説明

ポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体の製造方法、ポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体およびインク組成物

【解決課題】
優れた画像濃度、分散性および保存安定性を発揮するポリマー付加顔料の水分散体を製造する方法を提供する。
【解決手段】
表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを、水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)と接触、反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体を製造する方法、ポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体およびインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水性インクはその安全性と環境負荷が少ないことから幅広い分野で有機溶剤系インクに取って代わっている。特にビジネス用途ではオフィスにおいて各種印刷に使用されるインクとして臭いのない水性色材が必要不可欠であり、産業用途でも作業環境、インクや塗料の取り扱いの安全性、廃液処理の問題から有機溶剤の使用をできる限り少なくする傾向が強まっている。また、有機溶剤型着色材に比べ水性着色材は製造時に防爆仕様などの特別な装置や排気装置が要らず製造コストが安価であることも普及の要因となっている。
【0003】
水性着色材としては主に染料と顔料の二つが用途に応じて使い分けられており、染料は階調性に優れ高解像度の画像形成がしやすい反面、顔料よりも耐光性が低く実用上問題がある。これに対して顔料は染料に対して分散性が劣るが耐水性、耐光性が極めて優れており、分散技術の進歩により顔料インクが数多く提供されてきている。
【0004】
印刷製版を経て印刷されるグラビアインキ、オフセット印刷用の水性インクも開発されているが、水性インクを用いるオフィス向けの記録方法として最も普及し始めているものはインクジェット記録方法である。インクジェット記録方法は、微細なノズルヘッドからインク液滴を吐出して、文字や画像を紙などの記録媒体の表面に記録する方法であり、非接触で記録することにより、普通紙をはじめ多種多様な記録媒体にフルカラーで印刷版をおこすことなくオンデマンドで容易に印刷可能であることから広く普及し始めている。
【0005】
インクジェット記録方法を採用したインクジェットプリンターは、微細なノズルヘッドからインク液滴を吐出して、文字や画像を紙などの記録媒体の表面に記録するものであり、代表的な記録方式としてバブルジェット(登録商標)方式とピエゾ方式とがある。前者はノズルヘッドまで導いたインクをヒーターで瞬間的に加熱して泡を発生させ、その泡による体積膨張でインク液を断続的に吐出して行う方式であり、後者は電歪素子(圧電素子)を用いて電気信号を機械信号に変換し、ノズルヘッド部分に貯えたインク液滴を断続的に吐出して記録する方式である。
【0006】
インクジェットプリンター用インク組成物のうち、黒色インク組成物は、主に文書印刷を目的としてオフィス等で多用されており、各プリンターの記録方式、記録速度に最適化された水性黒色顔料インク組成物が数多く提供されている。
【0007】
例えば、黒色顔料の表面を親水化して、水性媒体に対する分散性を向上させた水性黒色顔料インク組成物が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、特許文献1記載の方法では、普通紙に印字した場合に紙の内部にインク組成物が浸透してしまうことから、画像濃度が低下したり裏移りを生じたり、記録紙がカールする等の課題を生じていた。特に、近年、インクジェットプリンターの印刷速度の高速化に伴い、単位時間あたりのインク吐出量が増える傾向にあるため、従来の水性黒色顔料では十分な画像濃度が得られない場合があった。
【0008】
また、顔料は、粒子間の凝集力に比べて他の物質、例えば有機高分子、水および有機溶剤等との親和性が弱いために、通常の混合または分散条件では、均一に混合または分散することが極めて困難であるため、顔料表面に、各種の界面活性剤や樹脂等からなる分散剤を吸着させたり、顔料表面全体を該分散剤で被覆して、固体状または液体状の他成分との親和性を高めることにより、顔料の分散性を改良する検討が数多くなされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平08−003498号公報
【特許文献2】特開平08−218015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本発明者等が鋭意検討したところ、顔料表面に分散剤を吸着させてなる従来の水系顔料インク組成物においては、ノズルヘッドに設けられた細いノズルからインク組成物が吐出される際に、強い剪断力が加わって分散剤が離脱したり、長期保存中に分散剤が離脱したりする等して顔料の分散状態が不安定になり、保存安定性の悪化を引き起こすことが判明した。また、顔料全体を分散剤で被覆してマイクロカプセル化した場合には、保存安定性に優れる反面、画像濃度が大きく低下してしまう。
【0011】
従って、本発明は、優れた画像濃度、分散性および保存安定性を発揮するポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体を製造する方法、ポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体およびインク組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記技術課題を解決すべく、鋭意検討を重ねたところ、表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを、水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)と接触、反応させてポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体を製造することにより、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを、水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)と接触、反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体の製造方法、
