説明

ボトル

【課題】底落ちの発生を抑えつつ、減圧吸収性能を確保すること。
【解決手段】底部14の底壁部19が、接地部18と、該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部21と、該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部22と、該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部23と、を備え、可動壁部が陥没周壁部を上方に向けて移動させるように、立ち上がり周壁部との接続部分25を中心に回動自在に配設され、立ち上がり周壁部が、接地部から可動壁部との接続部分に向かうに従い漸次ボトル径方向の内側に向けて傾斜するように延在すると共に、その傾斜角度θがボトル軸Oに対して10度以下とされているボトル1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂材料で有底筒状に形成されたボトルとして、例えば下記特許文献1に示されるように、底部の底壁部が、外周縁部に位置する接地部と、該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する可動壁部と、該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、可動壁部が陥没周壁部を上方に向けて移動させるように、立ち上がり周壁部との接続部分を中心に回動することにより、ボトル内の減圧を吸収する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−126184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のボトルでは、内容物の充填時や内圧上昇時等に、可動壁部が立ち上がり周壁部との接続部分を中心に下方に回動してしまい、可動壁部の一部が接地部の配設位置に到達したり接地部よりも下方に突出したりして、接地安定性の不具合を招く、いわゆる底落ちが生じ易くなるおそれがあった。
なお、本実施形態における「底落ち」とは、上記したように接地安定性の不具合を招く現象を言う。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、底落ちの発生を抑えつつ、減圧吸収性能を確保することができるボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係るボトルは、合成樹脂材料で有底筒状に形成されたボトルであって、底部の底壁部が、外周縁部に位置する接地部と、該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部と、該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、前記可動壁部が、前記陥没周壁部を上方に向けて移動させるように、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に回動自在に配設され、前記立ち上がり周壁部が、前記接地部から前記可動壁部との前記接続部分に向かうに従い漸次ボトル径方向の内側に向けて傾斜するように延在すると共に、その傾斜角度がボトル軸に対して10度以下とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るボトルによれば、ボトル内の減圧時、可動壁部を立ち上がり周壁部との接続部分を中心に上方に向けて回動させ、陥没周壁部を上方に移動させることができるので、ボトルの減圧吸収容量を高めて所定の減圧吸収性能を確保することができる。
ところで、立ち上がり周壁部は、可動壁部との接続部分に向かうに従い、ボトル軸に対してボトル径方向の内側に傾斜しているが、その傾斜角度は10度以下とされており、垂直に立ち上がった形に近い状態とされている。そのため、立ち上がり周壁部の上端部側(上記接続部分側)がボトル径方向に容易に動いてしまうことを抑制でき、内容物の充填時等に可動壁部が上記接続部分を中心として下方に回動してしまうことを抑制し易い。これにより、いわゆる底落ちを生じ難くすることができる。
【0008】
(2)上記本発明に係るボトルにおいて、前記接地部から前記立ち上がり周壁部と前記可動壁部との前記接続部分までの高さが、7.5mmを超える高さとされていることが好ましい。
【0009】
この場合には、可動壁部の回動中心となる接続部分が接地部から7.5mmを超える高さに位置しているので、内容物の充填時等に、いわゆる底落ちをより生じ難くさせることができる。そのため、安定した接地性能を確保できると共に、例えば内容物の高温充填にも対応することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るボトルによれば、内容物の充填時や内圧上昇時等における底落ちの発生を抑えつつ、減圧吸収性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるボトルの正面図である。
【図2】図1に示すボトルの底面図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿ったボトルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るボトルを説明する。
(ボトルの構成)
本実施形態に係るボトル1は、図1に示すように、口部11、肩部12、胴部13及び底部14を備え、これらがそれぞれの中心軸線を共通軸上に位置した状態でこの順に連設された概略構成とされている。
【0013】
以下、前記共通軸をボトル軸Oといい、ボトル軸O方向に沿って口部11側を上側、底部14側を下側という。また、ボトル軸Oに直交する方向をボトル径方向といい、ボトル軸Oを中心に周回する方向をボトル周方向という。
