説明

ポリアミド樹脂組成物

【課題】強度、剛性、耐衝撃強度、耐熱性を同時に満足する成形物の製造に有用なポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリアミド樹脂、(B)無機充填材および(C)前記ポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂を含有し、無機充填材およびポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂中に互いに独立して分散しており、分散した無機充填材の平均粒子径が0.1〜4μmであり、かつ分散したポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂の平均粒子径が0.05〜2μmであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド樹脂組成物に関する物であり、更に詳しくは強度、剛性、耐衝撃性、耐熱性を同時に満足する成形物の製造に有用なポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂成形物は優れた機械的、熱的、化学的、電気的特性を有するため、従来より自動車部品、電気部品、工業部品等の用途に広く用いられているが、低温での衝撃特性が悪いため種々の衝撃改良樹脂を添加することがよく知られている(例えば特許文献1参照)。しかしこの方法では耐衝撃性は改良されるが強度、剛性、耐熱性が著しく低下する欠点が生じる。この欠点を改良するため、無機充填材を添加しても、強度、剛性および耐熱性は多少改善されるが、それらの改良効果は必ずしも十分ではない。
そこで、前記問題を解決するため、各組成物のモルフォロジー構造を特定ことが提案されているが(特許文献2参照)、それでも添加された無機充填材によって、衝撃強度は大幅に低下してしまい、必ずしも十分な耐衝撃性が得られるわけではなかった。
【特許文献1】特開昭60−238360号公報
【特許文献2】特開平05−331369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はポリアミド樹脂組成物の組成およびモルフォロジー構造を特定化することにより、ポリアミド樹脂の優れた強度、剛性、耐熱性、耐薬品性を保持しつつ、低温から高温まで極めて優れた耐衝撃性をもつ成形物の提供を可能にならしめようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々研究の結果、(A)ポリアミド樹脂、(B)無機充填材および(C)前記ポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂を含有し、無機充填材およびポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂中に互いに独立して分散しており、分散した無機充填材の平均粒子径が0.1〜4μmであり、かつ分散したポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂の平均粒子径が0.05〜2μmであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物の成形物が強度、剛性、伸度、耐衝撃性、耐熱性を同時に満足することを見出して本発明を完成した。
【0005】
本発明のポリアミド樹脂組成物における(C)成分のポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂の含有量は、(A)成分のポリアミド樹脂100質量部に対して2〜50質量部である。好ましくは5〜40質量部である。
本発明のポリアミド樹脂組成物における無機充填材の含有量は、5〜65質量%、好ましくは10〜50質量%である。
また本発明のポリアミド樹脂組成物は下記のモルフォロジー構造を有する。即ち、無機充填材および前記のポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂をマトリックスとしその中に互いに独立して分散しており、分散した無機充填材の平均粒子径は0.1〜4μm、好ましくは0.5〜2μmであり、かつ分散したポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂の平均粒子径は0.05〜2μm、好ましくは0.1〜0.8μmである。かつ、無機充填材とポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂は相互に独立して分散している。なおこれらの粒子は部分的あるいは局部的に相互接着していてもよいが無機充填材の周囲を該熱可塑性樹脂が囲み込む状態は好ましくない。
このような組成、およびモルフオロジー構造を有する場合に、ポリアミド樹脂組成物は強度、剛性、耐熱性を保持しつつ同時に極めて優れた耐衝撃性を有する成形物とすることができるのである。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、ポリアミド樹脂組成物の組成およびモルフォロジー構造を特定化することにより、ポリアミド樹脂の優れた強度、剛性、耐熱性、耐薬品性を保持しつつ、低温から高温まで極めて優れた耐衝撃性をもつ成形物の提供が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を具体的に説明する。
