説明

ボール供給装置

【課題】筐体内のボールを連続して1個づつボール発射手段に供給できるボール供給装置を実現する。
【解決手段】複数のボール1を収容する筐体10と、ボール1を保持する受け部21が筐体10の下方から上方に向けて送り出されることにより、ボール1を1個づつ上昇させて筐体10からボール発射手段50に供給する搬送手段20とを備えるボール供給装置であって、筐体10の最下部には、受け部21が通過する貫通孔12が形成されており、この貫通孔12の近傍には、筐体10内のボール1を動かすことが可能な回転体30が設けられている。これにより、筐体内のボールを連続して1個づつボール発射手段に供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトボールの打撃練習などのボール発射装置に使用され、一個づつボールをボール発射手段に供給するためのボール供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のボール供給装置として、例えば、図5に示すものが知られている。すなわち、図5に示すボール供給装置は、複数のボール1を収容する筐体10と、その筐体10内のボール1をボール発射手段50に供給する搬送手段20とを備えている。
【0003】
この搬送手段20には、ボール1を保持する受け部21と、その受け部21を送り出すベルト部22と、受け部21が上方に送り出されたときに、ボール発射手段50にボール1を供給する供給部25とが設けられている。また、筐体10の底板には、受け部21が通過する貫通孔12が形成されている。
【0004】
そして、ベルト部22を駆動させて、受け部21を筐体10の下方から上方に向けて送り出すことにより、筐体10内からボール1を一つ拾いあげて上方の供給部25に送り出す。これにより、筐体10からボール発射手段50に一個づつボール1を供給できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ソフトボールを上記ボール供給装置に用いると、複数のボール1が絡み合って、図5に示すように、受け部21の周囲にボール1を寄せることができない状態がある。つまり、ボール発射手段50に一個づつボール1を供給することができない問題がある。
【0006】
ソフトボールでは、ボール1の継ぎ目が太く形成されているため、ボール1の継ぎ目同士が絡み合うと、ボール1全体の動きが停止していまい、受け部21、即ち貫通孔12の周りに空間が形成されて、受け部21がボール1を拾い上げることができない状態がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、筐体内のボールを連続して1個づつボール発射手段に供給できるボール供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、複数のボール(1)を収容する筐体(10)と、ボール(1)を保持する受け部(21)が筐体(10)の下方から上方に向けて送り出されることにより、ボール(1)を1個づつ上昇させて筐体(10)からボール発射手段(50)に供給する搬送手段(20)とを備えるボール供給装置であって、
筐体(10)の最下部には、受け部(21)が通過する貫通孔(12)が形成されており、この貫通孔(12)の近傍には、筐体(10)内のボール(1)を動かすことが可能な回転体(30)が設けられていることを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、強制的にボールを動かすことにより、ボールの絡み合いを無くして、貫通孔(12)の近傍にボール(1)を寄せることができる。従って、受け部(21)で拾い上げた一個づつのボール(1)をボール発射手段(50)に供給することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、回転体(30)は、筐体(10)の底部に設けられ、回転体(30)には、ボール(1)を三次元的方向に動かすための羽根部(32)が設けられていることを特徴としている。この発明によれば、回転体(30)に接触したボール(1)を上下左右方向に限らず無作為な方向に動かすことができる。これにより、ボール(1)の絡み合いを無くすことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、羽根部(32)は、回転体(30)に対し、上方に突き出す山形状に形成されていることを特徴としている。この発明によれば、羽根部(32)に接触したボール(1)を無作為な方向に動かすことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、回転体(30)には、その回転体(30)の中心(D1)に対して、偏心するように回転軸(34)が形成されていることを特徴としている。この発明によれば、回転体(30)に接触したボール(1)をより確実に無作為な方向に動かすことができる。さらに、回転体(30)の中心(D1)と回転軸(34)とが一致する同軸上の回転体(30)よりも、幅広くボール(1)を動かすことができる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、回転体(30)には、外周に凹み状の切り欠き部(33)が形成されていることを特徴としている。この発明によれば、回転体(30)に接触したボール(1)を確実に動かすことができる。
