説明

ボトル型の細胞培養容器及びその製造方法

【課題】本発明は、胴部内周面に機能性有機化合物層を備えたボトル型細胞培養容器の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のボトル型細胞培養容器100の製造方法は、基材層202及び機能性有機化合物層201を備えるシート状の機能性基体200を、機能性有機化合物層201を内側とし、一方の側端部と他方の側端部とが相互に接合可能な位置に配置されるように筒状に加工し、且つ、前記一方の側端部と前記他方の側端部とを接合して筒状の胴部材101を形成する工程と、筒状の胴部材101の一端に底部材102を接合し、他端に頂部材103を接合する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル型の細胞培養容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度応答性ポリマー等の機能性有機化合物層を表面に被覆した、シャーレなどの細胞培養容器が特許文献1に記載されている。この細胞培養容器を用いることにより、温度を変化させるだけで培養・増殖後の細胞を破壊することなく細胞支持体から容易に剥離して回収することができる。しかし、特許文献1に記載のように、シャーレなどの細胞培養容器に、別個にバッチ処理により表面処理をして機能性化合物層を設けることは、多くの手間を必要としており、作業性の観点からはなお改善する余地がある。
【0003】
そこで、特許文献2等において、機能性化合物層を表面に備える、フィルム状、板状等の形状の機能性基体を別途作成し、該機能性基体を、細胞培養容器に固定する技術が提案されている。この技術によれば、細胞培養容器を個別にバッチ処理して機能性有機化合物層を設ける場合と比較して作業性が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−211865号公報
【特許文献2】特開2010−98979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されているように、別途準備された機能性基体を細胞培養容器に固定する方法は、皿形状の細胞培養容器(シャーレ)の底面等の、開放された平坦な容器表面に機能性有機化合物層を設ける場合に適した方法である。
【0006】
一方、大容量の細胞培養に適した細胞培養容器としてボトル型細胞培養容器が知られている。ボトル型細胞培養容器は、寝かせた状態で細胞培養に用いられるため、主に胴部内周面が細胞と相互作用する。このため、ボトル型細胞培養容器においては、胴部内周面に機能性化合物層を設けることが求められる。しかしながら、別途準備された機能性基体を、ボトル型細胞培養容器の胴部内周面に固定することは容易なことではない。胴部内周面の全周にわたり機能性基体を固定することは特に困難である。
【0007】
また、特許文献1のように、予め形成された容器の表面において化学反応を行い、該表面に機能性有機化合物層を共有結合させて固定する方法は、シャーレ底面等の開放された表面への適用には適しているが、ボトル型細胞培養容器の胴部内周面のように閉鎖された室内の内表面に適用することは困難である。
【0008】
そこで本発明は、胴部内周面に温度応答性ポリマー等の機能性有機化合物層を備えたボトル型細胞培養容器の効率的な製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、胴部内周面に温度応答性ポリマー等の機能性有機化合物層が共有結合を介して固定されたボトル型細胞培養容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
基材層及び該基材層上に配置された機能性有機化合物層を少なくとも備えるシート状の機能性基体を、前記機能性有機化合物層を備えた面を内側とし、該機能性基体の一方の側端部と他方の側端部とが相互に接合可能な位置に配置されるように筒状に加工し、前記一方の側端部と前記他方の側端部とを接合して、内周面に機能性有機化合物層を備える筒状の胴部材を形成し、続いて、底部材及び頂部材を接合することにより、胴部内周面に機能性有機化合物層を備えたボトル型細胞培養容器を効率的に製造することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は以下の発明を包含する。
【0010】
(1)内周面に機能性有機化合物層を備える筒状の胴部材と、
前記筒状の胴部材の一端に接合された底部材と、
前記筒状の胴部材の他端に接合された、通孔が形成された頂部材と、