本発明におけるポリアミド樹脂とは、分子中に酸アミド結合(−CONH−)を有するものであり、具体的には、ε−カプロラクタム、6−アミノカプロン酸、ω−エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、α−ピロリドン、α−ピペリドン等から得られる重合体又は共重合体:ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン等のジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸とを重縮合して得られる重合体又は共重合体もしくはこれらのブレンド物等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0008】
上記のポリアミド樹脂のうち、平均分子量9000〜30000のものが好ましい。又ポリアミド樹脂のアミノ末端基、カルボキシル末端基はポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有するポリマーと反応し結合するためアミノ末端基量、カルボキシル末端基量は多い方が好ましい。また、ポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有するポリマーの反応性官能基の種類、量により両末端基量のバランスを変更してもよい。
【0009】
本発明において使用する無機充填材としては分散粒子径が4μm以下に分散可能であればよく、材質および形状に特に制限はないが、粒子状又は板状の無機充填材が好ましく、特に板状の無機充填材が強度・剛性の向上の点で特に好ましい。使用されるフィラーとしては、石英、カオリン、タルク、ワラスト、アルミナ、雲母、黒鉛、珪灰石、ガラスビーズ、リトボン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウムおよび硫酸バリウム、炭酸マグネシウムおよび硫酸マグネシウムおよび硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、カーボンブラック等が使用され、これらを2種以上併用しても良い。
これらの無機充填材の含有量は、5〜65質量%、好ましくは10〜50質量%である。
無機充填材の含有量が5質量%未満であれば補強効果が少なく、反対に65質量%より多いと成形品が脆くなったり、成形時の流動性不良、成形品の外観不良が発生し好ましくない。
【0010】
またさらに無機充填材とポリアミド樹脂との結合をよくするために無機充填材はカップリング剤と併用するか、カップリング剤処理したものを用いてもよい。
カップリング剤としてはシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等いずれを使用してもよいが、そのなかでも特にアミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤が好ましい。これらのシラン系カップリング剤はポリアミド樹脂のカルボキシル末端基、又はアミノ末端基と反応し無機充填材とポリアミド樹脂を化学的に結合させ、強度、弾性率、伸度、耐衝撃性を向上させる働きをする。カップリング剤の添加量は無機充填材100質量部に対し0〜2.0質量部が好ましい。
【0011】
本発明におけるポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(TPX)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA),エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA),エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフイン系樹脂;AS樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン(PS)、アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のビニルポリマー系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC),ポリアクリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)のブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とポリカプロラクトンのブロック共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリフエニレンオキサイド(PPO)等の樹脂があるがこれらに限定されるものではない。特に衝撃強度向上の目的から、オレフィン系樹脂が好ましい。なおこれらの熱可塑性樹脂は二種又はそれ以上併用してもよい。
【0012】
本発明におけるポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂の有する反応性官能基とはポリアミド樹脂の末端基であるアミノ基、カルボキシル基および主鎖アミド基と反応しうる基であり、具体的にはカルボン酸基、酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基、イソシアネート基等が例示されるがこれらのなかで酸無水物基が最も反応性に優れている。このようにポリアミド樹脂と反応する反応性官能基を有する熱可塑性樹脂はポリアミド中に微分散し、微分散するがゆえに粒子間の距離が短くなり耐衝撃性が大幅に改良されるという報告もある〔S.Wu,Polymer,26,1855(1985)〕。
【0013】
本発明のポリアミド樹脂組成物のモルフォロジー構造として、無機充填材およびポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂は互いに実質的に独立してポリアミド樹脂内に均一に微分散している必要があり、無機充填材とポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂は部分的あるいは局部的接着はよいが無機充填材を囲みこむ接着は好ましくない。
