説明

ボビンおよび光ファイバコイルの形成方法

【課題】光ファイバ束状コイルを乱すことなくボビンから取り外すことができ、取り外し後にもコイルを良好な状態で維持できるボビンおよび光ファイバコイルの形成方法を提供すること。
【解決手段】外周面8に、軸方向に配置された帯状のくぼみ部9を有する円筒形の胴部7の両端面19に、くぼみ部9に対応する位置から外縁部4に向けて放射状に配置された切込み部3を有する平板状の鍔部1をネジ等で固定し、ボビン11を組み立てる。次に、胴部7に光ファイバ13を巻きつけてコイル17を作製する。そして、くぼみ部9と切込み部3の端部6付近に紐15を通し、くぼみ部9と切込み部3に沿って紐15を配置して、コイル17を結束する。その後、鍔部1と胴部7との固定を解除して、鍔部1をコイル17から取り外す。また、胴部7もコイル17から取り外す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビンおよび光ファイバコイルの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、波長変換器、光増幅器、SC光源、分散補償器、パルス圧縮機等では、光ファイバをコイル化して収容したモジュールが使用されている。光ファイバコイルは、ボビンに所定の長さのファイバを巻きつけて作製される。作製されたコイルは、用途に応じて、ボビンを取り外さずに使用する場合や、ボビンを取り外して使用する場合がある。
【0003】
ボビンを取り外して使用するための光ファイバコイルの作製方法として、分割ボビンを用いた方法がある。分割ボビンは、胴部の分割部分である噛み合わせ部が光ファイバの巻き方向と平行でないように構成され、胴部の端面に鍔部が一体化さる。このような分割ボビンを用いて光ファイバコイルを製造するには、ボビンの胴部に所定の条長だけ光ファイバを巻きつけた後、噛み合わせ部で胴部を分割する。そして、光ファイバコイルから一方の胴部を取り外した後、他方の胴部も取り外す。光ファイバコイルは、ボビンを取り外した後、必要に応じて、紐で結束したり、樹脂等でコイルの一部を固めたりして、ばらばらになるのを防ぐ(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−190636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光ファイバコイルからボビンを取り外した後に紐で結束を行なうと、コイルがばらばらになり易く、結束作業が困難であるという問題点がある。ボビンが内径150mm未満の小径でコイルの巻径が小さい場合は、特に結束作業が困難で、光ファイバがばらけやすい。
【0006】
また、接着剤にて光ファイバの束を固定するには、大掛かりな装置が必要となり、既存のボビン巻き装置が使用できない懸念がある。また、樹脂の掃除等に関わる装置の維持管理に手間がかかる。
【0007】
さらに、光ファイバをコイル化する場合、樹脂製の接着剤で固定すると、ボビンや樹脂による押さえつけによって光ファイバ内に応力が生じ、伝送ロス等の光ファイバの特性が劣化する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、光ファイバ束状コイルを乱すことなくボビンを取り外すことができ、取り外し後にもコイルを良好な状態で維持できるボビンおよび光ファイバコイルの形成方法を提供することである。
【0009】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、光ファイバコイルの作製に用いるボビンであって、外周面に、軸方向に配置された帯状の凹部を有する円筒形の胴部と、前記胴部の端面に対して着脱可能であり、前記凹部に対応する位置から外縁部に向けて放射状に配置された切欠き部を有する平板状の鍔部と、を具備し、前記胴部の両端面に前記鍔部を固定した状態で、前記胴部に光ファイバを巻きつけて光ファイバコイルを作製し、前記凹部および前記切欠き部に沿って結束部材を配置して前記光ファイバコイルを結束した後、前記鍔部と前記胴部との固定を解除して、前記鍔部および前記胴部を前記光ファイバコイルから取り外すことが可能なことを特徴とするボビンである。
【0010】
前記凹部は、例えば、くぼみ部である。
前記切欠き部は、例えば、前記鍔部の厚さを貫通する切込み部である。
前記切欠き部は、前記胴部と対向する面に設けられたくぼみ部とする場合もある。
