説明

ボールの製造方法

【課題】予め湾曲成形されている表皮パネルにきれいな印刷層を形成できるようにすることで、見栄えの良好なボールを得る。
【解決手段】ボールは、空気が注入されるチューブ2と、チューブ2の外面を覆う複数の表皮パネル3とを備えている。各表皮パネル3は、チューブ2の形状に対応するように湾曲形状に成形されている。この表皮パネル3は、パッド印刷やインクジェット印刷により形成された印刷層11を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばチューブ等からなる芯部と、この芯部を覆うように設けられた複数の表皮パネルとを備えたボールの製造方法に関し、特に、表皮パネルが印刷層を有する構造のボールの製造方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、サッカーボール等の表皮パネルをチューブからなる芯部の外形状に沿う湾曲形状に成形することが行われている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、表皮パネルを湾曲形状に成形した後、芯部に張り付けるようにしている。表皮パネルを予め湾曲形状にしておくことで、芯部に貼り付ける際の表皮パネルの変形量を小さくすることができ、表皮パネルに部分的に生じる歪みや応力を低減して、ボールのバウンド性や使い易さが向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−174256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように表皮パネルを湾曲形状に成形すると、該表皮パネルに模様をきれいに印刷するのが難しいという問題が発生する。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、予め湾曲形状とされている表皮パネルにきれいな印刷層を形成できるようにすることで、見栄えの良好なボールを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明では、芯部と、該芯部の外面を覆う複数の表皮パネルとを備えたボールの製造方法であって、上記表皮パネルを上記芯部の外形状に沿う湾曲形状に成形した後、該表皮パネルに、非接触な状態で印刷を施す印刷部を有する印刷装置で印刷層を形成する構成とする。
【0007】
この構成によれば、印刷装置の印刷部が表皮パネルに非接触であるため、表皮パネルが湾曲していても、その湾曲形状に影響されることのない印刷層となる。
【0008】
第2の発明では、芯部と、該芯部の外面を覆う複数の表皮パネルとを備えたボールの製造方法であって、上記表皮パネルを上記芯部の外形状に沿う湾曲形状に成形した後、該表皮パネルの形状に追従して変形する印刷部を有する印刷装置を用い、該印刷部を上記表皮パネルに接触させて該表皮パネルの形状に沿うように変形させながら該表皮パネルに印刷層を形成する構成とする。
【0009】
この構成によれば、印刷装置の印刷部が表皮パネルの形状に追従して変形するため、表皮パネルの湾曲形状に沿った印刷層となる。
【0010】
第3の発明では、第1または2の発明において、隣接する複数枚の表皮パネルに亘る模様を形成するように、各表皮パネルに印刷層が形成されている構成とする。
【0011】
この構成によれば、複数の表皮パネルに亘る大きな模様を形成する場合に、個々の表皮パネルの印刷層の変形を抑制することが可能になる。
【0012】
また、1枚の表皮パネルの面積が、総表面積の8%以上である構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、1枚の表皮パネルの大きさが大きくなるので、芯部を覆うように貼り付けた表皮パネルの湾曲度合いは全体として見たとき大きくなる。このように湾曲度合いが大きい場合においても、印刷層がその形状に沿ったものになる。
【0014】
また、表皮パネルの全体に印刷層が形成されている構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、表皮パネルに設定された印刷面の広さが表皮パネルの全体に亘る広いものであっても、その表皮パネル全体の印刷層の変形を抑制することが可能になる。
【0016】
また、表皮パネルの表面側は、透光性を有する保護フィルムで構成され、該保護フィルムの裏面に印刷層が形成されている構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、保護フィルムの裏面に印刷層を設ける場合に、その印刷層の変形を抑制することが可能になる。
【0018】
