説明

ポリアミドおよび水溶性ポリマーをベースとする煙透過性食品用ケーシング

【課題】煙透過性で耐湿性の二軸延伸された新規の食品用チューブ状ケーシングの提供。
【解決手段】この課題は、少なくとも1種類の脂肪族(コ)ポリアミドと少なくとも1種類の水溶性合成ポリマーとよりなる混合物を含有していることおよびケーシングの水蒸気透過性が40〜200g/mである食品用ケーシングによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は煙透過性で耐湿性の二軸延伸された食品用チューブ状ケーシングに関する。本発明は更に該ケーシングの製造方法およびそれを燻煙処理ソーセージのためのソーセージ用人造ケーシングとして用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
燻煙処理ソーセージを製造するためには従来には主として人造セルロースまたはコラーゲンをベースとするケーシングが使用されている。しかしながらこのケーシングの製造には工業的に多大な費用が掛かる。例えばセルロース製ケーシングは一般にビスコース法に従って製造される。この方法ではセルロースが最初に苛性ソーダおよび硫化炭素(CS2 )によってキサントゲン酸セルロースに転化される。その際に生じるいわゆるビスコース溶液を、ケーシング用紡製装置(Darmspinnmaschinen)に導入する前に最初に数日間熟成しなけらばならない。この装置は実質的に紡製ノズル、析出浴、洗浄− および調製浴並びに乾燥場所で構成されている。析出浴中でキサントゲン酸セルロースをセルロースに再生する。皮膚繊維ケーシングとも称するコラーゲンケーシングは硬化した結合組織タンパク質よりなる。これを製造する際には最初に動物の皮膚よりなる結合組織を機械的に破砕しそして化学的に可溶性にする。その際に生じる均一化された物質を次いで乾式− または湿式紡製法で後加工する。湿式紡製法ではコラーゲン物質が環状ノズルを通して押出成形された後に凝固作用による析出浴中で固化される (G.Effenberger, Wursthuellen-Kunstdarm, Holzmann-Buchverlag, Bad Woerishofen、第2版、[1991]第21-27 頁) 。
【0003】
セルロース−およびコラーゲン製ケーシングは煙だけでなく水蒸気に対しても非常に良好な透過性がある。この透過性は一般に500g/m ・日より大きい。しかしながらケーシングの高い水蒸気透過性のためにソーセージは、若干の時間貯蔵した場合には不所望な状態に完全乾燥する。
【0004】
コラーゲンおよびセルロース製ケーシングの別の欠点は上述の湿式ケミカル法のために製造コストが高いことである。
【0005】
未燻煙処理のソーセージ製品の安いケーシングは今日では殆ど熱可塑性合成樹脂で製造されている。通例の合成樹脂はポリアミド、ポリエステルおよび塩化ビニル共重合体である。これらケーシングは単層または多層で製造することができる。多層ケーシングではしばしばポリオレフィン製の層も存在している。これらのケーシングの重要な長所は技術的に比較的に簡単で経済的な製法であることである。熱可塑性合成樹脂よりなるケーシングは約3〜20g/m ・日の水蒸気透過性(WDD)を有している。それ故にこれらは、再生セルロースまたはコラーゲンよりなるケーシングよりも透過性が著しく少ない。それ故にこの様なケーシングの中のソーセージは貯蔵時に重量があまり変化しない。熱可塑性合成樹脂、例えばポリアミドで製造されたケーシングは従来には煙透過性がなく、それ故に燻煙処理できなかった。
【0006】
しかしながら既に幾つかの燻煙処理可能な合成樹脂ケーシングも提案されている。例えば特許文献1には、脂肪族ポリアミドよりなるケーシング中の食品を燻煙処理する方法が開示されている。このポリアミドは少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも5重量%の水を吸収する。それ故に水または水蒸気の存在下で使用される。これは環境制御された燻煙処理室を必要とする。
【0007】
食品包装用の燻煙処理可能フィルムは特許文献2にも開示されている。このフィルムはポリアミド、エチレン/ビニルアルコール−コポリマー(EVOH)およびポリオレフィンの混合物よりなる少なくとも1つの層を有しており、この層の各成分は特定の重量比にある。この層は40℃の温度および90%の相対湿度のもとで40g/m・日より小さい水蒸気透過性を有している。しかしながらこれは熱可塑性ケーシングについての上述の範囲の値より僅かに高いだけである。従って通例の条件のもとでは満足な煙透過性は期待できない。
