説明

ボビンホルダー

本発明は、糸の巻き取りのためのボビンホルダーであって、片持ち支持式のボビンスピンドル(1)にボビン(2)が被せ嵌められるようになっている形式のものに関する。巻き取り行程の開始時に糸をボビンスピンドル(1)の周囲で捕捉して固定するために、自由な被せ嵌め端部(10)に糸捕捉装置(6)及び糸クランピング手段(7)が設けられている。糸端部の確実なクランピング固定、並びにボビンスピンドルの取り外しの際の糸端部の自動的な解放を可能にするために、糸クランピング手段が、本発明によれば中空円筒状のクランピングブッシュ(9)によって形成され、クランピングブッシュが、クランピングブッシュと捕捉突起部(8)との間に、ほぼ軸線方向に向けられていて被せ嵌め端部(10)に向かって開くクランピングスリット(12)を形成するように、外側テーパー部(11)でもって、捕捉突起部(8)により画定された内径に適合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸の巻き取りのために用いられるボビンホルダーであって、ボビンホルダーが、ボビンの被せ嵌めのために片持ち支持されるボビンスピンドルを備えており、ボビンスピンドルが、自由な被せ嵌め端部に糸捕捉装置及び糸クランピング手段を有しており、糸捕捉装置が、軸線方向に突出する複数の捕捉突起部によって形成されており、捕捉突起部が、巻き取り行程の開始時の糸のクランピング固定のために糸クランピング手段と協働するようになっている形式のものに関する。
【0002】
合成繊維から成る糸を連続的に巻き取る場合には、例えば紡糸機等において知られるように、チーズやパッケージ等(以下、単にチーズと称する)が、巻取機(ワインダー)の2つのボビンホルダーを交互に用いて巻成(巻き取り成形)されるようになっており、両方のボビンホルダーは、可動の1つの支持体に配置されていて、巻き取り部位(巻成部位)と交換部位とに交互に移されるようになっている。糸の連続的な巻き取りに際して、複数のボビンホルダーのうちの一方のボビンホルダーにおいてチーズを完全に巻成した後に、糸は、一方のボビンホルダーの完成したチーズ(巻成体又は糸巻き)から他方(第2)のボビンホルダーの空のボビン(ボビンスリーブ又は糸巻管)に引き渡されるようになっている。このような処置に伴って、糸は、空のボビン若しくはボビンホルダーにおける巻き取りのために、捕らえられ、かつ切断され若しくは破断される。これにより発生する自由な糸端部(糸始端)は、新たな巻き取り過程が妨げられないため又は損なわれないために、ボビン若しくはボビンホルダーにクランピングされ又は締め付け固定されねばならない。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10333273A1号明細書により公知のボビンホルダーにおいては、糸端部は、ボビンのすぐ横でボビンスピンドルに固定されるようになっている。このために、ボビンスピンドルは、糸捕捉装置及び糸クランピング手段(糸締め付け手段)を有している。糸クランピング手段は、ボビン又はボビンスピンドルの半径方向に運動可能なクランピング部材によって形成されており、クランピング部材は、遠心力によりボビンスピンドルに対してクランピング位置に保持されて、捕捉要素と協働して糸をクランピング(固定)するようになっている。これにより、成形加工されていない平滑なボビンスリーブを、チーズの保持又は受容のために用いることができる。
【0004】
しかしながら、上述のシステムには構造的な欠点があり、つまり、糸捕捉装置内に設けられ若しくは糸クランピング部材として形成されてボビンスピンドルに対して可動である構成部分は、絶えず摩擦にさらされて摩滅されることになる。更に、例えば避け難い糸の摩耗により発生する汚れが、クランピング部材の遠心力による運動を妨げてしまうことにもなる。従って、糸のクランピング不足に起因する捕捉エラーが発生することになる。
【0005】