ポリアミド樹脂以外の反応性を有する熱可塑性樹脂が無機充填材を直接囲むようなモルフォロジー構造をもたせた場合、無機充填材を添加する目的である強度、剛性、耐熱性改良効果がうすれてしまうため好ましくない。
【0014】
また無機充填材はポリアミド樹脂内に4μm以下に均一分散させる必要がある。無機充填材の粒子が4μm以上であったり、樹脂中への分散が十分でなく凝集粒子が多数存在したりした場合、無機充填材が破壊起点となり衝撃強度が著しく低下してしまう。
また、ポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂のポリアミド樹脂内の微分散粒径は平均約2μm以下、好ましくは0.5μm以下である。約2μm以上になれば粒子間の距離が長くなり、強度、伸度、耐衝撃性が低下し好ましくない。
【0015】
前記のようなモルフォロジー構造を有するポリアミド樹脂組成物は単にポリアミド樹脂、無機充填材、ポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂をブレンド後、押出機等で溶融混練する常法では得られ難く、特別の方法による混練分散が推奨される。即ち、溶融混練機(例えば溶融押出機、溶融反応釜)にポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂を均一に溶融混練し、ポリアミド樹脂中に反応性官能基を有する熱可塑性樹脂を均一に微分散させた後、無機充填材を投入しポリアミド樹脂内に無機充填材を均一に分散させる方法が採用できる。又、溶融混練機でポリアミド樹脂と無機充填材を溶融混練し、ポリアミド樹脂内に均一に無機充填材を分散させた後、ポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂を投入しポリアミド樹脂内に該反応性官能基を有する熱可塑性樹脂を均一に微分散させる方法が採用できる。しかし、本発明のポリアミド組成物の調製はかかる特定のブレンド方法に限られるものではなく、前記の組成およびモルフォロジー構造が得られる限り勿論他のブレンド・混練方法を用いることができる
【0016】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、各種用途目的に応じて難燃剤、離型剤、光安定剤又は熱安定剤、着色剤等を添加することができる。難燃剤としてはハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモンの組み合わせが良く、ハロゲン系難燃剤としてはブロム化ポリスチレン、ポリジブロムフエニレンオキサイド、デカブロムジフエニールエーテル等が好ましい。又非ハロゲン系難燃剤としてはメラミンシアヌレート、赤リン等が好ましい。離型剤としてはステアリン酸の金属塩等が好ましい。光又は熱安定剤としては、カーボンブラック、ハロゲン化銅とハロゲン化カリウムの組み合わせ、ヒンダードフエノール系安定剤、リン系安定剤およびそれらの組み合わせ等が好ましい。しかしこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
次に実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが本発明がこれら実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
また以下の実施例、比較例において示した各特性、物性値は下記の試験方法で測定した。
(1)曲げ強度、曲げ弾性率
ISO178に準拠して測定した。
(2)シャルピー衝撃強度(ノッチ付)
ISO179に準拠して測定した。
(3)荷重たわみ温度(フラットワイズ法、荷重:0.46MPa)
ISO75に準拠して測定した。
(4)成形品のモルフォロジー観察方法
各ポリアミド樹脂組成物について、日本電子製JEM2010透過型電子顕微鏡を使用したTEM観察を行った。観察用試料は、上記引張り特性に供した試料と同形状の試料の中央部から試料を切り出し、樹脂流れ方向に対し垂直な面の凍結切片を得て、該切片をリンタングステン酸溶液で30分間染色して、さらにカーボン蒸着を施して作製した。TEM観察は日本電子製JEM2010透過型電子顕微鏡で200kVの加速電圧、直接倍率5000倍にて行い写真撮影を行った。次いで、得られた写真を画像解析装置に供することで、約100個のドメインの平均粒子径を求めた。当該装置では、ドメインの観察像が楕円形状である場合は、球に換算した直径を粒子径であるとみなす。
【0018】
実施例、比較例に用いた原材料は下記のとおりである。
<ポリアミド樹脂>
(A−1)ポリアミド樹脂:ナイロン6(東洋紡績株式会社製、銘柄T−803(分子量=16000、アミノ末端量=58meq/kg、カルボキシ末端量=58meq/kg))
<無機充填材>
(B−1)タルク:ミクロン406(林化成株式会社製、平均粒子径=5μm)
(B−2)カオリン:ASP200(林化成株式会社製、平均粒子径=0.4μm)
(B−3)炭酸カルシウム:ブリリアント1500(白石カルシウム株式会社製、平均粒子径=0.15μm)
<反応性官能基を有する熱可塑性樹脂>
(C−1)変性エチレン−αオレフィン共重合体:タフマーMH−7020(三井化学株式会社製)
【0019】
〔実施例1〜2、比較例1〜4〕
表1に示す組成を、サイドフィード口を持つ2軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM35)を用いて溶融混練を行い、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。なお2軸押出し機のシリンダー温度は240〜280℃である。得られたペレットは射出成形機(東芝機械株式会社製、IS80)でISO規格のテストピースを成形し、物性測定に供した。射出成形機の成形条件はシリンダー温度280℃、金型温度80℃である。