【0011】
前記凹部には、必要に応じて、前記胴部の本体に対して着脱可能な分割部が設置される。
分割部が設置される場合、前記切欠き部は、前記鍔部の厚さを貫通する切込み部とする。そして、前記胴部の両端面に前記鍔部を固定した状態で、前記切込み部を介して前記胴部から前記分割部を取り外すことができるものとする。
【0012】
本発明のボビンを用いて光ファイバコイルを作製する際には、胴部の外周面に設けた帯状の凹部、および、鍔部に放射状に配置された切欠き部に沿って結束部材を配置し、胴部に巻きつけた光ファイバコイルを結束部材で結束した後、鍔部と胴部との固定を解除して、鍔部および胴部を光ファイバコイルから取り外す。本発明によれば、ボビンから光ファイバを取り外す前に、結束部材を用いて光ファイバを結束するため、光ファイバ束状コイルを乱すことなくボビンを取り外すことができる。また、取り外し後にもコイルを良好な状態で維持できる。
【0013】
本発明のボビンを用いて光ファイバコイルを作製すれば、樹脂製の接着剤を用いないため、大掛かりな装置が不要であり、樹脂の清掃等に関わる装置の維持管理の手間がかからない。また、光ファイバコイルの形成時や形成後に樹脂製の接着剤やボビンによる押さえつけによって光ファイバ内に応力が生じることがないので、偏波保持型の光ファイバをコイル化する場合に好適である。
【0014】
第2の発明は、外周面に、軸方向に配置された帯状の凹部を有する円筒形の胴部と、前記胴部の端面に対して着脱可能であり、前記凹部に対応する位置から外縁部に向けて放射状に配置された切欠き部を有する平板状の鍔部と、を具備するボビンを用い、前記胴部の両端面に前記鍔部を固定した状態で、前記胴部に光ファイバを巻きつけて光ファイバコイルを作製する工程と、前記凹部および前記切欠き部に沿って結束部材を配置し、前記光ファイバコイルを結束する工程と、前記鍔部と前記胴部との固定を解除して、前記鍔部および前記胴部を前記光ファイバコイルから取り外す工程と、を具備することを特徴とする光ファイバコイルの形成方法を提供することである。
【0015】
本発明では、鍔部を固定した状態の胴部に光ファイバを巻きつけた後、胴部の外周面に設けた帯状の凹部、および、鍔部に放射状に配置された切欠き部に沿って結束部材を配置し、胴部に巻きつけた光ファイバコイルを結束部材で結束する。その後、鍔部と胴部との固定を解除して、鍔部および胴部を光ファイバコイルから取り外す。本発明によれば、ボビンから光ファイバを取り外す前に、結束部材を用いて光ファイバを結束するため、光ファイバ束状コイルを乱すことなくボビンから取り外すことができる。また、取り外し後にもコイルを良好な状態で維持できる。
【0016】
本発明の光ファイバコイルの形成方法によれば、樹脂製の接着剤を用いないため、大掛かりな装置が不要であり、樹脂の清掃等に関わる装置の維持管理の手間がかからない。本発明の光ファイバコイルの形成方法は、樹脂製の接着剤やボビンによる押さえつけによって光ファイバ内に応力が生じることがないので、偏波保持型の光ファイバをコイル化する場合に好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光ファイバ束状コイルを乱すことなくボビンを取り外すことができ、取り外し後にもコイルを良好な状態で維持できるボビンおよび光ファイバコイルの形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ボビン11の概要を示す図
【図2】光ファイバ13を巻きつけた状態のボビン11を示す図
【図3】コイル17を結束する手順を示す図
【図4】ボビン11をコイル17から取り外す手順を示す図
【図5】第2の実施の形態におけるコイル17の形成方法の概要を示す図
【図6】第3の実施の形態におけるボビン45の概要を示す図
【図7】第3の実施の形態におけるコイル17の形成方法の概要を示す図
【図8】第4の実施の形態におけるボビン61の概要を示す図
【図9】第4の実施の形態におけるコイル17の形成方法の概要を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、ボビン11の概要を示す図である。図1(a)は、鍔部1の平面図である。図1(b)は、胴部7の平面図である。図1(c)は、ボビン11の立面図である。図1(d)は、ボビン11の断面図である、図1(d)は、図1(c)に示す矢印A−Aによる断面図である。
【0020】
