説明

ポリウレタンウレア重合体溶液及び該溶液から弾性成形体の製造方法。

【課題】 ポリウレタンウレア弾性成形体を製造するにあたり、水含有ポリウレタンウレア重合体溶液を用いて乾式成形することによって、高強伸度と高弾性率を発現させる。
【解決手段】 両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーにジアミン化合物を反応させて得られるポリウレタンウレア重合体溶液中に、ポリマー重量に対して0. 1重量%以上25重量%以下の水を含む水含有重合体溶液を調製し、これを20℃以上130℃以下で吐出するポリウレタンウレア弾性成形体の製造方法。
【効果】 水含有ポリウレタンウレア重合体溶液を20℃以上80℃未満で吐出すれば高強度および高弾性率を、また80℃以上130℃以下で吐出すれば高伸度を発現する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術的分野】本発明は、水含有ポリウレタンウレア重合体溶液を調製し、これを特定の温度領域で吐出して乾式成形することにより、従来よりも著しく強伸度が改善されたポリウレタンウレア弾性成形体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリウレタン類は、フォーム、接着剤、塗料、エラストマー、合成皮革、さらに繊維等、幅広い分野に進出し、多くの有用な製品を生み出している。特に両末端に水酸基を有するポリマージオールに過剰モル量の有機ジイソシアネート化合物を反応させて両末端にイソシアネート基を有する中間重合体(プレポリマー)を合成し、ついでこのプレポリマーをジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドの様なアミド系溶媒中でジアミン化合物と反応させて得られるポリウレタンウレア重合体溶液は、湿式もしくは乾式法で成形することによって優れた弾性成形体を与える。この弾性成形体、特に繊維は、優れた弾性力、高伸張率、高弾性回復性を示し、衣料用分野、産業用資材分野等の様々な分野で利用されている。
【0003】ポリウレタンウレア弾性成形体の代表的な製造方法としては、乾式成形法が挙げられ、原液の安定性にも優れ、しかも曳糸性(または展延性)、流動性、および紡糸性(または成膜性)に優れた成形原液の調製に関する多くの工夫がこれまでになされてきた。特に、繊維業界で最近特に切望されている繊維の破断強伸度を改善する方法としては、高破断強度を発現させる目的で芳香族ジアミンを鎖延長剤として用いる様なポリマーの一次構造を変える方法(米国特許第3485800号明細書)の他に、予め特定の化合物(添加剤)をポリウレタンウレア重合体溶液に添加、溶解することによって行う試みもこれまでなされてきた。
【0004】ところが、破断強度と破断伸度の関係は一般に二律背反的であるため、いずれか一方の破断特性を損なうことなく他方の特性のみを向上させることは極めて困難であり、最近になってようやく特定のアニオン系界面活性剤を溶解することによって破断伸度の低下を伴わずに高破断強度を有するポリウレタンウレア弾性繊維を得る方法が特願平7−188831号に開示されたのみである。しかしながらこの界面活性剤含有紡糸原液では、破断伸度の低下に関して著しい改善が見られるものの、依然満足できるレベルとは言い難く、またこの様な方法では破断強度を損なうことなく高破断伸度を発現させることはできないため、この新規物性を得るためには全く別の新たな手法、もしくは新たな添加剤の開発を行わなければならないのが現状であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決するため、ポリウレタンウレア重合体溶液中に所定量の水を含む水含有重合体溶液を一旦調製し、これを乾式成形することによって得られる弾性成形体に高破断強度と高弾性率を発現させ、さらには成形条件を変えることで破断伸度をも改善することが可能な乾式成形法を提供することにある。本発明によると、従来のポリウレタンウレア重合体溶液に水を重合中および/または重合後に加えて調製された水含有ポリウレタンウレア重合体溶液を用い、この溶液を20℃以上80℃未満と80℃以上130℃以下の2つの温度領域で吐出して乾式成形すると、破断強度と破断伸度が、それぞれ他方の特性を損なうことなく一段と向上した弾性成形体を提供することができる。