また、表皮パネルの周縁部には、芯部側へ向けて折り曲げられた折り曲げ部が設けられ、印刷層は、折り曲げ部に亘るように形成されている構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、表皮パネルの折り曲げ部に亘るように印刷層を形成する場合に、印刷層をその折り曲げ部の形状に沿うように形成することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、表皮パネルを、芯部の外形状に沿う湾曲形状に成形し、この表皮パネルに、非接触な印刷部を有する印刷装置で印刷層を形成するようにしたので、湾曲形状に影響されることなく、きれいな模様を得ることができ、見栄えの良好なボールを得ることができる。
【0021】
第2の発明によれば、表皮パネルを、芯部の外形状に沿う湾曲形状に成形し、この表皮パネルに、湾曲形状に追従して変形する印刷部を有する印刷装置で印刷層を形成するようにしたので、湾曲形状に影響されることなく、きれいな模様を得ることができ、見栄えの良好なボールを得ることができる。
【0022】
第3の発明によれば、隣接する複数枚の表皮パネルに亘る大きな模様をボールに付する場合に、模様が変形するのを抑制できることで、きれいな模様を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ボールの外観図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】印刷装置のパッドを保護フィルムの上方に配置した状態を示す図である。
【図4】保護フィルムに印刷層が形成された状態の図3相当図である。
【図5】印刷層が形成された保護フィルムの断面図である。
【図6】印刷層が形成された保護フィルムの斜視図である。
【図7】保持装置に保持した保護フィルムをインクジェット印刷装置にセットした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係るボール1を示すものである。このボール1は、球技用のものであり、図2に示すように、芯部としてのチューブ2と、チューブ2を補強する補強層15と、該チューブ2の外周面を覆う表皮を構成する複数の表皮パネル3、3、…とを備えている。この実施形態では、表皮パネル3の枚数を12枚としており、従って、各表皮パネル3の面積は、ボール1の総表面積の8%以上となっている。また、ボール1の直径は、16cm以上25cm以下に設定されている。
【0026】
上記チューブ2は、ブチルゴム又はラテックスゴム等の空気非透過性を有する弾性材料で構成されており、図1に示すように、周知の構造のゴム製バルブ4を有している。このバルブ4は、表皮パネル3を貫通してボール1の外面に露出している。バルブ4を介してチューブ2内に圧縮空気が注入されるようになっている。バルブ4の構造は上記に限定されるものではない。
【0027】
上記補強層15は、チューブ2の外周面に密着した状態で設けられている。この補強層15は、布や、糸を巻き付けることで構成されている。尚、補強層15は省略してもよい。
【0028】
上記表皮パネル3の形状は、五角形又は六角形状とされているが、形状はこの限りではない。図2に示すように、これら表皮パネル3の周縁部には、チューブ2側へ向けて折り曲げられた折り曲げ部3aが形成されている。また、各表皮パネル3は、チューブ2の外周面形状に沿うように湾曲した形状をなしている。
【0029】
また、各表皮パネル3は、多層構造をなしており、表側から裏側へ向けて順に、保護フィルム10、印刷層11、皮革材12が積層されて構成されている。保護フィルム10は、透光性を有する樹脂材で構成されており、厚さは約5μm〜1500μmの間で設定されている。保護フィルム10の周縁部には、上記折り曲げ部3aを構成する折り曲げ部10a(図5及び図6に示す)が形成されている。保護フィルム10を構成する材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。また、保護フィルム10は、透光性を有するものであればよく、無色であってもよいし、着色されていてもよい。
【0030】
上記印刷層11は、パッド印刷によって形成されたインク層である。この印刷層11により、ボール1に模様A(図1に示す)が付されるようになっている。この実施形態では、模様Aが、隣接する表皮パネル3、3に亘るように大きなものとされている。また、印刷層11は、表皮パネル3の折り曲げ部3aを含む全体に形成されている。この実施形態の模様Aは、例えば、白地に別の色で楕円形が描かれたものである。この楕円形が隣接する表皮パネル3、3に亘るように描かれている。尚、模様Aとしては、他にも、製造者や商品名を示すロゴマークや、スポーツ協会の認定マーク、文字等があり、さらに、ボール1の全体に亘って形成されるグラデーション模様や、縞模様等もあり、上記した形態に限られるものではない。
【0031】