(2)顔料がカーボンブラックである上記(1)に記載のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体の製造方法、
(3)表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを、水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)と接触、反応させてなることを特徴とするポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体、
(4)顔料がカーボンブラックである上記(3)に記載のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体、
(5)上記(1)もしくは(2)に記載の方法で得られたポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体または上記(3)もしくは(4)に記載のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体を含むことを特徴とするインク組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表面に酸性基を有する顔料と、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂からなる分散剤とを、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物を介して化学的に結合することにより、優れた画像濃度、分散性および保存安定性を発揮するポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体を製造する方法、ポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体およびインク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<ポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体の製造方法>
先ず、本発明のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体の製造方法について説明する。
【0016】
本発明のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体の製造方法は、表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを、水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)と接触、反応させることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の方法において、表面に酸性基を有する顔料(I)としては、表面が酸性の顔料が好ましく、シナジストによる表面酸性処理した各種顔料を用いることができる。さらに表面処理により酸性にした顔料を対イオンで中和して水中に分散した顔料にも適応できる。
【0018】
本発明の方法において、顔料としては、黒色顔料が好ましく、具体的には、アイボリーブラック、ピーチブラック、ランプブラック、マルスブラック、ビチューム、チタンブラック、カーボンブラック等が挙げられる。この中で、カーボンブラックが、インクジェット記録用黒色顔料として、漆黒度と着色力に優れることから、好適に使用することができる。
【0019】
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックを挙げることができ、これ等のカーボンブラックは、炭素含有量が高く、無定形構造に由来する黒色度が高く、ピーチブラックやランプブラック等に比較して乾燥速度が速く、保存安定性が高く、安価であることから、好ましく使用することができる。
【0020】
上記カーボンブラックのうち、ファーネスブラックやチャンネルブラック等の超微細カーボンブラックを用いると、得られる水性顔料分散体をインクジェットプリンター用インク組成物に用いたときに、高解像度で印刷品質に優れるものを得ることができる。
【0021】
カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(NSA)が50m/g以上であるものが好ましく、50〜300m/gであるものがより好ましく、80〜250m/gであるものがさらに好ましい。また、カーボンブラックとしては、DBP吸収量が50cm/100g以上であるものが好ましく、50〜200cm/100gであるものがより好ましく、80〜180cm/100gであるものがさらに好ましい。
【0022】
カーボンブラックのNSAおよびDBP吸収量が上記範囲内にあることにより、得られるポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体をインクジェットプリンター用インク組成物に用いたときに、水性媒体に対する優れた分散性や、インク性能を発揮することができる。
【0023】
なお、本出願書類において、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2に規定される「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第2部、比表面積の求め方−窒素吸着法、単点法」に従って測定した値を意味し、DBP吸収量は、JIS K 6217−4に規定される「ゴム用カーボンブラック−基本特性−第4部、DBP吸収量の求め方」に従って測定した値を意味する。
【0024】
また、カーボンブラックの一次粒子径は、10〜70nmであることが好適であり、15〜43nmであることがより好適であり、18〜30nmであることがさらに好適である。なお、本出願書類において、カーボンブラックの一次粒子径は、電子顕微鏡による算術平均径(数平均)を意味する。
【0025】
