説明

ボトル吊り下げ水平搬送装置

【課題】ボトルを横揺れなく吊り下げ搬送してボトルの脱落を防止し、ガイドレールに対する搬送抵抗を低減して円滑に水平搬送できるボトル吊り下げ水平搬送装置を提供すること。
【解決手段】搬送ラインに配置された一対のガイドレール110を並進する一対の搬送チェーン120がボトルBを吊り下げ搬送するとともに、搬送チェーン120が連結ピン121で連結してガイドレール内に嵌挿されたリンク体122から搬送ライン側に向けて水平に突出してボトルBのフランジ部Fを支持してボトルBを吊り下げるボトル支持部122aと前記リンク体の上下方向にそれぞれ突出してガイドレール内を係合状態で摺動する楔状突起部122b、122bを備え、ガイドレールが搬送ライン側に向けて開口するレール本体内の上下方向にそれぞれ拡張して楔状突起部122b、122bを係合状態で摺動させるリンク体案内溝111を備えているボトル吊り下げ水平搬送装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボトル吊り下げ水平搬送装置に係わり、さらに詳しくは、搬送ラインに沿って対向配置された一対のガイドレールを並進する一対の搬送チェーンがボトルを吊り下げ搬送するようにしたボトル吊り下げ水平搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のボトル吊り下げ水平搬送装置として、ペットボトルの如く口部下方に係止フランジ部を有する容器類を吊り下げ状態で搬送できるようにするとともに、それぞれのチェーン単体が、連結体の背面に上下に係止突片を突設し、これらの係止突片をレールの装着凹部の奥方上下に設けた上下係止用凹部に係止させて、レールの装着凹部からの抜け出しを阻止できるようにした容器類の水平搬送装置がある(特許文献1を参照)。
また、リンク本体とボトル搬送部材とを一体とした一対の搬送チェーンをボトル搬送路を挟んで配設し、双方のボトル搬送部材でボトルネック部を保持しボトルを吊り下げて搬送するようにした搬送チェーン装置がある(特許文献2を参照)。
【特許文献1】特許第3412086号公報(第1頁、図1および図5)
【特許文献2】特開平10−35847号公報(第1頁、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前者の特許第3412086号公報に開示されている従来のボトル吊り下げ水平搬送装置は、レールの曲線搬送区間において平行平面板状の係止突片が曲面からなる上下係止凹部に面接触しながら多角形運動する如く窮屈に引っ張られ、しかも、係止用凹部に対する各々の係止突片の接触圧力が一定でないため、チェーンに過度の摺動抵抗による脈動現象が生じて容器類の搬送を安定して行えないという問題があり、また、直線搬送区間や曲線搬送区間にレールの継ぎ目があると、係止突片の角部がこれらの継ぎ目に接触干渉して引っ掛かり易くなり、引っ掛かると係止突片の角部が摩耗して破損し、チェーンの走行を不可能な状態にするという問題があった。
【0004】
そして、後者の特開平10−35847号公報に開示されている従来の搬送チェーン装置は、搬送チェーンが案内レールに過度に押し付けられて摩耗やクリアランスが生じると、搬送チェーンが横揺れして案内部材から脱落したり、傾いたりしてボトルを損傷させるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題、すなわち、本発明の目的は、上述したような従来技術の問題点を解消するものであって、ボトルを横揺れなく一定の搬送速度で確実に吊り下げ搬送してボトルの脱落を防止できるとともに、ガイドレールに対する搬送抵抗を低減して円滑に水平搬送できるボトル吊り下げ水平搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、搬送ラインに沿って対向配置された一対のガイドレールを並進する一対の搬送チェーンがボトルを吊り下げ搬送するようにしたボトル吊り下げ水平搬送装置において、前記搬送チェーンが、連結ピンで相互に連結してガイドレール内に嵌挿されたリンク体から搬送ライン側に向けて水平に突出してボトルの外周面に凸設されたフランジ部を支持してボトルを吊り下げるボトル支持部と前記リンク体の上下方向にそれぞれ突出してガイドレール内を係合状態で摺動する楔状突起部を備えているとともに、前記ガイドレールが、搬送ライン側に向けて開口するレール本体内の上下方向にそれぞれ拡張して前記楔状突起部を係合状態で摺動させるリンク体案内溝を備えていることにより、上述した課題を解決している。
【0007】
