説明

ポックス・ウイルスの精製方法

限定はしないが、ゲルろ過および/またはイオン交換クロマトグラフィーを含めた1つ以上のクロマトグラフの工程を使用する、ポックス・ウイルスを精製する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2008年2月12日出願の米国特許出願第61/065,484号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本願は、ポックス・ウイルスのベクターおよびアビポックス(例えば、カナリア痘、ALVAC)ベクターなどのベクターを単離する方法について記載する。
【背景技術】
【0003】
ウイルスの精製には、さまざまな種類のクロマトグラフ法が用いられている。陰イオン交換クロマトグラフィーは、ウイルスの精製に使用する、最も一般的なクロマトグラフィーカラム精製方法である。それは、HIV−1(非特許文献1)、センダイウイルス(非特許文献2)、組換えアデノ随伴ウイルス(非特許文献3〜4)、およびレンチウイルス(非特許文献5)を含めた種々のウイルスを精製するために用いられる。陽イオン交換クロマトグラフィーもまた使用されている(非特許文献6)。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、ウイルス精製の一般的な方法となる可能性があることが証明された(非特許文献7)。組換えアデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスは、結合および溶出方法のいずれか(非特許文献3)、またはフロースルー法(非特許文献8)において、組換えアデノウイルスまたは組換えアデノ随伴ウイルスの精製に使用されている疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を使用して単離されている。さらには、セラミックハイドロキシアパタイト(CHT)を使用して、モロニーマウス白血病ウイルスが首尾よく精製されている(非特許文献9)。親和性精製もまた、多くの種類のウイルス、特に、脂質エンベロープを有するものの精製に有用であることが示されている(非特許文献10〜12)。ヘパリン系の親和性クロマトグラフィー樹脂は、ウイルスの精製に使用されており、例えば、組換えアデノ随伴ウイルス(非特許文献13〜16)、および単純ヘルペスウイルス(非特許文献17)が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Prior et al., 1995; 1996
【非特許文献2】Eveleth et al, 2000
【非特許文献3】Huyghe et al., 1995
【非特許文献4】Kaludov et al., 2002
【非特許文献5】Yamada et al., 2003
【非特許文献6】Gao et al, 2000
【非特許文献7】Braas et al., 1996
【非特許文献8】Snyder and Flotte, 2002
【非特許文献9】Kuiper et al., 2002
【非特許文献10】Millipore Data Sheet
【非特許文献11】O’Neil and Balkovic, 1993
【非特許文献12】Tamayose et al., 1996
【非特許文献13】Clark et al., 1999
【非特許文献14】Zolotukhin et al., 1999
【非特許文献15】Auricchio et al., 2001
【非特許文献16】Summerford and Samulski, 1999
【非特許文献17】O’Keeffe et al., 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当技術分野では、さらなる精製方法の改善が依然として必要とされている。このような目的で、ポックス・ウイルスの精製の改善方法を本明細書に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
限定はしないが、ゲルろ過および/またはイオン交換クロマトグラフィーを含めた1つ以上のクロマトグラフの工程を使用する、ポックス・ウイルスを精製する方法を、本明細書に提供する。ある実施の形態では、ポックス・ウイルスは、アビポックス・ウイルス(例えば、カナリア痘、ALVAC)である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】10L規模のANXイオン交換バッチ吸着の図。
【図2】さまざまな動作せん断速度についての最適動作TMP。
【図3】さまざまなTMPおよびせん断速度下におけるTFF性能(ルーメン内径0.5mm)。
【図4】さまざまなTMPおよびせん断速度下におけるTFF性能(ルーメン内径1mm)。
【図5】さまざまなTMPおよびせん断速度−清澄化したALVAC/CEFの濃縮下におけるTFF性能。
【発明を実施するための形態】
【0008】
組換えまたは「野生型」のポックス・ウイルスベクター(例えば、ポックス・ウイルスの粒子、ビリオン)を精製する方法を提供する。ポックス・ウイルスの粗調製物(またはそれらの誘導体、例えば、半精製したポックス・ウイルス調製物)を、イオン交換クロマトグラフィーに供し、混入物質のレベルが低減されたポックス・ウイルス調製物を生成する工程を有してなる。ポックス・ウイルス調製物とは、無傷のポックス・ウイルスの粒子またはビリオン(単純にポックス・ウイルスと称される場合がある)が存在しているものである。ポックス・ウイルスの粒子またはビリオンは、例えば、野生型、弱毒化、非組換え、または組換えされたものであって差し支えない。混入物質(例えば、非ポックス・ウイルス成分)は、無傷のポックス・ウイルス粒子またはビリオン以外の成分である。混入物質は、典型的には生物学的であり(例えば、緩衝液、賦形剤などを含まない)、例えば、非ベクターDNAおよび/またはRNA、遊離のベクターDNAおよび/またはRNA、他のRNAおよび/またはDNA、非ベクターのペプチドまたはタンパク質、他の遊離のペプチドまたはタンパク質などが挙げられよう。一部の実施の形態では、本方法は、粗ポックス・ウイルス中に存在する、全タンパク質(ペプチドを含む)および/または全核酸(例えば、DNA、RNA)混入物質の、およそまたは具体的に80%〜99%に至る除去を生じる。一部の実施の形態では、粗ポックス・ウイルス中に存在する、全タンパク質(ペプチドを含む)および/または全核酸(例えば、DNA、RNA)混入物質の、およそまたは具体的に80%、85%、90%、95%、または99%が除去される。
【0009】
1つの実施の形態では、本方法は、ポックス・ウイルスの粗調製物をイオン交換クロマトグラフィーに供し、実質的に混入物質を含まないポックス・ウイルス調製物(「実質的に精製されたポックス・ウイルス調製物」)を生成する工程を有してなる。実質的に精製された調製物には実質的に混入物質が存在せず、ここで混入物質は、合計で、調製物のおよそまたは具体的に20〜30重量%未満になる(担体、賦形剤などを除く)。ある実施の形態では、調製物は実質的に精製され、ここで混入物質は、調製物全体の中に、またはポックス・ウイルス自体と比較して、合計で、およそまたは具体的に20〜30%、20〜22.5%、22.5〜25%、25〜27.5%、または30重量%未満、存在する。調製物はまた、実質的に精製されているとみなされて差し支えなく、ここで少なくとも、ポックス・ウイルスの粗調製物中に存在する混入物質(ポックス・ウイルスの一部ではない)の、およそまたは具体的に80%〜89%は調製物から除去されている。
【0010】
1つの実施の形態では、本方法は、ポックス・ウイルスの粗調製物をイオン交換クロマトグラフィーに供し、本質的に混入物質を含まないポックス・ウイルス調製物(「本質的に精製されたポックス・ウイルス調製物」)を生成する工程を有してなる。本質的に精製された調製物には本質的に混入物質が存在せず、ここでこれらの混入物質は、調製物の、およそまたは具体的に10〜20重量%未満である(担体、賦形剤などを除く)。ある事例では、本質的に精製された調製物の混入物質は、調製物全体の中に、またはポックス・ウイルス自体と比較して、合計で、およそまたは具体的に10〜20%、10〜12.5%、12.5〜15%、15〜17.5%または20重量%未満である。調製物はまた、本質的に精製されているとみなされて差し支えなく、ここで少なくとも、およそまたは具体的に90%〜95%の混入物質が調製物から除去されている。
【0011】
1つの実施の形態では、本方法は、ポックス・ウイルスの粗調製物を精製工程に供し、混入物質を含まないポックス・ウイルス調製物(「精製されたポックス・ウイルス調製物」)を生成する工程を有してなる。精製されたポックス・ウイルス調製物には混入物質は存在せず、ここで混入物質は、合計で、調製物の、およそまたは具体的に0〜10重量%未満(担体、賦形剤などを除く)である。ある実施の形態では、調製物には混入物質は存在せず、ここでそれらの混入物質は、調製物全体の中に、またはポックス・ウイルス自体と比較して、合計で、およそまたは具体的に0〜10%、7.5〜10%、5〜7.5%、2.5〜5%、または1重量%未満である。調製物はまた、精製されているとみなされて差し支えなく、ここで少なくとも、ポックス・ウイルスの粗調製物中に存在する混入物質(ポックス・ウイルスの一部ではない)の、およそまたは具体的に95%〜99%、または100%が調製物から除去される。
【0012】
ポックス・ウイルスを精製する方法であって、ポックス・ウイルスおよび少なくとも1つの混入物質を含むサンプル(例えば、細胞溶解物)を、混入物質と比較して、ポックス・ウイルスとマトリクスとの選択的相互作用を提供する条件下で、イオン交換クロマトグラフィーのマトリクスと接触させ、ポックス・ウイルスをマトリクスから溶出させる、各工程を有してなる方法も提供する。「選択的相互作用」とは、例えば、ポックス・ウイルスを混入物質よりも効率的にマトリクスに結合させる条件下、またはポックス・ウイルスをマトリクスに結合させた状態を維持し、混入物質をマトリクスから放出させる洗浄および/または溶出条件下でサンプルをマトリクスに曝露するなど、任意の方法によって達成して構わない。これらの方法の幾つかでは、ポックス・ウイルスおよび混入物質を含有するサンプル(例えば、細胞溶解物)は、混入物質と比較してポックス・ウイルスと選択的に相互作用するイオン交換マトリクスと接触させ、結合したポックス・ウイルスをマトリクスから溶出させて差し支えない。ポックス・ウイルスをある程度精製されたサンプル(例えば、細胞溶解物、濃縮細胞溶解物)から単離する別の方法は:(a)ポックス・ウイルスを含むある程度精製されたサンプルを提供し;(b)前記ある程度精製されたサンプルを、ポックス・ウイルスがマトリクスと結合する条件下で、イオン交換マトリクスを含む固体担体と接触させ;(c)結合したポックス・ウイルスを固体担体から溶出する、各工程を有してなる。
【0013】
ポックス・ウイルスの粗調製物(例えば、細胞溶解物または濃縮細胞溶解物)は、さらに精製する前にある程度精製して、ある程度精製されたサンプルを提供して差し支えない。次に、ある程度精製されたサンプルを、さらなる精製に供してもよい。ポックス・ウイルスが細胞中で培養され、ある程度精製された調製物が望ましい場合には、次の工程:ポックス・ウイルス含有細胞を採取し;例えば、酵素(例えば、トリプシンおよび/またはヌクレアーゼ)または他の方法によって細胞を溶解させるなどによって、細胞を崩壊し、ポックス・ウイルスの粗調製物を生成し;随意的に、例えば、遠心分離またはタンジェンシャルフローろ過(TFF)によって粗調製物を清澄し;ポックス・ウイルスの粗調製物をゲルろ過などの精製工程に供し、半精製したポックス・ウイルス調製物を生成し;例えば、イオン交換クロマトグラフィーを使用して半精製したポックス・ウイルス調製物をさらなる精製に供し、実質的に精製された、本質的に精製された、または精製されたポックス・ウイルス調製物を生成する、各工程を使用して差し支えない。ポックス・ウイルスの粗調製物および半精製したポックス・ウイルス調製物は、典型的には、それぞれ、合計で、調製物の、およそまたは具体的に30重量%よりも多い混入物質(担体、賦形剤などを除く)を含みうる。典型的には、半精製したポックス・ウイルス調製物は、ポックス・ウイルスの粗調製物よりも、含有する混入物質が少ない。他の精製方法を含めて、実質的に精製された、本質的に精製された、または精製されたポックス・ウイルス調製物を生成してもよい。
【0014】
当業者は、多くの適切なゲルろ過マトリクス(ゲルろ過樹脂とも称される)を利用することができる。これらの樹脂としては、例えば、セファクリル(Sephacryl)(登録商標)(例えば、S−100 HR、S−200 HR、S−300 HR、S−400 HR)、セファデックス(Sephadex)(登録商標)(例えば、Lipophilic(ヒドロキシアルコキシプロピル−デキストラン、I型、VI型、またはIX型)、G−10、G−15、G−25、G−50、G−75、G−100)、「セファロース」(登録商標)(例えば、6B、CL−6B、4B、CL−4B、2B、CL−2B)、スーパーデックス(Superdex)(登録商標)(例えば、30、75、200)、スーパーロース(Superose)(登録商標)(例えば、12、6)、トヨパール(Toyopearl)(登録商標)HW(例えば、HW−40、HW−50、HW−55、HW−65、HW−75)、Ultrogel(登録商標)(例えば、マトリクス A、AcA)などが挙げられる。好ましいゲルろ過マトリクスは、「セファロース」4ファスト・フローまたは「セファロース」6ファスト・フローでありうる。ゲルろ過マトリクスは、当技術分野で周知のように平衡化して差し支えない。例えば、ポックス・ウイルスの精製について本明細書に示すように、約7.0〜9.0のpHのトリス塩酸緩衝液(例えば、5mM、10mM、15mM、20mM)が適切でありうる。ある実施の形態では、およそ7.0、7.5、8.0、8.5、または9.0のpHが好ましいであろう。幾つかの他の実施の形態では、およそ9.0のpHが好ましいであろう。他のゲルろ過マトリクスおよび緩衝系の使用は当技術分野で周知であり、本明細書に記載される方法の実施に適切でありうる。