を備えたボトル型の細胞培養容器を製造する方法であって、
基材層及び該基材層上に配置された機能性有機化合物層を少なくとも備えるシート状の機能性基体を、前記機能性有機化合物層を備えた面を内側とし、前記機能性基体の一方の側端部と他方の側端部とが相互に接合可能な位置に配置されるように筒状に加工し、且つ、前記一方の側端部と前記他方の側端部とを接合して、内周面に機能性有機化合物層を備える筒状の胴部材を形成する工程と、
前記筒状の胴部材の一端に底部材を接合し、他端に頂部材を接合する工程と、
を含む方法。
(2)内周面に機能性有機化合物層を備える筒状の胴部材と、
前記筒状の胴部材の一端に接合された底部材と、
前記筒状の胴部材の他端に接合された、通孔が形成された頂部材と、
を備え、
前記筒状の胴部材を構成する壁部が、樹脂製の基材層と、該樹脂製の基材層の表面に共有結合を介して固定された機能性有機化合物層とを備える、
ボトル型の細胞培養容器。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、胴部内周面に機能性有機化合物層を備えたボトル型細胞培養容器を効率的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明において製造されるボトル型の細胞培養容器の全体形状を示す。
【図2】図2は筒状の胴部材を形成するための機能性基体の断面図である。
【図3】図3は本発明のボトル型細胞培養容器の製造方法の各工程の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では必要に応じて図面を参照し本発明の特徴を説明するが、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために適宜誇張して示している。
【0014】
<ボトル型細胞培養容器の形状>
本発明が対象とするボトル型細胞培養容器の形状について説明する。
ボトル型細胞培養容器は、図1に示すように、筒状の胴部材101と、胴部材101の一端に接合された底部材102と、胴部材101の他端に接合された頂部材103とを少なくとも備える。頂部材103の一部に通孔104が形成されており、より好ましくは、通孔104の周縁から容器部外部に延びる首部105を備える。すなわち、胴部材101の前記他端と、首部105の一端とを頂部材103が接続する。より好ましくは、首部105には、蓋110を係止するための係止部106が形成されており、係止部106を介して蓋110が着脱可能に装着される。胴部材101、底部材102及び頂部材103により包囲される内部空間には細胞及び培地を収容するための内室が形成され、内室は通孔104を介して容器外と連通している。
【0015】
図1では胴部材101が、横断面が円形である円筒形状である例を示すが、これには限定されず、胴部は筒状である限り、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形であるなど種々の横断面を有する筒形状であることができる。
【0016】
<ボトル型細胞培養容器の材料>
ボトル型細胞培養容器の、胴部材の基材層、底部材、頂部材、首部、蓋などの部材を形成する材料は特に限定されず、細胞培養において一般的に用いられる材料を用いることができる。例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂材料、表面親水化処理を施した上記の少なくとも1種を含む樹脂材料、及びガラスや石英等の無機材料であることができるが、好ましくは樹脂材料である。樹脂材料としては、ポリスチレン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
【0017】
<ボトル型細胞培養容器の製造>
本発明において製造されるボトル型細胞培養容器は、筒状の胴部材101の内周面に機能性有機化合物層が存在することを特徴とする。そして本発明ではこのような構成のボトル型細胞培養容器を製造する方法として、以下の、
基材層及び該基材層上に配置された機能性有機化合物層を少なくとも備えるシート状の機能性基体を、前記機能性有機化合物層を備えた面を内側とし、該機能性基体の一方の側端部と他方の側端部とが相互に接合可能な位置に配置されるように筒状に加工し、且つ、前記一方の側端部と前記他方の側端部とを接合して、内周面に機能性有機化合物層を備える筒状の胴部材を形成する工程と、
前記筒状の胴部材の一端に底部材を接合し、他端に頂部材を接合する工程と、
を含む方法を提供する。
【0018】
