設定値以上かつ供給水が所定量供給されている条件で自動ブロー弁が開き間欠ブローを開始し、ブロー停止伝導度設定値以下、もしくは供給水が停止されると自動ブロー弁が閉じ、間欠ブローを停止させてボイラ缶水が過濃縮しないように自動的に制御する方法が用いられている。
【0003】
具体的には、図6に示すような、ブロー水の熱回収の高効率を維持しつつ、缶水の濃縮の進展を防止するボイラの全自動間欠ブロー装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。ボイラ101の水位を検出して、給水ポンプ102をON−OFF稼動することによりボイラへの給水を行う多管式貫流ボイラにおいて、給水ポンプ102を備えた給水管の管路103にブロー水との熱交換部104を設け、ブロー管の管路105に給水との熱交換部106とブロー弁107をそれぞれ設け、ボイラの缶水部に缶水の濃縮度検出手段108を設け、さらに、濃縮度検出手段108からの信号を判別し、その信号が、給水ポンプ稼動中に高濃度の信号であればブロー弁107を開き、給水ポンプ102稼動の有無にかかわらず、低濃度信号であれば、ブロー弁107を閉じる信号を出力し、ブロー弁107の作動を制御するブロー制御回路109が配設される。ここで、110はボイラ制御回路、111は水位検出手段を示す。
【0004】
このように、通常、1つの自動ブロー弁を用い、ボイラ負荷に関わらず、自動ブロー弁が開いたときには一定のブロー水量が排出される。一方、ON−OFF給水において給水ポンプ作動時は、ボイラ負荷に関わらず瞬時の供給水の流量も一定であるため、間欠ブロー時の供給水の流量とブロー水量の関係は常に同じであり、ブロー熱交出口のブロー水温度はどのボイラ負荷でもほぼ一定となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−204114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようなボイラのブロー制御装置およびブロー制御方法では、以下に挙げるような問題点や課題が生じることがあった。
(i)比例給水の場合、部分負荷(100%以下の負荷条件)においては100%負荷より瞬時の供給水の流量が少なくなる。このような場合では、ボイラへの供給水とブロー排出水の熱交換を行うブロー熱交換器での熱交換が効率的に行われず、熱交換器出口のブロー排出水温度が高くなってしまうという課題があった。特に、供給水の流量が少ない領域では、さらにブロー排出水が十分冷却されず、フラッシュ(フラッシュ蒸発)してしまうという課題があった。
(ii)また、従前、供給水の流量とブロー量とは、個別に制御されていたため、ボイラの負荷変動や給水温度変化等で燃焼量と供給水の流量のアンバランスが生じたときに、ブロー量が適正な水準にないことがあった。さらに、ボイラへの供給水とブロー排出水の熱交換を行うブロー熱交換器が設けられた場合において、ブロー熱交換部での有効な熱交換ができないという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、ボイラの負荷,あるいは供給水やブロー排出水の状態等に関する広い範囲の変動に対しても、缶水の異常を防止し、ボイラ缶水の安定した状態を確保できる比例給水方式における間欠ブローを用いたボイラのブロー制御装置およびブロー制御方法を提供することにある。また、高温のブロー水と供給水との熱交換を有効に行い、エネルギー効率の高いボイラのブロー制御装置およびブロー制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すボイラのブロー制御装置およびブロー制御方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明に係るボイラのブロー制御装置は、ボイラへの供給水の流量調整機構,ブローの流量調整機構,前記供給水とブロー排出水の熱交換を行うブロー熱交換器,缶水の電気伝導度を測定する電気伝導度検出器,ボイラ水の水位を測定する水位検出器,および演算・制御器を備え、前記電気伝導度検出器の出力を指標としてブローを制御し、前記水位検出器の出力を基に演算された第1制御出力を指標として前記供給水の流量を比例制御するとともに、前記第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力を指標として前記ブローの流量の比例制御を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るボイラのブロー制御方法は、比例給水方式における間欠ブローを用いたボイラにおいて、ボイラ水の水位を基に演算された第1制御出力を指標としてボイラへの供給水の流量を比例制御し、缶水の電気伝導度を指標としてブローを制御するとともに、前記第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力を指標としてブローの流量の比例制御を行うことを特徴とする。
