説明

ポリイソシアネート硬化剤、これを使用した塗料組成物および接着剤組成物

【目的】ポリイソシアネート化合物の低粘度化により、耐候性、柔軟性等に優れたハイソリッドタイプおよび無溶剤タイプの塗料および接着剤を提供し、その省資源化、低公害化を図る。
【構成】下記1)〜4)すべての条件を満足するポリイソシアネート化合物を主成分とする2液型ポリウレタン樹脂用硬化剤、並びにこのポリイソシアネート化合物と多価ヒドロキシル化合物とからなりそのイソシアネート基と水酸基のモル比が9:1〜1:9であるポリウレタン塗料および接着剤。
1)ヘキサメチレンジイソシアネートより得られるものであること。
2)ヘキサメチレンジイソシアネートモノマーおよび溶剤を実質的に含まない状態での粘度が1,400mPa・s/25℃未満であること。
3)ウレトジオン二量体の含有率が10%より多いこと。
4)イソシアヌレート環状三量体の含有率が60%未満であること。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ウレトジオン二量体とイソシアヌレート環状三量体とを含有するヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート化合物を主成分とする硬化剤、並びにこれを用いた塗料および接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】塗料・塗装及び接着剤分野においては、省資源、低公害、安全性を要求される動きが顕著であり、無公害化塗料および接着剤としてハイソリッドタイプ、粉体および水系の塗料及び接着剤、ホットメルトタイプ接着剤が注目を浴びている。特に、米国においては、VOC(Volatile Organic Compounds)削減のための規制の対応策として、ハイソリッドタイプの塗料および接着剤が使用されつつある。わが国においては、ハイソリッドタイプへの転換は米国に比べて低いが、各地方自治体での環境保護の動き、ハイソリッド化による現行塗料のレベルアップ、更に、例えば自動車産業におけるように米国生産車と日本生産車との品質保証の統一化の動き等から、ハイソリッドタイプの使用が検討されつつある。一方、実際に塗装する際には、適当な溶剤で、各種塗装方法に応じた適正粘度まで希釈する必要がある。その際、高粘度ワニスの場合、稀釈に使用する溶剤量が多くなるため、1回の塗装操作で塗れる膜厚は薄くなる。塗料本来の目的である、物体の保護および着色の効果を達成するためには、最低限の膜厚、隠ぺい性が必要であるため、所定の膜厚に達するまで塗装を繰り返さねばならない。その際、溶剤の速すぎる飛散や飛散不良に起因するピンホールやタレが発生し、塗膜外観が悪くなる傾向にある。ところで、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略称する。)系ポリイソシアネートを硬化剤として用い、主剤として主にアクリルポリオールまたはポリエステルポリオールを用いた一液タイプおよび二液タイプポリウレタン塗料及び接着剤は、耐侯性、耐薬品性、耐摩耗性等に優れており、自動車及び建築の外装及び接着の分野に使用されている。このようなウレタン分野においても、以上の観点から実際の塗装粘度に希釈するのに必要な溶剤量を削減するため、ハイソリッドタイプ換言すれば低粘度タイプのシステムが要望されている。HDI系ポリイソシアネート硬化剤としては、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社発行)の404〜406ページの記載によれば、耐侯性に関してはポリイソシアヌレートタイプが優れている。しかしながら、現在市販されているこのタイプの硬化剤は、HDIモノマーおよび溶剤を実質的に含まない状態での粘度で比較した場合、例えばイソシアヌレート化HDI(日本ポリウレタン工業株式会社製コロネートHX;イソシアネート含量=21.3%、固形分=100%)の場合、その粘度は2,400mP・a/25℃である。