説明

ボイラ伝熱管の異物捕集装置

【課題】伝熱管及び蒸気の流通路にスケールが溜っているかどうかを簡便に検査でき、更にスケールの除去を簡単に行える様にし、スケールが溜っているかどうかの検査、スケール除去作業に要する作業コストの低減を図る。
【解決手段】垂直に設けられた蒸気流路管3の下端より所定距離上方位置に連絡管5を接続し、蒸気流が前記連絡管を経て前記蒸気流路管を上昇する様にし、該伝熱管入口管寄の下端にスケールタンク7を設け、前記伝熱管入口管寄を落下するスケールを前記スケールタンクに捕集する様構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラ伝熱管の内壁に形成されるスケール(異物)を捕集し、又容易に異物を除去可能としたボイラ伝熱管の異物捕集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラには燃焼炉の壁面、或は燃焼ガス流路中に蒸気発生用の伝熱管が設けられ、伝熱管を介して伝熱管内部を流通する蒸気と、炉内ガス或は排気ガスとの熱交換が行われ、蒸気の発生、蒸気の過熱が行われる。
【0003】
先ず、図5に於いて、従来構造に於ける問題点を述べる。尚、図5中、1は伝熱管出口管寄、2は伝熱管が集合したもの、3は伝熱管入口管寄、4は伝熱管入口マニホールドを示す。
【0004】
蒸気が流通する蒸気流路管、例えば伝熱管2では蒸気が流通する内壁に酸化物であるスケールが形成される。該スケールと前記伝熱管2自体とは熱膨張率が異なるので、ボイラを停止した場合等、前記伝熱管2の温度が低下すると、該伝熱管2の内面からスケールの剥離が発生する。
【0005】
剥離したスケールは落下し、前記伝熱管2の屈曲した下端部に堆積する。或は浮遊して蒸気と共に流れ、タービン側に流出する。堆積したスケールは、蒸気の流通を妨げ、或は浮遊したスケールはタービンに流入し、タービン羽根に衝突して、タービン羽根を摩耗させるという問題がある。
【0006】
従って、スケールを炉外に除去する必要があり、従来ではボイラを停止した場合、屈曲部分等スケールの溜りやすい部分をX線検査によりスケールが溜っているかどうかを、伝熱管2それぞれについて検査し、溜っている場合は、前記伝熱管2の一部を切除し、スケールを吸出す等していた。
【0007】
この為、スケールが溜っているかどうかの検査、除去作業は、多くの時間と労力とを必要としていた。
【0008】
【特許文献1】特開平11−324616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は斯かる実情に鑑み、伝熱管及び蒸気の流通路にスケールが溜っているかどうかを簡便に検査でき、更にスケールの除去を簡単に行える様にし、スケールが溜っているかどうかの検査、スケール除去作業に要する作業コストの低減を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、垂直に設けられた蒸気流路管の下端より所定距離上方位置に連絡管を接続し、蒸気流が前記連絡管を経て前記蒸気流路管を上昇する様にし、該蒸気流路管の下端にスケールタンクを設け、前記蒸気流路管を落下するスケールを前記スケールタンクに捕集する様構成したボイラ伝熱管の異物捕集装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記蒸気流路管の下端内部にスケール逆流防止部材を設け、前記蒸気流路管と前記スケールタンクとを前記スケール逆流防止部材を介して連通させたボイラ伝熱管の異物捕集装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記スケール逆流防止部材は、下端部が細径となった漏斗部を有し、前記スケールタンクの天頂部にはスケール捕集口が穿設され、前記下端部が前記スケール捕集口に連通するボイラ伝熱管の異物捕集装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記漏斗部の上端内部には旋回流抑止部材が設けられたボイラ伝熱管の異物捕集装置に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記旋回流抑止部材は、短冊状の板片を十字状に組合わせた形状であるボイラ伝熱管の異物捕集装置に係るものである。
【0015】
又本発明は、前記スケールタンクの底部及び側部に切除可能なニップルを設けたボイラ伝熱管の異物捕集装置に係るものである。
【0016】
