説明

ボイラ設備の燃料制御装置

【課題】停電等の非常運転時において、通常運転時に使用される燃料供給系統による燃料供給ができなくなったような場合にも、負荷の下がり過ぎを防止しつつ非常運転時用の燃料供給系統に切り換えることができ、ボイラ本体の運転を停止させずに継続させ得るボイラ設備の燃料制御装置を提供する。
【解決手段】非常運転時に切り換えられる他方の燃料供給系統Bに設けられた燃料流量調節弁10Bの待機中における初点火開度設定値32Bを、通常用初点火開度設定値26B′より大きい非常用初点火開度設定値33Bに切り換え可能となるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ設備の燃料制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電所等に用いられるボイラ設備においては、バーナからボイラ本体の火炉内へ燃料を噴射して燃焼させることにより、燃焼ガスを生成し、生成された燃焼ガスを流通させ、過熱器、再熱器、及び節炭器等と熱交換させ、熱交換した後の排ガスを排ガスダクトへ流出させ、下流側に設けられた脱硝、脱硫等の排煙処理装置で窒素酸化物や硫黄酸化物等を除去した後、大気へ放出するようになっている。
【0003】
図4はボイラ本体の前面側並びに後面側に配設されるバーナを示す斜視図であって、図4に示す例の場合、ボイラ本体1の前面側に、八本のバーナ2(F−1〜F−8)を上下二段に四本ずつ配設すると共に、ボイラ本体1の後面側に、八本のバーナ2(R−1〜R−8)を上下二段に四本ずつ配設してある。
【0004】
図5は従来における燃料系統の一例を示す概略図であって、前記各バーナ2は、各段毎に二本ずつ1ペア(図5の例では、F−1とF−4、F−2とF−3、F−5とF−8、F−6とF−7、R−1とR−4、R−2とR−3、R−5とR−8、R−6とR−7)とされる一方、各ペアのバーナ2毎に二系統の燃料供給系統A,Bが接続され、バーナ弁3A,3Bの開閉操作により、いずれか一方の燃料供給系統A(或いはB)からバーナ2へ燃料が供給されるようになっている。
【0005】
前記二系統の燃料供給系統A,Bのうちの一方の燃料供給系統Aは、タンク4Aに貯留された燃料を電動モータ5Aによって駆動されるポンプ6Aにより圧送し、基本的に、流量検出器7Aで検出される燃料流量8Aが負荷に応じた燃料流量指令9A(図6参照)と一致するよう燃料流量調節弁10Aの開度を調節することにより、燃料流量8Aを制御しつつ、該燃料を所望のバーナ2からボイラ本体1内へ噴射するようになっている。
【0006】
又、前記二系統の燃料供給系統A,Bのうちの他方の燃料供給系統Bは、タンク4Bに貯留された燃料を電動モータ5Bによって駆動されるポンプ6B或いはタービン5B′によって駆動されるポンプ6B′により圧送し、基本的に前記一方の燃料供給系統Aと同様、流量検出器7Bで検出される燃料流量8Bが負荷に応じた燃料流量指令9B(図6参照)と一致するよう燃料流量調節弁10Bの開度を調節することにより、燃料流量8Bを制御しつつ、該燃料を所望のバーナ2からボイラ本体1内へ噴射するようになっている。
【0007】
尚、前記ボイラの場合、起動時に1ペアのバーナ2が初点火されてから2ペア目のバーナ2が着火するまでの間は、負荷に応じた燃料流量制御ができないため、燃料圧力制御を行うようになっており、このため、前記一方の燃料供給系統Aには、その燃料圧力11Aを検出するための圧力検出器12Aが設けられていると共に、前記他方の燃料供給系統Bには、その燃料圧力11Bを検出するための圧力検出器12Bが設けられており、前記流量検出器7A,7Bで検出された燃料流量8A,8Bと、前記圧力検出器12A,12Bで検出された燃料圧力11A,11Bとが制御装置13へ入力され、該制御装置13から燃料流量調節弁10A,10Bへ開度指令14A,14Bが出力されるようになっている。
【0008】
