説明

ボーリング加工方法及びボーリング加工装置

【課題】シリンダボアの円筒度を高めることのできるボーリング加工方法を提供する。
【解決手段】外周面4aより突出させた中仕上げ用切れ刃7と仕上げ用切れ刃8を有した工具3をシリンダブロック1のシリンダボア2内に挿入し、該工具3をシリンダボア2内で回転させながら上下動させて前記切れ刃7、8でボア内壁面2aを切削する。シリンダブロック1のシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってボア内壁面2aを切削加工した後、オイルパン取り付け面側Kからシリンダーヘッド取り付け面側Hに向かって前記ボア内壁面2aを切削加工する時に、オイルパン取り付け面側Kからシリンダボア2内に冷却媒体9を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関エンジンのシリンダボア内を切削するボーリング加工方法及びボーリング加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関エンジンの燃焼室加工は、ボーリング加工と、その後に行うホーニング加工とからなる(例えば、特許文献1参照)。ボーリング加工は、鋳造後の素材を皮むきするラフボーリング加工工程と、その後の仕上げを目的とするファインボーリング加工工程の2工程からなる。
【0003】
ファインボーリング加工工程は、ラフボーリング加工で加工されたボア内壁面の幾何精度(円筒度、真円度)・面粗度を上げるための加工であり、中仕上げ加工と、仕上げ加工からなる。中仕上げ加工は、外周面から突出させた中仕上げ用切れ刃を備えた工具をシリンダボア内で回転させながらシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かって下降させてボア内壁面を切削する。仕上げ加工は、中仕上げ加工終了後に中仕上げ用切れ刃よりも仕上げ用切れ刃を外周面から突出させた状態とした工具を回転させながらオイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かって上昇させてボア内壁面を切削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−114236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ファインボーリング加工工程のうち中仕上げ加工終了時には、切削熱によりシリンダボア内に温度分布が生じる。中仕上げ加工は、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かって加工するため、加工中に発生した熱はシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ熱伝導する。これは、熱は高い方から低い方へ伝導するためである。そのため、中仕上げ加工完了直後、シリンダーヘッド取り付け面側の温度は低く、オイルパン取り付け面側の温度は高くなる。
【0006】
このような温度分布を持ったシリンダボアに対して仕上げ加工を行うと、オイルパン取り付け面側ではシリンダーヘッド取り付け面側に比べてボア内径が大きくなることから切削取り代が少なくなり、これに比べてシリンダーヘッド取り付け面側ではボア内径が小さくなることから切削取り代が多くなり、シリンダボアの円筒度が悪化する。
【0007】
そこで、本発明は、シリンダボアの円筒度を高めることのできるボーリング加工方法及びボーリング加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のボーリング加工方法では、シリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工した後、オイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工する時に、オイルパン取り付け面側からシリンダボア内に冷却媒体を供給するようにする。
【0009】
本発明のボーリング加工装置では、切れ刃によるボア内壁面の切削加工時に、オイルパン取り付け面側からシリンダボア内に冷却媒体を供給する手段を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のボーリング加工方法によれば、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工すると、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側へ切削熱が伝導し、オイルパン取り付け面側がシリンダーヘッド取り付け面側よりも温度が高くなる。このような温度分布を持つシリンダボアに対して、オイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工する時に、オイルパン取り付け面側からシリンダボア内に冷却媒体を供給すると、冷却媒体によってオイルパン取り付け面側の熱が吸熱されて冷却され、シリンダボア内付近の温度分布がシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に亘り均一になる。シリンダボア内付近の温度分布を均一な状態として切削加工すれば、ボア内壁面の切削により取り代も均一になり、シリンダボアの円筒度を高めることができる。
