説明

ポリアミドマスターバッチの製造方法

【課題】押出機や成形機内での金属銅析出、金属腐食、製品の機械物性の低下、吸水による外観色変化がなく、耐熱エージング耐性の向上したポリアミドマスターバッチの製造方法を提供すること。
【解決手段】a)水分率が0.05〜2.0重量%であるポリアミド100重量部、
b)少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物0.1〜10重量部、
c)最大粒子径が50μm以下の銅化合物0.1〜5重量部、及び
d)最大粒子径が50μm以下のハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く)1〜50重量部
を溶融混練法により混合するマスターバッチの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出、成形加工中の金属析出、腐食の問題点を解消し、靭性、耐熱エージング性、外観、色調が優れたポリアミド成形品を提供し得るポリアミドマスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、その優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性、難燃性などを活かして、自動車、電気電子分野用途に数多く使用されている。中でもポリアミド樹脂は、他の樹脂に見られないほど長期耐熱エージング性が優れているため、自動車エンジンルーム内等の極めて高温度の熱が印加される部分の部品に使用されている。近年、自動車エンジンルームの部品の高密度化とエンジン出力の増加にともない、エンジンルーム内の環境温度は増々高くなり、これまで以上の高い長期耐熱エージング性がポリアミド樹脂に求められるようになってきた。
これに応えて、これまで数々の技術的な改良が試みられ、例えば、銅ハロゲン化合物を配合したポリアミド樹脂組成物、芳香族アミン、ヒンダードフェノール系の酸化劣化防止剤を配合したポリアミド樹脂組成物等が挙げられる。これらの中でも、特に銅化合物とハロゲン化合物の混合物による耐熱エージング性向上技術がコスト的に最も優れ、現在でも広範囲に使用されている。
【0003】
銅化合物やハロゲン化合物をポリアミド樹脂に配合する方法としては、銅化合物やハロゲン化合物を含有する水溶液を調整し、ポリアミドの重合前または重合中の重合工程で添加する方法や、重合後の任意の時期(ポリアミド樹脂とのブレンド、溶融混練など)に添加する方法が挙げられている。重合工程で添加する方法は、銅化合物やハロゲン化合物を均一に分散させる上では望ましい方法であるが、銘柄切替時に中間品が発生したり、重合装置を洗浄する必要が生じるなどの生産効率低下の原因となる。一方、重合後に添加する方法では、重合工程で添加する方法に比べ分散性が低下するため、機械的物性を低下させるという問題が生じる。さらに、成形品がその後徐々に吸水していく過程で白色系から緑色系に変色することにより成形品の外観を損ねる上、その変色度も銅濃度を高めるに従い大きくなるという問題があった。
【0004】
重合後に添加する方法において銅化合物やハロゲン化合物の分散性を向上させるために、種々の化合物を併用することが提案されてきた(例えば、特許文献1及び2参照)。
特許文献1には、滑剤としてラウリル酸等の高級脂肪酸、あるいは高級脂肪酸とアルミニウム等との高級脂肪酸金属塩、エチレンビスステアリルアミド等の高級脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス等ワックス類を配合することが挙げられている。該技術は、吸湿性のポリアミド樹脂に、水溶液状のものを加えることは好ましくない、あるいは成形品を提供しうるポリアミド樹脂組成物に水を含有させないことが好条件であるという考えから、ハロゲン化合物を微粉状にして添加することを提案したものである。またハロゲン化合物は単に微粉化した場合、非常に凝集固化しやすいため、ハロゲン化合物に予め滑剤を加えることにより、凝集固化を抑制し、微粉末状態で添加することができ、外観を向上させることを提案している。
また、特許文献2は、平均粒子径2μm以下の安定剤1(CuI、CuBr等)、粒子径範囲が2〜200μmの安定剤2(CuI、CuBr、KI、KBr等)及び炭素数が15以上のアルキル基を有し、かつ、酸、アミド、エステル、アリルから選ばれる官能基を分子鎖に1つ以上有するワックスとを混合したポリアミド用の安定剤のタブレットが提案されている。該技術により摩擦などで粉が脱落しにくいタブレットが得られることが開示されている。
【0005】
これらの技術は、いずれも、銅化合物やハロゲン化合物を水等の溶媒を使わずポリアミドに配合する技術であるが、銅析出、金属腐食、ハロゲン化合物の凝集の改良は十分でない。
このように、ポリアミド重合後に銅化合物やハロゲン化合物を添加する方法においては、銅化合物やハロゲン化合物の均一かつ微細な分散が達成できておらず、満足される性能を有するポリアミド樹脂組成物を得ることは出来ていない。
【特許文献1】特開昭50−148461号公報
【特許文献2】米国特許第5,686,513号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリアミド重合後に銅化合物やハロゲン化合物を添加する方法において、銅化合物やハロゲン化合物の分散性を向上させ、押出機や成形機内での金属銅析出、金属腐食、製品の機械物性の低下、吸水による外観色変化がなく、耐熱エージング耐性の向上したポリアミドマスターバッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ポリアミドとして水分を含有するものを用い、かつ、特定の有機化合物の存在下で溶融混錬することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
a)水分率が0.05〜2.0重量%であるポリアミド100重量部、
b)少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物0.1〜10重量部、
c)最大粒子径が50μm以下の銅化合物0.1〜5重量部、及び
d)最大粒子径が50μm以下のハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く)1〜50重量部
を溶融混練法により混合するマスターバッチの製造方法。
【0008】
従来技術では、マスターバッチ中の銅化合物及びハロゲン化合物の分散性の向上を、滑剤の最適化や、銅化合物及びハロゲン化合物の粒子径の調整により達成しようというものであった。
これに対し、本発明は、ポリアミドとして銅化合物やハロゲン化合物を溶解する水分を中あるいはその表面に存在させたものを用いることにより、該水分に銅化合物やハロゲン化合物を溶解させ、これにより均一かつ微細にポリアミド中に分散させると共に、このように微細に分散した化合物をアミド基を有する有機化合物によって安定化するという全く新しい技術思想により達成しえたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法で製造した銅化合物やハロゲン化合物を含有するマスターバッチは、従来のポリアミド重合後に銅化合物やハロゲン化合物を添加する方法で製造したマスターバッチに比べ、ハロゲン化合物、銅化合物の分散性が向上しており、押出機や成形機内での金属銅析出、金属腐食を抑制でき、加工時の安定性が優れることに加え、製品の機械物性を低下させることなく、耐熱エージング性の向上、吸水による外観色変化の抑制を解決できる。
さらに驚くべきことに、重合工程で銅化合物やハロゲン化合物を添加する方法で製造したマスターバッチと比べても、金属銅析出が抑制され、耐熱エージング性と外観に優れた成形品を得ることができる。また、加工時の銅析出を大幅に低減する効果を有する。
本発明の方法によれば、ポリアミド樹脂への銅化合物やハロゲン化合物の添加を、生産効率の高い溶融混錬により行うことで生産効率を上げ、かつ、重合工程での添加と同等以上の高耐熱エージング性と高外観を持つ製品を得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について、以下具体的に説明する。
まず、ポリアミドについて説明する。
本発明で用いるポリアミドは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体であり、特に限定されないが、例えば、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカラクタム(ナイロン11)、ポリドデカラクタム(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ナイロン11T(H))が挙げられる。また、これらのうち2種類以上の異なるポリアミド成分を含むポリアミド共重合体、あるいは、混合物などであってもよい。アミド結合の有無は、赤外吸収スペクトル(IR)で確認することができる。
【0011】
本発明で用いるポリアミドの原料は、上記記載の主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体を製造するために用いられている周知の原料であれば特に限定されないが、重合可能なアミノ酸、重合可能なラクタム、あるいは重合可能なジアミンとジカルボン酸との塩あるいは混合物、および重合可能なオリゴマーを挙げることができる。これら原料は、原料そのもので用いてもよいし、水溶液として用いてもよい。
【0012】
本発明で用いるポリアミドのカルボキシル基濃度比率は0.55〜0.80であることが好ましく、より好ましくは0.60〜0.75である。