糸をボビンの外側で直接にボビンスピンドルに固定するために、別のシステムが、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第2344377A1号明細書又はドイツ連邦共和国実用新案出願公開第9301313U1号明細書により公知である。該公知のシステム、つまりボビンホルダーの場合には、ボビンスピンドルの外周に、捕捉要素及びクランピング要素により半径方向の環状のクランピング間隙が形成されている。この場合には、糸は捕捉の後にクランピング間隙内に引き込まれて固定される。巻き取り過程の終了に際してチーズをボビンスピンドルから押し外すために、捕捉要素若しくはクランピング要素は、ボビンスピンドルの外周に可動に案内されており、糸が、捕捉要素若しくはクランピング要素の移動によりクランピング間隙から解放されるようになっている。この場合にも、捕捉装置及び糸クランピング手段の可動の構成部分に起因する前述の問題が発生している。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10235209A1号明細書により公知のボビンホルダーにおいては、捕捉装置は、案内スリット付きの捕捉ブッシュ及び、捕捉スリーブに対して同軸に配置された案内スリット付きの案内ブッシュを用いて形成されている。捕捉ブッシュと案内ブッシュとの間には、クランピング装置が設けられており、クランピング装置は弾性的なリングによって形成されており、リングは、両方のブッシュ間にクランピング間隙を形成するために、両方のブッシュ間に配置されている。この場合には、糸の固定は、案内ブッシュと弾性的なリング、例えばエラストマリングとの間で行われる。このような弾性的なリングから成るクランピング部材にも、構造的な欠点があり、つまり、稼動時間の経過に伴って弾性的なクランピング部材の老化に基づき、糸の固定又はクランピングのための力が減少されてしまっている。
【0007】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式のボビンスピンドルに改良を加えて、糸捕捉装置と糸クランピング手段とが互いに協働して、一方ではボビンスピンドルにおける糸の確実な固定を保証し、かつ他方ではスピンドルからのチーズの支障のない取り外しを保証するようにすることである。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明によれば、糸クランピング手段が、中空円筒状のクランピングブッシュによって形成されており、クランピングブッシュが、クランピングブッシュと捕捉突起部との間に、ほぼ軸線方向に向けられていて被せ嵌め端部に向かって開くクランピングスリットを形成するように、外側テーパー部でもって、捕捉突起部により画定された内径に適合されており、つまり、クランピングブッシュが、クランピングブッシュの外周に設けられた外側テーパー部(アウターコーン[outer cone])でもって、捕捉突起部により画定された内径に対応して次のように成形され、即ち、クランピングブッシュと捕捉突起部との間に、ほぼボビンスピンドルの軸線方向に向けられていて被せ嵌め端部(ボビンがスリップオン[slip-on]される、即ち被せ嵌められる側の端部、自由な端部)に向かって開くクランピングスリットを形成している。
【0009】
スピンドルに不動(相対運動不能)に組み付けられる構成部分間に形成される固定的なクランピングスリットを糸固定のために用いる構成にもかかわらず、クランピングスリットを軸線方向に向けて配置することにより、チーズの取り外しの際の糸の解放が可能となっている。つまり、チーズの取り外しに際して、固定されている糸端部が、被せ嵌め端部に向かって開くクランピングスリットから自動的に引き出されるようになっている。
【0010】
更なる利点として、クランピングスリットを捕捉突起部の真下(半径方向内側)に形成してあることにより、極めて短い糸端部しか発生していない。捕捉突起部とクランピングブッシュとの間のクランピングスリット内への糸の引き込みにより、糸の直接的な固定を達成しており、つまり、クランピングスリット内への糸の引き込みと同時に糸の固定を行うようになっており、このような直接的な糸固定は、糸における糸張力の迅速な形成につながっている。これにより、糸の切断が促進され、その結果、発生する糸端部が著しく短くされる。
【0011】
ボビンスピンドルにおける不釣り合いを生ぜしめないために、本発明の有利な形態によれば、クランピングブッシュは、環状の外側テーパー部を有し、つまり、クランピングブッシュの外周にその全周にわたって形成されるテーパー部(外周面円錐部)を有しており、若しくは、周囲に均一に分配して形成された複数のテーパー部セグメント(周方向の等間隔の所定の区分に設けられ軸線方向に延びるテーパー部)を有し、つまり、クランピングブッシュの周囲の周方向で等間隔の複数部位に設けられたテーパー部セグメント(部分錐面部若しくはセグメントテーパー部又はコーンセグメント[cone segment])を有しており、これにより各捕捉突起部は複数のクランピングスリットのそれぞれ1つに配設されており、つまり、各捕捉突起部は、環状の外側テーパー部若しくは複数のテーパー部セグメントと一緒に各クランピングスリットを形成している。
