説明

ポリアセタール樹脂成形体

【課題】ホルムアルデヒドの放出量が少なく、成形品の反りが低減され、表面外観に優れたポリアセタール樹脂成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドラジド化合物(B)0.01〜0.5質量部、平均粒子径が10μm以上20μm以下であるタルク(C)0.001〜0.03質量部、およびアルキレングリコール(D)0〜5質量部を含むポリアセタール樹脂組成物を、金型温度60℃以上、樹脂温度200℃以上220℃以下で成形して得られるポリアセタール樹脂成形体を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドの発生が少なく、成形品の反りが少ない、表面外観に優れたポリアセタール樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、且つその加工が容易であることから、代表的エンジニアリングプラスチックスとして、電気機器や電気機器の機構部品、OA機器の機構部品、自動車部品、及びその他の機構部品を中心に広範囲にわたって用いられている。
【0003】
近年、屋内および車室内における環境への要求が高まり、ホルムアルデヒドの放出量が少ないポリアセタール樹脂が望まれるようになっている。
【0004】
かかる要求に対し、ポリアセタール樹脂にヒドラジド化合物を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、これらの技術では成形の際に成形品表面が荒れる、成形品の寸法にくるいが生じる、金型のメンテナンスが煩雑である等の不具合が生じることがあった。また、ポリアセタール樹脂は、一般的に薄肉の成形品の場合、反りのために寸法にくるいが生じる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−163019号公報
【特許文献2】特開2006−306944号公報
【特許文献3】特開2006−321880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ホルムアルデヒドの放出量が少なく、成形品の反りが低減され、表面外観に優れたポリアセタール樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドラジド化合物(B)0.01〜0.5質量部、特定粒径のタルク(C)0.001〜0.03質量部、およびアルキレングリコール(D)0〜5質量部を含むポリアセタール樹脂組成物を、金型温度60℃以上、樹脂温度200℃以上220℃以下で成形した樹脂成形体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は下記の通りである。
〔1〕ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドラジド化合物(B)0.01〜0.5質量部、平均粒子径が10μm以上20μm以下であるタルク(C)0.001〜0.03質量部、およびアルキレングリコール(D)0〜5質量部を含むポリアセタール樹脂組成物を、金型温度60℃以上、樹脂温度200℃以上220℃以下で成形して得られるポリアセタール樹脂成形体;
〔2〕ポリアセタール樹脂(A)がポリアセタールコポリマーである、上記〔1〕に記載のポリアセタール樹脂成形体;
〔3〕ポリアセタール樹脂(A)の融点が167℃〜173℃である、上記〔1〕または〔2〕に記載のポリアセタール樹脂成形体;
〔4〕ヒドラジド化合物(B)が下記一般式で表される、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体、
2NHNOC−R5−CONHNH2
(式中R5は炭素数2〜20の炭化水素);
〔5〕ヒドラジド化合物(B)がセバチン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、および2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジドからなる群より選択される、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体;
〔6〕タルク(C)が表面処理されていない、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体;
〔7〕アルキレングリコール化合物(D)がポリエチレングリコールである、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体;
〔8〕前記ポリアセタール樹脂組成物が、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物、ギ酸補足剤、耐候(光)安定剤、離型剤、および潤滑剤からなる群より選択される少なくとも1種(E)を0.01〜10質量部含有する、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体;および
〔9〕前記ポリアセタール樹脂成形体の1mm以下の薄肉部分の面積が2cm2以上である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ホルムアルデヒドの発生が少ないうえに、成形品の反りも少なく、表面外観にも優れるポリアセタール樹脂成形体の提供が可能となった。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部、ヒドラジド化合物(B)0.01〜0.5質量部、所定の性質を有するタルク(C)0.001〜0.03質量部、およびアルキレングリコール(D)0〜5質量部を含むポリアセタール樹脂組成物を、金型温度60℃以上、樹脂温度200℃以上220℃以下で成形して得られるポリアセタール樹脂成形体に関するものである。
【0011】
まず、ポリアセタール樹脂(A)について説明する。
【0012】
本発明で用いるポリアセタール樹脂(A)は、ポリオキシメチレンホモポリマー及びポリオキシメチレンコポリマーである。
【0013】
ポリオキシメチレンホモポリマーは、オキシメチレン基を主鎖に有し、重合体の両末端がエステル基又はエーテル基により封鎖されている。ホルムアルデヒド及び公知の分子量調節剤を原料とし、公知のオニウム塩系重合触媒を用い、炭化水素等を溶媒として公知のスラリー法、例えば特公昭47−6420号公報や特公昭47−10059号公報に記載の重合方法で得ることが出来る。
【0014】
