説明

ポリアミド樹脂組成物及びそれからなる成形品

【課題】 本発明の課題は、押出機(混練機)のヘッド部を開放することなく、一般的な混練機で安定して製造することができ、均一な熱伝導性を示す成形品が得られるポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】 ポリアミド樹脂(A)と、金属酸化物粒子(B)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
金属酸化物粒子(B)は、その全量に対し、粒子径が70μm以上であるものを10質量%以上50質量%以下含み、粒子径が20μm以下であるものを1質量%以上50質量%以下含み、
ポリアミド樹脂組成物に対し、金属酸化物粒子(B)を、70質量%以上85質量%以下含むポリアミド樹脂組成物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱伝導性に優れたポリアミド樹脂組成物及びそれからなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂に酸化マグネシウムを配合すると、その量に応じて熱伝導性が向上するが、溶融混練にて、溶融しない酸化マグネシウムを熱可塑性樹脂に大量に配合させることは、溶融する熱可塑性樹脂の割合が少なくなる為、単軸や二軸の押出機で生産性を維持することが困難である。特許文献1には、導電性フィラーを安定して高充填する方法として、押出機のヘッド部を開放した状態で混練することが開示されているが、押出機のヘッド部を開放することなく導電性フィラーを安定して高充填する方法については開示されてない。
また特許文献2には特定粒径の酸化マグネシウムを特定量配合することにより、成形性や外観、熱伝導性を向上させる方法が開示されているが、成形品の測定位置により熱伝導率が異なり、測定位置に関わらず均一な熱伝導率を示す成形品を安定して得ることについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−1663号公報
【特許文献2】特開平3−81366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、押出機(混練機)のヘッド部を開放することなく、一般的な混練機で安定して製造することができ、均一な熱伝導性を示す成形品が得られるポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、以下に示す本発明によって解決される。
即ち、本発明は、ポリアミド樹脂(A)と、金属酸化物粒子(B)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
金属酸化物粒子(B)は、その全量に対し、粒子径が70μm以上であるものを10質量%以上50質量%以下含み、粒子径が20μm以下であるものを1質量%以上50質量%以下含み、
ポリアミド樹脂組成物に対し、金属酸化物粒子(B)を、70質量%以上85質量%以下含むポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、混練機のヘッド部を開放することなく、一般的な混練機で安定して製造することができ、均一な熱伝導性を示す成形品が得られるポリアミド樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】熱伝導性を評価するための熱伝導率の測定箇所を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ポリアミド樹脂(A)と、金属酸化物粒子(B)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
金属酸化物粒子(B)は、その全量に対し、粒子径が70μm以上であるものを10質量%以上50質量%以下含み、粒子径が20μm以下であるものを1質量%以上50質量%以下含み、
ポリアミド樹脂組成物に対し、金属酸化物粒子(B)を、70質量%以上85質量%以下含むポリアミド樹脂組成物である。
【0009】
[ポリアミド樹脂(A)]
本発明に用いられるポリアミド樹脂(A)は、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより得られ、具体的には、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカンラクタム(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタラミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタラミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)やこれらの原料モノマーを用いたポリアミド共重合体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。このなかでも、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体(ポリアミド6とポリアミド66の共重合体、以下、共重合体は同様に記載)、ポリアミド6/69共重合体、ポリアミド6/610共重合体、ポリアミド6/611共重合体、ポリアミド6/612共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体、ポリアミド6/IPD6共重合体、ポリアミドMXD6であることが好ましく、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/IPD6共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体であることがより好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体であることがさらに好ましく、成形加工性の観点から、ポリアミド6が特に好ましい。
