説明

ボイラ

【課題】簡易な構成で所望量のブローを確実に実行でき、それにより缶体内の水の濃縮度の管理をより正確に行うことができるボイラを提供する。
【解決手段】缶体2内から濃縮ブロー水を外部へ排出するブローライン8に、ブロー弁11とオリフィス12とを順に設ける。缶体2内の圧力を第一圧力センサ5で検出する一方、オリフィス12の前後の差圧を第二圧力センサ15で検出する。缶体2内の圧力とオリフィス12の前後の差圧との差に基づき、ブロー弁11の開放時間を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ、特にその濃縮ブロー制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラは、通常、給水として硬度分を除去した軟水が用いられるが、それでも蒸発が進むに連れ、缶体内の水は不純物が増加し濃縮する。そして、水の濃縮が進むと、フォーミング(泡立ち)やキャリオーバ(蒸気中への不純物の混入)などの不都合を生じる。そこで、ブローと呼ばれる濃縮水の排水が適宜行われ、これに伴い缶体内へ新水が給水されることで、缶体内の水の濃縮度が調整される。この際、ブロー水と給水とを熱交換して、ブロー水の熱で給水の予熱を図ってもよい。また、ブローラインに設けたオリフィス前後の差圧により、ブローラインの異常を検知してもよい(下記特許文献1)。
【0003】
しかしながら、給水のタイミングは、水位検出器により制御されるので、必ずしもブローのタイミングと一致しない。そのため、ブローの有無を切り替えるブロー弁の二次側で、ブロー水がフラッシュすることもあり、ブロー弁の二次側の圧力は安定しない。また、ブロー弁より下流の配管は、ボイラの設置箇所に応じて様々で、圧力損失にも差がある。従って、ブロー弁を設定時間だけ開けても、実際のブロー量は、ブロー弁の二次側背圧の影響を受け、所望量をブローできておらず、缶体内の水の濃縮度を適正に管理できていないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−210143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で所望量のブローを確実に実行でき、それにより缶体内の水の濃縮度の管理をより正確に行うことができるボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、缶体内から濃縮ブロー水を外部へ排出するブローラインに、ブロー弁とオリフィスとを順に設け、前記缶体内の圧力と前記オリフィス前後の差圧との差に基づき、前記ブロー弁の開放時間を調整することを特徴とするボイラである。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、缶体内の圧力とオリフィス前後の差圧との差に基づきブロー弁の開放時間を調整することで、ブロー弁の二次側背圧の影響を緩和することができる。これにより、所望量のブローを実行し、缶体内の水の濃縮度の管理をより正確に行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、濃縮ブロー率と前記缶体内の圧力とを含む条件により、前記ブロー弁の開放時間が設定され、前記缶体内の圧力と前記オリフィス前後の差圧との差に基づき、この圧力差による流量差分を補うよう前記ブロー弁の開放時間を延長することを特徴とする請求項1に記載のボイラである。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、缶体内の圧力とオリフィス前後の差圧との差に基づく流量差分を補うようにブロー弁開放時間を延長することで、ブロー弁の二次側背圧の影響によらず、所望量のブローを確実に実行することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記ブロー弁の閉鎖時における前記オリフィス前後の差圧に基づき、前記ブロー弁の漏れを検知することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボイラである。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、閉鎖状態であるはずのブロー弁からの漏れを検知することができる。
【0012】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記ブローラインには、前記ブロー弁より上流側にストレーナが設けられ、前記ブロー弁の開放時における前記オリフィス前後の差圧に基づき、前記ストレーナの詰まりを検知することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のボイラである。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、ストレーナの詰まりを検知することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成で所望量のブローを確実に実行でき、それにより缶体内の水の濃縮度の管理をより正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のボイラの一実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のボイラの一実施例を示す概略図である。