カーボンブラックの具体例としては、トーカブラック#8500、トーカブラック#8500F、トーカブラック#7550SB、トーカブラック#7550F(以上東海カーボン(株)製)、#650、#750、MA600、#44B、#44、#45B、MA7、MA11、#47、#45、#33、#45L、#47、#50、#52、MA77、MA8(以上三菱化学(株)製)、FW200、FW2V、FWI、FW18PS、NIpex180IQ、FW1、Special Black6、S160、S170(以上Degussa社製)、Black Pearls 1000M、Black Pearls 800、Black Pearls 880、Monarch 1300、Monarch 700、Monarch 880、CRX 1444、Regal 330R、Regal 660R、Regal 660、Regal 415R、Regal 415、Black Pearls 4630、Monarch 4630(以上Cabot社製)、Raven 7000、Raven 3500、Raven 5250、Raven 5750、Raven 5000ULTRAII、HV 3396、Raven 1255、Raven 1250、Raven 1190、Raven 1000、Raven 1020、Raven 1035、Raven 1100ULTRA、Raven 1170、Raven 1200(以上Columbian社製)、DB1305(以上KOSCO社製)、SUNBLACK700、705、710、715、720、725、300、305、320、325、X25、X45(以上旭カーボン(株)製)、N220、N110、N234、N121(以上Sid Richardson社製)、ニテロン#300(以上新日化カーボン(株)製)、ショウブラックN134、N110、N220、N234、N219(以上昭和キャボット社製)などを挙げることができる。
【0026】
本発明の方法において、表面に酸性基を有する顔料(I)は、上記各顔料を、適宜酸化処理することにより得ることができる。
【0027】
酸化処理は、液相法および気相法等の公知の方法により行うことができる。
【0028】
液相法により酸化処理する場合は、酸化剤として、過酸化水素水、硝酸、硫酸、塩素酸塩、過硫酸塩、過炭酸塩など種々の酸化剤を用いることができ、例えば、上記酸化剤を含む水溶液中に、カーボンブラック等の顔料を投入し、攪拌処理することにより、表面に酸性基を有する顔料を得ることができ、酸化剤の投入量および反応温度を制御することで、カーボンブラック表面に酸性基を均一に導入することができる。
【0029】
また、気相法による酸化処理は、オゾン酸化や空気酸化による方法を挙げることができ、上記気相法によれば、乾燥コストがかからず、液相法に比べて操作が容易である等の利点がある。
【0030】
酸化処理によって顔料表面に導入される酸性基としては、アミノ基を有する塩基性化合物と酸・塩基反応して塩を形成し得るものであれば特に制限されず、例えば、カルボキシル基、スルホン基等を挙げることができる。これら酸性基の導入量は、気相酸化条件もしくは液相酸化条件を制御することにより制御することができる。
【0031】
以下、表面に酸性基を有する黒色顔料として、カーボンブラックの酸化処理物を液相法で製造する場合を例にとって説明する。
【0032】
カーボンブラックと、酸化剤および水性媒体(好ましくは脱イオン水)とを適宜な量比で攪拌槽にて混合して、混合攪拌槽中で適宜な温度、例えば室温〜90℃の温度下、好ましくは60〜90℃の温度下で十分に攪拌混合することにより、カーボンブラックが酸化されて、カーボンブラック粒子凝集体の表面にカルボキシル基やヒドロキシル基などの親水性の官能基が生成してなる表面が酸化された顔料の水分散体(スラリー)を得ることができる。
【0033】
この場合、カーボンブラックを予め湿式あるいは乾式酸化しておくとスラリー中にカーボンブラックを効率よく分散させることができ、均一かつ効果的に酸性基を生成することができる。湿式法により酸化する場合、オゾン水、過酸化水素水、ペルオキソ2酸あるいはその塩類により酸化することが好ましく、乾式(気相)法により酸化する場合、オゾン、酸素、NO、SOなどのガス雰囲気中にカーボンブラックを曝すことにより酸化することが好ましい。
【0034】
また、スラリー中に表面が酸化された顔料を均一に分散させるために界面活性剤を添加することも好ましく、界面活性剤としてはアニオン系、ノニオン系、カチオン系いずれも使用することができる。例えば、アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩などが、ノニオン系界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルなどが、カチオン系界面活性剤としてはアルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩などが例示される。
【0035】
このようにして得られた表面が酸化された顔料のスラリーは、そのまま塩基性化合物との反応に供してもよいし、表面が酸化された顔料の凝集物が発生したり粘度が増加したりすることを抑制するために、部分中和処理(表面官能基である酸性基の一部を中和する処理)を施してもよい。
【0036】
部分中和処理を施す場合、予め、酸化処理により生じた還元塩(酸化剤の還元化物)を除去することが好ましく、還元塩を除去することによって、以下の中和反応が効率的に進行して水分散性が向上し、表面酸化顔料の再凝集を抑制することができる。還元塩の除去は、限外濾過膜(UF)、逆浸透膜(RO)、電気透析膜などの分離膜を用いて行うことが好ましい。
【0037】
表面酸化顔料の部分中和処理は、上記スラリーに中和剤を加え、加温しながら行うことが好ましい。中和剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ塩類、アンモニア、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、第4級アミンなどの有機アミン類が例示されるが、この限りではない。中和剤の添加量は、顔料表面官能基量によっても異なるので一概に決めることは出来ないが表面酸性官能基に対し50〜100モル%であることが好ましい。中和反応は常温で行ってもよいが、中和剤を撹拌槽中の顔料スラリーに投入し、40〜100℃で、1〜16時間攪拌を行うことが好ましい。
【0038】
また、顔料スラリー中に大きな未分散塊や粗粒が存在する場合には、遠心分離や濾過などの方法により除去することが好ましく、未分散塊や粗粒を除去することにより、得られる水性顔料分散体の粒度分布を制御することができ、水性顔料分散体をインクジェットプリンター用インク組成物に使用したときに、印刷時におけるノズルの目詰りの発生を抑制することができる。
【0039】
スラリーの中和処理を行った場合は、中和処理により生じた塩類(中和剤の酸化物)を除去することが好ましく、上記塩類を除去することにより、顔料の水分散性を向上させ、表面酸化顔料の再擬集を抑制することができる。上記塩は、限外濾過膜(UF)、逆浸透膜(RO)、電気透析膜などの分離膜により除去することが好ましい。
【0040】
