説明

ボトム衣類

【課題】着用することにより日常生活の動作によるカロリーの消費を増加させることができるボトム衣類を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも着用者の下腹部、臀部および大腿部を覆い、伸縮性素材により形成されたボトム衣類1において、着用者の右臀部の少なくとも頂部を覆い、着用者の右臀部から、右大腿部の背面の臀部側の領域にかけて延在する右伸長抑制領域20と、着用者の左臀部の少なくとも頂部を覆い、着用者の左臀部から、左大腿部の背面の臀部側の領域にかけて延在する左伸長抑制領域30とを有し、右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30が、伸縮性素材10に比べて伸長が抑制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトム衣類に関し、とくに、着用することにより、消費カロリーを増加させることができるボトム衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者の少なくとも下腹部、臀部および大腿部を覆う衣類ボトム衣類は、体の無駄肉・贅肉を押さえ込んで体形を細身に見せる機能を備えているものが多い(たとえば、特許文献1,2)。特許文献1に記載されている股部を有する衣類では、第一当て布または第一当て布を兼ねる本体布の前中央布によって腹部を押さえ、第二当て布と第三当て布とによって腹部両側からウエスト後脇部にかけたウエスト回り全体を、第三当て布によってヒップ外周をそれぞれ押さえてスッキリと整えることができる。特許文献2に記載されているパンツでは、身頃の表地の内側に、後身頃のヒップ部から脇線を通り前身頃の一部を被う裏地と内股部から前身頃ウエスト部にかけて帯状の腹部押さえ布を付設したパンツであって、該裏地および腹部押さえ布が少なくともウエストラインと内股部で身頃表地に接合されていることによって、見た目も通常のパンツと変わらず、ヒップアップ効果があり、さらに脇腹と腹部もシェイプすることのできる着用快適性に優れたパンツを得ることができる。
【0003】
また、ボトム衣類には、部分的な筋肉を鍛えて体を整形するものがある(たとえば、特許文献3〜5)。特許文献3に記載の体形補整用下着では、脚部を有し伸縮性生地からなる下着本体と、該下着本体の臀部表側に左右対称に縫付けられた伸縮性生地からなる1対の第1ヨーク部材と、下着本体と第1ヨーク部材との間に挟み込まれ、上端と下端とを下着本体に縫付けられた伸縮性生地からなる1対の引張り部材とを具備し、第1ヨーク部材及び引張り部材は上端が下着本体の上端に達し、下方部分が拡がって下着本体表側の脚部の後部付け根部分を覆うように縫付けられていることによって、衣服の下に着用するだけで十分に臀部の弛みを引き締めてより強力にヒップアップさせることができる。特許文献4に記載のボトム衣類では、伸縮性を有する本体領域と、本体領域の左右一対にそれぞれ配置され、本体領域の緊締力よりも強い緊締力を有する帯状の第1の緊締部及び第2の緊締部とを備え、第1の緊締部は、着用者の股部から臀溝に沿い、大転子の真上に対応する位置を通って臍近傍まで延在し、第2の緊締部は、着用者の腰椎近傍から大殿筋の上部に沿い、大転子の真上に対応する位置で第1の緊締部に連結されていることによって、意識的なエクササイズによらずに着用者のお腹周りのシェイプアップ効果が得られる。特許文献5に記載のボトム衣類では、大腿部の前側であって人体の腸棘点と膝蓋中央点との中間点に対応する部分に緊締部を有することにより、美しくヒップアップすることができる。
【0004】
さらに、ボトム衣類には、筋肉の動きを制限することで、体の部位の移動方向を変えるものがある(たとえば、特許文献6、7)。特許文献6に記載の下半身用衣類では、前身頃と後身頃を備え、後身頃は、後身頃中央部と両側脇部とに区画されて構成されており、後身頃中央部には、非伸縮性又は低伸縮性布生地が、股部から臀部山頂点付近まで、非伸縮性又は低伸縮性領域が形成され、臀部山頂点付近から上部の後身頃中央部には、高伸縮性布生地による高伸縮性領域が形成されていることによって、着用者の動作に拘わらず、着用中継続して、小股部のシルエットを美しく保持することができる。特許文献7に記載の衣類では、少なくとも1つの弾性素子を有して成る、身体の一部に着用される衣服、特にスポーツ用パンツであって、少なくとも1つの弾性素子が、少なくとも第1部分に配され、身体の一部において第1部分に対向する第2部分は基本的に弾性素子を有さず、身体の一部の第1の方向に向けた第1の動作による弾性伸びによりエネルギーを蓄積し、身体の一部の反対方向に向けた第2の動作において、エネルギーを放出することにより、身体の一部の第2の動作を支援することによって、スポーツ選手によってもたらされるエネルギーを周期的に繰り返される動作のそれぞれの局面により均等に分配することができ、エネルギーの効率的利用によって遂行能力を最大限発揮することができる。