【0017】
ボイラ1は、缶体2およびバーナ3を主要部として備える。本実施例のボイラ1は、多管式の貫流ボイラである。この場合、缶体2は、周知のとおり、上部管寄せと下部管寄せとの間を多数の水管で接続して構成される。缶体2は、その形状を特に問わないが、図示例では円筒状とされ、その上部中央に下方へ向けてバーナ3が設けられる。また、缶体2の周囲は、断熱材や缶体カバーで覆われる。
【0018】
缶体2には、下部管寄せに給水ライン4を介して水(軟水)が供給され、缶体2内の水位は所望に維持される。缶体2内の水は、バーナ3からの燃焼ガスで加熱され、蒸気化される。缶体2内の蒸気圧(または水圧)を検出するために、缶体2には第一圧力センサ5が設けられている。通常、ボイラ1は、蒸気圧を所望に維持するようにバーナ3の燃焼量が調整される。
【0019】
缶体2からの蒸気は、上部管寄せから気水分離器6を介して、各種の蒸気使用設備へ送られる。気水分離器6と缶体2の下部管寄せとは、降水管7で接続されており、気水分離器6で分離された水は、缶体2へ戻される。
【0020】
缶体2には、濃縮ブロー水を外部へ排出するためのブローライン8が接続される。ブローライン8は、缶体2に直接に接続してもよいが、本実施例では、気水分離器6からの降水管7の下部に接続されている。
【0021】
ブローライン8には、缶体2の側から順に、熱交換器9、ストレーナ10、ブロー弁11およびオリフィス12が設けられる。一方、前記給水ライン4には、缶体2の側へ向けて順に、給水ポンプ13、給水弁14および前記熱交換器9が設けられる。
【0022】
熱交換器9は、缶体2からのブロー水(つまり排水)と、缶体2への給水との熱交換器である。この熱交換器9において、ブロー水と給水とを熱交換することで、ブロー水の冷却と、給水の加温とを図ることができる。
【0023】
給水ライン4を介した缶体2への給水は、給水ポンプ13を作動させた状態で、電磁弁からなる給水弁14を開くことで行われる。この給水のタイミングは、缶体2内の水位を検出する水位検出器(図示省略)の検出信号に基づきなされる。すなわち、下限水位を下回ると缶体2への給水が開始され、上限水位を上回ると缶体2への給水が停止される。
【0024】
ブローライン8を介した缶体2からのブローは、電磁弁からなるブロー弁11を開くことで行われる。ブロー時、ブロー水はストレーナ10を通され、ブロー水中のゴミなどはストレーナ10に捕捉される。
【0025】
ブローライン8には、ブロー弁11より下流に、オリフィス12が設けられる。このオリフィス12の前後の差圧は、第二圧力センサ15で検出される。
【0026】
ブロー弁11の他、第一圧力センサ5および第二圧力センサ15などは、制御器16に接続される。この制御器16は、各センサ5,15の検出圧力などに基づき、以下のとおり、ブロー弁11の開閉や開放時間を制御する。
【0027】
本実施例では、濃縮ブロー制御は、設定時間(たとえば10分)を1サイクルとして、その設定時間の内のどれだけの時間、ブロー弁11を開けるかで制御される。つまり、設定時間ごとブロー制御が開始され、ブロー弁11を何分開けるかが制御される(間欠ブロー制御)。
【0028】
ブロー弁11の開放時間は、濃縮ブロー率と缶内圧力とを含む条件により決定される。本実施例では、高燃焼換算時間、濃縮ブロー率および缶内圧力によって決定される。
【0029】
高燃焼換算時間とは、ボイラ1の燃焼時間を高燃焼に換算した時間である。たとえば、高燃焼(100%燃焼)、低燃焼(50%燃焼)および停止の三位置制御のボイラの場合、高燃焼状態の燃焼時間はそのまま積算し、低燃焼状態の燃焼時間は半分の時間として積算し、全体としての積算時間を高燃焼換算時間とする。つまり、高燃焼換算時間とは、すべての燃焼が高燃焼(定格燃焼)であったとした場合の燃焼時間である。
【0030】
濃縮ブロー率とは、給水量に対するブロー水量の比率であり、次式によって求められる。
【0031】
[数1] 濃縮ブロー率=濃縮ブロー量/給水量
【0032】
濃縮ブロー率は、原水の性状などに応じて予め設定される。また、給水量は、給水ライン4による給水量を直接に計測したり、給水時間から算出したりすることもできるが、本実施例では、高燃焼換算時間から求められる。すなわち、高燃焼換算時間×ボイラ定格蒸発量から蒸発量を把握して、ひいては給水量を求めることも可能となる。給水は蒸発に伴ってなされるからであり、また一旦ブローが開始された後は、給水は蒸発およびブローに伴ってなされるが、その既になされたブロー量は既知だからである。
【0033】
