説明

ボタン掛け外し具

【課題】近年盛んなネイルアートで長い爪や装飾用付け爪の人が固い布地の洋服やジーパンなどのボタンの掛け外しの際に爪を傷つける人がたくさんいる。又、リウマチや脳卒中などの病気や外傷などにより指先に力が入らないとか、痛いとか、細かい動きができないとかで、シャツや洋服のボタンを掛けたり、外したりするのが困難な人がたくさんいる。
それで、爪を傷つけないようにボタンの掛け外しができる補助具が欲しい。又、不自由な指先でもボタンの掛け外しができる福祉用具が求められている。
【解決手段】把持部2を備えた軸部3の先端から前方に向いて二股状の腕部4,4を設け、この腕部4,4の先端に上方に向いて掛止部5,5を設けた器具でボタンの掛け外しができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタンをボタン穴に掛けたり外したりする補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年盛んなネイルアートの装飾用付け爪や長爪の人が固い布地の洋服やジーパンなどのボタンの掛け外しの際には、指先に強い力を必要とするため、この爪を傷つけないようにするのに苦労している。
また、リウマチなどの病気や怪我の後遺症などによる障害で、指先に力が入らないとか痛いとか細かい動きができないなど、手指の不自由な人が、シャツや洋服のボタンをボタン穴に掛けたり、外したりするのに、大変苦労している。
【0003】
それで、従来技術として、手指の不自由な人のためのボタン掛けの自助具として、ピアノ線を曲げて把持部23に取り付けたボタンエイド20なる器具が福祉用具として市販されている。(図10参照)。この器具は、洋服を着る際には、掛止部21、開口部22をボタン穴25に挿通して、開口部22よりボタン27を通して把持部23を引っ張って糸足部26に掛止部21を引っ掛けて、把持部23を更に引っ張って、ボタン27をボタン穴25の方へ引き寄せて、ボタン穴25に挿通してから、開口部22よりボタン27を抜くと、弱い力でも、楽に、ボタン掛けができるという構成となっている。
しかし、洋服を脱ぐ際にボタンを外す作業も、手指の不自由な人にとってはボタン掛けと変わらないくらいに困難な作業であるが、このボタンエイド20を用いてボタン穴25からボタンを外すことはできない構成となっており、他の人にボタン外しを手伝ってもらわないと、洋服を自力で脱ぐことが困難という不自由さがあった。
【0004】
又、駒形の係止部1をボタンのチャンク部50b(本願でいう糸足部に相当する)に掛けてボタンホール51内に挿入するという技術があった。(特許文献1参照。)。この技術の「ボタン掛け具」はボタン掛け後においても、より簡単に外すことができる。と記載されている。しかしながら、ボタンを掛ける方法については詳しく記載されているものの、ボタンを外す具体的な方法については一切記載されていないため不明である。
【0005】
それと、操作性を向上させたボタン掛け具というのがあったが(特許文献2参照。)、この発明もシャンク部11Bに保持部3を係止してボタン穴の方へ引き寄せるものである。そのため、この器具を使用してボタンを外すことは困難であろう。
【0006】
それから、ボタンを掛ける際には、鉤状体3でボタンの糸足部を引掛けて引き出してボタン掛けの援助をするというのがあった(特許文献3参照。)。この発明はボタンを外す際には、鉤状体3の他端部に形成した引掛体5を用いてボタン穴の縁を引っ張って、ボタン外し操作を可能としているものであり、2種類の器具を用いるという方法であった。
【0007】
以上述べたように、これらの先行技術はいずれもボタンの糸足部に掛止部を掛けてボタンを引き寄せてボタン掛けをするものであり、毎日のボタン掛けに使用していると、ボタンを下前立に何重にも縫い付けている糸足部の細い糸が擦り切れるなどの危険性があった。
【0008】
【特許文献1】特開2007−229150
【特許文献2】特開2003−180407
【特許文献3】特開2000−300418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題点を解決しようとするものであり、近年盛んなネイルアートの長い爪や装飾用付け爪の人が固い布地のジーパンや洋服などのボタンの掛け外しの際に、爪を傷つけないようにするために、補助具として使用できるボタン掛け外し具の技術を提供するものである。