【0011】
本発明のボーリング加工装置によれば、切れ刃によるボア内壁面の切削加工時に、オイルパン取り付け面側からシリンダボア内に冷却媒体を供給する手段を備えているので、冷却媒体によってオイルパン取り付け面側の熱を吸熱して冷却することができ、シリンダボア内付近の温度分布をシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に亘り均一なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1はシリンダブロックの平面図である。
【図2】図2は実施形態1のボーリング加工方法を示し、オイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工する時に、オイルパン取り付け面側からシリンダボア内に冷却媒体を供給する様子を示す図である。
【図3】図3(A)はシリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工した後の温度分布を示す図、図3(B)は実施形態1のボーリング加工方法によってオイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工する時に、オイルパン取り付け面側からシリンダボア内に冷却媒体を供給した後の温度分布を示す図である。
【図4】図4は実施形態2のボーリング加工方法を示し、シリンダーヘッド取り付け面側から供給する冷却媒体の温度よりもオイルパン取り付け面側から供給する冷却媒体の温度を低くして、オイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工する様子を示す図である。
【図5】図5は実施形態3のボーリング加工方法を示し、シリンダーヘッド取り付け面側から供給する冷却媒体の噴射圧力よりもオイルパン取り付け面側から供給する冷却媒体の噴射圧力を高くして、オイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工する様子を示す図である。
【図6】図6は実施形態4のボーリング加工方法を示し、中仕上げ加工前にオイルパン取り付け面側からシリンダボア内に冷却媒体を供給後、中仕上げ加工する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
「実施形態1」
先ず、ボーリング加工される被対象物と工具の説明をする。図1は本発明方法によりボーリング加工されるシリンダブロックの平面図である。図1のシリンダブロック1は、自動車用の4気筒エンジンである。本実施形態では、シリンダーヘッド1の各シリンダボア2におけるボア内壁面2aを、中仕上げ加工と仕上げ加工を順次行って幾何精度(円筒度、真円度)・面粗度を上げるファインボーリング加工に本発明方法を適用する。
【0015】
ファインボーリング加工に使用する工具3は、図2に示すように、シリンダボア2内に挿入される工具本体4と、この工具本体4を図示を省略するボーリング加工装置の回転機構部にチャッキングさせる装着部5とを有している。この工具3は、ボーリング加工装置により回転すると共に上下方向に移動自在とされる。ボーリング加工装置は、オイルパン取り付け面側からシリンダボア2内に冷却媒体を供給する手段(ノズル10)を備えている。
【0016】
工具本体4は、軸方向の略中央部分に凹み6を有した円柱体として形成され、その外周面4aの下端寄りの位置に2つの切れ刃7、8を有している。これら切れ刃7、8のうち、一方が中仕上げ用切れ刃7で他方が仕上げ用切れ刃8とされている。なお、本実施形態では、工具本体4の略中央部分に凹み6を形成しているが、前記凹み6は工具によっては有るものと無いものがあり、特に凹み6に本発明が限定されるものではない。
【0017】
中仕上用切れ刃7と仕上げ用切れ刃8は、何れも工具本体4に対して刃先が外周面4aから突出する位置と没する位置とに出没自在に取り付けられている。中仕上げ加工時には、中仕上げ用切れ刃7が仕上げ用切れ刃8よりも径方法で突出した状態にあり、仕上げ用切れ刃8は中仕上げ用切れ刃7よりも内側の位置にいる。一方、仕上げ加工時には、仕上げ用切れ刃8が中仕上げ用切れ刃7よりも径方向で突出した状態にあり、中仕上げ用切れ刃8は仕上げ用切れ刃8よりも内側の位置にいる。
