説明

ポリウレタン及びその製造方法

【課題】ポリウレタンの柔軟性や弾性回復性等の物性を低下させずに高強度化を達成し、弾性繊維、フィルム、衣料、医療材料等の用途に極めて有用なポリウレタン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオール(a)、ポリイソシアネート化合物(b)、並びに不飽和結合含有ポリオール(i−1)及び/又は不飽和結合含有ポリアミン(ii−1)を含む鎖延長剤(c)、を原料として重合反応させて得られた不飽和結合含有ポリウレタンの、不飽和結合の少なくとも一部を架橋して得られるポリウレタン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリウレタン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールなどから構成されるソフトセグメントと、ポリイソシアネート化合物及び鎖延長剤から構成されるハードセグメントとのブロック共重合体である。その化学構造は多様であり、かつ、化学架橋に加えてハードセグメント間の水素結合による物理架橋や、種々のミクロ相分離構造を有するため、ポリウレタンは種々の性質を示す。この物性や加工性の広範性から、ポリウレタンは多岐にわたる産業分野で工業的に応用が展開されており、極めて特異的な高分子材料の一つである。
【0003】
ポリウレタンの一般的な架橋結合として知られているのはイソシアネートとウレア結合やウレタン結合との反応により形成されるビュレット結合またはアロファネート結合であるが、これらのような三次元架橋構造が形成された場合、ポリウレタンの強度や耐熱性の向上は期待されるが、柔軟性や弾性回復性は低下することが容易に想像できる。
一方、ポリウレタンに導入した不飽和結合部位を利用した架橋反応により、ポリウレタンを高機能化している例が存在する。例えば、二重結合含有ウレタンプレポリマーの芳香族ジアミン化合物による硬化反応と過酸化物によるラジカル反応を同時に行って得られた複合架橋されたウレタンエラストマーは、熱老化試験後の強度保持率が著しく増加している(非特許文献1)。また、アロファネート結合により架橋した二重結合含有ポリウレタン糸に電子線を照射し、ハードセグメントの架橋結合を増加させてポリウレタン糸の物性を向上させている例もある(特許文献1)。
【0004】
しかし、これらの方法はハードセグメントの架橋度を増加させて高機能化を実現しているものの、柔軟性や弾性回復性には優れないため、これらの特性が求められる用途には活用できないという問題があった。
このため、柔軟性や弾性回復性を保持しながらポリウレタンを高強度化することが求められてきた。これを実現できれば、高伸度・高強度が求められるコルセットやサポーター等の医療材料のニーズに応えるだけでなく、繊維メーカーでは同強度における糸の微細化が可能となり、製造コストの大幅な低減が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特表2001−526328号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本ゴム協会誌 Vol.65, No.7, 422−429(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、ポリウレタンの柔軟性や弾性回復性等の物性を低下させずに高強度化を達成し、弾性繊維、フィルム、衣料、医療材料等の用途に極めて有用なポリウレタン及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、上記ポリウレタンを成形してなるポリウレタン成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリウレタンを製造するにあたり、不飽和結合を導入したポリウレタンの少なくとも一部を架橋して得られるポリウレタンが、高い柔軟性を有しつつも高い強度を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は以下である。
1.ポリオール(a)、ポリイソシアネート化合物(b)、並びに不飽和結合含有ポリオール(i−1)及び/又は不飽和結合含有ポリアミンを含む鎖延長剤(c)、を原料として重合反応させて得られた不飽和結合含有ポリウレタンの、不飽和結合の少なくとも一部を架橋して得られるポリウレタン
2.ラジカル開始剤(d)を反応させて不飽和結合の少なくとも一部を架橋させて得られる前項1に記載のポリウレタン。
3.70〜130℃の加熱により不飽和結合の少なくとも一部を架橋させて得られる前項1又は2に記載のポリウレタン。
4.前記鎖延長剤(c)が、前記不飽和結合含有ポリオール以外の脂肪族もしくは芳香族ポリオール(i−2)及び/又は前記不飽和結合含有ポリアミン以外の脂肪族もしくは芳香族ポリアミン(ii−2)を含む、前項1〜3に記載のポリウレタン。
5.前記不飽和結合含有ポリオールが、3−ブテン−1,2−ジオールである前項1〜4に記載のポリウレタン。
6.ポリイソシアネート化合物(b)の使用量が、ポリオール(a)の水酸基、並びに鎖延長剤(c)の水酸基及び/又はアミノ基を合計した1当量に対し、0.98当量〜1.10当量である前項1〜5に記載のポリウレタン。
7.ポリオール(a)、ポリイソシアネート化合物(b)、並びに不飽和結合含有ポリオール(i−1)及び/又は不飽和結合含有ポリアミン(ii−2)を含む鎖延長剤(c)、を原料として重合反応させ、両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得る工程と、
前記プレポリマーと、前記不飽和結合含有ポリオール以外の脂肪族もしくは芳香族ポリオール(i−2)及び/又は前記不飽和結合含有ポリアミン以外の脂肪族または芳香族ポリアミン(ii−2)とを重合反応させて不飽和結合含有ポリウレタンを得る工程と、
前記不飽和結合含有ポリウレタンの不飽和結合の少なくとも一部を架橋する架橋工程とを含む、ポリウレタンの製造方法。
8.前記架橋工程において、ラジカル開始剤(d)を反応させて前記不飽和結合の少なくとも一部を架橋させる、前項7に記載のポリウレタンの製造方法。
9.70〜130℃の加熱により前記不飽和結合の少なくとも一部を架橋させる、前項7又は8に記載のポリウレタンの製造方法。
10.前記不飽和結合含有ポリオールが、3−ブテン−1,2−ジオールである前項7〜9に記載のポリウレタンの製造方法。
11.ポリイソシアネート化合物(b)の使用量が、ポリオール(a)の水酸基、並びに鎖延長剤(c)の水酸基及び/又はアミノ基を合計した1当量に対し、0.98当量〜1.10当量である前項7〜10に記載のポリウレタンの製造方法。
12.前項7〜11に記載のポリウレタンの製造方法によって得られたポリレウタン。
13.前項1〜6、及び12に記載のポリウレタンを含むポリウレタンフィルム。
14.前項1〜6、及び12に記載のポリウレタンを含むポリウレタン繊維。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高柔軟性かつ高強度のポリウレタン及びその製造方法を提供することができる。また、弾性繊維、フィルム、衣料、医療材料等の用途に極めて有用なポリウレタン成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に記載するが、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下に記載の態様に限定されない。
【0011】
<1.ポリウレタンの製造>
<1−1.ポリウレタンの製造原料>
本発明のポリウレタンは、ポリオール(a)、ポリイソシアネート化合物(b)、及び不飽和結合含有ポリオール(i−1)及び/又は不飽和結合含有ポリアミン(ii−1)を含む鎖延長剤(c)を原料として得られるものである。
尚、本発明において、ポリウレタンとは、特に限定がない限り、類似の物性を有することが従来から知られているポリウレタンとポリウレタンウレアの両者を言う。
【0012】
ここで、ポリウレタンとポリウレタンウレアの構造的特徴の違いとしては、ポリウレタンは、主としてウレタン結合によって連鎖構造を形成するポリマーであり、ポリウレタンウレアは、主としてウレタン結合及びウレア結合によって連鎖構造を形成するポリマーである。原料面からの違いとしては、ポリウレタンは、鎖延長剤としてポリオールを使用し製造されるものであり、ポリウレタンウレアは、鎖延長剤としてポリアミン化合物を使用し製造されるものである。
【0013】
各原料の組成割合は、通常、ポリオール(a)の水酸基のモル数をA、ポリイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基のモル数をB、不飽和結合含有ポリオール(i−1)及び/又は不飽和結合含有ポリアミンを含む鎖延長剤(c)の活性水素置換基(水酸基及び/又はアミノ基)のモル数をCとした場合、A:Bが、通常1:10〜1:1の範囲であることが好ましく、1:5〜1:1.05の範囲であることがより好ましく、1:3〜1:1.1の範囲であることが更に好ましく、1:2.5〜1:1.2の範囲であることが特に好ましく、1:2〜1:1.2の範囲であることが最も好ましい。また、(B−A):Cが、通常1:0.1〜1:5の範囲であることが好ましく、1:0.8〜1:2の範囲であることがより好ましく、1:0.9〜1:1.5の範囲であることが更に好ましく、1:0.95〜1:1.2の範囲であることが特に好ましく、1:0.98〜1:1.1の範囲であることが最も好ましい。