【0005】
ところで、今日、生活習慣病といわれる高脂血症、肥満症、高脂血症、糖尿病、高血圧を引き起こす原因となるメタボリックシンドームが問題視されている。メタボリックシンドームの進行を防止するまたはメタボリックシンドームを解消するために、脂肪燃焼を促す目的で運動することが好ましい。運動による脂肪燃焼の効率を高めるために、着用することによって運動によるカロリー消費を増加させるボトムが従来技術として知られている(たとえば、特許文献8)。特許文献8に記載のボトムを着用することによって、難伸縮性に編成された加圧領域のうち横方向の加圧ラインが、その着圧により加圧ライン上の筋肉を加圧して筋収縮活動を分断することにより擬似的に腱画を構成させ、かつ縦方向の加圧ラインが肌へ密着し、運動時の横方向の加圧ラインのブレを抑制することにより、擬似的な腱画内において短小化した筋収縮活動が、腱近傍の筋肉両端においても確実に行われるようになるため、停止部から起始部までの筋肉全体による収縮活動が活発化して消費カロリーを増大させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−255148号公報
【特許文献2】特開2008−106373号公報
【特許文献3】特開2007−197897号公報
【特許文献4】特開2006−328602号公報
【特許文献5】国際公開第05/112674号パンフレット
【特許文献6】特開2010−144307号公報
【特許文献7】特開2005−226217号公報
【特許文献8】特開2010−95823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、着用することによって、歩く、階段を登るといった日常生活の基本的動作により消費されるカロリーを増加させることができるボトム衣類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決すため、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明は、少なくとも着用者の下腹部、臀部および大腿部を覆い、伸縮性素材により形成されたボトム衣類において、着用者の右臀部の少なくとも頂部を覆い、着用者の右臀部から、右大腿部の背面の臀部側の領域にかけて延在する右伸長抑制領域と、着用者の左臀部の少なくとも頂部を覆い、着用者の左臀部から、左大腿部の背面の臀部側の領域にかけて延在する左伸長抑制領域とを有し、右伸長抑制領域および左伸長抑制領域が、伸縮性素材、または伸展抑制加工された素材に比べて伸長が抑制されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、着用することにより日常生活の動作によるカロリーの消費を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の一実施形態のショーツの正面図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態のショーツの背面図である。
【図3】図3は本発明の一実施形態のショーツの側面図である。
【図4】図4は、歩行時の下肢における皮膚の伸展分布図である。
【図5】図5は、走行時の下肢における皮膚の伸展分布図である。
【図6】図6は、歩行時の下肢における皮膚のもっとも伸びる部分のひとつが臀部−大腿部延在領域に相当することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態の説明に先立ち、図4を参照して、発明者が、本発明に想到するに至った経緯を説明する。発明者は、ボトム衣類が着用者に対してどのように負荷をかければ、日常生活における動作、たとえば歩く動作において消費されるカロリーを増加させることができるかについて検討を重ねた。そして、歩行時の下肢における皮膚の伸びに着目することを思い立ち、歩行時の下肢における皮膚のもっとも伸びる部分を、ボトム衣類によって伸びにくくすることによって、歩行時に消費されるカロリーを増加させることができることを見出した。