また、皮革材12は、雰囲気温度の変化に起因する物性変化がポリ塩化ビニルに比べて小さいポリウレタンからなる合成皮革や、天然皮革等で構成されている。この皮革材12と保護フィルム10とはホットメルト接着剤等を用いて接着されている。尚、接着剤は、熱可塑性樹脂を主成分としており、常温では固定で流動性がないが、40℃以上に加熱することにより溶融状態となる周知のものである。また、皮革材12の裏面側には、EPDMフォーム等で構成された衝撃緩衝材を設けてもよい。この衝撃緩衝材は、化学発泡させた発泡材や、機械発泡させた発泡材を用いることができる。尚、上記機械発泡とは、気体を物理的手段で原料に導入して細胞様の構造を得るように当該原料を発泡させることをいい、気体を原料に導入する手段としては、例えば、加圧手段や攪拌手段等がある。機械発泡させることによって衝撃緩衝材を独立気泡構造とすることが可能になる。この独立気泡構造の衝撃緩衝材は、連続気泡構造のものに比べて、衝撃緩衝材中の気泡が独立した小さいものとなる。これにより、例えば蹴ることによって衝撃緩衝材が衝撃を受けて、気泡の壁が破れて隣り合う気泡が連通した場合においても、連続気泡構造のものに比べて小さい空間とすることが可能になる。その結果、衝撃緩衝材の強度低下が抑制される。また、気泡が小さいものなので、接着面積を広く確保することが可能になり、強い接着力が得られる。これらのことにより、ボール1の耐久性が向上する。
【0032】
また、衝撃緩衝材中に小さい気泡が独立して形成されているので、衝撃緩衝材の部位による硬度を均一に近づけることが可能になるとともに、各部位の比重も均一に近づき、ボール1の重量を簡単に規定重量にすることが可能になる。上記のように衝撃緩衝材の部位による硬度を均一に近づけることで、例えば蹴った際にボール1の飛ぶ方向、飛距離、回転等を狙った通りにコントロールしやすくなる。また、ボール1が脚へ食い込む感じに違和感を感じなくなる。
【0033】
次に、上記表皮パネル3の製造装置について説明する。この製造装置は、表皮パネル3の保護フィルム10を成形する成形装置(図示せず)と、保護フィルム10を保持する保持装置30(図3に示す)と、パッド印刷装置40(図3に示す)とを備えている。成形装置は、上型及び下型と、これら上型及び下型を加熱する加熱器とを備えている。上型が下型に対し接離して、型開き状態と、型閉じ状態とに切り替えられるようになっている。下型の上面には、上方へ膨出するように下側成形面が設けられている。この下側成形面は、表皮パネル3の湾曲形状を形成するためのものであり、チューブ2の外周面の湾曲度合いと同じように、中央部が最も上に位置するように湾曲している。下側成形面の周縁部は、上下方向に延びており、これにより、保護フィルム10に折り曲げ部10aが形成されるようになっている。上型の下面には、上方へ窪むように上側成形面が設けられている。この上側成形面は、下側成形面に対応して中央部が最も上に位置するように湾曲し、また、上側成形面の周縁部は、下側成形面の周縁部と平行に延びている。
【0034】
尚、上記成形装置は、左右方向に接離する型で構成してもよい。また、ランナ及びゲートは、どちらの型に設けられていてもよい。また、ゲート及びランナの位置や形状は、任意に設定することができる。
【0035】
上記保持装置30は、上記成形装置で成形された保護フィルム10を裏返した状態で保持するためのものであり、図3に示すように、保持型31と、真空導入管32とを備えている。保持型31は、上記成形装置の下型と同じような形状の保持面33を有している。また、保持型31には、保持面33に開口する真空導入孔34が多数設けられている。これら真空導入孔34には、図示しないが真空引き装置が真空導入管32を介して接続され、この真空引き装置によって真空が導入されるようになっている。尚、図示しないが、保護フィルム10の周縁部に対応するように真空導入孔を設けて、保護フィルム10の周縁部を吸引するようにしてもよい。これにより、印刷精度を向上させることができる。
【0036】
上記パッド印刷装置40は、図3に示すように、パッド41と、バッド41を上下方向に移動させる昇降機構42とを備えている。パッド41は、シリコーンゴム等の弾力性を有する材料で構成されているので、表皮パネル3の湾曲形状に追従して変形する。つまり、パッド41は、本発明の表皮パネルの形状に追従して変形する印刷部である。パッド41の材料は、上記したものに限られず、各種の弾性材を用いることができる。
【0037】
バッド41の下面は、下方へ向けて湾曲する湾曲面41aで構成されている。パッド41の材料は任意に選択することができ、また、パッド41の形状も上記した形状に限られるものではない。パッド41の上面は、上記昇降機構42に固定されている。
【0038】