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願公開第139,888号明細書
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願公開第217,069号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故に本発明の課題は、燻煙処理の際の特定の条件(特定の空気湿度、特定の温度等)に調整する必要がなく、煙に対して非常に良好な透過性を示す合成樹脂ケーシングを提供することである。特にソーセージミートエマルジョンに色および香りを十分に移すには熱い煙‘約70〜80℃、特に茹でたエマルジョンソーセージ)だけでなく、冷間燻煙処理(約20〜35℃、特に煮たミートソーセージおよび生ソーセージ)にも使用できるべきである。当業者にとって、合成樹脂にガスが拡散することが温度に著しく依存していることは周知のことである。それ故に冷たい煙を用いることでは先験的に熱い煙を用いるのよりも合成樹脂に高い透過性が必要とされる。
【0009】
更にケーシングは経済的でかつ熱可塑的方法で簡単に製造できなければならない。ケーシングは煙透過性で且つ熱い水および水蒸気に対しても安定しているべきであり、それ故に茹でたエマルジョンソーセージを製造する場合にも使用できるべきである。ケーシングの水蒸気透過性は(DIN53122に従って測定して)少なくとも40g/m ・日であるべきであるが、23℃の温度および85%の相対空気湿度の空気をケーシングの片側だけに当てる場合に、200g/m ・日より多くあるべきでない。従って、ケーシング中に存在する食品が燻煙処理後もできるだけ僅かしか乾燥するべきでない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、脂肪族ポリアミドおよび/または脂肪族コポリアミド、少なくとも1種類の熱可塑性で水溶性の有機ポリマー並びに場合によっては他の有機または無機物質の添加物を含有する混合物よりなるケーシングで解決される。本発明の関係において、“水溶性”とは80℃の水に少なくとも20g/Lの溶解性があることを意味する。
【0011】
水溶性合成ポリマー、好ましくはポリビニルアルコール(PVAL)は特定の半透膜を製造するために比較的に久しく使用されている。この膜の製造は原則として溶液から行われる。沈降法で生じるフィルムは水溶性を高めるために次いで架橋しなければならない。
【0012】
水溶性ポリマーの熱可塑的賦形について従来にはあまり知られていない。その高い多孔性のためにおよびそれに伴う分子間相互作用のためにその融点は分解温度より殆ど著しく上にある。水溶性ポリマーの対象は、後の用途において耐湿性にするために、後で架橋処理に付さなければならない。
【0013】
驚くべきことに脂肪族(コ)ポリアミドと水溶性ポリマーとよりなるブレンドが
− 後架橋処理なしに耐水性があり、即ち冷水または熱水によって水溶性ポリマーが実質的に溶出せず、
− 分解することなく押出成形できそしてチューブ状フィルムに成形でき、
− チューブ状物延伸加工法によって有利な機械的性質を有する食品用ケーシングに加工できそして
− 上述の要求範囲内では水蒸気−および煙透過性を有している
ことが判った。
【0014】
ポリアミドおよび水溶性ポリマーよりなるブレンドは原則として既に公知である。しかしながら問題の刊行物は本発明の用途分野に関するものではなく、他の性質を説明している。
【0015】
国際特許出願公開第94/16020号明細書には、二種類のポリマーよりなる生分解性ブレンドが開示されており、それらのいずれも既に生分解性であるべきである。第一のポリマーとしてはなかでもポリアミド(PA)が挙げられ、第二の成分としてはなかでもPVAL、ポリアクリドおよび他の脂肪族ポリエステルが挙げられている。場合によっては多糖類を追加的に混入してもよい。例には主としてEVOHとPVALとのブレンドが専ら挙げられている。このブレンドよりなるフィルムを熱水で処理した場合には、マトリックスからPVALが抽出される。従って上記のブレンドは、それで造られたフィルムで湿った食品を覆うのには適していない。
【0016】