ポリオキシメチレンコポリマーは、トリオキサンと環状エーテル及び/又は環状ホルマールを共重合して得られるポリオキシメチレン共重合体である。トリオキサンは、ホルムアルデヒドの3量体であり、一般的に酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることによって得られ、これを蒸留等の方法で精製して用いられる。トリオキサン、環状エーテル及び環状ホルマールは、高度に精製されている必要があり、水、メタノール、ギ酸等のポリマー末端基に水酸基を誘導する不純物の含有量は、全モノマー量に対して、30質量ppm以下、好ましくは10質量ppm以下、更に好ましくは3質量ppm以下である。
【0015】
重合方法としては、従来公知の方法、例えば、米国特許第3027352号公報、米国特許第3803094号公報、DE−C−1161421、DE−C−1495228、DE−C−1720358、DE−C−3018898、特開昭58−98322号公報、及び特開平7−70267号公報等に記載の方法によって行なうことができる。その後、ベント部を有する溶融混練可能な押出し機等によって不安定末端部を除去し、ポリマー末端部が安定化されたポリアセタールコポリマーを得る。
【0016】
環状エーテル及び/又は環状ホルマールは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキセタン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられ、中でもエチレンオキサイド、1,3−ジオキソランが好ましい。
【0017】
本発明では、ホルムアルデヒドの発生を少なくする観点からポリアセタールコポリマーがより好ましい。また、反りを少なくする観点からポリアセタール樹脂の融点は高めであることが好ましく、例えば167℃〜173℃が好適である。
【0018】
次に本発明で用いるヒドラジド化合物(B)について説明する。
【0019】
本発明で用いられるヒドラジド化合物は特に限定されないが、ホルムアルデヒドの発生を少なくする観点から下記一般式(I)で表されるジカルボン酸ジヒドラジドが好ましい。
【0020】
2NHNOC−R5−CONHNH2 (I)
(式中R5は炭素数2〜20の炭化水素)
具体的には、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等が挙げられる。これらのジカルボン酸ジヒドラジドのなかで好ましいのは、ホルムアルデヒドの放出量の観点からセバチン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジドであり、更に好ましいのはアジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジドである。これらのヒドラジド化合物は1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。またヒドラジド化合物の融点は160℃以上が好ましく、より好ましいのは170℃以上である。
【0021】
ポリアセタール樹脂組成物におけるヒドラジド化合物(B)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.01〜0.5質量部であり、好ましくは0.05〜0.5質量部、より好ましくは0.05〜0.4質量部である。この範囲であるとホルムアルデヒドの放出量が少なく、表面外観に優れた樹脂成形体となる。
【0022】
次に本発明で用いるタルク(C)について説明する。
【0023】
タルク(C)の化学名は含水珪酸マグネシウムであり、一般的にSiO2約60%、MgO約30%と結晶水4.8%が主成分である。真比重は2.7〜2.8であり、白色度はJIS K−8123に準じて測定した数値が93%以上、PHはJIS K−5101に準じて測定した数値が9.0〜10の範囲であることが好ましい。又、45μm篩残分は、JIS K−5101に準じて測定した数値が0.2%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.08%以下である。
【0024】
タルク(C)の樹脂成形体中の平均粒子径は、熱安定性改良の点から10μm以上、引張伸度保持の点から20μm以下である必要がある。好ましくは11〜19μmであり、より好ましくは12〜18μmである。
【0025】
本発明で用いられるタルク(C)としては、表面処理されていないものを用いることが好ましいが、樹脂との親和性を向上させるために公知の表面処理剤を用いて表面処理してもよい。表面処理剤としては例えば、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、さらには脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)、脂環族カルボン酸及び樹脂酸や金属石鹸を挙げることができる。表面処理剤の添加量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0026】
ポリアセタール樹脂組成物におけるタルク(C)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0.001〜0.03質量部であり、熱安定性改良の点から0.001質量部以上、引張伸度維持の点から0.03質量部以下である必要がある。好ましくは0.002〜0.03質量部、より好ましくは0.005〜0.02質量部である。
【0027】
次に本発明で用いるアルキレングリコール(D)について説明する。
【0028】
本発明で用いるアルキレングリコールとは、炭素数が2〜6のアルキレングリコールの単独重合体、共重合体及びその誘導体が含まれる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの炭素数が2〜6のポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのランダム又はブロック共重合体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのグリセリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのモノブチルエーテルなどの共重合体類が挙げられる。中でも好ましくは、オキシエチレン単位を有する重合体、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体及びそれらの誘導体であり、特に好ましくはポリエチレングリコールである。これらのアルキレングリコールは1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
ポリアセタール組成物におけるアルキレングリコール(D)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して0〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0〜3質量部、更に好ましくは0〜2質量部である。アルキレングリコール(D)を少量添加すると表面外観に優れた樹脂成形体を得られるが、この範囲以上に添加すると表面が粗くなる傾向がある。