図1に示すように、ボビン11は、鍔部1、胴部7等からなる。鍔部1は、平板状の部材であり、中央に孔5を有する。鍔部1は、切欠き部として、部材の厚さを貫通する切込み部3を有する。
胴部7は、円筒状の部材であり、中央に孔10を有する。胴部7は、外周面8に、軸方向に配置された帯状の凹部として、くぼみ部9を有する。
【0021】
鍔部1の切込み部3は、胴部7のくぼみ部9に対応する位置から、鍔部1の外縁部4に向けて放射状に配置される。切込み部3の幅は、くぼみ部9の幅と同等か、それ以上とすることが望ましい。切込み部3、くぼみ部9は、それぞれ、鍔部1、胴部7の3箇所に設けられ、ほぼ等間隔に配置される。
【0022】
図1(c)に示すボビン11では、鍔部1が、胴部7の両端面19に、ネジ等で固定される。鍔部1は、胴部7に対して、ネジ等の取り付け・取り外しにより着脱可能である。鍔部1と胴部7とは、図1(d)に示すように、孔5と孔10とが連通し、かつ、切込み部3の端部6付近がくぼみ部9と連通するように固定される。
【0023】
ボビン11を構成する鍔部1、胴部7は、例えば、金属製や、プラスチック等の合成樹脂製とする。
金属製とする場合、Al、Fe、Cuなどの金属やその合金、ステンレス鋼等が用いられる。ただし加工が容易であること、軽量であること等の理由により、Alが最適である。
【0024】
合成樹脂製とする場合、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどのビニル系の合成樹脂や、ポリスチレン、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体などのポリスチレン系の合成樹脂が用いられる。また、高密度、中密度、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系の合成樹脂や、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系の合成樹脂を用いてもよい。さらに、酢酸セルローズ、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタン、四フッ化エチレン等のフッ素系の樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド、メラミン・ホルムアルデヒド、エポキシ、フラン、キシレン、不飽和ポリエステル、シリコーン、ジアリルフタレート、尿素系の合成樹脂等も用いられる。
【0025】
なお、合成樹脂の物性値として、使用時の強度の観点からロックウェル硬がR30〜125、M50〜140、曲げ強さが50〜4500Kg/cmのものが望ましい。
【0026】
次に、図1に示すボビン11を用いて光ファイバコイルを形成する方法について説明する。図2は、光ファイバ13を巻きつけた状態のボビン11を示す図である。図2(a)は、ボビン11の平面図である。図2(b)は、ボビン11の立面図である。図2(b)は、図2(a)に示す矢印Bの方向から見た図である。
【0027】
光ファイバコイルを形成するには、まず、胴部7の両端面19にネジ等を用いて鍔部1を固定し、図1(c)に示すボビン11を組み立てる。そして、図1(c)に示すボビン11の胴部7に所定の条長の光ファイバ13を巻きつけ、図2に示すように、コイル17を作製する。
【0028】
図3は、コイル17を結束する手順を示す図である。図3(a)は、ボビン11の平面図である。図3(b)および図3(c)は、ボビン11の立面図である。図3(b)は、図3(a)に示す矢印Cの方向から見た図である。図3(c)は、図3(a)に示す矢印Dの方向から見た図である。
【0029】
コイル17を結束するには、図3(a)、図3(b)の切込み部3aに示すように、まず、結束部材である紐15を、ボビン11の胴部7のくぼみ部9および鍔部1の切込み部3の端部6付近に通す。そして、紐15をくぼみ部9および切込み部3に沿って配置する。紐15は、例えば、釣り糸、ミシン糸等を用いることができる。
【0030】
次に、図3(a)、図3(c)の切込み部3bに示すように、紐15を、コイル17の外周面20に沿うように配置し、両端部を結んで結束部16を形成する。
【0031】
図4は、ボビン11をコイル17から取り外す手順を示す図である。図4(a)は、コイル17を結束した状態のボビン11の斜視図である。図4(b)は、鍔部1を取り外した状態の斜視図である。図4(c)は、胴部7を取り外した状態の斜視図である。