【0014】
<1−1−1.ポリオール(a)>
本発明において用いられるポリオール(a)とは、分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物であり、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテルポリオールを用いることが最も好ましい。ポリエーテルポリオールは、分子内の主骨格中に1つ以上のエーテル結合を有するヒドロキシ化合物である。主骨格中の繰り返し単位としては、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素のどちらでもよく、又、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。最も好ましい繰り返し単位として、直鎖状の飽和炭化水素が挙げられる。
【0015】
前記繰り返し単位としては、例えば、1,2−エチレングリコール単位、1,2−プロピレングリコール単位、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)単位、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール単位、1,4−ブタンジオール(テトラメチルングリコール)単位、2−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、1,7−ヘプタンジオール単位、1,8−オクタンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、1,10−デカンジオール単位及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。
【0016】
これらの繰り返し単位を主骨格中に有するポリエーテルポリオールのうち、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール(例えば、保土ヶ谷化学社製「PTG−L1000」、「PTG−L2000」及び「PTG−L3500」等)、及びネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランとの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコール等が好ましい。
【0017】
また、本発明において用いられるポリオール(a)として、ポリエステルポリオールを用いることができる。ポリエステルポリオールは多価アルコールと多価カルボン酸または多価カルボン酸エステルとを縮合反応させて得られるポリエステルポリオール或いは多価アルコールを開始剤として環状エステル類(ラクトン類)を開環付加反応させて得られるポリエステルポリオールが好ましい。
【0018】
上記の多価アルコールとしては、2価アルコール(ジオール)が特に好ましいが、3価以上のアルコールを併用してもよい。上記のジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、シクロヘキサンジオール、ジクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記の多価カルボン酸としては、2価カルボン酸(ジカルボン酸)が特に好ましいが、3価以上のカルボン酸を併用してもよい。上記のジカルボン酸としては、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。また、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸等の芳香族ジカルボン酸を併用することもできる。また、酸無水物やカルボン酸エステルを使用することもできる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記のラクトン類としては、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ブチロラクトン等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。ε−カプロラクトンが特に好ましく使用される。
【0021】
また、本発明において用いられるポリオール(a)として、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。上記ポリカーボネートポリオールとしては、アルキレンカーボネートを開環重合して得られるものや、ジオール化合物と、クロロ蟻酸エステル、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネートまたはジアリルカーボネートとのエステル交換反応或いはジオール化合物とホスゲンとの反応によって得られるものが挙げられる。上記ジオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、2−メチルペンタンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、3,3,5−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,3,5−トリメチルペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどが挙げられる。また、1分子に3以上のヒドロキシル基を有する化合物、例えば、トリメチロー
ルエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等を上記ジオール化合物に少量併用したものも挙げられる。上記アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートが挙げられる。上記ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートを挙げることができる。上記ジアリルカーボネートとしてはジフェニルカーボネートを挙げることができる。市販のポリエチレンカーボネートポリオール、ポリテトラメチレンカーボネートポリオール、ポリヘキサメチレンカーボネートポリオールなども使用できる。
【0022】
又、これらのポリオール(a)は、単独で用いても二種以上を混合して使用することもでき、求めるポリウレタンの物性に応じて種々選択すればよい。
本発明において用いられるポリオール(a)の分子量は、数平均分子量で、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、1,500以上であることが更に好ましい。また、5,000以下であることが好ましく、4,000以下であることがより好ましく、3,500以下であることが更に好ましい。
【0023】
数平均分子量を前記上限以下とすることにより、後述するポリウレタンの製造において、ポリオール(a)を用いて製造したプレポリマー、プレポリマー溶液を形成した際に、それらの過度な粘度の上昇を抑え、操作性及び生産性を向上するとともに、得られるポリウレタンの低温における柔軟性及び弾性回復性が向上することができる。
一方、前記下限以上とすることにより、得られるポリウレタンが硬くなるのを防ぎ、十分な柔軟性が得られるとともに、強度及び伸度等の弾性性能が十分に得られる。
尚、ここで、数平均分子量は、JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法により求めることができる。
【0024】
<1−1−2.ポリイソシアネート化合物(b)>
本発明において用いられるポリイソシアネート化合物(b)は、特に限定されるものではないが、例えば、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−MDI、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート及びトリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、並びに1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0025】
本発明においては、特に反応性の高い芳香族ジイソシアネートが好ましく、特にトリレンジイソシアネート(TDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ま
しい。
又、イソシアネート化合物のNCO基の一部を、ウレタン、ウレア、ビュレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド及びイミド等に変成したものであってもよく、更に多核体には前記以外の異性体を含有しているものも含まれる。
【0026】
これらのポリイソシアネート化合物(b)の使用量は、ポリオール(a)の水酸基、並びに鎖延長剤(c)の水酸基及び/又はアミノ基を合計した1当量に対し、通常0.1当量〜5当量であることが好ましく、0.8当量〜2当量であることがより好ましく、0.