カルボキシル基濃度比率とは、ポリアミド中のカルボキシル基濃度とアミノ基濃度をそれぞれ〔COOH〕、〔NH2〕として、〔COOH〕/(〔COOH〕+〔NH2〕)で計算される値をいう。カルボキシル基濃度比率をこの範囲にすることにより、成形機内で銅析出や金属腐食を抑制できる。カルボキシル基濃度比率は、前記ポリアミド原料に末端調整剤を添加することにより調整できる。
この末端調整剤は、分子構造内にカルボン酸を含有する化合物であれば特に限定されないが、ジカルボン酸とモノカルボン酸が好ましく用いられる。前記ジカルボン酸は、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ジグリコール酸などを挙げることができる。前記モノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸などを挙げることができる。これらのカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0013】
ポリアミドを製造する方法は、周知の方法を用いることができる。例えば、ε−カプロラクタムなどのラクタム類をポリアミド原料とする開環重縮合法、ヘキサメチレンアジパミドなどのジアミン・ジカルボン酸塩あるいはその混合物を原料とする熱溶融法などを用いることができる。また、ポリアミド原料の固体塩あるいはポリアミドの融点以下の温度で行う固相重合法、ジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いた溶液法なども用いることができる。これらの方法は必要に応じて組み合わせてもよい。中でも熱溶融法、熱溶融法と固相重合を組み合わせた方法が最も効率的である。また、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。また、重合装置も特に制限されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダーなどの押出機型反応器などを用いることができる。
【0014】
ポリアミドの水分率は0.05〜2.0重量%、より好ましくは0.1〜1.5重量%、さらに好ましくは0.1〜1.0重量%である。水分率の測定は水分気化装置(三菱化学(株)製VA−06型)を用いて、ポリアミド0.7gで電量滴定法(カール・フィッシャー法)により測定し求めることができる。
ポリアミド中の水分は、ポリアミド分子に結合した状態のポリアミド内水分として存在してもよいし、ポリアミド表面例えばポリアミドペレット、ポリアミドパウダー表面に付着した水分であってもよいが、銅析出、金属腐食を抑制できる観点から、ポリアミド分子に結合した状態のポリアミド内水分として存在した方がよりよい。
【0015】
ポリアミドの水分率を本発明の範囲にすることにより、マスターバッチ中の銅化合物やハロゲン化合物の分散粒子径を、配合前の粒子径より小さくし、かつ、凝集を抑制できる。このことにより、マスターバッチから製造された製品の靭性等の機械特性、耐熱エージング性が改良され、銅析出、金属腐食性の抑制が可能となる。
ポリアミドの水分率は、重合後半の減圧度、ポリマー排出冷却時の水中での浸漬時間、浸漬長さあるいは水噴霧量の制御により調整できる。
【0016】
ポリアミドの分子量は、本発明の課題を達成するという観点から、JIS−K6810に従って測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度が、好ましくは1.5〜6.5、より好ましくは1.7〜6.0、さらに好ましくは2.0〜5.5である。該範囲にすることにより、マスターバッチを作成する時の溶融混練の生産性が良好となる。
【0017】
次に、銅化合物とハロゲン化合物について説明する。
本発明で用いられる銅化合物としては、ハロゲン化銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅、ステアリン酸銅などや、エチレンジアミン(en)、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に配位した銅錯塩等が挙げられる。これら銅化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。この中でも、好ましいものとしてはヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅、酢酸銅を挙げることができる。
【0018】
銅化合物の配合量は、ポリアミド100重量部に対して銅化合物0.1〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.25〜4重量部、さらに好ましくは0.40〜3重量部である。この範囲にすることにより、十分な耐熱エージング性が向上し、銅析出、腐食抑制を抑制できる。
【0019】
本発明で用いられるハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く)としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。これらハロゲン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0020】
ハロゲン化合物の配合量はポリアミド100重量部に対してハロゲン化合物1〜50重量部が好ましく、より好ましくは5〜45重量部、さらに好ましくは10〜40重量部である。この範囲にすることにより、十分な耐熱エージング性が向上し、銅析出、腐食を抑制できる。
【0021】
また、配合する銅化合物、ハロゲン化合物の最大粒子径は、共に、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
本発明において、粒子径とは、二軸平均径、すなわち、短径と長径の平均値をいう。ここで、短径、長径とは、それぞれ、粒子に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺である。銅化合物、ハロゲン化合物の最大粒子径の測定は、少なくとも50個の粒子に関して走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより求めることができる。
最大粒子径を50μm以下にすることにより、ポリアミド中の水分率が低くても銅化合物、ハロゲン化合物を微細にポリアミド中に分散させることができ、金属析出、腐食の問題点がより改善され、得られるポリアミド樹脂組成物の靭性、耐熱性エージング性、外観、色調がより改良される。
【0022】
銅化合物とハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く)は、それぞれ単独で配合しても効果はあるが、得られるポリアミド樹脂組成物の性能向上のため本発明においては両方とも配合する。マスターバッチ中のハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/銅)が3〜30であることが好ましく、より好ましくは4〜25、さらに好ましくは5〜23である。ハロゲンと銅のモル比が3以上の場合には銅析出、金属腐食の抑制することができて好ましい。またハロゲンと銅のモル比が30以下であれば靭性などの機械物性を損なうことなく、成形機のスクリューなどを腐食するという問題を抑制することができる。
【0023】
次に、少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物について説明する。
本発明においては、溶融混錬中に少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物を存在させることが必要である。これは、少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物が、溶融混錬中にポリアミド中の水分に溶解した銅化合物やハロゲン化合物と錯形成し、これにより、ポリアミドに悪影響を与えることなく、銅化合物やハロゲン化合物のポリアミド中での分散を安定化させ、析出や変質を防ぐためであると推定される。
【0024】
本発明で用いられる少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物は、分子鎖に少なくとも一つのアミド基を有する化合物である。具体的には、モノアマイド類、置換アマイド類、メチロールアマイド類、ビスアマイド類が挙げられる。
モノアマイド類は、一般式R−CONH2で表される(但し、Rは炭素数8〜30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの−Hの一部が−OHに置換されたものである)。具体的には、例えばラウリル酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド等、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等、リノシール酸アマイド等が挙げられる。
置換アマイド類は、一般式R1−CONH−R2で表される(但し、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数8〜30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの−Hの一部が−OHに置換されたものである)。具体的には、例えばN−ラウリルラウリル酸アマアド、N−パルチミルパルチミン酸アマイド、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルチミン酸アマイド、N−ステアリル12ヒドロキシステアリン酸アマイド、N−オレイル12ヒドロキシステアリン酸アマイド等が挙げられる。