なお、ボトル1は、射出成形により有底筒状に形成されたプリフォームがブロー成形されて形成され、合成樹脂材料で一体に形成されている。また、口部11には、図示されないキャップが螺着される。更に、口部11、肩部12、胴部13及び底部14は、それぞれボトル軸Oに直交する横断面視形状が円形状とされている。
【0014】
肩部12と胴部13との間には、第1環状凹溝15が全周に亘って連続して形成されている。
胴部13は筒状に形成されていると共に、肩部12の下端部及び底部14の後述するヒール部17よりも小径に形成されている。また、この胴部13には、ボトル軸O方向に間隔を開けて複数の第2環状凹溝16が形成されている。図示の例では、ボトル軸O方向に等間隔を開けて第2環状凹溝16が5つ形成されている。これら各第2環状凹溝16は、胴部13の全周に亘って連続して形成された溝部とされている。
【0015】
底部14は、上端開口部が胴部13の下端開口部に接続されたヒール部17と、ヒール部17の下端開口部を閉塞し、且つ外周縁部が接地部18とされた底壁部19と、を備えるカップ状に形成されている。
【0016】
ヒール部17のうち、上記接地部18にボトル径方向の外側から連なるヒール下端部27は、該ヒール下端部27に上方から連なる上ヒール部28より小径に形成されている。なお、この上ヒール部28は、肩部12の下端部と共にボトル1の最大外径部とされている。
【0017】
また、ヒール下端部27と上ヒール部28との連結部分29は、上方から下方に向かうに従い漸次縮径されており、これによりヒール下端部27が上ヒール部28より小径とされている。また、上ヒール部28には、例えば上記第1環状凹溝15と略同じ深さの複数の第3環状凹溝20が全周に亘って連続して形成されている。図示の例では、ボトル軸O方向に間隔を開けて第3環状凹溝20が2つ形成されている。
【0018】
底壁部19は、図2及び図3に示すように、接地部18にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部21と、立ち上がり周壁部21の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部22と、可動壁部22のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部23と、を備えている。
【0019】
可動壁部22は、下方に向けて突の曲面状に形成されると共に、ボトル径方向の外側から内側に向かうに従い漸次下方に向けて延在している。この可動壁部22と立ち上がり周壁部21とは、上方に向けて突の曲面部25を介して連結されている。そして、可動壁部22は、陥没周壁部23を上方に向けて移動させるように、上記曲面部(立ち上がり周壁部21との接続部分)25を中心に回動自在とされている。
【0020】
立ち上がり周壁部21は、下方から上方に向かうに従い漸次縮径している。具体的には、接地部18から可動壁部22との接続部分である上記曲面部25に向かうに従い漸次ボトル径方向の内側に向けて傾斜するように延在している。その際、傾斜角度θとしては、ボトル軸Oに対して10°以下とされている。
また、本実施形態では、接地部18から上記曲面部25までの高さTが、7.5mmを超える高さである例えば7.7mmとされている。
【0021】
陥没周壁部23は、ボトル軸Oと同軸に配設されると共に、上方から下方に向かうに従い漸次拡径する横断面視円形状に形成されている。陥没周壁部23の上端部には、ボトル軸Oと同軸に配置された円板状の頂壁24が接続されており、陥没周壁部23及び頂壁24の全体で有頂筒状をなしている。
この陥没周壁部23は、ボトル径方向の内側に向けて突の曲面状に形成され、上端部が頂壁24の外周縁部に連設された湾曲壁部23aを備えている。この湾曲壁部23aは、その下端部が下方に向けて突の曲面部26を介して可動壁部22のボトル径方向の内端部に連設されている。
【0022】
(ボトルの作用)
このように構成されたボトル1内が減圧すると、底壁部19の曲面部25を中心にして可動壁部22が上方に向かって回動することで、可動壁部22は陥没周壁部23を上方に向けて持ち上げるように移動する。即ち、減圧時にボトル1の底壁部19を積極的に変形させることで、ボトル1の内圧変化(減圧)を吸収することができる。これにより、所定の減圧吸収性能を確保することができる。
【0023】
ところで、本実施形態のボトル1では、立ち上がり周壁部21が曲面部25に向かうに従いボトル径方向の内側に傾斜しているが、その傾斜角度θはボトル軸Oに対して10度以下とされ、垂直に立ち上がった形に近い状態とされている。そのため、立ち上がり周壁部21の上端部側(曲面部25側)がボトル径方向に容易に動いてしまうことを抑制でき、内容物の充填時や内圧上昇時に、可動壁部22が曲面部25を中心として下方に回動してしまうことを抑制し易い。つまり、立ち上がり周壁部21がボトル径方向の内側に倒れ込むように変形することが抑制され、これにより、いわゆる底落ちを生じ難くすることができる。
【0024】
しかも、可動壁部22の回動中心となる曲面部25は、接地部18から7.7mm上方に位置する高さに配設されているので、可動壁部22が多少下方に回動したとしても、底落ちの発生を防止し易い。そのため、安定した接地性能を確保できると共に、例えば内容物の高温充填(例えば、80〜100℃、好ましくは85〜93℃)にも対応することができる。
【0025】
また、本実施形態のボトル1は、内容量が1リットル以下、接地径が85mm以下とされるボトルに好適である。図示の例では、接地径が70mm、接地部18からの曲面部25の高さTが7.7mmとされたボトルとされている。
【0026】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0027】