粘度の最も低いタイプの硬化剤であるイソシアヌレート化HDI(旭化成工業株式会社製デュラネートTPA−100;イソシアネート含量=23.1%、固形分=100%)の場合でも、粘度は1,400mP・a/25℃である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような課題に対して、例えば二液ポリウレタン系においてハイソリッド化を達成するために主剤および硬化剤についての検討を進める際、主剤側は、ポリエステルポリオール、アルキッドポリオール、エポキシポリオール、アクリルポリオール等のうちからハイソリッドタイプ、すなわち低粘度、低分子量タイプを選択すれば良い。しかし主剤と硬化剤のトータルシステムとしてハイソリッド化を達成するためには、硬化剤からのアプローチも必要で、硬化剤も従来より低分子量で低粘度タイプにする必要がある。その際、硬化剤は前述のように耐候性の観点からイソシアヌレート環を有していることが必要であるが、その低分子量タイプですら、HDIの3モルから得られるポリイソシアネートタイプのため低分子量化することに限界があり、前述の如く、1,400mP・a/25℃程度の粘度しか達成できていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このような従来の塗料および接着剤の問題点を解決するため、特にポリウレタン分野において、イソシアヌレート構造よりも低分子量構造であるウレトジオン構造に着目し、その化学構造を分子中に多量に導入することにより低分子量化、そして低粘度化を図ることをめざした。その結果、新規なHDI系硬化剤を見出し本発明を完成するに至った。すなわち、本発明により、ヘキサメチレンジイソシアネートより得られるポリイソシアネート化合物であって、ヘキサメチレンジイソシアネートモノマー及び溶剤を実質的に含まない状態での粘度が1,400mP・a/25℃未満であり、かつウレトジオン二量体含有率が10%より多く、イソシアヌレート環状三量体含有率が60%未満であるポリイソシアネート化合物、を主成分とする2液型ポリウレタン樹脂用硬化剤、および前記ポリイソシアネート化合物と多価ヒドロキシル化合物とを含有してなるポリウレタン塗料組成物または接着剤組成物であって、前記ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と前記多価ヒドロキシル化合物中の水酸基のモル比が9:1〜1:9の範囲であること、を特徴とする前記ポリウレタン塗料組成物または接着剤組成物が提供される。
【0005】なお、上記のウレトジオン二量体含有率、イソシアヌレート環状三量体含有率は、示差屈折率計検出によるゲルパーミェーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する。)によって得られる各ピークの面積百分率から求められる。
【0006】ウレトジオン二量体はイソシアヌレート環状三量体より低分子量体であるため、ウレトジオン二量体含有率が10%以下のときは、本発明の目的である低粘度化を実現することができない。
【0007】ところで一方、ウレトジオン二量体含有率が10%以下であっても、イソシアヌレート環状三量体含有率を60%以上とすることにより低粘度化を図る場合には、ウレトジオン二量体が2官能であるのに対してイソシアヌレート環状三量体が3官能であるため、ポリイソシアネート化合物は高官能基数となり、その塗膜は硬くてもろくなり、接着不良およびはがれの現象が現われる。このことは、以下の実施例と比較例との比較から明らかで、耐衝撃性、屈曲性、エリクセン試験値等の塗膜物性値が悪くなる。
【0008】あくまでもイソシアヌレート環状三量体の含有率を高める方法で塗膜のもろさを改良するには、高分子化を図る必要がある。しかしながら、本来イソシアヌレート環状三量体がウレトジオン二量体より硬い構造であるために、得られる塗膜も硬い構造になることは避けられない。さらに、高分子体になるために、本発明の特長とするハイソリッド性、厚塗り性を達成することができない。
【0009】この点、本発明におけるポリイソシアネート化合物は、イソシアヌレート環状三量体よりも官能基数の低いウレトジオン二量体を10%以上、好ましくは15〜40%含有しているため、ヘキサメチレンジイソシアネートモノマー及び溶剤を実質的に含まない状態での粘度が1,400mP・a/25℃未満、好ましくは100〜1,000mP・a/25℃という低粘度タイプでありかつ柔軟性を保持する特長を有する。