メチロールアマイド類は、一般式R−CONHCH2OHで表される(但し、Rは炭素数8〜30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの−Hの一部が−OHに置換されたものである)。具体的には、例えばメチロールステアリン酸アマイド、メチロールベヘン酸アマイド等が挙げられる。
ビスアマイド類は、一般式(R−CONH)2(CH2n表される(但し、Rは炭素数8〜30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの−Hの一部が−OHに置換されたものである。nは1〜8である)。具体的には、メチレンビスラウリン酸アマイド、メチレンビスラウリン酸アマイド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリル酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスエルカ酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アマイド等が挙げられる。
これらの少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。この中でも好ましいものとしてはビスアマイド類を挙げることができる。
【0025】
少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物の配合量は、ポリアミド100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5.0重量部であり、さらに好ましくは1.0〜4.0重量部である。この範囲にすることにより、銅化合物、ハロゲン化合物のポリアミド中での分散性がより向上し、十分な耐熱エージング性の向上、銅析出、腐食抑制の抑制を達成することができる。
【0026】
次に、銅化合物、ハロゲン化合物、少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物と、ポリアミドの溶融混錬について説明する。
本発明において、銅化合物、ハロゲン化合物、少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物は、それぞれ単独でポリアミドに配合してもよいし、3種類のうち少なくとも2種類の化合物を予め混合してからポリアミドに配合してもよいし、3種類のうち少なくとも2種類の化合物を予め混合し粉砕してからポリアミドに配合してもよいし、また3種類のうち少なくとも2種類の化合物を予め混合し粉砕しタブレット状にしてポリアミドに配合してもよい。
化合物を混合する混合は、公知の方法、例えばタンブラー、ヘンシェル、プロシェアミキサー、ナウターミキサー、フロージェットミキサー等のいずれでもよい。
化合物を粉砕する方法は、公知の方法、例えばハンマーミル、ナイフミル、ボールミル、ジョークラッシャー、コーンクラッシャー、ローラミル、ジェットミル、碾臼などの何れでもよい。
化合物をタブレット状にする方法は、公知の方法、例えば圧縮造粒法、打錠成形法、乾式押出造粒法、溶融押出造粒法などの何れでもよい。
【0027】
溶融混練を行う装置としては、特に制限されるものではなく、公知の装置を用いることができる。例えば、単軸あるいは2軸押出機、バンバリーミキサーおよびミキシングロールなどの溶融混練機が好ましく用いられる。中でも2軸押出機が好ましく用いられる。また溶融混練機には、脱気機構(ベント)装置ならびにサイドフィーダー設備を装備してもよい。
【0028】
本発明の溶融混練の温度は、ポリアミドのJISK7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求められる融点あるいは軟化点より1〜100℃程度高い温度が好ましい。混練機での剪断速度は100(SEC-1)以上程度であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は1〜15分程度が好ましい。
【0029】
次に、本発明の製造方法により製造されるマスターバッチについて説明する。
本発明の製造方法により製造されるマスターバッチの水分率は0.06〜1.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.75重量%、さらに好ましくは0.15〜0.75重量%である。マスターバッチ中の水分は、ポリアミド分子に結合した状態の水分として存在してもよいし、マスターバッチ表面例えばマスターバッチペレットやマスターバッチパウダー表面に付着した水分であってもよい。水分率をこの範囲にすることにより、銅化合物やハロゲン化合物の凝集を抑制することができる。このことにより、靭性等の機械特性、耐熱エージング性の改良効果が高く、銅析出、金属腐食性の抑制がより可能となる。
マスターバッチの水分率は、押出機の減圧度、冷却時のストランドバス中の浸漬時間、浸漬長さの制御、あるいは水噴霧量の制御により調整できる。
【0030】
次に、マスターバッチからポリアミド樹脂組成物を製造することについて説明する。
第2のポリアミド100重量部に対して、マスターバッチ0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜20重量部を混合してポリアミド樹脂組成物を製造することができる。この範囲で混合することにより、本発明の目的である、押出機や成形機内での金属銅析出、金属腐食を抑制することにより加工時の安定性が優れることに加え、製品の機械物性を低下させることなく、耐熱エージング性の向上、吸水による外観色変化の抑制を解決することができる。第2のポリアミドとマスターバッチを混合する方法はブレンドでもよいし、溶融混練法を用いてもよい。
第2のポリアミドとしては、マスターバッチの製造において用いることができるポリア
ミドとして例示したものと同じものを用いることができる。
【0031】
このようにして得られるポリアミド樹脂組成物の水分率は、0.01〜1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.5重量%、さらに好ましくは0.05〜0.30重量%である。ポリアミド樹脂組成物中の水分は、ポリアミド分子に結合した状態の水分として存在してもよいし、ポリアミド樹脂組成物表面、例えばペレットやパウダー表面に付着した水分であってもよいが、本発明の効果をより顕著に発現するという観点から、ポリアミド分子に結合した水分として存在させたほうがより好ましい。水分率を該範囲にすることにより、銅化合物やハロゲン化合物の凝集を抑制することができる。このことにより、靭性等の機械特性、耐熱エージング性の改良効果が高く、銅析出、金属腐食性の抑制がより可能となる。
ポリアミド樹脂組成物の水分率は、押出機の減圧度、冷却時のストランドバス中の浸漬時間、浸漬長さの制御、あるいは水噴霧量の制御により調整できる。
【0032】
ポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない程度で、ポリアミドに慣用的に用いられる添加剤、例えば顔料および染料、難燃剤、潤滑剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、有機酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、核剤、ゴム、並びに強化剤を含有することもできる。
【0033】
このようにして得られたポリアミド樹脂組成物は、押出、成形加工中の金属析出、腐食の問題点を解消し、靭性、耐熱エージング性、外観、色調が優れているため、周知の成形方法、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、溶融紡糸などを用いて各種成形品を得ることができる。また、得られた成形品は、多くの成形用途(自動車部品、工業用途部品、電子部品、ギアなど)や押出用途(チューブ、棒、フィラメント、フィルム、ブローなど)において有用である。
【実施例】
【0034】
本発明を実施例に基づいて説明する。実施例および比較例において以下の方法により測定し評価した。
(1)ポリアミドの相対粘度
JIS−K6810に準じて実施した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド樹脂1g)/(98%硫酸100ml)の割合)を作成し、25℃の温度条件下で測定した。
(2)ポリアミド、マスターバッチ、ポリアミド樹脂組成物の水分率
水分気化装置(三菱化学(株)製VA−06型)を用いて、ポリアミド0.7gで電量滴定法(カール・フィッシャー法)により測定した。
【0035】
(3)ポリアミドのカルボキシル基濃度比率
カルボキシル基濃度は、ペレットや粉砕した成形品等を、ベンジルアルコールに溶解して測定した。より具体的には、試料約4.0gにベンジルアルコール50mlを加え170℃に加熱しフェノールフタレインを加えた。溶解させた後、0.1規定NaOH水溶液で滴定し、カルボシキル基濃度を求めた。
カルボキシル基濃度[COOH]=(f×0.1×A/S)×100f
ここで、 f=0.1規定NaOH水溶液のファクター
A=0.1規定NaOH水溶液の消費量(ml)
S=試料質量(g)
一方、アミノ基濃度は、ペレットや粉砕した成形品等を、フェノール水溶液に溶解して測定した。より具体的には、試料約3.0を90%フェノール水溶液100mlに溶解させた後、1/40N塩酸を滴下し中和し中和点までに要した塩酸の量を求めた。試料を加えない状態で同様の測定をし、ブランクとした。
アミノ基濃度[NH2]={F×(1/40)×(A−B)/S}×1000F
ここで、 F=1/40N塩酸のファクター