例えば、立ち上がり周壁部21の傾斜角度θとしては、10度以下であれば良いが、より好ましくは3度以下である。
【0028】
また、可動壁部22をボトル径方向に沿って平行に突出させたり、上方に傾斜させたりする等、適宜変更しても良いし、平面状若しくは上方に向けて窪む凹曲面状に形成する等、適宜変更しても良い。
更には、可動壁部22を、曲面部25からボトル径方向の内側に向かいに従い漸次下方に向けて延びる外側壁部と、該外側壁部と陥没周壁部とを接続し、且つ上方に向けて窪む凹曲面状に形成された内側壁部と、で構成しても構わない。こうすることで、例えば内容物の充填時に、可動壁部22の内側壁部が下方により到達し難くなるので、いわゆる底落ちの発生を効果的に抑制し易い。
【0029】
また、上記実施形態では、肩部12、胴部13及び底部14のそれぞれのボトル軸Oに直交する横断面視形状を円形状としたが、これに限らず例えば、多角形状にする等適宜変更しても良い。
【0030】
また、ボトル1を形成する合成樹脂材料は、例えばポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリエステル等、またはこれらのブレンド材料等、適宜変更しても良い。更に、ボトル1は単層構造体に限らず中間層を有する積層構造体としても良い。なお、中間層としては例えばガスバリア性を有する樹脂材料からなる層、再生材からなる層、若しくは酸素吸収性を有する樹脂材料からなる層等が挙げられる。
【0031】
(実施例)
次に、立ち上がり周壁部21の傾斜角度θの違いによって、内容物の充填時に該立ち上がり周壁部21の上端部がボトル径方向にどのように変化するかを試験(解析)した実施例について説明する。
【0032】
本試験では、実施例として下記の4パターン、その比較例として下記の4パターン、合計8つのパターンについてそれぞれ試験を行った。なお、接地面から曲面部25の最上部までの高さ(空ボトル時)を7.7mmとしている。
実施例としては、立ち上がり周壁部21の傾斜角度θとして、1.5度、3度、4.5度、9度の4つのパターンを採用した。これに対して、比較例としては、立ち上がり周壁部21の傾斜角度θとして、12度、15度、20度、30度の4つのパターンを採用した。
【0033】
そして、上記した合計8つのパターンの立ち上がり周壁部21を具備するボトル1内に、内容物の充填を想定して所定の内圧(0.5kg/cm(49KPa))を加えた。すると、いずれのボトル1も、可動壁部22が曲面部25を中心として下方に回動し、且つ立ち上がり周壁部21の上端部がボトル径方向の内側に向けて倒れ込むように変形した。つまり、いずれの場合も、立ち上がり周壁部21は傾斜角度θが増大するように変形した。
【0034】
具体的には、実施例の4パターンにおいて、傾斜角度θが1.5度の場合には4.7度(変化量3.2度)に増大し、傾斜角度θが3度の場合には6.2度(変化量3.2度)に増大し、傾斜角度θが4.5度の場合には7.8度(変化量3.3度)に増大し、傾斜角度θが9度の場合には12.3度(変化量3.3度)に増大した。
【0035】
これに対して、比較例の4パターンにおいて、傾斜角度θが12度の場合には15.4度(変化量3.4度)に増大し、傾斜角度θが15度の場合には18.5度(変化量3.5度)に増大し、傾斜角度θが20度の場合には23.7度(変化量3.7度)に増大し、傾斜角度θが30度の場合には34度(変化量4度)に増大した。
【0036】
これらの結果から、立ち上がり周壁部21の傾斜角度θが大きいほど、内容物の充填時に、その上端部がボトル径方向の内側に倒れ込むように移動し易く、それにより可動壁部22の一部が接地部18に対して接近し易くなること、即ち底落ちが生じ易くなることが確認できた。
しかしながら、上記した実施例の4パターンのいずれにおいても、確実に底落ちが発生しないことが確認できた。これにより、立ち上がり周壁部21の傾斜角度θをボトル軸Oに対して10度以下にすることで、底落ちの発生を抑制できることが実際に確認できた。
【符号の説明】
【0037】
O…ボトル軸
T…接地部から曲面部までの高さ
θ…立ち上がり周壁部の傾斜角度
1…ボトル
14…底部
18…接地部
19…底部の底壁部
21…立ち上がり周壁部
22…可動壁部
23…陥没周壁部
25…曲面部(可動壁部と立ち上がり周壁部との接続部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料で有底筒状に形成されたボトルであって、
底部の底壁部は、
外周縁部に位置する接地部と、
該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、
該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部と、
該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、
前記可動壁部は、前記陥没周壁部を上方に向けて移動させるように、前記立ち上がり周壁部との接続部分を中心に回動自在に配設され、
前記立ち上がり周壁部は、前記接地部から前記可動壁部との前記接続部分に向かうに従い漸次ボトル径方向の内側に向けて傾斜するように延在すると共に、その傾斜角度がボトル軸に対して10度以下とされていることを特徴とするボトル。
【請求項2】
請求項1に記載のボトルにおいて、
前記接地部から前記立ち上がり周壁部と前記可動壁部との前記接続部分までの高さが、7.5mmを超える高さとされていることを特徴とするボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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