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、水含有ポリウレタンウレア重合体溶液を用いるポリウレタンウレア弾性成形体の乾式成形において、吐出ダイや紡糸口金より吐出する重合体溶液の温度と得られる成形体の強伸度特性の関係を鋭意検討した結果、水含有重合体溶液を20℃以上80℃未満と80℃以上130℃以下の2つの異なる温度領域で吐出して乾式成形すると、破断強度さらには破断伸度が、それぞれ他方の特性を損なうことなく一段と向上した弾性成形体が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、両末端に水酸基を有するポリマージオールに過剰モル量の有機ジイソシアネート化合物を反応させて両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成し、ついでこのプレポリマーにアミド系溶媒の存在下ジアミン化合物を反応させて得られるポリウレタンウレア重合体溶液中にポリマー重量に対して0. 1重量%以上25重量%以下の水を含有させた水含有ポリウレタンウレア重合体溶液、およびこの水含有ポリウレタンウレア重合体溶液を20℃以上80℃未満と80℃以上130℃以下の2つの温度領域で吐出して乾式成形することを特徴とするポリウレタンウレア弾性成形体の製造方法に関するものである。
【0008】本発明に従えば、20℃以上80℃未満の吐出温度では伸度低下を起こすことなく破断強度および弾性率が、また逆に80℃以上130℃以下では強度を損なうことなく破断伸度が一段と向上した弾性成形体が提供される。以下、本発明について詳細に説明する。本発明におけるポリウレタンウレア重合体溶液とは、まず両末端に水酸基を有するポリマージオールに過剰モル量の有機ジイソシアネート化合物を有機溶媒中で反応させて両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成するか(溶液合成法)、もしくは上記ポリマージオールと有機ジイソシアネート化合物との両成分を溶媒不在下の溶融状態で反応させて溶融状プレポリマーを合成した後、溶媒に溶解させてプレポリマー溶液を得る(溶融合成法)かして、続いてこのプレポリマーのイソシアネート基と等量あるいは過剰量のジアミン化合物をプレポリマーと反応させて得られる重合体溶液を意味する。
【0009】本発明で用いられるポリマージオールは、数平均分子量が800〜3000、好ましくは1000〜2500の範囲であり、かつ融点が60℃以下のポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールなどである。数平均分子量が800未満のポリマージオールでは、得られる成形体は伸度が低く、ポリウレタンウレア弾性体としての高伸度高回復性の特徴が生かされず、また伸長時の構造破壊が著しいため、結果的に永久ひずみが大きくなる。逆に数平均分子量が3000を越えるジオールを用いる場合には、得られる成形物の弾性率が低い。融点の高いジオールを使用すると、成形体の回復性が低く、またプレポリマーの粘度が高くなるので好ましくない。
【0010】ポリエーテルジオールとしては、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリ(1, 5−ペンタンジオール)、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。ポリエステルジオールとしては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、マロン酸等の二塩基酸の一種または二種以上の混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメタノール等のジオールの一種または二種以上とから得られたものが挙げられ、またそのような方法で得られた末端にカルボキシル基を有するポリエステルに、例えばポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシペンタメチレングリコール等のポリエーテルジオールをさらに反応させて得られたものを使用することも可能である。
【0011】ポリラクトンジオールとしては、ε−カプロラクトン等を開環重合して得られるヒドロキシカルボン酸にプロピレングリコールやブタンジオール等のジオール類を反応させて得られたもの、またはポリオキシテトラメチレングリコールやポリオキシペンタメチレングリコール等のポリマージオールを反応させて得られたものが挙げられる。ポリカーボネートジオールとしては、アルキレンカーボネート類と1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等との反応により得られるポリ(ブタン−1,4−カーボネートジオール)、ポリ(ペンタン−1,5−カーボネートジオール)、ポリ(ヘキサン−1,6−カーボネートジオール)およびそれらの共重合体ならびに混合物から得られるポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0012】これらのジオールの中で、ポリエステルジオールおよびポリラクトンジオールは微脆化しやすいこと、ポリカーボネートは溶融粘度が高く取り扱いが煩雑であることなどから、ポリエーテルジオールが好ましく、中でもポリオキシテトラメチレングリコールが特に好ましい。