【0015】
当業者は、多くの適切なイオン交換クロマトグラフィーマトリクス(イオン交換樹脂とも称される)を利用することができる。イオン交換マトリクスは、例えば、強陰イオン交換体、弱陰イオン交換体、強陽イオン交換体、および弱陽イオン交換体などの任意の利用可能なものから選択して差し支えない。典型的なマトリクスとしては、中でも、例えば、Qセファロース(商標)ファスト・フロー、SP「セファロース」ファスト・フロー、CM「セファロース」ファスト・フロー、DEAE「セファロース」ファスト・フロー、およびANX「セファロース」4ファスト・フローが挙げられる。好ましい溶媒はANX「セファロース」4ファスト・フロー樹脂であり、これを、例えば、約7.0〜9.0のpHのトリス塩酸緩衝液(例えば、5mM、10mM、15mM、20mM)で平衡化して構わない。緩衝液としては、およそ7.0、7.5、8.0、8.5、または9.0.のpHの10mMのトリス塩酸が好ましいであろう。他のイオン交換マトリクスおよび緩衝系の使用は当技術分野で周知であり、本明細書に記載される方法の実施にとって適切でありうる。
【0016】
本明細書に記載される方法の幾つかでは、溶出は、イオン交換マトリクスに結合するポックス・ウイルスを、溶出緩衝液と接触させることによって行われる。上述のように、ある実施の形態では、マトリクスおよび/または溶出システムは、ポックス・ウイルス選択性であることが好ましい。例えば、混入物質の大部分を樹脂から除去する予備的な溶出工程、続いて、ポックス・ウイルスの粒子をマトリクスから取り出す溶出工程を使用して差し支えない。別の方法として、または前述の溶出工程またはステップの1つ以上と組み合わせて、マトリクスに結合した混入物質を残留させると同時に、ポックス・ウイルスの粒子の大部分をマトリクスからあらかじめ除去する溶出工程を使用してもよい。また、混入物質を除去してマトリクスに結合した材料の大部分がポックス・ウイルスの成分になるように、洗浄工程も使用して差し支えない。そのような場合には、単一の溶出工程を用いて、結合したポックス・ウイルスの粒子を樹脂から除去して構わない。典型的には、塩溶液が溶出緩衝液として用いられる。溶出緩衝液には、任意の適切な塩を使用して差し支えない。ある実施の形態では、塩化ナトリウム(NaCl)が使用されうる。また、一部の実施の形態では、高塩濃度緩衝液が利用されうる。高塩濃度緩衝液は、典型的には、およそまたは具体的に300mM、600mMまたは1Mの塩(例えば、NaCl)である。例えば、溶出は、およそまたは具体的に300mM、600mMまたは1MのNaClを含む、適切な緩衝液中で行って差し支えない。例えば、トリスCL(例えば、5、10、15または20mM)緩衝液などの任意の適切な緩衝液が用いられうる。ある実施の形態では、溶出は、高濃度の塩(例えば、300mM、600mM、または1M)を含む、およそまたは具体的に7.0、7.5、8.0、8.5、または9.0のpHのトリスなどの緩衝液を使用して行われることが好ましい。他の溶出緩衝液の使用は当技術分野で周知であり、本明細書に記載される方法の実施に適切でありうる。
【0017】
細胞溶解物などのある程度精製されたサンプルを、例えば、硫安塩析、透析、サイズ排除分画法、密度勾配分画法、ショ糖クッション超遠心分離を含めた任意の幾つかの手段に供するか、または酵素に曝露して差し支えない。典型的な酵素としては、例えば、プロテアーゼ(例えば、トリプシン)、エンドヌクレアーゼ(例えば、ベンゾナーゼ)、または他の酵素が挙げられる。これらの手法のいずれかを、任意の他の手法の前に、単独で、または組み合わせて使用して差し支えなく、サンプルをイオン交換クロマトグラフィーに供して、実質的に精製された、本質的に精製された、または精製されたポックス・ウイルスの調製物を生成する前に、用いてもよい。
【0018】
本明細書に記載される方法は、ウイルスを単離するために用いられて差し支えなく、限定はしないが、ポックス・ウイルスが挙げられる(Smith, et al. 1983, Gene, 25 (1): 21-8; Moss, et al, 1992, Biotechnology, 20: 345-62; Moss, et al, 1992, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158: 25-38; Moss, et al. 1991. Science, 252: 1662-1667)。典型的なポックス・ウイルスは、ワクシニアおよびそれらの誘導体であり、とりわけ、NYVACおよび修飾アンカラウイルス(MVA)、アビポックス、鶏痘、カナリア痘、ALVAC、およびALVAC(2)が挙げられる。ポックス・ウイルスは、ポックス・ウイルスゲノムが内部に外因性の核酸配列を含むことを意味する、組換えでありうる。組換えポックス・ウイルスは、例えば、組換えポックス・ウイルスの粒子(あるいは組換えビリオンと称される)の形態をとりうる。
【0019】
NYVAC(vP866)は、既知のまたは潜在的な病原因子をコードするゲノムの必須でない6つの領域を欠失させることにより、ワクシニアウイルスのコペンハーゲンワクチン株から誘導された(例えば、米国特許第5,364,773号および同第5,494,807号明細書を参照のこと)。欠失遺伝子座はまた、外来遺伝子の挿入のための受容体遺伝子座として設計された。欠失領域は:チミジンキナーゼ遺伝子(TK;J2R);出血性領域(u;B13R+B14R);A型含有身体領域(ATI;A26L);血球凝集素遺伝子(HA;A56R);宿主域遺伝子領域(C7L−K1L);および、大サブユニット、リボヌクレオチド還元酵素(I4L)である。NYVACは、病原性および宿主域と関係のある遺伝子産物をコードする18のオープン・リーディング・フレームの特異的欠失によって生じた、遺伝子操作されたワクシニアウイルス株である。NYVACは、腫瘍抗原の発現に有用であることが示されている(例えば、米国特許第6,265,189号明細書を参照のこと)。NYVAC(vP866)、vP994、vCP205、vCP1433、placZH6H4Lreverse、pMPC6H6K3E3およびpC3H6FHVBもまた、ブダペスト条約の下、それぞれ寄託番号VR−2559、VR−2558、VR−2557、VR−2556、ATCC−97913、ATCC−97912、およびATCC−97914としてATCCに寄託された。
【0020】
修飾ウイルス・アンカラ(MVA)は、例えば、米国特許第5,185,146号および同第6,440,422号の各明細書に記載されている;Sutter, et al. (B. Dev. Biol. Stand. Basel, Karger 84:195-200 (1995)); Antoine, et al. (Virology 244: 365-396, 1998); Sutter et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10847-10851, 1992); Meyer et al. (J. Gen. Virol. 72: 1031-1038, 1991); Mahnel, ett al. (Berlin Munch. Tierarztl. Wochenschr. 107: 253-256, 1994); Mayr et al. (Zbl. Bakt. Hyg. I, Abt. Org. B 167: 375-390 (1987); およびStickl et al. (Dtsch. med. Wschr. 99: 2386-2392 (1974))。MVAは、寄託番号VR−1508およびVR−1566の下、ATCCから入手可能である。
【0021】
ALVAC系の組換えウイルス(すなわち、ALVAC−1およびALVAC−2)もまた、本明細書に記載される方法を用いて精製して差し支えない(例えば、米国特許第5,756,103号明細書参照)。ALVAC(2)は、ALVAC(2)ゲノムが、ワクシニアプロモーターの制御下でワクシニアE3LおよびK3L遺伝子を含むことを除けば、ALVAC(1)と同一である(米国特許第6,130,066号明細書;Beattie et al., 1995a, 1995b, 1991; Chang et al., 1992; Davies et al., 1993)。ALVAC(1)およびALVAC(2)は、両方とも、TAsなどの外来DNA配列の発現に有用であることが実証されている(Tartaglia et al., 1993 a,b ;米国特許第5,833,975号明細書)。ALVACは、ブダペスト条約の下、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(米国20110−2209、バージニア州マナッサス、ユニバーシティブールバード10801所在)に、ATCC寄託番号VR−2547として寄託された。
【0022】
TROVACウイルスもまた、本明細書に記載される方法を使用して精製して構わない。TROVACとは、1日齢のひよこのワクチン接種として認可されている、鶏痘ウイルスのFP−1ワクチン株から誘導されたプラーク−クローン化した分離株である、弱毒化した鶏痘のことをいう。TROVACは、同様に、ブダペスト条約の下、ATCCに寄託番号2553として寄託された。
【0023】
本明細書に記載される方法で精製したウイルスを含有する医薬組成物もまた、本明細書に提供される。適切な医薬組成物は、典型的には、少なくとも、ウイルスおよび、薬学的に許容される担体および/または賦形剤(例えば、混入物質とはみなされないもの)を含みうる。本明細書では「薬学的に許容される担体」という用語は、本明細書に記載の薬剤の送達を達成する、または促進するのに適切な1つ以上の製剤材料のことをいう。製剤は、緩衝液、塩、糖、および/または、当技術分野で周知の同様の化合物を含みうる。適切な組成物は、非経口、皮下、皮内、筋肉内または静脈内投与用に殺菌して調製した、殺菌懸濁液、シロップ、エマルション、またはエリキシル剤などの液体調製物を含みうる。加えて、組成物は、薬剤と同時投与または連続投与することができる。ヒトまたは他の哺乳動物に適切な日用量は、投与されるウイルスの種類、患者の病状、および他の因子に応じて大きく変化しうるが、日常的な方法を用いて決定して差し支えない。
【0024】
本明細書に記載される方法を使用する、ウイルスを精製するための試薬を含めたキットもまた提供される。キットには、熟練者が本明細書に記載される方法を行いうるように、例えば、緩衝液、フィルタなどが含まれうる。さらに、キットには、本明細書に記載される方法を行うための使用説明書を含めてもよい。
【0025】
本明細書で使用される略語には次のものがある:CPE:細胞変性効果;CCID50:細胞培養感染用量50%;CEF:ニワトリ胚線維芽細胞;CHT:セラミックハイドロキシアパタイト;CIM:対流相互作用溶媒(Convective Interaction Media);CV:カラム体積;EBA:膨張床吸着;EB14細胞株:VIVALIS社(フランス国所在)がニワトリ胚性幹細胞から誘導した安定した2倍体細胞株;EDTA:エチレンジアミン四酢酸;EEV:細胞外エンベロープウイルス;ELISA:酵素免疫吸着測定法;FBS:ウシ胎仔血清;FF:ファスト・フロー;G:遠心分離ユニット;GEQ:ゲノムの等価性;IMV:細胞内の成熟ウイルス;LMH:リットル/平方メートル/時間;MOI:感染の多重度;PBS:リン酸緩衝生理食塩水;QT35:日本ウズラから化学的に誘発した線維肉腫;qPCR:定量的ポリメラーゼ連鎖反応;RT:室温;TFF:タンジェンシャルフローろ過;TMP:膜間差圧;WFI:注射用蒸留水。
【0026】
細胞変性効果(CPE)は、ウイルス感染に起因する、細胞円形化および基質からの剥離、細胞溶解、融合細胞形成、および封入体形成などの細胞構造における形態学的変化の観察として定義される。CCID50とは、植菌した細胞培養の所定のバッチの50%を感染させるのに必要とされるウイルスの希釈のことをいう。アッセイは、細胞を破壊するウイルス粒子の存在および検出にかかっている。宿主細胞は、96ウェルプレートにおける、一定分量のウイルス希釈物を加えた融合性の健全な単層で増殖させる。ウイルスが複製し、子孫ビリオンが放出されて、インキュベーションの間に健康な細胞を感染させる。ある期間にわたりCPEを発現させて、各ウェルのCPEの有無について記録する。単位体積あたりの感染単位で発現したウイルスの懸濁液の「力価」は、規定の条件下、感染または細胞変性効果の病巣を生じる能力のある、懸濁液中のウイルスの粒子の数の評価である。ポックス・ウイルスの力価は、使用する細胞の種類、感染の方法、およびインキュベーション条件に伴って変化するであろう。「GEQ」またはゲノムの等価性は、0.3フェムトグラムのDNAと同程度の1ゲノム等価性を示した。
【0027】
例示の目的で与えられる以下の実施例から、本発明およびその多くの利点がさらに良好に理解されよう。
【実施例】
【0028】
本明細書に記載される方法は、ポックス・ウイルスなどのウイルスの精製に有用である。本方法は、ワクチンの安全性、一貫性および有効性についての規制上の要件を満たす、非アビポックスDNAのレベルが低減された、ALVACなどのアビポックス・ウイルスを含有する組成物を調製するための、クロマトグラフィーに基づいた精製方法である。以下に、ウイルスを精製するための材料、最適化実験、および幾つかの典型的な方法について説明する。
【0029】
I.材料
3つの実施例に使用した緩衝液としては、10mMのトリス塩酸緩衝液、pH7.4;10mMのトリス塩酸緩衝液、pH9.0;10mMのトリス塩酸/1M NaCl緩衝液、pH7.4;10mMのトリス塩酸/1M NaCl緩衝液、pH9.0が挙げられる。用いた他の試薬としては、0.5M MgCl2、1M EDTA、ベンゾナーゼ・エンドヌクレアーゼ(EM Industries,inc.社製、カタログ番号1.01694.0002および1.1697.0002)、ALVAC−HIV(vCP1521)/EB14採取物、ALVAC黒色腫(vCP2264)/CEF採取物、Trovax/ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)およびTrovax/アヒル細胞株(Cell & Viral Platform社製(カナダ国AvP所在))が挙げられる。本明細書で使用したクロマトグラフのマトリクスとしては、「セファロース」4FF弱陰イオン交換体(例えば、ANX「セファロース」4FF(GE Healthcare社製、カタログ番号17−1287−01および171287−04))、「セファロース」4FF(GE Healthcare社製、カタログ番号17−0149−01および17−0149−05)、および「セファロース」6FF(GE Healthcare社製、カタログ番号17−0159−01)が挙げられる。