9当量〜1.5当量であることが更に好ましく、0.95当量〜1.2当量であることが最も好ましく、0.98当量〜1.1当量であることが特に好ましい。
【0027】
ポリイソシアネート化合物の使用量を前記上限以下とすることにより、未反応のイソシアネート基が好ましくない反応を起こすのを防ぎ、所望の物性を得やすくなる。また、前記下限以上とすることにより、ポリウレタン及びポリウレタンウレアの分子量を十分に大きくすることができ、所望の性能を発現し易くなる。
【0028】
<1−1−3.鎖延長剤(c)>
本発明において用いられる鎖延長剤(c)の構成成分は、主として、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のアミノ基を有する化合物、水に分類される。この中でも、ポリウレタン製造には、2個以上のヒドロキシル基を有するポリオールが好ましい。また、ポリウレタンウレア製造には、2個以上のアミノ基を有するポリアミンが好ましい。
【0029】
鎖延長剤(c)の構成成分のうち、水については反応を安定に行うために、できるだけ低減することが好ましい。又、鎖延長剤(c)の構成成分として、分子量(数平均分子量)が500以下の化合物を使用すると、ポリウレタンエラストマーのゴム弾性が向上するために、物性上更に好ましい。
尚、本発明では不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)の使用が必須であり、不飽和結合を有する鎖延長剤を単独で使用しても、それ以外の鎖延長剤(c−2)と併用しても良い。これらの鎖延長剤の使用量は、不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)とそれ以外の鎖延長剤(c−2)のモル数の合計を100とすると、(c−1):(c−2)=100:0〜3:97が好ましく、70:30〜5:95が更に好ましく、50:50〜10:90が特に好ましい。
【0030】
不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)の割合が多すぎると、ポリウレタンの製造コストが高くなるだけでなく、ポリウレタンの粘度が低下し、ポリウレタン成形体の強度が低くなる可能性がある。また、不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)の割合が少なすぎると、不飽和ポリウレタンの架橋反応が十分起こらず、高強度化が達成できない可能性がある。
【0031】
また、不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)とそれ以外の鎖延長剤(c−2)を併用する場合には同じ官能基を有する鎖延長剤を使用することが好ましく、具体的には、不飽和結合含有ポリオール(i−1)を使用する場合には飽和結合含有ポリオール(i−2)を、不飽和結合含有ポリアミン(ii−1)を使用する場合には飽和結合含有ポリアミン(ii−2)を使用することが好ましい。
【0032】
<1−1−3−1.不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)>
不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)とは、一つ若しくは数個の重合反応の能力のある二重結合及び/又は三重結合を有するポリオール並びに/或いはポリアミンを意味する。例えば、不飽和脂肪族ポリオール、不飽和芳香族ポリオール等の不飽和結合含有ポリオール、不飽和脂肪族ポリアミン、不飽和芳香族ポリアミン等の不飽和結合含有ポリアミンが挙げられる。これらは単独使用でも併用使用でもよい。
【0033】
<1−1−3−1a.不飽和結合含有ポリオール(i−1)>
不飽和結合含有ポリオールとしては、不飽和脂肪族ポリオール、不飽和芳香族ポリオールが挙げられるが、不飽脂肪族ポリオールが好ましく用いられる。不飽和脂肪族ポリオールとしては、アルケンジオール、アルキンジオール、シクロアルケンジオール等が挙げられる。具体的には、シス−またはトランス−2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン
−1,2−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、2−アリル−1,4−ブタンジオール、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、1,4−シクロヘキセンジオール、1−シクロへキセン−4,4−ビスメタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール等が挙げられる。これらの中でも、シス−またはトランス−2−ブテン−1,4−ジオール、2−アリル−1,4−ブタンジオール、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、3−ブテン−1,2−ジオールが好ましい。また、比較的安価に入手できることから、シス−またはトランス−2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,2−ジオールがさらに好ましく、ポリウレタンを製造した際に不飽和結合部位が側鎖に存在すると架橋しやすくなる可能性が高いことから、3−ブテン−1,2−ジオールが特に好ましい。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0034】
<1−1−3−1b.不飽和結合含有ポリアミン(ii−1)>
不飽和結合含有ポリアミンとしては、不飽和脂肪族ポリアミン、不飽和芳香族ポリアミンが挙げられるが、不飽和脂肪族ポリアミンが好ましく用いられる。不飽和脂肪族ポリアミンとしては、ジアミノアルケン、ジアミノアルキン、ジアミノシクロアルケン等が挙げられる。具体的には、シス−またはトランス−2−ブテン−1,4−ジアミン、2−ブチン−1,4−ジアミン、2−ブテン−2,3−ジアミン等が挙げられる。これらの中でも、シス−またはトランス−2−ブテン−1,4−ジアミン、2−ブテン−2,3−ジアミンが好ましい。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0035】
<1−1−3−2.それ以外の鎖延長剤(c−2)>
それ以外の鎖延長剤(c−2)としては、例えば、2個以上のヒドロキシル基を有するポリオールまたは2個以上のアミノ基を有するポリアミンなどが挙げられる。
<1−1−3−2a.ポリオール(i−2)>
不飽和結合含有ポリオール(i−1)と併用して使用する脂肪族または芳香族のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール及び1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香環を有するグリコール等が挙げられる。これらの中でも、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0036】
<1−1−3−2b.ポリアミン(ii−2)>
不飽和結合含有ポリアミン(ii−1)と併用して使用する脂肪族または芳香族のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン及び1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシ
クロヘキシル−4,4′−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。これらの中でも、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−ペンタンジアミン及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミンが好ましい。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0037】
<1−1−3−3.鎖延長剤(c)の使用量>