【0010】近年、特に自動車用部品を中心にプラスチック化の動きが顕著である。しかしながら、プラスチックは一般的に金属に比べて熱膨張率が大きいため、塗膜が硬い場合、基材の熱変化に適合していけず、接着不良となる傾向にある。そのため、本発明により得られる組成物は、柔軟であるので接着強度にもすぐれ、プラスチック用塗料および接着剤として適している。
【0011】よって、たとえば特開昭63−265970号公報、特開平2−620号公報に記載されているように、ウレトジオン二量体を10%以下含有し、イソシアヌレート環状三量体を60%以上含有する方法で低粘度化を達成する試みは、前記のような実用上の欠点を有している。
【0012】一方、ウレトジオン結合は、加熱により解離してイソシアネートを再生するという公知の事実から判断して経時安定性に問題があると推測される。しかしながら、その熱解離温度は約150℃であり、室温で7カ月の期間保存していても、50℃で3カ月の期間保存していても、イソシアネート含量、粘度、赤外線吸収スペクトル、GPCにおけるピークパターンにいささかの変化も見られないことから判断して、例えば特開昭63−265970号公報および特開平2−620号公報におけるこれに関する記載は適切でない。
【0013】更に、本発明におけるポリイソシアネート化合物は、GPC分析でイソシアヌレート環状三量体が60%未満、好ましくは15〜45%含まれている。また化合物全体として、イソシアヌレート構造は、赤外線吸収スぺクトルにおけるイソシアヌレート基に対応する1690cm−1ピークとウレトジオン基に対応する1770cm−1ピークの吸光度比から求めた場合、イソシアヌレート:ウレトジオン=0.2〜0.7:1のモル比で含まれている。したがって、このことにより耐候性が保持されていることは、以下に述べる実施例より例証されている。
【0014】以上の事実から、本発明におけるポリイソシアネート化合物は、低粘度化に効果的なウレトジオン基を含有し、同時に耐候性保持に必要とされるイソシアヌレート構造を有する。本発明におけるポリイソシアヌレート化合物を得るためには、ウレトジオン構造を経由するか、副反応として起こるイソシアヌレート化反応を用いるのが好ましい。そして、本発明において使用する低粘度タイプのポリイソシアネート化合物を得るには、その反応の進行を初期の段階で停止させる必要がある。つまり、目的の反応率に到達後、例えばリン酸、パラトルエンスルフォン酸メチルを添加して反応を停止させ、反応混合物中に存在している遊離の未反応HDIを、例えばn−ヘキサンを用いる抽出あるいは0.01〜0.1Torrの高真空下での120〜140℃における薄膜蒸留といった適当な手段により、多くとも0.5wt%の残留含有率まで除去する。
【0015】本発明におけるウレトジオン二量体とイソシアヌレート環状三量体とを同時に含有する化合物を得るために効果的な触媒としては、トリエチルホスフィン、ジブチルエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−イソブチルホスフィン、トリ−第三級ブチルホスフィン、トリ−アミルホスフィン、トリ−オクチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ベンジルメチルホスフィンを挙げることができる。通常、これらの反応はポリウレタン工業に常用の不活性溶剤、たとえばトルエン、キシレン、スワゾール、ソルベッソ等の芳香族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤を一種又は二種以上使用することもできるため、使用条件に応じた粘度に調整することができる。反応温度は、通常50〜90℃の範囲から選ばれる。
【0016】一方、本発明の塗料および接着剤組成物に使用される多価ヒドロキシル化合物としては、分子内に二個以上の水酸基を有する多価ヒドロキシル化合物が好ましい。具体的には、飽和または不飽和ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、飽和または不飽和の油変性または脂肪酸変性アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースアセテートブチラート樹脂、含フッ素樹脂等が挙げられる。このうち、光沢、肉持感、硬度、可撓性、耐久性等の塗膜性能、乾燥性、硬化性等の作業性およびコスト等の点で、特に飽和または不飽和ポリエステル樹脂、飽和または不飽和の油変性または脂肪酸変性アルキッド樹脂、アクリル樹脂が多価ヒドロキシル化合物として好ましい。