更に又本発明は、前記連絡管と前記蒸気流路管下端部との成す角が、40°以上50゜以下であるボイラ伝熱管の異物捕集装置に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、垂直に設けられた蒸気流路管の下端より所定距離上方位置に連絡管を接続し、蒸気流が前記連絡管を経て前記蒸気流路管を上昇する様にし、該蒸気流路管の下端にスケールタンクを設け、前記蒸気流路管を落下するスケールを前記スケールタンクに捕集する様構成したので、スケールにより蒸気流路が閉塞されること、スケールが蒸気下流に流されることが防止され、又スケールの除去はスケールタンクについて行えばよく、伝熱管についてX線検査等実施する必要がなくなる。
【0018】
又本発明によれば、前記蒸気流路管の下端内部にスケール逆流防止部材を設け、前記蒸気流路管と前記スケールタンクとを前記スケール逆流防止部材を介して連通させたので、スケールタンクに溜ったスケールが逆流することが防止される。
【0019】
又本発明によれば、前記漏斗部の上端内部には旋回流抑止部材が設けられたので、漏斗内部の気体の旋回を抑止でき、スケールタンク内部でのスケールの浮遊を抑制し、スケールタンクからのスケールの飛出しを防止すると共にスケールタンクのスケールの擦れによる摩耗を防止できる。
【0020】
又本発明によれば、前記スケールタンクの底部及び側部に切除可能なニップルを設けたので、スケールの溜り具合の点検、スケールの除去が容易に行える。
【0021】
更に又本発明によれば、前記連絡管と前記蒸気流路管下端部との成す角が、40°以上50゜以下であるので、連絡管から蒸気流路管を流れる蒸気の影響が前記スケールタンクに及ぶことが防止され、該スケールタンクからスケールが逆流することが防止できるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0023】
本発明は、蒸気流路管の垂直部分、例えば伝熱管の垂直部分に実施することができる。本発明は入口部から出口部迄一貫して上部から下部へ通じる伝熱管の天地方向に垂直な管寄の下部に実施することができる。
【0024】
以下は、図1〜図4を参照し、本発明が伝熱管入口管寄の下部に実施された場合について説明する。又、図1〜図4中、図5中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0025】
伝熱管入口管寄3の下端から所定距離上昇した位置に、該伝熱管入口管寄3に対して角度θ傾斜させて連絡管5を接続する。該連絡管5の下端は伝熱管入口マニホールド4に接続する。
【0026】
前記伝熱管入口管寄3の下端にはスケールタンク7を溶接付する。該スケールタンク7は、前記伝熱管入口管寄3と直交する軸心を有し、両端が閉塞された円筒形状となっている。
【0027】
該伝熱管入口管寄3の内部下端に、スケール逆流防止部材6を嵌設する。
【0028】
前記スケール逆流防止部材6は、下端部が細径となった漏斗部6bと、該漏斗部6bの上端に設けられたフランジ部6a及び前記漏斗部6bの上端部に設けたスケール旋回流抑止部材6cから構成されている。ここで、前記漏斗部6bの下端部の内径は、スケールが引掛らない充分な大きさに設定され、前記スケール旋回流抑止部材6cは短冊状の板片を十字状に組合わせた形状となっている。
【0029】
前記スケールタンク7の下端部、中央にスケール排出用ニップル9を設け、又前記スケールタンク7の作業の行い易い側面、例えば端面に内部点検用ニップル8を設ける。
【0030】
以下、スケールの点検、除去について説明する。
【0031】
ボイラを停止する等により、スケールが伝熱管内面から剥離し、前記伝熱管入口管寄3に落下すると、該伝熱管入口管寄3から、更に前記スケール逆流防止部材6を経て前記スケールタンク7内部に落下貯溜される。
【0032】
該スケールタンク7のスケールの貯溜状態を確認するには、前記内部点検用ニップル8を切除し、前記スケールタンク7の内部を観察する。
【0033】
一定期間、例えばボイラ定期点検が行われる2年毎に、前記スケール排出用ニップル9を切除してスケールを除去する。スケールを除去した後、再び前記スケール排出用ニップル9及び前記内部点検用ニップル8を溶接する。
【0034】
前記伝熱管入口マニホールド4を流通した蒸気は、前記連絡管5から前記伝熱管入口管寄3の分岐点Oを経て該伝熱管入口管寄3を上昇する。蒸気が前記伝熱管入口管寄3に流入する過程で、前記分岐点Oより下方への蒸気の回込み、或はスケールタンク7からの吸出しが発生する。この為、前記スケールタンク7内部の空気が乱れて、スケールが巻上がり、蒸気流に乗って逆流し、前記伝熱管入口管寄3を上昇することが想定される。