【0012】
図4は、歩行時の下肢における皮膚の伸展率、すなわち、皮膚の伸び具合を示す図である。皮膚の伸展率が大きいほど、歩行時に皮膚は伸びることになる。格子状の線を皮膚上に描くことによって下肢の皮膚を格子状に区画して、起立時と歩行時との間のそれぞれの区画の大きさの変化を調べることによって、歩行時の下肢における皮膚の伸展率を調べた。その結果、歩行時、大腿部の背面の臀部側の領域の皮膚がもっとも伸びることがわかった。これより、大腿部の背面の臀部側の皮膚に対応するボトム衣類の領域の伸長を抑制することによって、歩行時におけるカロリー消費を増加させることができるという発想を得た。
【0013】
同様な方法で、走行時の下肢における皮膚の伸展率を調べると、図5に示すように、走行時においても、大腿部の背面の臀部側の皮膚がもっとも伸びることがわかった。これより、大腿部の背面の臀部側の皮膚に対応するボトム衣類の領域の伸長を抑制することによって、走行時においても、カロリー消費を増加させることができるという発想を得た。
【0014】
図1〜3を参照して、本発明の一実施形態におけるボトム衣類を説明する。ここで、ボトム衣類とは、パンツ、スパッツ、ガードル、ショーツ、タイツまたはストッキングなど、着用者の少なくとも下腹部、臀部および大腿部を覆う衣類をいう。本発明の一実施形態における図1〜3に示すボトム衣類は、ショーツ1である。このショーツ1を着用することによって、歩いたり、走ったり、階段を登ったりするなどの日常の動作により消費されるカロリーを増加させることができる。
【0015】
図1は本発明の一実施形態のショーツの正面図であり、図2は本発明の一実施形態のショーツの背面図であり、図3は本発明の一実施形態のショーツの側面図である。本発明の一実施形態のショーツ1は、本体領域10、右伸長抑制領域20、左伸長抑制領域30および下腹部伸長抑制領域40を有する。
【0016】
本体領域10は、ショーツ1の基礎を構成する領域であり、ショーツ1における右伸長抑制領域20、左伸長抑制領域30および下腹部伸長抑制領域40を除いた領域である。本体領域10には、着用者の少なくとも下腹部、臀部および大腿部を覆う。ショーツ1の本体領域10には、着用者の腰を通すウエスト口11および着用者の左右の足をそれぞれ通す左右の脚口12,13が備えられている。本体領域10の素材は、ポリエステル、ナイロン、綿などの伸縮性素材である。
【0017】
右伸長抑制領域20は、着用者の右臀部の少なくとも頂部(臀部における右の膨らみの中心位置)を覆い、右臀部から、右大腿部の背面の臀部側の領域にかけて延在する臀部−大腿部延在領域21を有する。右伸長抑制領域20は、臀部の外周に沿って外側に延在する臀部外延在領域22、臀部の外周に沿って内側(臀部の中心側)に延在する臀部内延在領域23、右大腿部の外周に沿って外側に延在する大腿部外延在領域24および右大腿部の外周に沿って内側(内股側)に延在する大腿部内延在領域25をさらに有する。
【0018】
左伸長抑制領域30は、着用者の左臀部の少なくとも頂部を覆い、左臀部から、左大腿部の背面の臀部側の領域にかけて延在する臀部−大腿部延在領域31を有する。左伸長抑制領域30は、臀部の外周に沿って外側に延在する臀部外延在領域32、臀部の外周に沿って内側(臀部の中心側)に延在する臀部内延在領域33、左大腿部の外周に沿って外側に延在する大腿部外延在領域34および左大腿部の外周に沿って内側(内股側)に延在する大腿部内延在領域35をさらに有する。以下、右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30をまとめて示すときは、伸長抑制領域20,30と呼ぶ。
【0019】
伸長抑制領域20,30の素材には、本体領域10の伸縮性素材に比べて伸長しにくい素材が用いられるか、伸展しにくいようにする加工が施されている。素材は伸長荷重を負荷させることによって伸長させる。たとえば、100mmの幅と150mmの長さとを有する素材を、つかみ間隔100mm、両端のつかみ代各25mmで、100mm/分の速度で30〜50%伸長させるのに要する伸長荷重で比較すると、伸長抑制領域20,30の素材の伸長荷重は、本体領域10の伸縮性素材の伸長荷重に比べて2倍以上であることが好ましく、2倍以上4倍程度であることがより好ましい。伸長抑制領域20,30の素材の伸長荷重が、本体領域10の伸縮性素材の伸長荷重に比べて2倍未満であると、ショーツ1を着用することによるカロリー消費の増加効果が現れない場合がある。