図6は従来における制御装置の一例を示す回路図であって、該制御装置13は、一方の燃料供給系統Aにおける燃料流量調節弁10Aの制御用として、
燃料流量指令9Aと前記流量検出器7Aで検出された燃料流量8Aとの燃料流量偏差15Aを求めて出力する減算器16Aと、
該減算器16Aから出力される燃料流量偏差15Aを比例積分処理し、該燃料流量偏差15Aをなくすための燃料流量調節弁10Aの開度指令17Aをその開度上下限値の範囲内に収めて出力する比例積分調節器18Aと、
予め設定された圧力設定値19Aと前記圧力検出器12Aで検出された燃料圧力11Aとの燃料圧力偏差20Aを求めて出力する減算器21Aと、
該減算器21Aから出力される燃料圧力偏差20Aを比例積分処理し、該燃料圧力偏差20Aをなくすための燃料流量調節弁10Aの開度指令22Aをその開度上下限値の範囲内に収めて出力する比例積分調節器23Aと、
ボイラ起動時に1ペアのバーナ2が初点火されてから2ペア目のバーナ2が着火するまでの間、燃料圧力制御を自動で行う場合にa側に切り換えられ、前記比例積分調節器23Aから出力される開度指令22Aを開度指令24Aとして出力する一方、2ペア目のバーナが着火した後、負荷に応じた燃料流量制御が可能となった場合にb側に切り換えられ、前記比例積分調節器18Aから出力される開度指令17Aを開度指令24Aとして出力する切換器25Aと、
ボイラ起動時に初点火指令が出された際にa側に切り換えられ、1ペアのバーナ2を点火させるのに必要となる予め設定された初点火開度設定値26Aを開度指令27Aとして出力する一方、それ以外の時にはb側に切り換えられ、その時点における燃料流量調節弁10Aの開度指令14Aをそのまま開度指令27Aとして出力する切換器28Aと、
ボイラ起動時に1ペアのバーナ2が初点火されるまでの間はb側に切り換えられ、前記切換器28Aから出力される開度指令27Aを開度指令29Aとして出力する一方、1ペアのバーナが初点火されてから燃料流量調節弁10Aの制御を自動で行う場合にa側に切り換えられ、前記切換器25Aから出力される開度指令24Aを開度指令29Aとして出力する切換器30Aと、
燃料流量調節弁10Aの開度調節を手動操作或いは自動操作に切り換え可能で且つ自動操作時には前記切換器30Aからの開度指令29Aを開度指令14Aとして燃料流量調節弁10Aへ出力する手動/自動操作器31Aと
を備えると共に、
他方の燃料供給系統Bにおける燃料流量調節弁10Bの制御用として、
燃料流量指令9Bと前記流量検出器7Bで検出された燃料流量8Bとの燃料流量偏差15Bを求めて出力する減算器16Bと、
該減算器16Bから出力される燃料流量偏差15Bを比例積分処理し、該燃料流量偏差15Bをなくすための燃料流量調節弁10Bの開度指令17Bをその開度上下限値の範囲内に収めて出力する比例積分調節器18Bと、
予め設定された圧力設定値19Bと前記圧力検出器12Bで検出された燃料圧力11Bとの燃料圧力偏差20Bを求めて出力する減算器21Bと、
該減算器21Bから出力される燃料圧力偏差20Bを比例積分処理し、該燃料圧力偏差20Bをなくすための燃料流量調節弁10Bの開度指令22Bをその開度上下限値の範囲内に収めて出力する比例積分調節器23Bと、
ボイラ起動時に1ペアのバーナ2が初点火されてから2ペア目のバーナ2が着火するまでの間、燃料圧力制御を自動で行う場合にa側に切り換えられ、前記比例積分調節器23Bから出力される開度指令22Bを開度指令24Bとして出力する一方、2ペア目のバーナが着火した後、負荷に応じた燃料流量制御が可能となった場合にb側に切り換えられ、前記比例積分調節器18Bから出力される開度指令17Bを開度指令24Bとして出力する切換器25Bと、
ボイラ起動時に初点火指令が出された際にa側に切り換えられ、1ペアのバーナ2を点火させるのに必要となる予め設定された初点火開度設定値26Bを開度指令27Bとして出力する一方、それ以外の時にはb側に切り換えられ、その時点における燃料流量調節弁10Bの開度指令14Bをそのまま開度指令27Bとして出力する切換器28Bと、