有機ジイソシアネート化合物として好ましいものは、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、3−メチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、および3,3−ジメチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類が挙げられる。また1,3−および1,4−シクロヘキシレンジイソシアネートの様な環状脂肪族ジイソシアネート類や、m−およびp−キシリレンジイソシアネートおよびα,α,α’,α’−テトラメチル−p−キシリレンジイソシアネートの様な芳香族ジイソシアネート類の使用も可能である。
【0013】芳香族ジイソシアネートとしてはイソシアネート基がベンゼン環に直結し、2個のイソシアネート基は相互にパラ位に結合しているものが望ましい。2個のイソシアネート基が非対称位置に結合している芳香族ジイソシアネートを用いてもポリマーを得ることはできるが、その物性がパラ位結合の芳香族ジイソシアネートからのものより劣るので好ましくない。このような芳香族ジイソシアネートとしては、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等が挙げられる。これらの芳香族ジイソシアネートの中で特に物性面からのバランスから4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0014】本発明において、溶液合成法によるプレポリマー溶液調製での温度は5〜70℃の範囲が好ましい。これ以下であると合成時間が大幅に長くなり、場合によってはプレポリマーが析出してくる。一方、これ以上だとイソシアネート基のダイマーおよびトリマー化反応等の副反応が顕著になり好ましくない。溶融合成法の場合にはプレポリマー合成温度は30〜120℃の範囲が好ましい。この範囲外の温度条件では溶液重合法の場合と同じ理由で好ましくない。また、ジオール成分に対するジイソシアネート成分のモル比(n値)は1.2〜3.0の範囲が適切であり、特に1.4〜1.8が好ましい。n値は得られる弾性成形体のハードセグメントとソフトセグメントのバランスを左右するものであるから、低すぎると弾性成形体の強度低下につながるし、またn値が高すぎても弾性成形体としての特徴である伸度が抑えられ、しかも重合体溶液の安定性も極めて著しく低下するため好ましくない。
【0015】このようにして両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成した後、これをジアミン化合物と反応させて鎖延長を行い、ポリウレタンウレア重合体溶液を得る。ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,2−ブチレンジアミン、1,3−ブチレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン、1,5−ヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、トリレンジアミン、イソブチレンジアミン、ヒドラジン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニルジアミン、2,6−ジアミノピリジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−およびp−フェニレンジアミン、m−およびp−キシリレンジアミン、1,3−および1,4−シクロヘキサンジアミン等が挙げられ、特に好ましくは、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミンである。
【0016】さらに、このポリウレタンウレア重合体の製造に用いるジアミン化合物には特開平5−155841号公報に開示されているようなジイソシアネート化合物とジアミン化合物とからなるジアミノウレア化合物も含まれる。この様な化合物としては、例えば下記の構造式(1)〜(13)に示されるような化合物が挙げられる。
【0017】
【化1】


【0018】
【化2】


【0019】
【化3】


【0020】本発明で使用されるジアミン化合物の量は、プレポリマー溶液中のイソシアネート量の80〜98モル%の範囲が好適である。この範囲より少ないとポリマー分子量が低くなりすぎて高物性が得られないし、この範囲よりも多いと逆にポリマー分子量が大きくなりすぎて成形不可能になる。また、この際の未反応末端イソシアネート基の停止剤としては、ジエチルアミンやジエタノールアミン等のモノアミン化合物が挙げられる。