又、手指の不自由な人たちが、毎日、シャツや洋服などを着たり脱いだりする際に、ボタンの掛け外しに困っているが、この技術を用いて、一種類の器具で、他の人の助けを借りることなく、ボタンの掛け外しができるようにする自助具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、第1の課題解決手段は上記の目的を達成するために、把持部を備えた軸部の先端から前方に向いて二股状の腕部を設け、この腕部の先端に上方に向いて掛止部を設けたことを特徴とするボタン掛け外し具としたものである。
【0011】
そして、第2の課題解決手段は上記の目的を達成するために、掛止部は腕部から略直角以下に曲げられていることを特徴とする請求項1のボタン掛け外し具としたものである。
【0012】
それから、第3の課題解決手段は上記の目的を達成するために、掛止部の高さはボタンの厚みの半分以上か同程度の寸法であることを特徴とする請求項1のボタン掛け外し具としたものである。
【0013】
それと、第4の課題解決手段は上記の目的を達成するために、掛止部を鉤型状に曲げたこと特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のボタン掛け外し具としたものである。
【発明の効果】
【0014】
上記解決手段による効果は次のとおりである。
【0015】
本発明は、ボタンを掛ける際に、従来技術のように、ボタンの糸足部に掛止部を引っ掛けて引っ張る方法ではなく、ボタンの固くて丈夫な側縁に、腕部の先端に立設した掛止部を引っ掛けて引っ張って掛ける方法であるから、糸足部の糸束の細い糸が傷ついたり擦り切れたりすることがなくなる。
又、ボタンを外す際にも、この器具を用いて、ボタンの側縁に前記掛止部を引っ掛けて引っ張って外すことが可能となるものである。
【0016】
しゃれたデザインの把持部とこのボタン掛け外し部を一体成型して紐などをつけてボタン掛け外し具としたら、携帯電話やキーやバッグなどのストラップとすることもできて持ち歩きしやすくなり、長い爪や装飾爪の人でも、通常の指先の力を持っていれば、固い布地の洋服やジーパンなどのボタンをどこででも簡単に素早く、爪を傷つけることなく、外したり掛けたりできるものである。また、缶ビールや缶ジュースなどのプルトップを開ける際に爪を傷つけることが多かったが、このボタン掛け外し具はこの開封作業にも狭い隙間に先端を突っ込んで、てこの原理でこじ開けることができて大変便利である。
【0017】
又、手指の不自由な人のために、把持部を把持しやすい滑り止めの凹凸などを施した軽くて大きめの太把持部として、前記と同じ構成のボタン掛け外し部を取り付ければ、弱い力でも操作のしやすい自助具としてのボタンの掛け外し具とすることができるものである。
【0018】
通常、シャツや洋服などのボタンをボタン穴に掛ける際には、(男女で左右異なるが)下前立に取り付けたボタンを上前立に設けたボタン穴に右から左に向けて挿通して掛ける。ボタンを外す際には、左から右に向けて挿通して外すという指先の細かい作業が必要であるが、手指が健常な人はこの作業を難なくこなしている。
洋服などのボタンは下前立に細糸で何重にもかがった糸足部で取り付けてあり、ボタンの直径より少し長いボタン穴が上前立に設けてある。それに加えて、布地や糸が弾力性や伸縮性を有するため、掛け外しの際には、余裕を持ってボタンがボタン穴を挿通できるように縫製されている。(ジーパンの場合は多くが金属製のボタンを金属製の留め金具で下前立に留め付けてあるが。)
そのため、図1に示す本発明のボタン掛け外し具1a,1bは、ボタンが掛けられたままの状態においても、掛止部5,5がボタン穴13を挿通したり、挿通したままで軸部3が回転できる程度の余裕をも有している。また、掛止部5,5がボタンの厚みより多少は高くても(0.5ミリ程度までなら)ボタン穴を挿通させることが可能である。このことは、本発明のボタン掛け外し具1の試作品により、数種類の衣服のボタンの掛け外しを何度も試してみた結果言えることである。
【0019】
以下、本発明の実施例について、図1〜図10に基づいて説明する。
【0020】