【0032】
ボビン11をコイル17から取り外すには、まず、図4(a)に示す状態のボビン11の鍔部1と胴部7との固定を解除する。次に、胴部7の両端面19から鍔部1を取り外し、図4(b)に示す状態とする。その後、コイル17から胴部7を取り外し、図4(c)に示す状態とする。
【0033】
このように、第1の実施の形態では、ボビン11を光ファイバ13のコイル17から取り外す前に、結束部材である紐15を用いてコイル17を結束する。そのため、コイルをボビンから取り外した後に紐で結束する従来の方法と比較して、束状のコイル17を乱すことなくボビン11から取り外すことができる。また、ボビン11を取り外した後にもコイル17を良好な状態で維持できる。
【0034】
第1の実施の形態で述べたボビン11によるコイル17の形成方法では、一例として、光ファイバの直径が75μmの光ファイバ13を用い、外径25mm、内径15mm、高さ5mmの大きさの束取り型のコイル17が作製可能である。
第1の実施の形態で述べたボビン11によるコイル17の形成方法は、紐15による結束部16の形成により、光ファイバ13の乱れを抑制し、束取りがしやすくなる観点から、内径12〜150mmの束取り型コイル作製に用いると、特に有効である。
【0035】
第1の実施の形態の方法によって形成されたコイルの用途としては、波長変換器、光増幅器、SC光源、分散補償器、パルス圧縮機等用のモジュールが想定される。特に、偏波保持型の高線形光ファイバをコイル化して使用する場合、ボビンに巻いた状態のまま使用したり、樹脂製の接着剤で固定すると、ボビンや樹脂による押さえつけによって光ファイバ内に応力が生じ、偏波保持特性が劣化する場合がある。したがって、束取り型コイルの形態で用いることが好ましい。
【0036】
コイルの用途が、波長ブロッキング回避に有効な光の波長を変換する波長変換器である場合、コイルの形成には、例えば高非線形ファイバが用いられる。コイルの形成に使用するファイバの長さは、10m〜500mである。
【0037】
コイルの用途が、光信号をファイバ中で増幅させる光増幅器である場合、コイルの形成には、例えば高非線形ファイバ、希土類ドープファイバが用いられる。コイルの形成に使用するファイバの長さは、1m〜200mである。
【0038】
コイルの用途が、光波長多重通信、極短パルスの生成、光周波数標準、蛍光顕微鏡、光断層計測、分光計測などに応用可能なスペクトルが超広帯域に広げられたSC光源である場合、コイルの形成には、例えば高非線形ファイバが用いられる。コイルの形成に使用するファイバの長さは、1m〜500mである。
【0039】
コイルの用途が、光信号が光導波路中を通る間の分散による波形の歪みを修正、元に戻す分散補償器である場合、コイルの形成には、例えば高非線形ファイバが用いられる。コイルの形成に使用するファイバの長さは1m〜500mである。
【0040】
コイルの用途が、超短光パルス生成に有効な光パルスの時間幅を圧縮して所望の波形に成型する光パルス圧縮機である場合、コイルの形成には、例えば高非線形ファイバおよび使用波長において異常分散を持つファイバ(通常のシングルモードファイバ等)が用いられる。コイルの形成に使用するファイバの長さは、1m〜3000mである。
【0041】
なお、第1の実施の形態では、鍔部1の切込み部3、胴部7のくぼみ部9をそれぞれ3箇所にほぼ等間隔で配置して、コイル17の3箇所に結束部16を形成したが、結束部16の形成位置、形成数はこれに限らない。結束部16は、2箇所以上に形成するのが望ましい。鍔部1の切込み部3、胴部7のくぼみ部9の数および位置は、所定の位置に必要数の結束部16が形成できるように設定される。
【0042】
次に、第2の実施の形態について詳細に説明する。
図5は、第2の実施の形態におけるコイル17の形成方法の概要を示す図である。図5(a)は、鍔部21の平面図である。図5(b)は、ボビン27の立面図である。図5(c)は、コイル17を結束している状態を示す図である。図5(d)は、コイル17に結束部16を形成した状態を示す図である。
【0043】
図5(b)に示すように、第2の実施の形態で用いるボビン27は、図5(a)に示す鍔部21、図1(b)に示す胴部7等からなる。鍔部21は、平板状の部材であり、中央に孔25を有する。鍔部21は、切欠き部として、胴部7と対向する面26にくぼみ部23を有する。
【0044】