【0010】
本発明のポリアミド樹脂(A)の末端基の種類及びその濃度や分子量分布に特別の制約は無く、分子量調節や成形加工時の溶融安定化のため、分子量調節剤として、酢酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸、メタキリレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン、モノアミン、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。
【0011】
また、ポリアミド樹脂(A)の製造は、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等のポリアミド製造装置で製造することができる。また、その重合方法としては、たとえば、溶融重合、溶液重合や固相重合等がある。これらの重合方法は、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができ、単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0012】
JIS K−6920に準じて、96質量%の硫酸中、ポリアミド濃度1質量%、温度25℃の条件下にて測定したポリアミド樹脂(A)の相対粘度は、1.5以上5.0以下であることが好ましく、1.7以上4.5以下であることがより好ましい。ポリアミド樹脂の相対粘度が前記の値未満であると、得られる成形品の機械的性質が低くなることがある。一方、前記の値を超えると、溶融時の粘度が高くなり、成形品の成形が困難となることがある。さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物の生産性や成形品の成形性の観点から、1.7以上3.0以下であることがさらに好ましい。
【0013】
また、JIS K−6920に規定する低分子量物の含有量の測定方法に準じて測定したポリアミド樹脂(A)の水抽出量は、特に制限はないが、成形加工時に発生するガス等の環境上の問題、製造設備への付着による生産性の低下や製品ペレットへの付着による外観不良等を引き起こす可能性があるため、5質量%以下であることが好ましい。
【0014】
ポリアミド樹脂(A)の粒形は、金属酸化物粒子(B)や他の添加剤を均一に混合させる観点から、平均粒径1mm以下の粉末状が好ましい。尚、粉末状にする方法としては、特に制限はないが、粉末の生産性の観点から冷凍粉砕が好ましい。
【0015】
本発明のポリアミド樹脂(A)には、得られる成形品の特性を損なわない範囲内で、通常配合される各種の添加剤及び改質剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、フィラー、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、結晶核剤、離型剤、可塑剤、架橋剤、発泡剤、着色剤(顔料、染料等)等を添加することができ、その添加方法に特に制限がなく、従来から知られている各種の方法を採用することができる。例えば、ドライブレンドする方法、必要に応じて配合される他の成分と共に、溶融混練する方法等により添加することができる。溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を使用して行うことができる。
【0016】
ポリアミド樹脂(A)の配合量は、ポリアミド樹脂組成物に対して、15質量%以上30質量%以下であることが好ましい。15質量%未満の場合、樹脂成分の減少により脆くなることから、混練時のストランドのペレット化が困難になる。さらに、混練時の溶融成分(樹脂成分)が少なくなることにより、流動性が低下し、混練性も悪化する。また、30質量%超過の場合、金属酸化物粒子(B)の配合量が少なくなるため熱伝導性を十分に発揮できない。混練性と熱伝導性の観点からポリアミド樹脂(A)の配合量は、14.9質量%以上29.9質量%以下が好ましく、20質量%以上25質量%以下がより好ましい。
【0017】
[金属酸化物粒子(B)]
本発明で使用する金属酸化物粒子(B)としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の粒子が挙げられ、電気絶縁性と熱伝導性の観点から、酸化アルミニウム、及び/又は酸化マグネシウムが好ましく、酸化マグネシウムがより好ましい。
【0018】