【0021】前記のプレポリマーをジアミン化合物と反応させる鎖伸長反応時の温度は0〜30℃の範囲が好適である。これ以下の温度だとプレポリマーの溶解性が低下し、反応系が不均一になる。逆にこれ以上の温度だとイソシアネート基とアミノ基との反応が異常に速くなって反応を制御しにくくなるからである。ここでいうポリウレタンウレア重合体溶液とは、濃度が好ましくは15〜40重量%であり、有機溶媒としては上記の各原料を溶解し、かつポリウレタンウレアを溶解する溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。このような溶媒は、水と任意の割合で溶け合うため、重合体溶液への水の均一溶解に対しても好都合である。
【0022】ポリウレタンウレア重合体溶液に加える水の量は、溶液中のポリマー重量に対して0.1〜25重量%が適切である。ただし水の量が多くなるとゲル化が著しくなるため水の溶解が困難になり均一な水含有重合体溶液を得にくくなる。この様に本発明系では、ゾル−ゲル変化に対する特異的水含有量が存在し、この値は重合体溶液の溶媒によって異なるが、重要な点はこの水含有量が対ポリマー量で決定されることであり、ポリマーと水の相互作用を通して、ポリマー同士、特に本発明系の場合はいわゆるハードおよびソフトセグメントの分散状態を変化させていると考えられる。一方、添加水が少なすぎると破断強度や伸度が所望する値を発現できないので、添加量としては特に5〜15重量%の範囲が好ましい。
【0023】また水の添加時期としては、重合中と重合後のいずれでもかまわない。イソシアネート基とアミノ基の反応は、イソシアネート基と水の反応よりも極めて速く、そのため重合中に水を加えても、実質上イソシアネート基は水と反応することは無い。ポリウレタンウレア重合体溶液へ水を溶解するときの温度としては5〜100℃の範囲が好ましい。これ以上の温度ではポリマーの加水分解速度が大きくなるため好ましくない。一方、これ以下の温度でも重合体溶液の粘度が高すぎるため水の均一溶解が難しくなる。水含有ポリウレタンウレア重合体溶液は、水含有量が増すと室温では不透明なゲル状物となるが、加温によって可逆的に流動性を有する透明溶液となる。このため水が均一に溶解した水含有ポリウレタンウレア重合体溶液を得るためには、溶解温度は70〜90℃の範囲が特に好ましい。なお水を重合中に加える場合は、プレポリマーとジアミンとの反応速度を考慮して5〜30℃の範囲が好ましい。
【0024】本発明は、乾式成形における水含有ポリウレタンウレア重合体溶液の吐出温度を変化させ、得られる弾性成形体の物性を調べた結果、驚くべきことに20℃以上80℃未満の低温領域で吐出すると、破断伸度を損なうことなく従来よりも著しく破断強度および弾性率の高い弾性成形体が得られ、逆に80℃以上130℃以下の高温吐出では破断伸度の高いものが、破断強度も低下することなく得られることを見い出したものである。このような吐出温度の違いによる伸張特性の改善の原因については明らかではないが、水含有ポリウレタンウレア重合体溶液中のポリマーと水の相互作用状態の温度依存性が80℃付近を境に変わるためだと考えられる。水含有重合体溶液の吐出好適温度は20〜130℃であり、これより高温だとポリマーの分解反応が起こり、また低温では粘度が高く可紡性が低下するため好ましくない。本発明は繊維の乾式紡糸法のみに限定されるものではなく、繊維の湿式紡糸、さらには紡糸口金の形状を変えることによって、フィルム、シート状に成形する場合にも応用可能である。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を示し本発明をさらに具体的に説明するが、これらによって本発明の範囲は何ら限定されるものではない。なお、ポリウレタンウレア弾性繊維の基本物性(破断強度、弾性率、破断伸度)は、温度20℃、湿度60%の条件下で、ミネベア(株)製AL型引張圧縮試験機TCM−Bを用いて測定した。具体的には、初期長50mmの試験糸をセットし、伸張速度500mm/分で破断するまで引っ張り、破断時の強伸度と300%伸張弾性率を測定した。
【0026】(実施例1)数平均分子量1830のポリテトラメチレングリコール1000gと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート213.4gとを乾燥したN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、濃度60重量%として窒素ガス雰囲気中15℃で3時間攪拌して反応させ、両末端にイソシアネート基を有する中間重合体を得た(溶液合成法)。さらに、エチレンジアミン14.84gとジエチルアミン2.51gとを含むDMAc溶液を激しく攪拌された中間重合体溶液へ加えて、濃度30重量%のポリウレタンウレア重合体溶液(水無添加重合体溶液)を得た。