【0011】
比例給水方式における間欠ブローを用いたボイラにおいて、ボイラ負荷変動に伴うブロー排出水の冷却不足や缶水の異常を防止するには、従前のような缶水の電気伝導度あるいはボイラ負荷に対応したブロー流量を制御することだけでは十分でなかった。本発明は、供給水とブローという、比例給水方式における間欠ブローを用いたボイラの適正運転に不可欠な「ボイラ水の水位を基に演算された第1制御出力と、第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力」を指標とした制御を行うことによって、ボイラの負荷,あるいは供給水やブロー排出水の状態等に関する広い範囲の変動に対しても、缶水の異常を防止し、ボイラ缶水の安定した状態を確保することを可能にした(「スケーリング補正」の詳細については、後述する)。
また、電気伝導度という缶水の質的要素に関する指標によってブローの制御を行い、第1制御出力という供給水の流量が把握できる信号を基に、供給水の流量に対応したブローの流量になるようにスケーリング補正して演算された第2制御出力を指標としてブローの流量制御を行うことを特徴とする。こうした異なる視点からの複数の指標に基づき、ブロー流量を比例制御することによって、缶水の異常の防止をより効果的に行うことが可能となった。
さらに、こうしたボイラの運転状態およびブロー処理の機能や効率を直接的に管理・制御することによって、ボイラの負荷,あるいは供給水やブロー排出水の状態等に関する広い範囲の変動に対しても、それに対応した高温のブロー水と給水との熱交換を有効に行うことができ、エネルギー効率の高いボイラのブロー制御装置あるいはブロー制御方法を提供することが可能となった。
【0012】
本発明は、上記ボイラのブロー制御装置であって、前記ブローの流量調整機構が、自動ブローの比例弁からなり、前記第2制御出力を指標として、前記比例弁の開度を調整し、ブローの流量を比例制御することを特徴とする。
ブロー流量は、ボイラの負荷変動により必要となる供給水の流量の増減に対応して、増量あるいは減量させる制御が好ましい。本発明は、自動ブローの比例弁を用いたこうした構成によって、ブロー処理の機能を供給水一元的に管理・制御し、ボイラの負荷,あるいは供給水やブロー排出水の状態等に関する広い範囲の変動に対しても、缶水の異常の防止をより効果的に行い、ボイラ缶水の安定した状態を確保することを可能にした。
【0013】
本発明は、上記ボイラのブロー制御装置であって、前記ブローの流量調整機構が、多段階に設定されたブローの流量に対応した複数の自動ブロー弁あるいは自動ブロー弁と絞り弁からなり、前記第2制御出力を指標として、前記自動ブロー弁のいくつかを選択し、ブローの流量を比例制御することを特徴とする。
こうした構成により、ブロー制御装置実動時の最適条件となる複数の領域のブロー流量を設定し、その領域に対応した自動ブロー弁と絞り弁の開閉を制御することによって、ボイラにおける変動要素や変動幅を吸収し、ボイラ缶水の安定した状態を確保することを可能にした。
【0014】
本発明は、上記ボイラのブロー制御装置であって、ボイラ蒸気の圧力を測定する蒸気圧力検出器を備え、前記蒸気圧力検出器の出力を用いて、前記第2制御出力を補正することを特徴とする。
上記のように、本発明に係る間欠ブローを用いたボイラにおいては、電気伝導度を指標としてブローを制御し、第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力を指標としてブロー流量を比例制御する。しかしながら、ボイラの蒸気圧力条件によっては、供給水の流量特性およびブローの流量特性が変化することから、同一条件では、供給水の流量(第1制御出力)とブローの流量(第2制御出力)の関係が最適とならず、ブロー熱効交換器における熱交換効率が低下するばかりでなく、ボイラ缶水を安定な状態に保つことができない場合がある。本発明は、こうした変動要素であるボイラの蒸気圧力の実測情報を得て、第2制御出力の圧力補正を行うことによって、よりボイラ缶水の安定した状態の確保が可能となった。
