説明

ボイラ

【課題】ボイラ伝熱管毎の内壁にスケールが堆積しているかどうかの検査が省略でき、又スケールの除去が容易に行える様にしたボイラボイラ熱交換器構造を提供する。
【解決手段】複数の伝熱管2が集合されたボイラ熱交換器において、前記伝熱管の下部が屈曲されたベント部であり、該ベント部は水平に対して35°以上50°以下で傾斜し、下端が鉛直又は略鉛直な伝熱管入口管寄3に接続され、前記入口管寄の下端にスケール捕集手段が設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラ、特にボイラ伝熱管の内壁に形成されるスケール(異物)が伝熱管内に堆積することを防止すると共にスケールの除去を容易としたボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラには燃焼炉の壁面、或は燃焼ガス流路中に蒸気発生用の伝熱管が設けられ、伝熱管を介して伝熱管内部を流通する蒸気と、炉内ガス或は排気ガスとの熱交換が行われ、蒸気の発生、蒸気の過熱が行われる。
【0003】
先ず、図7、図8に於いて、従来構造に於ける問題点を述べる。
【0004】
従来構造の伝熱管2は上部が鉛直であり、上端が伝熱管出口管寄1に接続され、下端部はくの字状に屈曲され、水平に対して略17°に傾斜したベント部2aを有している。又、前記伝熱管2の下端は鉛直方向に延びる伝熱管入口管寄3に接続されている。尚、図中、2は伝熱管が集合されている状態を示し、4は伝熱管マニホールドを示す。
【0005】
又、前記ベント部2aにはそれぞれオリフィスが設けられ、該オリフィスにより各ベント部2a、即ち前記伝熱管2を流通する蒸気流量が調整されることで、前記伝熱管2の管温度が均一となる様に調整されている。
【0006】
伝熱管2の内外壁、特に蒸気が流通する内壁には酸化物であるスケールが形成される。該スケールと前記伝熱管2自体とは熱膨張率が異なるので、ボイラを停止した場合等、前記伝熱管2の温度が低下すると、該伝熱管2の内面からスケールの剥離が発生する。
【0007】
剥離したスケールは落下し、前記ベント部2aに堆積する。或は浮遊して蒸気と共に流れ、タービン側に流出する。堆積したスケールは、蒸気の流通を妨げ、前記伝熱管2の過熱の原因となり、或は浮遊したスケールはタービンに流入し、タービン羽根に衝突して、タービン羽根を摩耗させるという問題がある。
【0008】
従って、ボイラを正常に運転させる為に、伝熱管内にスケールが溜っているかどうかを検査する必要があり、前記ベント部2a等スケールの溜り易い部分をX線検査により伝熱管2それぞれについて検査し、溜っている場合は、前記伝熱管2の一部を切除し、スケールを吸出す等していた。
【0009】
この為、スケールが溜っているかどうかの検査、除去作業は、多くの時間と労力とを必要としていた。
【0010】
【特許文献1】特開平11−324616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は斯かる実情に鑑み、各伝熱管毎にスケールが堆積しているかどうかの検査が省略でき、又スケールの除去が容易に行える様にしたボイラを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数の伝熱管が集合された熱交換器を具備し、前記伝熱管の下部が屈曲されたベント部であり、該ベント部は水平に対して35°以上50°以下で傾斜し、下端が鉛直又は略鉛直な入口管寄に接続されたボイラに係るものである。
【0013】
又本発明は、各ベント部の流量は該各ベント部の肉厚によって調整される様になっているボイラに係り、又前記入口管寄の下端にスケール捕集手段が設けられたボイラに係り、更に又前記入口管寄に連絡管を介して入口マニホールドが接続され、前記連絡管は前記入口管寄の下端より所定距離上方で該入口管寄に接続されたボイラに係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の伝熱管が集合された熱交換器を具備し、前記伝熱管の下部が屈曲されたベント部であり、該ベント部は水平に対して35°以上50°以下で傾斜し、下端が鉛直又は略鉛直な入口管寄に接続されたので、ベント部にスケールが堆積することなく、前記入口管寄を介して集められ、スケールが溜っているかどうかの検査は各伝熱管毎に行う必要がなく、検査作業は大幅に軽減される。
【0015】
又本発明によれば、各ベント部の流量は該各ベント部の肉厚によって調整される様になっているので、流量調整の為のオリフィスが必要なくなり、スケールがオリフィス部分で堆積することがなくなる。
【0016】