本発明の塗料または接着剤組成物において、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と多価ヒドロキシル化合物中の水酸基とのモル比は、9:1〜1:9、好ましくは6:4〜4:6の範囲である。本発明の組成物は、ラッカー工業に常用の各種顔料および各種添加剤等を含んでいてもよい。さらに、本発明の組成物は、従来より行なわれている通常の塗装方法によって塗装することができ、塗装にはエアレススプレー機、エアスプレー機、静電塗装機、浸漬、ロール塗装機、ハケ等を用いることができる。
【0017】
【発明の効果】本発明により、低粘度のポリイソシアネート化合物を硬化剤の主成分とし、これと多価ヒドロキシル化合物とを組合わせて、耐候性、柔軟性等の諸性質に優れたハイソリッドタイプおよび無溶剤タイプの塗料および接着剤組成物を提供することが可能になった。すなわち、本発明の組成物により、省資源、低公害の達成に近づくことができ、そして従来の塗料、接着剤よりも1回で厚塗りすることができ、ワキ、タレ限界を向上させることができる。その結果、本発明の組成物は、金属、プラスチック、コンクリート、木材等の広範囲の被塗物に有利に適用できる。
【0018】
【実施例】本発明について、実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。実施例及び比較例において、「部」は全て「重量部」を意味し、「%」は全て「重量%」を意味する。
【0019】実施例1撹拌機、温度計及び冷却器のついた反応器に、HDI(日本ポリウレタン工業株式会社製;イソシアネート含量=49.9%、固形分=100%)3,000部と触媒としてトリオクチルホスフィン6.0部を仕込んだ。これを撹拌しながら50〜60℃に加熱し、同温度で8時間反応させ、次いでリン酸1.9部を加えて反応を停止させ、イソシアネート含量=42.1%の淡黄色の反応生成液を得た。未反応のHDIを120℃、0.01Torrで薄膜蒸発により除去して、イソシアネート含量=23.2%(ガスクロマトグラフィー分析による残留の遊離HDI=0.2%)、GPC分析により求めたウレトジオン二量体含有率が32%、イソシアヌレート環状三量体含有率が44%、粘度=100mP・a/25℃の淡黄色の反応生成物「A−1」を900部得た。
【0020】塗料組成物一方、アクリルポリオール(ジョンソン株式会社製J−500;水酸基価=112、固形分=80%)364.2部に、チタン白282.0部(最終塗料組成物の顔料重量%=40%;顔料重量は以下PWCと略称する。)を加え、次いで最終塗料組成物の20℃における塗装粘度がフォードカップNo.4で25秒になるように、トルエン/酢酸エチル/酢酸ブチル/酢酸セロソルブアセテート=1/1/1/1(wt%)の混合溶剤(以下、D/Dソルベントと略称する。)222.2部を加え、さらに所定量のガラスビーズを加え、振とう機にかけて顔料分散を行ない、分散液を得た。このようにして得られた分散液からガラスビーズを除去後、その400部に対して上記で得られた組成物「A−1」60.6部を加え塗料組成物を得た。この塗料組成物の塗装固形分は70.5%であった。
【0021】塗膜試験このようにして得られた上記の塗料組成物をトリクロロエチレンで脱脂した鋼板(JIS G3141〈SPCC−SB〉、仕様:PF−1077、日本テストパネル工業株式会社製、以下、ボンデ鋼板と略称する。)に塗布し、20℃、65%の環境下で1週間放置し、乾燥膜厚=40〜50μの塗膜を形成させた。そして、形成した塗膜の諸物性を下記試験方法により調べた。その結果を表1に示す。
【0022】付着性……JIS 5400に準じて、碁盤目テープ法により行なった。
耐衝撃性……1/2インチ、1Kgの条件で行なった。
耐薬品性……20℃、24時間の条件で行なった。
耐水性……20℃、24時間の条件で行なった。
耐汚染性……JIS 5400に準じて行なった。
耐候性……サンシャインウェザオメータ(スガ試験機株式会社製)にて、ブラックパネル温度=63±3℃、噴霧時間=120分で18分間の条件で、JIS 5400に準じて2,000時間後の光沢保持率(%)、変色度(△E)を測定した。