国際特許出願公開第94/03511号明細書には、医薬用製品を製造するために水溶性ポリマーと水不溶性マトリックスポリマーとよりなるブレンドが開示されている。水溶性ポリマーはポリエチレングリコール、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンまたはポリアクリル酸がある。マトリックスポリマーはエチレン/酢酸ビニル−コポリマー(EVA)、ポリオレフィン、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン、ポリスチレン/ブタジエン−コポリマー、ポリカルボナート、ポリアクリレート、ポリアミドまたはそれらのコポリマー、ポリウレタン、ポリエステルまたはそれのコポリマーがある。製品の表面は親水性でそして蛋白質親和性がある。これは特に血中蛋白質の吸収を減少させる。
【0017】
特開昭62−132,952号明細書には20〜80重量%のポリアミドと80〜20重量%のPVALとの熱可塑性ブレンド、並びにそれから製造された、低下された電気的表面抵抗およびそれによって改善された帯電防止性を示す製品、例えばフィルムおよび管状物が開示されている。
【0018】
米国特許第4,611,019号明細書の対象は、95%より大きい鹸化度を有する熱可塑性ポリビニルアルコールホモポリマー、可塑剤および少量(PVALを基準として0.5〜4.5重量%の)ポリアミドまたはポリエステルよりなるブレンドである。純粋のPVALに比べてこのブレンドは特に高い湿度の場合(即ち75%より大きい相対湿度の場合)に改善された対酸素バリヤー性があるという長所を有している。この確認事項は燻煙ガスが浸透することを望む本発明の課題と対峙している。
【0019】
総括すれば、ポリアミドと水溶性ポリマーとの熱可塑性ブレンドは確かに既に公知であるが、従来にはかゝるブレンドの高い水蒸気透過性および煙透過性に関しての示唆も食品用ケーシングを製造するための最適性に関しての示唆もなかったと言える。
【0020】
従って本発明の対象は、二軸配向された煙透過性で耐湿性の食品用ケーシングにおいて、少なくとも1種類の脂肪族(コ)ポリアミドおよび/または少なくとも1種類の水溶性の合成有機ポリマーよりなり混合物を含有しておりそしてケーシングの水蒸気透過性が40〜200g/mであることを特徴とする、上記食品用ケーシングに関する。場合によってはこの混合物は追加的に、ケーシングの性質を変性する1種類または複数種の有機および/または無機物質を含有している。
【0021】
本発明の関係において“(コ)ポリアミド”とは“ポリアミドまたはコポリアミド”を略記するために用いている。“(メタ)アクリル酸”とは“アクリル酸および/またはメタクリル酸”を意味する。“(メタ)アクリルアミド”および類似の表記もこれに相応している。
【0022】
脂肪族(コ)ポリアミドの中では、ポリ(ε−カプロラクタム)、このものはPA6とも称する 、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とのポリアミド(=ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)またはPA66)、ε−カプロラクタムとω−ラウリンラクタムとのコポリアミド(=PA6/12)並びにポリアミド6/66が特に有利である。コポリアミドにはヘテロ官能性ポリアミド類、特にポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミドおよびポリアミドウレタンも包含される。これらのポリマーの中では種々の官能性をブロック状分布で有するもの、即ちブロックコポリマーが特に有利である。なかでも有利なブロックコポリマーはポリ(エーテル−ブロック−アミド)である。
【0023】
脂肪族(コ)ポリアミドの割合は混合物の総重量を基準として40〜94重量%、好ましくは55〜90重量%、特に好ましくは60〜85重量%である。
【0024】
水溶性で熱可塑化可能の合成有機ポリマーは好ましくは
a) ポリ酢酸ビニル(PVAC)の部分−または完全鹸化によって得られる様なポリビニルアルコール(PVAL)またはビニルアルコール単位を持つコポリマー(例えばビニルアルコールとプロペン−1−オールの単位を持つコポリマー);
b) ポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリプロピレングリコール、またはアルキレングリコール単位、特にエチレングリコール単位および/またはプロピレングリコール単位および他のモノマー単位を持つ相応するコポリマー;
c)ポリビニルピロリドン、またはビニルピロリドン単位および少なくとも1種類のα,β−オレフィン性不飽和モノマーよりなる単位を有する水溶性コポリマー;