胴部材を形成するためのシート状の機能性基体200は、図2にその横断面を示すとおり、基材層202及び該基材層上に配置された機能性有機化合物層201を含む少なくとも2層の多層構造を有する。基材層202と機能性有機化合物層201との間には、両層の接合に必要な他の層(例えば後述するプライマー層)が適宜介在していてもよい。
【0019】
基材層は、一方の表面に上述の機能性有機化合物層を形成することが可能であり、且つ、筒状に成形可能な材料を含むものであればよい。基材層は好ましくは樹脂材料により構成され、より好ましくは<ボトル型細胞培養容器の材料>の欄で説明した樹脂材料により構成される。特に、基材層の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、アクリル等の樹脂材料が好ましい。
【0020】
基材層の、機能性有機化合物層が形成される側の表面は、易接着処理された表面であることができる。「易接着処理」とは、例えば、ポリエステル、アクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、シランカップリング剤、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の易接着剤による処理を指す。
【0021】
基材層の厚さ(基材層が基材の層に加えて易接着層を備える場合は、易接着層を含む基材層の全体の厚さを指す)は、筒状体への加工性も考慮して、適宜選択すればよい。樹脂製の基材層の場合、典型的には、100〜1000μmの厚さとすることができる。
【0022】
基材層202の表面に機能性有機化合物層201を形成してシート状機能性基体200を製造する方法は特に限定されず、機能性有機化合物層の種類に応じて適宜選択することができる。好ましくは、基材層202の表面に、印刷技術を用いて機能性有機化合物層を形成することができる。機能性有機化合物層の種類及び基材層表面への形成方法の具体例は後述する通りである。
機能性基体200の全体の形状は筒状体を形成可能な形状であれば特に限定されない。
【0023】
本発明の方法では、図3Aに示すように、予め用意されたシート状の機能性基体200を、機能性有機化合物層201側の面を内側(図3Aにおいて手前の面)とし、基材層202側の面を外側として、機能性基体200の一方の側端部と他方の側端部とが相互に接合可能な位置に配置されるように、筒状に加工する。機能性基体200の一方の側端部と前記他方の側端部とを接合して、内周面に機能性有機化合物層201を備える筒状の胴部材101を形成する。側端部同士を接合する方法は、細胞及び培地が漏出しないように液密に接合可能な方法であれば特に限定されない。基材層が樹脂材料からなる場合には、機能性基体200の側端部同士を超音波溶着、レーザー溶着等の適当な手段を用いて溶融一体化することが可能である。機能性基体200の側端部同士を適当な接着剤を用いて接合してもよい。機能性基体200の側端部同士を接合する場合、基材層202の一方の側端部の端面と、他方の側端部の端面とが対面するように接合してもよいし、機能性基体200の機能性有機化合物層201側の面又は基材層202側の面の一方の側端部の近傍領域と、機能性有機化合物層201側の面又は基材層202側の面の他方の側端部の近傍領域とが対面するように接合してもよい。
【0024】
続いて、図3Bに示すように、前記工程で得られた筒状の胴部材101の一方の開放端に底部材102を接合し、他方の開放端に、通孔104が形成された頂部材103を接合する。各部材同士を接合する方法もまた、細胞及び培地が漏出しないように液密に接合可能な方法であれば特に限定されない。胴部材101の基材層201、底部材102、頂部材103がそれぞれ樹脂材料からなる場合には、接合される部材同士を超音波溶着、レーザー溶着等の適当な手段を用いて溶融一体化することが可能である。また部材同士を適当な接着剤を用いて接合してもよい。頂部材103には図3Bのように予め首部105を一体化させておくことができる。
【0025】
続いて蓋110等の他の部材を適宜組み合わせ、必要に応じて内容物の容量を示す目盛を、印刷技術等を用いて容器表面に付加して、ボトル型細胞培養容器を完成させる。
【0026】
本発明の方法において、予め準備された、樹脂製の基材層と、該樹脂製の基材層の表面に共有結合を介して固定された機能性有機化合物層を備える機能性基体を用いて胴部材を製造することにより、特許文献1等の従来技術では製造することが困難であった、筒状の胴部材を構成する壁部が、樹脂製の基材層と、該樹脂製の基材層の表面に共有結合を介して固定された機能性有機化合物層を備えるボトル型細胞培養容器を製造することができる。このような機能性有機化合物層としては、後述する、樹脂製基材層にグラフト化された刺激応答性ポリマーを含む刺激応答性ポリマー層が挙げられる。