【0030】
次に、以下に記載する方法に使用する機器の非限定的なリストを示す:AKTA explorer、Unicornソフトウェア(GE Healthcare社製);BPGクロマトグラフィーカラム100/500(GE Healthcare社製);遠心分離機(Jouan社製KR422、機器番号CEN1122 RSM 1167);Easy Load II Masterflexポンプ(Cole−Parmer Instrument Company社製、モデル77200−062、およびモデル7529−10);冷凍庫、−70℃(サンヨー社製、BIF0309);5μmの深さのプロファイル・スターフィルタ(PALL社製、カタログ番号BYA050P6);3μmの深さのプロファイル・スターフィルタ(PALL社製、カタログ番号BYA030P6);シリコーン製チューブ(3/16インチおよび3/8インチ、Tygon社製、カタログ番号ABW0013);Virsonic600超音波細胞破壊器(超音波処理装置);Misonix社製Flocell連続流チャンバ;TFFカートリッジ(GE Healthcare社製、モデル番号UPF−500−C−3×2MA);オートクレーブ(Kuhlman社製、KG2119)、ミリポア社製ポリガードopticap XL5のデプスフィルタ(カタログ番号KN1HA05HH1);インキュベーター(サンヨー社製、ID番号2264、38±1℃に設定);および、水浴(Polyscience社製、モデル番号G−560)。
【0031】
II.方法
A.典型的な方法
本明細書に記載の精製方法は、ポックス・ウイルス系のワクチンの精製に有用である。このようなポックス・ウイルスとしては、限定はしないが、ALVAC−2などのALVACウイルスおよびそれらの誘導体が挙げられる。一般に、本方法は、次の工程を有してなる:
1.例えばバイオリアクターを使用して、細胞中に生じたサンプルからポックス・ウイルス採取物を入手し、その採取物を遠心分離によって濃縮する(すなわち10倍);
2.直接的な超音波分解による細胞破壊などの適切な方法によって細胞内のポックス・ウイルスを放出し、ポックス・ウイルスの粗調製物を生成する;
3.例えば、5μmおよび3μmのデプスフィルタを用いた逐次的ろ過などを使用して、前記ポックス・ウイルスの粗調製物を清澄する;
4.ベンゾナーゼ・ヌクレアーゼなどの試薬を使用して、前記清澄化したポックス・ウイルスの粗調製物内に存在する遊離のDNAを分解する;
5.「セファロース」4FF/6FFなどの適切なクロマトグラフのマトリクスおよび緩衝系を使用してゲルろ過することにより、半精製したポックス・ウイルス調製物を生成する;
6.「セファロース」4FF(ANX)などの適切なイオン交換マトリクスを使用して、実質的に精製された、本質的に精製された、または精製されたポックス・ウイルス調製物を精製する;
7.ろ過(すなわち、タンジェンシャルフローろ過)によって緩衝液を濃縮および交換する。
【0032】
本方法の特定の実施の形態を下記に記載する。そこに示すように、精製したポックス・ウイルス調製物(ALVAC)は、ポックス・ウイルス採取物から首尾よく単離された。
【0033】
B.ALVAC−HIVベクターの精製
例えばバイオリアクター中で生成したサンプルからのポックス・ウイルス採取物の入手、および遠心分離による濃縮(10倍)
ALVAC HIVを、バイオリアクター(例えば10Lのバイオリアクター)において、鳥細胞系EB14/074内で増殖させた。培養液を採取し、1Lの殺菌した遠心分離ボトル(700mL/ボトル)に等分して入れ、Jouan KR422遠心分離機を使用して4000×gで40分間、4℃で遠心分離にかけた。上清を廃棄し、50mLの10mM トリス塩酸 pH7.0〜9.0(ボトルあたり)に細胞を再懸濁した。混合物を強攪拌し、1Lの殺菌したナルゲンボトルに移した。10mMのトリス塩酸 pH7.0〜9.0を用いて、濃縮した材料の最終体積を、最初の採取体積の1/10にし、10倍(10×)濃度の採取物を生成した。さらに使用するまで、濃縮採取物を−80℃の冷凍庫に保管した。
【0034】
2.ポックス・ウイルスの粗調製物の生成のため、直接的な超音波分解などによる細胞破壊などの適切な方法による細胞内のポックス・ウイルスの放出
注入/排出管を備えた超音波処理装置をオートクレーブにかけた。Easyload II Masterflexポンプを超音波処理装置の注入ラインに接続した。200mLの10mM トリス塩酸 pH7.0〜9.0緩衝液を、50mL/分の流量でポンプで送り出すことにより、超音波処理装置を平衡化し、ラインを結びつけた。10×濃縮した採取物を、50mL/分の流量で超音波処理装置にポンプで通した。サンプルが超音波処理装置の注入口に達したら、超音波処理装置を55〜65ワットの出力で起動させた。次に、超音波分解した採取物を、超音波処理装置の排出口を通じて滅菌ボトル内に回収した。これがポックス・ウイルスの粗調製物である。
【0035】
3.例えば5μmおよび3μmのデプスフィルタを用いた逐次的ろ過を使用する、ポックス・ウイルスの粗調製物の清澄
注入/排出管に連結させて設置した5μm/3μmのフィルタ(PALL社製、BY050P6およびBY030P6)をオートクレーブにかけた。Easyload II Masterflexポンプを5μmフィルタの注入ラインに接続した。200mLの10mM トリス塩酸 pH7.0〜9.0を200mL/分のポンプ流量で、ポンプで送り込むことにより、デプスフィルタを平衡化した。超音波分解した採取物を、等量の10mMのトリス塩酸 pH7.0〜9.0緩衝液で希釈した。最大500mLの希釈採取物を、200mL/分の流量、続いて400mL/分の流量で、一連の5μm/3μmのデプスフィルタ(5μm、続いて3μmフィルタ)を通じてポンプで送り込み、残りのサンプルを回収した。50mLの10mM トリス塩酸 pH7.0〜9.0でデプスフィルタをすすぎ、ホールドアップサンプルを排出させた。さらに使用するまで、清澄化したポックス・ウイルスの粗調製物を−80℃の冷凍庫に保管した。
【0036】
4.ベンゾナーゼ・ヌクレアーゼなどの試薬を使用する清澄化したポックス・ウイルスの粗調製物内に存在する遊離のDNAの分解
ベンゾナーゼ・ヌクレアーゼを、10〜50単位/mlの最終濃度まで、あらかじめ選択された量の清澄化したポックス・ウイルス調製物に加えた。MgCl2(ヌクレアーゼ触媒)を、2.0mMの最終濃度に至るまで加えた。混合容器内の成分を、マグネティックスターラー撹拌子で、20±3℃で1〜2時間(特定の調製物に応じて決まる)混合した。消化の終わりに、5mMの最終濃度でEDTAを加え、酵素反応を停止させた。
【0037】
5.「セファロース」4FF/6FFなどの適切なクロマトグラフのマトリクスおよび緩衝系を用いたゲルろ過による半精製したポックス・ウイルス調製物の生成
カラム、アダプターおよびそれに関連する管類を、カラムに1M NaOHを充填することによって一晩浄化した。次に、NaOHを排出し、カラム、アダプターおよび関連するラインを2−カラム体積の注射用蒸留水(WFI)ですすぎ、続いて、1−カラム体積の70%エタノールで浄化した。次に、カラムを10cmのWFIで満たすか、または緩衝液で平衡化し、所望の体積の樹脂(「セファロース」4FFまたは「セファロース」6FF)をカラムに注ぎ、20cmの高さのカラムに充填した。WFIを「セファロース」4FFまたは「セファロース」6FFの溶媒と混合して均質な溶液を生成した。高さ調節ハンドルを使用して、最上部のアダプターを液体の表面の3〜10cm上に配置した。最上部のアダプターの注入管をAKTA explorerシステムに取り付け、ポンプを通じて70%エタノールを通し、ラインを浄化し、カラムネットを湿らせ、AKTAシステムを用いて閉じ込められた空気を排除した。上部に1〜2cmの透明な液体層が見えるまで、樹脂を静置した。最上部のアダプターを透明な液体層の下1〜2cmまで下げて、アダプターのO−リングを封止した。カラム排出ラインをAKTA explorerシステムに取り付けた。カラムを充填するため、WFIまたは平衡緩衝液のいずれかを、AKTAシステムを使用して、ポンプで、23〜30cm/時間の速度で送り出した。樹脂がおよそ20cmの高さまで充填されたら、最上部のアダプターを落ち着かせた樹脂床の上およそ0.5cmまで下げ、封止調節ノブを時計回りに回転させてアダプターのO−リングを封止した。
【0038】
すべてのバルブに側路を設けて、高流量における背圧を低減するように、AKTA explorerシステムを適合させた。100mLの70%EtOHを用いて手動でサンプルのラインを浄化し、200mLのWFIですすぎ、100mLの10mM トリス塩酸 pH7.0〜9.0で平衡化した。上述のようにカラム充填し、すべての処理パラメータ(伝導性およびpH)の曲線が安定するまで、樹脂を2−カラム体積の緩衝液(10mMのトリス塩酸 pH7.0〜9.0)で15〜23cm/時間、平衡化した。生物学的に封じ込めた容器の内部のカラム上に負荷されるように、AKTAのサンプルラインを清澄化したポックス・ウイルス調製物内に設置した。サンプルの負荷体積は、カラム体積の15〜20%であった。
【0039】
BPG100(1.5Lの「セファロース」4FFまたは6FF)クロマトグラフィーを、次のパラメータを有するあらかじめプログラムした方法下で行った:
・15cm/時間の流量
・50mLの10mM トリス塩酸 pH7.0〜9.0で平衡化
・サンプル負荷体積:カラム体積の15%
・2−カラム体積の10mMのトリス塩酸 pH7.0〜9.0で溶出
最初の溶出ピークは、70〜90%のウイルス(500mL)を含むことを示し、これを500mlの殺菌したナルゲンボトル内に回収し、この半精製したポックス・ウイルスの調製物を、さらに使用するまで、4℃で保管した。
【0040】
6.「セファロース」4FF(ANX)などの適切なイオン交換マトリクスを使用した、実質的に精製された、本質的に精製された、または精製されたポックス・ウイルス調製物の精製
適切な体積(ゲルろ過ウイルス含有画分の体積と等しい乾燥樹脂体積)のANX「セファロース」4FF(GE Healthcare社製、カタログ番号17−1287−01および171287−04)樹脂スラリー(20%エタノール中)を、2Lのナルゲンボトルに注ぎ(マグネティックスターラー攪拌子を含む)、樹脂を落ち着かせた。Masterflexポンプを使用して200mL/分の流量でポンプによって送り出すことにより、エタノールをを除去した。2−樹脂体積のWFIで樹脂を2回洗浄後、2−樹脂体積の10mMのトリス塩酸 pH7.0〜9.0を用いて平衡化した(2回)。樹脂を落ち着かせ、200〜500mL/分の速度で、ポンプによって送り出すことにより、緩衝液を除去した。落ち着かせた樹脂に等量のサンプルを加え、20±3℃で1時間混合した。樹脂を落ち着かせ、200〜500mL/分のポンプ速度でポンプによって送り出すことにより、結合していないサンプルをを除去した。次に、2−樹脂体積の10mMのトリス塩酸 pH7.0〜9.0で樹脂を2回洗浄した。次に、樹脂を落ち着かせ、得られた洗浄サンプルを、200〜500mL/分のポンプ速度でポンプによって除去した。ウイルスを2−樹脂体積の10mMのトリス塩酸 pH7.0〜9.0/1M NaClで3回、溶出させて、精製ポックス・ウイルス調製物を生成した。次に樹脂を落ち着かせ、溶出液を、200〜500mL/分の流量で、ポンプによって滅菌ボトル内に移した。54μmのフィルタ(ミリポア社製ポリガードCN optical XL5)を使用して、500〜1000mL/分のポンプ速度で、残留樹脂を溶出液から除去した。
【0041】
7.ろ過(すなわち、タンジェンシャルフローろ過(TFF))による緩衝液の濃縮および交換
TFFカートリッジの注入(供給)ラインをMasterflexポンプに繋がる管に接続し、透過排出口の1つをクランプで固定した。カートリッジを通じて70%エタノールをポンプで送り出し、カートリッジおよび関連するラインを一晩、溶解した貯蔵グリセロールに浸漬し、システムを浄化した。カートリッジを10〜12LのWFIを用いて、200mL/分のポンプ速度、0.2〜0.4バールの膜間差圧(TMP)ですすぎ、エタノールを除去し、水分フラックスについて試験した。透過流量およびTMPを測定することにより、清浄な水分フラックス試験を行った:
フラックス[リットル、平方メートル、時間(LMH)/バール]=
{[透過流量(mL/分)/カートリッジ面積(m2)]×0.06}/TMP(バール)
フラックスは、分析証明書に示されるように、新しいカートリッジでは399LMH/バールよりも大きくなくてはならない。カートリッジは、浸透ラインをクランプで固定することにより、0.5〜1Lの10mMのトリス塩酸 pH7.0〜9.0を、200mL/分のクロスフロー流量で30分間、循環させることによって平衡化した。8000〜10000秒-1のせん断速度および0.4〜1バールのTMPで、溶出液の最初の体積の1/10〜1/3までサンプルを濃縮した。3体積の10mM トリス塩酸 pH7.0〜9.0で連続的なダイアフィルトレーションをすることにより緩衝液の交換を行った。ダイアフィルタにかけたサンプルを所望の体積まで濃縮した。浸透ラインをクランプ固定し、濃縮物を5〜10分間、上記せん断速度で循環させた。濃縮サンプルの体積を回収し、測定した。200mLの10mM トリス塩酸 pH7.0〜9.0で、上記せん断速度でポンプによる送り出しによってシステムを洗浄し、洗浄液を回収した。1Lの70%エタノールを通すことによってシステムを浄化した。
【0042】
この実施の形態の概要を次に示す:
【表1】