スラリー中における、表面に酸性基を有する顔料の濃度は、3〜30重量%であることが好ましく、4〜28重量%であることがより好ましく、5〜25重量%であることがさらに好ましい。スラリー中における、表面に酸性基を有する顔料の濃度が上記範囲内にあることにより、後述する一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)を、スラリー中に所定量投入することで、上記顔料と塩基性化合物との反応を容易に行うことができる。
【0041】
上述した方法によって、表面に酸性基を有する顔料を得ることができるが、表面に酸性基を有する顔料としては、市販品を用いることもでき、自己分散型カーボンブラックとして市販されているAquaBlack(登録商標)162、AquaBlack(登録商標)164(いずれも東海カーボン(株)製)等を挙げることができる。表面に酸性基を有する顔料として、市販品を使用する場合には、後述する一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)との反応前に、塩基性化合物との反応を行う水性媒体中に予め分散することが好ましく、この場合、顔料の濃度が上記スラリー中の顔料濃度と同様の濃度になるように分散することがより好ましい。
【0042】
表面に酸性基を有する顔料(I)の平均粒径は、70〜200nmであることが好適であり、80〜170nmであることがより好適であり、100〜150nmであることがさらに好適である。なお、本出願書類において、表面に酸性基を有する顔料(I)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された、体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径(平均粒径D50)を意味する。
【0043】
本発明の方法においては、表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基
および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2つ以上有する塩基性化合物(II)とを、水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製する。
【0044】
一級アミノ基又は二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2つ以上有する塩基性化合物(II)としては、顔料表面の酸性基と酸・塩基反応し得るとともに、後述するポリウレタン樹脂の末端イソシアネート基と尿素結合し得るものであれば、特に制限されず、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1、3−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族多価アミンや、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン、キシレンジアミン等の芳香族多価アミンや、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環式多価アミン等が挙げられ、これらを単独で又は複数使用することができる。
【0045】
表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを接触させる水性媒体としては水であることが好ましく、水以外の水性媒体としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類など、水溶性でアミンやイソシアネートとの反応を生じない溶媒が好ましい。また、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール系水性溶媒や、ジメチルスルホキシド、スルホラン等でもよく、これらの水性媒体を2種以上混合してなるものであってもよい。ただし、アルコール性水酸基を有するグリコール系水性溶媒は、後述するポリウレタン樹脂(III)の末端イソシアネート基と反応する場合があることから、グリコール系水性媒体は、その使用量を抑制し、後述するポリウレタン樹脂(III)との反応後に添加することが好ましい。
【0046】
本発明の方法において、表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)は、水性媒体中で、20〜60℃の温度下、0.5〜10時間攪拌することにより接触させ、反応させることができる。
【0047】
即ち、表面に酸性基を有する顔料(I)に対して、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)を、水性媒体中で接触させることにより、上記顔料表面の酸性基にイオン的に引き寄せられ、塩基性化合物が顔料表面近傍に存在する状態にすることにより、表面にアミノ基を有する顔料を作製することができる。
【0048】
本発明の方法においては、上記表面にアミノ基を有する顔料を、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)と接触、反応させる。
【0049】
顔料表面のアミノ基とイソシアネート基は瞬時に反応し、尿素結合を形成させることができる。このため、顔料表面においてポリウレタン樹脂(III)の架橋、鎖伸長が起こり、顔料表面に対しポリウレタン樹脂(III)の化学的な結合および物理的付着を生じて、顔料表面を被覆することができる。
【0050】
末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)としては、該末端イソシアネート基が、上記顔料表面に存在するアミノ基と尿素結合し得るものであれば特に制限されない。末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂を、水性媒体中で顔料表面の未反応アミノ基と反応させるためには、分子中に水性媒体に分散しうる官能基又は分子鎖を含みかつ2個以上の水酸基を有する化合物を、ポリイソシアネート化合物とウレタン結合させてなるものであることが好ましい。
【0051】
分子中に水性媒体に分散しうる官能基又は分子鎖を含み2個以上の水酸基を有する化合物としては、最終段階でポリウレタン樹脂を水性媒体中に転相させる塩を形成し得る官能基を有するものが好ましく、具体的には、三級カルボキシル基含有ポリオール化合物を挙げることができる。
【0052】