【0023】実施例2撹拌機、温度計及び冷却器のついた反応器に、HDI(日本ポリウレタン工業株式会社製:イソシアネート含量=49.9%、固形分=100%)3,000部と触媒としてトリブチルホスフィン6.0部を仕込んだ。これを撹拌しながら50〜60℃に加熱し、同温度で23時間反応させ、次いでリン酸3.5部を加えて反応を停止させ、イソシアネート含量=30.3%の淡黄色の反応生成液を得た。未反応のHDIを120℃、0.01Torrで薄膜蒸発により除去して、イソシアネート含量=18.7%(ガスクロマトグラフィー分析による残留の遊離HDI=0.3%)、GPC分析により求めたウレトジオン二量体含有率が18%、イソシアヌレート環状三量体含有率が20%、粘度=580mP・a/25℃の淡黄色の反応生成物「A−2」を1,800部得た。
【0024】塗料組成物一方、アクリルポリオール(日立化成工業株式会社製ヒタロイド3083−70B:水酸基価=70、固形分=70%)406.5部に、チタン白273.2部(最終塗料組成物のPWC=40%)を加え、次いで最終塗料組成物の20℃における塗装粘度がフォードカップNo.4で25秒になるように、D/Dソルベント195.1部を加え、さらに所定量のガラスビーズを加え、振とう機にかけて顔料分散を行ない、分散液を得た。このようにして得られた分散液からガラスビーズを除去後、その400部に対して上記で得られた組成物「A−2」57.3部を加え塗料組成物を得た。この塗料組成物の塗装固形分は68.3%であった。
塗膜試験このようにして得られた上記の塗料組成物をトリクロロエチレンで脱脂したボンデ鋼板に塗布し、20℃、65%の環境下で1週間放置して、乾燥膜厚=40〜50μの塗膜を形成させた。そして、実施例1と同様の方法により、形成した塗膜の諸物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0025】実施例3撹拌機、温度計及び冷却器のついた反応器に、HDI(日本ポリウレタン工業株式会社製;イソシアネート含量=49.9%、固形分=100%)2987.4部と1,3ブタンジオール12.6部を仕込んだ。これを撹拌しながら60〜70℃に加熱し、同温度で3時間反応させて、イソシアネート含量=49.3%の淡黄色の反応生成液を得た。次いで、この反応生成液に触媒としてトリアミルホスフィン6.0部を仕込んだ。これを撹拌しながら50〜60℃に加熱し、同温度で25時間反応させ、その後パラトルエンスルホン酸メチル5.5部を加えて反応を停止させ、イソシアネート含量=30.3%の淡黄色の反応生成液を得た。未反応のHDIを140℃、0.01Torrで薄膜蒸発により除去して、イソシアネート含量=18.7%(ガスクロマトグラフィー分析による残留の遊離HDI=0.1%)、GPC分析により求めたウレトジオン二量体含有率が20%、イソシアヌレート環状三量体含有率が20%、粘度=750mP・a/25℃の淡黄色の反応生成物「A−3」を1,650部得た。
【0026】塗料組成物一方、ポリエステルポリオール(日本ポリウレタン工業株式会社製ニッポラン800−75E;水酸基価=217.5、固形分=75%)268.8部に、チタン白274.8部(最終塗料組成物のPWC=40%)を加え、次いで最終塗料組成物の20℃における塗装粘度がフォードカップNo.4で25秒になるように、D/Dソルベント245.8部を加え、さらに所定量のガラスビーズを加え、振とう機にかけて顔料分散を行ない、分散液を得た。このようにして得られた分散液からガラスビーズを除去後、その400部に対して上記で得られた組成物「A−3」106.7部を加え塗料組成物を得た。この塗料組成物の塗装固形分は68.7%であった。
塗膜試験このようにして得られた上記の塗料組成物をトリクロロエチレンで脱脂したボンデ鋼板に塗布し、20℃、65%の環境下で1週間放置して、乾燥膜厚=40〜50μの塗膜を形成させた。そして、実施例1と同様の方法により、形成した塗膜の諸物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0027】実施例4実施例1で得られた塗料組成物のうち、チタン白を除いた組成物(ワニス)を用いて次のようにして接着テストを行なった。厚さ3mmのポリウレタンRIM(リアクティブインジェクションモールディング)成形品、FRP、ABS、ボンデ鋼鈑をトリクロロエチレンで脱脂し、その上に上記の組成物(ワニス)を乾燥膜厚が40〜50μになるように塗布した。そして、50℃で5分間予備乾燥して、塗膜中の溶剤を蒸発させ、気泡が入らないようにして同一種類の上記の各板を重ねあわせ、25kg/cmで圧着下、実施例1と同様の条件で放置し、乾燥塗膜を得た。その後、25mm幅にサンプルをカットし、JIS K 6854に準じて、(株)オリエンティック製テンシロンUTM−500にて、引張り速度=100mm/minの条件で接着強度を測定した。その結果を表3に示す。