【0043】
8.DNA抽出、ゲル電気泳動、および分析
Qiagen QIAamp DNABlood Miniキットを用いて、本質的に上述の通りにDNA抽出を行った。基本的な手順の例外として:
1.Qiagen DNeasy Tissueキット(50)(カタログ番号69504)を使用した;
2.ATL緩衝液、プロテイナーゼKおよび2−メルカプトエタノール(SOPのように)および出発物質サンプルを含む組織溶解工程には、2−メルカプトエタノールを使用しなかった;
3.出発サンプルのサイズは200μlであった(SM);
4.2回目の洗浄工程においてサンプルを13,200rpm(14,000rpmの代わりに)で遠心分離にかけた。
【0044】
下記のように1.2%のアガロースゲル(100mL)を調製することにより、DNAゲル電気泳動を行った:
1.2gのアガロースを250mLの三角フラスコ内に入れ;
100mLの1×TAEを加えて攪拌混合し;
混合物を1.5分間、マイクロ波に供してアガロースを溶解させ;
加熱混合物を〜5分間、約60℃まで冷却し;
10μlの臭化エチジウムを加えて攪拌混合し;
アガロース溶液をゆっくりとタンクに注いでコームを挿入し;
ゲルを30分間、固化させ;
1×TAEの緩衝液をゲルタンク内に注ぎ、ゲルを2〜5mmの深さに沈めた。各DNAサンプルの適正な量(18μl)を新しいマイクロチューブ内に移し;
10×負荷緩衝液(2μl)を適正な量で各管内に加え;
サンプルを負荷して、75Vで〜40分間、ゲルを泳動させることによって、電気泳動を行った。次に、UV光の下でゲルの写真を撮影し、サンプルを観察した。
【0045】
ウイルスの出発物質および精製された生成物のDNAを、Quant−iT PicoGreen dsDNAアッセイキット(Invitrogen社製)によって決定した。キットの基本的な指示書に関して、唯一の例外は、プレートにおける連続希釈の前に、粗サンプルから抽出したDNAを1:5に希釈したことである。
【0046】
9.MicroBradfordアッセイを用いた全タンパク質定量化
1.PBS中、タンパク質標準BSAの7種類の希釈を、試験すべきタンパク質溶液の代表として調製した。250μg/mLの保管BSAを使用して、このマイクロタイタープレートアッセイにおけるBSAの範囲は、2.5〜20μg/ウェルであった。タンパク質溶液を2回アッセイした。
2.各ウェル内のタンパク質含量が標準曲線の範囲内になるように、適切な体積の各サンプルを2回、隣接したマイクロタイタープレートウェル内に負荷した。
3.適切な体積のPBSを全体積が200μlになるまで各ウェル内に加えた。各サンプルウェルに50μlの濃縮色素試薬を加えた。マルチチャンネルピペッターを使用してサンプルおよび試薬を完全に混合した。
4.プレートを、室温で15分間、インキュベートした。
5.CurveEX回帰を用いて、Dynexプレートリーダー上の595nmにおける吸光度を測定した。
【0047】
10.ELISAを用いた鳥類タンパク質の定量化
1.マイクロタイタープレートプレートに100μlの抗EB14抗体を5μg/mlでコーティングし、0.05MのNa2CO3/NaHCO3、pH9.6において18時間、室温でインキュベートした。
2.プレートを300μlの5%BSA/PBSで遮断し、室温で1時間インキュベートし、続いて0.1% BSA/PBS/0.1% Tween20で2回洗浄した。
3.0.1% BSA/PBS/0.1% Tween20中、希釈した100μlの抗原を加え、その後、室温で1時間、インキュベーションし、その後、0.1% BSA/PBS/0.1% Tween20で5回洗浄した。
4.0.1% BSA/PBS/0.1% Tween20中の100μlのビオチン−抗EB14 抗体を0.4/mlで加え、その後、 室温で1時間インキュベーションし、その後、0.1% BSA/PBS/0.1% Tween20で5回洗浄した。
5.0.1% BSA/PBS/0.1% Tween20中、1/20000に希釈した100μlのアビジン−HRPを加え、その後、室温で1時間インキュベーションし、その後、0.1% BSA/PBS/0.1% Tween20で5回洗浄した。
6.100μlのTMB/H22(1:9)を加えて室温で10分間インキュベートし、50μlの1M H2SO4で反応を停止した。
7.Dynexプレートリーダーを用いて、450nmにおける吸光度を測定した。
【0048】
11.ALVAC定量的PCR(qPCR)および鳥類qPCR
ALVAC特異的な定量的PCRを使用して、ALVAC DNAおよびゲノムの等価性の定量化(GEQ)を行った。詳細については、QO SOP New:Quantification of ALVAC DNA using Quantitative PCRを参照されたい。鳥類qPCRはフランス国AvPにおいて開発されている。
【0049】
12.ベンゾナーゼELISA
1.EMD ELISAキットから提供される、2つの異なる範囲のベンゾナーゼ・エンドヌクレアーゼ標準の6種類の希釈物を調製した。範囲は、5μg/mLの保管ベンゾナーゼを使用して0.1〜100ng/mlであった。サンプルを2回アッセイした。体積の各ウェルが100μlになるように希釈した緩衝液1を用いて、標準をプレート上に負荷した。
2.100μlの各サンプル溶液を、別々のマイクロタイタープレートウェルに負荷した。
3.100μlの緩衝液1を各ブランクウェルに加えた。
4.サンプルを室温で2時間インキュベートした。
5.何回もプレートのタッピングを繰り返しながら、プレートをペーパータオル上に逆さにして空け、液体の完全な移動を確実にした。次にウェルを緩衝液1で満たし、再び空にする前に1分間インキュベートした。ステップ5を3回繰り返した。
6.保管試薬B(西洋わさびペルオキシダーゼ複合抗体)に由来する緩衝液1で1:100に希釈した100μlの試薬Bとともに、室温で1時間、サンプルをインキュベートした。
7.次に、プレートをステップ6に記載したように洗浄した。
8.60μlの試薬Cを各ウェルに加え、その後、15分間インキュベーションした(インキュベーションの間、プレートを光から保護するべきである)。
9.140μlの停止試薬(0.2M H2SO4)を各ウェルに加えることによって、酵素反応を停止した。
10.次に、Dynexプレートリーダーを使用して、各ウェルの450nmにおける吸光度を読み取った。
【0050】
13.CCID50アッセイを使用したウイルス滴定
QT35細胞を使用するCCID50アッセイによって、ALVACウイルスの力価を測定した。詳細については、SOP番号22PD−039バージョン4.0を参照のこと。例外:精製工程の間のオープンシステムへのサンプルの曝露に起因する、CCID50アッセイにおける汚染を排除するため、SOPに記載される2倍の感染溶媒中の抗生物質を使用した。試験サンプルは間接的に超音波分解した。
【0051】
14.結果
上述の手順は、90%を超える不純物(例えば、限定はしないが、鳥類DNAおよび/または非ベクタータンパク質を含むものなど)を除去した組成物(精製された調製物)を提供する。3つの実施の形態では(表2)、精製工程からの全般的なウイルス回収は20〜52%であった。清澄化の工程は、全タンパク質の55〜71%を除去した。続くゲルろ過工程では、全タンパク質の61〜72%を除去した。さらには、ANXイオン交換バッチ吸着工程では68〜78%を除去し、その後のTFFの工程では、バッチ吸着で得られた材料から、さらに全タンパク質の33〜41%を除去した。結果として、全タンパク質の全般的な除去は、およそ97.6〜98.2%であった。最終的な精製された生成物中の鳥類タンパク質は、98〜99%除去された。タンパク質全体(pg)のCCID50に対する比は11対17であった(表2)。
【0052】
遊離の鳥類DNAの分解および除去はまた、精製工程を通じて有効であることが判明した。ベンゾナーゼ処理およびゲルろ過の後、清澄化した材料から、わずかに1〜1.5%の鳥類DNAしか回収されなかった(表2)。加えて、TFFの工程の後、わずかに2.7〜14%の鳥類DNAしか回収されず、追加のDNA(85〜97%)がTFFの工程に続くANXイオン交換によって除去されたことを示唆している(表2)。最終生成物中の鳥類DNA含量の99%が除去された(Quant−iT PicoGreen dsDNAアッセイキット、Invitrogen社製、カタログ番号P11496、製造業者の使用説明書を使用)。
【0053】
製造業者の使用説明書を使用する、ベンゾナーゼELISA(ベンゾナーゼ・エンドヌクレアーゼELISAキット、EMD Chemicals,inc.社、カタログ番号1.01681.0002)を使用して、ゲルろ過から得られたサンプル、ANXバッチ吸着精製された材料、ならびに最終的に精製された生成物中の残留するベンゾナーゼを試験した。データは、すべての試験サンプルにおいて、ベンゾナーゼが、ゲルろ過の工程によって検出限界未満のレベル(0.2ng/ml)まで除去されることを示した。
【表2−1】