【0012】
本発明の形態によれば、クランピングブッシュと捕捉突起部との間のクランピングスリットは、好ましくは1°〜30°の範囲の開き角のV字形の開口断面で形成されている。このような構成により、一方では糸の迅速かつ確実な固定が達成され、かつ他方ではスピンドルからのチーズの取り外しの際の解放が達成される。
【0013】
特に糸の解放及び固定は、クランピングスリットが、クランピングブッシュに設けられた互いに異なる勾配角度の2つの外側テーパー部を用いて、つまり、周囲に軸線方向で連続して設けられた互いに異なる勾配の2つの外側テーパー部を用いて形成されることにより、改善される。この場合に、クランピングスリットの入口ゾーンの開き角が、クランピングスリットのクランピングゾーンの開き角よりも大きくなっている。
【0014】
巻き取り行程の開始時における完全なチーズ若しくは手動案内式のピストル形吸引器(サクションガン[suction gun])からの糸の受け取りのために、糸は、糸捕捉装置の捕捉突起部によって捕捉されねばならない。この場合の糸案内が、クランピングブッシュに、捕捉突起部の端部へ向かう円筒状の案内部分を設けることにより改善されるようになっており、この場合に、案内部分は、捕捉突起部の下側(半径方向内側)から捕捉突起部の長さを超えて延びており、つまり、換言すれば、クランピングブッシュの外周のテーパー部から延びていて、更に捕捉突起部の自由な端部を超えて延びている。このような構成により、クランピングブッシュの案内部の外周面に沿って案内された糸が、適切な案内手段に基づき容易にかつ確実に捕捉突起部の下側へ案内されて捕捉されるようになっている。
【0015】
本発明に係るボビンホルダーは、有利には、複数の糸を互いに並行して巻き取るためにも用いられるものである。この場合に、本発明の有利な形態によれば、複数のボビンが、1つのボビンスピンドルに順次に一列に被せ嵌められるようになっており、ボビンスピンドルは、ボビンスピンドルの周囲に、軸線方向で互いにずらして配置された複数の糸捕捉装置及び糸クランピング手段を有している。この場合に各糸クランピング手段は、それぞれ1つのクランピングブッシュによって形成されており、クランピングブッシュがそれぞれ各糸捕捉装置の複数の捕捉突起部と協働するようになっており、つまり、捕捉突起部と一緒にクランピングスリットを形成するようになっている。
【0016】
本発明の有利な形態によれば、ボビンスピンドルの自由な端部に設けられるクランピングブッシュは、カップ状に形成され、即ち換言すれば、有底円筒体として形成されていて、端面壁でもって、つまり底部でもってボビンスピンドルに取り付けられる、例えばねじにより結合(固定)されるようになっている。外側テーパー部は、クランピングブッシュの開いた側の端部(開口側の端部、即ち底部の側とは逆の側の端部)に形成されている。ボビンスピンドルは、被せ嵌め端部とは反対側の駆動端部で電動モータに結合されるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るボビンホルダーの第1の実施形態の概略的な平面図である。
【図2】図1の実施形態のボビンホルダーの自由な端部の概略的な平面図である。
【図3】図1及び図2の実施形態のクランピングスリットの概略的な断面図である。
【図4】本発明に係るボビンホルダーのクランピングブッシュの別の実施形態の概略的な平面図である。
【図5】別の実施形態のボビンホルダーの自由な端部に設けられたクランピングスリットの概略的な断面図である。
【図6】本発明に係るボビンホルダーの更に別の実施形態のボビンホルダーの概略的な平面図である。
【0018】
図1には、本発明に係るボビンホルダーの第1の実施形態が概略的に示してある。ボビンホルダーは、片持ち支持式のボビンスピンドル1を有しており、ボビンスピンドル1は、その外周にボビン2を保持するようになっている。ボビン2は、ボビンスピンドル1上に、ボビンスピンドル1に設けられたストッパー5まで被せ嵌められて、ロック装置又はクランプ装置(図示省略)によって、ボビンスピンドル1の外周面に固定されるようになっている。ボビンスピンドル1は、駆動端部16でもって電動モータ3に連結されている。ボビンスピンドル1は、相対する被せ嵌め端部10に、糸捕捉装置6及び糸クランピング手段7を有している。
【0019】