【0028】比較例1撹拌機、温度計及び冷却器のついた反応器に、HDI(日本ポリウレタン工業株式会社製;イソシアネート含量=49.9%、固形分=100%)3,000部と触媒としてテトラアンモニウムヒドロキサイド0.3部を仕込んだ。これを撹拌しながら50〜60℃に加熱し、同温度で4時間反応させ、次いでイソシアネート含量=46.3%の時点でリン酸0.2部を加えて反応を停止させ、淡黄色の反応生成液を得た。未反応のHDIを150℃、0.06Torrで薄膜蒸発により除去して、イソシアネート含量=23.5%(ガスクロマトグラフィー分折による残留の遊離HDI=0.1%)、GPC分析により求めたイソシアヌレート環状三量体含有率が71%、ウレトジオン二量体含有率が1%、粘度=1,600mP・a/25℃の淡黄色の反応生成物「B−1」を600部得た。
塗料組成物一方、アクリルポリオール(大日本インキ化学工業株式会社製アクリディックA−801;水酸基価=50、固形分=50%)494.2部に、チタン白217.2部(最終塗料組成物のPWC=40%)を加え、次いで最終塗料組成物の20℃における塗装粘度がフォードカップNo.4で25秒になるように、D/Dソルベント209.9部を加え、さらに所定量のガラスビーズを加え、振とう機にかけて顔料分散を行ない、分散液を得た。このようにして得られた分散液からガラスビーズを除去後、その400部に対して上記で得られた組成物「B−1」34.2部を加え塗料組成物を得た。この塗料組成物の塗装固形分は54.3%であった。
塗膜試験このようにして得られた上記の塗料組成物をトリクロロエチレンで脱脂したボンデ鋼板に塗布し、20℃、65%の環境下で1週間放置して、乾燥膜厚=40〜50μの塗膜を形成させた。そして、実施例1と同様の方法により、形成した塗膜の諸物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0029】比較例2撹拌機、温度計及び冷却器のついた反応器に、HDI(日本ポリウレタン工業株式会社製;イソシアネート含量=49.9%、固形分=100%)3,000部と触媒としてテトラアンモニウムヒドロキサイド0.3部を仕込んだ。これを撹拌しながら50〜60℃に加熱し、同温度で8時間反応させ、次いでイソシアネート含量=42.3%の時点でリン酸0.2部を加えて反応を停止させ、淡黄色の反応生成液を得た。未反応のHDIを150℃、0.1Torrで薄膜蒸発により除去して、イソシアネート含量=20.9%(ガスクロマトグラフィー分析による残留の遊離HDI=0.1%)、GPC分析により求めたイソシアヌレート環状三量体含有率が46%、ウレトジオン二量体含有率が0.3%、粘度=2,800mP・a/25℃の淡黄色の反応生成物「B−2」を1,020部得た。
塗料組成物一方、アクリルポリオール(日立化成工業株式会社製ヒタロイド3083−70B;水酸基価=70、固形分=70%)388.0部に、チタン白252.4部(最終塗料組成物のPWC=40%)を加え、次いで最終塗料組成物の20℃における塗装粘度がフォードカップNo.4で25秒になるように、D/Dソルベント252.6部を加え、さらに所定量のガラスビーズを加え、振とう機にかけて顔料分散を行ない、分散液を得た。このようにして得られた分散液からガラスビーズを除去後、その400部に対して上記で得られた組成物「B−2」47.9部を加え塗料組成物を得た。この塗料組成物の塗装固形分は63.1%であった。