【表2−2】

【0054】
C.ALVAC−黒色腫ベクターの精製
1.材料
以下の研究に用いられた材料には次のものが挙げられる:QT35細胞;QT35成長培地:SOP番号22PD−039;ハムF−10培地(Gibco社カタログ番号11550−043);Hank's溶液を用いた培地199(Gibco社カタログ番号12350−039);ウシ胎仔血清(FBS)、JRH社カタログ番号12107−78P;トリプトースリン酸ブイヨン粉末(Difco社製、BD260300);ペニシリン・ジヒドロストレプトマイシン(Gibco社製);ベンゾナーゼ・エンドヌクレアーゼ、EM Industries,inc.社カタログ番号1.01694.0002および1.1697.0002;ベンゾナーゼ・エンドヌクレアーゼELISAキット、EMD Chemicals,inc.社カタログ番号1.01681.0002;DNAeasyキット、Qiagen社製、カタログ番号69504;Quant−iT PicoGreen dsDNAアッセイキット、Invitrogen社製、カタログ番号P11496;PBLトリプチケースソイブロス、Beckon Dickenson社製;5%のヒツジ血液を含むトリプティックソイ寒天培地(TSA II);ANX「セファロース」4FF樹脂、Amersham Biosciences社製、カタログ番号17−1287−01および171287−04;および、「セファロース」4FF樹脂、Amersham Biosciences社製、カタログ番号17−0149−01および17−0149−05。
【0055】
2.方法
a.超音波分解を使用するウイルス放出
ALVAC−黒色腫採取物を、遠心分離(4000×g、4℃で40分間)を用いて最初に清澄化し、その後、ALVAC−HIVウイルスについて上述したように、5μm/3μmのデプスフィルタを用いてろ過した。冷凍した場合には、ウイルスサンプルをWFI水を含む37℃の水浴で解凍した。CCID50アッセイで試験する前に、ウイルスを超音波分解した。サンプルを15mlまたは50mLの試験管に入れて、冷却した氷水で満たしたVirtisソニケーターのカップホーン内で1分間を2回、1秒オン/1秒オフのパルスおよび7.5の出力を用いて、超音波分解した。超音波分解の後、サンプルを氷上で冷却し、超音波分解の間水温をモニタした。必要に応じて少量の氷を加えた。
【0056】
b.ウイルスの滴定
QT35細胞を使用するCCID50アッセイによってALVACウイルスの力価を測定した。詳細については、SOP番号22PD−039バージョン4.0を参照のこと。例外:精製工程の間のオープンシステムへのサンプルの曝露に起因する、CCID50アッセイにおける汚染を排除するため、SOPに記載される2倍の感染溶媒中の抗生物質を使用した。試験サンプルは間接的に超音波分解した。
【0057】
c.電子顕微鏡法
下記のように電子顕微鏡法を用いてサンプルをを試験した:
1.出発物質を−80℃の冷凍庫から取り出し、37℃の水浴で解凍した。
2.出発物質を、必要に応じて、10mMのトリス塩酸 pH8.0;9.0;または10.0で10倍に希釈した。
3.サンプルを間接的に超音波分解した。
4.適用時、室温で2時間、または2〜8℃で一晩のいずれかで、サンプルをインキュベートした。
5.適切なインキュベーション時間の後、インキュベートしたウイルスの懸濁液に対して1:1の体積比でパラホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドを含む固定緩衝液を用いて、ウイルスを固定した。トロント大学の電子顕微鏡の研究室で検査するまで、固定化したウイルスサンプルを2〜8℃で保管した。
6.直接滴定法を使用する逆染色法による透過型電子顕微鏡での検査のためのサンプルを調製した。サンプルの液滴(5μl)をカーボン−フォルムバーでコーティングした400メッシュの銅格子上に直接置いた。サンプルは、2%のリンタングステン酸PTA(pH6.5)または2%の酢酸ウラニル(UA)の液滴(10μl)を準備した格子の上に加えることによってネガティブ染色した。30秒〜1分後、格子をペーパーフィルタでブロット乾燥させた。サンプルを、75KvにおけるHitachi H 7000透過型電子顕微鏡で検査し、写真撮影した。
【0058】
d.遊離の核酸(DNA)のベンゾナーゼ・ヌクレアーゼ分解
ウイルスのサンプルを37℃の水浴で解凍し、セクション5.2.1に記載されるように間接的に超音波分解した。所望の量の清澄化した材料を、20±3℃で所望の期間、さまざまな量(U/ml)のベンゾナーゼで処理した。別記しない限り、MgCl2を2.0mMの最終濃度になるまで加えた。攪拌子を用いて成分を混合し、規定の条件に従って、懸濁液をインキュベートした。指定されたインキュベーション時間の後、さらなる分析のため、サンプルを−80℃に維持した。
【0059】
e.DNA抽出、ゲル電気泳動、および分析
Qiagen QIAamp DNABlood Miniキットを使用して、本質的に記載されるとおりに、DNA抽出を行った。基本的な手順の例外として、下記のものが挙げられる:
1.Qiagen DNeasy Tissueキット(50)(カタログ番号69504)を使用した;
2.ATL緩衝液、プロテイナーゼKおよび2−メルカプトエタノール(SOPの通り)および出発物質サンプルを含む組織溶解工程には2−メルカプトエタノールは使用しなかった;
3.出発サンプルサイズは200μlであった(SM);
4.2回目の洗浄工程において、13,200rpm(14,000rpmの代わりに)で、サンプルを遠心分離にかけた。
【0060】
下記のように1.2%のアガロースゲル(100mL)を調製することにより、DNAゲル電気泳動を行った:
1.2gのアガロースを250mLの三角フラスコ内に入れ;
100mLの1×TAEを加えて攪拌混合し;
混合物を1.5分間、マイクロ波に供してアガロースを溶解させ;
加熱混合物を〜5分間、約60℃まで冷却し;
10μlの臭化エチジウムを加えて攪拌混合し;
アガロース溶液をゆっくりとタンクに注いでコームを挿入し;
ゲルを30分間、固化させ;
1×TAEの緩衝液をゲルタンク内に注ぎ、ゲルを2〜5mmの深さに沈めた。各DNAサンプルの適正な量(18μl)を新しいマイクロチューブ内に移し;
10×負荷緩衝液(2μl)を適正な量で各管内に加え;
サンプルを負荷して、75Vで〜40分間、ゲルを泳動させることによって、電気泳動を行った。次に、UV光の下でゲルの写真を撮影し、サンプルを観察した。ウイルスの出発物質および精製された生成物のDNAを、PicoGreenアッセイ(分子プローブ、Eugene社製(米国オレゴン州所在))によって決定した。キットの基本的な指示書に関して、唯一の例外は、プレートにおける連続希釈の前に、粗サンプルから抽出したDNAを1:5に希釈したことである。
【0061】
f.MicroBradfordアッセイを用いた全タンパク質の定量化
標準として、タンパク質標準(PBS中に溶解したBSA)の8種類の希釈物を、試験すべきタンパク質溶液の代表として使用した。このマイクロタイタープレートアッセイにおけるBSAの範囲は、低濃度のサンプルでは1.25〜10.0μg/ウェルであり、高濃度のサンプルでは10.0〜60.0μg/ウェルである。保管BSA溶液(250μg/ML)を使用した。タンパク質溶液を2回アッセイした。適切な体積の各サンプルを、各ウェル内のタンパク質含量が標準曲線内に入るように、2回、隣接したマイクロタイタープレートウェルに負荷した。全体積が200μlになるように、適切な体積のPBSを各ウェルに加え、50μLの濃縮した色素試薬を各サンプルウェルに加えた。マルチチャンネルピペッターを使用してサンプルおよび試薬を完全に混合し(およそ10回)、室温で15分間インキュベートし、CurveEX直線回帰を使用し、Dynexプレートリーダー上で、595nmにおける吸光度を測定した。
【0062】
g.ANXイオン交換バッチ吸着クロマトグラフィー
樹脂を下記のように調製した:
1.樹脂625mL(500mLの乾燥樹脂)を2Lのナルゲンボトルに注ぎ、落ち着かせた。
2.Masterflexデジタル標準駆動を使用して、および/またはピペットにより、ポンプによって送り出すことにより可能な程度まで、エタノールを除去した。
3.2体積(1000mL)のWFI水を加えることによって樹脂を洗浄し、攪拌プレート上で10分間混合した。落ち着かせた後、WFIをポンプおよび/またはピペットによって除去した。次に、この工程を繰り返した。
4.2体積(1000mL)の10mMのトリス塩酸 pH7.4を用いて樹脂を平衡化し、10分間混合した。落ち着かせた後、10mMのトリス塩酸 pH7.4を、ポンプおよび/またはピペットによって除去した。次に、この工程を繰り返した。
【0063】
およそ500mLの試験サンプル(すなわち、ALVAC出発物質)を平衡化した樹脂と合わせて、攪拌プレート上で60分間混合した。次に、混合物を落ち着かせ、結合していないサンプルを、ポンプおよび/またはピペットによって除去した。
【0064】
次に、混合物を、2体積(1000mL)の10mMのトリス塩酸 pH7.4で、10分間混合することによって洗浄した。落ち着かせた後、洗浄サンプルを、別々の容器にポンプで送り出した。その後、これを1回繰り返した。
【0065】
サンプルを10mMのトリス pH7.4/1M NaClと10分間混合することによって溶出を達成した。落ち着かせた後、ポンプによる送り出しまたはピペット操作によって、溶出サンプルを別々の容器に取り出した。これをさらに2回繰り返し、合わせたろ過溶出液を得た。次に、溶出液を、できれば−80℃、または4℃で保管した。
【0066】
h.スピナーフラスコ(10L規模)を用いたバッチ吸着
バッチ吸着システムを図1に示すように配置した。樹脂は、次のように調製した:エタノールを、6.25Lの樹脂(5.0Lの乾燥樹脂)を含む15Lのスピナーフラスコの外にポンプで送り出した;2体積(10L)のWFI水を用いて樹脂を洗浄し、10分間混合した;落ち着かせた後、WFIを1L/分で、ポンプで送り出し、この工程を1回繰り返した。次に、2体積(10L)の10mMのトリス塩酸 pH7.4を用いて樹脂を平衡化し、10分間混合した。落ち着かせた後、次に、10mMのトリス塩酸 pH7.4緩衝液を1L/分の速度で、ポンプで送り出し、この工程を1回繰り返した。攪拌プレートを用いて、5Lのサンプルを、平衡化した樹脂と60分間混合した。落ち着かせた後、結合していないサンプルを、750mL/分の速度でポンプにより送り出すことにより、別々の容器に取り出した。次いで、サンプルを、2体積(10L)の10mMのトリス塩酸 pH7.4で、10分間混合することにより、洗浄した。落ち着かせた後、洗浄したサンプルを、1L/分の速度で、ポンプで送り出した。次にこの工程を繰り返し、合わせた洗浄1/2サンプルを得た。サンプルを10mMのトリス塩酸 pH7.4/1M NaClと10分間混合することによって、ウイルスを樹脂から溶出させた。落ち着かせた後、溶出サンプルを、1L/分の速度で、30μmフィルタを通じてポンプにより送り出すことにより、別々の容器に取り出した。この工程をさらに2回繰り返し、合わせたろ過溶出液を得た。溶出サンプルをできれば−80℃、または4℃で保管した。
【0067】
i.大規模BPG100/200カラム(直径10cm/20cm)の充填
より簡便な溶液排出のため、24サイズのシリコーン製チューブを、BPGカラムの底部排出口に接続した。カラム、アダプターおよび関連する管類を、カラムに0.1M NaOHを一晩充填することによって浄化した。NaOHを排出し、カラムを2−カラム体積のWFIですすいだ。カラムネットを70%エタノールで湿らせ、閉じ込められた空気を排除した。カラムを、10〜15センチのWFIで満たすか、または緩衝液で平衡化した。樹脂を強振とうして均質な溶媒スラリーを調製した。充填カラムの毎リットルにつき、1.25Lまたは溶媒スラリーをポンプで送り出すか、または注入する。よって、20cmの高さのカラムを充填するためには、BPG100(10cm直径のカラム)では1.5L、BPG200(20cm直径のカラム)では6.5Lの充填した樹脂が必要とされる。均質な溶媒スラリーをカラムに注入し、それをWFIと混合/緩衝液で平衡化した。1.5Lの充填したカラム床に、1.88Lの溶媒スラリーを注いだ。6.5Lの充填したカラム床に、8.13Lの溶媒スラリーを注いだ。1〜2cmの上部の透明な液体層が見られるまで、樹脂を落ち着かせた。底部の排出口を開放し、液体をゆっくりと排出し、上部の透明な液体層が維持されることを確実にした。アダプターを挿入し、樹脂を所望のカラムの高さに落ち着かせるときに、液体の表面の3〜10cm上になることを確実にした。次に、最上部のアダプター注入管をAKTA explorerシステムに接続した。70%エタノールを用いてラインを浄化し、カラムネットを湿らせ、AKTAシステムを用いて任意の閉じ込められた空気を排除した。次に、液体が最上部のアダプターネットから出始めたときにAKTAシステムポンプを停止した。次いで、アダプターを、落ち着かせた樹脂床の上およそ0.5cmまで下げ、封止調節ノブを時計回りに回転させることにより、アダプターのO−リングを封止した。24サイズのシリコーン排出管をAKTA適合性の排出管に交換し、AKTAシステムに接続した。2−CVの平衡化する緩衝液をポンプで送り出すことにより、樹脂を平衡化した。次いで、3Lの10mMのトリス塩酸 pH9/150mM NaClを、20mL/分の速度で、BPG100カラムに、13Lの10mMのトリス塩酸 pH9/150mM NaClを80mL/分の速度で、BPG200カラムに、それぞれポンプで送り出した。
【0068】
j.2Lのバイオリアクター規模(BPG100)におけるゲルろ過クロマトグラフィー
1.すべてのバルブに側路を設けて、高流量における背圧を低減するように、AKTA explorerシステムを適合させた。
2.サンプルライン(A15)を、100mLの70%EtOHを用いて手動で浄化し、200mLのWFIですすぎ、AKTA explorerシステムを用いて、100mLの10mM トリス塩酸 pH9/150mM NaClで平衡化した。バイオフード内の廃棄物ラインを使用して廃棄物を回収し、そのラインを浄化し、平衡化した。
3.上述のようにカラムを充填した。
4.BPG100充填カラム(1.5Lの「セファロース」4FF)をAKTA explorerシステムに接続した。
5.すべての処理パラメータ(伝導性およびpH)の曲線が安定するまで、2CV(3.0L)の10mMのトリス塩酸 pH9.0/150mMのトリス塩酸緩衝液で樹脂を手動で平衡化した。
6.バイオフード内で、サンプルライン(A15)を、カラムに負荷すべき清澄化した採取物サンプルに挿入した;サンプル負荷体積は、カラム体積の12〜18%の範囲内でなくてはならない。
7.あらかじめプログラムした方法を使用してクロマトグラフィーを行った:
・開始条件:流量 20mL/分
・50mLの10mMのトリス塩酸 pH9/150mM NaClで平衡化
・負荷:225mL(15%)のベンゾナーゼ処理した清澄化採取物
・溶出:1800mLの10mMのトリス塩酸 pH9/150mM NaCl
・浄化:1800mLの1M NaOH
・すすぎ:3000mLのWFI
・保管:2000nmLの20%EtOH
注記:浄化、すすぎおよび保管の工程は、将来的に、同一の樹脂を再生する場合にのみ必要とされる。
8.ウイルス(〜500mL)を含む最初のピークを0.5Lの殺菌したナルゲンボトル内に回収し、さらに使用するまで4℃の冷蔵庫で保管した。
【0069】
k.最小システムを使用する小規模TFF
カートリッジ調製物は次のように達成した:
1.TFFカートリッジ、UFP−500−E−H22LAを、クランプ固定した透過排出口の1つを用いて最小システム上に接続した。
2.管類およびカートリッジに70%エタノールを、3barg以下のTMPで1分間流した。
3.浸透ラインを開放し、およそ10分間流し続けてグリセロールを溶解し、カートリッジを浄化した。
4.ポンプを停止し、すべてのラインをクランプ固定した。次に、それを一晩、静置した。
5.浸透ラインを閉鎖してシステムにWFI水を1分間流し、エタノールを除去し、フローを確立した。
6.浸透ラインを開放し、5〜10分間、連続的に流して、残留エタノールを除去した。
7.最小TMPで水分フラックス試験を行った(水分フラックスは分析証明書に示される値以上でなければならない(≧399LMH/barg))。
【0070】
プライミングおよび平衡は次のように達成した:
1.30mLの溶媒を、20分間、所望のせん断速度に対応する流量で循環させた。
2.浸透ラインを閉鎖してシステムに150〜250mLの10mM トリス塩酸 pH7.4を流すことによって溶媒を除去した。
3.浸透ラインを開放し、10mMのトリス塩酸 pH7.4を用いて、20分間、所望のせん断速度に対応する流量で循環させた。
【0071】
サンプル濃度は次のように達成した:
1.浸透ラインを閉鎖して、サンプルを1分間、所望のせん断速度に対応する流量で循環させてフローを確立した。
2.浸透ラインを開放して濃縮を開始し、別々の廃棄物容器に回収した。
【0072】
ダイアフィルトレーションは次のように達成した:
1.所望の濃度達成時に、1ダイアフィルトレーション体積をサンプル容器に加えることによって、ダイアフィルトレーションを開始した。
2.濃度達成時に、工程1をさらに2回繰り返して、3ダイアフィルトレーション体積を完了した。
3.ほぼゼロ体積までサンプルを濃縮し、空気がカートリッジ内に入らないように注意すると同時に、副産物を別々の容器に回収した。
4.十分な体積の10mMのトリス塩酸 pH7.4緩衝液を、元のサンプル容器に加えて、サンプルを希釈し、濃度を補正した。
5.サンプルを−80℃で保管した。
【0073】
およそ25mLの10mM トリス pH7.4緩衝液をシステムに通すことによってシステムを洗浄し、別々の洗浄容器に回収し、4℃で保管した。200mLの70%EtOHをカートリッジ内に通して浄化し、カートリッジを廃棄した。
【0074】
li.AKTAクロスフローシステムを使用する小規模TFF
1.貯蔵グリセロールの除去を容易にするため、クロスフローカートリッジ(UFP−500−C−H24U)を、25%EtOHに一晩浸漬した。
2.クロスフローカートリッジを1550mLのWFIですすぎ、Method Wizard、続いて、Method Editor windowにおけるPreproduct stepsから選択される、あらかじめプログラムした方法を使用して、420mLの10mMのトリス塩酸 pH9.0で平衡化した。
3.膜システム評価、続いて、Method Editor windowにおける正規化水分フラックスを選択することにより、すすいだカートリッジを使用して水分フラックスをチェックし、水分フラックスが分析証明書に示される以上(≧399LMH/barg)になることを確実にした。所望の水分フラックスに達しなかった場合には、追加のすすぎを行った。
4.400mLのANX溶出液を40mLまで濃縮し、10mMのトリス塩酸 pH9.0緩衝液を用いて連続的なダイアフィルトレーションを行った。あらかじめプログラムした方法は、Method Wizard、続いて、Method Editor windowにおけるProduct stepsから選択した。
5.次に、濃縮したサンプルを試験用に採取した。
6.必要な場合には、TFF濃縮化サンプルを使用し、各せん断速度についてTMP最適化またはフラックス最適化を行った。あらかじめプログラムした方法は、Method Wizard、続いて、Method Editor windowにおけるUF process optimizationから選択した。
7.膜システム評価、続いて、Method Editor windowにおけるProcess optimizationにおいて生じたTMPに対するフラックスのグラフから最適なフラックスを決定した。
8.カートリッジを浄化し、AKTAクロスフローシステムに、Method Wizard、続いて、Method Editor windowにおけるPostproduct stepsのあらかじめプログラムした方法を使用した。
【0075】
m.2Lまたは10L規模におけるタンジェンシャルフローろ過(TFF)
1.TFFカートリッジ、UFP−500−C−3×2MAおよびUFP−500−C−6Aを、Masterflexデジタル規格駆動ポンプ(Cole−Parmer Instrument Company社製、モデル77201−62、2L規模用)およびMasterflex I/P Easy loadポンプ(Cole−Parmer Instrument Company社製、モデル7529−10、10L規模用)を、クランプ固定した透過排出口の1つ(供給側に近い)に接続した。
2.カートリッジを70%エタノールに一晩浸漬してグリセロールを溶解し、同時にカートリッジを浄化した。
3.1L/分のクロスフロー流量および最小TMPで、カートリッジを10L(2L規模)または100L(10L規模)のWFIですすぎ、エタノールを排除した。
4.透過流量およびTMPを測定することにより、清浄な水分フラックス試験を行った。フラックス(LMH/バール)={[透過流量(mL/分)/カートリッジ面積(m2)]×0.06}/TMP(バール)。分析証明書によれば、新しいカートリッジでは、≧399LMH/bargでなければならない。
5.浸透ラインを約20分間クランプで固定することによって、1L(2L規模)および6L(10L規模)の10mMのトリス塩酸 pH9.0/1.0M NaClを1L/分のクロスフロー流量で循環させることにより、カートリッジを平衡化した。
6.イオン交換バッチ吸収溶出液から得られたウイルス材料をプールした。
7.副産物の管にはクランプ固定をすることなく、供給流量を徐々に増大させることによって、すなわち1L/分で10分間、1.5L/分で10分間、2.1L/分で10分間および4.3L/分で残りの濃縮工程を流すことによって、サンプルを、溶出液の体積の1/3まで濃縮した。透過流量および供給圧を測定した。
8.等量の10mMのトリス塩酸 pH9.0を3倍濃縮したサンプルに加えて、ダイアフィルトレーションおよび、出発体積の1/3まで濃縮を行った。
9.ダイアフィルトレーションを3回繰り返した。
10.およそ100mL(2L規模用)、500mL(10L規模用)までサンプルをさらに濃縮した。
11.ダイアフィルタにかけた濃縮物を、少し速い供給速度で5〜10分間、循環させた。
12.濃縮したサンプルを回収および測定した。
13.次に、200mL(2L規模用)および1L(10L規模用)の10mMのトリス塩酸 pH9.0を通すことによって、システムを洗浄した。
14.次にその体積の洗浄サンプルを回収した。
15.1Lの70%エタノールを通すことによって、システムを洗浄した。
【0076】
3.結果
本明細書に記載の精製方法は、次の工程を有してなる:(a)遠心分離を使用する粗採取物の濃縮、(b)細胞の溶解、凝集物の粉砕、およびウイルスの放出のためのsonitubeを使用する直接的な超音波分解、(c)5μm/3μmフィルタを使用するディプスフィルトレーションによる材料の清澄化、(d)ベンゾナーゼ処理による遊離のDNAの分解、(e)「セファロース」4FFゲルろ過クロマトグラフィーによるウイルスの精製および残留ベンゾナーゼの除去、(f)ANXイオン交換バッチ吸着によるウイルスのさらなる精製、および(g)タンジェンシャルフローろ過によるウイルス材料の精製および濃縮、および緩衝液の交換。本方法の各工程を、後にCEFに生じるALVAC黒色腫のDNAの低減について評価した。
【0077】
A.遊離の核酸(DNA)のベンゾナーゼ消化
ベンゾナーゼ濃度を、EB14(上述)内で増殖するALVAC HIVにおける遊離のDNAの分解のための、20±3℃で2時間の反応時間を有する、50U/mLと規定した。これらの条件を、3つの別々のロットのALVAC黒色腫/CEF(vCP1584、PX−06025、およびPX−06026)における遊離のDNAの消化に適用したデータは、ベンゾナーゼ処理後のこれらの調製物からのウイルス回収が、23%〜79%変化することを示し、これはALVAC HIV/EB14について観察されるよりも低かった。結果は、ALVAC/EB14について規定されたベンゾナーゼの消化条件を、ALVAC/CEF用に修正すべきであることを示唆した。
【表3】