A=1/40N塩酸の消費量(ml)
B=1/40N塩酸の消費量(ブランク時)(ml)
S=試料質量(g)
このようにして測定した[COOH]と[NH2]とを用いて
カルボキシル基濃度比率=〔COOH〕/(〔COOH〕+〔NH2〕)で算出した。
【0036】
(4)銅化合物およびハロゲン化合物の最大粒子径
日立製作所(株)製S−5000用いて、最適な倍率にあわせて、明視野像を撮影し、100個の粒子を任意に選択して、最大粒子径を求めた。
(5)マスターバッチの銅濃度、ハロゲン濃度及びハロゲンと銅のモル比(ハロゲン/Cu)
銅濃度は、試料に硫酸を加え、加熱しながら硝酸を滴下し有機分を分解し、該分解液を純水にて定容しICP発光分析(高周波プラズマ発光分析)法により定量した。ICP発光分析装置は、SEIKO電子工業社製Vista−Proを用いた。
ハロゲン濃度は、ヨウ素を例にとると、試料を高純度酸素で置換したフラスコ中で燃焼し、発生したガスを吸収液に捕集し、該捕集液中のヨウ素を1/100N硝酸銀溶液による電位差滴定法を用いて定量した。
ハロゲンと銅のモル比(ハロゲン/Cu)は、上記それぞれの定量値を用いて分子量からモルに換算し算出した。
【0037】
(6)マスターバッチの銅析出、金属腐食性及び表面状態
(6−1)銅析出性
マスターバッチと試験用炭素鋼を接触させてオートクレーブ装置にいれ封入後、十分に窒素置換した。その後280℃で6時間保持し冷却後、マスターバッチの試験用炭素鋼と接触していた部分について銅析出状態を評価した。
○ 銅析出がないあるいはごく軽度である。
△ 銅析出が軽度である。
× 銅析出が頻度高く観測される。
(6−2)金属腐食性
上記(6−1)の試験用炭素鋼のマスターバッチと接触した部分について腐食状態を評価した。腐食の程度を定量的に示すため、以下の腐食係数を算出し以下のように判定した。この値が小さければ腐食しにくいことになる。
腐食係数=腐食の発生頻度(個/cm2)×腐食の平均径(μm)×腐食の平均深さ(μm)
○ 腐食係数500未満
△ 腐食係数500〜2500
× 腐食係数>2500
(6−3)ペレット表面状態
マスターバッチペレット表面を目視により、その外観状態を判定した。
○ 表面がつるつるであり、良好な状態
△ 表面の一部に、添加剤の分散不良による凹凸があり、一部不良な状態
× 表面の全面に、添加剤の分散不良による凹凸があり、不良な状態
【0038】
(7)ポリアミド樹脂組成物の成形機内滞留時の銅析出性
標準成形で得た成形品(a)と滞留成形で得た成形品(b)の銅濃度の差異を成形機内で析出した銅とし、下記式で成形機内滞留時の銅析出性を評価した。
成形機内滞留時の銅析出性=(標準成形品(a)の銅濃度−滞留成形品(b)の銅濃度)×100/標準成形品(a)の銅濃度
なお、標準成形品(a)と滞留成形品(b)は以下の条件で製造した。
(a)標準成形品:射出成形機は日精樹脂製PS−40E、金型はASTM−D638型を用いた。シリンダー温度は280℃、金型温度は80℃、可塑化ストロークは63mm、スクリュー回転数は200rpm、射出時間は10秒、冷却時間は15秒の条件で実施し射出成形品を得た。可塑化時の滞留時間は1分とした。
(b)滞留成形品:射出成形機は日精樹脂製PS−40E、金型はASTM−D638型を用いた。シリンダー温度は280℃、金型温度は80℃、可塑化ストロークは63mm、スクリュー回転数は200rpm、射出時間は10秒、冷却時間は15秒の条件で実施し射出成形品を得た。可塑化時の滞留時間は60分とした。
【0039】
(8)ポリアミド樹脂組成物成形品の長期耐熱エージング性
上記(7)の標準成形品(a)を熱風オーブン中で180℃、所定時間処理した後、ASTM−D638に準じて引張強度を測定した。そして熱処理前に測定した引張強度に対する熱処理後の引張強度を引張強度保持率として算出し、引張強度保持率が50%となる熱処理時間を半減期とした。
(9)ポリアミド樹脂組成物成形品の色調
上記(7)の標準成形品(a)の色調を色差計(日本電色(株)製ND−K6B型)で測定した。
【0040】
[実施例1〜13、比較例1〜5]
以下に示す製造例1〜13によって製造したポリアミドと、銅化合物、ハロゲン化合物及び少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物の混合物を用いて、実施例1〜13、比較例1〜5を行った。
【0041】
[製造例1]
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩水溶液(50重量%濃度)を用い、公知の溶融重合を行い、ペレット状のポリアミド66(1)を得た。該ポリアミド66(1)の相対粘度は46、水分率は0.25重量%、カルボキシル基濃度比率は0.625であった。
[製造例2]
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩水溶液(50重量%濃度)を用い、公知の溶融重合を行い、ペレット状のポリアミド66(2)を得た。該ポリアミド66(2)の相対粘度は46、水分率は0.07重量%、カルボキシル基濃度比率は0.625であった。
[製造例3]
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩水溶液(50重量%濃度)を用い、味ピン酸で末端調整をし、公知の溶融重合を行い、ペレット状のポリアミド66(3)を得た。該ポリアミド66(3)の相対粘度は36、水分率は0.25重量%、カルボキシル基濃度比率は0.80であった。
[製造例4]
製造例1のポリアミド66(1)にスプレーで水を均一に噴霧し、ポリアミド66(4)を得た。該ポリアミド66(4)の相対粘度は46、水分率は0.50重量%、カルボキシル基濃度比率は0.625であった。
[製造例5]
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩水溶液(50重量%濃度)を用い、ヘキサメチレンジアミンで末端調整をし、公知の溶融重合を行い、ペレット状のポリアミド66(5)を得た。該ポリアミド66(5)の相対粘度は46、水分率は0.25重量%、カルボキシル基濃度比率は0.522であった。
[製造例6]
製造例1のポリアミド66(1)にスプレーで水を均一に噴霧し、ポリアミド66(6)を得た。該ポリアミド66(6)の相対粘度は46、水分率は2.50重量%、カルボキシル基濃度比率は0.625であった。
[製造例7]
製造例1のポリアミド66(1)を約80℃の窒素気流中で、水分率を検出限界以下(0.01重量%以下)まで乾燥し、ポリアミド66(7)を得た。該ポリアミド66(7)の相対粘度は46、水分率は0.01重量%未満、カルボキシル基濃度比率は0.625であった。
【0042】
[製造例8]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、エチレンビスステアリルアミド10重量部を混合し、最大粒子径を20μm以下になるように粉砕し、KIとエチレンビスステアリルアミドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(1)を得た。
[製造例9]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、エチレンビスステアリルアミド10重量部を混合し、最大粒子径を50μm以下になるように粉砕し、KIとエチレンビスステアリルアミドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(2)を得た。
[製造例10]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)75重量部、エチレンビスステアリルアミド10重量部を混合し、最大粒子径を20μm以下になるように粉砕し、KIとエチレンビスステアリルアミドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)15重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(3)を得た。
[製造例11]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)88重量部、エチレンビスステアリルアミド10重量部を混合し、最大粒子径を20μm以下になるように粉砕し、KIとエチレンビスステアリルアミドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)2重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(4)を得た。
[製造例12]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、ジステアリン酸アルミニウム(平均粒子径30μm)10重量部を混合し、最大粒子径を20μm以下になるように粉砕し、KIとジステアリン酸アルミニウムの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(5)を得た。
[製造例13]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、エチレンビスステアリルアミド10重量部を粉砕せず最大粒径200μmのままCuI(平均粒子径2μm)5重量部と混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(6)を得た。
【0043】
[実施例1]
製造例1のポリアミド66(1)100重量部に対して、製造例8の顆粒(1)24重量部を配合し、二軸押出機(プラスチック工学研究所(株)製、2軸同方向スクリュー回転型、L/D=60(D=30φ))を用いて、スクリュー回転数100rpm、シリンダー温度280℃で溶融混練してマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