鍔部21のくぼみ部23は、胴部7のくぼみ部9に対応する位置から、鍔部21の外縁部24に向けて放射状に配置される。くぼみ部23の幅は、くぼみ部9の幅と同等か、それ以上とすることが望ましい。くぼみ部23、くぼみ部9は、それぞれ、鍔部21、胴部7の3箇所に設けられ、ほぼ等間隔に配置される。
【0045】
図5(b)に示すボビン27では、鍔部21が、胴部7の両端面19に、ネジ等で固定される。鍔部21は、胴部7に対して、ネジ等の取り付け・取り外しにより着脱可能である。鍔部21と胴部7とは、孔25と孔10とが連通し、かつ、くぼみ部23の端部28付近がくぼみ部9と連通するよう固定される。
【0046】
ボビン27を構成する鍔部21、胴部7は、例えば、金属製や、プラスチック等の合成樹脂製とする。好適な金属や合成樹脂の詳細は、第1の実施の形態のボビン11と同様である。
【0047】
次に、図5(b)に示すボビン27を用いて光ファイバコイルを形成する方法について説明する。
光ファイバコイルを形成するには、まず、胴部7の両端面19にネジ等を用いて鍔部21を固定し、図5(b)に示すボビン27を組み立てる。そして、図5(b)に示すボビン27の胴部7に所定の条長の光ファイバ13を巻きつけ、図5(c)に示すようにコイル17を作製する。
【0048】
次に、コイル17を結束するため、図5(c)に示すように、結束部材である紐15を、ボビン27の胴部7のくぼみ部9および鍔部21のくぼみ部23に通し、くぼみ部9およびくぼみ部23に沿って配置する。その後、図5(d)に示すように、紐15を、コイル17の外周面20に沿うように配置し、両端部を結んで結束部16を形成する。
【0049】
コイル17を結束した後、ボビン27をコイル17から取り外す。ボビン27をコイル17から取り外すには、まず、図5(d)に示す状態のボビン27の鍔部21と胴部7との固定を解除する。そして、胴部7の両端面19から鍔部21を取り外す。その後、コイル17から胴部7を取り外す。
【0050】
このように、第2の実施の形態では、ボビン27を光ファイバ13のコイル17から取り外す前に、結束部材である紐15を用いてコイル17を結束する。そのため、コイルをボビンから取り外した後に紐で結束する従来の方法と比較して、第1の実施の形態と同様に、束状のコイル17を乱すことなくボビン27から取り外すことができる。また、ボビン27を取り外した後にもコイル17を良好な状態で維持できる。
【0051】
なお、第2の実施の形態では、鍔部21のくぼみ部23、胴部7のくぼみ部9をそれぞれ3箇所にほぼ等間隔で配置して、コイル17の3箇所に結束部16を形成したが、結束部16の形成位置、形成数はこれに限らない。結束部16は、2箇所以上に形成するのが望ましい。鍔部21のくぼみ部23、胴部7のくぼみ部9の数および位置は、所定の位置に必要数の結束部16が形成できるように設定される。
第2の実施の形態のように切込み部3の代わりにくぼみ部23を設けることで、鍔部21の強度が高くなり、鍔部21の変形を抑制できる。
【0052】
次に、第3の実施の形態について詳細に説明する。
図6は、第3の実施の形態におけるボビン45の概要を示す図である。図6(a)は、鍔部31の平面図である。図6(b)は、胴部37の平面図である。図6(c)は、ボビン45の立面図である。
【0053】
図6に示すように、ボビン45は、鍔部31、胴部37等からなる。鍔部31は、平板状の部材であり、中央に孔35を有する。鍔部31は、切欠き部として、部材の厚さを貫通する切込み部33を有する。
【0054】
胴部37は、円筒状の部材であり、中央に孔41を有する。胴部37は、外周面38に、軸方向に配置された帯状の凹部47を有する。凹部47は、例えば、凹みの底部が胴部37の孔41に連通するものとする。凹部47には、胴部37の本体40に対して着脱可能な分割部39が設置される。分割部39は、胴部37の本体40に、ネジ等で固定される。分割部39は、胴部37の本体40に対して、ネジ等の取り付け・取り外しにより着脱可能である。
【0055】
鍔部31の切込み部33は、胴部37の凹部47に対応する位置から、鍔部31の外縁部34に向けて放射状に配置される。切込み部33は、胴部37の凹部47に対応する位置に分割部通し部43を有する。分割部通し部43は、胴部37と鍔部31とを一体化した状態で、分割部39を通すことができるような形状とする。切込み部33、凹部47は、それぞれ、鍔部31、胴部37の1箇所に設けられる。