次に、上記のように構成された製造装置を用いて表皮パネル3を製造する要領について説明する。まず、保護フィルム10を構成するフィルムFを表皮パネル3の形状よりも若干大きめに裁断する。また、成形装置の加熱器によって下側成形面及び上側成形面を加熱しておく。そして、裁断したフィルムFを両成形面の間に配置し、上型を下方へ移動させて型閉じする。これにより、保護フィルム10が成形される。型開きすると、湾曲し、かつ周縁部に折り曲げ部10aが形成された保護フィルム10が得られる。
【0039】
次いで、保護フィルム10を成形装置から取り外した後、裏返して保持装置30の保持面33に載置する。そして、真空引き装置によって真空導入孔34に真空を導入すると、保護フィルム10が保持面33に吸着されて保持される。
【0040】
しかる後、印刷工程に移る。すなわち、模様Aに対応した凹版プレート(図示せず)にインクを流し込み、凹版プレートにバッド41の湾曲面41aを押し当てる。これにより、凹版プレート上のインクがパッド41の湾曲面41aに付着し、模様が湾曲面41aに転写された状態になる。
【0041】
この模様が転写されたパッド41を、保持装置30に保持されている保護フィルム10に押し当てることで、パッド41の湾曲面41aが保護フィルム10の形状に沿って変形し、湾曲面41aのインクが保護フィルム10の全体に付着し、これにより、図4に示すように、保護フィルム10の全体に印刷層11が形成される。
【0042】
保護フィルム10のインクが乾燥した後に、保護フィルム10を保持装置30から取り外して、図5及び図6に示すように、正規の形状となるように形状を整えることで、印刷層11が形成された保護フィルム10が得られる。保護フィルム10の周縁部に形成されたバリは切除する。
【0043】
尚、保持面33の形状は、下側成形面の形状と同じような形状なので、保護フィルム10を裏返した状態で裏面に印刷層11を形成した後、正規の形状に戻しても、印刷層11の模様Aが変形することは殆ど無い。
【0044】
その後、図示しないが、上記保護フィルム10と、皮革材12とを別の型を用いて、加熱して接着する。これにより、印刷層11が保護フィルム10を通して視認可能な多層構造の表皮パネル3が得られる。
【0045】
このようにして得られた表皮パネル3をチューブ2に貼り付けることで、ボール1が得られる。このとき、表皮パネル3がチューブ2の外周面に沿うように予め湾曲成形されているため、チューブ2に貼り付ける際の表皮パネル3の変形量が小さくなり、表皮パネル3に部分的に生じる歪みや応力が低減される。また、このように表皮パネル3の変形量が小さくなることで、表皮パネル3の印刷層11が部位によって伸びたり、縮んだりすることは殆どない。
【0046】
尚、表皮パネル3は、接着剤によってチューブ2に貼り付けるようにしてもよい。また、隣接する表皮パネル3の折り曲げ部3a同士を縫い合わせて表皮パネル3同士を接合するようにしてもよい。
【0047】
以上説明したように、この実施形態に係るボール1によれば、チューブ2の形状に対応するように湾曲した表皮パネル3に、パッド印刷により印刷層11を形成するようにしたので、印刷層11を表皮パネル3の湾曲形状に沿ったものにできる。これにより、表皮パネル3の印刷層11の模様Aが変形するのを抑制できる。その結果、きれいな模様Aを得ることができ、見栄えの良好なボール1を得ることができる。
【0048】
また、この実施形態では、ボール1の直径を16cm以上とし、かつ、表皮パネル3の枚数を12枚として各表皮パネル3の面積をボール1の総表面積の8%以上にしているので、1枚の表皮パネル3の大きさが大きいものとなっている。このように表皮パネル3が大きくなると、湾曲度合いが全体として見たときに大きくなる。このように湾曲度合いが大きい場合においても、パッド印刷により印刷層11を形成することで、印刷層11をその形状に沿うように形成することができ、きれいな模様Aを得ることができる。
【0049】
また、この実施形態では、複数の表皮パネル3に亘る大きな模様Aを形成するようにしており、この場合に、個々の表皮パネル3の印刷層11の変形を抑制することができるようになっている。さらに、この実施形態では、表皮パネル3に設定した印刷面の広さが表皮パネル3の全体に亘る広いものとしており、この場合にも、きれいな模様Aを得ることができる。
【0050】
また、表皮パネル3の折り曲げ部3aに亘って形成された印刷層11の模様Aが変形するのも抑制でき、より一層きれいな模様Aを得ることができる。
【0051】
また、印刷層11を保護フィルム10の裏面に形成するようにしたので、印刷層11がすり減るのを防止でき、模様の耐久性を向上させることができる。
【0052】