図1(a)は、把持部2aを有する軸部3の先端から前方に向いて二股状の腕部4,4を設け、この腕部4,4の先端に掛止部5,5を立設したボタン掛け外し具1aの斜視図であるが、これは、ネイルアートの長爪や装飾付け爪の人が固い生地の洋服などのボタンを掛けたり外したりする際に爪を傷つけないようにするための補助具となるものである。又このボタン掛け外し具1aに紐などを付けておけば携帯電話やキーなどのストラップとしても利用できるし、缶コーヒーなどのプルトップを開封する器具として利用できるものであり、大変便利である。把持部1aをいろいろな形状にしたり模様を入れることでアクセサリーとしても利用できるであろう。
【0021】
図1(b)においては、前記の掛け外し部7を用いて、把持部2aを手指の不自由な人でも把持しやすい凹凸のついた軽量の太把持部2bに取り換えるだけで、身体障害者用の福祉用具としてのボタン掛け外し具1bとすることができるものである。それと、図面では、掛止部3は角型断面となっているが、丸型とした方が回転しやすくて良いであろう。
【0022】
又、図2において、腕部4の長さは、両方の腕部4,4が糸足部10を跨いで先端の掛止部5,5がボタン側縁9に引っ掛かることができるように、ボタン8の半径と糸足部10の半径の和よりも大としてある。
それと、各部分の寸法について述べると、通常市販されているシャツや洋服用としては、ボタンの厚さは1.5ミリメートルから2ミリ程度であるから、掛止部5の高さは1.5〜2ミリ程度としておけば良いであろう。また、ボタン8の直径は、通常9ミリから20ミリ程度であるから、腕部4,4の長さは20ミリの半分と糸足部10の半径1ミリ程度の和より少し長めの12〜14ミリ程度とし、腕部4,4の外幅は、ボタン穴13の長さより小さい8ミリ程度としておけば、ボタン8を引っ掛けたままボタン穴13を挿通することができて、良いであろう。
それと、ジーパン用としては、通常、ボタンの直径は20ミリ程度、厚さは2ミリ程度の金属製の場合が多いが、糸足部10に相当する金属製のシャンク部は直径が4ミリ程度と太いため、腕部4,4の内幅は5ミリ程度とし、腕部4,4の外幅は、ボタン穴13の長さより小さい8ミリ程度、掛止部5の高さは1.5〜2ミリ程度、としておきたい。このジーパン用の寸法であれば、通常のほとんどのシャツ、洋服用としても使用可能な寸法であるから、この寸法のみで製品化しても良いであろう。
【0023】
そして、この図2は、本発明のボタン掛け外し具1の把持部2を左手で持って、ボタン穴13に左から右に向いて掛止部5,5を挿通し、糸足部10を跨いで腕部4,4をボタン8の下側に差し込み、上向きにした掛止部5,5でボタン側縁9を引っ掛けた場面を示す図であり、次に、把持部2を左に引っ張るとボタン8はボタン穴13を挿通する。そして、掛止部5をはずしたら、ボタン掛けの作業が完了することを示すものである。
【0024】
図3(a)において、掛止部5,5は、ボタンの側縁9を引っ掛けたままボタン穴13を挿通する際に、掛止部5がボタン穴13を通り抜けれるようにするため、その高さはボタン8の厚さと同程度が良いが、ボタンの厚さの2分の1までは低くしても大丈夫である。
また、図3(c)のように、ボタン掛け外し具1の、ボタン8の側縁9より高さを大とした掛止部5の先端を折り返して曲げた鉤型状の掛止部5aとしたら、ボタンを引っ張る際に、はずれにくくて良いであろう。そして、図3(d)のように腕部4の先端に立設する掛止部を腕部から略直角以下に曲げた掛止部5bとしたら、ボタンを引っ張る際にはずれにくくて良いであろう。掛止部5を腕部4から直角以上の鈍角に曲げると、ボタン8の側縁9を引っ張る際に掛止部5が滑ってはずれやすくなるので、良くない。
【0025】
それと、このボタン掛け外し具1a,1bの材質は、掛け外し部7は錆びにくく加工のしやすいステンレスが適当であろう。
把持部については、ネイルアート者用としては図1(a)に示すように美しく強度のある可愛らしい把持部2aとしたステンレス一体成型などが適当であろう。それと、把持部2aは長い爪の指先で把持した際に、爪先が布地やボタンに当たらない程度の長さは必要である。
また、図1(b)に示すように、福祉用具としては凹凸などを設けて滑りにくくて軽量で手指の力が弱くても把持しやすい太めの木製や発泡プラスチック製などとした把持部2bとするのが適当であろう。
【0026】
本発明のボタン掛け外し具1aまたは1bを用いて、ボタンを掛ける方法を図3〜図5に基づいて説明する。