ボビンホルダーは、一般的に、連続的に供給される糸をボビンの外周に巻き取ってチーズを巻成(形成)するために、巻き取り機で用いられるものである。この種の巻き取り機は、国際公開第2007/073860A1号パンフレットにより公知である。公知の巻き取り機においては、相互の間隔を置いて配置された2つのボビンホルダーが、1つの回転板に取り付けられており、このような構成により、ボビンホルダーは、糸の巻き取りのための巻き取り領域と完全に巻成されたチーズ(完全なチーズ、つまり満管のボビン)の取り外しのための交換領域とへ互いに交互に案内されるようになっている。ボビンホルダーの交換に際して、供給されている糸は、完全に巻成されたチーズから空のボビンへ引き渡される。
【0020】
糸の引き渡しのために、ボビンホルダーは、図1に示してあるように、自由端である被せ嵌め端部10に、糸捕捉装置6及び糸クランピング手段7を有している。糸捕捉装置6及び糸クランピング手段7の詳細を、図2に基づき説明する。
【0021】
図2には、ボビンスピンドル1の被せ嵌め端部10が拡大して示してある。
【0022】
糸捕捉装置6は、図示の実施形態では、軸線方向に突出する複数の捕捉突起部8によって形成されている。ボビンスピンドル1の周囲には、ボビンスピンドル1の周囲に均一に分配された全体で4つの捕捉突起部8が形成されており、図面には図面で見える捕捉突起8のみが描かれている。捕捉突起部8は、直接にボビンスピンドル1の端面に配置されており、この場合に捕捉突起部8により画定される外径は、ボビンスピンドル1の外径と同じである。捕捉突起部8は、ボビンスピンドル1の回転方向前方へ傾けられており、これにより捕捉突起部8とボビンスピンドル1の端面との間には捕捉溝17が形成されている。各捕捉突起部8は、ボビンスピンドル1に互いに同一に形成されている。
【0023】
付言すれば、ボビンスピンドル1は複数の構成部分によって形成されているものの、このことについての詳細はここでは省略してある。ボビンスピンドル1は、ボビン2をボビンスピンドル1の周囲に固定するために、ロック装置又はクランプ装置を保持している。更に、ボビンスピンドル1の内部には駆動軸が設けられており、該駆動軸は、電動モータに直接に結合されている。捕捉突起部8は、ブッシュに形成されており、該ブッシュは、被せ嵌め端部10でボビンスピンドル1のほかの部分に固定的に結合されている。
【0024】
捕捉突起部8は、その内側でもってクランピングブッシュ9を取り囲んでおり、クランピングブッシュ9は中空円筒状に形成されていて、ボビンスピンドル1の被せ嵌め端部10に固定的に結合されている。クランピングブッシュ9は、ボビンスピンドル1の端面に直接に接続されており、外側テーパー部11.1が、外側テーパー部11.1と捕捉突起部8との間にクランピングスリット12を形成するように、捕捉突起部8により画定された内径に適合されている。外側テーパー部11.1は、クランピングブッシュ9の端部に全周にわたって形成されていて、従って各捕捉突起部8に対して、各捕捉突起部8の内側に形成されるクランピングスリット12を画成している。このような構成により、図示の実施形態では、4つの捕捉突起部8が、対応する4つのクランピングスリット12を形成して配置されている。
【0025】
更に図3に、捕捉突起部8とクランピングブッシュ9との間のクランピングスリット12の詳細が示してある。図3は、捕捉突起部8及びクランピングスリット12の拡大断面図である。クランピングスリット12は、図示の実施形態ではクランピングブッシュ9の相互に移行し合う、つまり互いにつながっている2つの外側テーパー部11.1,11.2によって構成されている。クランピングスリット12の第1の部分は、外側テーパー部11.1により画定される開き角α1の開口断面を有していて、ここではクランピングゾーンと称される。クランピングスリットの、第1の部分に直接に続く第2の部分(領域)は、外側テーパー部11.2によって画成されていて、開き角α2の極めて大きな開口断面を有している。クランピングスリット12の第2の部分は、入口ゾーンと称される。クランピングスリット12は、ボビンスピンドル1の軸線方向に延びていて、被せ嵌め端部10に向かって開いている。クランピングスリット12のこのような構成形態は、満管のボビン、つまり完成したチーズをボビンスピンドル1から取り外す際に、クランピングスリット12内に固定されている糸端部を自動的に解放するために特に有利である。クランピングスリット12の軸線方向の配置構成もクランピングスリット12の入口ゾーンの大きな開き角α2も、チーズの取り外しの際の糸端部の解放を促進するものである。捕捉突起部8による捕捉の後の糸の迅速かつ確実な固定は、特にクランピングスリット12の、小さい方の開き角α1を有するクランピングゾーンによって保証されるようになっている。開き角α1は、有利には1°〜15°の範囲である。これに対して、入口ゾーンの開き角α2は、10°〜30°の範囲である。