d)N−ビニルアルキルアミド類、例えばポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)のポリマー;または
e)α,β−不飽和カルボン酸またはα,β−不飽和カルボン酸アミドの単位、特に(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリルアミドの単位を持つ(コ)ポリマー、
これらの群の内、a)が特に有利である。中でも10,000〜50,000の平均分子量Mwおよび75〜98%の範囲ないのアセテート基鹸化度を有するPVALが有利である。
【0025】
合成の水溶性ポリマーの割合は、熱可塑性混合物の総重量を基準として一般に3〜50重量%、特に10〜40重量%、中でも15〜30重量%である。
【0026】
場合によっては、熱可塑性混合物はケーシングの性質に影響を及ぼす添加物を含有していてもよい。これによって所望次第または要求次第で光学的性質、感触、湿分保持性または剥離挙動の様な性質を正確に調整できる。これに関しては多糖類、無機系充填物および着色顔料が適する。
【0027】
特に有利な有機系添加物は多糖類である。これには澱粉(天然のまたは分解されたもの、可塑性化添加物、例えばグリセリンを含有する後者の場合)、セルロース(粉末または短繊維の状態のもの;この場合短繊維は天然起源でもまたはビスコース紡糸によって得られる繊維でもよい)、エクソ−多糖類(例えば カラゲニン、イナゴマメガムまたはグアガム) および多糖類誘導体(例えば架橋した澱粉、澱粉エステル、セルロースエステル、セルロースエーテルまたはカルボキシアルキルセルロースエーテル)がある。
【0028】
適する無機系充填剤には石英粉末、二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、マイカおよび他のアルミノ珪酸塩、ガラスステープルファイバー、その他の鉱物繊維または微小ガラスビーズが包含される。着色顔料は所望の色調次第で有機系および/または無機系であってもよい。
【0029】
有利に存在する他の成分には、例えば可塑化助剤、例えばグリセリン、モノ−およびジグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンとカルボン酸(特に直鎖状の(C〜C12)−アルカン酸)とのモノ−、ジ−およびトリエステル、ホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドがあり、更には安定剤および加工助剤もある。
【0030】
場合によって存在する他の物質の割合は、熱可塑性混合物の総重量を基準として、一般に0〜25重量%、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは2〜8重量%である。この場合、多糖類は水蒸気透過性を上述の範囲内に維持するために、最高5重量%の割合で含まれるべきである。
【0031】
本発明の対象は、本発明の食品用ケーシングの製造方法にも関する。この製法は一般に、当業者に知られている押出成形法によって行われる。
【0032】
押出成形すべき混合物は、最も簡単には、顆粒状成分を機械的に混合し、次いで押出機中で一緒に溶融することによって製造される。
【0033】
若干の場合には、水溶性合成ポリマーを最初に1種類以上の可塑性化剤と予備混合するのが有利である。この予備混合物の製造は例えば壁面スクラッピング式高速攪拌機を備えた加熱可能な容器中で行うことができる。
【0034】
一般には100部の水溶性ポリマー(例えばPVALおよび/またはPEG)を粉末状で装入しそして5〜15部の可塑剤(例えばグリセリンまたはエチレングリコール)および場合によっては15部までの水と混合する。連続攪拌下にこの混合物を100〜120℃に加熱しそして可塑剤の均一分散が達成されるまで更に攪拌する。冷却後に均一で細粒状の自由流動性粉末が存在しているべきである。
【0035】
この粉末を残りの成分と直接混合しそして押出成形するかまたは中でも顆粒に再加工してもよい。顆粒状態の一つの長所は大抵同様に顆粒状態で存在する別の成分との混合性が良好であり並びに押出機中への配量供給が容易であることである。顆粒の製造はペレット化用ダイス、空冷領域および紐状ペレット化機を備えた市販の二軸式ニーダーが適している。
【0036】