【0027】
<機能性有機化合物層>
本発明において、機能性有機化合物層を構成する有機化合物としては、所望の機能を有する層であれば特に限定されないが、より好ましくは、所定の刺激によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化することが可能な表面を有する刺激応答性ポリマーや、1つ以上のエチレングリコール単位(CH−CH−O)からなるエチレングリコール鎖等の親水性化合物が挙げられる。
【0028】
機能性有機化合物層の膜厚は、例えば、0.5nm〜300nmの範囲内とするよく、なかでも1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
【0029】
以下「刺激応答性ポリマー層」及び「親水性化合物層」の好適な実施形態について説明する。
<刺激応答性ポリマー層>
機能性有機化合物層は、刺激応答性ポリマー層であることが特に好ましい。刺激応答性ポリマー層とは、所定の刺激によって表面の細胞の接着度合いが変化するポリマーを含む層である。刺激応答性ポリマーとしては、温度応答性ポリマー、pH応答性ポリマー、イオン応答性ポリマー、光応答性ポリマーなどを挙げることができる。なかでも温度応答性ポリマーが、刺激の付与が容易であることから好ましい。
【0030】
温度応答性ポリマーとして、例えば、細胞を培養する温度では細胞接着性を示し、作製した細胞シートの剥離する時の温度では細胞非接着性を示すものを用いるとよい。例えば、温度応答性ポリマーは、臨界溶解温度未満の温度では周囲の水に対する親和性が向上し、ポリマーが水を取り込んで膨潤して表面に細胞を接着しにくくする性質(細胞非接着性)を示し、同温度以上の温度ではポリマーから水が脱離することでポリマーが収縮して表面に細胞を接着しやすくする性質(細胞接着性)を示すものを用いるとよい。このような臨界溶解温度は、下限臨界溶解温度と呼ばれる。下限臨界溶解温度Tが0℃〜80℃、さらに好ましくは0℃〜50℃である温度応答性ポリマーを用いるとよい。Tが0℃〜80℃であると、細胞を安定的に培養できるからである。
【0031】
好適な温度応答性ポリマーとしてはアクリル系ポリマー又はメタクリル系ポリマーが挙げられる。具体的に好適な温度応答性ポリマーとしては、例えばポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35℃)、及びポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=32℃)等が挙げられる。
【0032】
これらのポリマーを形成するためのモノマーとしては、放射線照射によって重合し得るモノマーを用いることができる。モノマーとしては例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、及びビニルエーテル誘導体等が挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。モノマーが一種類単独で使用された場合、基材上に形成されるポリマーはホモポリマーとなり、モノマーが複数種一緒に使用された場合、基材上に形成されるポリマーはヘテロポリマーとなるが、どちらの形態も本発明に包含される。
【0033】
また、増殖細胞の種類によってTを調節する必要がある場合や、被覆物質と細胞培養支持体との相互作用を高める必要が生じた場合や、細胞支持体の親水・疎水性のバランスを調整する必要がある場合などには、上記以外の他のモノマー類を更に加えて共重合してよい。更に本発明に使用する上記ポリマーとその他のポリマーとのグラフト又はブロック共重合体、あるいは本発明のポリマーと他のポリマーとの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質が損なわれない範囲で架橋することも可能である。
【0034】
pH応答性ポリマー及びイオン応答性ポリマーは作製しようとする細胞シートに適したものを適宜選択することができる。
【0035】
刺激応答性ポリマー層は、重合して目的の刺激応答性ポリマーを形成するモノマーと、該モノマーを溶解しうる有機溶媒と含む塗布用組成物を調製し、これを慣用の塗布方法に従って、樹脂製の基材層の表面に塗布して塗膜を形成し、次に、該塗膜に放射線照射等の適当な手段により塗膜中のモノマーを重合してポリマーを形成するとともに、基材層の表面とポリマーとの間にグラフト化反応を生じさせることにより形成することができる。こうして形成される刺激応答性ポリマー層は、樹脂製の基材層の表面に共有結合を介して固定される。