【0078】
清澄化した材料を分析して、ウイルスの力価および不純物を決定した。表4に示すように、EB14において生じた清澄化ALVAC HIVのウイルス力価(logCCID50)は6〜7であり、CCID50の全DNA(pg)に対する比は、0.14対1.4であった。CEFにおいて生じた清澄化ALVAC黒色腫のlogCCID50は、7.7〜8.3であった。しかしながら、これらのサンプルにおける力価の不純物に対する比は11〜64であり、ALVAC HIV/EB14のものよりも10〜50倍高かった。
【表4】

【0079】
B.ゲルろ過クロマトグラフィー
ALVAC HIV/EB14について規定される条件を用いて、次に、ゲルろ過クロマトグラフィーを、ALVAC黒色腫/CEFの精製について評価した。清澄化したサンプル(225ml)を、20mL/分の流量で、直径10cmの1.5L(樹脂)カラムに負荷した。ゲルろ過からの2つのロットにおけるウイルス回収は、それぞれ84%および87%であり、DNA全体の除去は90%を超えた(表5)。データは、ALVAC/EB14について規定される条件を用いたゲルろ過クロマトグラフィーが、同様のウイルス収量および不純物除去を伴って、ALVAC黒色腫/CEFを精製するのに適していることを示唆した。
【表5】

【0080】
C.ANX「セファロース」4FFイオン交換バッチ吸着
ALVAC HIV/EB14について規定される条件を用いたANX「セファロース」4FFイオン交換バッチ吸着を、ALVAC黒色腫/CEFの精製について評価した。10mMのトリス塩酸 pH9.0緩衝液中、ゲルろ過から得られる画分を等量のANX「セファロース」4FF樹脂と混合した。1M NaClを含む、10mMのトリス塩酸 pH9.0を用いて、ウイルスを溶出した。2つの研究から得られたウイルスの回収率は、それぞれ、76%および100%であった。マイクロBradfordアッセイによって測定した全タンパク質、およびPicogreenアッセイによって測定した全DNAは、アッセイの検出限界未満であった。それにもかかわらず、ALVAC HIV/EB14について規定された条件を用いたANX「セファロース」4FFイオン交換バッチ吸着は、CEFにおいて生じたALVAC黒色腫の精製に使用することができる。
【表6】

【0081】
D.緩衝液を濃縮および交換するためのTFF
ANXイオン交換バッチ吸着からの溶出液の濃縮および緩衝液の交換に、TFFを使用した。ALVAC HIV/EB14について開発したTFF工程をALVAC黒色腫/CEFの溶出液の濃縮に用いる場合、ウイルス回収率は16〜17%であり(表7)、ALVAC HIV/EB14のものよりも低かった。ALVAC HIV/EB14の溶出液(TFF用の出発物質)のウイルス力価(logCCID50)が5〜6であるのに対し、ALVAC黒色腫/CEFのものは6〜7であることは知られていた。しかしながら、ALVAC HIV/EB14の溶出液における全タンパク質レベルはおよそ10μg/mlであるのに対し、ALVAC黒色腫/CEFのものはBradfordアッセイの検出限界未満(1.25μg/ml)であった。さらには、ALVAC黒色腫/CEFに由来するTFF濃縮物の全タンパク質濃度は15.2〜40μg/mlであり、ALVAC HIV/EB14のものより低かった(109〜226μg/ml)。よって、不純物に対するウイルス力価の比は、ALVAC黒色腫/CEFにおいて高く、これは、TFF工程の間のウイルスの必要以上の損失の原因でありうる。
【表7】

【0082】
E.CEFにおいて生じるALVAC黒色腫の改良および再最適化の方法
1.遊離のDNAのベンゾナーゼ分解の最適化の方法
さまざまな濃度のベンゾナーゼを、室温で2時間、遊離のDNAの消化について試験した。表8に示すように、10U/mLのベンゾナーゼを使用する場合、DNA全体で4.2倍低減された。ベンゾナーゼ濃度を25U/mlまたは90U/mlに増大させた場合、DNAの低減は、それぞれ、わずかに5.5倍または5.8倍に増加したが、ベンゾナーゼを0U/mlから10U/mlに増大させた結果のように顕著ではなかった。加えて、10U/mlのベンゾナーゼを使用した場合、ベンゾナーゼ消化後の最も高いウイルス回収率(77%)を得た。したがって、10U/mLのベンゾナーゼを、CEFにおいて生じるALVAC中の遊離のDNAの消化用に選択した。
【表8】