混合物を押出機中で溶融した後に均一化しそして一緒に可塑化する。次いで溶融物を環状ノズルに通して押出成形する。その際に比較的に厚い肉厚の一次チューブ状物が生じる。次いでこの一次チューブ状物を速やかに冷却して、ポリマーの非晶質状態をフリーズする。次いで延伸に必要な温度、例えば約80℃に再び加温する。このチューブ状物を長手方向および横方向へ延伸する。有利にはこれらを一つの作業工程で実施する。次いで長手方向延伸は一般に、駆動速度が増加する2つの挟み込みローラー対を用いて行われ、横方向延伸はチューブ状物の肉厚に内側から作用するガス圧によって行う。面積延伸比(これは長手方向延伸比と横方向延伸比との積である)は一般に約6〜18、特に好ましくは約8〜11である。
【0037】
延伸後にチューブ状物を好ましくは更に熱的に固定する。これで所望の収縮性が正確に調整される。最後にチューブ状物を冷却し、平らな状態で置きそして巻き取る。
【0038】
特に有利な一つの実施態様においてはチューブ状物を次いで輪状にする。この目的のためにチューブ状物をふくらませ、一方の側を加熱し(一般に接触せずに輻射熱によって行う)、次いで熱い状態において曲げ、その結果環状または螺旋状にする。輪状化する方法および装置は当業者に一般に知られており、特許文献にも記載されている。
【0039】
以下の実施例で本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に制限されない。百分率は他に指摘がないかまたはその内容から明らかでない限り、重量%である。
【0040】
以下の出発材料を使用した:
脂肪族ポリアミド(PA):
PA1: 4の相対粘度(96%の純度の硫酸中で測定)を有するポリアミド6/66(85:15重量部の重量比)、BASF Aktiengesellschaftの(R)Ultramid C4。
PA2: 50mL/10分の溶融容積指数(5kgの荷重下275℃で測定)を有するポリアミド6/12(85:20重量部の重量比)、Ems-Chemie AG社の(R)Grilon CR9 HV 。
水溶性合成ポリマー(WP):
WP1: 26,000の平均分子量Mwおよび88%の鹸化度を有するポリビニルアルコール(PVAL) ((R)Mowiol 26-88 :製造元 Clariant Deutschland GmbH)
WP2: 300の平均重合度を有するポリエチレングリコール(PEG)
(R)Genapol PEG 300 :製造元 Hoechst AG)
可塑化助剤 (PL)
グリセリン: DAB(ドイツ国薬局方)によれば96%の純度
その他の成分:
澱粉: Cerestar社の微細粒コーンスターチ澱粉
充填剤バッチ1:炭酸カルシウムとポリアミド6(重量比50:50)のマスターバッチ (Treffert社のHT-MAB-PA9098 )。
充填剤バッチ2:石英粉末とポリアミド6の10:90の重量比のマスターバッチ(Ems-Chemie AG社の(R)Grilon XE 3690 )
実施例においては以下に説明するパラメータを使用する:
phr= “添加される樹脂100部当たりの部数” (ポリマーの装填量を基準とする重量%)
ケーシングを特徴付ける測定量:
a) σ R = 降伏応力 [N/mm2]
b) ε R = 破断点伸び率 [%]
c) σ 5 = 5%延伸時の応力 [N/mm2]
d) σ 15 = 15%延伸時の応力[N/mm2]
パラメータ (a) 〜 (d) は DIN 53 455 に従って50mm/分の進行速度で50mmの固定距離で試験した。測定は予めに冷たい水中に30分間入れておいた幅15mmの試験片で行った。
e)WTR=“水蒸気透過率” (水蒸気透過性):85%の相対湿度および23℃の空気を試験体の片側に吹き付けた場合について DIN 53122に従って測定 [g/m2.日]。
f) 熱収縮 = フィルムを80℃の熱水中に15分保存した後の該フィルム切片の相対的寸法減少率 [%]。
g) 抽出損失量 = 試料を80℃の温水中に1時間保存し、次いで減圧乾燥した後の試料の重量損失量 [重量%]。
【実施例1】
【0041】
水溶性ポリマーと可塑化助剤との配合物の製造:
ジャケット液加熱器および壁面スクラッピング式攪拌機を備えた攪拌式容器中に室温で100phrのWP1を装入した。約1000回転/分で攪拌しながら最初に20phrのWP2を、次いで10phrのグリセリン並びに3phrの水 を添加する。容器内容物を100〜110℃に加熱し、この温度で15分攪拌しそして更に攪拌しながら再び30〜40℃に冷却する。得られる粉末を、単一穴の出口を有する加熱された二軸式ニーダー(シリンダー直径25mm、L/D−比:36)中に計量供給装置を通して計量供給して、8kg/時の質量流速を得た。スクリューの回転数は250回転/分であり、加熱器は120℃(送り出し位置)から180℃(ダイス)までの温度に上昇するように調整した。水の様に透明な押出紐状物を空冷区間で冷却し、次いで紐状物用切断機で切り刻み、顆粒を得る。こうして得られた配合物を以下ではWP3と略記する。