尚、上記実施形態では、パッド印刷装置40を用いて表皮パネル3の保護フィルム10に印刷層11を形成するようにしているが、これに限らず、例えば、図7に示すように、インクジェット印刷装置50を用いて印刷層11を形成するようにしてもよい。インクジェット印刷装置50は、印刷物に非接触な状態でインクbの粒子を噴射するノズル51を備えている。つまり、ノズル51は、本発明の表皮パネル3に非接触な印刷部である。
【0053】
インクジェット印刷装置50で印刷する場合、保護フィルム10を裏返した状態で保持装置30の保持面33に保持した後、インクジェット印刷装置50にセットする。インクジェット印刷装置50のノズル51から噴射されるインクの粒子が表皮パネル3の印刷面に付着することにより印刷層11が形成される。これにより、表皮パネル3が湾曲形状であっても、その形状に沿って印刷層11が形成されることになる。
【0054】
また、1枚の表皮パネル3に、パッド印刷による印刷層11と、インクジェット印刷による印刷層11の両方を形成するようにしてもよい。
【0055】
また、図示しないが、保護フィルム10の表面に印刷層を形成するようにしてもよい。さらに、保護フィルム10を有しない表皮パネルの場合には、表皮パネルの表面に印刷層を形成すればよい。
【0056】
また、印刷層11は、表皮パネル3の一部にのみ形成してもよい。
【0057】
また、本発明が適用可能なボール1としては、例えば、サッカーボール、ハンドボール、バスケットボール、バレーボール等の各種球技に用いられるボールであり、従って、表皮パネルの形状も、多角形状に限られるものではない。
【0058】
また、ボール1の直径は、上記した範囲よりも大きくてもよい。また、表皮パネル3の枚数は、12枚以下の任意の枚数としてもよい。また、表皮パネルの面積は、ボールの総表面積の8%以上であれば任意の値であってもよい。
【0059】
また、表皮パネル3の形状は、例えば、半球状としてもよいし、球を1/4や1/5にした形状にしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、本発明の芯部をチューブ2で構成しているが、芯部は、中空構造のもの以外にも、スポンジやゲル等からなる中実構造のものであってもよい。また、芯部の材料は、上記したものに限られず、様々な種類のものを用いることができる。また、芯部の形状は、球形以外にも、例えばラグビーボールのような形状であってもよい。
【0061】
また、印刷装置は、上記したパッド印刷装置40及びインクジェット印刷装置50に限られるものではなく、表皮パネル3に非接触な印刷部を有する各種印刷装置及び表皮パネル3の形状に追従して変形する印刷部を有する印刷装置を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明に係るボールは、例えば、サッカーボール等の球技に使用するものに適している。
【符号の説明】
【0063】
1 ボール
2 チューブ(芯部)
3 表皮パネル
10 保護フィルム
11 印刷層
12 皮革材
40 パッド印刷装置
41 パッド(印刷部)
50 インクジェット印刷装置
51 ノズル(印刷部)
A 模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部と、該芯部の外面を覆う複数の表皮パネルとを備えたボールの製造方法であって、
上記表皮パネルを上記芯部の外形状に沿う湾曲形状に成形した後、該表皮パネルに、非接触な状態で印刷を施す印刷部を有する印刷装置で印刷層を形成することを特徴とするボールの製造方法。
【請求項2】
芯部と、該芯部の外面を覆う複数の表皮パネルとを備えたボールの製造方法であって、
上記表皮パネルを上記芯部の外形状に沿う湾曲形状に成形した後、該表皮パネルの形状に追従して変形する印刷部を有する印刷装置を用い、該印刷部を上記表皮パネルに接触させて該表皮パネルの形状に沿うように変形させながら該表皮パネルに印刷層を形成することを特徴とするボールの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のボールの製造方法において、
隣接する複数枚の表皮パネルに亘る模様を形成するように、各表皮パネルに印刷層が形成されていることを特徴とするボールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−166078(P2012−166078A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132313(P2012−132313)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【分割の表示】特願2007−331425(P2007−331425)の分割
【原出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000138244)株式会社モルテン (105)