【0015】
また、本発明に係るボイラのブロー制御方法は、上記ボイラのブロー制御装置を用い、次の工程を有し、
(1)ボイラ水の水位および缶水の電気伝導度に係る実測情報を得る工程、
(2)前記電気伝導度の実測情報を、予め設定された電気伝導度と比較する工程、
(3)前記水位の実測情報を基に演算された第1制御出力から、ボイラへの供給水の流量を調整し、予め設定された水位に制御する工程、
(4)前記電気伝導度の実測情報から、ブローの実行・停止あるいはブローの流量を調整・制御する工程、
(5)前記第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力から、予め設定されたブローの流量に調整・制御する工程、
ブローの流量を比例制御することを特徴とする。
こうしたステップを構成することによって、ボイラの負荷,あるいは供給水やブロー排出水の状態等に関する広い範囲の変動に対しても、それに対応したブロー制御を行い、ボイラ缶水の安定した状態の確保が可能となった。
【0016】
本発明に係るボイラのブロー制御方法は、上記ボイラのブロー制御装置を用い、次の工程を有し、
(1)ボイラ水の水位,缶水の電気伝導度,およびボイラの蒸気圧力に係る実測情報を得る工程、
(2)前記電気伝導度の実測情報を、予め設定された電気伝導度と比較する工程、
(3)前記水位の実測情報を基に演算された第1制御出力から、ボイラへの供給水の流量を調整し、予め設定された水位に制御する工程、
(4)前記電気伝導度の実測情報から、ブローの実行・停止あるいはブローの流量を調整・制御する工程、
(5)前記第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力を求め、前記ボイラの蒸気圧力の実測情報から、前記第2制御出力に対して圧力補正を行い、第2a制御出力を得る工程、
(6)前記第2a制御出力から、予め設定されたブローの流量に調整・制御する工程、
ブローの流量を比例制御することを特徴とする。
こうしたステップを構成し、変動要素であるボイラの蒸気圧力の実測情報を得て、ブロー流量の圧力補正を行うことによって、特にボイラの負荷変動等による蒸気圧力の変動の影響を低減し、よりボイラ缶水の安定した状態の確保が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るボイラのブロー制御装置の基本構成例を示す全体構成図
【図2】ブロー制御装置におけるスケーリング補正の概要を示す説明図
【図3】本発明が適用されるブロー制御装置の第2構成例を示す全体構成図
【図4】本発明が適用されるブロー制御装置の第3構成例を示す全体構成図
【図5】本発明が適用されるブロー制御装置の第4構成例を示す全体構成図
【図6】従来技術に係るボイラの濃縮ブロー制御装置を例示する全体構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る比例給水方式における間欠ブローを用いたボイラのブロー制御装置(以下「本装置」という)は、ボイラ水の水位(以下「ボイラ水位」という)を基に演算された第1制御出力を指標としてボイラへの供給水の流量(以下「供給水流量」という)を比例制御し、缶水の電気伝導度を指標としてブローを制御するとともに、第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力を指標としてブローの流量(以下「ブロー流量」という)の比例制御を行うことを特徴とする。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
<本装置の基本構成例>
本装置の1つの実施態様として、その基本構成の概略を図1に示す(第1構成例)。本装置は、ボイラ1への供給水の流量調整機構2,ブローの流量調整機構3,供給水とブロー排出水の熱交換を行うブロー熱交換器4,缶水の電気伝導度を測定する電気伝導度検出器5,およびボイラ水位を測定する水位検出器6,および演算・制御器7が備えられる。
【0020】