【0042】
実施例2〜6および比較例V1およびV2:
二軸延伸したチューブ状ケーシングの製造
各実施例について表1に記載した成分を室温で機械的に混合する。次いで各混合物を一軸スクリュー式押出機で220℃で均一な溶融物に可塑化しそして190℃で環状ノズルを通して押出成形して、一次チューブ状物を得る。このチューブ状物を速やかに冷却し、次いで延伸に必要な最低温度(約70℃)に加熱し、内部から作用する圧縮空気によって二軸延伸し、次いで別の加熱領域で熱可塑化処理する。熱固定によって横方向延伸が約10%だけ減少する。完成ケーシングを平らな状態で置きそして巻き取る。
【0043】
完成した食品用ケーシングの延伸比並びに肉厚も同様に表1から判る。ケーシングの直径は記載していない。即ち、これは、蒸気の一次チューブ状物直径と総横方向延伸比とを掛けることによって簡単に算出される。
表1: ケーシング例の製造データ(例の数字2から6は各実施例の番号をそしてV1およびV2は比較例を示している)

【0044】
表2: ケーシング例の試験値

【0045】
抽出損失率の値は、熱い水の影響の下で可塑性化助剤だけでなく水溶性合成ポリマー自体もケーシングから溶出されることを証明している。
【0046】
水蒸気透過性(WTR)の値はサンプルの煙透過性の目安である。実施例2〜6の場合には、比較例の場合よりも数倍大きい。従って本発明のケーシングが従来技術に比較して明らかに優れていることを示している。
【0047】
ケーシングに、熱湯処理した微細なソーセージミートを一定の充填圧で充填しそして末端を金属片で閉じる。次いでそのソーセージを燻煙発生装置を備えた熱湯処理室で75℃で、燻煙で飽和された水蒸気で30分に亙って処理し、次いで60分に亙って燻煙なしの水蒸気で80℃で調理する。このソーセージを空気中で室温に冷しそして次に冷却室で約6℃で貯蔵する。
表3:ソーセージ充填試験結果

【0048】
表3は、本発明のケーシングの場合には比較例、即ち実施例の場合よりもソーセージが顕著により濃く着色されそしてより強い燻煙の香りを有することが判る。
【0049】
表3の試験パラメータの説明:
1)ソーセージの折りたたみ開放性および堅牢性の実質的評価(1=あらゆる方向に均一に環開放できる。3=明らかに折り目が生じる)
2)ケーシングが切断後に方向的に自然に折りたたみ開放し得る程度を評価した(1=あらゆる方向に一様に折りたたみ開放し得る;5=長手方向にのみ引くことができる)。
3)ケーシングを剥離した後のソーセージの褐色着色程度(10=セルロース製ケイーシングのソーセージと同じ非常に黒みがかった色;0=ソーセージの内部原料と異ならない色)。
4)一連の4つの試験体による味覚試験の実質的評価(10=セルロース製ケイーシングのソーセージと同じ燻煙処理された非常に強い味;0=燻煙処理されていない熱湯処理したソーセージと同じ燻煙処理していない味)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙透過性で耐湿性の二軸配向された食品用チューブ状ケーシングにおいて、少なくとも1種類の脂肪族(コ)ポリアミドと少なくとも1種類の水溶性合成ポリマーとよりなる混合物を含有していることおよびケーシングの水蒸気透過性が40〜200g/mであることを特徴とする、上記食品用ケーシング。
【請求項2】
脂肪族(コ)ポリアミドがポリアミド(ε−カプロラクタム)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ε−カプロラクタムとω−ラウリンラクタムとのコポリアミド(=PA6/12)、ポリアミド6/66、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミドまたはポリアミドウレタンである、請求項1に記載の食品用ケーシング。
【請求項3】
脂肪族(コ)ポリアミドの割合がそれぞれ混合物の全重量を基準として50〜94重量%、好ましくは55〜90重量%、特に好ましくは60〜85重量%である、請求項1または2に記載の食品用ケーシング。
【請求項4】