ボイラ起動時に1ペアのバーナ2が初点火されるまでの間はb側に切り換えられ、前記切換器28Bから出力される開度指令27Bを開度指令29Bとして出力する一方、1ペアのバーナが初点火されてから燃料流量調節弁10Bの制御を自動で行う場合にa側に切り換えられ、前記切換器25Bから出力される開度指令24Bを開度指令29Bとして出力する切換器30Bと、
燃料流量調節弁10Bの開度調節を手動操作或いは自動操作に切り換え可能で且つ自動操作時には前記切換器30Bからの開度指令29Bを開度指令14Bとして燃料流量調節弁10Bへ出力する手動/自動操作器31Bと
を備えてなる構成を有している。
【0009】
一方の燃料供給系統Aにおける燃料を使用する場合、バーナ弁3A,3Bが全て閉じた状態で、ボイラ起動時に初点火指令が出された際には、切換器28Aがa側に切り換えられ、1ペアのバーナ2を点火させるのに必要となる予め設定された初点火開度設定値26Aが開度指令27Aとして出力され、該開度指令27Aが、b側に切り換えられている切換器30Aと手動/自動操作器31Aを介し、開度指令14Aとして燃料流量調節弁10Aへ出力され、該燃料流量調節弁10Aの開度が前記初点火開度設定値26Aと等しくなるよう調節され、燃料が、前記開放された所望のバーナ弁3Aを経て所望の1ペアのバーナ2へ供給され、該1ペアのバーナ2が初点火される。
【0010】
続いて、前記1ペアのバーナ2が初点火されると、それ以降、切換器30Aはa側に切り換えられ、切換器25Aは、2ペア目のバーナ2が着火するまでの間、a側に切り換えられ、このため、予め設定された圧力設定値19Aと圧力検出器12Aで検出された燃料圧力11Aとの燃料圧力偏差20Aが減算器21Aで求められて比例積分調節器23Aへ出力され、該比例積分調節器23Aにおいて、前記減算器21Aから出力される燃料圧力偏差20Aが比例積分処理され、該燃料圧力偏差20Aをなくすための燃料流量調節弁10Aの開度指令22Aがその開度上下限値の範囲内に収められて前記切換器25Aへ出力され、該切換器25Aと前記切換器30Aと手動/自動操作器31Aを介し、開度指令14Aとして燃料流量調節弁10Aへ出力され、該燃料流量調節弁10Aの開度が前記燃料圧力偏差20Aをなくすための開度指令22Aと等しくなるよう調節され、一方の燃料供給系統Aにおける燃料圧力11Aが予め設定された圧力設定値19Aに保持される。
【0011】
この後、2ペア目のバーナ2が着火すると、前記切換器25Aはb側に切り換えられ、このため、燃料流量指令9Aと流量検出器7Aで検出された燃料流量8Aとの燃料流量偏差15Aが減算器16Aで求められて比例積分調節器18Aへ出力され、該比例積分調節器18Aにおいて、前記減算器16Aから出力される燃料流量偏差15Aが比例積分処理され、該燃料流量偏差15Aをなくすための燃料流量調節弁10Aの開度指令17Aがその開度上下限値の範囲内に収められて前記切換器25Aへ出力され、該切換器25Aと前記切換器30Aと手動/自動操作器31Aを介し、開度指令14Aとして燃料流量調節弁10Aへ出力され、該燃料流量調節弁10Aの開度が前記燃料流量偏差15Aをなくすための開度指令17Aと等しくなるよう調節され、一方の燃料供給系統Aにおける燃料流量8Aが負荷に応じた燃料流量指令9Aに見合うよう燃料流量制御が行われる。
【0012】
又、前記一方の燃料供給系統Aにおける燃料が使用されている状態からボイラを停止させる際に、開放されていたバーナ弁3Aが全て閉じ、全バーナ2が消火された場合には、燃料流量調節弁10Aの制御が自動でなくなることから切換器30Aがb側に切り換えられると共に、切換器28Aもb側に切り換えられているため、その時点における燃料流量調節弁10Aの開度指令14Aがそのまま開度指令27Aとして出力され、該開度指令27Aが、前記b側に切り換えられている切換器30Aと手動/自動操作器31Aを介し、開度指令14Aとして燃料流量調節弁10Aへ出力され、該燃料流量調節弁10Aの開度がその時点での開度に保持されるが、これは、ボイラ停止時においてポンプ6Aがまだ動いている状態で前記燃料流量調節弁10Aの開度が大きく変動してしまうことを避けるためである。