これらの鎖延長剤(c)の使用量は、ポリオール(a)の水酸基当量からポリイソシアネート化合物(b)の当量を引いた当量を1とした場合、通常0.1当量〜5.0当量であることが好ましく、0.8当量〜2.0当量であることがより好ましい、0.9当量〜1.5当量であることが更に好ましい。
【0038】
鎖延長剤(c)の使用量を前記上限以下とすることにより、得られるポリウレタン及びポリウレタンウレアが硬くなりすぎるのを防いで所望の特性を得ることができ、溶媒に溶け易く加工し易い。また、前記下限以上とすることにより、軟らかすぎることなく、十分な強度や弾性回復性能や弾性保持性能が得られ、良好な高温特性が得られる。
【0039】
<1−1−4.ラジカル開始剤>
本発明ではポリウレタンの不飽和結合部位を少なくとも一部架橋させるために、ラジカル開始剤を使用することができる。ラジカル開始剤とはラジカル反応を進めるために穏和な反応条件でラジカルを発生させる化合物であり、有機過酸化物、アゾ化合物、ジハロゲン等が挙げられる。これらの中でも有機過酸化物、アゾ化合物が好ましく、有機過酸化物が最も好ましい。
【0040】
有機過酸化物(ペルオキシド)とは、ペルオキシド構造(−O−O−)を有する化合物のことを指す。化学構造で分類すると、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートが挙げられる。有機過酸化物には種々の構造のものがあり、それぞれ異なった温度で分解して遊離ラジカルを発生させるため、安定性や反応性を考慮して使用する有機過酸化物を選択すれば良い。
【0041】
溶媒と有機過酸化物が共存する状態で加熱すると望ましくない副反応が起こる可能性が高いため、架橋反応を行う際には、ポリウレタン溶液に有機過酸化物を溶解させて均一溶液にした後に溶媒を留去し、架橋反応を行うことが好ましい。このため、溶媒留去時に留去されにくい固体またはフレーク状の過酸化物を使用することが特に好ましい。
また、架橋反応を行う際に、有機過酸化物を分解させるための加熱処理を行うが、加熱処理が不十分で有機過酸化物がポリウレタン中に残存していると安全上大きな問題となるため、使用する有機過酸化物の1h半減期温度以上の温度で6時間以上反応させるのが好ましい。反応時間が短すぎると有機過酸化物が残存して爆発等が起こる可能性があり、長すぎるとポリウレタンの分解反応が進行する可能性がある。好ましくは6〜12時間、より好ましくは7〜10時間反応させるのが良い。
【0042】
しかし、架橋反応温度が高すぎるとポリウレタンが一部分解する可能性があるため、架橋反応は好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは140℃以下で行う。使用する有機過酸化物により架橋反応温度は異なるため、下限は特に定める必要はない。
ポリウレタン成形体の製造条件によって好適の有機過酸化物は異なるが、汎用性が高く、有機過酸化物としての安定性も高いことから、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドが好適に用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキ
サイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイドが挙げられる。
【0043】
これらの中でも、常温で固体またはフレーク状のジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイドが最も好ましい。液体の有機過酸化物を使用した場合、ポリウレタン液の溶媒留去工程で一部の有機過酸化物がポンプ側に留去されて添加量が減少して架橋反応が十分進行しない可能性があるだけでなく、一部留去された有機過酸化物により爆発が引き起こされる等安全性も懸念される。
【0044】
有機過酸化物の使用量は、不飽和結合を有する鎖延長剤の使用量にもよるが、通常ポリウレタンに対して0.001〜1.0wt%であることが好ましく、0.005〜0.7wt%であることがより好ましく、0.01〜0.5wt%であることが特に好ましい。有機過酸化物の使用量が多すぎると、ポリウレタンの分解が引き起こされ、少なすぎると架橋反応が十分進行しない可能性が高くなる。
また、上記アゾ化合物の具体例として、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が挙げられる。AIBNを用いた場合、重合反応は好ましくは60〜150℃、より好ましくは70〜140℃、特に好ましくは80〜120℃で行なわれる。
【0045】
<1−1−5.その他の添加剤等(e)>
本発明において、ポリウレタンの製造には、以上の(a)〜(d)の他に、ポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤等を使用することができる。
前記鎖停止剤としては、水酸基を有するエタノール、プロパノール、ブタノール及びヘキサノール等の脂肪族モノオール、並びにアミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等の脂肪族モノアミン等が例示される。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0046】
又、ポリウレタン製造時に、必要に応じて他の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤としては、「CYANOX1790」(CYANAMID社製)、「IRGANOX245」、「IRGANOX1010」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「Sumilizer GA−80」(住友化学社製)及び2,6−ジブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の酸化防止剤、「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「SANOL LS−2626」及び「SANOL LS−765」(以上、三共社製)等の光安定剤、「TINUVIN328」及び「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等の紫外線吸収剤、ジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体等のシリコン化合物、赤燐、有機燐化合物、燐及びハロゲン含有有機化合物、臭素または塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤、二酸化チタン等の顔料、染料、カーボンブラック等の着色剤、カルボジイミド化合物等の加水分解防止剤、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等のフィラー、滑剤、油剤、界面活性剤、その他の無機増量剤並びに有機溶媒等が挙げられる。
【0047】
<1−2.ポリウレタンの製造>
本発明において、ポリウレタンを製造するには、ポリオール(a)、イソシアネート化合物(b)、及び鎖延長剤(c)を主製造用原料として上記記載の各使用量で用い、一般的に実験/工業的に用いられる全ての製造方法により、無溶媒或いは溶媒共存下で実施することができる。
【0048】
その際使用する溶媒としては、特に限定されるものではないが、汎用性や溶解性等の観
点から、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる溶媒が好ましく用いられ、これらの中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。また、上記溶媒以外に、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、および石油系溶媒等を使用しても良い。エステル系溶媒としては酢酸エチルおよび酢酸ブチル等、ケトン系溶媒としてはメチルエチルケトン、シクロヘキサン等、石油系溶媒としてはトルエン、キシレン等の芳香族溶剤やヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族および脂環族溶剤等が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよいが、通常単独で使用する。