【0018】
装着部5は、工具本体4よりも大径の高さの低い円柱体として形成されており、該工具本体4と一体化されている。この装着部5は、図示を省略するボーリング加工装置のチャッキング部に装着固定される。
【0019】
次に、本発明を適用したファインボーリング加工方法について説明する。ファインボーリング加工工程前のラフボーリング加工工程で荒削りしたシリンダボア2内に、中仕上げ用切れ刃7を仕上げ用切れ刃8に対して工具本体4の外周面4aから突出させた工具3を回転させながら挿入し、シリンダブロック1のシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ向かって下降させる。
【0020】
この時、オイルパン取り付け面側Kからシリンダボア2内に冷却媒体9を供給する。冷却媒体9は、シリンダブロック1のシリンダーヘッド取り付け面側Hとは反対の下方に配置したノズル10よりオイルパン取り付け面側Kからシリンダボア2内に向けて噴射する。冷却媒体9には、例えばクーラントやエアーなどを使用する。冷却媒体9の供給は、中仕上げ加工スタート時から仕上げ加工完了時まで供給し続ける。
【0021】
前記シリンダボア2のボア内壁面2aは、回転動作及び下降動作する工具本体4に設けられた中仕上げ用切れ刃7によって切削される。この時、中仕上げ用切れ刃7がボア内壁面2aを切削する時に生じた熱は、温度が高い方から低い方へ熱伝導するため、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kへ伝導される。この時のシリンダボア2内付近の温度分布を等温線で表すと、図3(A)で示すように、シリンダーヘッド取り付け面側Hで温度が低くオイルパン取り付け面側Kで温度が高くなる。
【0022】
中仕上げ用切れ刃7でボア内壁面2aを切削する中仕上げ加工が終了したら、今度は、仕上げ用切れ刃8を中仕上げ用切れ刃7よりも工具本体4の外周面4aから突出させた状態にする。そして、工具3を回転させながらオイルパン取り付け面側Kからシリンダーヘッド取り付け面側Hに向かって上昇させる。
【0023】
この時、シリンダボア2内はシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かって温度が高くなる温度分布とされている。そこで、前記冷却媒体9の噴射により、オイルパン取り付け面側Kに蓄熱された熱が吸熱されて温度が下がり、シリンダボア2内付近の温度分布が均一になる。この時のシリンダボア2内付近の温度分布を等温線で表すと、図3(B)で示すように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘ってほぼ均一温度になる。シリンダボア2内付近の温度分布が均一になると、熱膨張による影響を受けないため、シリンダボア2の内径がシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘ってバラツキ無くほぼ均一になる。そのため、仕上げ用切れ刃8でボア内壁面2aを切削加工すると、切削時の取り代は、オイルパン取り付け面側Kからシリンダーヘッド取り付け面側Hに亘ってバラツキが無くなる。
【0024】
以上のようにしてボーリング加工すれば、中仕上げ加工後に生じた不均等なシリンダボア2内付近の温度分布を均一な温度分布にして仕上げ加工が行われるため、シリンダボア2の円筒度を高めることができる。
【0025】
「実施形態2」
実施形態2では、図4に示すように、オイルパン取り付け面側Kからシリンダボア2内に冷却媒体9を供給すると共にシリンダーヘッド取り付け面側Hからもシリンダボア2内に冷却媒体11を供給し、シリンダーヘッド取り付け面側Hから供給する冷却媒体11の温度Thよりもオイルパン取り付け面側Kから供給する冷却媒体9の温度Tkを低くする。
【0026】
中仕上げ加工後のシリンダボア2内付近の温度分布は、図3(A)で示したように、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘り温度が高くなっている。この不均一な温度分布に対して、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘って均一な温度分布となるように、温度が高いオイルパン取り付け面側Kでは低い温度の冷却媒体9を供給し、温度の低いシリンダーヘッド取り付け面側Hではオイルパン取り付け面側Kに供給した冷却媒体9の温度Tkよりも高い温度Thの冷却媒体11をノズル12から供給する。
【0027】