三級カルボキシル基含有ポリオール化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸等のポリヒドロキシカルボン酸類を挙げることができ、これ等のうち、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のジヒドロキシモノカルボン酸が挙げられる。上記化合物が有する三級カルボキシル基はイソシアネート化合物との反応性が極めて低いことから、ウレタン結合反応を阻害することなく、目的とするポリウレタン樹脂を効率よく生成することができる。
【0053】
また、上述の三級カルボキシル基含有ポリオール化合物の配合量を制御することにより、得られるポリウレタン樹脂の酸価を制御することが可能であり、酸価を調整するためには、三級カルボキシル基含有ポリオール化合物とともに、更にノニオン性の分子鎖を有するジオール化合物を使用することができる。ノニオン性の分子鎖を有するジオール化合物としては、ポリエチレングリコールジオール(PEG)、或いはポリエチレングリコールジオール(PEG)とポリプロピレングリコールジオール(PPG)、ポリブチレングリコールジオール(PBG)との共重合ジオールに代表されるポリアルキレングリコールジオールを挙げることができる。
【0054】
また、三級カルボキシル基含有ポリオール化合物やノニオン性の分子鎖を有するジオール化合物とともに、さらに分子中に少なくとも2個の水酸基を有するポリオールを任意の割合で用いることもできる。
【0055】
分子中に少なくとも2個の水酸基を有するポリオールとしては、マイケル付加等の反応により目的に応じた化学修飾を行った側鎖修飾ジオール等を挙げることができ、側鎖に種々の疎水基や親水基を導入することで、得られるポリウレタン樹脂における親水性と疎水性のバランス設計を幅広く行うことができる。
【0056】
上記側鎖修飾ジオールは、ジアルカノールアミンと(メタ)アクリル酸誘導体との付加反応により合成することができる。マイケル付加等の反応は、ジアルカノールアミンとメタクリル酸誘導体途の反応よりも低温で反応するアクリル酸誘導体との付加反応が制御しやすく好ましい。ジアルカノールアミンとしては、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等の二級アミンのジヒドロキシアルキル置換体、(メタ)アクリル酸誘導体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸置換芳香族エステル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、不飽和二塩基酸またはその誘導体を挙げることができる。
【0057】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2―エチルヘキシル等が挙げられる。
【0058】
上記(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等が挙げられる。
【0059】
上記(メタ)アクリル酸芳香族エステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0060】
上記(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキルエステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸フルオロメチル、(メタ)アクリル酸フルオロエチル等が挙げられる。
【0061】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸エチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル等が挙げられる。
【0062】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のα−置換スチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン等の核置換スチレン等が挙げられる。
【0063】
その他、(メタ)アクリル酸誘導体としては、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族モノアクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有するモノアクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族モノアクリレート;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキルエーテルアクリレート;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート等の二塩基酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエステル;モノ2−エチルヘキシルエーテルポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、モノノニルフェニルエーテルポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、モノ2−エチルヘキシルエーテルポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノノニルフェニルエーテルポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のモノアルキルエーテルポリオキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレンエーテル結合を有するモノアクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、2ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物等のヒドロキシル基を有するモノ(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の脂環エーテル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリレート、N−イソプロピルアクリルアミド等の含窒素モノアクリレート、ポリオキシエチレン燐酸エステルモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン燐酸エステルモノ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン燐酸エステルモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0064】