金属酸化物粒子(B)は、粉末状に加工したものを使用し、その平均粒子径は、特に制限はないが、平均粒子径が0.5μm未満の場合、表面積の増加により空気中の水分の吸湿量が大きくなる場合があり、平均粒子径が300μmを超えると、衝撃強度に代表される機械強度が低下する傾向があり、成形品表面に酸化マグネシウムが露出し表面性が悪化する場合があるため、平均粒子径は、0.5μm以上300μm以下が好ましく、12μm以上73μm以下がより好ましく、30μm以上60μm以下がさらに好ましい。
【0019】
金属酸化物粒子(B)は、その全量に対し、粒子径が70μm以上であるものを10質量%以上50質量%以下含み、耐衝撃性など物性上の観点から、10質量%以上30質量%以下含むことが好ましく、粒子径が20μm以下であるものを1質量%以上50質量%以下含み、混練時の原料フィード等の原料移送の安定性の観点から、15質量%以上45質量%以下含むことがより好ましい。さらに、金属酸化物粒子は、耐衝撃性などの物性並びに混練性の観点から粒子径が20μm超過70μm未満である金属酸化物粒子を40質量%以上70質量%以下含むことが好ましく、40質量%以上52質量%以下含むことがより好ましい。
【0020】
また、金属酸化物粒子(B)の純度は、熱伝導性の観点から、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0021】
金属酸化物粒子(B)の配合量は、ポリアミド樹脂組成物に対して、70質量%以上85質量%以下であり、70質量%未満の場合、樹脂量の増加により、熱伝導性を十分に発揮できない。85質量%超過の場合、樹脂量の減少により、ストランドが脆くなることから、混練時のストランドのペレット化が困難になる。熱伝導性と混練性の観点から、70質量%以上85質量%以下が好ましく、75質量%以上85質量%以下がより好ましい。
【0022】
[多価アルコール(C)]
本発明に用いる多価アルコールは、特に制限はないが、融点が150℃以上280℃以下であるものが好ましい。尚、融点とは、樹脂の融点、凝固点の測定に使用される示差走査熱量分析(DSC)で測定した時の吸熱ピーク(融点)の温度を意味する。融点が150℃以上280℃以下である多価アルコール(C)としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタンなどが挙げられ、これらは混合して用いることもできる。混練性や成形性の観点から、ペンタエリスルトールおよび/またはジペンタエリスリトールが好ましい。
【0023】
また、多価アルコールの配合量は、混練性や成形性の観点から、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。成形時の流動性確保と発生ガスの抑制の観点から0.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
[ポリアミド樹脂組成物]
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、溶融混練する方法であれば、特に制限がなく、従来から知られている各種の方法を採用することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を使用して製造することができる。この中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物は、単軸押出機や二軸押出機を使用して好適に製造することができる。
【0025】
また、本発明のポリアミド樹脂には、得られる成形品の特性を損なわない範囲内で、通常配合される各種の添加剤及び改質剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、フィラー、防曇剤、結晶核剤、離型剤、可塑剤、架橋剤、発泡剤、着色剤(顔料、染料等)等を添加することができ、その添加方法に特に制限がなく、上記の製造方法以外にも、従来から知られている各種の方法を採用することができる。例えば、ドライブレンドする方法が挙げられる。
【0026】
得られたポリアミド樹脂組成物を成形品に成形する方法としては、射出、押出、プレス、などの成形加工法が可能である。これらの成形法によって成形品、シートなどに加工することができる。
【0027】
本発明のポリアミド樹脂から得られる成形品の熱伝導率は、JIS R−2616に準拠して測定され、その最大値と最小値の差、即ち、成形品内での熱伝導率の差が0.5W/m・K以内であることが好ましい。
【0028】
本発明のポリアミド系樹脂組成物を用いた成形物は、従来ポリアミド樹脂組成物の成形物が用いられてきた各種成形品、シート、フィルム等としての自動車部部品、コンピューター及びその関連機器、光学機器、電気・電子機器、情報・通信機器、精密機器、土木・建築用品、医療用品、家庭用品など広範な用途に使用できる。とりわけ、自動車、電気・電子機器などの用途に有用である。
【実施例】
【0029】
以下において例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。使用した原材料と各種評価方法を次に示す。
【0030】
(使用原料)
[ポリアミド樹脂(A)]
・ポリアミド樹脂(a−1):ポリアミド6(宇部興産株式会社製P1011F、12メッシュのスクリーンメッシュを通過する平均粒径1mm以下の粉末、相対粘度2.22、水抽出量0.3質量%、比重1.14)
【0031】
[金属酸化物粒子(B)]