【0049】
製造方法の一例としては、前記(a)、前記(b)及び前記(c)を一緒に反応させる方法(以下、一段法という)、まず前記(a)と前記(b)を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと前記(c)を反応させる方法(以下、二段法という)、前記(a)と前記(b)と前記(c)の一部を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと前記(c)の残りを反応させる方法が挙げられる。
【0050】
これらの中でも二段法は、ポリオール成分を予め1当量以上のポリイソシアネート化合物(b)と反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する両末端イソシアネートで封止された中間体を調製する工程を経るものである。二段法は、プレポリマーをいったん調製した後に鎖延長剤(c)と反応させることにより、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすく、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離がしっかりとなされやすく、エラストマーとしての性能を出しやすい特徴がある。
特に、鎖延長剤(c)がポリアミンの場合には、イソシアネート基との反応速度がポリエーテルポリオールの水酸基とポリアミンのアミノ基では大きく異なるため、二段法にてポリウレタンウレアを製造することが好ましい。
【0051】
また、本発明では不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)の使用が必須であるが、それ以外の鎖延長剤(c−2)は不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)よりもポリイソシアネート化合物に対する反応性が高い可能性があり、その場合は不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)の一部が未反応のまま残り、ポリウレタン内部に組み込まれないことが考えられる。このため、反応性の低い不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)を最初に反応させて末端イソシアネートのプレポリマーを調製した後にそれ以外の鎖延長剤(c−2)を反応させる方法によりポリウレタンを製造することが好ましい。
【0052】
さらに、不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)の使用量が少ない場合には、不飽和結合を有する鎖延長剤(c−1)とそ BR>鼈ネ外の鎖延長剤(c−2)の一部をプレポリ
マー化時に反応させて末端イソシアネートのプレポリマーとし、その後に残りの鎖延長剤(c−2)を反応させてポリウレタンを製造する方法も好適に用いられる。
【0053】
<1−2−1.一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、前記(a)、前記(b)及び前記(c)を一緒に仕込むことで反応を行う方法である。反応は、通常、各成分を0〜250℃で反応させることが好ましい。
前記反応温度は、溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低くなるために生産性が悪く、又、高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。
【0054】
反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。又、反応は必要に応じて、触媒、安定剤等を添加することもできる。その際の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチ
ルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸及びスルホン酸等が挙げられる。
また、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
【0055】
<1−2−2.二段法>
二段法は、プレポリマー法とも呼ばれ、あらかじめポリイソシアネート化合物とポリオール成分とを反応させてプレポリマーを製造し、次いでこれにポリイソシアネート化合物または多価アルコール、アミン化合物等の活性水素化合物成分を加えて二段階で反応させる方法である。
特に、ポリオール混合物に対して当量以上のポリイソシアネート化合物(b)を反応させて両末端NCOプレポリマーをつくり、続いて鎖延長剤(c)であるポリオールやポリアミンを作用させてポリウレタンを得る方法が有用である。
【0056】
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。溶媒共存下で実施する場合、汎用性や溶解性等の観点から、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる溶媒が好ましく用いられる。これらの中でN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよいが、通常単独で使用する。
【0057】
プレポリマーを合成する場合、(1)まず溶媒を用いないで直接ポリイソシアネート化合物(b)とポリオール混合物を反応させてプレポリマーを合成しそのまま使用してもよいし、(2)(1)の方法でプレポリマーを合成しその後に溶媒に溶かして使用してもよいし、(3)初めから溶媒を用いてポリイソシアネート化合物(b)とポリオール混合物を反応させてもよい。
【0058】
(1)の場合には、本発明では、鎖延長剤(c)と作用させるにあたり、鎖延長剤(c)を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤(c)を導入する等の方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが好ましい。
NCO/活性水素基(ポリオール混合物)の反応当量比は、通常1以上であることが好ましく、1.05以上であることがより好ましい。また、通常10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。
【0059】
NCO/活性水素基(ポリオール混合物)の反応当量比を前記上限以下とすることにより、過剰のイソシアネート基が副反応を起こすのを防ぎ、良好なポリウレタンの物性が得られる。また、前記下限以上とすることにより、得られるポリウレタンの分子量を十分に向上することができ、十分な強度及び熱安定性が得られる。
又、鎖延長剤(d)の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるNCO基の当量に対して、通常0.1以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。また、通常5.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。
【0060】
鎖延長反応は、通常、各成分を0〜250℃で反応させることが好ましい。当該反応温度は溶剤の量、使用原料の反応性及び反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低いために生産性が悪く、又、高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。
【0061】
又、反応は必要に応じて、触媒及び安定剤等を添加することもできる。その際の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸及びスルホン酸等が挙げられる。
また、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
【0062】