いずれにしても、制御器16は、ブロー制御の各サイクルの開始に伴い、それまでの給水量(たとえば直前サイクルにおける給水量)と、予め設定されている濃縮ブロー率とから、[数1]を用いて濃縮ブロー量を算出する。そして、缶内圧力(第一圧力センサ5の検出圧力)などを考慮して、濃縮ブロー量を確保するためのブロー弁11の開放時間を算出する。ところが、ブロー弁11の二次側背圧の影響により、同じ時間だけブロー弁11を開けていても、実際のブロー量が異なることになるので、制御器16は、以下のとおり、ブロー弁11の開放時間を補正する。
【0034】
つまり、制御器16は、ブロー弁11の開放時間中、オリフィス12の前後の差圧の平均値を演算する。そして、缶内圧力とオリフィス前後の差圧(平均値)とを比較し、缶内圧力がオリフィス前後の差圧よりも大きいか設定以上大きい場合には、所望のブロー量が流れていないため、その流量差分を演算し、ブロー弁11の開放時間を延長する。つまり、第一圧力センサ5による缶体2内の圧力と、第二圧力センサ15によるオリフィス12前後の差圧との差を求め、この圧力差による流量差分を補うように、ブロー弁11の開放時間を延長する。これにより、ブロー弁11の二次側背圧の影響を緩和することができ、所望量のブローを確実に実行し、缶体2内の水の濃縮度の管理を正確に行うことができる。
【0035】
缶体2からオリフィス12までのブローライン8の圧力損失を無視して考えると、仮にオリフィス12の二次側が大気圧であるとすると、缶内圧力(ゲージ圧)とオリフィス12の前後の差圧とは同一になる。この場合、高燃焼換算時間、濃縮ブロー率および缶内圧力に基づき決定された設定時間だけブロー弁11を開ければ、所期のブローを行うことができる。しかし、オリフィス12の二次側の配管状況などによって、この理想的な関係が成り立たないことがある。そこで、缶内圧力とオリフィス前後の差圧との差に基づき、オリフィス12の二次側背圧の影響を把握し、それによる流量差分を補うように、ブロー弁11の開放時間を延長するのである。
【0036】
また、制御器16は、ブロー弁11の閉鎖時におけるオリフィス前後の差圧に基づき、ブロー弁11の漏れを検知できる。つまり、ブロー弁11を閉鎖させているはずであるのに、ブロー弁11に漏れがあると、オリフィス12に水が流れるので、オリフィス前後の差圧からブロー弁11の漏れを検知することができる。
【0037】
さらに、制御器16は、ブロー弁11の開放時におけるオリフィス前後の差圧に基づき、ストレーナ10の詰まりを検知できる。つまり、仮にストレーナ10に詰まりが生じていると、ブロー弁11を開放させても、オリフィス12に流れる水量が少ないので、オリフィス前後の差圧が小さくなるので、ストレーナ10の詰まりを検知することができる。
【0038】
本発明のボイラ1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、ブローライン8にブロー弁11とオリフィス12とを順に設け、缶内圧力とオリフィス前後の差圧との差に基づきブロー弁11の開放時間を調整する構成であれば、缶体2など、その他の構成は適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ボイラ
2 缶体
3 バーナ
4 給水ライン
5 第一圧力センサ
6 気水分離器
7 降水管
8 ブローライン
9 熱交換器
10 ストレーナ
11 ブロー弁
12 オリフィス
13 給水ポンプ
14 給水弁
15 第二圧力センサ
16 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体内から濃縮ブロー水を外部へ排出するブローラインに、ブロー弁とオリフィスとを順に設け、
前記缶体内の圧力と前記オリフィス前後の差圧との差に基づき、前記ブロー弁の開放時間を調整する
ことを特徴とするボイラ。
【請求項2】
濃縮ブロー率と前記缶体内の圧力とを含む条件により、前記ブロー弁の開放時間が設定され、
前記缶体内の圧力と前記オリフィス前後の差圧との差に基づき、この圧力差による流量差分を補うよう前記ブロー弁の開放時間を延長する
ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記ブロー弁の閉鎖時における前記オリフィス前後の差圧に基づき、前記ブロー弁の漏れを検知する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記ブローラインには、前記ブロー弁より上流側にストレーナが設けられ、
前記ブロー弁の開放時における前記オリフィス前後の差圧に基づき、前記ストレーナの詰まりを検知する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のボイラ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−29267(P2013−29267A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166307(P2011−166307)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)