図3(a)の断面図と図4の平面図は、掛止部5,5を上向きにして、ボタン穴13に左から右に向けて挿入して、ボタン8と下前立11の間に、両方の腕部が糸足部10を跨ぐようにして掛止部5,5を挿入し、ボタン8の右側の側縁9に上向きにした掛止部5,5を引っ掛けた状況の図である。次に、図3(b)の断面図と図5の平面図は、側縁9を掛止部5,5で引っ掛けたまま、ボタンの下面を腕部4,4で上に持ち上げるようにして左に引くと、ボタンはボタン穴を潜りぬけることができた場面である。そこで、本発明のボタン掛け外し具1をはずしたら、ボタン掛けの作業が完了する。
【0027】
次に、ボタン外しの方法について図6〜図9に基づいて説明する。
図6(a)の断面図と図7の平面図は、ボタン8の掛ったボタン穴13の右下より、掛止部5,5を上向きにしてボタン穴13の右側にこじ開けるようにして挿入し、図6(a)の状態で掛止部5,5が下向きになるように回してそのまま先端を下に下げ、図6(b)の断面図と図9の平面図に示すように、下向きにした掛止部5,5でボタン8の左側の側縁9に引っ掛けて、ボタン8の上面を上から押さえつけるようにして、右の方へ引っ張ったら、図6(c)の断面図と図10の平面図に示すようにボタン8がボタン穴13を潜りぬけた状態となり、本発明のボタン掛け外し具1をはずしたら、ボタン外しの作業が完了する。従来はジーンズなどの固い布地と布地の隙間に無理やり指先を差し込んだり、きつく掛けられたボタンを指先で摘まもうとして、指と爪の間の身や爪を痛めることもあったが、この器具を用いると狭くて固い布の隙間に掛止部5,5を簡単に差し込むことができたり、掛止部5,5でボタンを引っ掛けるため、指先の身や爪を痛めることがなくなる。
【0028】
このように文章で書くと時間がかかりそうでめんどうな作業のようにも見えるが、それほどでもなく、何度か練習すれば上手に短時間でできるようになるものである。指先で直接ボタンを持って素早く、時には力も入れて行う通常のボタン掛け外しの作業と比べると、本発明のボタン掛け外し具1a,1bを用いれば、てこの原理などにより、ネイルアート者や弱い指の力の人でも掛け外しが楽にできるようになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a),(b)本発明の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明を説明する平面図である。
【図3】(a),(b),(c),(d)本発明を説明する断面図である。
【図4】本発明の説明図である。
【図5】本発明の説明図である。
【図6】(a),(b),(c)本発明の説明図である。
【図7】本発明の説明図である。
【図8】本発明の説明図である。
【図9】本発明の説明図である。
【図10】従来技術の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部を備えた軸部の先端から前方に向いて二股状の腕部を設け、この腕部の先端に上方に向いて掛止部を設けたことを特徴とするボタン掛け外し具。
【請求項2】
掛止部は腕部から略直角以下に曲げられていることを特徴とする請求項1記載のボタン掛け外し具。
【請求項3】
掛止部の高さはボタンの厚みの半分以上か同程度の寸法であることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のボタン掛け外し具。
【請求項4】
掛止部を鉤型状に曲げたこと特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のボタン掛け外し具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−110508(P2012−110508A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262119(P2010−262119)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【特許番号】特許第4733229号(P4733229)
【特許公報発行日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(304007248)
【Fターム(参考)】