しかしながら、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施することが好ましい。又、反応時に一官能性の有機アミン及びアルコールを共存させてもよい。
【0063】
<1−3.不飽和結合含有ポリウレタンの架橋反応>
ポリウレタンのハードセグメント部位に不飽和結合を導入し、同不飽和部位を少なくとも一部架橋させて、ポリウレタンのソフトセグメントの柔軟性を保ちつつ、ハードセグメントの凝集力を向上させるのが本発明の特徴である。不飽和結合部位を架橋させる方法は特に定めないが、ラジカル開始剤を用いて、または用いずに加熱処理により架橋させる方法が好適に用いられる。
【0064】
<1−3−1.ラジカル開始剤を用いた不飽和結合含有ポリウレタンの架橋反応>
ラジカル開始剤の使用量や反応条件は前述した通りである。ポリウレタン成形体の製造条件に応じて最適のラジカル開始剤や反応条件を選定すれば良い。ポリオール(a)、ポリイソシアネート化合物(b)、並びに不飽和結合含有ポリオール(i−1)及び/又は不飽和結合含有ポリアミンを含む鎖延長剤(c)、を原料として重合反応させて得られた不飽和結合含有ポリウレタンに予めラジカル開始剤を混合した混合組成物を使用しても良い。
【0065】
<1−3−2.ラジカル開始剤を用いない不飽和結合含有ポリウレタンの架橋反応>
本発明のポリウレタンは、ラジカル開始剤を用いずに、加熱処理のみで不飽和結合部位を少なくとも一部架橋させることが可能である。架橋条件は、製造するポリウレタン成形体に応じて選定すれば良い。例えば、ポリウレタンフィルムであれば、製造したポリウレタン液の溶媒を留去した後に加熱処理を行えば良いし、ポリウレタン糸であれば、紡糸機にポリウレタン液を導入して紡糸すれば良い。いずれの場合でも、高伸度かつ高強度のポリウレタン成形体が製造可能となる。反応温度の上限は、200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、150℃以下が最も好ましい。また、反応温度の下限は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上である。反応温度が前記上限を超過すると、ポリウレタンの分解が起こりやすくなる傾向があり、前記下限以下では架橋反応が十分進行しない傾向がある。
上記架橋反応は酸素または窒素下のいずれの雰囲気下で実施しても良く、常圧または減圧下のいずれの条件でも実施することができる。
【0066】
なお、本発明に係る不飽和結合ポリウレタンは、上述のようにラジカル開始剤(d)の有無に関わらず、加熱処理によって架橋反応を行うことができるため、熱硬化性ポリウレタンとして好適に用いることもできる。 例えば、二段法で得られたプレポリマーは安定しているため、最終用途の製品の形成前、つまり、架橋反応による硬化を行う前、特に、プレポリマーの状態で別の場所に輸送または移動させることができるし、輸送または移動後に、鎖延長反応を行った上で硬化することで、短時間でポリウレタンまたはポリウレタンウレアを得ることもできる。例えば、好ましい方法によってプレポリマーを約60〜80℃まで加熱し、鎖延長剤のジオールまたはジアミンと混合し、次いでそれらを高速度ミキサで十分に混合することで均一な鎖延長反応を行う。混合終了後、混入空気を除去するために、通常は減圧ポンプを用いて脱気して均質なポリウレタン樹脂を得て、それを適切
な寸法および形状のプレヒートされた成形型に流し込む。成形型のプレヒート温度は60〜200℃程度が好ましい。成形型を約60〜約200℃の炉内に配置し、加熱して硬化させる。硬化温度は60〜200℃程度が好ましく、80〜130℃が特に好ましい。下限未満の温度だと硬化不良を起こして硬化時間が長くなり、上限超過の温度だと反応が速すぎて、該組成物が成形型全体に広がる前に硬化したり、熱劣化により着色を起こしたりして、いずれも好ましくない。硬化時間は10分〜3時間が好ましい。暫く加熱状態で置き、流し込んだ液が硬化し、十分に強度が発現してから硬化物を型から取り出す。必要に応じて更に加熱して、成形物の硬化を更に進めても良い。
【0067】
<2.ポリウレタンの物性>
上記の製造方法で得られるポリウレタンは、通常は溶媒存在下で反応を行っているため、溶媒に溶解した状態で得られるのが一般的であるが、溶液状態でも固体状態でも制限されない。
本発明において、ポリウレタンのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、用途により異なるが、通常1万〜100万が好ましく、5万〜50万がより好ましく、7万〜40万が更に好ましく、9万〜30万が特に好ましい。
【0068】
又、分子量分布の目安としての、その重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)は、1.5〜3.5であることが好ましく、1.7〜3.0であることがより好ましく、1.8〜3.0であることが特に好ましい。なお、前記数平均分子量(Mn)も、前述のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0069】
又、上記の製造方法で得られるポリウレタンは、ハードセグメントの含有量が、ポリウレタンの全重量に対して、1〜20重量%であることが好ましく、3〜15重量%であることがより好ましく、4〜12重量%であることが更に好ましく、5〜10重量%であることが特に好ましい。
前記ハードセグメント量を前記上限値以下とすることにより、得られるポリウレタンが十分な柔軟性や弾性性能を示し、溶媒を使用する場合に溶け易くなり加工し易くなる。一方、ハードセグメント量を前記下限値以上とすることにより、ポリウレタンが柔らかくなりすぎるのを防ぎ、加工し易く、十分な強度及び弾性性能が得られる。
【0070】
尚、本発明でいう、ハードセグメントとは、P.J.Flory,Journal of American Chemical Society,58,1877〜1885(1936)をもとに、全体重量に対する、イソシアネートと鎖延長剤結合部の重量を、下記式で算出したものである。
ハードセグメント(%)=[(R−1)(Mdi+Mda)/{Mp+R・Mdi+(R−1)・Mda}]×100
ここで、
【0071】
R=ポリイソシアネート化合物(b)のモル数/(ポリエーテルポリオール(a)の水酸基のモル数)
Mdi=ポリイソシアネート化合物(b)の数平均分子量
Mda=鎖延長剤(c)の数平均分子量
Mp=ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量
溶媒存在下で反応を行った際に得られるポリウレタン溶液は、ゲル化が進行しにくく、粘度の経時変化が小さい等保存安定性がよく、又、チクソトロピー性も小さいため、フィルム、繊維等に加工するためにも都合がよい。
【0072】
ポリウレタン溶液のポリウレタン濃度は、溶媒に溶解した溶液の全重量に対して、通常
1〜99重量%であることが好ましく、5〜90重量%であることがより好ましく、10〜70重量%であることが更に好ましく、15〜50重量%であることが特に好ましい。
ポリウレタンの量を前記下限以上とすることにより、大量の溶媒を除去することが不要とになり生産性を向上することができる。一方、前記上限以下とすることにより、溶液の粘度を抑え、操作性及び加工性を向上することができる。
尚、ポリウレタン溶液は、長期にわたり保存する場合は、常温又はそれ以下の温度で、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましい。
【0073】
<3.ポリウレタン成形体>
本発明のポリウレタン成形体は、前記のポリウレタンから構成される成形体である。前記の通り、本発明においてポリウレタン成形体とは、固体状態のポリウレタンを意味するので、前記で例示した製造方法で得られた固体状のポリウレタン自体も本発明のポリウレタン成形体に該当する。さらには固体状態又は液体状態のポリウレタンを公知の方法で成形することによって得られる成形体も該当する。
その成形方法も形態も特に限定されないが、押出成形及び射出成形等の成形方法により、シート、フィルム及び繊維等の形態に成形されたものを包含する。