・酸化マグネシウム(b−1):酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、RF−70C−SC、平均粒子径7μm、純度99%)
・酸化マグネシウム(b−2):酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、RF−50−SC、平均粒子径53μm、純度98%)
・酸化マグネシウム(b−3):酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ株式会社製、RF−10C−SC、平均粒子径72μm、純度99%)
【0032】
[多価アルコール(C)]
・ペンタエリスリトール(c−1)(日本合成化学工業株式会社製、融点:260℃、比重1.4)
【0033】
(評価方法)
(1)混練性
混練性は、日本製鋼株式会社製の同方向二軸混練機である径44mmΦ、L/Dが35のTEX44を用いて、設定温度290℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrの滞留時間約3分の混練条件でポリアミド樹脂組成物を製造する際の良否を以下の×と○で判定した。
×:混練機から吐出されたストランドがもろく、ストランド切れをおこし、1時間以上連続してペレット化ができないもの。又は、混練負荷が大きく、混練機の許容電流負荷の上限である150Aを超えるもの。
○:連続して1時間以上、ペレット化でき、かつ混練負荷が150Aを超えないもの。
【0034】
(2)熱伝導性
熱伝導性は、JIS R−2616に準拠して測定した。(非定常熱線プローブ法)
テストピースは150mm×150mm×3mmtを使用し、3箇所測定した。図1に示すゲート付近を測定部Aとし、中央部をB、末端部をCとした。
熱伝導率の差は、3箇所測定した熱伝導率の最大値と最小値の差とした。
【0035】
実施例1
ポリアミド樹脂(a−1)宇部興産株式会社製P1011Fを23.2質量%、酸化マグネシウム(b−1)宇部マテリアルズ株式会社製RF−70C−SCを7.6質量%、酸化マグネシウム(b−2)宇部マテリアルズ株式会社製RF−50−SCを37.9質量%、酸化マグネシウム(b−3)宇部マテリアルズ株式会社製RF−10C−SCを30.3質量%、ペンタエリスリトール(c−1)を1.0質量%になるよう配合した。
酸化マグネシウムの粒子径はJIS R 1629に準じ、レーザー回折散乱法で酸化マグネシウム(b−1)、酸化マグネシウム(b−2)、酸化マグネシウム(b−2)の粒度分布を測定し、その粒度分布の結果とそれぞれの配合比より、酸化マグネシウム全量に対する粒子径20μm以下及び70μm以上の酸化マグネシウムの配合割合を算出した。
配合した酸化マグネシウムの平均粒子径は37μmであり、粒子径70μm以上の酸化マグネシウムの配合割合は、15質量%、20μm以下の酸化マグネシウムの配合割合は41質量%であった。
(粒子径が平均粒子径の2倍以上の酸化マグネシウムの配合割合は11質量%であり、平均粒子径の半分以下の酸化マグネシウムの配合割合は41質量%であった。)
これらを円筒型混合機に投入、混合し、その混合物を日本製鋼株式会社製混練機であるTEX44に導入し、設定温度290℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20Kg/hrで溶融混練し、その溶融混練時に混練性について、評価した。また、得られたポリアミド樹脂組成物のペレットをシリンダー温度290℃、金型温度80℃、冷却時間20秒の条件で射出成形により、熱伝導率用に150mm×150mm×3mmの試験片を作成した。作成した試験片を用いて測定箇所A、B、Cの熱伝導性を評価した。この結果を表1に示す。
【0036】
実施例2
実施例1において、酸化マグネシウム(b−1)宇部マテリアルズ株式会社製RF−70C−SCを30.3質量%、酸化マグネシウム(b−2)宇部マテリアルズ株式会社製RF−50−SCを37.9質量%、酸化マグネシウム(b−3)宇部マテリアルズ株式会社製RF−10C−SCを7.6質量%に変えた以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
なお配合した酸化マグネシウムの平均粒子径は52μmであり、配合した酸化マグネシウム全量に対し、粒子径70μm以上の酸化マグネシウムの配合割合が30質量%、20μm以下の酸化マグネシウムの配合割合が21質量%となる。
(粒子径が平均粒子径の2倍以上の酸化マグネシウムの配合割合は15質量%であり、平均粒子径の半分以下の酸化マグネシウムの配合割合は24質量%である。)
【0037】
実施例3
実施例1において、酸化マグネシウム(b−1)宇部マテリアルズ株式会社製RF−70C−SCを15.2質量%、酸化マグネシウム(b−2)宇部マテリアルズ株式会社製RF−50−SCを45.5質量%、酸化マグネシウム(b−3)宇部マテリアルズ株式会社製RF−10C−SCを15.2質量%に変えた以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
なお配合した酸化マグネシウムの平均粒子径は48μmであり、混合した酸化マグネシウム全量に対し、粒子径70μm以上の酸化マグネシウムが22質量%、粒子径20μm以下の酸化マグネシウムが25質量%となる。