【0083】
さらに、ALVAC黒色腫/CEFについて、20±3℃(室温)で、消化または処理時間を評価した。表9に示すように、25U/mlのベンゾナーゼ濃度におけるDNAの低減レベルは、30分〜120分の処理時間の範囲内では、同様であった(6.4〜6.8倍の低減)。50U/mlにおけるベンゾナーゼ処理についても同様に、7.1〜7.9倍のDNAの低減を示した。これらのデータは、室温で30分間の、遊離のDNAのベンゾナーゼ消化は、2時間の場合と同じく有効であったことを示唆した。上述の結果に基づき、ALVAC黒色腫/CEFのDNA消化の条件を、10U/mLのベンゾナーゼで20±3℃で1時間と規定した。
【表9】

【0084】
2.精製工程における10mMのトリス塩酸,pH7.4の評価
ALVAC HIV/EB14に伝開発した精製工程において、10mMのトリス塩酸 pH9.0をゲルろ過およびANXイオン交換バッチ吸着に使用した。安定性試験から得たデータは、ALVACが、10mMのトリス塩酸 pH7.4中で、同等またはそれ以上に安定であるように見えることを示唆した。精製工程における緩衝液の使用を単純化するため、2つのpH条件下でウイルス回収率を比較した。
【0085】
10mMのトリス塩酸 pH7.4中、同一の出発物質、清澄化したALVAC黒色腫/CEF(ロット番号PX−06026)を使用して、2種類の精製を行った。ゲルろ過工程は、両方について、10mMのトリス塩酸 pH7.4を使用して行った。10mMのトリス塩酸 pH7.4/1M NaClおよび10mMのトリス塩酸 pH9.0/1M NaClを、2種類の精製工程におけるANXイオン交換バッチ吸着およびTFFにおいて比較した。2種類の精製工程から得られたゲルろ過工程からのウイルス収率は、それぞれ、89%および100%であり、これは、10mMのトリス塩酸 pH9.0を使用した場合と一致した。10mMのトリス塩酸 pH7.4を使用する、イオン交換およびTFFの工程におけるウイルスの回収率は、10mMのトリス塩酸 pH9.0を使用したものに近かった(表10)。10mMのトリス塩酸 pH7.4を使用する、3工程の精製後のDNA全体の回収率もまた、10mMのトリス塩酸 pH9.0を使用したものに近かった。結論として、10mMのトリス塩酸 pH9.0は、精製工程の3工程のすべてにおいて、10mMのトリス塩酸 pH7.4と交換して、同様のウイルス収率およびDNA全体の除去を達成しうる。
【表10】

【0086】
3.TFF工程の最適化
a.ALVACのTFFカートリッジへの吸着の評価
TFFの工程からのALVAC黒色腫/CEFの低い収率に内在する潜在的なメカニズムを理解するため、精製工程の間のALVACのTFF膜への吸着を最初に検査した。ウイルスを、クランプで固定した透過ポートを有するTFFシステム内に、さまざまな期間で循環させた。膜にはTMPを適用しておらず、ウイルスの損失はウイルスの膜への吸着か、またはせん断損傷に起因しているに違いない。TFFの間のウイルスの損失について、2つのせん断速度を比較した。力価の低下は循環時間の長さと関連付けられ、循環時間が長いほど力価の低下が大きいことが判明した。8000秒-1または12000秒-1のせん断速度で30分間の循環後、同様のウイルスの損失が観察され(それぞれ13%および15%の損失)、損失は主にウイルスの膜への吸着に起因しうることが示唆された。さらには、ウイルスを2時間循環させた場合、せん断速度が大きいほどウイルスの損失が大きい、すなわち、8000秒-1の場合と比較して12000秒-1のせん断速度におけるウイルスの損失は15%を超える表11)。これらの結果は、ALVACがTFF膜に吸着されうること、およびより高いせん断速度が長期に及ぶ工程においてさらなる生成物の損失を生じうることを示唆した。したがって、TFF工程の所要時間はできるだけ短くすべきであり、せん断速度は8000秒-1〜12000秒-1に調節して、TFF工程の間のウイルスの損失を最小限に抑えるべきである。
【表11】

【0087】
b.さまざまなせん断速度についての最適な膜間差圧(TMP)の動作の決定
最適な動作TMPを確立するため、2種類のカートリッジ(1mmおよび0.5mmのルーメン内径)を使用するTFFのフラックスLMH(リットル/メートル2/時間)を、さまざまな動作せん断速度について評価した(表10)。ALVAC黒色腫/CEFのANXイオン交換溶出液をTFFのための材料として用い、38cm2のカートリッジを使用して、TFF試験を行った。データは、ルーメン内径1mmのカートリッジを使用し、せん断速度が8000秒-1である場合、TMPが0.75バールまで増大したときにフラックス(LMH)がプラトーに達したことを示した。さらに高いせん断速度10000秒-1を使用すると、フラックスは、より遅く、TMPが1.5バールに達したときに、プラトーに達した(図2)。性能曲線の線形範囲(図2)に基づいて、8000、10000および12000秒-1のせん断速度についての最適な動作TMPは、それぞれ<0.5バール、<0.75バールおよび<0.75バールであることが示された。同様に、0.5mmのルーメン内径を有するカートリッジを使用する、異なるせん断速度についての動作TMPは、8000秒-1および12000秒-1のせん断速度について、それぞれ、<0.5バールおよび<0.6バールであることが示唆された。
【表12】

【0088】
c.さまざまなTMPおよびせん断速度下におけるTFF性能の評価
異なるせん断速度についての最適なTFF動作範囲の決定後、TFFの性能、すなわち、所定のせん断速度およびTMPについて、フラックスの濃度係数に対する曲線を試験した。8000秒-1のせん断速度および0.5バールのTMP(最適なTMP範囲<0.75バール)を用いる場合(0.5mmのルーメン内径を有するカートリッジについて)、フラックスは、サンプルを2倍に濃縮した場合に、105LMHから58LMHまで降下し(およそ2倍)、濃縮工程の最初における膜のファウリングが示唆された。TFF性能の乏しさは、高いTMPに起因すると考えられ、したがって、以後の試験には、より低いTMPである0.2バールを用いた。しかしながら、同様のフラックスの低下が観察され、より低いTMPが膜のファウリングを予防する助けにならなかったことを示唆した(図3)。0.5mmのルーメン内径を有するTFFカートリッジを、さまざまなせん断速度下における性能についても評価した(図4)。8000秒-1または10000秒-1のせん断速度において、サンプルを2倍濃縮したときに、フラックスの約2倍の低下が観察された。これらの結果は、膜のファウリングが、せん断速度、TMPまたはルーメン内径にかかわらず生じることを示唆している。
【0089】
d.TFFからの最適なウイルス回収のための膜−プライミングの評価
上述の試験から、ALVACウイルスをTFF膜に吸着させると、ルーメン内径、TMPおよびせん断速度にかかわらず、膜のファウリングが生じることが判った。次の試験すべき因子は、ウイルスの吸着および膜のファウリングを低減することを目的として、膜をウイルスに曝露する前に、膜が特定の試薬を受けることができるか否かであった。ウイルス感染に使用した溶媒およびCEFにおいて生じた清澄化ALVACを、TFF膜のプライミング試薬として評価した。ウイルス材料に導入する前に、上記試薬をTFF中に20分間、循環させた。溶媒または清澄化したウイルスの材料を受けた膜を用いたTFFからのウイルス回収は、プライミングなしにTFFから回収したものと同様であり(データ示さず)、TFF膜のプライミングはウイルスの収率を増大させないことが示唆された。
【0090】
e.ALVAC黒色腫/CEFの精製
CEF vcp 2264(ロット番号PX−06025)において生じたALVAC黒色腫を、ALVAC HIV/EB14についての修正した精製工程を使用して精製した。遊離DNAのベンゾナーゼ消化、ゲルろ過クロマトグラフィー、ANXイオン交換バッチ吸着およびTFFを含めた精製工程からのウイルス回収は、それぞれ、100%、66%、100%および40%であった。ベンゾナーゼ処理およびANXイオン交換からのウイルスの収率は、工程の最適化で著しく改善された。しかしながら、TFFの工程からのウイルス回収は、20%から40%にわずかに上昇した。非特異的吸着および膜のファウリングは、TFFの性能の劣化につながりうる。全般的なウイルス収率は28%であった。タンパク質全体の除去は99%であり、タンパク質全体の最終濃度は8.9μg/回であった。DNA全体の除去は95.7%であり、最終的なDNA濃度は172ng/回であった。EB14において生じたALVACの精製から得られた先のデータは、精製された生成物における鳥類DNAのDNA全体に対する平均比が1.7%であったことを示した。同一の鳥類DNAのDNA全体に対する比であると仮定すると、精製されたALVAC黒色腫/CEFにおける鳥類DNAレベルは、2.9ng/回と推定することができる(172ng/ml×1.7%*10^7/10^7.29=2.9ng/回、1回あたりのCCID50を10^7と仮定)。ALVAC黒色腫/CEFの精製から得られた結果を表13にまとめた。
【表13−1】

【表13−2】

【0091】
f.TFFを用いた、清澄化ALVAC黒色腫/CEFの濃縮
清澄化したALVAC黒色腫/CEF(logCCID50>8.5に達する)を、安定性試験のために濃縮した。TFFを濃度手法として評価し、2種類のTFFシステム(AKTA−クロスフローおよび最小TFF)、異なるせん断速度、およびTMPを比較した。ウイルスが、8.7〜9.0の最終的なtire logCCID50で試験したすべての条件から、100%回収されることを見出した。タンパク質全体の除去は15〜30%であったが、DNA全体が100%維持された(表14)。よって、宿主細胞DNA(CEFなどの初代細胞に由来する)の低減が大きな懸案事項でない場合には、CEFにおいて生じたALVAC採取物を、TFFを使用して濃縮し、力価/mlを増大させることができる。
【0092】
次に、精製された材料の濃縮物からの回収と比較して、TFFを使用する清澄化した材料の濃縮物からのより高いウイルス回収を理解するため、TFF性能曲線、すなわちフラックスの濃度係数に対する曲線を試験した。性能曲線(図5)は、12000秒-1のせん断速度において、サンプルを2倍濃縮した場合、フラックスが105LMHから85LMHに低下した(およそ1.2倍)ことを示した。同様に、10000秒-1のせん断速度において、サンプルを2倍濃縮した場合、フラックスは1.2〜1.3倍低下した。対照的に、精製サンプルを2倍濃縮した場合には、フラックスの2倍の低下が観察された(図3および4)。これらのデータは、清澄化した材料を濃縮すると、精製された材料よりも良好なTFF性能が見られたことを示した。ウイルスの不純物に対する比が低いと、TFFからのウイルス回収率を上昇させることに寄与しうる。
【表14】

【0093】
方法の再最適化を伴う、ALVAC/EB14についてのプラットフォーム精製方法を使用する、ALVAC黒色腫/CEFについて開発されたDNAの低減方法については、表15を参照されたい。
【表15】