【0074】
<4.ポリウレタンの用途>
本発明で製造されるポリウレタン、及びそのウレタンプレポリマー溶液は、多様な特性を発現させることができる。例えば、樹脂状、ゴム状及び熱可塑性エラストマー状等の材質で、又、各種形状に成形された固体状またはフォーム状及び液体状等の性状で、繊維、フィルム、塗料、接着剤及び機能部品等として、衣料、衛生用品、包装、土木、建築、医療、自動車、家電及びその他工業部品等の広範な分野で用いられる。
【0075】
特に、繊維やフィルムとして用いられるのが本発明で製造されるポリウレタンの弾性性能や透湿性の特徴を生かす上で好ましい。これらの具体的用途としては、衣料用の弾性繊維、医療、衛生用品及び人工皮革等に用いられるのが好ましい。
また、生産性、機械的物性に優れている熱硬化性ウレタン樹脂として使用する場合、ホース、チューブ、各種工業用ロール、ベルト、事務機器部品、キャスター等の工業部品や機械部品、エスカレーター、スポーツ、レジャー用品等に広く用いることができる。
【0076】
<4−1.ポリウレタンフィルム>
本発明のポリウレタンを用いたフィルムは、その厚さとしては特に限定されるものではないが、通常10〜1000μmであることが好ましく、10〜500μmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。フィルムの厚さを1000μm以下とすることにより、十分な透湿性が得られる。又、10μm以上とすることにより、ピンホールが形成されにくいとともに、フィルムがブロッキングしにくく、取り扱い易くなる。
【0077】
本発明のポリウレタンを用いたフィルムは、医療用粘着フィルムや衛生材料、包装材、装飾用フィルム、その他透湿性素材等に好ましく用いることができる。尚、フィルムは布や不織布等の支持体に塗布して形成されたものでもよく、その場合は厚さが10μmよりも更に薄くてもかまわない。
又、引張特性として、破断強度は、通常3MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることがより好ましく、10MPa以上であることが更に好ましく、15MPa以上であることが特に好ましい。また、破断伸度は、通常100%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、400%以上であることが更に好ましく、600%以上であることが特に好ましい。
【0078】
本発明のポリウレタンを用いたフィルムの製造方法は、特に限定はなく、従来公知の方
法が使用できる。例えば、支持体又は離型材に、ポリウレタン溶液を塗布又は流延し、凝固浴中で溶媒その他の可溶性物質を抽出する湿式製膜法、並びに支持体または離型材にポリウレタン溶液を塗布又は流延し、加熱及び減圧等により溶媒を除去する乾式製膜法等が挙げられる。
【0079】
製膜する際に用いる支持体は特に限定されないが、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、ガラス、金属、剥離剤を塗布した紙や布等が用いられる。塗布の方式は特に限定されないが、ナイフコーター、ロールコーター、スピンコーター及びグラビアコーター等の公知のいずれでもよい。
乾燥温度は、溶媒の種類や乾燥機の能力等によって任意に設定できるが、乾燥不十分、或いは急激な脱溶媒が起こらない温度範囲を選ぶことが必要であり、室温〜300℃の範囲であることが好ましく、60℃〜200℃の範囲であることがより好ましい。
【0080】
<4−2.ポリウレタン繊維>
ポリウレタンフィルムと繊維の物性は非常によい相関があり、フィルム試験等で得られた物性値は繊維においても同様の傾向を示す場合が多い。本発明のポリウレタンを用いた繊維は、伸長回復性、弾性、耐加水分解性、耐光性、耐酸化性、耐油性及び加工性等に優れる。
【0081】
本発明のポリウレタンを用いた繊維は、例えば、レッグ、パンティー・ストッキング、おむつカバー、紙おむつ、スポーツ用衣類、下着、靴下、ファッション性に優れたストレッチ性の衣類、水着及びレオタード等の用途に好ましく用いられる。
本発明のポリウレタンを用いた弾性繊維の優れた透湿性は、衣類に使用される際に蒸れにくく、付け心地がよいという特徴を持つ。又、応力の変動率またはモジュラスが小さいという特性は、例えば、衣類として体につける際に小さな力でそでを通したりすることができ、小さな子供やお年寄りにとっても非常に着脱しやすいという特徴を持つ。
【0082】
又、フィット感及び運動追従性が良いことより、スポーツ用衣類及びよりファッション性の高い衣類の用途で使用することができる。又、繰り返しの伸張試験での弾性保持率が高いことより、繰り返しの使用に対してもその弾性性能が損なわれにくいという特徴もある。
また、本発明のポリウレタン成形体は、高伸度にも関わらず高強度であることから、コルセットやサポーター等の医療材料用途に好ましく用いられる。また、糸の微細化が可能となるため、繊維メーカーによって糸の製造コストが大幅に低減できるだけでなく、強度を失わずに衣服の軽量化が可能となる。
【0083】
さらに、本発明のポリウレタンはポリマー中に不飽和結合を有するため、組成次第では成形体にした際に独特の触感や風合を有する。熱可塑性ポリウレタンは、ポリウレタン層を特定の基材上に積層してなる積層体としても多く用いられているが、ポリウレタン層を有する積層体のうちでも、繊維質基材上に熱可塑性ポリウレタン層を積層してなる積層体は、天然皮革様の外観、触感、風合などを有していることから、合成皮革または人造皮革として、履物、衣料分野、袋物や鞄などの用途で汎用されている。本発明のポリウレタン成形体は、天然皮革の代替素材として、例えば、コート、ブレザー、スカートなどの衣類、靴やブーツなどの履物、バック、カメラケース、財布などのカバン類や袋物、ベルトなどの衣料関連品、バスケットボール、バレーボールなどのスポーツ用品などに有効に用いることができる。
【実施例】
【0084】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例、比較例におけ
る分析、測定は、以下の方法によった。
<ポリオール(a)の数平均分子量>
JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法より数平均分子量を求めた。
【0085】
<ポリウレタン及びポリウレタンウレアの分子量>
得られたポリウレタン又はポリウレタンウレアの分子量は、ポリウレタン又はポリウレタンウレアのジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」 (カラム:TskgelGMH−XL(2本)〕を用い、標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0086】
<フィルム物性>
成形したフィルムから打ち抜いた幅10mm、長さ100mm(厚み約50μm)の短冊状試験片を用い、JIS K6301に準じ、温度23℃、相対湿度55%の条件下、引張試験機(オリエンテック社製、製品名「テンシロンUTM−III−100」)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、100%伸長時と300%伸長時の応力、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
【0087】
実施例1
<ポリウレタンフィルム1の製造>
容量300mLのフラスコに、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、「PT
MG」と略記することがある。)(数平均分子量1962、三菱化学社製)35.34g、1,4−ブタンジオール(以下、「1,4−BG」と略記することがある)(三菱化学社製)0.813g、3−ブテン−1,2−ジオール(以下、「3,4−BEG」と略記することがある)(三菱化学社製)0.326g、ジブチルスズジアセテート(東京化成社製)0.0186g、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAC」と略記することがある。キシダ化学社製)182.0gを測り取った。
【0088】