(粒子径が平均粒子径の2倍以上の酸化マグネシウムの配合割合は10質量%であり、平均粒子径の半分以下の酸化マグネシウムの配合割合は26質量%である。)
【0038】
比較例1
ポリアミド樹脂(a−1)宇部興産株式会社製P1011Fを23.2%、酸化マグネシウム(b−2)宇部マテリアルズ株式会社製RF−50−SCを75.9質量%、ペンタエリスリトール(c−1)を1.0質量%になるよう配合した以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
なお混合した酸化マグネシウムの平均粒子径は52μmであり、混合した酸化マグネシウム全量に対し、粒子径70μm以上の酸化マグネシウムの配合割合が20質量%、20μm以下の酸化マグネシウムの配合割合が0.0質量%となる。
(粒子径が平均粒子径の2倍以上の酸化マグネシウムの配合割合は2質量%であり、平均粒子径の半分以下の酸化マグネシウムの配合割合は1質量%である。)
【0039】
比較例2
ポリアミド樹脂(a−1)宇部興産株式会社製P1011Fを23.2%、酸化マグネシウム(b−2)宇部マテリアルズ株式会社製RF−50−SCを30.3質量%、酸化マグネシウム(b−3)宇部マテリアルズ株式会社製RF−10C−SCを45.5質量%、ペンタエリスリトール(c−1)を1.0質量%になるよう配合した以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
なお混合した酸化マグネシウムの平均粒子径は11μmであり、混合した酸化マグネシウム全量に対し、粒子径70μm以上の酸化マグネシウムの配合割合が8質量%、20μm以下の酸化マグネシウムの配合割合が56質量%となる。
(粒子径が平均粒子径の2倍以上の酸化マグネシウムの配合割合は42質量%であり、平均粒子径の半分以下の酸化マグネシウムの配合割合は25質量%である。)
【0040】
比較例3
ポリアミド樹脂(a−1)宇部興産株式会社製P1011Fを24.2%、酸化マグネシウム(b−1)宇部マテリアルズ株式会社製RF−70−SCを30.3質量%、酸化マグネシウム(b−2)宇部マテリアルズ株式会社製RF−50−SCを37.9質量%、酸化マグネシウム(b−3)宇部マテリアルズ株式会社製RF−10C−SCを7.6質量%とした以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物のペレットを製造し、これらを評価した。結果を表1に示す。
なお混合した酸化マグネシウムの平均粒子径は52μmであり、混合された酸化マグネシウム全量に対し、粒子径が70μm以上の酸化マグネシウムの配合割合が30.0質量%、20μm以下の酸化マグネシウムの配合割合が21.0質量%となる。
(粒子径が平均粒子径の2倍以上の酸化マグネシウムの配合割合は15質量%であり、平均粒子径の半分以下の酸化マグネシウムの配合割合は24質量%である。)
【0041】
比較例4
酸化マグネシウム(b−1)宇部マテリアルズ株式会社製RF−70−SCを75.9質量%、酸化マグネシウム(b−2)宇部マテリアルズ株式会社製RF−50−SCと酸化マグネシウム(b−3)宇部マテリアルズ株式会社製を0質量%とした以外は実施例と同様にして製造したが、混練状態が悪くポリアミド樹脂組成物のペレットを取得できなかった。
なお混合した酸化マグネシウムの平均粒子径は74μmであり、混合した酸化マグネシウム全量に対し、粒子径が70μm以上の酸化マグネシウムの配合割合は52.0質量%、20μm以下の酸化マグネシウムの配合割合は30.0質量%となる。(粒子径が平均粒子径の2倍以上の酸化マグネシウムの配合割合は16質量%であり、平均粒子径の半分以下の酸化マグネシウムの配合割合は37質量%である。)
【0042】
表1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)と、金属酸化物粒子(B)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
金属酸化物粒子(B)は、その全量に対し、粒子径が70μm以上であるものを10質量%以上50質量%以下含み、粒子径が20μm以下であるものを1質量%以上50質量%以下含み、
ポリアミド樹脂組成物に対し、金属酸化物粒子(B)を、70質量%以上85質量%以下含むポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、ポリアミド樹脂組成物に対し、多価アルコール(C)を0.1質量%以上5質量%以下含む請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
金属酸化物粒子(B)が酸化マグネシウムである請求項1または請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。

【図1】
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【公開番号】特開2012−107135(P2012−107135A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257790(P2010−257790)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】