【0030】
本発明の樹脂成形体は、用途に応じて適当な添加剤を配合することにより、熱安定性に優れた樹脂成形体とすることができる。具体的には、ポリアセタール樹脂100質量部に対し、(E)酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型(潤滑)剤の少なくとも1種を0.01〜10質量部含有させることができる。
【0031】
酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、例えばn−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3'−メチル−5'−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4 −ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4− ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル −5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン‐3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0032】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物の例としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの重合体、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等を挙げることができる。また他に、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。その他にアミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物を挙げることができる。
【0033】
アミド化合物の具体例としては、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6− ブチル−sym−トリアジン等である。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N'−ジメチロールメラミン、N,N',N"−トリメチロールメラミンを挙げることができる。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物を挙げることができる。尿素誘導体の例としては、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物を挙げることができる。N−置換尿素の具体例としては、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アーリル置換尿素を挙げることができる。尿素縮合体の具体例としては、尿素とホルムアルデヒドの縮合体等が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、アラントイン等が挙げられる。ヒドラジン誘導体としてはヒドラジド化合物を挙げることができる。ヒドラジド化合物の具体例としては、ジカルボン酸ジヒドラジドを挙げることができ、更に具体的には、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等が挙げることができる。イミド化合物の具体例としてはスクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドを挙げることができる。
【0034】
これらのホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む重合体又化合物は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0035】
ギ酸捕捉剤としては、上記のアミノ置換トリアジン化合物やアミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えばメラミン・ホルムアルデヒド縮合物等を挙げることができる。他のギ酸捕捉剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウムなどの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、さらには層状複水酸化物を挙げることができる。
【0036】
上記カルボン酸塩のカルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸塩の具体的な例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウムが挙げられ、中でも好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。
【0037】
層状複水酸化物としては例えば下記の一般式(II)で表されるハイドロタルサイト類をあげることができる。
〔(M2+1-X(M3+X(OH)2X+〔(An-x/n・mH2O〕X- (II)
〔式中、M2+は2価金属、M3+は3価金属、An-はn価(nは1以上の整数)のアニオン表わし、Xは、0<X≦0.33の範囲にあり、mは正の数である。〕
一般式(II)において、M2+の例としてはMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+等、An-の例としては、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3-、CO32-、SO42-、Fe(CN)63-、CH3COO-、シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等をあげることができる。特に好ましい例としてはCO32-、OH-をあげることができる。具体例としては、Mg0.75Al0.25(OH)2(CO30.125・0.5H2Oで示される天然ハイドロタルサイト、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3等で示される合成ハイドロタルサイトを挙げることができる。
【0038】
これらのギ酸捕捉剤は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0039】
耐候(光)安定剤としては、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤の中から選ばれる1種若しくは2種以上が好ましい。