その後、ポリイソシアネート化合物(b)として予め50℃に加温した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記することがある。)9.08gを加えた。このときの、NCO/活性水素基(ポリオール混合物)の反応当量比は1.18であった。
そして、このフラスコをオイルバスにセットし、窒素雰囲気下にて碇型攪拌翼で攪拌しつつ、30分かけてオイルバスの温度を65℃まで昇温し、その後65℃にて2時間保持した。1,4−ブタンジオール(三菱化学社製)0.48gを添加して2時間反応させた後にオイルバスを取り去り、ポリウレタン溶液1とした。
【0089】
得られたポリウレタン溶液1につき、GPCで重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布の目安としてその重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)を算出したところ、Mwは10.2万、Mw/Mnは1.86であった。
50gのポリウレタン溶液1をフラスコに測り取り、ラジカル開始剤(d)のジラウロイルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名:パーロイル(登録商標)L)を10mg添加し、室温で1時間撹拌して過酸化物0.1%含有ポリウレタン溶液とした。
【0090】
又、こうして得られた過酸化物0.1%含有ポリウレタン溶液をガラス板に乗せたニトフロンシート上でキャストし、60℃の乾燥機にて2時間、60℃の真空乾燥機にて2時間乾燥させた後に100℃の乾燥機で7時間乾燥させ、厚さ約50μmの無色透明なポリウレタンフィルム1を得た。
得られたポリウレタンフィルム1につき、GPCで重量平均分子量(Mw)及び数平均
分子量(Mn)を測定し、分子量分布の目安としてその重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)を算出したところ、Mwは13.1万、Mw/Mnは1.99であり、架橋反応前に比べてMwは増加していた。
このフィルムの引張試験を行ったところ、破断伸度は916.7%、破断強度は22.0MPaであり、高伸度かつ高強度であった。又、得られた弾性フィルムは表1に示す通りの特性であった。
【0091】
実施例2
<ポリウレタンフィルム2の製造>
ラジカル開始剤を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンフィルム2を得た。
GPCで測定したMwは14.4万、Mw/Mnは1.96であり、架橋反応前に比べてMwは増加していた。
このフィルムの引張試験を行ったところ、破断伸度は914.9%、破断強度は20.1MPaであり、高伸度かつ高強度であった。又、得られた弾性フィルムは表1に示す通りの特性であった。
【0092】
比較例1
<ポリウレタンフィルム3の製造>
100℃の乾燥機での7時間乾燥の操作を行わなかった以外は、実施例2と同様にして透明性良好なポリウレタンフィルム3を得た。
GPCで測定したMwは10.2万、Mw/Mnは1.86であり、ポリウレタン溶液でのGPC測定結果と同一であった。
【0093】
このフィルムの引張試験を行ったところ、破断伸度は892.3%、破断強度は10.1MPaであり、高伸度ではあるものの、フィルム強度が非常に小さかった。又、得られた弾性フィルムは表1に示す通りの特性であった。
【0094】
【表1】

【0095】
表1に示すように、各実施例、比較例を比較すると、不飽和結合部位を導入したポリウレタンを過酸化物添加後に加熱した実施例1および加熱処理を行った実施例2では、前記架橋反応処理を実施しなかった比較例1よりも高伸度であるにも関わらず、高強度であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、伸度かつ強度に優れた人工皮革、自動車部品、弾性繊維やフィルム及び衣料等の用途に極めて有用なポリウレタン及びポリウレタンウレアを製造することができる。
そして、得られるポリウレタン及びポリウレタンウレアを用いて弾性繊維およびフィルム等のポリウレタン成形体を製造する場合、強度に応じて繊維またはフィルム厚を減少することができ、製造コストの削減が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(a)、ポリイソシアネート化合物(b)、並びに不飽和結合含有ポリオール(i−1)及び/又は不飽和結合含有ポリアミン(ii−1)を含む鎖延長剤(c)、を原料として重合反応させて得られた不飽和結合含有ポリウレタンの、不飽和結合の少なくとも一部を架橋して得られるポリウレタン。
【請求項2】
ラジカル開始剤(d)を反応させて不飽和結合の少なくとも一部を架橋させて得られる、請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項3】
70〜130℃の加熱により不飽和結合の少なくとも一部を架橋させて得られる、請求項1又は2に記載のポリウレタン。
【請求項4】
前記鎖延長剤(c)が、前記不飽和結合含有ポリオール以外の脂肪族もしくは芳香族ポリオール(i−2)及び/又は前記不飽和結合含有ポリアミン以外の脂肪族もしくは芳香族ポリアミン(ii−2)を含む、請求項1〜3に記載のポリウレタン。
【請求項5】
前記不飽和結合含有ポリオールが、3−ブテン−1,2−ジオールである請求項1〜4に記載のポリウレタン。
【請求項6】
ポリイソシアネート化合物(b)の使用量が、ポリオール(a)の水酸基、並びに鎖延長剤(c)の水酸基及び/又はアミノ基を合計した1当量に対し、0.98当量〜1.10当量である請求項1〜5に記載のポリウレタン。
【請求項7】
ポリオール(a)、ポリイソシアネート化合物(b)、並びに不飽和結合含有ポリオール(i−1)及び/又は不飽和結合含有ポリアミン(ii−1)を含む鎖延長剤(c)、を原料として重合反応させ、両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得る工程と、
前記プレポリマーと、前記不飽和結合含有ポリオール以外の脂肪族もしくは芳香族ポリオール(i−2)及び/又は前記不飽和結合含有ポリアミン以外の脂肪族もしくは芳香族ポリアミン(ii−2)とを重合反応させて不飽和結合含有ポリウレタンを得る工程と、
前記不飽和結合含有ポリウレタンの不飽和結合の少なくとも一部を架橋する架橋工程とを含む、ポリウレタンの製造方法。
【請求項8】
前記架橋工程において、ラジカル開始剤(d)を反応させて前記不飽和結合の少なくとも一部を架橋させる、請求項7に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項9】
前記架橋工程において、70〜130℃の加熱により前記不飽和結合の少なくとも一部を架橋させる、請求項7又は8に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項10】
前記不飽和結合含有ポリオールが、3−ブテン−1,2−ジオールである請求項7〜9に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項11】
ポリイソシアネート化合物(b)の使用量が、ポリオール(a)の水酸基、並びに鎖延長剤(c)の水酸基及び/又はアミノ基を合計した1当量に対し、0.98当量〜1.10当量である請求項7〜10に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項12】
請求項7〜11に記載のポリウレタンの製造方法によって得られたポリレウタン。
【請求項13】
請求項1〜6、及び12に記載のポリウレタンを含むポリウレタンフィルム。
【請求項14】
請求項1〜6、及び12に記載のポリウレタンを含むポリウレタン繊維。

【公開番号】特開2013−10920(P2013−10920A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7129(P2012−7129)
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】