製造例2のポリアミド66(2)100重量部に対して、製造例8の顆粒(1)24重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
製造例3のポリアミド66(3)100重量部に対して、製造例8の顆粒(1)24重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
製造例4のポリアミド66(4)100重量部に対して、製造例8の顆粒(1)24重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。評価結果を表1に示す。
[実施例5]
製造例5のポリアミド66(5)100重量部に対して、製造例8の顆粒(1)24重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。評価結果を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
製造例6のポリアミド66(6)100重量部に対して、製造例8の顆粒(1)24重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
製造例7のポリアミド66(7)100重量部に対して、製造例8の顆粒(1)24重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。評価結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1より、本発明の製造方法で製造したマスターバッチは、銅析出性、金属腐食性が改善されていることが分かる。
【0047】
[実施例6]
製造例1のポリアミド66(1)100重量部に対して、製造例8の顆粒(1)50重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。評価結果を表2に示す。
[実施例7]
実施例1で得られたマスターバッチを80℃の窒素気流中で乾燥し、水分率を0.10重量%にした。評価結果を表2に示す。
[実施例8]
製造例1のポリアミド66(1)100重量部に対して、製造例9の顆粒(2)24重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。評価結果を表2に示す。
[実施例9]
製造例1のポリアミド66(1)100重量部に対して、製造例10の顆粒(3)24重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。評価結果を表2に示す。
[実施例10]
製造例1のポリアミド66(1)100重量部に対して、製造例11の顆粒(4)24重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。評価結果を表2に示す。
[比較例2−1]
製造例1のポリアミド66(1)100重量部に対して、製造例13の顆粒(6)24重量部を配合した。得られたマスターバッチの評価結果を表2に示す。
[比較例3]
製造例1のポリアミド66(1)100重量部に対して、製造例12の顆粒(5)24重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。評価結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2より、本発明の製造方法で製造したマスターバッチは、銅析出性、金属腐食性が改
善されていることが分かる。これに対して、最大粒子径が200μmのハロゲン化合物を用いた比較例2−1においては、銅析出性の改善効果は認められるものの、その効果は不十分であった。このことから本発明の効果をより発揮させるためには、銅化合物、ハロゲン化合物として最大粒子径の小さいものを用いた方が効果的であることが分かる。
【0050】
[実施例12]
製造例1のポリアミド66(1)100重量部に対して、実施例1のマスターバッチ2重量部を配合した。実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。ポリアミド66が100重量部に対して、CuIが0.0235重量部、KIが0.396重量部、エチレンビスステアリルアミドが0.0470重量部になる。評価結果を表3に示す。
[実施例13]
製造例1のポリアミド66(1)100重量部に対して、実施例8のマスターバッチ2重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。各化合物の配合量は実施例11と同様となる。評価結果を表3に示す。
[比較例4]
製造例1のポリアミド66(1)100重量部に対して、比較例2のマスターバッチ2重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。各化合物の配合量は実施例11と同様となる。評価結果を表3に示す。
[比較例5]
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩水溶液(50重量%濃度)を用い、公知の溶融重合を行った。重合途中の工程で、CuIとKIの混合水溶液を添加した。得られたポリアミド66ペレット表面にエチレンビスステアリルアミドを添加した。各化合物の配合量は比較例2−1と同様となるように添加した。該ポリアミド66樹脂組成物の相対粘度は46、水分率は0.10重量%、カルボキシル基濃度比率は0.625であった。評価結果を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
表3より、本発明の製造方法で製造したマスターバッチから得られたポリアミド樹脂組成物の成形品は、銅析出性、長期耐熱エージング性、色調が改善されていることが分かる。
【0053】
[実施例A1〜A23、比較例A1〜A17]
以下に示す製造例A1〜A28によって製造したポリアミドと、銅化合物、ハロゲン化合物及び少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物の混合物を用いて、実施例A1〜A23、比較例A1〜A17を行った。
【0054】
1.ポリアミドの調製
[製造例A1]
バッチ法で重合を実施してポリアミドを製造した。
ポリアミド66の原料として、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩を用いた。該原料を50重量%含有する水溶液を重合槽に仕込み、十分窒素置換し加熱して約150℃で上昇させ、水分を除去し約85%まで濃縮し、重合槽を密閉した。次に、重合槽の温度を約210℃まで上昇させながら、重合槽の圧力をゲージ圧にして約1.77MPaまで上昇させた。その後、重合槽から水を抜きながら圧力を約1.77MPaで保ちつつ温度を約210℃から約250℃に上昇させた。その後、約1時間で温度を約280℃まで上昇させながら、重合槽の圧力を大気圧まで戻した後、約10分間約700torrで減圧した。重合槽を窒素で加圧し、重合槽下部のダイスを開放し、ペレット状のポリマーを排出し、冷却、カッティングし、ポリアミド66(A1)を得た。該ポリアミド66(A1)の相対粘度は2.7、水分率は0.75重量%、カルボキシル基濃度比率は0.620であった。
[製造例A2]
製造例A1のポリアミド66(A1)を窒素気流中、約140℃で約0.5時間乾燥し、ポリアミド66(A2)を得た。該ポリアミド66(A2)の相対粘度は2.8、水分率は0.25重量%、カルボキシル基濃度比率は0.625であった。
[製造例A3]
製造例A1のポリアミド66(A1)を窒素気流中、約90℃で1.5時間乾燥し、ポリアミド66(A3)を得た。該ポリアミド66(A3)の相対粘度は2.8、水分率は0.10重量%、カルボキシル基濃度比率は0.625であった。
[製造例A4]
製造例A1のポリアミド66(A1)にスプレーで水を均一に噴霧し、ポリアミド66(A4)を得た。噴霧する水の量を調整することにより、該ポリアミド(A4)の水分率を1.45重量%にした。
[製造例A5]
製造例A1のポリアミド66(A1)にスプレーで水を均一に噴霧し、ポリアミド66(A5)を得た。噴霧する水の量を調整することにより、該ポリアミド(A5)の水分率を1.80重量%にした。
[製造例A6]
製造例1のポリアミド66(A1)を窒素気流中で、約90℃で約30時間乾燥し、ポリアミド66(A6)を得た。該ポリアミド66(A6)の相対粘度は2.8、水分率は0.03重量%、カルボキシル基濃度比率は0.625であった。
[製造例A7]
製造例A1のポリアミド66(A1)にスプレーで水を均一に噴霧し、ポリアミド66(A7)を得た。噴霧する水の量を調整することにより、ポリアミド(A7)の水分率を2.25重量%にした。
[製造例A8]
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩水溶液(50重量%濃度)に末端調整剤としてアジピン酸を添加した以外は製造例A1と同様に重合を行い、製造例A2と同様に乾燥を行い、ペレット状のポリアミド66(A8)を得た。該ポリアミド66(A8)の相対粘度は2.5、水分率は0.25重量%、カルボキシル基濃度比率は0.80であった。
[製造例A9]
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩水溶液(50重量%濃度)に末端調整剤としてヘキサメチレンジアミンを添加した以外は製造例A1と同様に重合を行い、製造例A2と同様に乾燥を行い、ペレット状のポリアミド66(A9)を得た。該ポリアミド66(A9)の相対粘度は3.0、水分率は0.25重量%、カルボキシル基濃度比率は0.522であった。