又本発明によれば、前記入口管寄の下端にスケール捕集手段が設けられたので、スケールの除去作業は、前記スケール捕集手段に対してのみ行えばよいので、スケールの除去作業は大幅に軽減される。
【0017】
又本発明によれば、前記入口管寄に連絡管を介して入口マニホールドが接続され、前記連絡管は前記入口管寄の下端より所定距離上方で該入口管寄に接続されたので、捕集されたスケールが上記の流れから隔離され、捕集されたスケールが蒸気流に混入することが抑制される等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0019】
図1、図2は、本発明を適用した構造を示すものであり、図1中、図7、図8中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0020】
本発明では、ベント部の水平に対する傾斜角θを35°以上50°以下とし、下端を鉛直方向に延びる伝熱管入口管寄3に接続する。
【0021】
各前記ベント部は流量調整の為、肉厚が異なっており、肉厚の変更で流路断面積が変更され、各伝熱管の温度が均一となる様になっている。従って、従来のオリフィスは省略されている。
【0022】
前記伝熱管入口管寄3の下端より所定位置上方に、傾斜した連絡管5が接続され、該連絡管5の下端に伝熱管入口マニホールド4が接続されている。又、伝熱管入口管寄3の下端には、スケール捕集手段であるスケールタンク7が設けられている。
【0023】
該スケールタンク7について、図2〜図4を参照して説明する。
【0024】
該スケールタンク7は、前記伝熱管入口管寄3と直交する軸心を有し、両端が閉塞された円筒形状となっている。
【0025】
該伝熱管入口管寄3の内部下端に、スケール逆流防止部材6を嵌設する。
【0026】
前記スケール逆流防止部材6は、下端部が細径となった漏斗部6bと、該漏斗部6bの上端に設けられたフランジ部6a及び前記漏斗部6bの上端部に設けたスケール旋回流抑止部材6cから構成されている。ここで、前記漏斗部6bの下端部の内径は、スケールが引掛らない充分な大きさに設定され、前記スケール旋回流抑止部材6cは短冊状の板片を十字状に組合わせた形状となっている。
【0027】
前記スケールタンク7の下端部、中央にスケール排出用ニップル9を設け、又前記スケールタンク7の作業の行い易い側面、例えば端面に内部点検用ニップル8を設ける。
【0028】
以下、作用について説明する。
【0029】
先ず、スケールと伝熱管の傾斜との関係を実験により調査した。
【0030】
図5に示される様に、上部を開放したSUS製のサンプル管10を角度θに保持し、該サンプル管10にSUSスケールを落下させた。この時の、SUSスケールの挙動(流動特性)を図6に示す。
【0031】
θ=30°でSUSスケールは流下するが、溶接継手等内面の性状に影響され、堆積する場合もある。θ=35°では溶接継手等があった場合でも、断続的に流れ、面の性状に関係なく堆積することはない。θ=40°となると、面の性状に拘らず、堆積はなく、円滑に滑り落ちる。
【0032】
又、水平状態の前記サンプル管10に、SUSスケールを堆積させ、次に前記サンプル管10を傾斜させた場合、θ=27°で堆積したSUSスケールの山が崩れ、θ=32°で断続的に流れ、θ=38°で円滑に流れる様になった。
【0033】
以上の調査より、θ=38°以上でSUSスケールは円滑に流れると確認され、更にボイラの稼働状態、例えば前記ベント部の振動等を考慮すると、θ=35°以上に設定することで、前記ベント部でのスケールの堆積は抑制できると考えられる。
【0034】
尚、前記ベント部内面の性状等を考慮すると、θ=40°以上が好ましい。又、前記伝熱管入口管寄3に対して前記ベント部の傾斜角が大きくなると、溶接施工性が悪くなるので、θ=50°程度が施工上の制限と考えられる。尚、前記伝熱管入口管寄3は必ずしも鉛直でなくとも鉛直に近ければよい。
【0035】
即ち、前記ベント部の傾斜角θは、35°以上50°以下、好ましくは40°以上50°以下に設定される。
【0036】
而して、前記伝熱管2で剥離したスケールは前記ベント部に落下し、更に該ベント部を流下して、前記伝熱管入口管寄3でまとまって垂直に落下する。従って、前記スケールタンク7で前記伝熱管2のスケールを捕集できる。又、前記ベント部には流量調整用のオリフィスが取除かれているので、流下するスケールが途中で留まることはない。
【0037】
又、スケールが溜っているかどうかは、前記スケールタンク7のみを検査すればよく、スケールが溜っているかどうかの検査は大幅に軽減される。又、スケールの除去作業は、前記スケールタンク7に対してのみ行えばよいので、スケールの除去作業についても大幅に軽減される。
【0038】
次に、スケール捕集手段の一例である前記スケールタンク7についての作用について説明する。