ボイラ水位を基に演算された第1制御出力を指標として供給水流量を制御するとともに、電気伝導度という缶水の質的要素に関する指標によってブローの制御を行い、第1制御出力という供給水の流量が把握できる信号を基に、供給水の流量に対応したブローの流量になるようにスケーリング補正して演算された第2制御出力を指標としてブロー流量を制御することによって、缶水の異常を防止することを特徴とする。また、こうした異なる視点からの複数の指標に基づきブロー流量を比例制御することによって、ボイラの負荷,あるいは供給水やブロー排出水の状態等に関する広い範囲の変動に対しても、それに対応した高温のブロー水と給水との熱交換を有効に行うこと特徴とする。
【0021】
ボイラ1においては、燃焼熱の変換による高温の蒸気の発生に伴って、ボイラ水位が低下する。本装置では、ボイラ水位の低下によるボイラ1の過熱を防ぐために、供給水の流量調整機構2によって、供給水が蒸発量に見合った所定の流量に調整されてボイラ1に供給され、ボイラ水位を維持する構成を示す。供給水には、軟水処理された市水あるいは地下水等が使用される。低下する缶水の補充がされたボイラ水位は、水位検出器6によって測定される。また、缶水には、高温の蒸気の発生に伴って、不純物の濃度(缶水の濃縮度)が上昇する。本装置では、缶水の濃縮度の上昇を防止し、ボイラ缶水の安定した状態および所望の発熱量を確保するために、ブローの流量調整機構3によって、間欠的にブローを行なうとともに、所定のブロー流量に調整される構成を示す。
【0022】
〔供給水の流量調整機構〕
本装置における供給水の流量調整機構2は、ボイラ1への供給水供給流路に配設された給水ポンプ2aから構成される。本装置では、水位検出器6の出力(水位)を基に演算・制御器7において演算された第1制御出力を指標として、予め設定された供給水流量が調整される。このとき、この缶水が予め設定された低レベル水位まで下がると、給水ポンプ2aを作動させ、高レベル水位に達するまで給水して水を補給するON−OFF制御ではなく、予め設定された水位を維持するように、水位変動に対応した供給水流量が供給可能な給水ポンプ2aの負荷が調整される比例制御を用いることが好ましい。ボイラ1の負荷変動あるいは蒸気圧力の変動等、缶水の状態に影響する広い範囲の変動に対しても、缶水の異常を防止し、ボイラ缶水の安定した状態を確保することができる。演算・制御器7には、給水ポンプ2aの負荷を変動させて供給水流量を調整するインバータ(図示せず)を設けられる。また、給水ポンプ2aの負荷を変動させる構成に代え、給水ポンプ2aの下流に比例弁(図示せず)を設け、比例弁の開度を制御して供給水流量を調整する構成も可能である。
【0023】
〔ブローの流量調整機構〕
本装置におけるブローの流量調整機構3は、自動ブローの比例弁3aから構成される。本装置では、予め設定された缶水の電気伝導度に基づき、電気伝導度検出器5からの信号を指標として、比例弁3aの作動/停止が調整される。このとき、缶水が予め設定された高レベルの電気伝導度まで上がると、比例弁3aを作動させ、低レベルの電気伝導度に達すると比例弁3aを停止させるON−OFF制御を行うとともに、第1制御出力(供給水流量)に対応したブロー流量が供給できる比例弁3aの開度が調整される比例制御を用いることが好ましい。水位検出器6の出力(水位)を基に演算・制御器7において演算された第1制御出力に対しスケーリング補正して演算された第2制御出力を指標として比例弁3aの開度が調整されることによって、供給水流量とリンクした制御を可能とし、ボイラ1の負荷変動あるいは供給水流量の変動等、缶水の状態に影響する広い範囲の変動に対しても、缶水の異常を防止し、ボイラ缶水の安定した状態を確保することができる。なお、比例弁3aだけでは、精度よく流量調整ができない場合には、比例弁3aの上流あるいは下流に、絞り弁やオリフィス(図示せず)を設けることによって、ブロー流量の調整機能を向上させることができる。
【0024】
〔ブロー熱交換器〕
本装置では、ブロー熱交換器4が、ブロー流路に設けられた構成を示す。ブローの実行時において、ボイラ1から排出される高温のブロー排出水と、比較的低温の供給水の熱交換を行うことによって、排出される熱エネルギーを低減することができ、本装置を含むボイラ全体のエネルギー効率の向上を図ることができる。特に、本装置においては、ブロー流量を供給水流量とリンクした条件で調整することから、供給水流量の上昇とともにブロー流量も上昇し、供給水流量の低下とともにブロー流量も低下する。従って、ブロー熱交換器4に導入され、供出されるブロー排出水と供給水の間で交換される熱量がバランスよく収支し、ブロー熱交換器4の熱交換機能を効果的に利用することができる。このように、ブロー流量と供給水流量がリンクして調整されるという本装置固有の制御機能によって、ボイラ全体のエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0025】