【0040】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ− 3'、5'−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス (α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ− 3'、5'−ビス−(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の例としては、2−エトキシ−2'−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル− 2'−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2− エトキシ−3'−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。好ましくは2−[2'−ヒドロキシ− 3'、5'−ビス−(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ− 3'、5'−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールである。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0041】
ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、N,N',N'',N'''−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N'−ビス(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3―テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6,テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの縮合物、デカン2酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β',β',−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物などが挙げられる。好ましくはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β',β',−テトラメチル−3,9− [2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0042】
離型剤、潤滑剤としては、アルコール、脂肪酸及びそれらの脂肪酸エステル、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーンが好ましく使用される。
【0043】
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に適当な公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。具体的には、無機充填材、結晶核剤、導電材、熱可塑性樹脂、および熱可塑性エラストマー、顔料などをあげることができる。
【0044】
前記無機充填剤は繊維状、粉粒子状、板状及び中空状の充填剤が用いられる。繊維状充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維があげられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も含まれる。なお、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質も使用する事ができる。
【0045】
粉粒子状充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナの如き金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属硫酸塩、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等があげられる。
【0046】
板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、各種金属箔があげられる。中空状充填剤としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等があげられる。これらの充填剤は1種又は2種以上を併用して使用することが可能である。これらの充填剤は表面処理されたもの、未表面処理のもの、何れも使用可能であるが、成形表面の平滑性、機械的特性の面から表面処理の施されたものの使用のほうが好ましい場合がある。表面処理剤としては従来公知のものが使用可能である。例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤が使用できる。具体的にはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
【0047】
導電剤としては、導電性カーボンブラック、金属粉末又は繊維が挙げられる。
【0048】
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。また、これらの変性物も含まれる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。顔料としては、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。無機系顔料とは樹脂の着色用として一般的に使用されているものを言い、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等を言う。有機系顔料とは縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料である等の顔料である。顔料の添加割合は色調により大幅に変わるため明確にする事は難しいが一般的には、ポリアセタール樹脂と100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲で用いられる。
【0049】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、上述した成分を用いて、一般的な押出機を用いて製造することができる。押出機としては1軸又は多軸混練押出機等が挙げられ、中でも、減圧装置を備えた2軸押出機が好ましい。該ポリアセタール樹脂組成物を製造する方法としては、
〈1〉ポリアセタール樹脂(A)を押出機トップよりフィードし、ヒドラジド化合物(B)、タルク(C)更にアルキレングリコール(D)を定量フィーダー等でサイドフィード口から添加して溶融混練する方法;