【0056】
図6(c)に示すボビン45では、鍔部31が、胴部37の両端面42に、ネジ等で固定される。鍔部31は、胴部37に対して、ネジ等の取り付け・取り外しにより着脱可能である。鍔部31と胴部37とは、孔35と孔41とが連通し、かつ、切込み部33の分割部通し部43が分割部39と重なるように固定される。
【0057】
ボビン45を構成する鍔部31、胴部37は、例えば、金属製や、プラスチック等の合成樹脂製とする。好適な金属や合成樹脂の詳細は、第1の実施の形態のボビン11と同様である。
【0058】
次に、図6に示すボビン45を用いて光ファイバコイルを形成する方法について説明する。図7は、第3の実施の形態におけるコイル17の形成方法の概要を示す図である。図7(a)は、光ファイバ13を巻きつけた状態のボビン45の平面図である。図7(b)は、結束部16を形成した状態のボビン45の平面図である。図7(c)は、結束部16を形成した状態のボビン45の立面図である。図7(c)は、図7(b)に示す矢印Eの方向から見た図である。
【0059】
光ファイバコイルを形成するには、まず、胴部37の両端面19にネジ等を用いて鍔部31を固定し、図6(c)に示すボビン45を組み立てる。そして、図6(c)に示すボビン45の胴部37に所定の条長の光ファイバ13を巻きつけ、図7(a)に示すように、コイル17を作製する。
【0060】
光ファイバ13をボビン45の胴部37に巻きつけた後、コイル17を結束するための結束準備を行なう。結束準備では、まず、図7(a)に示す状態から、分割部39と胴部37の本体40との固定を解除する。そして、分割部39をボビン45の中心軸方向に沿って移動させ、鍔部31の切込み部33の分割部通し部43を介してボビン45の外部に分割部39を取り出す。これにより、図7(b)に示すように、胴部37において凹部47が露出する。
【0061】
コイル17を結束するには、図7(b)、図7(c)に示すように、結束部材である紐15を、ボビン45の胴部37の凹部47および鍔部31の切込み部33の分割部通し部43に通す。そして、紐15を凹部47および切込み部33に沿って配置する。次に、紐15を、コイル17の外周面20に沿うように配置し、両端部を結んで結束部16を形成する。
【0062】
コイル17を結束した後、ボビン45をコイル17から取り外す。ボビン45をコイル17から取り外すには、まず、図7(b)、図7(c)に示す状態のボビン45の鍔部31と胴部37との固定を解除する。次に、胴部37の両端面42から鍔部31を取り外す。その後、コイル17から胴部37を取り外す。
【0063】
このように、第3の実施の形態では、ボビン45を光ファイバ13のコイル17から取り外す前に、結束部材である紐15を用いてコイル17を結束する。そのため、コイルをボビンから取り外した後に紐で結束する従来の方法と比較して、第1の実施の形態と同様に、束状のコイル17を乱すことなくボビン45から取り外すことができる。また、ボビン45を取り外した後にもコイル17を良好な状態で維持できる。
【0064】
なお、第3の実施の形態では、鍔部31の切込み部33、胴部37の凹部47をそれぞれ1箇所に配置して、コイル17の1箇所に結束部16を形成したが、結束部16の形成位置、形成数はこれに限らない。鍔部31の切込み部33、胴部37の凹部47の数および位置は、所定の位置に必要数の結束部16が形成できるように設定される。また、切込み部33の形状は、図6および図7に示したものに限らない。切込み部33は、コイル17の結束準備の際に、分割部39をボビン45の外部に取り出すことができ、且つ、コイル17を結束する際に、紐15をコイル17に沿って配置できるような形状であればよい。
【0065】
次に、第4の実施の形態について詳細に説明する。
図8は、第4の実施の形態におけるボビン61の概要を示す図である。図8(a)は、鍔部51の平面図である。図8(b)は、胴部55の平面図である。図8(c)は、ボビン61の立面図である。
【0066】
図8に示すように、ボビン61は、鍔部51、胴部55等からなる。鍔部51は、平板状の部材であり、中央に孔53を有する。鍔部51は、切欠き部として、部材の厚さを貫通する切込み部65を有する。
【0067】