〔電気伝導度検出器〕
本装置では、電気伝導度検出器5からの信号を指標として、ブローの作動・停止が制御される。電気伝導度検出器5として、例えば高温の缶水に使用可能な電極式電気伝導度センサ等が用いられる。
【0026】
〔水位検出器〕
本装置では、水位検出器6は、水準器6aおよび水位センサ6bから構成される。水位検出器6からの出力が、ボイラ1の水位の実測情報として、演算・制御器7に送信され、ボイラ1への供給水流量を調整する指標として使用される。水位センサ6bとして、例えば差圧式センサ等が用いられる。なお、供給水流量およびブロー流量の制御に用いる指標を、多段階に範囲設定された水位の実測情報を基に演算される場合には水位検出器6として、長さの異なる複数の電極が配設された電極式水位センサ(図示せず)を用いることが可能である
【0027】
〔演算・制御器〕
演算・制御器7には、電気伝導度検出器5、水位検出器6および後述する蒸気圧力検出器8からの実測情報が入力される。入力されたこれらの実測情報は、予め設定された電気伝導度、水位および蒸気圧力の設定情報と比較された後、所定の演算(補正)処理がされて、供給水の流量調整機構2およびブローの流量調整機構3に対する制御信号が作製される。具体的には、電気伝導を指標としたブローの作動/停止信号,ボイラ水位を基に演算された第1制御出力,および第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力が作製され、供給水の流量調整機構2およびブローの流量調整機構3に送信される。
【0028】
〔スケーリング補正〕
ここで、「スケーリング補正」とは、通常、第1制御出力と第2制御出力の関係が、図2破線に例示するように、1:1(Y=X)であるのに対し、本装置では、供給水流量(Qw:第1制御出力)とブロー流量(Qb:第2制御出力)の関係が最適となるように、図2実線に例示する直線方程式(Y=AX+B)に変えることをいう。供給水流量(Qw)とブロー流量(Qb)の関係は、Xmin(Qwmin)とXmax(Qwmax)間の任意の全ての点において、下式1となるように、スケーリング補正が行われる。
Qb≧Qw×(計画ブロー率)×(裕度) …式1
第1制御出力におけるXmin(Qwmin)に対応する第2制御出力Y1は、下式2となり、
Y1(Qb1)=A×Qwmin+B …式2
第1制御出力におけるXmax(Qwmax)に対応する第2制御出力Y2は、下式3となる。
Y2(Qb2)=A×Qwmin+B …式3
こうした設定によって、いかなる供給水流量であっても、ブロー熱交換器4の熱交換効率を維持しつつ、ボイラ缶水の安定した状態を確保することができる。
【0029】
<第1構成例におけるボイラのブロー制御方法>
第1構成例に係る本装置を用いたボイラのブロー制御方法は、以下のような制御プロセスによって構成される。
【0030】
(1)ボイラ水位および缶水の電気伝導度に係る実測情報を得る工程
水位検出器6で検出されたボイラ水位の実測情報、および電気伝導度検出器5で検出された缶水の電気伝導度に係る実測情報が演算・制御器7に入力される。
【0031】
(2)缶水の電気伝導度の実測情報を、予め設定された電気伝導度と比較する工程
演算・制御器7には、缶水を適正な濃縮状態に維持するため、缶水の濃縮状態が増したときにブローを作動させる上限電気伝導度と、缶水の濃縮状態が低下したときに停止させる下限電気伝導度が、予め設定されており、缶水の電気伝導度の実測情報と上限電気伝導度の設定値および下限電気伝導度とが比較される。
【0032】
(3)ボイラ水位の実測情報を基に演算された第1制御出力から、ボイラへの供給水流量を調整し、予め設定されたボイラ水位に制御する工程
演算・制御器7において、入力されたボイラ水位の実測情報から、現在の水位と予め設定された水位との比較が行われ、第1制御出力が演算される。得られた第1制御出力は、供給水の流量調整機構2に入力され、供給水流量が調整される。演算・制御器7は、この制御結果をボイラ水位の実測情報で確認し、再度比較・演算を行い、第1制御出力値の修正を行い、このサイクルを続けることで、ボイラ水位を目標水位に保つよう制御(フイードバック制御)が行われる。
【0033】
(4)缶水の電気伝導度の実測情報から、ブローの実行・停止あるいはブロー流量を調整・制御する工程