【0013】
これに対し、他方の燃料供給系統Bにおける燃料を使用する場合、バーナ弁3A,3Bが全て閉じた状態で、ボイラ起動時に初点火指令が出された際には、切換器28Bがa側に切り換えられ、1ペアのバーナ2を点火させるのに必要となる予め設定された初点火開度設定値26Bが開度指令27Bとして出力され、該開度指令27Bが、b側に切り換えられている切換器30Bと手動/自動操作器31Bを介し、開度指令14Bとして燃料流量調節弁10Bへ出力され、該燃料流量調節弁10Bの開度が前記初点火開度設定値26Bと等しくなるよう調節され、燃料が、前記開放された所望のバーナ弁3Bを経て所望の1ペアのバーナ2へ供給され、該1ペアのバーナ2が初点火される。
【0014】
続いて、前記1ペアのバーナ2が初点火されると、それ以降、切換器30Bはa側に切り換えられ、切換器25Bは、2ペア目のバーナ2が着火するまでの間、a側に切り換えられ、このため、予め設定された圧力設定値19Bと圧力検出器12Bで検出された燃料圧力11Bとの燃料圧力偏差20Bが減算器21Bで求められて比例積分調節器23Bへ出力され、該比例積分調節器23Bにおいて、前記減算器21Bから出力される燃料圧力偏差20Bが比例積分処理され、該燃料圧力偏差20Bをなくすための燃料流量調節弁10Bの開度指令22Bがその開度上下限値の範囲内に収められて前記切換器25Bへ出力され、該切換器25Bと前記切換器30Bと手動/自動操作器31Bを介し、開度指令14Bとして燃料流量調節弁10Bへ出力され、該燃料流量調節弁10Bの開度が前記燃料圧力偏差20Bをなくすための開度指令22Bと等しくなるよう調節され、他方の燃料供給系統Bにおける燃料圧力11Bが予め設定された圧力設定値19Bに保持される。
【0015】
この後、2ペア目のバーナ2が着火すると、前記切換器25Bはb側に切り換えられ、このため、燃料流量指令9Bと流量検出器7Bで検出された燃料流量8Bとの燃料流量偏差15Bが減算器16Bで求められて比例積分調節器18Bへ出力され、該比例積分調節器18Bにおいて、前記減算器16Bから出力される燃料流量偏差15Bが比例積分処理され、該燃料流量偏差15Bをなくすための燃料流量調節弁10Bの開度指令17Bがその開度上下限値の範囲内に収められて前記切換器25Bへ出力され、該切換器25Bと前記切換器30Bと手動/自動操作器31Bを介し、開度指令14Bとして燃料流量調節弁10Bへ出力され、該燃料流量調節弁10Bの開度が前記燃料流量偏差15Bをなくすための開度指令17Bと等しくなるよう調節され、他方の燃料供給系統Bにおける燃料流量8Bが負荷に応じた燃料流量指令9Bに見合うよう燃料流量制御が行われる。
【0016】
又、前記他方の燃料供給系統Bにおける燃料が使用されている状態からボイラを停止させる際に、開放されていたバーナ弁3Bが全て閉じ、全バーナ2が消火された場合には、燃料流量調節弁10Bの制御が自動でなくなることから切換器30Bがb側に切り換えられると共に、切換器28Bもb側に切り換えられているため、その時点における燃料流量調節弁10Bの開度指令14Bがそのまま開度指令27Bとして出力され、該開度指令27Bが、前記b側に切り換えられている切換器30Bと手動/自動操作器31Bを介し、開度指令14Bとして燃料流量調節弁10Bへ出力され、該燃料流量調節弁10Bの開度がその時点での開度に保持されるが、これは、ボイラ停止時においてポンプ6Bがまだ動いている状態で前記燃料流量調節弁10Bの開度が大きく変動してしまうことを避けるためである。
【0017】