胴部55は、円筒状の部材であり、中央に孔59を有する。胴部55は、外周面58に、軸方向に配置された帯状の凹部63を有する。凹部63は、例えば、凹みの底部が孔59に連通するものとする。凹部63には、胴部55の本体60に対して着脱可能な分割部57が設置される。分割部57は、胴部55の本体60に、ネジ等で固定される。分割部57は、胴部55の本体60に対して、ネジ等の取り付け・取り外しにより着脱可能である。
【0068】
鍔部51の切込み部65は、胴部55の凹部63に対応する位置から、鍔部51の外縁部54に向けて放射状に配置される。切込み部65は、胴部55と鍔部51とを一体化した状態で、分割部57を通すことができるような形状とする。切込み部65、凹部63は、それぞれ、鍔部51、胴部55の2箇所に設けられる。
【0069】
鍔部51は、胴部55の両端面67に、ネジ等で固定される。鍔部51は、胴部55に対して、ネジ等の取り付け・取り外しにより着脱可能である。鍔部51と胴部55とは、凹部53により形成される孔54と孔59とが連通し、かつ、切込み部65が分割部57と重なるように固定される。
【0070】
ボビン61を構成する鍔部51、胴部55は、例えば、金属製や、プラスチック等の合成樹脂製とする。好適な金属や合成樹脂の詳細は、第1の実施の形態のボビン11と同様である。
【0071】
次に、図8に示すボビン61を用いて光ファイバコイルを形成する方法について説明する。図9は、第4の実施の形態におけるコイル17の形成方法の概要を示す図である。図9(a)は、光ファイバ13を巻きつけた状態のボビン61の平面図である。図9(b)は、結束部16を形成した状態のボビン61の平面図である。図9(c)は、結束部16を形成した状態のボビン61の立面図である。図9(c)は、図9(b)に示す矢印Fの方向から見た図である。
【0072】
光ファイバコイルを形成するには、まず、胴部55の両端面67に鍔部51を固定して、図8(c)に示すボビン61を組み立てる。そして、図8(c)に示すボビン61の胴部55に所定の条長の光ファイバ13を巻きつけ、図9(a)に示すコイル17を作製する。
【0073】
光ファイバ13をボビン61の胴部55に巻きつけた後、コイル17を結束するための結束準備を行なう。結束準備では、まず、図9(a)に示す状態から、分割部57と胴部55の本体60との固定を解除する。そして、分割部57をボビン61の中心軸方向に沿って移動させ、鍔部61の切込み部65を介してボビン61の外部に分割部57を取り出す。これにより、図9(b)に示すように、胴部5において凹部63が露出する。
【0074】
コイル17を結束するには、図9(b)、図9(c)に示すように、結束部材である紐15を、ボビン61の胴部55の凹部63および鍔部51の切込み部65に通す。そして、紐15を凹部63および切込み部65に沿って配置する。次に、紐15を、コイル17の外周面20に沿うように配置し、両端部を結んで結束部16を形成する。
【0075】
コイル17を結束した後、ボビン61をコイル17から取り外す。ボビン61をコイル17から取り外すには、まず、図9(b)、図9(c)に示す状態のボビン61の鍔部51と胴部55との固定を解除する。次に、胴部55の両端面67から鍔部51を取り外す。その後、コイル17から胴部55を取り外す。
【0076】
このように、第4の実施の形態では、ボビン61を光ファイバ13のコイル17から取り外す前に、結束部材である紐15を用いてコイル17を結束する。そのため、コイルをボビンから取り外した後に紐で結束する従来の方法と比較して、第1の実施の形態と同様に、束状のコイル17を乱すことなくボビン61から取り外すことができる。また、ボビン61を取り外した後にもコイル17を良好な状態で維持できる。
【0077】
なお、第4の実施の形態では、鍔部51の切込み部65、胴部55の凹部63をそれぞれ2箇所に配置して、コイル17の2箇所に結束部16を形成したが、結束部16の形成位置、形成数はこれに限らない。鍔部51の切込み部65、胴部55の凹部63の数および位置は、所定の位置に必要数の結束部16が形成できるように設定される。また、切込み部65の形状は、図8および図9に示したものに限らない。切込み部65は、コイル17の結束準備の際に、分割部57をボビン61の外部に取り出すことができ、且つ、コイル17を結束する際に、紐15をコイル17に沿って配置できるような形状であればよい。
【0078】
第2から第4の実施の形態で述べたコイル17の形成方法では、第1の実施の形態で述べた形成方法と同様に、一例として、光ファイバの直径が75μmの光ファイバ13を用い、外径25mm、内径15mm、高さ5mmの大きさの束取り型のコイル17が作製可能である。