電気伝導度センサ5の出力が、予め設定された上限電気伝導度以上の場合に、比例弁3aを作動させ、下限電気伝導度以下の場合に、比例弁3aを停止させる。
【0034】
(5)第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力から、予め設定されたブロー流量に調整・制御する工程
演算・制御器7において、第1制御出力を基にスケーリング補正が行われた第2制御出力が演算される。得られた第2制御出力は、ブローの流量調整機構3に入力され、ブロー流量が調整される。
【0035】
〔比例制御に対する動作隙間および/または強制動作タイマおよび/または応答遅れの設定〕
ここで、上記供給水流量の比例制御に対するブロー流量の比例制御について、比例弁3aを多段階に制御する場合、ブロー流量の比例制御が、供給水流量の比例制御に対して所定の動作隙間および/または強制動作タイマおよび/または応答遅れを設けて行なわれることが好ましい場合がある。ボイラ水位の急激な変動があった場合において、ボイラ1の過熱が発生しないようにボイラ水位を正常に維持するためには、供給水は迅速にその変動に対応して補充あるいは減量を行なうことが好ましい。また、供給水の流量調整機構2へ出力される第1制御出力は、蒸気の負荷が安定している状態においても頻繁に微量の増減が生じており、これに連動する第2制御出力が短い周期で増減を繰り返した場合には、ブローの流量制御機構3が動作のチャタリングを起こし、機器の短命化を引き起こすことがある。こうした問題を解決するため、ブローの流量制御機構3の動作タイミングに動作隙間および/または強制動作タイマおよび/または応答遅れを設ける。
【0036】
具体的には、ブロー流量を制御する第2制御出力に対し、下記の時間的管理を追加し、ブローの流量制御機構3の動作回数を低減させる。
(i)第2制御出力に対し、動作点と停止点の間に動作隙間を設ける。
(ii)第2制御出力が動作点に達しても、すぐにブローの流量制御機構3を動作させないよう一定の遅れタイマ(オンディレイ)を設け、第2制御出力が確実に動作点以上になるようにする。
(iii)第2制御出力が上記2項の条件を満足した後、すぐに停止点に低下しても、しばらくはブローの流量制御機構3を強制動作させる。
【0037】
<本装置の他の構成例>
本装置の他の実施態様として、図3に示す構成例(第2構成例)について説明する。本装置は、ボイラ蒸気の圧力を測定する蒸気圧力検出器8を備え、ブローの流量調整機構3において、蒸気圧力検出器8の出力を指標としてブロー流量を補正することを特徴とする。蒸気負荷側の操業状況によっては、ボイラの蒸気圧力が変動する場合があり、ボイラの蒸気圧力が変化すると、第1制御出力に対する供給水の流量特性および第2制御出力に対するブロー水の流量特性が変化するため、供給水流量とブロー流量の関係が適正範囲から外れてしまう。このために、第2制御出力にはスケーリング補正とともに、ボイラの蒸気圧力の実測情報を得て圧力補正を行い、供給水流量とブロー流量の関係が常に適正範囲内になるように調整することによって、よりボイラ缶水の安定した状態が確保された。
【0038】
〔蒸気圧力検出器〕
本装置では、蒸気圧力検出器8からの信号を指標として、ブロー流量の圧力補正が行われる。蒸気圧力検出器7として、例えば半導体式センサ等が用いられる。
【0039】
〔第2構成例におけるブロー制御方法〕
第2構成例に係る本装置を用いたボイラのブロー制御方法、以下のような制御プロセスによって構成される。なお、上記「第1構成例におけるブロー制御方法」と共通する工程については省略することがある。
【0040】
(1)ボイラ水位,缶水の電気伝導度,およびボイラの蒸気圧力に係る実測情報を得る工程
第1構成例において用いられる実測情報に加え、ボイラの蒸気圧力に係る実測情報が演算・制御器7に、入力される。
【0041】
(2)缶水の電気伝導度の実測情報を、予め設定された電気伝導度と比較する工程
演算・制御器7には、缶水を適正な濃縮状態に維持するため、缶水の濃縮状態が増したときにブローを作動させる上限電気伝導度と、缶水の濃縮状態が低下したときに停止させる下限電気伝導度が、予め設定されており、缶水の電気伝導度の実測情報と上限電気伝導度の設定値および下限電気伝導度とが比較される。
【0042】
(3)ボイラ水位の実測情報を基に演算された第1制御出力から、ボイラへの供給水流量を調整し、予め設定されたボイラ水位に制御する工程