尚、二種類の燃料のうちいずれか一方を主燃料とした運転を切り換えて行うようにしたボイラの燃料制御装置を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開平8−261444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、発電所等に用いられるボイラ設備においては、停電等が生じて電動モータ5Aを駆動することができなくなったような場合にも、ボイラ本体1の運転を継続できるようにするために、前記一方の燃料供給系統Aからバーナ2に対して燃料の供給が行われている状態で、前記他方の燃料供給系統Bにおいては、図5に示される如く、タービン5B″によって駆動されるポンプ6B″により燃料を、前記タンク4B及びポンプ6B,6B′を迂回させる形で循環させ、停電等の非常運転時に備えて待機できるようにしてある。
【0019】
しかしながら、従来の制御装置13では、図6に示される如く、他方の燃料供給系統Bにおける燃料流量調節弁10Bの制御系を、一方の燃料供給系統Aにおける燃料流量調節弁10Aの制御系と全く同様としているため、仮に、停電等の非常運転時において、前記一方の燃料供給系統Aによる燃料供給ができなくなったような場合に、他方の燃料供給系統Bの制御系における切換器28Bに初点火指令が出されると、1ペアのバーナ2を点火させるのに必要となる初点火開度設定値26Bに燃料流量調節弁10Bの開度が調節されることから、結果的に負荷が下がり過ぎ、ボイラ本体1の運転を停止させずに継続させることが困難になるという不具合があった。
【0020】
本発明は、斯かる実情に鑑み、停電等の非常運転時において、通常運転時に使用される燃料供給系統による燃料供給ができなくなったような場合にも、負荷の下がり過ぎを防止しつつ非常運転時用の燃料供給系統に切り換えることができ、ボイラ本体の運転を停止させずに継続させ得るボイラ設備の燃料制御装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、ボイラ本体に配設された複数本のバーナに対し燃料を供給するための複数系統の燃料供給系統を通常運転時と非常運転時とで切り換え自在に設けてなるボイラ設備の燃料制御装置において、
非常運転時に切り換えられる燃料供給系統に設けられた燃料流量調節弁の待機中における初点火開度設定値を、通常用初点火開度設定値より大きい非常用初点火開度設定値に切り換え可能となるよう構成したことを特徴とするボイラ設備の燃料制御装置にかかるものである。
【0022】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0023】
前述の如く、非常運転時に切り換えられる燃料供給系統に設けられた燃料流量調節弁の待機中における初点火開度設定値を、通常用初点火開度設定値より大きい非常用初点火開度設定値に切り換え可能となるよう構成すると、仮に、停電等の非常運転時において、通常運転時に使用される燃料供給系統による燃料供給ができなくなったような場合に、非常運転時に切り換えられる燃料供給系統に設けられた燃料流量調節弁の開度は、通常用初点火開度設定値より大きい非常用初点火開度設定値に調節されることから、負荷が下がり過ぎることが避けられ、ボイラ本体の運転を停止させずに継続させることが可能となる。
【0024】
前記ボイラ設備の燃料制御装置においては、非常用初点火開度設定値を、非常運転時に切り換えられる燃料供給系統の燃料圧力に基づいて調節することが望ましく、このようにすると、例えば、非常運転時に切り換えられる燃料供給系統の燃料圧力が高い時には燃料流量調節弁の非常用初点火開度設定値を絞り、逆に前記燃料圧力が低い時には燃料流量調節弁の非常用初点火開度設定値を広げるよう調節することができるため、非常運転時に切り換えられる燃料供給系統の燃料圧力が変動している場合にも、燃料流量調節弁の開度を適切に保持可能となり、通常運転時に使用される燃料供給系統から非常運転時用の燃料供給系統への切換がより確実に行えることとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