【0020】
伸長抑制領域20,30の伸長荷重は、たとえば4.24Nであり、本体領域の伸長荷重は、たとえば、1.35Nである。ここで、伸長荷重とは、100mmの幅と150mmの長さとを有する素材を、つかみ間隔100mm、両端のつかみ代各25mmで、100mm/分の速度で40%伸長させるのに要する力をいう。また、「右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30が、伸縮性素材に比べて伸長が抑制されている」とは、「右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30の伸長荷重が、本体領域10の伸縮性素材の伸長荷重に比べて大きいことをいう。
【0021】
伸長抑制領域20,30の素材は、本体領域10に用いられる伸縮性素材の表面上に、本体領域10の伸縮性素材よりも弾性率の高い、または低伸度の樹脂層を形成することによって形成することができる。弾性率の高い、または低伸度の樹脂層の樹脂には、たとえば、ポリウレタンを使用することができる。ポリウレタン樹脂層は、たとえば、スクリーン印刷法などの印刷法によって、本体領域10に用いられる伸縮性素材の表面上に形成される。ショーツ1の作製に用いられる伸縮性素材の中の伸長抑制領域20,30を形成する領域に樹脂層を塗布することによって、伸長抑制領域20,30を容易に形成することができる。この場合、伸長抑制領域20,30の素材を本体領域10の伸縮性素材に縫着する必要がない。なお、本体領域10に用いられる伸縮性素材の表面上に樹脂層を形成できれば、樹脂層を形成する方法は印刷法に限定されない。たとえば、樹脂シートを貼り付けることによって樹脂層を形成してもよい。
【0022】
伸長抑制領域20,30では、弾性率の高い、または低伸度の樹脂層は、本体領域10に用いられる伸縮性素材の表面全体に、べたに形成されてもよい。しかし、六角形、八角形、長方形、正方形、円形、星形などの所定の二次元方向の形状を有する樹脂層図形100を、本体領域10に用いられる伸縮性素材の表面上に、複数、並べて形成することによって、伸長抑制領域20,30の素材を形成することが好ましい。また、樹脂層図形100は、2以上の樹脂素材の複合体であってもよい。
【0023】
この場合、それぞれの樹脂層図形100の二次元方向の大きさを変えることによって、伸長抑制領域20,30の単位面積当たりの樹脂層図形100の総面積の割合を変えることができる。そして、これにより、伸長抑制領域20,30の伸長の抑制の程度を制御することができる。
【0024】
また、隣接する2つの樹脂層図形100の間の隙間によって、伸長抑制領域20,30におけるショーツ1の通気性を良好にできる。さらに、樹脂層図形100の二次元方向の形状によって、伸長抑制領域20,30におけるショーツ1の伸長が抑制される力の方向を制御することができる。たとえば、樹脂層図形の二次元方向の形状が長方形である。
【0025】
樹脂層図形100の二次元方向の形状は、隣接する2つの樹脂層図形100の間の隙間を小さくしたり大きくしたり容易に設計することができる正方形、長方形および六角形が好ましく、樹脂層図形100を引っ張る方向によって決まる伸長荷重の変化が小さい形状である六角形がさらに好ましい。六角形の形状を有する樹脂層図形の大きさは、正六角形である場合、六角形の対向する辺の間の距離が、たとえば15mmになる大きさである。また、隣接する六角形の隣接する辺同士の間の距離は、たとえば2mmである。
【0026】
伸長抑制領域20,30の臀部−大腿部延在領域21,31は、着用者の日常生活における動作、とくに歩行や階段昇降などの足を踏み出す動作に対して負荷を与える。図4を参照して、臀部−大腿部延在領域21,31が、着用者の足を踏み出す動作に対して負荷を与えるメカニズムを説明する。上述したように、図4に示された試験結果から、歩行時、大腿部の背面の臀部側の領域の皮膚がもっとも伸びることがわかった。臀部−大腿部延在領域21,31は大腿部の背面の臀部側の皮膚を覆うので、臀部−大腿部延在領域21,31の伸長しにくさによって、歩行時の下肢における皮膚のもっとも伸びる部分を伸ばすために(たとえば、図6の矢印200参照)、余計な力を要するようになる。この余計な力は、たとえば、大臀筋およびハムストリングスの位置関係が動くことによって生ずると考えられる。したがって、臀部−大腿部延在領域21,31における伸長の抑制が、着用者の足を踏み出す動作に対して負荷を与える。