演算・制御器7において、入力されたボイラ水位の実測情報から、現在の水位と予め設定された水位との比較が行われ、第1制御出力が演算される。得られた第1制御出力は、供給水の流量調整機構2に入力され、供給水流量が調整される。演算・制御器7は、この制御結果をボイラ水位の実測情報で確認し、再度比較・演算を行い、第1制御出力値の修正を行い、このサイクルを続けることで、ボイラ水位を目標水位に保つよう制御(フイードバック制御)が行われる。
【0043】
(4)缶水の電気伝導度の実測情報から、ブローの実行・停止あるいはブロー流量を調整・制御する工程
電気伝導度検出器5の出力が、予め設定された上限電気伝導度以上の場合に、比例弁3aを作動させ、下限電気伝導度以下の場合に、比例弁3aを停止させる。
【0044】
(5)第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力を求め、ボイラの蒸気圧力の実測情報から、第2制御出力に対して圧力補正を行い、第2a制御出力を得る工程
演算・制御器7において、第1制御出力を基に、スケーリング補正が行われた第2制御出力が演算され、さらに第2制御出力に対し、入力されたボイラの蒸気圧力の実測情報基に、圧力補正を行われた第2a制御出力が演算される。
【0045】
(6)前記第2a制御出力から、予め設定されたブローの流量に調整・制御する工程
得られた第2a制御出力は、ブローの流量調整機構3に入力され、ブロー流量が調整される。第1構成例において行われる第2制御出力のスケーリング補正に加え、蒸気圧力に対するブローの流量特性を考慮した補正を行うことによって、供給水流量に対する適正なブロー流量を常に維持することができるようになる。
【0046】
ここで、上記ブロー流量の比例制御について、比例弁3aを多段階に制御する場合、ブロー流量の比例制御が、供給水流量の比例制御に対して動作隙間および/または強制動作タイマおよび/または応答遅れを設けて行なわれることが好ましい場合があることは、第1構成例と同様である。
【0047】
<本装置の他の実施態様>
本装置の他の実施態様として、図4に示す構成例(第3構成例)について説明する。ブローの流量調整機構3が、多段階に設定されたブロー流量に対応した複数の自動ブロー弁から構成される。ボイラのような変動要素が多く変動幅の大きな対象を、複数の指標に基づき制御する場合に、本装置では、複数の指標の出力の組合せから、ブロー制御装置実動時の最適条件となる複数の領域のブロー流量を設定し、その領域に対応した自動ブロー弁と絞り弁の開閉を制御することによって、ボイラにおける変動要素や変動幅を吸収し、ボイラ缶水の安定した状態を確保した。
【0048】
また、第3構成例では、流量調整機構3が、3つの自動ブロー弁31b〜33bと3つの絞り弁31c〜33cが組み合わされ、ブロー上流から下流に対して自動ブロー弁31b〜33bが直列的に配設された構成例を示すが、これに限定されるものではない。例えば、図5のように、自動ブロー弁31b〜33bと絞り弁31c〜33cがともに並列的に配設された構成例(第4構成例)も可能である。第3構成例のように、自動ブロー弁31b〜33bが直列的に配設された場合には、ブロー流量を、ブローの開始時から連続的かつ徐々に増量あるいは連続的かつ徐々に減量しながら停止させる制御とし、ブロー排出水の流通抵抗の少ない簡便な構成・機能を確保することができる。第4構成例のように、並列的に配設された場合には、自動ブロー弁31b〜33bを単一的に選択するともに、複数同時に選択することによって、細分化されたブロー流量を制御することができる。
【0049】
下表1に、第3構成例における自動ブロー弁31b〜33bの開状態とブロー排出水が流れる絞り弁31c〜33cの関係を示す。自動ブロー弁31b〜33bが順に開状態となるに伴い、ブロー排出水が流れる絞り弁31c〜33cが順に増加(流路が増加)し、ブロー流量が増加する。
【0050】
【表1】

【0051】
ここで、自動ブロー弁31b〜33bを制御する場合、ブロー流量の比例制御が、供給水流量の比例制御に対して動作隙間および/または強制動作タイマおよび/または応答遅れを設けて行なわれることが好ましい場合があることは、第1,2構成例と同様である。
【符号の説明】
【0052】
1 ボイラ
2 供給水の流量調整機構
2a 給水ポンプ
3 ブローの流量調整機構
3a 比例弁
3b,31b,32b,33b 自動ブロー弁
3c,31c,32c,33c 絞り弁
4 ブロー熱交換器
5 電気伝導度検出器
6 水位検出器
6a 水準器
6b 水位センサ