なお、本発明で用いた搬送チェーンのリンク体に形成される「楔状突起部」とは、リンク体の上下方向に向けてそれぞれ先細る楔状横断面を呈するとともにリンク体のチェーン長手方向に延長された状態で突起してガイドレール内を係合状態で摺動する部分のことであって、換言すれば、逆V字状あるいは山形状に傾斜配置された表裏二つの上部摺動面とV字状あるいは谷底状に傾斜配置された表裏二つの下部摺動面とで構成されてガイドレール内を係合状態で摺動する部分のことである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のボトル吊り下げ水平搬送装置は、搬送チェーンが連結ピンで相互に連結してガイドレール内に嵌挿されたリンク体から搬送ライン側に向けて水平に突出したボトル支持部と前記リンク体の上下方向にそれぞれ突出した楔状突起部を備えているとともに、ガイドレールが搬送ライン側に向けて開口するレール本体内の上下方向にそれぞれ拡張したリンク体案内溝を備えていることによって、搬送チェーンのリンク体から突出したボトル支持部がボトルの外周面に凸設されたフランジ部を支持してボトルを吊り下げるため、ボトル本体を損傷させることなく搬送することができ、また、搬送チェーンの楔状突起部がガイドレールのリンク体案内溝に対して搬送チェーン側荷重をその分力として作用させるため、ガイドレール内を係合状態で円滑に摺動してボトルを横揺れ無く一定の搬送速度で確実に水平搬送させることができ、搬送チェーンがガイドレールに過度に押し付けられて摩耗やクリアランスが生じた場合であっても、搬送チェーンの楔状突起部が搬送チェーンをガイドレール内から搬送ライン側に引き寄せてガイドレールのリンク体案内溝に確実に当接させるため、搬送チェーンとガイドレールとの間の摩耗やクリアランスに起因する搬送チェーンの横揺れを解消してガイドレールから脱落することを阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のボトル吊り下げ水平搬送装置は、搬送ラインに沿って対向配置された一対のガイドレールを並進する一対の搬送チェーンがボトルを吊り下げ搬送するようにしたボトル吊り下げ水平搬送装置において、搬送チェーンが連結ピンで相互に連結してガイドレール内に嵌挿されたリンク体から搬送ライン側に向けて水平に突出してボトルの外周面に凸設されたフランジ部を支持してボトルを吊り下げるボトル支持部と前記リンク体の上下方向にそれぞれ突出してガイドレール内を係合状態で摺動する楔状突起部を備えているとともに、ガイドレールが搬送ライン側に向けて開口するレール本体内の上下方向にそれぞれ拡張して前記楔状突起部を係合状態で摺動させるリンク体案内溝を備えていることにより、ボトルを横揺れなく一定の搬送速度で確実に吊り下げ搬送してボトルの脱落を防止するとともに、ガイドレールに対する搬送抵抗を低減して円滑に水平搬送するものであり、その具体的態様は如何なるものであっても差し支えない。
【0010】
なお、本発明のボトル吊り下げ水平搬送装置で搬送するボトルの具体的な形態については、搬送チェーンのリンク体から突出したボトル支持部によってボトルを吊り下げるためのフランジ部がボトルの外周面に凸設されたものであれば、ボトル本体が単純な円筒状のものや膨出した胴部を備えたものなど、何れであっても差し支えない。
【0011】
また、本発明のボトル吊り下げ水平搬送装置に用いるガイドレールや搬送チェーンの素材は、プラスチック製、もしくは、金属製の何れであってもよく、特に、リンク体がプラスチック製の場合、ボトル支持部はリンク体に一体成形されているが、ボトル支持部によるボトルへの接触騒音を抑制するために、騒音抑制に適したプラスチック材料を選択して成形しても何ら構わない。
【0012】
さらに、本発明のボトル吊り下げ水平搬送装置に用いるガイドレールの具体的な形態については、搬送チェーンのリンク体が円滑に案内されて脱落しないレール形態であれば如何なるレール形態であっても何ら差し支えなく、例えば、コの字状断面やCの字状断面を有するレール形態、あるいは、上下に二分割できるレール形態であっても良い。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例であるボトル吊り下げ水平搬送装置100を説明する。
まず、図1に示すような本実施例のボトル吊り下げ水平搬送装置100は、搬送ラインの両側で左右対称に対向して水平配置された一対のガイドレール110、110と、これらのガイドレール110、110に保持されて並進状態で水平走行する一対の搬送チェーン120、120とで構成され、図2に示すように、これらの搬送チェーン120、120の間でボトルBを吊り下げて水平搬送するようになっている。
なお、図1に示すように、前記搬送チェーン120、120は、搬送ラインの前後端に水平配置されている駆動側スプロケット131と従動側スプロケット132の間に巻き掛けられているが、図示しない中間アイドラーなどを介して搬送ラインに水平曲がりゾーンを創成することもできる。
【0014】
前記搬送チェーン120は、図3乃至図6に示すように、連結ピン121で相互にオフセットして連結してガイドレール110内に嵌挿された合成樹脂製のリンク体122から一体成形されて搬送ライン側に突出したL字状のボトル支持部122aが設けられ、このボトル支持部122aがボトルBの外周面に凸設されたフランジ部Fを支持してボトルBを吊り下げるようになっている。
そして、搬送チェーン120には、リンク体122の上下方向に向けてそれぞれ先細る楔状横断面を呈するとともにリンク体122のチェーン長手方向に延長された状態で突起した、すなわち、逆V字状あるいは山形状に傾斜配置された表裏二つの上部摺動面とV字状あるいは谷底状に傾斜配置された表裏二つの下部摺動面とで構成される楔状突起部122b、122bが設けられ、これら上下の楔状突起部122b、122bがガイドレール110内を係合状態で摺動するようになっている。
