説明

ポリウレタンフォーム用アミン系触媒、及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法

【課題】
低フォギング性であり、さらに機械的強度にも優れたポリウレタンフォームが得られるポリウレタンフォーム用アミン系触媒を提供することを課題としている。
【解決手段】
アミノ基を4個以上有するポリアミンにアルキレンオキサイドを付加させて、少なくとも2個以上のアミノ基がヒドロキシル化されたポリアミンポリエーテルポリオールをアミン系触媒として用いることにより、低フォギング性であり、さらに機械的強度にも優れたポリウレタンフォームを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム用アミン系触媒、及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、耐衝撃性、耐薬品性、耐磨耗性、耐寒性などに優れた樹脂フォームである。かかるポリウレタンフォームの原料であるポリオールとポリイソシアネートとを適宜、組み合わせることにより、硬質から軟質に至るまで幅広い性状を有するポリウレタンフォームを製造することができる。
【0003】
自動車などの車両用シートにポリウレタンフォームが使用されている。しかし、従来のポリウレタンフォームにおいては、自動車などの室内において使用時にシートクッションやヘッドレスなどを構成する材質からアミン系触媒に起因するガスなどが発生し、フロント、リア、ドアガラスの内面が曇ったり、白色になる、いわゆるフォギングが問題になっている。このフォギングを解消する方法として、イソシアネート基と反応する水酸基やアミノ基などの官能基を分子内に有する反応型のアミン系触媒を用いてポリウレタンフォームの構造内にアミン系触媒自身を取り込む方法が提案されている。(特許文献1参照)
反応型のアミン系触媒は主に官能基を1個しか有しないため、量が多くなるとポリウレタンフォームの架橋密度が低下してしまう。それによって、ポリウレタンフォームの機械的強度が低下する傾向がある。その機械的強度の低下を防ぐために架橋剤を添加することが提案されている。(特許文献2参照)
【特許文献1】特開平8−217846号公報
【特許文献2】WO2003/059980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低フォギング性であるポリウレタンフォームを提供するために先行文献1、2記載の反応型のアミン系触媒を用いた場合は、機械的強度が低下する場合があり、架橋剤を添加するなどの工夫がされているが、十分な解決がなされていないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明では、低フォギング性であり、さらに機械的強度にも優れたポリウレタンフォームが得られる特定の構造を有するポリウレタンフォーム用アミン系触媒を提供する。
【0006】
前記課題を解決する方法を各種検討した結果、アミノ基を4個以上有するポリアミンにアルキレンオキサイドを付加させて、少なくとも2個以上のアミノ基がヒドロキシル化されたポリアミンポリエーテルポリオールをアミン系触媒として用いることにより、低フォギング性であり、さらに機械的強度にも優れたポリウレタンフォームを提供することができることを見出した。
【発明の効果】
【0007】
低フォギング性であり、さらに機械的強度にも優れたポリウレタンフォームが得られるポリウレタンフォーム用アミン系触媒を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明でアミン系触媒として用いられるポリアミンポリエーテルポリオールは、アミノ基を4個以上有するポリアミン中の少なくても2個以上のアミノ基をアルキレンオキサイドでヒドロキシル化することにより得られる。ここでいうアミノ基とは、1級アミノ基、2級アミノ基のいずれであっても構わない。得られたポリアミンポリエーテルポリオール中の(ポリ)オキシアルキレン基の重量%は、20〜98重量%以内の範囲で含有するのが好ましく、30〜95重量%以内の範囲で含有するのがより好ましい。
【0009】
ポリアミンポリエーテルポリオールの原料に用いるポリアミンとしては、アミノ基を4個以上有する重合物であれば特に限定されない。例えば、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミドポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどが挙げられる。この中でも好ましいのは、ポリアルキレンイミンである。
【0010】
前記のポリアルキレンイミンは、塩酸、硫酸などの酸触媒を用い、その存在下で、アルキレンイミンを重合することにより得られる。また、前記触媒の存在下で、アミン化合物とアルキレンイミンを共重合しても得ることができる。前記のアルキレンイミンとしては、炭素原子数2〜4のアルキレンイミンが好ましく、炭素原子数2のエチレンイミンがより好ましい。前記アミン化合物としては、アンモニア、エタノールアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