【0027】
上述したように、走行時および階段の昇降時においても、大腿部の背面の臀部側の皮膚がもっとも伸びる。したがって、走行時および階段の昇降時においても、臀部−大腿部延在領域21,31における伸長の抑制が、着用者の足を踏み出す動作に対して負荷を与える。
【0028】
ショーツ1が、歩行時に消費されるカロリーを効率的に増加させることができるのは、以下の理由によるものと予想される。しかし、以下の理由は本発明を限定するものではない。歩行時の下肢における皮膚のもっとも伸びる部分を、伸びにくくすることによって、臀部−大腿部延在領域21,31は、歩行時に使用する筋肉を特定して負荷を与えるものではなく、動作に負荷を与えることが結果として、腸腰筋をはじめ複数の筋肉がその負荷を補うことで、歩行時に消費されるカロリーを効率的に増加させることができるものと考えられる。
【0029】
臀部−大腿部延在領域21,31の臀部頂部における、臀部の外周方向の幅は、たとえば、80mmである。
【0030】
伸長抑制領域20,30の臀部外延在領域22,32および臀部内延在領域23,33は、臀部の外周を抱え込むことによって、伸長抑制領域20,30が着用者の臀部に対してずれることを抑制する。これによって、伸長抑制領域20,30は、大腿部の背面の臀部側の皮膚が伸びにくいように、着用者に対して効率的に負荷を与えることができる。なぜならば、伸長抑制領域20,30が着用者の臀部に対してずれると、着用者に対して与える負荷が弱くなり、着用者の動きに対してショーツ1は着用者に負荷を効率的に与えることができないからである。ショーツ1は長時間装着するものであるので、臀部の外周の締め付けが強すぎないようにするため、臀部外延在領域22,32は、ショーツ1の正面までつながっていないことが好ましい。
【0031】
また、たとえば、腹部側に進むにしたがって、樹脂層図形100の二次元方向の大きさが小さくなることによって、臀部外延在領域22,32の単位面積当たりの樹脂層図形100の総面積の割合が正面側に進むにしたがって小さくなることが好ましい。これにより、伸長抑制領域20,30の臀部における負荷の方向と伸長荷重に対する応力が分散され、臀部の外周を抱え込む力の割には、伸長抑制領域20,30によって締め付けられているという着用者の感覚が弱くなる。
【0032】
伸長抑制領域20,30の大腿部外延在領域24,34および大腿部内延在領域25,35は、大腿部の外周を抱え込むことによって、伸長抑制領域20,30が着用者の大腿部に対してずれることを抑制する。これによって、伸長抑制領域20,30は、大腿部の背面の臀部側の皮膚が伸びにくいように、着用者に対して効率的に負荷を与えることができる。なぜならば、伸長抑制領域20,30が着用者の大腿部に対してずれると、着用者に対して与える負荷が弱くなり、着用者の動きに対してショーツ1は着用者に負荷を効率的に与えることができないからである。ショーツ1は長時間装着しているものであるので、大腿部の外周の締め付けが強すぎないようにするため、大腿部外延在領域24,34と大腿部内延在領域25,35とは、大腿部の正面でつながっていないことが好ましい。
【0033】
また、たとえば、大腿部の前面側に進むにしたがって、樹脂層図形100の二次元方向の大きさが小さくなることによって、大腿部外延在領域24,34の単位面積当たり樹脂層図形100の総面積の割合および大腿部内延在領域25,35の単位面積当たりの樹脂層図形100の総面積の割合が、正面側に進むにしたがって小さくなることが好ましい。これにより、伸長抑制領域20,30の大腿部における負荷の方向と伸長荷重に対する応力が分散され、大腿部の外周を抱え込む力の割には、伸長抑制領域20,30によって締め付けられているという着用者の感覚が弱くなる。
【0034】
伸長抑制領域20、30は、ショーツ1のウエスト口11まで延在していない、または延在していない部分を有することが好ましい。これにより、ショーツ1を着用中にショーツ1のウエスト口11がずり下がるのを抑制することができる。
【0035】
伸長抑制領域20、30は、ショーツ1の脚口12,13まで延在していない、または延在していない部分を有することが好ましい。これにより、ショーツ1を着用中にショーツ1の脚口12,13がずり上がるのを抑制することができる。
【0036】