〈2〉ポリアセタール樹脂(A)の一部を押出機トップよりフィードし、ヒドラジド化合物(B)、タルク(C)更にアルキレングリコール(D)と残りのポリアセタール樹脂(A)を定量フィーダー等でサイドフィード口から添加して溶融混練する方法;
〈3〉ポリアセタール樹脂(A)とヒドラジド化合物(B)、タルク(C)更にアルキレングリコール(D)をヘンシェルミキサー、タンブラー、V字型ブレンダーなどで一括混合した後、押出機を用いて溶融混錬する方法、等が挙げられる。
【0050】
得られるポリアセタール樹脂組成物の熱安定性、ホルムアルデヒドの放出量低減の点から、ポリアセタール樹脂(A)が溶融した状態にヒドラジド化合物(B)、タルク(C)を添加する〈1〉、〈2〉の製造方法が好ましい。更に(E)成分を加える場合は、押出機トップからポリアセタール樹脂(A)と同時にフィードしても良いし、サイドフィード口よりヒドラジド化合物(B)、タルク(C)と同時にフィードしても良い。
【0051】
本発明の樹脂成形体は、上記ポリアセタール樹脂組成物を公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等で成形して得ることができる。
【0052】
本発明においては、成形時の樹脂温度が200℃以上220℃以下であることが必要である。この範囲にすることで、表面外観に優れた樹脂成形体となる。好ましくは205℃から210℃である。
【0053】
また、成形時の金型温度は60℃以上であることが必要である。好ましくは70℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。金型温度が低くなると、ガス化している成分がモールドデポジットになりやすいが、60℃以上であればモールドデポジットが付着しにくい。最も好ましくは80℃〜100℃である。
【0054】
本発明の効果は、樹脂成形体の薄肉部分の面積が大きい方がより顕著に現れ、樹脂成形体の1mm以下の薄肉部分の面積が2cm2以上で顕著である。
【0055】
尚、本発明では、ポリアセタール樹脂(A)、ヒドラジド化合物(B)、タルク(C)、アルキレングリコール(D)について、ポリアセタール樹脂組成物における含有量で規定しているが、成形後のポリアセタール樹脂成形体においても、含有量は実質的に等しい。即ち、本発明に係るポリアセタール樹脂成形体は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドラジド化合物(B)0.01〜0.5質量部、平均粒子径が10μm以上20μm以下であるタルク(C)0.001〜0.03質量部、およびアルキレングリコール(D)0〜5質量部を含んでいる。
【0056】
ポリアセタール樹脂成形体における、これらの成分の含有量等は、当業者であれば公知の方法やそれに準ずる種々の方法を用いて測定することができるが、例えば、ポリアセタール樹脂成形体中のヒドラジド化合物の含有量は、成形品をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、溶解液にメタノールを添加してポリマー成分を沈殿させ、可溶分をガスクロマトグラフィで定量することによって測定することができる。
【0057】
また、ポリアセタール樹脂成形体中のタルクの平均粒子径は顕微鏡法により測定することができる。具体的には、本発明の樹脂成形体を、例えばポリアセタールの融点以上に加熱可能なプレス機等で薄膜を作成し、偏光顕微鏡を用いて粒子像を観察及び写真撮影し、無作為に選んだ最低100個のタルクの最大粒子径と個数を測定することで平均粒子径を求めることができる。また、本発明のポリアセタール樹脂成形体中のタルク含有量を定量するには、を塩酸等で加水分解し、タルクを定量する方法や、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、タルク起因である金属性分(Si、Mg)を定量する方法が挙げられる。
【0058】
また、ポリアセタール樹脂成形体中のアルキレングリコールの含有量は、例えば、ポリエチレングリコールの場合、まず成形品をクロロホルム溶媒でソックスレー抽出し、抽出液を濾過した後、可溶分を蒸発乾固・真空乾燥する。内部標準としてDMSOを含む重水素化クロロホルムで溶解した後、H−NMRで測定し、定量することができる。
【0059】
本発明の樹脂成形体は、熱安定性に優れ、ホルムアルデヒドの発生が少なく、耐モールドデポジット性にも優れ、反りが少なく、表面外観性に優れるため、様々な用途の成形品に使用することが可能である。例えば、ギア、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け及び、ガイド等に代表される機構部品、アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品、VTR、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ及び、デジタルカメラに代表されるカメラ、またはビデオ機器用部品、カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(RandomAccess Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray Disc、HD−DVD、その他光デイスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像または情報機器、携帯電話およびファクシミリに代表される通信機器用部品、電気機器用部品、電子機器用部品、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品、ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品、シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ類及び、クリップ類の部品、さらにシャープペンシルのペン先及び、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品、洗面台及び、排水口及び、排水栓開閉機構部品、自動販売機の開閉部ロッ
ク機構及び、商品排出機構部品、衣料用のコードストッパー、アジャスター、及びボタン、散水用のノズル、及び散水ホース接続ジョイント、階段手すり部及び、床材の支持具である建築用品、使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器及び、住宅設備機器に代表される工業部品として好適に使用できる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
(1)ポリアセタール樹脂の融点測定方法