塗膜試験このようにして得られた上記の塗料組成物をトリクロロエチレンで脱脂したボンデ鋼板に塗布し、20℃、65%の環境下で1週間放置して、乾燥膜厚=40〜50μの塗膜を形成させた。そして、実施例1と同様の方法により、形成した塗膜の諸物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0030】比較例3撹拌機、温度計及び冷却器のついた反応器に、HDI(日本ポリウレタン工業株式会社製;イソシアネート含量=49.9%、固形分=100%)2987.4部と1,3ブタンジオール12.6部を仕込んだ。これを撹拌しながら60〜70℃に加熱し、同温度で3時間反応させて、イソシアネート含量=49.3%の淡黄色の反応生成液を得た。次いで、この反応生成液に触媒としてテトラメチルアンモニウムアセテート0.3部を仕込んだ。これを撹拌しながら50〜60℃に加熱し、同温度で12時間反応させ、その後イソシアネート含量=40.5%の時点でリン酸0.2部を加えて反応を停止させて、淡黄色の反応生成液を得た。未反応のHDIを130℃、0.02Torrで薄膜蒸発により除去して、イソシアネート含量=20.2%(ガスクロマトグラフィー分析による残留の遊離HDI=0.2%)、GPC分析により求めたイソシアヌレート環状三量体含有率が40%、ウレトジオン二量体含有率が0.2%、粘度=4,100mP・a/25℃の淡黄色の反応生成物「B−3」を1,400部得た。
塗料組成物一方、ポリエステルポリオール(日本ポリウレタン工業株式会社製ニッポラン800−75E;水酸基価=217.5、固形分=75%)257.8部に、チタン白253.6部(最終塗料組成物のPWC=40%)を加え、次いで最終塗料組成物の20℃における塗装粘度がフォードカップNo.4で25秒になるように、D/Dソルベント301.5部を加え、さらに所定量のガラスビーズを加え、振とう機にかけて顔料分散を行ない、分散液を得た。このようにして得られた分散液からガラスビーズを除去後、その400部に対して上記で得られた組成物「B−3」92.0部を加え塗料組成物を得た。この塗料組成物の塗装固形分は63.4%であった。
塗膜試験このようにして得られた上記の塗料組成物をトリクロロエチレンで脱脂したボンデ鋼板に塗布し、20℃、65%の環境下で1週間放置して、乾燥膜厚=40〜50μの塗膜を形成させた。そして、実施例1と同様の方法により、形成した塗膜の諸物性を調べた。その結果を表2に示す。
【0031】比較例4比較例1で得られた塗料組成物のうちチタン白を除いた組成物(ワニス)を用いて、実施例4と同じ条件で接着テストを行なった。その結果を表2に示す。
【0032】
【表1】 実施例の塗膜物性

【0033】
【表2】 比較例の塗膜物性

【0034】
【表3】 実施例4と比較例4の接着強度

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヘキサメチレンジイソシアネートより得られるポリイソシアネート化合物であって、ヘキサメチレンジイソシアネートモノマー及び溶剤を実質的に含まない状態での粘度が1,400mP・a/25℃未満であり、かつウレトジオン二量体含有率が10%より多く、イソシアヌレート環状三量体含有率が60%未満であるポリイソシアネート化合物、を主成分とする2液型ポリウレタン樹脂用硬化剤。
【請求項2】 ヘキサメチレンジイソシアネートより得られるポリイソシアネート化合物であり、かつヘキサメチレンジイソシアネートモノマー及び溶剤を実質的に含まない状態での粘度が1,400mP・a/25℃未満であり、なおかつウレトジオン二量体含有率が10%より多く、イソシアヌレート環状三量体含有率が60%未満であるボリイソシアネート化合物と、多価ヒドロキシル化合物とを含有してなるポリウレタン塗料組成物であって、前記ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と前記多価ヒドロキシル化合物中の水酸基のモル比が9:1〜1:9の範囲であること、を特徴とする前記ポリウレタン塗料組成物。
【請求項3】 ヘキサメチレンジイソシアネートより得られるポリイソシアネート化合物であり、かつヘキサメチレンジイソシアネートモノマー及び溶剤を実質的に含まない状態での粘度が1,400mP・a/25℃未満であり、なおかつウレトジオン二量体含有率が10%より多く、イソシアヌレート環状三量体含有率が60%未満であるポリイソシアネート化合物と、多価ヒドロキシル化合物とを含有してなるポリウレタン接着剤組成物であって、前記ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と前記多価ヒドロキシル化合物中の水酸基のモル比が9:1〜1:9の範囲であること、を特徴とする前記ポリウレタン接着剤組成物。