【0035】
前記スケール逆流防止部材6は、スケールの巻上がりを防止及び逆流を防止する。
【0036】
前記漏斗部6bは、下端部を絞った形状としているので、スケールが逆流することを抑止する。又、前記スケール旋回流抑止部材6cは前記スケールタンク7内部に蒸気が旋回流となって流入すること、及び前記スケールタンク7内部で気体(空気、蒸気)が旋回することを抑止する。従って、スケールが前記スケールタンク7内部で浮遊し、旋回することが抑制され、スケールの逆流が更に抑制される。又、前記スケールタンク7内で旋回することが抑制されるので、スケールの擦れによる前記スケールタンク7の内面の摩耗が抑制される。
【0037】
次に、前記連絡管5から前記伝熱管入口管寄3の下端部への蒸気の回込み、吸出し等、前記伝熱管入口管寄3下端部への蒸気流の影響は、前記角度θに左右される。角度θが大きい、例えば90°とすると、蒸気流の前記スケールタンク7内部への影響が大きく、貯溜されたスケールの巻上がり、スケールの逆流が実験により確認されている。又、角度θは小さい方がよく、角度θは50°以下がよいことも確認されている。一方で、角度θを小さくすると、前記連絡管5と前記伝熱管入口管寄3との溶接作業性が悪くなり、溶接作業性を考慮すると、θ=90゜以下40゜以上が好ましい。従って、前記角度θは40゜以上50゜以下の範囲で設定されることが好ましい。又、前記連絡管5と前記伝熱管入口管寄3との接続位置も、前記伝熱管入口管寄3の下端部への蒸気流の影響が少ない様に設定される。
【0038】
上記実施の形態では、前記スケール旋回流抑止部材6cを十字形状としたが、3股状等であってもよく、旋回流を抑制し、スケール落下の障害とならなければよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例の要部を示す説明図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図2のB−B矢視図である。
【図4】図2のC−C矢視図である。
【図5】従来の伝熱管部分の説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 伝熱管出口管寄
2 伝熱管
3 伝熱管入口管寄
4 伝熱管入口マニホールド
5 連絡管
6 スケール逆流防止部材
6a フランジ部
6b 漏斗部
6c スケール旋回流抑止部材
7 スケールタンク
8 内部点検用ニップル
9 スケール排出用ニップル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に設けられた蒸気流路管の下端より所定距離上方位置に連絡管を接続し、蒸気流が前記連絡管を経て前記蒸気流路管を上昇する様にし、該蒸気流路管の下端にスケールタンクを設け、前記蒸気流路管を落下するスケールを前記スケールタンクに捕集する様構成したことを特徴とするボイラ伝熱管の異物捕集装置。
【請求項2】
前記蒸気流路管の下端内部にスケール逆流防止部材を設け、前記蒸気流路管と前記スケールタンクとを前記スケール逆流防止部材を介して連通させた請求項1のボイラ伝熱管の異物捕集装置。
【請求項3】
前記スケール逆流防止部材は、下端部が細径となった漏斗部を有し、前記スケールタンクの天頂部にはスケール捕集口が穿設され、前記下端部が前記スケール捕集口に連通する請求項2のボイラ伝熱管の異物捕集装置。
【請求項4】
前記漏斗部の上端内部には旋回流抑止部材が設けられた請求項3のボイラ伝熱管の異物捕集装置。
【請求項5】
前記旋回流抑止部材は、短冊状の板片を十字状に組合わせた形状である請求項4のボイラ伝熱管の異物捕集装置。
【請求項6】
前記スケールタンクの底部及び側部に切除可能なニップルを設けた請求項1のボイラ伝熱管の異物捕集装置。
【請求項7】
前記連絡管と前記蒸気流路管下端部との成す角が、40°以上50゜以下である請求項1のボイラ伝熱管の異物捕集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169542(P2011−169542A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35653(P2010−35653)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)