下腹部伸長抑制領域40は、臀部の外周とは分割されるが腰部の外周を抱え込むことによって、下腹部におけるショーツ1の密着性を向上させる。とくに、臀部の外周の長さと腰部の外周の長さとの間の差異が大きい女性用のボトム衣類に下腹部伸長抑制領域40を設けることが好ましい。下腹部伸長抑制領域40は、本体領域10に比べて伸長が抑制される。下腹部伸長抑制領域40の素材は、伸長抑制領域20、30の素材と同じであってもよい。なお、下腹部伸長抑制領域40をショーツ1に設けなくてもよい。
【実施例】
【0037】
歩行時の下肢における皮膚のもっとも伸びる部分を、ボトム衣類によって伸にくくなるようにすることによって、歩行時に消費されるカロリーを増加させることができることを調べるために以下の実験を行った。20〜50代の男子の被験者、8名に対して、本発明の一実施形態におけるショーツ1をはかせ、高さ20cmの踏み台を使用して、踏み台昇降運動を被験者に7分間行わせた。また、カロリーの消費を増加させる機能のない通常のパンツをはかせて同様な運動を行わせた。そして、ショーツ1をはかせた場合のエネルギー代謝量の変化を調べた。エネルギー代謝量は、コールテックス社製の吸気ガス代謝モニターを用いて測定した。ショーツ1をはかせた場合のエネルギー代謝量は、平均6.600kcal/分であった。一方、通常のパンツをはかせた場合のエネルギー代謝量は、平均6.158kcal/分であった。これより、ショーツ1を被験者にはかせることによって、被験者のエネルギー代謝量が約7%増加することがわかった。
【0038】
比較実験として、日常生活における動作に対して負荷を与えてエネルギー代謝量を増やすことができ、現在市販されているスパッツについても、上記試験を行った。このスパッツは、伸縮性を有し、大腿部の背面の中央で交差するX字状の複数のバンドが、臀部の下縁から大腿部の背面下部に並んで、大腿部の背面に設けられている。結果は、このスパッツについて統計学的に有為なエネルギー代謝量の増加は見られなかった。
【0039】
以上の一実施形態によるショーツ1は、次のような作用効果を奏する。
(1)少なくとも着用者の下腹部、臀部および大腿部を覆い、伸縮性素材により形成されたショーツ1において、着用者の右臀部の少なくとも頂部を覆い、着用者の右臀部から、右大腿部の背面の臀部側の領域にかけて延在する右伸長抑制領域20と、着用者の左臀部の少なくとも頂部を覆い、着用者の左臀部から、左大腿部の背面の臀部側の領域にかけて延在する左伸長抑制領域30とを有し、右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30が、本体領域10の伸縮性素材に比べて伸長が抑制されているようにした。これにより、着用することにより日常生活の動作によるカロリーの消費を増加させることができる。また、着用者の臀部および大腿部を強く締め付けることによらないで日常生活の動作によるカロリーの消費を増加させることができるので、ショーツ1による強い圧迫感を着用者に感じさせず、着用者はショーツ1を長時間着用することができる。さらに、着用することによって、日常生活の動作によるカロリーの消費を効率的に増加させることができる。
【0040】
(2)右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30の伸長荷重が、本体領域10の伸縮性素材の伸長荷重の2倍以上であるようにした。これにより、着用することにより日常生活の動作によるカロリーの消費を効果的に増加させることができる。
【0041】
(3)右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30における伸縮性素材の表面に、伸縮性素材よりも弾性率の高い、または低伸度の樹脂層100を形成することにより、右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30の伸長を抑制するようにした。これにより、ショーツ1の作製に用いられる伸縮性素材の中の伸長抑制領域20,30を形成する領域に樹脂層を塗布することによって、伸長抑制領域20,30を容易に形成することができる。
【0042】
(4)樹脂層100が、所定の二次元方向の形状を有する樹脂層図形100であり、樹脂層図形は、右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30における伸縮性素材の表面上に複数並べて形成されるようにした。これにより、右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30の伸長の抑制の程度を容易に制御することができる。また、右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30の通気性を良好にできる。