【0026】
図2から見て取れるように、クランピングブッシュ9はカップ状に形成されており、外側テーパー部11.1はクランピングブッシュ9の自由な端部に、つまり固定されていない端部に配置されている。クランピングブッシュ9は、端面壁15によって直接にボビンスピンドル1にねじ結合され、つまり固定されている。この場合に、クランピングブッシュ9は、捕捉突起部8の内側から捕捉突起部8の自由な端部を超えて延びる案内部分14を形成している。クランピングブッシュ9の案内部分14は、外側テーパー部11.1,11.2に基づき規定されていて捕捉突起部8の内面領域よりも小さい外径を有している。このような構成により、クランピングブッシュ9の案内部分14は、糸の案内のために有利に用いられて、糸を案内手段により捕捉突起部8の内側(下側)へ案内するようになっている。
【0027】
案内手段は、巻き取り機において例えば国際公開第2007/073860A1号パンフレットにより公知である。該パンフレットに、案内手段の機能及び構造が開示されている。
【0028】
図1に示す実施形態において、糸捕捉装置6及び糸クランピング手段7は、ボビンスピンドル1の被せ嵌め端部10に回転対称に形成されている。このような構成により、ボビンスピンドル1における不釣り合いが避けられ、その結果、上記構成のボビンスピンドルは高い巻き取り速度に特に適している。不釣り合いを避けるために、糸捕捉装置6の4つの捕捉突起部8は、ボビンスピンドル1の周囲に均一に分配して形成されている。
【0029】
クランピングブッシュ9の、クランピングスリット12を形成するための外側テーパー部は、クランピングブッシュ9の周囲にセグメント状に形成されていてもよい。このような構成のクランピングブッシュが、図4に例として概略的に示してある。
【0030】
図4に示してあるクランピングブッシュ9においては、クランピングブッシュ9の端部に複数のテーパー部セグメント13が設けられており、テーパー部セグメント13は、クランピングブッシュ9の周囲に均一に分配されている。テーパー部セグメント13の数及び位置は、糸捕捉装置6の構成部分としてボビンスピンドル1の被せ嵌め端部10に形成された捕捉突起部8の数及び位置と一致している。このような構成により、各捕捉突起部8に対してテーパー部セグメント13を適切に成形することに基づき、各クランピングスリット12が形成されるようになっている。
【0031】
図5には、図4に示すクランピングブッシュ9により形成されるクランピングスリット12が示してある。該実施形態においては、クランピングスリット12は、1つのテーパー部11によって形成されており、つまり、1つのテーパー部11により一定の1つの開き角αが画定されている。開き角αは、チーズに巻かれるべき糸の種類に対応して1°〜30°の範囲である。
【0032】
図1に示す実施形態で述べた糸捕捉装置6及び糸クランピング手段7は、原理的には、糸をボビンスピンドル1の任意の部位で捕捉しかつ固定するためにも適しているものである。図6に示してある実施形態のボビンホルダーにおいては、ボビンスピンドル1は、複数のボビン2.1,2.2を軸線方向に並べて保持していて、各ボビン2.1,2.2にそれぞれ1つの糸を巻き取ってチーズを巻成するものである。ボビンスピンドル1はその駆動端部16でもって電動モータ3に結合されている。ボビンスピンドル1の周囲において、ボビン2.1,2.2間の領域にも、被せ嵌め端部10にも糸捕捉装置6.1,6.2及び糸クランピング手段7.1,7.2が配置されている。この場合に、糸捕捉装置6.1,6.2及び糸クランピング手段7.1,7.2は、前に説明してあるように、それぞれ複数の捕捉突起部及び1つのクランピングブッシュによって形成されている。この場合に、ボビンスピンドルの中央の領域のクランピングブッシュは、一貫して、つまり全長にわたって中空円筒状に形成されている。
【0033】
クランピングスリット12の構成及び機能は、前述の実施形態のものと同じであるので、ここではその説明は省略してある。
【0034】
本発明に係るボビンホルダーは、特に、巻き取り行程の開始時に糸をボビンスピンドルの周囲に固定するために適している。従って、捕捉用ノッチ等を有さない、つまり加工成形されていない平滑なボビンが用いられるようになっている。
【符号の説明】