【0011】
前記のポリアルキレンイミンとしては、直鎖状のもの、あるいは枝分かれ状のものどちらであっても良い。例えば、日本触媒製ポリエチレンイミン「エポミンSP−006」、「エポミンSP−012」、「エポミンSP−018」などが挙げられる。前記のポリアルキレンイミンの平均分子量は、200〜150万の範囲が好ましく、より好ましくは300〜5万の範囲である。
【0012】
前記のポリアミンポリエーテルポリオールは、例えばポリアルキレンイミン中のアミノ基に、アルキレンオキサイドを付加して得ることができる。
【0013】
例えば、前記ポリアミンポリエーテルポリオールは前記ポリアミン1モルに対し、アルキレンオキシドを0.5〜100モル反応させて得られるポリアミンポリエーテルポリオールが好ましい。1〜50モル反応させるのがより好ましい。
【0014】
用いられるアルキレンオキサイドとしては、特に限定されないが、炭素原子数2〜4のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが好適であり、特にエチレンオキサイドを用いるのが好ましい。これらを単独または、併用で用いてもよく、ブロックまたは、ランダムを交互に組み合わせてもよい。
【0015】
前記ポリアルキレンイミンとアルキレンオキサイドとの反応は、例えばポリアルキレンイミンとアルキレンオキサイドをそのまま、あるいは必要に応じて溶剤で希釈して、好ましくは0〜200℃、より好ましくは120〜180℃の温度条件下で行うことができる。この際、触媒として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムのようなアルカリ触媒を使用してもよい。好ましくは、ポリアルキレンイミンのアミノ基に対して0.8〜1.1モル以下、より好ましくは0.9〜1.0モル以下での付加反応は無触媒で行い、それ以上のモル数のアルキレンオキサイドを付加する際には、アルカリ触媒を用いて反応させるのが好ましい。
【0016】
(ポリオール)
本発明において使用するポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、液状ジエン系ポリオールなどが挙げられる。
【0017】
ポリエーテルポリオールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオールなどが挙げられ、さらにこれらの化合物の少なくとも1種と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物との付加物が挙げられる。
【0018】
アミン系触媒の使用量は、ポリオール100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。
【0019】
(ポリイソシアネート)
本発明において使用するポリイソシアネートとしては、通常の芳香族、脂肪族、及び脂環族のものを挙げることができ、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート及びこれらの誘導体、及び前記イソシアネートと多価アルコール類又はポリオール類との反応により得られるイソシアネートプレポリマーが挙げられる。
【0020】
ポリイソシアネートの使用量は、イソシアネートインデックス(ポリオール、触媒などの総活性水素数に対するイソシアネート基の数の100倍で表される数値)で80〜120とすることが好ましく、85〜110とすることがより好ましい。
【0021】
(発泡剤)
本発明に使用される発泡剤としては、水及び低沸点の有機化合物を単独又は併用にて使用することができる。低沸点の有機化合物としては、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフロロメタン、モノクロロジフロロメタン、トリクロロトリフロロエタン、メチレンクロライド、イソペンタン、ノルマルペンタン、シクロペンタンなどが挙げられる。
【0022】
発泡剤の使用量は、発泡剤として水のみを使用する場合は、ポリオール100質量部に対して10質量部までとすることが好ましく、0.1〜8質量部用いることがより好ましい。
【0023】
(ポリウレタンフォーム製法)
本発明におけるポリウレタンフォームは、ポリオール、発泡剤、アミン系触媒及び必要に応じて添加剤を混合して得られたポリオール混合物と、ポリイソシアネートとを成形機などで混合攪拌し、成形型内に注入し、発泡させることによって製造することができる。
【0024】
成形方法としては、密閉された金型内に上記混合物を注入し発泡成形するモールド法、食パン状の型に上記混合物を注入し必要な形状に裁断加工されるスラブ法などが挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下ことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。
【0026】
(合成例1)