〔実施例1〕
実施例1はポリアミド樹脂(A−1)60質量部、無機充填材(B−2)25質量部を同時にブレンド後押出し機ホッパー口より供給し、反応性官能基を有する熱可塑性樹脂(C−1)15質量部をシリンダー途中のベント口より供給し、溶融混練してポリアミド樹脂組成物を得た。この樹脂特性値は強度、弾性率、シャルピー衝撃強度、熱変形温度すべてにおいて優れた特性を有していた。成形品のモルフォロジー構造はポリアミド中に反応性官能基を有する熱可塑性樹脂が微分散接着しており、無機充填材は直接ポリアミドに分散しており、無機充填材の周りには熱可塑性樹脂は接着していなかった。
〔実施例2〕
実施例1の無機充填材を(B−3)に変更した以外は実施例1を繰り返してポリアミド樹脂組成物を得た。この樹脂特性、および成形品のモルフオロジー構造は、実施例1とほぼ同じであった。
〔比較例1〕
比較例1はポリアミド樹脂(A−1)100質量部を押出し機ホッパー口より投入し溶融混練を実施した。
〔比較例2〕
比較例2はポリアミド樹脂(A−1)85質量部、反応性官能基を有する熱可塑性樹脂(C−1)15質量部を同時にブレンド後、押出機ホッパー口より投入し溶融混練を実施した。この樹脂特性値は比較例1と比較すればシャルピー衝撃は向上したが強度、弾性率、熱変形温度は低下した。成形品のモルフォロジー構造はポリアミド中に反応性官能基を有する熱可塑性樹脂が微分散接着していた。
〔比較例3〕
比較例3はポリアミド樹脂(A−1)60質量部、無機充填材(B−2)25質量部、反応性官能基を有する熱可塑性樹脂(C−1)15質量部を同時にブレンド後、押出機ホッパー口より投入し溶融混練を実施した。比較例3は実施例1と同組成であるにもかかわらず、得られた成形品の強度、弾性率、衝撃強度ともに大きく低かった。成形品のモルフォロジー構造は熱可塑性樹脂が無機充填材の回りを囲むように接着しており、反応性官能基を有する熱可塑性樹脂は微分散できず粗大化しているものが確認できた。強度、弾性率、熱変形温度が大幅に低下したのは無機充填材の周囲を熱可塑性樹脂が囲んでいるため本来の無機充填材添加目的である強度、弾性率、熱変形温度向上作用が低下したためであり、無機充填材によって熱可塑性樹脂の分散が阻害された結果、衝撃強度も向上しなかったと考える。
〔比較例4〕
実施例1の無機充填材を(B−1)に変更した以外は実施例1を繰り返してポリアミド樹脂組成物を得た。比較例4は無機充填材の添加により、成形品の強度、弾性率、熱変形温度が向上しているものの、シャルピー衝撃強度が大幅に低下している。成形品のモルフォロジー構造は、反応性官能基を有する熱可塑性樹脂が2μm以下にポリアミド中に微分散しているが、無機充填材は6〜10μmの粒子径でポリアミド中に分散していた。粗大な無機充填材が破壊起点となり衝撃強度が大幅に低下したと考える。
表1に示された結果から明らかなように、本発明のポリアミド樹脂組成物から得られる成形物は、強度、剛性、伸度、耐衝撃性、耐熱性いずれにおいても優れていることが判る。
【0020】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のポリアミド樹脂組成物の成形物は強度、剛性、伸度、耐衝撃性、耐熱性を同時に満足するため、これらの性質が特に要求される用途分野において好ましく用いられる。例えば自動車部品、電動工具部品、電気部品、工業部品等の成形品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明実施例1のポリアミド系導電性樹脂組成物の電子顕微鏡写真
【図2】比較例1のポリアミド系導電性樹脂組成物の電子顕微鏡写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミド樹脂、(B)無機充填材および(C)前記ポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂を含有し、無機充填材およびポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂中に互いに独立して分散しており、分散した無機充填材の平均粒子径が0.1〜4μmであり、かつ分散したポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂の平均粒子径が0.05〜2μmであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
(C)ポリアミド樹脂以外の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂の含有量が、(A)成分のポリアミド樹脂100質量部に対して2〜50質量部である請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
(B)無機充填材を5〜65質量%含む請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアミド樹脂組成物から得られる成形品のシャルピー衝撃強度が40kJ/m2以上であり、かつ曲げ弾性率が1600MPa以上である請求項1〜3いずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−238752(P2007−238752A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62587(P2006−62587)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】