のボイラ設備の燃料制御装置によれば、停電等の非常運転時において、通常運転時に使用される燃料供給系統による燃料供給ができなくなったような場合にも、負荷の下がり過ぎを防止しつつ非常運転時用の燃料供給系統に切り換えることができ、ボイラ本体の運転を停止させずに継続させ得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図4〜図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図4〜図6に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1〜図3に示す如く、非常運転時に切り換えられる他方の燃料供給系統Bに設けられた燃料流量調節弁10Bの待機中における初点火開度設定値32Bを、通常用初点火開度設定値26B′より大きい非常用初点火開度設定値33Bに切り換え可能となるよう構成した点にある。
【0028】
本図示例の場合、他方の燃料供給系統Bを循環している燃料を使用する関係上、圧力変動が生じている可能性があるため、他方の燃料供給系統Bの燃料流量調節弁10Bより上流側に設けた圧力検出器34Bで燃料圧力35Bを検出し、該検出した燃料圧力35Bに基づき2ペアのバーナ2を点火させるのに必要となる非常用初点火開度設定値33Bを求めて出力する関数発生器36Bを設けると共に、
全バーナ弁3A,3Bが閉じている状態で通常バーナ点火指令37Bが出された際にa側に切り換えられ、1ペアのバーナ2を点火させるのに必要となる予め設定された通常用初点火開度設定値26B′を初点火開度設定値32Bとして出力する一方、それ以外の時にはb側に切り換えられ、前記関数発生器36Bから出力される非常用初点火開度設定値33Bを初点火開度設定値32Bとして出力する切換器38Bを設けるようにしてある。
【0029】
尚、前記関数発生器36Bには、図3に示すように、燃料圧力35Bと非常用初点火開度設定値33Bとの関係を表わす関数を設定してあり、該関数は、燃料圧力35Bが高い時には燃料流量調節弁10Bの非常用初点火開度設定値33Bを絞り、逆に前記燃料圧力35Bが低い時には燃料流量調節弁10Bの非常用初点火開度設定値33Bを広げるよう調節する関数としてある。
【0030】
又、前記切換器38Bをa側に切り換えるためのトリガーとして用いられる通常バーナ点火指令37Bは、操作員が図示していないスイッチを押した際にシングルフリップフロップ39Bのセット側を介してAND回路40Bへ入力され、該AND回路40Bには、全バーナ弁3A,3Bが閉じている状態で「1」となる信号41Bが入力され、前記AND回路40Bの論理積信号42Bが「1」の場合に、前記切換器38Bがa側に切り換えられるようになっている。更に、前記通常バーナ点火指令37Bは、オフディレイタイマ43BとNOT回路44Bとパルス発信器45Bとを介してOR回路46Bへ入力され、該OR回路46Bには、前記信号41BのNOT回路47Bを介した否定信号48Bが入力され、前記OR回路46Bの論理和信号49Bが前記シングルフリップフロップ39Bのリセット側に入力され、該論理和信号49Bが「1」の場合、即ち、前記通常バーナ点火指令37Bが出されてからオフディレイタイマ43Bに予め設定されている遅延時間(例えば、2[min])だけ経過後、或いはバーナ弁3A,3Bのいずれかが開いた際に、前記シングルフリップフロップ39Bがリセットされて前記AND回路40Bの論理積信号42Bが「0」となり、前記切換器38Bがb側に切り換えられるようになっている。
【0031】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0032】