示差熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−7)を用い、一旦200℃まで昇温させ融解させた試料を100℃まで冷却し、再度2.5℃/分の速度にて昇温する過程で発生する発熱スペクトルのピークの温度を融点とした。
(2)成形品から放出されるホルムアルデヒド量測定方法
(株)東芝製IS−80A射出成形機を用いて、シリンダー温度:205℃、射出圧力:(1次圧力/2次圧力=63.7MPa/50.0MPa)射出時間:15秒、冷却時間:20秒、金型温度:77℃で試験片(90×50×3mm平板)を作成し、新コスモス電機製ホルムテクターにより測定し、成形品から放出されるホルムアルデヒド量を求めた。
【0061】
<ホルムテクター測定法>
10Lのテドラーバッグに成形品を入れAirを注入後減圧装置にてAirを抜く操作を2回繰り返す。テドラーバッグにAir7L充填しコックを閉じ、80℃で1時間加熱する。その後、テドラーバッグのコックにホルムテクターをつなぎ測定を行ない、ホルムアルデヒド放出量(mg/m3)を求めた。
(3)樹脂温度の測定方法
新潟鉄工製CN−75成形機をもちいて、その計量値の50%まで計量し3回パージをしたときの3回目のパージ樹脂の温度を測定した。成形機のシリンダー設定温度が205℃の時樹脂温度が210℃、設定温度215℃の時樹脂温度220℃、シリンダー設定温度185℃の時190℃であることを確認した。
(4)モールドデポジット特性の測定方法
新潟鉄工製CN−75成形機を用いて、シリンダー設定温度185℃、205℃、215℃、金型温度80℃にて、モールドデポジット金型(五角形 短辺15mm、長辺25mm、厚さ2mm)で3000ショット成形後のモールドデポジットの状況を観察した。
評価方法 ○ 全くモールドデポジットが無い。
△ 若干モールドデポジットが付着している。
× 明らかにモールドデポジットが付着している。
(5)表面粗さの測定方法
(4)モールドデポジット特性の測定方法で3000回目の成形品の流動末端部分の表面粗さRmaxを東京精密製Surfcomにて測定した。
(6)反りの測定方法
新潟鉄工製CN−75成形機を用いて、シリンダー設定温度185℃、205℃、215℃、金型温度80℃にて平板(正四角形 各辺60mm、厚さ1mm、フィルムゲート)を成形し、23℃×50%Rhの恒温恒湿室で24時間状態調整後ゲート側を固定し反り量を測定した。
(7)引張伸度の測定方法
住友重機製SH100C成形機を用いて、シリンダー設定温度185℃、205℃、215℃、金型温度80℃でISOダンベル試験片を成形した。引張伸度の測定はISO 527−1&2(93)により測定した。
(8)タルク平均粒子径の測定方法
モールドデポジット特性の測定に用いた樹脂成形体の一部を切り取り、200℃に設定したプレス機で薄膜を作成し、偏光顕微鏡(Nikon製ECLIPSE E600WPOL)を用いて粒子像を400倍の倍率で観察及び写真撮影し、無作為に選んだ100個のタルクの最大粒子径(最大長径)を一つ一つ測定し、その100個の最大粒子径の平均値を平均粒子径とした。
(9)タルク含有量の測定方法
モールドデポジット特性の測定に用いた樹脂成形体200gを0.1N塩酸水溶液300mlと混合し、ガラス製耐圧瓶に仕込んだ状態の物を10バッチ準備した。これらを滅菌器により加圧状態で130℃、6〜10時間分解させた後、10バッチ分の分解液中のタルクを濾過し、その濾過残渣物を更にクロロホルム等で洗浄及び濾過を行い、タルク以外の添加剤を除去した。残ったタルクを減圧乾燥後、質量を量り樹脂組成物中のタルク含有量とした。
【0062】
実施例、比較例には下記成分を用いた。
〈ポリアセタール樹脂a−1〉
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整し、トリオキサンを4kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを42.8g/h(トリオキサン1molに対して、1.3mol%)、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1molに対して0.1×10-3molを連続的に添加した。さらに重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルをトリオキサン1molに対して1.5×10-5molで連続的に添加し重合を行なった。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行い、窒素量に換算して20質量ppmとした。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行なった。不安定末端部分の分解されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下に脱揮され、押出機ダイス部よりストランドとして押出され、ペレタイズされた。このようにして得られたポリアセタール樹脂(A)の融点は169.5℃であった。
〈ポリアセタール樹脂a−2〉
ポリアセタール樹脂を重合する際、1,3−ジオキソランの連続添加量を128.3g/h(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)とした以外はポリアセタール樹脂(a−1)の製造と同様の操作を行いポリアセタール樹脂(a−2)を得た。このようにして得られたポリアセタール樹脂(a−2)の融点は164.5であった。
〈ヒドラジド化合物(B)〉
b−1:アジピン酸ジヒドラジド(株式会社日本ファインケム製)
b−2:セバチン酸ジヒドラジド(株式会社日本ファインケム製)
〈タルク(C)〉
c−1:日本タルク株式会社製MS(表面未処理) 平均粒径15.6μm
c−2:(c−1)日本タルク株式会社製MSをアミノプロピルトリエトキシシラン1%
で表面処理したもの
c−3:日本タルク株式会社製P−3(表面未処理) 平均粒径5.1μm
c−4:日本タルク株式会社製MS−KY(表面未処理) 平均粒径24.5μm
〈アルキレングリコール(D)〉
d−1:ポリエチレングリコール
[実施例1]
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部に、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部及び、ギ酸捕捉剤としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部、ヒドラジド化合物(b−1)0.1質量部、タルク(c−1)を0.005質量部添加し、30φのベント付き単軸押出し機で溶融混練した。得られたポリアセタール樹脂組成物を、射出成形機を用いて樹脂温度210℃(シリンダー設定温度205℃)、金型温度80℃で平板成形品を成形し、ホルムアルデヒド放出量および反り量を評価した。また、3000ショット成形を行い3000ショット目の表面外観を評価し、金型に付着したモールドデポジット量を観察した。さらに、ISO 527−1&2(93)により引張伸度を測定し結果を表1に示した。