[製造例A10]
連続法で重合を実施してポリアミドを製造した。
ポリアミド66の原料としてヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との等モル塩を用いた。該原料を50重量%含有する水溶液に末端調整剤として酢酸を添加し、約3000Kg/hrの速度で濃縮槽/反応器に注入し、約90%まで濃縮した。次いで、反応液をフラッシャーに排出し、圧力をゆっくり大気圧まで降圧した。反応液を次の容器に移送し、約280℃の温度、大気圧以下の条件下で保持した。ポリアミドは押し出されてストランドとなり、このストランドを冷却、カッティングし、更に窒素気流中で、約140℃で約0.5時間乾燥し、ペレット状のポリアミド66(A10)を得た。該ポリアミド66(A10)の相対粘度は2.7、水分率は0.25重量%、カルボキシル基濃度比率は0.650であった。
[製造例A11]
末端調整剤の酢酸の量を増加した以外は製造例A10と同様に重合及び乾燥を実施して、ポリアミド66(A11)を得た。該ポリアミド66(A11)の相対粘度は2.8、水分率は0.11%、カルボキシル基濃度比率は0.650た。
[製造例A12]
原料として、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩と、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の等モル塩とを重量比80/20で用い、該原料を50重量%含有する混合水溶液に末端調整剤としてアジピン酸を添加した以外は製造例A1と同様に重合を行い、製造例A2と同様に乾燥を行い、ペレット状のポリアミド66/6I(A12)を得た。該ポリアミド66/6I(A12)の相対粘度は2.3、水分率は0.25重量%、カルボキシル基濃度比率は0.735であった。
【0055】
2.銅化合物、ハロゲン化合物及び少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物の混合物の調製
[製造例A13]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、ビスアマイド類であるエチレンビスステアリルアアマイド10重量部を混合し、KIの最大粒子径が20μmになるように粉砕し、KIとエチレンビスステアリルアマイドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A1)を得た。
[製造例A14]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)75重量部、エチレンビスステアリルアマイド10重量部を混合し、KIの最大粒子径が20μmになるように粉砕し、KIとエチレンビスステアリルアマイドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)15重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A2)を得た。
[製造例A15]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)88重量部、エチレンビスステアリルアマイド10重量部を混合し、KIの最大粒子径が20μmになるように粉砕し、KIとエチレンビスステアリルアマイドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)2重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A3)を得た。
[製造例A16]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)70重量部、エチレンビスステアリルアマイド20重量部を混合し、KIの最大粒子径が20μmになるように粉砕し、KIとエチレンビスステアリルアマイドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)10重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A4)を得た。
[製造例A17]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、エチレンビスステアリルアマイド(平均粒子径30μm)10重量部、CuI(平均粒子径2μm)5重量部とを混合し、KIの最大粒子径が20μmになるようによく粉砕し混合物(A1)を得た。
[製造例A18]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、エチレンビスステアリルアマイド10重量部を混合し、KIの最大粒子径が50μmになるように粉砕し、KIとエチレンビスステアリルアマイドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A5)を得た。
[製造例A19]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、エチレンビスステアリルアマイド10重量部を混合し、KIの最大粒子径が75μmになるように粉砕し、KIとエチレンビスステアリルアマイドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A6)を得た。
[製造例A20]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、エチレンビスステアリルアマイド10重量部を粉砕せず最大粒径200μmのままCuI(平均粒子径2μm)5重量部と混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A7)を得た。
[製造例A21]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、エチレンビスステアリルアマイド10重量部、CuI(平均粒子径2μm)5重量部とを混合し、最大100メッシュ(最大粒径にして約130μm)のスクリーンを有する粉砕機で粉砕し、混合物(A2)を得た。
[製造例A22]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、置換アマイド類であるN−ステアリルエルカ酸アマイド(平均粒子径100μm)10重量部を混合し、KIの最大粒子径が20μm以下になるように粉砕し、KIとN−ステアリルエルカ酸アマイドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A8)を得た。
[製造例A23]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、モノアマイド類であるステアリン酸アマイド(平均粒子径20μm)10重量部を混合し、KIの最大粒子径が20μm以下になるように粉砕し、KIとステアリン酸アマイドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A9)を得た。
[製造例A24]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、メチロールアマイド類であるメチロールステアリン酸アマイド(平均粒子径30μm)10重量部を混合し、KIの最大粒子径が20μm以下になるように粉砕し、KIとメチロールステアリン酸アマイドの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A10)を得た。
[製造例A25]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、高級脂肪酸であるステアリン酸(平均粒子径30μm)10重量部を混合し、KIの最大粒子径が20μm以下になるように粉砕し、KIとステアリン酸の混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A11)を得た。
[製造例A26]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、高級脂肪酸エステルであるステアリルステアレート(平均粒子径30μm)10重量部を混合し、KIの最大粒子径が20μm以下になるように粉砕し、KIとステアリルステアレートの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A12)を得た。
[製造例A27]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、高級脂肪酸金属塩であるモンタン酸カルシウム(平均粒子径30μm)10重量部を混合し、KIの最大粒子径が20μm以下になるように粉砕し、KIとモンタン酸カルシウムの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A13)を得た。
[製造例A28]
KI(20〜200μmの粒子径を有する)85重量部、高級脂肪酸金属塩であるステアリン酸アルミニウム(平均粒子径30μm)10重量部を混合し、KIの最大粒子径が20μm以下になるように粉砕し、KIとステアリン酸アルミニウムの混合物を得た。該混合物にCuI(平均粒子径2μm)5重量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(A14)を得た。
【0056】
3.実施例A1〜A10、比較例A1、A2
ポリアミドの種類を変えて、実施例A1〜A10、比較例A1、A2のマスターバッチを製造した。