第2から第4の実施の形態で述べたコイル17の形成方法は、紐15による結束部16の形成により、光ファイバ13の乱れを抑制し、束取りがしやすくなる観点から、内径12〜150mmの束取り型コイル作製に用いると、特に有効である。
【0079】
第2から第4の実施の形態の方法によって形成されたコイルの用途としては、第1の実施の形態の方法によって形成されたコイルと同様に、波長変換器、光増幅器、SC光源、分散補償器、パルス圧縮機等用のモジュールが想定される。
【0080】
第1から第4の実施の形態によれば、樹脂製の接着剤を用いる従来の方法と比較して、大掛かりな装置が不要であり、樹脂の清掃等に関わる装置の維持管理の手間がかからない。第1から第4の実施の形態で述べた光ファイバコイルの形成方法は、樹脂製の接着剤やボビンによる押さえつけによって光ファイバ内に応力が生じることがないので、光ファイバの特性劣化を抑制することができる。
【0081】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0082】
1、21、31、51………鍔部
3、3a、3b、3c、33、65………切込み部
4、24、34、54………外縁部
7、37、55………胴部
8、38、58………外周面
9、23………くぼみ部
11、27、45、61………ボビン
13………光ファイバ
15………紐
16………結束部
17………コイル
19、42、67………端面
20………外周面
26………面
39、57………分割部
40、60………本体
43………分割部通し部
47、63………凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバコイルの作製に用いるボビンであって、
外周面に、軸方向に配置された帯状の凹部を有する円筒形の胴部と、
前記胴部の端面に対して着脱可能であり、前記凹部に対応する位置から外縁部に向けて放射状に配置された切欠き部を有する平板状の鍔部と、
を具備し、
前記胴部の両端面に前記鍔部を固定した状態で、前記胴部に光ファイバを巻きつけて光ファイバコイルを作製し、前記凹部および前記切欠き部に沿って結束部材を配置して前記光ファイバコイルを結束した後、前記鍔部と前記胴部との固定を解除して、前記鍔部および前記胴部を前記光ファイバコイルから取り外すことが可能なことを特徴とするボビン。
【請求項2】
前記凹部が、くぼみ部であることを特徴とする請求項1記載のボビン。
【請求項3】
前記切欠き部が、前記鍔部の厚さを貫通する切込み部であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のボビン。
【請求項4】
前記切欠き部が、前記胴部と対向する面に設けられたくぼみ部であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のボビン。
【請求項5】
前記凹部に、前記胴部の本体に対して着脱可能な分割部が設置されることを特徴とする請求項1記載のボビン。
【請求項6】
前記切欠き部が、前記鍔部の厚さを貫通する切込み部であり、
前記胴部の両端面に前記鍔部を固定した状態で、前記切込み部を介して前記胴部から前記分割部を取り外すことを特徴とする請求項5記載のボビン。
【請求項7】
外周面に、軸方向に配置された帯状の凹部を有する円筒形の胴部と、
前記胴部の端面に対して着脱可能であり、前記凹部に対応する位置から外縁部に向けて放射状に配置された切欠き部を有する平板状の鍔部と、
を具備するボビンを用い、
前記胴部の両端面に前記鍔部を固定した状態で、前記胴部に光ファイバを巻きつけて光ファイバコイルを作製する工程と、
前記凹部および前記切欠き部に沿って結束部材を配置し、前記光ファイバコイルを結束する工程と、
前記鍔部と前記胴部との固定を解除して、前記鍔部および前記胴部を前記光ファイバコイルから取り外す工程と、
を具備することを特徴とする光ファイバコイルの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−44835(P2013−44835A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181143(P2011−181143)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】