[実施例2,3]
タルク(c−1)の添加量以外は、実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
[実施例4]
タルク(c−1)を(c−2)にした以外は、実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
[実施例5]
タルク(c−2)の添加量以外は、実施例4と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
[実施例6,7]
ヒドラジド化合物(b−1)の添加量以外は実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
[実施例8]
ヒドラジド化合物(b−1)を(b−2)にした以外は実施例2と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
[実施例9]
成形時の樹脂温度を220℃(シリンダー設定温度215℃)にした以外は、実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
[実施例10]
ポリアセタール樹脂(a−1)をポリアセタール樹脂(a−2)にした以外は実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
[実施例11]
ヒドラジド化合物(b−1)を(b−2)にした以外は実施例10と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
[実施例12]
ポリエチレングリコール(d−1)を添加した以外は実施例2と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
[実施例13]
ポリエチレングリコール(d−1)の添加量以外は実施例12と同様の操作を行い評価した。結果を表1に示した。
[比較例1]
ヒドラジド化合物(b−1)、およびタルク(c−1)を添加しない以外は実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表2に示した。
[比較例2]
タルク(c−1)を添加しない以外は実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表2に示した。
[比較例3]
成形時の樹脂温度を190℃(シリンダー設定温度185℃)にした以外は実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表2に示した。
[比較例4]
タルク(c−1)を(c−3)にした以外は実施例2と同様の操作を行い評価した。結果を表2に示した。
[比較例5]
タルク(c−1)の添加量以外は、実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表2に示した。
[比較例6]
タルク(c−1)を(c−4)にした以外は実施例2と同様の操作を行い評価した。結果を表2に示した。
[比較例7]
ポリエチレングリコール(d−1)の添加量以外は実施例12と同様の操作を行い評価した。結果を表2に示した。
[比較例8]
成形時の金型温度を50℃にした以外は実施例1と同様の操作を行い評価した。結果を表2に示した。
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のポリアセタール樹脂成形体は、ホルムアルデヒドの放出量や反りが少なく、併せて表面外観に優れるためホルムアルデヒドの放出量低減が求められる自動車用途や、高精度、良外観が求められる電機電子用途の分野等で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、ヒドラジド化合物(B)0.01〜0.5質量部、平均粒子径が10μm以上20μm以下であるタルク(C)0.001〜0.03質量部、およびアルキレングリコール(D)0〜5質量部を含むポリアセタール樹脂組成物を、金型温度60℃以上、樹脂温度200℃以上220℃以下で成形して得られるポリアセタール樹脂成形体。
【請求項2】
ポリアセタール樹脂(A)がポリアセタールコポリマーである、請求項1に記載のポリアセタール樹脂成形体。
【請求項3】
ポリアセタール樹脂(A)の融点が167℃〜173℃である、請求項1または2に記
載のポリアセタール樹脂成形体。
【請求項4】
ヒドラジド化合物(B)が下記一般式で表される、請求項1〜3のいずれか一項に記載
のポリアセタール樹脂成形体。
2NHNOC−R5−CONHNH2
(式中R5は炭素数2〜20の炭化水素)
【請求項5】
ヒドラジド化合物(B)がセバチン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、および2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジドからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体。
【請求項6】
タルク(C)が表面処理されていない、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体。
【請求項7】
アルキレングリコール化合物(D)がポリエチレングリコールである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体。
【請求項8】
前記ポリアセタール樹脂組成物が、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物、ギ酸補足剤、耐候(光)安定剤、離型剤、および潤滑剤からなる群より選択される少なくとも1種(E)を0.01〜10質量部含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体。
【請求項9】
前記ポリアセタール樹脂成形体の1mm以下の薄肉部分の面積が2cm2以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体。

【公開番号】特開2012−57180(P2012−57180A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280163(P2011−280163)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【分割の表示】特願2008−143174(P2008−143174)の分割
【原出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】