なお、図中の符合122cは、連結ピン121を挿通して相互に連結するためのリンク体122の垂直方向に設けた連結ピン穴である。
【0015】
他方、前記ガイドレール110には、搬送ライン側に向けて開口するレール本体内の上下方向にそれぞれ拡張して前述した楔状突起部122bを係合状態で摺動させるリンク体案内溝111が設けられ、このリンク体案内溝111に対して楔状突起部122bが、搬送チェーン側荷重をその分力として作用させ、ガイドレール110内を係合状態で円滑に摺動するようになっている。
【0016】
つぎに、本実施例のボトル吊り下げ水平搬送装置100の搬送動作を以下に説明する。
図1に示すボトル吊り下げ水平搬送装置100により搬送ラインに沿ってボトルBの搬送を開始する場合、まず、駆動側スプロケット131と従動側スプロケット132を回転させると、左側の搬送チェーン120が時計方向に、右側の搬送チェーン120が反時計方向に回転する。
【0017】
そこで、直線搬送区間Sの奥側にある始端において、走行する搬送チェーン120のリンク体122に設けられたL字状のボトル支持部122aが、ボトルBの外周面に凸設されたフランジ部Fを支持してボトルBを吊り下げた状態で直線搬送区間Sを移動しながらボトルBを搬送し、このボトルBを吊り下げたボトル支持部122aが直線搬送区間Sから手前側の曲線周回区間Tに入ると、一対のボトル支持部122aがそれぞれ搬送ラインの外側に向かって逃げてボトルBの支持フランジFから外れ、ボトルBが搬送チェーン120から離脱する。
【0018】
その後、搬送チェーン120は、ボトルBを放した後、手前側の曲線周回区間T、反対側の直線搬送区間Sおよび奥側の曲線周回区間Tを通って戻り、再びボトルBを再び吊り下げて搬送するようになっている。
【0019】
このようにして得られたボトル吊り下げ水平搬送装置100は、搬送チェーン120のリンク体122から突出したボトル支持部122aがボトルBの外周面に凸設されたフランジ部Fを支持してボトルBを吊り下げるため、ボトル本体を損傷させることなく搬送することができ、また、搬送チェーン120の楔状突起部122b、122bがガイドレール110のリンク体案内溝111に対して搬送チェーン側荷重をその分力fとして作用させるため、ガイドレール110内を係合状態で円滑に摺動してボトルBを横揺れ無く一定の搬送速度で確実に水平搬送させることができ、搬送チェーン120がガイドレール110に過度に押し付けられて摩耗やクリアランスが生じた場合であっても、搬送チェーン120の楔状突起部122bが搬送チェーン120をガイドレール110内から搬送ライン側方向Xに引き寄せてガイドレール110のリンク体案内溝111に確実に当接させるため、搬送チェーン120とガイドレール110との間の摩耗やクリアランスに起因する搬送チェーン120の横揺れを解消してガイドレール120から脱落することを阻止することができるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例であるボトル吊り下げ水平搬送装置の全体概要図。
【図2】図1の2−2線からみた拡大断面図。
【図3】搬送チェーンの正面図。
【図4】搬送チェーンの下面図。
【図5】搬送チェーンを一部破断した背面図。
【図6】搬送チェーンとガイドレールを分解した斜視図。
【符号の説明】
【0021】
100 ・・・ ボトル吊り下げ水平搬送装置
110 ・・・ ガイドレール
111 ・・・ リンク体案内溝
120 ・・・ 搬送チェーン
121 ・・・ 連結ピン
122 ・・・ リンク体
122a ・・・ ボトル支持部
122b ・・・ 楔状突起部
122c ・・・ 連結ピン穴
131 ・・・ 駆動側スプロケット
132 ・・・ 従動側スプロケット
B ・・・ ボトル
F ・・・ フランジ部
S ・・・ 直線搬送区間
T ・・・ 曲線周回区間
f ・・・ 分力
X ・・・ 搬送チェーンの引き寄せられる方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ラインに沿って対向配置された一対のガイドレールを並進する一対の搬送チェーンがボトルを吊り下げ搬送するようにしたボトル吊り下げ水平搬送装置において、
前記搬送チェーンが、連結ピンで相互に連結してガイドレール内に嵌挿されたリンク体から搬送ライン側に向けて水平に突出してボトルの外周面に凸設されたフランジ部を支持してボトルを吊り下げるボトル支持部と前記リンク体の上下方向にそれぞれ突出してガイドレール内を係合状態で摺動する楔状突起部を備えているとともに、
前記ガイドレールが、搬送ライン側に向けて開口するレール本体内の上下方向にそれぞれ拡張して前記楔状突起部を係合状態で摺動させるリンク体案内溝を備えていることを特徴とするボトル吊り下げ水平搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−145493(P2007−145493A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341706(P2005−341706)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)