実施形態2では、実施形態1とは異なり、オイルパン取り付け面側Kだけでなくシリンダーヘッド取り付け面側Hにも冷却媒体9を供給するが、図3(B)で示すようにシリンダボア2内付近の温度分布が均一となるように、各部位に供給する冷却媒体9、11の温度Th、Tkに温度差を持たせるようにする。例えば、シリンダーヘッド取り付け面側Hに室温のクーラント又はエアーを供給する場合は、オイルパン取り付け面側Kにはこれよりも低い温度のクーラント又はエアーを供給する。要するに、オイルパン取り付け面側Kからシリンダーヘッド取り付け面側Hに向かってボア内壁面2aを切削加工する時に(仕上げ加工時に)、シリンダボア2内付近の温度分布が図3(B)で示すように均一となるようにシリンダーヘッド取り付け面側Hから供給する冷却媒体11の温度よりもオイルパン取り付け面側Kから供給する冷却媒体9の温度を低くするようにする。
【0028】
このようにしてボーリング加工すれば、熱膨張による影響を受けないため、シリンダボア2の内径がシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘ってバラツキ無くほぼ均一になり、仕上げ用切れ刃8による切削時の取り代のバラツキを無くすことができる。したがって、実施形態2のボーリング加工方法によれば、シリンダボア2の円筒度を高めることができる。なお、実施形態2では、実施形態1と同様、冷却媒体9の供給は、中仕上げ加工スタート時から仕上げ加工完了時まで供給し続けるものとする。
【0029】
「実施形態3」
実施形態3では、オイルパン取り付け面側Kからシリンダボア2内に冷却媒体9を供給すると共にシリンダーヘッド取り付け面側Hからもシリンダボア2内に冷却媒体11を供給し、シリンダーヘッド取り付け面側Hから供給する冷却媒体11の噴射圧力Phよりもオイルパン取り付け面側Kから供給する冷却媒体9の噴射圧力Pkを高くする。
【0030】
中仕上げ加工後のシリンダボア2内付近の温度分布は、前述の通りシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘り温度が高くなっているため、図5に示すように冷却媒体9、11の噴射圧力をシリンダーヘッド取り付け面側Hとオイルパン取り付け面側Kで変えることでオイルパン取り付け面側Kの熱伝導率をシリンダーヘッド取り付け面側Hの熱伝導率よりも高めることにより、均一な温度分布とする。
【0031】
シリンダーヘッド取り付け面側Hから供給する冷却媒体11の噴射圧力Phよりもオイルパン取り付け面側Kから供給する冷却媒体9の噴射圧力Pkを高くすれば、シリンダーヘッド取り付け面側Hの熱伝導率よりもオイルパン取り付け面側Kの熱伝導率の方が高くなる。オイルパン取り付け面側Kの熱伝導率が高まれば、中仕上げ加工後にオイルパン取り付け面側Kに蓄熱された熱を逃がすことができ、シリンダボア2内付近の温度分布を均一なものとすることができる。
【0032】
このようにしてボーリング加工すれば、熱膨張による影響を受けないため、シリンダボア2の内径がシリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに亘ってバラツキ無くほぼ均一になり、仕上げ用切れ刃8による切削時の取り代のバラツキを無くすことができる。したがって、実施形態3のボーリング加工方法によれば、シリンダボア2の円筒度を高めることができる。なお、実施形態3では、実施形態1と同様、冷却媒体9の供給は、中仕上げ加工スタート時から仕上げ加工完了時まで供給し続けるものとする。
【0033】
「実施形態4」
実施形態1〜3では、何れも中仕上げ加工スター時から仕上げ加工完了時までシリンダボア2内に冷却媒体を供給し続けるようにしたが、実施形態4では、中仕上げ加工前にオイルパン取り付け面側Kからシリンダボア2内に冷却媒体9を供給する。中仕上げ加工をすると、シリンダボア2内付近の温度分布は図3(A)で示したようにオイルパン取り付け面側Kに熱が蓄熱してシリンダーヘッド取り付け面側Hに比べて温度が高くなる。そこで、中仕上げ加工終了後のシリンダボア2内付近の温度分布とは逆に、図6に示す如くシリンダーヘッド取り付け面側Hがオイルパン取り付け面側Kよりも温度が高くなるような全く逆の温度分布にする。
【0034】
シリンダーヘッド取り付け面側Hがオイルパン取り付け面側Kよりも温度が高くなる温度分布とするには、中仕上げ加工前に、図6に示すようにシリンダボア2のオイルパン取り付け面側Kからシリンダボア2内に冷却媒体9を供給して、オイルパン取り付け面側Kの熱を吸熱させて温度をシリンダーヘッド取り付け面側Hの温度よりも低くする。このように、中仕上げ加工後のシリンダボア2内付近の温度分布とは逆の温度分布にした状態で、シリンダーヘッド取り付け面側Hからオイルパン取り付け面側Kに向かってボア内壁面2aを切削加工(中仕上げ加工)することで、中仕上げ加工後のシリンダボア2内付近の温度分布が図3(B)で示すように均一なものとなる。