また、分子中に少なくとも2個の水酸基を有するポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8 −オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキシルジメタノールなどのジオール類、或いは高分子ポリオールを挙げることができる。
【0065】
高分子ポリオールとしては、ポリエステルジオール等のポリエステルポリオールや、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール、ブタジエンジオールなどの高分子ジオールや、ポリエーテルポリオール等を挙げることができる。また、ロジン骨格又は水添ロジン骨格を有する化合物のポリマージオールが挙げられる。高分子ポリオールの分子量は、数平均分子量で300〜5000の範囲のものが好ましく、数平均分子量で500〜3000のものがより好ましい。
【0066】
ポリエステルポリオールとしては、以下のポリオール、ポリオール同効成分のうちの1種又は2種以上と、多塩基酸及びそれら無水物等のうちの1種又は2種以上とが縮合反応することによって得られるものが挙げられる。
【0067】
ポリエステルポリオールの原料ポリオールとして例を挙げると、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8 −オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキシルジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ひまし油変性ジオール、ひまし油変性ポリオール等を挙げることができる。
【0068】
ポリエステルポリオールの原料である、ポリオール同効成分としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル及びステアリルグリシジルエーテル等のアルキルモノグリシジルエーテル類、並びにアルキルグリシジルエステル(製品名カージュラE10:シェルジャパン社製)等モノエポキシ化合物のうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0069】
ポリエステルポリオールの原料である、多塩基酸及びそれらの無水物としては、琥珀酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸及びダイマー酸等の脂肪族二塩基酸並びにそれらの無水物、ドデセニル無水琥珀酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及び無水トリメリット酸等の芳香族多塩基酸並びにそれらの無水物、無水ヒドロフタル酸及びジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多塩基酸並びにそれらの無水物等が挙げられる。
【0070】
ポリラクトンジオールとしては、上記ポリオール、上記ポリエステルポリオールなどの水酸基末端化合物を出発物質としてε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどのラクトン環を持つモノマーの開環付加重合によって得られるポリエステルポリオールもポリエステルポリオールの例として挙げられる。
【0071】
ポリカーボネートジオールとしては、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどのジオールを原料にしたポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0072】
ポリブタジエンジオールとしては、下記式:
【0073】
【化1】

【0074】
(ただし、k=0.2、l=0.2、m=0.6で、nは正の整数である。)で表されるポリブタジエンジオールPoly bdR−15HT、R−45HT(出光興産社製)や、ポリイソプレンジオールPoly ip(出光興産社製)や、下記式
【0075】
【化2】

【0076】
(式中、nは正の整数を示す。)
で表わされるα、ω―ポリブタジエングリコールG−1000、G−2000、G−3000(日本曹達社製)などが挙げられる。
【0077】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコールジオール(PEG)、ポリプロピレングリコールジオール(PPG)、ポリブチレングリコールジオール(PBG) に代表されるポリアルキレングリコール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどを出発物質として、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0078】
ロジン骨格又は水添ロジン骨格を有する化合物のポリマージオール(b)としては、パインクリスタルD−6011、D−6240(荒川化学工業社製)が挙げられる。
【0079】
一方、ポリイソシアネート化合物としては、分子中にイソシアネート基を2つ以上含有するものであれば特に限定されない。目的に応じてジイソシアネート化合物或いはイソシアネート基を3以上含有するポリイソシアネート化合物を用いてもよい。
【0080】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略記)、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート(以下TDIと略記)、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(3-イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、以下IPDIと略記)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと略記)、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(以下水添MDIと略記)、水素添加キシリレンジイソシアネート等、また、これらのイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基の一部をビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトンイミン、オキサゾリドン、アミド、イミド、イソシアヌレート、ウレトジオン等に変性したものが挙げられる。これらは必要に応じて、単独又は2種以上を併用することができる。