7 演算・制御器
8 蒸気圧力検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラへの供給水の流量調整機構,ブローの流量調整機構,前記供給水とブロー排出水の熱交換を行うブロー熱交換器,缶水の電気伝導度を測定する電気伝導度検出器,ボイラ水の水位を測定する水位検出器,および演算・制御器を備え、
前記電気伝導度検出器の出力を指標としてブローを制御し、前記水位検出器の出力を基に演算された第1制御出力を指標として前記供給水の流量を比例制御するとともに、前記第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力を指標として前記ブローの流量の比例制御を行うことを特徴とするボイラのブロー制御装置。
【請求項2】
前記ブローの流量調整機構が、自動ブローの比例弁からなり、前記第2制御出力を指標として、前記比例弁の開度を調整し、ブローの流量を比例制御することを特徴とする請求項1記載のボイラのブロー制御装置。
【請求項3】
前記ブローの流量調整機構が、多段階に設定されたブローの流量に対応した複数の自動ブロー弁あるいは自動ブロー弁と絞り弁からなり、前記第2制御出力を指標として、前記自動ブロー弁のいくつかを選択し、ブローの流量を比例制御することを特徴とする請求項1記載のボイラのブロー制御装置。
【請求項4】
ボイラ蒸気の圧力を測定する蒸気圧力検出器を備え、前記蒸気圧力検出器の出力を用いて、前記第2制御出力を補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のボイラのブロー制御装置。
【請求項5】
比例給水方式における間欠ブローを用いたボイラにおいて、
ボイラ水の水位を基に演算された第1制御出力を指標としてボイラへの供給水の流量を比例制御し、缶水の電気伝導度を指標としてブローを制御するとともに、前記第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力を指標としてブローの流量の比例制御を行うことを特徴とするボイラのブロー制御方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のボイラのブロー制御装置を用い、次の工程を有し、
(1)ボイラ水の水位および缶水の電気伝導度に係る実測情報を得る工程、
(2)前記電気伝導度の実測情報を、予め設定された電気伝導度と比較する工程、
(3)前記水位の実測情報を基に演算された第1制御出力から、ボイラへの供給水の流量を調整し、予め設定された水位に制御する工程、
(4)前記電気伝導度の実測情報から、ブローの実行・停止あるいはブローの流量を調整・制御する工程、
(5)前記第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力から、予め設定されたブローの流量に調整・制御する工程、
ブローの流量を比例制御することを特徴とするボイラのブロー制御方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のボイラのブロー制御装置を用い、次の工程を有し、
(1)ボイラ水の水位,缶水の電気伝導度,およびボイラの蒸気圧力に係る実測情報を得る工程、
(2)前記電気伝導度の実測情報を、予め設定された電気伝導度と比較する工程、
(3)前記水位の実測情報を基に演算された第1制御出力から、ボイラへの供給水の流量を調整し、予め設定された水位に制御する工程、
(4)前記電気伝導度の実測情報から、ブローの実行・停止あるいはブローの流量を調整・制御する工程、
(5)前記第1制御出力を基にスケーリング補正して演算された第2制御出力を求め、前記ボイラの蒸気圧力の実測情報から、前記第2制御出力に対して圧力補正を行い、第2a制御出力を得る工程、
(6)前記第2a制御出力から、予め設定されたブローの流量に調整・制御する工程、
ブローの流量を比例制御することを特徴とするボイラのブロー制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−19561(P2013−19561A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151084(P2011−151084)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(505229472)株式会社日本サーモエナー (24)