平均分子量1800のポリエチレンイミン(日本触媒製、「エポミンSP−018」)172.3gを、2Lオートクレーブに仕込み、150℃へ昇温した。その後、エチレンオキサイドを167.4gフィードして、ポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを付加した。
【0027】
次いで、80℃へ冷却し、49%KOH水溶液を2.5g仕込み、165℃へ昇温後、20ml/分の流量で窒素バブリングしながら0.05MPaへ減圧し、脱水した後、エチレンオキサイドを361.0gフィードして、ポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを付加した。155℃で熟成後、目的の化合物(1)を得た。化合物(1)は、本発明のポリアミンポリエーテルポリオールである。
【0028】
(合成例2)
平均分子量1800のポリエチレンイミン(日本触媒製、「エポミンSP−018」)172.3gを、2Lオートクレーブに仕込み、150℃へ昇温した。その後、エチレンオキサイドを167.4gフィードして、ポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを付加した。
【0029】
次いで、80℃へ冷却し、49%KOH水溶液を7.5g仕込み、165℃へ昇温後、20ml/分の流量で窒素バブリングしながら0.05MPaへ減圧し、脱水した後、エチレンオキサイドを1064.8gフィードして、ポリエチレンイミンにエチレンオキサイドを付加した。155℃で熟成後、目的の化合物(2)を得た。化合物(2)も同様に、本発明のポリアミンポリエーテルポリオールである。
【0030】
(合成例3)
前記合成例1において、ポリエチレンイミン(日本触媒製、「エポミンSP−018」)に代えて、分子量600のポリエチレンイミン(日本触媒製、「エポミンSP−006」)を用いた以外は、上記化合物(1)と同様にして化合物(3)を得た。化合物(3)も同様に、本発明のポリアミンポリエーテルポリオールである。
(実施例1〜3、比較例1〜3)
表1に記載の配合処方でポリオールに、アミン系触媒、発泡剤、架橋剤を加えた混合液とポリイソシアネートをそれぞれ液温25℃±1℃に調整し、高速ミキサーで5秒間攪拌混合する。直ちに65℃に加温した縦横各400mm、高さ100mmのアルミニウム製金型に注入して密閉した。6分間キュアした後、金型からポリウレタンフォームを取り出して24時間以上放置してから各種物性の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
フリーアミン量は、ポリウレタンフォームから触媒に基づくVOCが発生する量の指標となる。成形したフリーフォームから試験片(50mm×50mm×50mm)を切出し、イオン交換水50mlが入ったヒーカーに浸す。表面積25m2以上の重石で試験片を20回圧縮し、水中にフリーの触媒を溶出させた。水をよく切った試験片をビーカーから取り出した後、触媒溶出水の分析を行った。触媒溶出水25mlを秤量し、0.01N塩酸水溶液で中和滴定を行い、触媒の分子量を補正して、フリーアミン量とした。
【0034】
実施例と比較して比較例2は、引張り強度が低下している。これはアミン系触媒としてジメチルアミノヘキサノールを用いたことにより、ポリウレタンフォームの架橋密度が低下したためである。比較例1のようにさらに架橋剤を添加しなければ、実施例と同等の引張り強度を得ることができない。
【0035】
比較例3は、フリーアミン量が検出されている。これはアミン系触媒としてトリエチレンジアミンを用いたことにより、成形時に触媒がポリウレタンフォームに固定されず、その結果フリーアミンとして溶出したものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のポリアミンポリエーテルポリオールをアミン系触媒として使用すれば、低フォギング性で機械的強度に優れたポリウレタンフォームを成形することができるので、同用途で有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基を4個以上有するポリアミンにアルキレンオキサイドを付加させて、少なくとも2個以上のアミノ基がヒドロキシル化されたポリアミンポリエーテルポリオールを含むポリウレタンフォーム用アミン系触媒。
【請求項2】
請求項1記載のアミン系触媒の存在下、ポリオール、ポリイソシアネート、及び発泡剤からポリウレタンフォームを製造することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
ポリオールと前記アミン系触媒との質量比を100/0.05〜100/5で行うことを特徴とする請求項2記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−119575(P2007−119575A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312712(P2005−312712)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】