[実施例A1]
製造例A1のポリアミド66(A1)100重量部に対して、製造例13の顆粒(A1)24重量部を配合し、二軸押出機(プラスチック工学研究所(株)製、2軸同方向スクリュー回転型、L/D=60(D=30φ))を用いて、スクリュー回転数100rpm、シリンダー温度280℃で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表4に示す。
[実施例A2]
ポリアミド66(A1)に代えて製造例A2のポリアミド66(A2)を用いる以外は、実施例A1と同様にし実施した。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表4に示す。
[実施例A3]
ポリアミド66(A1)に代えて製造例A3のポリアミド66(A3)を用いる以外は、実施例A1と同様に実施した。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表4に示す。
[実施例A4]
ポリアミド66(A1)に代えて製造例A4のポリアミド66(A4)を用いる以外は、実施例A1と同様に実施した。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表4に示す。
[実施例A5]
ポリアミド66(A1)に代えて製造例A5のポリアミド66(A5)を用いる以外は、実施例A1と同様に実施した。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表4に示す。
[比較例A1]
ポリアミド66(A1)に代えて製造例A6のポリアミド66(A6)を用いる以外は、実施例1と同様に実施した。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は黄色に変色した。評価結果を表4に示す。
[比較例A2]
ポリアミド66(A1)に代えて製造例A7のポリアミド66(A7)を用いる以外は、実施例1と同様に実施した。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は少し黄色に変色した。評価結果を表4に示す。
【0057】
[実施例A6]
ポリアミド66(A1)に代えて製造例A8のポリアミド66(A8)を用いる以外は、実施例A1と同様に実施した。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表4に示す。
[実施例A7]
ポリアミド66(A1)に代えて製造例A9のポリアミド66(A9)を用いる以外は、実施例A1と同様に実施した。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表5に示す。
[実施例A8]
ポリアミド66(A1)に代えて製造例A10のポリアミド66(A10)を用いる以外は、実施例A1と同様に実施した。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表5に示す。
[実施例A9]
のポリアミド66(A1)に代えて製造例A11のポリアミド66(A11)を用いる以外は、実施例A1と同様に実施した。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表5に示す。
[実施例A10]
ポリアミド66(A1)に代えて製造例A12のポリアミド66/6I(1)を用いる以外は、実施例A1と同様に実施した。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表5に示す。
【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
表4、5より、マスターバッチの製造に用いるポリアミドの水分率を本発明で規定する数値範囲内にすることにより、マスターバッチの色調、銅析出性、金属腐食性が改善されることが確認できた。
【0061】
4.実施例A11〜A19、比較例A3〜A10
銅化合物、ハロゲン化合物及び少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物の混合物の種類を変えて、実施例A11〜A19、比較例A3〜A10のマスターバッチを製造した。
[実施例A11]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A14の顆粒(A2)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表6に示す。
[実施例A12]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A15の顆粒(A3)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表6に示す。
[実施例A13]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A16の顆粒(A4)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表6に示す。
[実施例A14]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A16の顆粒(A4)50重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。非常に稀であるが一部ストランド切れが発生したが、運転には支障がなく実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表6に示す。
[比較例A3]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A16の顆粒(A4)75重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、ストランド切れが非常に多く生産できなった。評価結果を表6に示す。
【0062】
[実施例A15]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A17の混合物(A1)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表7に示す。
[実施例A16]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A18の顆粒(A5)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表7に示す。
[比較例A4]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A19の顆粒(A6)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、ストランド切れが一部発生し、不安定であった。マスターバッチの色調は少し黄色に変色した。評価結果を表7に示す。
[比較例A5]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A20の顆粒(A7)24重量部を配合し、実施例1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、ストランド切れが非常に多く運転が出来なかった。評価結果を表7に示す。
[比較例A6]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A21の混合物(A2)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、ストランド切れが多く、不安定であった。評価結果を表7に示す。
【0063】
[実施例A17]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A22の顆粒(A8)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表8に示す。
[実施例A18]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A23の顆粒(A9)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表8に示す。
[実施例A19]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A24の顆粒(A10)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は白く良好であった。評価結果を表8に示す。
[比較例A7]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A25の顆粒(A11)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は少し黄色に変色した。評価結果を表8に示す。
[比較例A8]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A26の顆粒(A12)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は少し黄色に変色した。評価結果を表8に示す。
[比較例A9]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A27の顆粒(A13)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は少し黄色に変色した。評価結果を表8に示す。