【0027】次に、上記の水無添加重合体溶液に217.2gのイオン交換水を加え窒素雰囲気下、70℃で5時間攪拌し、水含有量15重量%(対ポリマー)のポリウレタンウレア重合体溶液(水含有重合体溶液)を得た。この水含有重合体溶液を50℃で吐出し、通常の乾式紡糸法により紡速500m/分で巻き取って、繊度20デニール/2フィラメントの弾性繊維を得た。得られた繊維試料の性質を表1に示す。
【0028】(実施例2〜4)実施例1と全く同じようにして得られた水含有重合体溶液の吐出温度を表1に示すような本発明の範囲内の温度にする以外は、実施例1と同様にして弾性繊維を得た。結果を表1に示す。
(比較例1〜4)実施例1と全く同じようにして得られた水無添加重合体溶液を乾式紡糸機に供給し、表1に示すような本発明の範囲内の温度にする以外は、実施例1と同様にして弾性繊維を得た。結果を表1に示す。
【0029】(実施例5〜7)水含有重合体溶液の水含有量を表1に示すような本発明の範囲内の濃度にする以外は、実施例2と同様に温度70℃で吐出して弾性繊維を得た。結果を表1に示す。
(実施例8〜9)水含有重合体溶液の水含有量を表1に示すような本発明の範囲内の濃度にする以外は、実施例3と同様に温度90℃で吐出して弾性繊維を得た。結果を表1に示す。
(比較例5〜6)水含有重合体溶液の水含有量と溶液温度を表1に示すような値にした場合には、ゲル化し、さらにはポリマー相と液相の2相分離状態となり、均一透明溶液を得ることはできなかった。
【0030】
【表1】


【0031】(実施例10〜11)数平均分子量1830のポリテトラメチレングリコール1000gと4, 4’−ジフェニルメタンジイソシアネート213. 4gを窒素ガス雰囲気中、45℃で30分間予備混合し、これを70℃に昇温し、2時間攪拌して両者を反応させた。該反応物を冷却した後、乾燥したDMAcを加えて濃度60%とすることによって、両末端にイソシアネート基を有する中間重合体溶液を得た(溶融合成法)。さらに、エチレンジアミン14. 84gとジエチルアミン2. 51gを含むDMAc溶液を激しく攪拌された中間重合体溶液へ加え、濃度30重量%のポリウレタンウレア重合体溶液(水無添加重合体溶液)を得た。次に、上記の水無添加重合体溶液に217.2gのイオン交換水を加え窒素雰囲気下、70℃で5時間攪拌し、水含有量15重量%(対ポリマー)のポリウレタンウレア重合体溶液(水含有重合体溶液)を得た。
【0032】これを乾式紡糸機に供給して表2に示すような本発明の範囲内の温度にし、実施例1と同様に紡糸して繊度20デニール/2フィラメントの弾性繊維を得た。得られた繊維試料の性質を表2に示す。
(比較例7〜8)実施例10〜11と同様にして得られた水無添加重合体溶液の吐出温度を表2に記した本発明の範囲内の温度にする以外は、実施例1と同様に乾式紡糸して弾性繊維を得た。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】


【0034】
【発明の効果】本発明によれば、20℃以上80℃未満の低温領域で水含有ポリウレタンウレア重合体溶液を吐出して乾式成形すれば、従来の水無添加溶液より得られるものに比べ破断伸度を損なうことなく、破断強度と弾性率が高いポリウレタンウレア弾性成形体を得ることができる。一方、80℃以上130℃以下の高温領域で吐出すれば、強度や弾性率が低下することなく破断伸度の高いポリウレタンウレア弾性成形体を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 両末端に水酸基を有するポリマージオールに過剰モル量の有機ジイソシアネート化合物を反応させて両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを合成し、ついでこのプレポリマーにアミド系溶媒の存在下ジアミン化合物を反応させて得られるポリウレタンウレア重合体溶液中にポリマー重量に対して0. 1重量%以上25重量%以下の水を含む重合体溶液であり、20℃以上130℃以下の温度で吐出して乾式成形することによって破断強伸度や弾性率が改善された弾性成形体を与える水含有ポリウレタンウレア重合体溶液。
【請求項2】 請求項1に記載の水含有ポリウレタンウレア重合体溶液を20℃以上80℃未満の温度で吐出して乾式成形することを特徴とするポリウレタンウレア弾性成形体の製造方法。
【請求項3】 請求項1に記載の水含有ポリウレタンウレア重合体溶液を80℃以上130℃以下の温度で吐出して乾式成形することを特徴とするポリウレタンウレア弾性成形体の製造方法。