【0081】
末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)を構成するイソシアネート基が、水に分散した顔料(I)の表面に存在するアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)と反応する際、アミノ基と溶媒である水との競争反応が生じる。このため、ジイソシアネート化合物としては、MDIやTDI等の芳香族系ジイソシアネート化合物のイソシアネート基よりも水との反応速度が遅い非芳香族系ジイソシアネート化合物が好ましく、特にIPDI、水添MDIに代表される肪環族ジイソシアネート化合物或いは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートに代表される脂肪族ジイソシアネート用いることで、アミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)と末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)との反応を優先させることができる。
【0082】
上記分子中に水性媒体に分散しうる官能基又は分子鎖を含みかつ2個以上の水酸基を有する化合物とジイソシアネート化合物等のポリイソシアネートとをウレタン結合させて末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)を調製するためには、分子中に水性媒体に分散しうる官能基又は分子鎖を含みかつ2個以上の水酸基を有する化合物等のポリオール類の水酸基の当量数に対してポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量数が2当量以上多い配合比(上記ポリオール類としてジオール化合物を用い、ポリイソシアネート化合物としてジイソシアネート化合物を用いる場合には、ジイソシアネート化合物のモル数が1モル多い配合比)にすることにより、両末端にイソシアネート基が存在するポリウレタン樹脂を得ることができる。また、多段階的にイソシアネート末端オリゴマーを合成して分子量を上げていく方法も、精度良くイソシアネート末端のポリマーを得ることができ、分子量分布のばらつきの少ないポリウレタン樹脂が得られるため有用である。
【0083】
上記ポリウレタン樹脂を得るためには、上記ポリオール類であるジオール化合物とジイソシアネート化合物との反応を例にとると、有機溶媒中で、ジオール化合物の全モル数がnの時、ジイソシアネートの全モル数がn+1となるように反応させることによって末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂を合成することができる。
【0084】
末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)は、水に分散する機能を与えるために、酸価が20〜120KOHmg/gであることが好ましく、上記酸価は三級カルボキシル基含有ジオール化合物等のモル数を調整することによって調整することができる。
【0085】
なお、本出願において、分子中に水性媒体に分散しうる官能基又は分子鎖を含みかつ2個以上の水酸基を有する化合物として三級カルボキシル基含有ジオール化合物を用い、ポリイソシアネート化合物としてジイソシアネート化合物を用いたときの、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)の酸価(AN)は、以下の式によって算出される。
【数1】

【0086】
(ただし、上式において、a1:ジメチロールプロピオン酸などの三級カルボキシル基含有ジオール化合物のモル数、A1:ジメチロールプロピオン酸などの三級カルボキシル基含有ジオール化合物の分子量、a2、a3・・・an:その他のジオールのモル数、A2、A3・・・An:その他のジオールの分子量、b1,b2,b3・・・bn:ジイソシアネートのモル数、B1,B2,B3・・・Bn: ジイソシアネートの分子量である。)
【0087】
また、上記ポリオール類としてジオール化合物を用い、ポリイソシアネート化合物としてジイソシアネート化合物を用いたときの、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)の数平均分子量は、次式により算出、調整することができる。
【0088】
数平均分子量=nA’+(n+1)B’
(ただし、上式において、n:ポリオール類の全モル数、A’:ポリオール類の数平均分子量、B’:ジイソシアネートの数平均分子量である。)
【0089】
このようにして得られた末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)は、数平均分子量が、1000〜15000であることが好ましく、1300〜10000であることがより好ましく、1600〜8000であることがさらに好ましい。また、酸価が20〜120KOHmg/gであることが好ましく、30〜110KOHmg/gであることがより好ましく、35〜100KOHmg/gであることがさらに好ましい。
【0090】
上記ポリオール類として、二官能を超えるポリオール、ポリイソシアネート化合物を用いてポリウレタン樹脂を調製するときは、P.J フローリーのゲル化式などを参考にそのモル分率を調整しゲル化を防ぐ様工夫することが望ましい。
【0091】
末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)を得る場合、上記ポリオール類とポリイソシアネート化合物との反応温度は、副反応を押さえる意味から60〜80℃であることが望ましく、無溶媒、或いは酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトニトリルなどの通常ウレタン反応に用いられる公知、任意の有機溶媒を用いて反応できる。ウレタン反応触媒は三級アミン系触媒、ジブチル錫ラウリレート、オクチル酸第一錫などの公知任意の触媒を使用することができる。無触媒でも反応することができる。
【0092】
末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)が3級カルボキシル基含有ポリオール化合物等から構成されてなるものである場合は、ポリウレタン樹脂を水性媒体液中に転相する際に、適宜、トリエチルアミン、トリメチルアミン、N−メチルモルホリン、トリブチルアミン、N-メチルピラジン、メチルイミダゾール等の3級アミンを添加することが好ましい。
【0093】