[比較例A10]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、製造例A28の顆粒(A14)24重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してマスターバッチを得た。二軸押出機での溶融混練は、安定して実施できた。マスターバッチの色調は少し黄色に変色した。評価結果を表8に示す。
【0064】
【表6】

【表7】

【表8】

【0065】
表6〜表8より、本発明で規定する数値範囲内の水分率のポリアミドを用いたマスターバッチの製造方法においては、ハロゲン化合物の最大粒子径、有機化合物の種類の最適化することにより、マスターバッチの生産安定性、色調、銅析出性、金属腐食性や、マスターバッチペレットの表面状態が改善されることが確認できた。
【0066】
5.実施例A20〜A23、比較例A11〜A17
第2のポリアミドとマスターバッチとを混合してなるポリアミド樹脂組成物を製造した。
[実施例A20]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、実施例A1のマスターバッチ2重量部を配合した。実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。該ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド66が100重量部に対して、CuIが0.0235重量部、KIが0.396重量部、エチレンビスステアリルアミドが0.0470重量部になる。評価結果を表9に示す。
[実施例A21]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、実施例A16のマスターバッチ2重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。各化合物の配合量は実施例A20のポリアミド樹脂組成物と同様となる。評価結果を表9に示す。
[実施例A22]
製造例A1のポリアミド66(A1)100重量部に対して、実施例A1のマスターバッチ2重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。各化合物の配合量は実施例A20のポリアミド樹脂組成物と同様となる。評価結果を表9に示す。
[実施例A23]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、実施例A11のマスターバッチ0.67重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。該ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド66が100重量部に対して、CuIが0.0240重量部、KIが0.120重量部、エチレンビスステアリルアミドが0.0160重量部になる。評価結果を表9に示す。
【0067】
[比較例A11]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、比較例A1のマスターバッチ2重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。各化合物の配合量は実施例A20のポリアミド樹脂組成物と同様となる。評価結果を表10に示す。
[比較例A12]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、比較例A2のマスターバッチ2重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。各化合物の配合量は実施例A20のポリアミド樹脂組成物と同様となる。評価結果を表10に示す。
[比較例A13]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、比較例A4のマスターバッチ2重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。各化合物の配合量は実施例A20のポリアミド樹脂組成物と同様となる。評価結果を表10に示す。
[比較例A14]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、比較例A6のマスターバッチ2重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。各化合物の配合量は実施例A20のポリアミド樹脂組成物と同様となる。評価結果を表10に示す。
[比較例A15]
製造例A2のポリアミド66(A2)100重量部に対して、比較例A9のマスターバッチ2重量部を配合し、実施例A1と同様に二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。各化合物の配合量は実施例A20のポリアミド樹脂組成物と同様となる。評価結果を表10に示す。
[比較例A16]
製造例A3のポリアミド66(A3)100重量部に対して、製造例A21の混合物(A2)を配合し、ドライブレンドを実施した。各化合物の配合量は実施例A20のポリアミド樹脂組成物と同様となるようにブレンドした。評価結果を表10に示す。
[比較例A17]
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩水溶液(50重量%濃度)を用い、公知の溶融重合を行った。重合途中の工程で、CuIとKIの混合水溶液を添加した。得られたポリアミド66ペレット表面にエチレンビスステアリルアミドを添加した。各化合物の配合量は実施例A20のポリアミド樹脂組成物と同様となるように添加した。該ポリアミド66樹脂組成物の相対粘度は2.8、水分率は0.10重量%、カルボキシル基濃度比率は0.625であった。評価結果を表10に示す。
【0068】
【表9】

【表10】

【0069】
表9及び表10より、本発明の製造方法で製造したマスターバッチから得られたポリアミド樹脂組成物の成形品は、銅析出性、長期耐熱エージング性、色調が改善されていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の製造方法で製造されたマスターバッチは、耐熱用途で使用されるポリアミド樹脂の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水分率が0.05〜2.0重量%であるポリアミド100重量部、
b)少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物0.1〜10重量部、
c)最大粒子径が50μm以下の銅化合物0.1〜5重量部、及び
d)最大粒子径が50μm以下のハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く)1〜50重量部
を溶融混練法により混合するマスターバッチの製造方法。
【請求項2】
製造されるマスターバッチのハロゲンと銅のモル比(ハロゲン/銅)が、3〜30になるように原料を配合する請求項1記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項3】
銅化合物及び/又はハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く)の最大粒子径が、20μm以下である請求項1又は2に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項4】
ポリアミドのカルボキシル基濃度比率([COOH]/([COOH]+[NH2]))が、0.55〜0.80である請求項1から3のいずれかに記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項5】
ポリアミドの水分率が、0.1〜1.5重量%である請求項1から4のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項6】
少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物が、モノアマイド類、置換アマイド類、メチロールアマイド類及びビスアマイド類からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である請求項1から5のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項7】
銅化合物及び/又はハロゲン化合物(ただし、ハロゲン化銅を除く)と少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物を予め混合し、粉砕する請求項1から6のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法により製造されるマスターバッチ。
【請求項9】
水分率が0.06〜1重量%である請求項8に記載のマスターバッチ。
【請求項10】
第2のポリアミド100重量部に対して、請求項8又は9に記載のマスターバッチ0.1〜100重量部を混合してなるポリアミド樹脂組成物。
【請求項11】
水分率が0.01〜1重量%である請求項10に記載のポリアミド樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−302880(P2007−302880A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101347(P2007−101347)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】