水溶性の合成有機ポリマーが部分的にまたは完全に鹸化されたポリビニルアルコール、ビニルアルコール単位を持つコポリマー、ポリアルキレングリコール、アルキレングリコール単位を持つコポリマー、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン単位および少なくとも1種類のα,β−オレフィン性不飽和モノマーの単位を持つコポリマー、N−ビニルアルキルアミド類の単位よりなるまたはこの単位を持つホモポリマーまたはコポリマーおよび/またはα,β−不飽和カルボン酸またはα,β−不飽和カルボン酸アミドの単位よりなるあるいはこの単位を持つ(コ)ポリマーである、請求項1〜3のいずれか一つに記載の食品用ケーシング。
【請求項5】
少なくとも1種類の水溶性合成ポリマーの割合が熱可塑性混合物の総重量を基準として3〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは15〜30重量%である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の食品用ケーシング。
【請求項6】
混合物が光学的性質、感触、湿分保持性または剥離挙動に影響を及ぼす少なくとも1種類の添加物を含有する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の食品用ケーシング。
【請求項7】
少なくとも1種類の添加物が多糖類、無機系充填剤または着色顔料である、請求項6に記載の食品用ケーシング。
【請求項8】
無機系充填剤が石英粉末、二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、マイカまたは他のアルモ珪酸塩、ガラスステープルファイバー、その他の鉱物繊維または微小ガラスビーズよりなる、請求項7に記載の食品用ケーシング。
【請求項9】
少なくとも1種類の添加物の割合が混合物の総重量を基準として0〜25重量%、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは2〜8重量%である、請求項6または7に記載の食品用ケーシング。
【請求項10】
多糖類が澱粉、セルロース、エクソ多糖類または多糖類誘導体である、請求項7に記載の食品用ケーシング。
【請求項11】
混合物が可塑化助剤、特にグリセリン、モノ−およびジグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンとカルボン酸とのモノ−、ジ−およびトリエステル、ホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドを含有する、請求項1〜10のいずれか一つに記載の食品用ケーシング。
【請求項12】
チューブ状でシームレスである、請求項1〜11のいずれか一つに記載の食品用ケーシング。
【請求項13】
輪状に曲げられている、請求項12に記載の食品用ケーシング。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の食品用ケーシングを製造する方法において、少なくとも1種類の脂肪族(コ)ポリアミドおよび少なくとも1種類の水溶性の合成ポリマーを含有する混合物を熱的に可塑化しそして環状ノズルを通して押出成形して一次チューブ状物を得、この一次チューブ状物を冷し、次いで延伸に必要な温度に加熱しそして次に二軸延伸加工して食品用ケーシングとする、上記方法。
【請求項15】
ケーシングを延伸後に熱的に固定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
チューブ状ケーシングを輪状化して、環状または螺旋状にする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ソーセージ用人造ケーシングとしての、特に燻煙処理可能な茹でソーセージのためのケーシングとしての、請求項1〜13のいずれか一つに記載の食品ケーシングの用途。

【公表番号】特表2006−517403(P2006−517403A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500597(P2006−500597)
【出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000397
【国際公開番号】WO2004/065466
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505277510)カレ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (3)