【0094】
本明細書に引用、列記、または別の方法で言及されるすべての参考文献は、参照することによってその全体が本明細書に援用される。本明細書に記載される方法のある実施の形態についての説明には、それらのバリエーションが意図されていることが理解されるべきである。
【参考文献】
【0095】
・Amersham Biosciences, “Selecting hollow fibres and cartridges and systems”, 2000.
・Auricchio, et al. (2001) “Isolation of highly infectious and pure adeno-associated virus type 2 vectors with a single-step gravity-flow column” Hum. Gene Ther. 12, 71-76.
・Bachman, et al. A simple for the rapid purification of copia virus-like particles from Drosophila Schneider 2 cells. Journal of Virological Methods 115 (2004): 159-165.
・Blanche, et al. (2001) “Polypeptide composition of an adenovirus type 5 used in cancer gene therapy” J. Chromatogr. A 921, 39-48.
・Braas, et al. (1996) “Strategies for the isolation and purification of retroviral vectors for gene therapy” Bioseparation 6, 211-228.
・Bishop, et al. Rapid and efficient purification of hepatitis A virus from cell culture. Journal of Virological Methods, Vol. 47, Iss. 1-2 (1994): 203-216.
・Branovic, et al., 2003, Application of short monolithic columns for improved detection of viruses, J. Virological Meth. 110: 2: 163-171.
・Carlsson, et al. Purification of infectious pancreatic necrosis virus by anion-exchange chromatography increases the specific infectivity. Journal of Virological Methods. 47 (1994): 27-36.
・Clark, et al. (1999) “Highly purified recombinant adeno-associated virus vectors are biologically active and free of detectable helper and wild-type viruses” Hum. Gene Ther. 10, 1031-1039.
・Downing, et al. Active respiratory syncytial virus purified by ion-exchanged chromatography: characterization of binding and elution requirements. Journal of Virological Methods. 38 (1992): 215-228.
・Dubois et al. Large-scale purification of inactivated hepatitis A virus by centrifugation in non-ionic gradients. Journal of Virological Methods Vol. 32, Iss. 2-3 (1991): 327-334.
・Eveleth, et al. (2000) “Purifying the Sendai virus in one step using ion-exchange chromatography” BioPharm 1, 40-43.
・Gao, et al. (2000) “Purification of recombinant adeno-associated virus vectors by column chromatography and its performance in vivo” Hum. Gene Ther. 11, 2079-2091.
・GE HealthCare Data Sheet, Streamline Direct CST I
・Hubble, J. (1997) “Affinity cell separation: problems and prospects” Trends Biotechnol. 15, 249-255.
・Huyghe, et al. (1995) “Purification of a type 5 recombinant adenovirus encoding human p53 by column chromatography” Hum. Gene Ther. 6, 1403-1416.
・Karger A. et al. Simple and rapid purification of alphaherpesviruses by chromatography on a cation exchange membrane. Journal of Virological Methods. 70 (1998) 219-224.
・Kaludov, et al. A. (2002) “Scalable purification of adeno-associated virus type 2, 4, or 5 using ion exchange chromatography” Hum. Gene Ther. 13, 1235-1243.
・Kuiper, et al. (2002) “Purification of a functional gene therapy vector derived from moloney murine leukaemia virus using membrane filtration and ceramic hydroxyapatite chromatography” Biotechnol. Bioeng. 80, 445-453.
・Loa C.C. et al. Purification of turkey coronavirus by Sephacryl size-exclusion chromatography. Journal of Virological Methods. 104 (2002): 187-194.
・Lyddiatt, A., and O’Sullivan, D. A. (1998) “Biochemical recovery and purification of gene therapy vectors” Curr. Opin. Biotechnol. 9, 177-185.
・Ronald, et al. Comparison of methods for concentration and purification of bovine viral diarrhea virus. Journal of Virological Methods. Vol. 16, Iss. 4 (1987): 271-279.
・Mbiguino, et al. Purification of human respiratory syncytial virus: superiority of sucrose gradient over percoll, renografin, and metrizamide gradients. Journal of Virological Methods Vol. 31, Iss. 2-3 (1991): 161-170.
・Merck KgaA technical information “Fractogel EMD process media virus isolation”.
・Merck KgaA technical information, “Benzonase Nuclease”.
・Millipore Data Sheet “Affnity chromatography media Matrex CellufineTM Sulfate: For concentration, purification and depyrogenation of virus, viral/microbial antigens, heparin binding proteins”.
・Millipore Data Sheet, “PreoSep-PB Chromatography Media”
・Monolith Summer School, June 6-9, 2004, Appications in Biochromatography, Bioconversion and solid phase synthesis, Book of Abstracts, Portoroz, Slovenia
・Njayou, et al. Purification of measles virus by affinity chromatography and by ultracentrifugation: a comparative study. Journal of Virological Methods. Vol. 32, Iss. 1 (1991): 67-77.
・O’Keeffe, et al. (1999) “The affinity adsorptive recovery of an infectious herpes simplex virus vaccine” Biotechnol. Bioeng. 62, 537-545.
・O’Neil, et al. (1993) “Virus harvesting and affinity-based liquid chromatography: A method for virus concentration and purification” Bio/Technology 11, 173-178.
・Prior CP et al., 1996, Inactivation and purification of human immunodeficiency virus-1 as antigen for the treatment of HIV-1 infection, BioPharm, 10: 22-34
・Sartorius technical information “Rapid purification of alphaherpesviruses”
・Sephacryl(登録商標) High Resolution Instructions, Amersham Biosciences.
・Snyder, et al. (2002) “Production of clinical-grade recombinant adeno-associated virus vectors” Curr. Opin. Biotechnol. 13, 418-423.
・Stancar A. Monolithic Support for Chromatography, 2003, Genetic Eng. News, 23: (19), MaryAnne Liebert, Inc. Publishers.
・Summerford, et al. (1999) “Viral receptors and vector purification: New approaches for generating clinical-grade reagents” Nat. Med. 5, 587-588.
・Tamayose, et al. (1996) “A new strategy for large-scale preparation of high-titer recombinant adeno-associated virus vectors by using packing cell lines and sulfonated cellulose column chromatography” Hum. Gene Ther. 7, 507-513.
・Transfiguracion, et al. 2003. Size-exclusion chromatography purification of high-titre vesicular stomatitis virus G glycoprotein-pseudotyped retrovectors for cell and gene therapy applications, Human Gene Therapy, 14:1139-1153.
・Turnbull, A. E., Skulimowski, A., Smythe, J. A., and Alexander, I. E. (2000) “Adeno-associated virus vectors show variable dependence on divalent cations for thermostability: Implications for purification and handling” Hum. Gene Ther. 11, 629-635.
・Villegas, et al. A rapid method to produce high yields of purified rotavirus particles. Journal of Virological Methods 104 (2002): 9-19.
・Zolotukhin, et al. (1999) “Recombinant adeno-associated virus purification using novel methods improves infectious titer and yield” Gene Ther. 6, 973-985.
・米国特許第6,146,874号明細書
・米国特許第6,410,300号明細書
・米国特許第5,719,049号明細書
・米国特許第6,593,123号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポックス・ウイルスの粗調製物をイオン交換クロマトグラフィーに供して、実質的に混入物質を含まないポックス・ウイルス調製物を生成する工程を有してなる、ポックス・ウイルスを精製する方法。
【請求項2】
ポックス・ウイルスの粗調製物をイオン交換クロマトグラフィーに供して、本質的に混入物質を含まないポックス・ウイルス調製物を生成する工程を有してなる、ポックス・ウイルスを精製する方法。
【請求項3】
ポックス・ウイルスの粗調製物をイオン交換クロマトグラフィーに供して、混入物質を含まないポックス・ウイルス調製物を生成する工程を有してなる、ポックス・ウイルスを精製する方法。
【請求項4】
前記ポックス・ウイルスの粗調製物を最初にゲルろ過に供し、半精製したポックス・ウイルス調製物を生成することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ポックス・ウイルスの粗調製物をヌクレアーゼで処理し、かつ、ゲルろ過に供して、半精製したポックス・ウイルス調製物を生成することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ポックス・ウイルスを精製する方法であって、
混入物質と比較して、ポックス・ウイルスとマトリクスとの選択的相互作用を提供する条件下で、ポックス・ウイルスおよび少なくとも1つの混入物質を含むサンプルを、イオン交換クロマトグラフィーのマトリクスと接触させ、
前記ポックス・ウイルスを前記マトリクスから溶出する、
各工程を有してなる方法。
【請求項7】
サンプルからポックス・ウイルスを精製する方法であって、
混入物質と比較して、前記ポックス・ウイルスと選択的に結合するイオン交換マトリクスを含む固体担体を提供し、
前記マトリクスを洗浄緩衝液で洗浄して混入物質を除去し、
前記結合したポックス・ウイルスを前記固体担体から溶出する、
各工程を有してなる方法。
【請求項8】
前記溶出が、前記固体担体に結合した前記ポックス・ウイルスを、高濃度塩溶液に接触させることによって行われることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが細胞溶解物であることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記固体担体がクロマトグラフィーカラムに提供されることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
ある程度精製されたサンプルからポックス・ウイルスを単離する方法であって、
(a)ポックス・ウイルスを含む、ある程度精製されたサンプルを提供し、
(b)前記ある程度精製されたサンプルを、イオン交換マトリクスを含む固体担体と、前記ポックス・ウイルスが前記マトリクスと結合する条件下で接触させ、
(c)前記結合したポックス・ウイルスを前記固体担体から溶出する、
各工程を有してなる方法。
【請求項12】
前記ある程度精製されたサンプルが、工程(a)の前に、硫安塩析、透析、サイズ排除分画法、密度勾配分画法、およびショ糖クッション超遠心分離法からなる群より選択される方法によって、ある程度精製されていることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記固体担体が、クロマトグラフィーカラムに提供されることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記接触させる工程が、溶液中で行われることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記イオン交換マトリクスが、強陰イオン交換体、弱陰イオン交換体、強陽イオン交換体、および、弱陽イオン交換体からなる群より選択されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記イオン交換マトリクスが、Q「セファロース」ファスト・フロー、SP「セファロース」ファスト・フロー、CM「セファロース」ファスト・フロー、DEAE「セファロース」ファスト・フロー、およびANX「セファロース」4ファスト・フローからなる群より選択されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記イオン交換マトリクスがANX「セファロース」4ファスト・フローであることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
細胞培養物からポックス・ウイルスを精製する方法であって、
a)ポックス・ウイルス含有細胞を採取し、
b)前記細胞を崩壊させてポックス・ウイルスの粗調製物を生成し、
c)前記ポックス・ウイルスの粗調製物をゲルろ過に供して、半精製したポックス・ウイルス調製物を生成し、
d)前記半精製したポックス・ウイルス調製物を、陰イオン交換クロマトグラフィーに供して、精製ポックス・ウイルス調製物を生成する、
各工程を有してなる方法。
【請求項19】
細胞培養物からポックス・ウイルスを精製する方法であって、
a)ポックス・ウイルスに感染した細胞を溶解させて、ポックス・ウイルスの粗調製物を生成し、
b)工程a)で得られた前記ポックス・ウイルスの粗調製物を、10mMのトリス塩酸 pH7.0〜9.0で平衡化した「セファロース」4ファスト・フローまたは「セファロース」6ファスト・フローの樹脂上でゲルろ過に供して、半精製したポックス・ウイルス調製物を生成し、
c)工程b)で得られた前記半精製したポックス・ウイルス調製物を、ポックス・ウイルスが前記樹脂に吸着するように、10mMのトリス塩酸 pH7.0〜9.0で平衡化したANX「セファロース」4ファスト・フロー樹脂上で陰イオン交換クロマトグラフィーに供し、
d)工程c)において吸着された前記ポックス・ウイルスを、10mMのトリス塩酸 pH7.0〜9.0/1M NaClを用いて溶出する、
各工程を有してなる方法。
【請求項20】
工程b)を行う前に、前記ポックス・ウイルスの粗調製物を清澄することを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
混入物質から組換えポックス・ウイルスのビリオンを精製する方法であって、
(a)ポックス・ウイルスのベクターを適切な宿主細胞内に導入し、
(b)前記宿主細胞を培養してポックス・ウイルスのビリオンを産生し、
(c)工程(b)の宿主細胞から溶解物を調製し、
(d)前記溶解物を陰イオン交換クロマトグラフィーのマトリクスに通し、それによって前記前記組換えポックス・ウイルスを陰イオン交換クロマトグラフィーのマトリクスに結合させ、
(f)前記陰イオン交換クロマトグラフィーのマトリクスから前記ポックス・ウイルスを溶出する、
各工程を有してなる方法。
【請求項22】
工程(c)の溶解物が超音波分解によって調製され、工程(d)を行う前に、前記溶解物がヌクレアーゼで処理されることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
工程(d)を行う前に、工程(c)の溶解物がゲルろ過クロマトグラフィーに供されることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項24】
工程(c)の溶解物が超音波分解によって調製され、ゲルろ過を行う前に前記溶解物がヌクレアーゼ処理されることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記イオン交換マトリクスが、強陰イオン交換体、弱陰イオン交換体、強陽イオン交換体、および弱陽イオン交換体からなる群より選択されることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記イオン交換マトリクスが、Q「セファロース」ファスト・フロー、「SPセファロース」ファスト・フロー、CM「セファロース」ファスト・フロー、DEAE「セファロース」ファスト・フロー、およびANX「セファロース」4ファスト・フローからなる群より選択されることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記イオン交換マトリクスがANX「セファロース」4ファスト・フローであることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項28】
精製されたポックス・ウイルス調製物の生成方法であって、
(a)細胞培養サンプルからポックス・ウイルス採取物を入手し、
(b)前記サンプルに含まれる細胞から細胞内のポックス・ウイルスを放出してポックス・ウイルスの粗調製物を生成し、
(c)前記ポックス・ウイルスの粗調製物をろ過によって清澄し、
(d)工程(c)の調製物をヌクレアーゼで処理し、
(e)工程(d)の調製物をゲルろ過に供して、半精製したポックス・ウイルス調製物を生成し、
(f)前記半精製したポックス・ウイルス調製物をイオン交換クロマトグラフィーに供し、精製ポックス・ウイルス調製物を生成する、
各工程を有してなる方法。
【請求項29】
工程(f)が、強陰イオン交換体、弱陰イオン交換体、強陽イオン交換体、および弱陽イオン交換体からなる群より選択されるイオン交換マトリクスを使用することを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】
工程(f)が、Q「セファロース」ファスト・フロー、「SPセファロース」ファスト・フロー、CM「セファロース」ファスト・フロー、DEAE「セファロース」ファスト・フロー、およびANX「セファロース」4ファスト・フローからなる群より選択されるイオン交換マトリクスを使用することを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項31】
工程(f)が、イオン交換マトリクスANX「セファロース」4ファスト・フローを使用することを特徴とする請求項21記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2011−511640(P2011−511640A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546187(P2010−546187)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000141
【国際公開番号】WO2009/100521
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(506076695)サノフィ パストゥール リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SANOFI PASTEUR LIMITED
【Fターム(参考)】