【0039】
該スケールタンク7のスケールの貯溜状態を確認するには、前記内部点検用ニップル8を切除し、前記スケールタンク7の内部を観察する。
【0040】
一定期間、例えばボイラ定期点検が行われる2年毎に、前記スケール排出用ニップル9を切除してスケールを除去する。スケールを除去した後、再び前記スケール排出用ニップル9及び前記内部点検用ニップル8を溶接する。
【0041】
前記伝熱管入口マニホールド4を流通した蒸気は、前記連絡管5から前記伝熱管入口管寄3の分岐点Oを経て該伝熱管入口管寄3を上昇する。蒸気が前記伝熱管入口管寄3に流入する過程で、前記分岐点Oより下方への蒸気の回込み、或は前記スケールタンク7からの吸出しが発生する。この為、該スケールタンク7内部の空気が乱れて、スケールが巻上がり、蒸気流に乗って逆流し、前記伝熱管入口管寄3を上昇することが想定される。
【0042】
前記スケール逆流防止部材6は、スケールの巻上がりを防止及び逆流を防止する。
【0043】
前記漏斗部6bは、下端部を絞った形状としているので、スケールが逆流することを抑止する。又、前記スケール旋回流抑止部材6cは前記スケールタンク7内部に蒸気が旋回流となって流入すること、及び前記スケールタンク7内部で気体(空気、蒸気)が旋回することを抑止する。従って、スケールが前記スケールタンク7内部で浮遊し、旋回することが抑制され、スケールの逆流が更に抑制される。又、前記スケールタンク7内で旋回することが抑制されるので、スケールの擦れによる前記スケールタンク7の内面の摩耗が抑制される。
【0044】
次に、前記連絡管5から前記伝熱管入口管寄3の下端部への蒸気の回込み、吸出し等、前記伝熱管入口管寄3下端部への蒸気流の影響は、前記角度θに左右される。角度θが大きい、例えば90°とすると、蒸気流の前記スケールタンク7内部への影響が大きく、貯溜されたスケールの巻上がり、スケールの逆流が実験により確認されている。又、角度θは小さい方がよく、角度θは50°以下がよいことも確認されている。一方で、角度θを小さくすると、前記連絡管5と前記伝熱管入口管寄3との溶接作業性が悪くなり、溶接作業性を考慮すると、θ=90゜以下40゜以上が好ましい。従って、前記角度θは40゜以上50゜以下の範囲で設定されることが好ましい。又、前記連絡管5と前記伝熱管入口管寄3との接続位置も、前記伝熱管入口管寄3の下端部への蒸気流の影響が少ない様に設定される。
【0045】
上記実施の形態では、前記スケール旋回流抑止部材6cを十字形状としたが、3股状等であってもよく、旋回流を抑制し、スケール落下の障害とならなければよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例の要部を示す説明図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図2のB−B矢視図である。
【図4】図2のC−C矢視図である。
【図5】傾斜した管の傾斜角度とSUSスケール堆積との関係を示す説明図である。
【図6】傾斜した管の傾斜角度とSUSスケール堆積との関係を示す図である。
【図7】従来の伝熱管部分の説明図である。
【図8】図7のD部拡大図である。
【符号の説明】
【0047】
1 伝熱管出口管寄
2 伝熱管
3 伝熱管入口管寄
4 伝熱管入口マニホールド
5 連絡管
6 スケール逆流防止部材
6a フランジ部
6b 漏斗部
6c スケール旋回流抑止部材
7 スケールタンク
8 内部点検用ニップル
9 スケール排出用ニップル
10 サンプル管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管が集合された熱交換器を具備し、前記伝熱管の下部が屈曲されたベント部であり、該ベント部は水平に対して35°以上50°以下で傾斜し、下端が鉛直又は略鉛直な入口管寄に接続されたことを特徴とするボイラ。
【請求項2】
各ベント部の流量は該各ベント部の肉厚によって調整される様になっている請求項1のボイラ。
【請求項3】
前記入口管寄の下端にスケール捕集手段が設けられた請求項1のボイラ。
【請求項4】
前記入口管寄に連絡管を介して入口マニホールドが接続され、前記連絡管は前記入口管寄の下端より所定距離上方で該入口管寄に接続された請求項1のボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−169543(P2011−169543A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35654(P2010−35654)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)