【0014】
請求項6に記載の発明では、筐体(10)は、ボール(1)が2〜3個程度重なり合う深さに形成されていることを特徴としている。この発明によれば、特に、ソフトボールのような直径の大きいボールは、縫い目が太く形成されているが、筐体(10)は、ボール1が2〜3個程度重なり合う深さに形成されているため、ボール1の絡み合いが発生することはない。従って、ソフトボールのボール供給装置に用いると好適である。
【0015】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、一実施形態におけるボール供給装置を、図1乃至図4に基づいて説明する。図1は、ボール供給装置の全体構成を示す平面図である。図2は、図1に示すボール供給装置の作動状態を示す縦断面図である。図3は、回転体の全体構成を示す平面図である。図4は、図3に示す回転体の形状を示す側面図である。
【0017】
ボール供給装置は、図1および図2に示すように、筐体10内に収容したボール1を、一個づつボール発射手段50に供給するための装置である。ボール発射手段50は、例えば、アーム式の投球マシンなどであって、野球やソフトボールの打撃練習に使用されている。アーム式の投球マシンには、ボール1を一個づつ送るためのボール供給装置が利用される。
【0018】
本実施形態のボール供給装置は、ソフトボールのような直径の大きいボール1を用いて、ボール発射手段50に供給するように構成されている。ボール供給装置は、筐体10、搬送手段20、回転体30およびモータ40等から構成されている。筐体10は、複数のボール1を収容する容器であり、例えば、ステンレス材などの金属材料より形成されている。
【0019】
筐体10は、ソフトボールが2〜3個程度重なり合う深さを有した有底状の容器として形成されている。そして、底板11の最下部には、後述する受け部21が通過するための貫通孔12が形成されている。貫通孔12は、例えば、筐体10の中央部よりも右端側(図2における)に形成されている。
【0020】
また、貫通孔12は、略矩形状の切り欠きにより形成されている。貫通孔12が形成される部位が最下部であって、底板11は、その貫通孔12に向けて傾斜するように形成されている。つまり、底板11は、筐体10内に収容したボール1が、貫通孔12に向かって転がるように形成されている。
【0021】
筐体10の右端には、搬送手段20が併設されている。この搬送手段20は、筐体10からボール発射手段50に向けて一個づつボール1を送り出すための装置である。本実施形態の搬送手段20は、受け部21、ベルト部22、従動プーリ23、主動プーリ24および供給路25から構成されている。
【0022】
受け部21は、ボール1を保持する保持金具であり、二つの丸棒材21aと、その二つの丸棒材21aとを固定する平板の固定材21bとから構成されている。二つの丸棒材21aは、ソフトボールのボール1を載せることが可能なピッチ寸法により固定されている(例えば、ボール1の直径の0.75程度)。固定材21bは、図示しない締結部材によりベルト部22に固定されている。
【0023】
ベルト部22は、受け部21を搬送するための搬送部材である。ベルト部22は環状に形成され、その外側に複数の受け部21が固定されている。主動プーリ24は、図示しないモータに固定されており、図2中に示す矢印R方向、即ち右回転するようになっている。
【0024】
また、従動プーリ23は、主動プーリ24の回転により、主動プーリ24と同じ方向に回転するプーリである。搬送手段20は、ベルト部22の上方に従動プーリ23が配設され、ベルト部22の下方に主動プーリ24が配設されている。
【0025】
供給路25は、従動プーリ23の上方に送られたボール1をボール発射手段50に向けて供給する通路である。供給路25は、樋状に形成されており、その入口が従動プーリ23の近傍、かつベルト部22の側面に隣り合うように配設されている。
【0026】
供給路25の入口は、受け部21が上方に送られたとき、即ちボール1が受け部21から離れたときに、ベルト部22を転がって、供給路25に落ちるように形成される。そして、供給路25の入口に落ちたボール1は、供給路25を転がり落ちて、ボール発射手段50の供給口に供給される。
【0027】
以上の構成による搬送手段20は、図示しないモータを作動させると、主動プーリ24が矢印R方向に回転することにより、プーリ23、24の左側に配置された受け部21が、図2に示すように、筐体10の下方から上方に向けて送り出される。また、プーリ23、24の右側に配置された受け部21は、上方から下方に向けて送り出される。
【0028】