【0036】
<親水性化合物層>
機能性有機化合物層の他の実施形態として、1つ以上のエチレングリコール単位からなるエチレングリコール鎖(複数のエチレングリコール単位からなるエチレングリコール鎖は、「ポリエチレングリコール鎖」ということができる)等の親水性化合物の層が挙げられる。
【0037】
エチレングリコール鎖の末端は水酸基により封鎖された形態であってもよいし、エチレングリコール鎖の末端に生体関連物質等の他の物質が共有結合により連結された形態であってもよい。
【0038】
末端が水酸基により封鎖されたエチレングリコール鎖を含む層は、細胞が接着し難い親水性の表面を提供することができる。
【0039】
エチレングリコール鎖の末端に共有結合されうる生体関連物質としては、抗原、抗体、DNA、RNA、ペプチド、ホルモン、酵素、サイトカイン、糖鎖、脂質、補酵素、酵素阻害剤、細胞、その他の機能を有するタンパク質が含まれる。更に、このような生体関連物質と親和性を有する低分子化合物、及び高分子化合物も生体関連物質の範囲に含まれる。
【0040】
エチレングリコール鎖等の親水性化合物の層を、樹脂製の基材層の表面に固定化するためには、予め、樹脂製の基材層の表面に、該表面に物理的に吸着可能であって、エチレングリコール鎖の末端の水酸基と反応して共有結合を形成可能な官能基を側鎖に含むポリシロキサンを含むプライマー層を設ける。ポリシロキサンの側鎖上の官能基としては、グリシジル基又はエポキシ基が好ましい。プライマー層は、基材層の表面に、所望の側鎖を有するシラノール化合物を適用し、該表面上で縮合重合してポリシロキサンに変換することにより形成することができる。
【0041】
次いで、プライマー層の官能基と、エチレングリコール又はエチレングリコール単位が2以上繰り返されたポリエチレングリコールの水酸基とを反応させて共有結合を形成し、エチレングリコール鎖を固定化する。このとき、触媒量の濃硫酸を含むエチレングリコール又はポリエチレングリコールをプライマー層に接触させる。
末端が水酸基により封鎖されたエチレングリコール鎖を含む層はこのようにして形成される。
【0042】
更に、必要に応じて、エチレングリコール鎖の一端に、他の物質との共有結合を形成することが可能な、少なくとも1つの官能基を直接的又は間接的に連結させる。官能基の導入方法は特に限定されない。
【符号の説明】
【0043】
100・・・ボトル型細胞培養容器
101・・・筒状の胴部材
102・・・底部材
103・・・頂部材
200・・・シート状の機能性基体
202・・・基材層
201・・・機能性有機化合物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に機能性有機化合物層を備える筒状の胴部材と、
前記筒状の胴部材の一端に接合された底部材と、
前記筒状の胴部材の他端に接合された、通孔が形成された頂部材と、
を備えたボトル型の細胞培養容器を製造する方法であって、
基材層及び該基材層上に配置された機能性有機化合物層を少なくとも備えるシート状の機能性基体を、前記機能性有機化合物層を備えた面を内側とし、前記機能性基体の一方の側端部と他方の側端部とが相互に接合可能な位置に配置されるように筒状に加工し、且つ、前記一方の側端部と前記他方の側端部とを接合して、内周面に機能性有機化合物層を備える筒状の胴部材を形成する工程と、
前記筒状の胴部材の一端に底部材を接合し、他端に頂部材を接合する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
内周面に機能性有機化合物層を備える筒状の胴部材と、
前記筒状の胴部材の一端に接合された底部材と、
前記筒状の胴部材の他端に接合された、通孔が形成された頂部材と、
を備え、
前記筒状の胴部材を構成する壁部が、樹脂製の基材層と、該樹脂製の基材層の表面に共有結合を介して固定された機能性有機化合物層とを備える、
ボトル型の細胞培養容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−99287(P2013−99287A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244945(P2011−244945)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】