仮に、停電等の非常運転時において、通常運転時に使用される一方の燃料供給系統Aによる燃料供給ができなくなったような場合に、非常運転時に切り換えられる他方の燃料供給系統Bの制御系における切換器28Bに初点火指令が出されると、該切換器28Bがa側に切り換えられ、又、切換器38Bはb側に切り換えられているため、2ペアのバーナ2を点火させるのに必要となる非常用初点火開度設定値33Bに燃料流量調節弁10Bの開度が調節される形となり、負荷が下がり過ぎることが避けられ、ボイラ本体1の運転を停止させずに継続させることが可能となる。
【0033】
しかも、本図示例においては、圧力検出器34Bで検出した燃料圧力35Bに基づき2ペアのバーナ2を点火させるのに必要となる非常用初点火開度設定値33Bを求めて出力する関数発生器36Bを設け、該非常用初点火開度設定値33Bを非常運転時に切り換えられる他方の燃料供給系統Bの燃料圧力35Bに基づいて調節するようにしたことにより、例えば、非常運転時に切り換えられる他方の燃料供給系統Bの燃料圧力35Bが高い時には燃料流量調節弁10Bの非常用初点火開度設定値33Bを絞り、逆に前記燃料圧力35Bが低い時には燃料流量調節弁10Bの非常用初点火開度設定値33Bを広げるよう調節することができるため、非常運転時に切り換えられる他方の燃料供給系統Bの燃料圧力35Bが変動している場合にも、燃料流量調節弁10Bの開度を適切に保持可能となり、通常運転時に使用される一方の燃料供給系統Aから非常運転時用の他方の燃料供給系統Bへの切換がより確実に行えることとなる。
【0034】
こうして、停電等の非常運転時において、通常運転時に使用される一方の燃料供給系統Aによる燃料供給ができなくなったような場合にも、負荷の下がり過ぎを防止しつつ非常運転時用の他方の燃料供給系統Bに切り換えることができ、ボイラ本体1の運転を停止させずに継続させ得る。
【0035】
尚、本発明のボイラ設備の燃料制御装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を実施する形態の一例における燃料系統を示す概略図である。
【図2】本発明を実施する形態の一例における制御装置を示す回路図である。
【図3】図2に示される関数発生器に入力された関数を表わす線図である。
【図4】ボイラ本体の前面側並びに後面側に配設されるバーナを示す斜視図である。
【図5】従来における燃料系統の一例を示す概略図である。
【図6】従来における制御装置の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ボイラ本体
2 バーナ
3A バーナ弁
3B バーナ弁
10A 燃料流量調節弁
10B 燃料流量調節弁
13 制御装置
14A 開度指令
14B 開度指令
26B′ 通常用初点火開度設定値
32B 初点火開度設定値
33B 非常用初点火開度設定値
34B 圧力検出器
35B 燃料圧力
36B 関数発生器
38B 切換器
A 燃料供給系統
B 燃料供給系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ本体に配設された複数本のバーナに対し燃料を供給するための複数系統の燃料供給系統を通常運転時と非常運転時とで切り換え自在に設けてなるボイラ設備の燃料制御装置において、
非常運転時に切り換えられる燃料供給系統に設けられた燃料流量調節弁の待機中における初点火開度設定値を、通常用初点火開度設定値より大きい非常用初点火開度設定値に切り換え可能となるよう構成したことを特徴とするボイラ設備の燃料制御装置。
【請求項2】
非常用初点火開度設定値を、非常運転時に切り換えられる燃料供給系統の燃料圧力に基づいて調節するようにした請求項1記載のボイラ設備の燃料制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−97944(P2006−97944A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283699(P2004−283699)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】