このとき、筐体10の貫通部12を通過した受け部21は、一つのボール1を保持する。そして、ボール1が筐体10の下方から上方に向けて搬送される(送り出される)。そして、受け部21が従動プーリ23の上方に送り出されると、ボール1は受け部21から外れて、供給路25の入口に転がり落ちる。そして、供給路25の入口に落ちたボール1は、ボール発射手段50に供給される。
【0029】
回転体30は、筐体10内に収容されたボール1に動きを与えるものである。この回転体30は、貫通孔12の近傍、即ち筐体10の略中央部の底板11に配設されている。底板11の底面裏側には、モータ40が配設されている。そのモータ40の駆動軸40aには、回転体30が結合されている。また、モータ40の回転数は、低速回転(例えば、30rpm程度)である。
【0030】
本実施形態の回転体30は、図3および図4に示すように、回転基板31、羽根部32および回転軸34から構成されている。回転基板31は、略円盤状に形成されている。そして、回転基板31の外周には、凹み状の切り欠き部33が円周方向に対し、等間隔に複数(本例では4個)形成されている。この切り欠き部33は、回転体30が回転したときに、接触したボール1を水平方向に動かすための溝部である。
【0031】
切り欠き部33は、R状、例えばボール1の直径の大きさの1/2相当のR寸法に形成されている。ところで、このような形状の切り欠き部33がない場合には、ボール1の表面を擦るのみとなるため、ボール1が転がらない。そのため、回転基板31の外周に切り欠き部33が設けられることにより、ボール1が切り欠き部33に引っかかり、ボール1を持ち上げることができる。
【0032】
羽根部32は、ボール1に三次元的運動を与えるように形成されている。つまり、羽根部32は、回転体30が回転したときに、接触したボール1をランダム方向、即ち上下、左右方向のみならず無作為方向に動かすことのできる形状に形成されている。羽根部32は、略円盤状の回転基板31に対し、回転軸34の軸中心近傍に頂点を有する山形状に突き出す形状に形成されている。羽根部32は、回転基板31の円周方向に対し、等間隔に複数(本例では4個)配設されている。
【0033】
回転軸34は、回転体30の回転中心D2であり、回転基板31の中心D1に対し、L寸法ずらして配設されている。つまり、回転軸34は、回転体30の回転中心D2が、回転基板31の中心D1に対し、偏心されている。これにより、回転基板31の中心D1と回転軸34の回転中心D2とが一致する同軸上の回転体30よりも、幅広くボール1を動かすことができる。
【0034】
また、回転軸34の高さ寸法は、回転体30の回転基板31の底部が底板11に接触しないように形成されている。つまり、回転基板31の底面と底板11との間にボール1が挟まれない空間を保つようにしている。
【0035】
以上の構成によるボール供給装置の作動について説明する。ボール1を筐体10内に収容する。モータ40および搬送手段20の主動プーリ24を作動(駆動)させる。これにより、回転体30に触れたボール1が動き出すとともに、図2中に示す矢印R方向に主動プーリ24が回転することにより、ベルト部22が駆動される。
【0036】
このとき、ベルト部22の駆動とともに、筐体10側の受け部21が下方から上方に送り出される。受け部21が貫通孔12を通過するときに、筐体10内のボール1を一つ拾い上げて保持する。ところで、貫通孔12に寄せられたボール1は、受け部21により一つ拾い上げられるが、このとき、回転体30が回転されていることにより、ボール1が常に動いている。
【0037】
つまり、受け部21により拾い上げられた貫通孔12には、次のボール1が寄せられている。これにより、筐体10内から受け部21により、連続的に拾い上げることができる。その後、受け部21は、ボール1を保持した状態で、下方から上方に送り出される。
【0038】
その後、受け部21が従動プーリ23の上方に送り出されると、ボール1は受け部21から外れて、供給路25の入口に転がり落ちる。そして、供給路25の入口に落ちたボール1は、ボール発射手段50に供給される。これにより、筐体10内のボール1を一個づつボール発射手段50に連続的に供給することができる。
【0039】
このような構成のボール供給装置によれば、筐体10の最下部には、受け部21が通過する貫通孔12が形成されており、この貫通孔12の近傍には、筐体10内のボール1を動かすことが可能な回転体30が設けられていることにより、強制的にボール1を動かすことで、ボールの絡み合いを無くして、貫通孔12の近傍に次のボール1を寄せることができる。
【0040】
従って、受け部21で拾い上げた一個づつのボール1をボール発射手段50に供給することができる。また、回転体30の作動によって、筐体10内のボール1が常に動いていることにより、ボール1の絡みがないため、搬送手段20のベルト部22に掛かる負荷を低減できる。さらに、筐体10内のボール1が動いていることにより、次のボール1を貫通孔12の近傍に寄せることが容易にできる。
【0041】