【0043】
(5)樹脂層図形100の所定の二次元方向の形状が六角形であるようにした。これにより、隣接する2つの樹脂層図形100の間の隙間を小さくすることができ、右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30の伸長の抑制を大きくすることができる。
【0044】
(6)樹脂層図形が2以上の樹脂素材の複合体であるようにした。これにより、材質の異なる樹脂を組み合わせて、別の効果を狙うことができる。
【0045】
(7)右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30が、臀部の外周に沿って外側に延在する臀部外延在領域22,32、大腿部の外周に沿って外側に延在する大腿部外延在領域24,34および大腿部の外周に沿って内側に延在する大腿部内延在領域25,35を有するようにした。これにより、右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30が着用者の臀部および大腿部に対してずれることが抑制され、右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30が、着用者に対して負荷を効率的に与えることができる。
【0046】
(8)臀部外延在領域22,32は、腹部側に進むにしたがって、樹脂層図形100の二次元方向の大きさが小さくなり、大腿部外延在領域24,34および大腿部内延在領域臀部25,35は、大腿部の前面側に進むにしたがって、樹脂層図形100の二次元方向の大きさが小さくなるようにした。これにより、伸長抑制領域20,30の大腿部および臀部における負荷の方向と伸長荷重に対する応力が分散され、大腿部の外周および臀部の外周を抱え込む力の割には、伸長抑制領域20,30によって締め付けられているという着用者の感覚を弱くすることができる。
【0047】
(9)右伸長抑制領域20および左伸長抑制領域30が、ウエスト口11および脚口12,13まで延在しない部分を有するようにした。これにより、ショーツ1を着用中にショーツ1のウエスト口11がずり下がり、ショーツ1の脚口12,13がずり上がるのを抑制することができる。
【0048】
以上の一実施形態のショーツ1を次のように変形することができる。
(1)伸長抑制領域20,30を、スクリーン印刷法のほかに、接着加工、捺染加工、防染加工または抜触加工によって形成してもよい。接着加工の場合、ホットメルト接着剤などの接着剤を使用して、弾性率の高い、または低伸度の素材を本体領域10の伸縮性素材に接着することによって、伸長抑制領域20,30を形成する。抜触加工の場合、伸長抑制領域20,30を形成する領域以外の部位に薬品を使用して、特定組成のみを溶かすことによって生地の厚みを薄くする。伸長抑制領域20,30の領域のみが薬品の影響を受けず、そのままの厚みを保持し、それ以外の部位は溶けて薄くなる。これにより、伸長抑制領域20,30の領域の弾性率が、伸長抑制領域20,30の領域以外の領域の弾性率よりも高くすることができる。
【0049】
また、伸長抑制領域20,30の編み組織を、弾性率を高める編み組織にすることによって、伸長抑制領域20,30の伸長を抑制するようにしてもよい。たとえば、弾性糸が挿入された浮き編みでもよいし、弾性糸が挿入されたタック編みと浮き編みとの混合でもよい。また、高弾性材の素材としては、弾性率の高い繊維であればとくに限定されないが、ナイロンやポリエステルのほかに弾性率の高いポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどを使用してもよい。また、編み組織が他の構成部分と同じであっても、他の構成部分に比べて、弾性糸の構成比率を高くする、弾性糸の繊度を太くする、弾性率の高い素材の弾性糸を使用する、樹脂をコーティングするなどして、高弾性材を形成してもよい。また、編み組織が他の構成部分と同じであっても、編みこむ糸を増やし、編み密度を高くする、度目などを詰め、編み密度を高くするなどして、高弾性材を形成してもよい。
【0050】
(2)樹脂層図形100が樹脂層から所定の二次元方向の形状を抜いた網目状の図形であってもよい。この場合も、伸長抑制領域の単位面積当たりの樹脂層図形の総面積の割合を変えることによって、伸長抑制領域の伸長の抑制の程度を制御することができる。また、抜いた部分によって、伸長抑制領域におけるボトム衣類の通気性を良好にできる。