【0035】
1 ボビンスピンドル、 2,2.1,2.2 ボビン、 3 電動モータ、 4 ボビン、 5 ストッパー、 6,6.1,6.2 糸捕捉装置、 7,7.1,7.2 糸クランピング手段、 8 捕捉突起部、 9 クランピングブッシュ、 10 被せ嵌め端部、 11,11.1,11.2 外側テーパー部、 12 クランピングスリット、 13 テーパー部セグメント又はセグメント状外側テーパー部、 14 案内部分、 15 端面壁、 16 駆動端部、 17 捕捉溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸の巻き取りのためのボビンホルダーであって、ボビン(2)の被せ嵌めのために片持ち支持されるボビンスピンドル(1)を備えており、該ボビンスピンドル(1)が、自由な被せ嵌め端部(10)に糸捕捉装置(6)及び糸クランピング手段(7)を有しており、前記糸捕捉装置(6)が、軸線方向に突出する複数の捕捉突起部(8)によって形成されており、該捕捉突起部(8)が、巻き取り行程の開始時の糸のクランピング固定のために前記糸クランピング手段(7)と協働するようになっている形式のものにおいて、
前記糸クランピング手段(7)が、中空円筒状のクランピングブッシュ(9)によって形成されており、前記クランピングブッシュ(9)が、該クランピングブッシュ(9)と前記捕捉突起部(8)との間に、ほぼ軸線方向に向けられていて前記被せ嵌め端部(10)に向かって開くクランピングスリット(12)を形成するように、外側テーパー部(11)でもって、前記捕捉突起部(8)により画定された内径に適合されていることを特徴とする、糸の巻き取りのためのボビンホルダー。
【請求項2】
クランピングブッシュ(9)が、環状の外側テーパー部(11.1)を有し若しくは、周囲に分配して形成された複数のテーパー部セグメント(13)を有しており、各捕捉突起部(8)が複数のクランピングスリット(12)のそれぞれ1つに配設されている請求項1に記載のボビンホルダー。
【請求項3】
クランピングブッシュ(9)と捕捉突起部(8)との間のクランピングスリット(12)が、1°〜30°の範囲の開き角(α)のV字形の開口断面を有している請求項1又は2に記載のボビンホルダー。
【請求項4】
クランピングスリット(12)が、クランピングブッシュ(9)に設けられた互いに異なる勾配角度の2つの外側テーパー部(11.1,11.2)によって形成されており、前記クランピングスリット(12)の入口ゾーンが、該クランピングスリット(12)のクランピングゾーンの開き角(α1)よりも大きな開き角(α2)を有している請求項1から3のいずれか1項に記載のボビンホルダー。
【請求項5】
クランピングブッシュ(9)が、捕捉突起部(8)の端部に向かう円筒状の案内部分(14)を有しており、該案内部分(14)が、前記捕捉突起部(8)の内側から該捕捉突起部(8)の長さを超えて延びている請求項1から4のいずれか1項に記載のボビンホルダー。
【請求項6】
ボビンスピンドル(1)が、複数のボビン(2.1,2.2)の受容のために、該ボビンスピンドル(1)の周囲に、軸線方向で互いにずらして配置された複数の糸捕捉装置(6.1,6.2)及び糸クランピング手段(7.1,7.2)を有している請求項1から5のいずれか1項に記載のボビンホルダー。
【請求項7】
ボビンスピンドル(1)の端部に設けられるクランピングブッシュ(9)が、カップ状に形成されていて、端面壁(15)でもって、前記ボビンスピンドル(1)に取り付けられている請求項1から6のいずれか1項に記載のボビンホルダー。
【請求項8】
外側テーパー部(11又は11.1,11.2)が、クランピングブッシュ(9)の開いた端部に形成されている請求項7に記載のボビンホルダー。
【請求項9】
ボビンスピンドル(1)が、反対側の駆動端部(16)において電動モータ(3)に結合されている請求項1から8のいずれか1項に記載のボビンホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−532818(P2012−532818A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519962(P2012−519962)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059347
【国際公開番号】WO2011/006761
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】