【0035】
そして、シリンダボア2内付近の温度分布が均一な状態で、オイルパン取り付け面側Kからシリンダーヘッド取り付け面側Hに向かってボア内壁面2aを切削加工すれば、仕上げ用切れ刃8による切削時の取り代のバラツキを無くすことができ、シリンダボア2の円筒度を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、内燃機関エンジンのシリンダボア内を切削加工するボーリング加工工程に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…シリンダブロック
2…シリンダボア
2a…ボア内壁面
3…工具
4…工具本体
7…中仕上げ用切れ刃(切れ刃)
8…仕上げ用切れ刃(切れ刃)
9、11…冷却媒体
10…ノズル(冷却媒体を供給する手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面より突出させた切れ刃を有した工具をシリンダブロックのシリンダボア内に挿入し、該工具をシリンダボア内で回転させながら上下動させて前記切れ刃でボア内壁面を切削するボーリング加工方法において、
前記シリンダブロックのシリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かって前記ボア内壁面を切削加工した後、オイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かって前記ボア内壁面を切削加工する時に、オイルパン取り付け面側から前記シリンダボア内に冷却媒体を供給する
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のボーリング加工方法であって、
オイルパン取り付け面側からシリンダボア内に冷却媒体を供給すると共にシリンダーヘッド取り付け面側からもシリンダボア内に冷却媒体を供給し、シリンダーヘッド取り付け面側から供給する冷却媒体の温度よりもオイルパン取り付け面側から供給する冷却媒体の温度を低くする
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項3】
請求項1に記載のボーリング加工方法であって、
オイルパン取り付け面側からシリンダボア内に冷却媒体を供給すると共にシリンダーヘッド取り付け面側からもシリンダボア内に冷却媒体を供給し、シリンダーヘッド取り付け面側から供給する冷却媒体の噴射圧力よりもオイルパン取り付け面側から供給する冷却媒体の噴射圧力を高くする
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項4】
外周面より突出させた切れ刃を有した工具をシリンダブロックのシリンダボア内に挿入し、該工具をシリンダボア内で回転させながら上下動させて前記切れ刃でボア内壁面を切削するボーリング加工方法において、
前記シリンダブロックのオイルパン取り付け面側から前記シリンダボア内に冷却媒体を供給した後、シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工し、その後、オイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かってボア内壁面を切削加工する
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項5】
少なくとも請求項1から請求項4の何れか1項に記載のボーリング加工方法であって、
前記ボア内壁面の切削加工は、ラフボーリング加工工程後のファインボーリング加工工程であり、
シリンダーヘッド取り付け面側からオイルパン取り付け面側に向かってボア内壁面を切削する加工を中仕上げ加工とし、オイルパン取り付け面側からシリンダーヘッド取り付け面側に向かってボア内壁面を切削する加工を仕上げ加工とする
ことを特徴とするボーリング加工方法。
【請求項6】
外周面より突出させた切れ刃を有した工具をシリンダブロックのシリンダボア内に挿入し、該工具をシリンダボア内で回転させながら上下動させて前記切れ刃でボア内壁面を切削するボーリング加工装置において、
前記切れ刃による前記ボア内壁面の切削加工時に、オイルパン取り付け面側から前記シリンダボア内に冷却媒体を供給する手段を備えている
ことを特徴とするボーリング加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−201596(P2010−201596A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52513(P2009−52513)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】