また、回転体30には、ボール1を三次元的方向に動かすための羽根部32が設けられていることにより、回転体30に接触したボール1を上下左右方向に限らず無作為な方向に動かすことができる。これにより、ボール1の絡み合いを無くすことができる。
【0042】
また、羽根部32は、回転体30に対し、上方に突き出す山形状に形成されていることにより、羽根部32に接触したボール1を無作為な方向に動かすことができる。さらに、回転体30には、回転基板31の中心D1に対して、偏心するように回転軸34が形成されている。
【0043】
これにより、回転体30に接触したボール1をより確実に無作為な方向に動かすことができる。回転体30の中心D1と回転軸34とが一致する同軸上の回転体30よりも、幅広くボール1を動かすことができる。
【0044】
回転体30には、外周に凹み状の切り欠き部33が形成されていることにより、回転体30に寄せられたボール1を確実に動かすことができる。特に、ソフトボールのような直径の大きいボールは、縫い目が太く形成されているが、本実施形態の筐体10は、ボール1が2〜3個程度重なり合う深さに形成されているため、ボール1の絡み合いが発生することはない。従って、本発明をソフトボールの供給装置に用いると好適である。
【0045】
(他の実施形態)
以上の一実施形態では、羽根部32を回転基板31の円周方向に対し、等間隔に放射状に4個形成したが、これに限らず、羽根部32を回転基板31の円周方向に対し、等間隔に3個形成しても良い。あるいは、不等間隔に複数個の羽根部32を形成しても良い。
【0046】
また、以上の実施形態では、回転基板31の外周に切り欠き部33を、円周方向に対し、等間隔に4個形成したが、これに限らず、回転基板31の外周に切り欠き部33を、円周方向に対し、等間隔に3個形成しても良い。あるいは、不等間隔に複数個の切り欠き部33を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】一実施形態におけるボール供給装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1に示すボール供給装置の作動状態を示す縦断面図である。
【図3】一実施形態における回転体の全体構成を示す平面図である。
【図4】図3に示す回転体の形状を示す側面図である。
【図5】従来技術におけるボール供給装置の全体構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…ボール
10…筐体
12…貫通孔
20…搬送手段
21…受け部
30…回転体
32…羽根部
33…切り欠き部
34…回転軸
50…ボール発射手段
D1…回転基板の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボール(1)を収容する筐体(10)と、
前記ボール(1)を保持する受け部(21)が前記筐体(10)の下方から上方に向けて送り出されることにより、前記ボール(1)を1個づつ上昇させて前記筐体(10)からボール発射手段(50)に供給する搬送手段(20)とを備えるボール供給装置であって、
前記筐体(10)の最下部には、前記受け部(21)が通過する貫通孔(12)が形成されており、
前記貫通孔(12)の近傍には、前記筐体(10)内の前記ボール(1)を動かすことが可能な回転体(30)が設けられていることを特徴とするボール供給装置。
【請求項2】
前記回転体(30)は、前記筐体(10)の底部に設けられ、
前記回転体(30)には、前記ボール(1)を三次元的方向に動かすための羽根部(32)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のボール供給装置。
【請求項3】
前記羽根部(32)は、前記回転体(30)に対し、上方に突き出す山形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のボール供給装置。
【請求項4】
前記回転体(30)には、前記回転体(30)の中心(D1)に対して、偏心するように回転軸(34)が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のボール供給装置。
【請求項5】
前記回転体(30)には、外周に凹み状の切り欠き部(33)が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のボール供給装置。
【請求項6】
前記筐体(10)は、前記ボール(1)が2〜3個程度重なり合う深さに形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のボール供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−39290(P2009−39290A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207118(P2007−207118)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)