【0051】
(3)本発明のボトム衣類は、ショーツに限定されるものではない。本発明のボトム衣類は、たとえば、ショーツにおける他の形体をはじめ、パンツ、パンティ、ストッキング、ガードル、ボディスーツ、スパッツ、水着、ブリーフ、トランクスなどを含む。また、本発明のボトム衣類は、女性用であるか男性用であるか、インナー用であるかアウター用であるかなどについて限定されない。
【0052】
実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることは可能である。変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
【0053】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記実施形態の構成になんら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
1 ショーツ
10 本体領域
11 ウエスト口
12,13 脚口
20 右伸長抑制領域
21,31 臀部−大腿部延在領域
22,32 臀部外延在領域
23,33 臀部内延在領域
24,34 大腿部外延在領域
25,35 大腿部内延在領域
30 左伸長抑制領域
40 下腹部伸長抑制領域
100 樹脂層図形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着用者の下腹部、臀部および大腿部を覆い、伸縮性素材により形成されたボトム衣類において、
着用者の右臀部の少なくとも頂部を覆い、着用者の右臀部から、右大腿部の背面の臀部側の領域にかけて延在する右伸長抑制領域と、
着用者の左臀部の少なくとも頂部を覆い、着用者の左臀部から、左大腿部の背面の臀部側の領域にかけて延在する左伸長抑制領域とを有し、
前記右伸長抑制領域および前記左伸長抑制領域が、前記伸縮性素材に比べて伸長が抑制されているボトム衣類。
【請求項2】
前記右伸長抑制領域および前記左伸長抑制領域の伸長荷重が、前記伸縮性素材の伸長荷重の2倍以上である請求項1に記載のボトム衣類。
【請求項3】
前記右伸長抑制領域および前記左伸長抑制領域における前記伸縮性素材の表面に、該伸縮性素材よりも弾性率の高い、または低伸度の樹脂層を形成することにより、前記右伸長抑制領域および前記左伸長抑制領域の伸長を抑制した請求項1または2に記載のボトム衣類。
【請求項4】
接着加工、捺染加工、防染加工または抜触加工により、前記右伸長抑制領域および前記左伸長抑制領域を形成した請求項1または2に記載のボトム衣類。
【請求項5】
前記樹脂層が、所定の二次元方向の形状を有する樹脂層図形であり、
前記樹脂層図形は、前記右伸長抑制領域および前記左伸長抑制領域における前記伸縮性素材の表面上に複数並べて形成される請求項3に記載のボトム衣類。
【請求項6】
前記樹脂層図形の所定の二次元方向の形状が六角形である請求項5に記載のボトム衣類。
【請求項7】
前記樹脂層図形が2以上の樹脂素材の複合体である請求項5に記載のボトム衣類。
【請求項8】
前記樹脂層図形が前記樹脂層から所定の二次元方向の形状を抜いた網目状の図形である請求項5または6に記載のボトム衣類。
【請求項9】
前記右伸長抑制領域および前記左伸長抑制領域が、臀部の外周に沿って外側に延在する臀部外延在領域、大腿部の外周に沿って外側に延在する大腿部外延在領域および大腿部の外周に沿って内側に延在する大腿部内延在領域を有する請求項5〜8のいずれか1項に記載のボトム衣類。
【請求項10】
前記臀部外延在領域は、腹部側に進むにしたがって、前記樹脂層図形の二次元方向の大きさが小さくなり、
前記大腿部外延在領域および前記大腿部内延在領域は、大腿部の前面側に進むにしたがって、前記樹脂層図形の二次元方向の大きさが小さくなる請求項9に記載のボトム衣類。
【請求項11】
着用者の腰を通すウエスト口および着用者の足を通す脚口を備え、
前記右伸長抑制領域および前記左伸長抑制領域が、前記ウエスト口および前記脚口まで延在しない部分を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載のボトム衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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