表面に未反応アミノ基を有する顔料と末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)とを添加、接触させる場合、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)の添加量は、表面に未反応アミノ基を有する顔料100重量部に対して、0.1〜80重量部であることが好ましく、0.5〜30重量部であることがより好ましい。上記添加量が0.1重量部より少ない場合は画像濃度の向上効果が得られず、また80重量部を超える場合は、ポリウレタン樹脂(III)の量が過剰になって、画像濃度や保存安定性の低下を引き起こす。
【0094】
末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)のイソシアネート基が、水に分散した顔料(I)の表面に存在するアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)と反応する際、反応温度は50℃以下が好ましく、25〜40℃
がより好ましい。反応温度を上記範囲内にすることで反応速度差を生じ、アミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)と末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)の反応を、副反応である末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)と水溶媒との反応に優先させることができる。
【0095】
このようにして、顔料表面の未反応アミノ基とポリウレタン樹脂の末端イソシアネート基とを反応させ、尿素結合を形成することにより、顔料表面に分散剤としての効果を発揮するポリウレタン樹脂を物理的、化学的に結合することができる。
【0096】
<ポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体>
次に、本発明のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体について説明する。
【0097】
本発明のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体は、表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを、水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)と接触、反応させてなることを特徴とするものである。
【0098】
本発明のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体は、水性媒体中で、表面に酸性基を有する顔料(I)が、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)を介して、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)と化学的ないしは物理的に結合し、分散されてなるものである。
【0099】
本発明のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体において、水性媒体や、表面に酸性基を有する顔料(I)や、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)や、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)や、それ等の製法等の具体的態様は、上記と同様である。また、本発明のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体は、上述した本発明の方法により好適に作製することができ、その具体的態様も上記と同様である。
【0100】
本発明のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体は、表面に酸性基を有する顔料(I)を、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)を介して、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂からなる分散剤(III)に化学的および物理的に強固に結合しつつ、水性媒体中に分散してなるものであるので、優れた画像濃度、分散性および保存安定性を発揮することができる。
【0101】
<インク組成物>
次に、本発明のインク組成物について説明する。
【0102】
本発明のインク組成物は、本発明の方法で得られたポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体または本発明のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体を含むことを特徴とするものである。
【0103】
本発明のインク組成物は、上記ポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体を必須成分として含むものであり、インクジェットインクを例にとると、公知任意のグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレンエーテルグリコール或いはポリオキシアルキレンエーテルグリコールのモノアルキルエーテル、ジアルキルエーテルなどの保湿剤、防腐剤、乳化剤、pH調整剤、消泡剤などの公知添加剤、水性樹脂、樹脂エマルションなどを適宜含むことができる。
【0104】
本発明のインク組成物において、ポリウレタン付加顔料の濃度は、公知のインクジェットインクと同様の濃度とすることができ、顔料の種類などによって異なるが、例えば2〜10重量%にすることができる。
【0105】
本発明のインク組成物は、公知任意の方法で調製することができる。
【0106】
例えば、攪拌しながら本発明の必須成分であるポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体に保湿剤、防腐剤、乳化剤、pH調整剤、消泡剤などの添加剤、水性樹脂、樹脂エマルションなどを添加、攪拌し、公知任意の濾過方法により濾過することによりすることにより製造することができる。
【0107】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0108】
(実施例1)
<NCO基末端水性ポリウレタンの合成>
(1)側鎖ジオールの合成
撹拌棒、乾燥窒素吹き込み管、冷却管付きのフラスコにN,N’−ジエタノールアミン190重量部に対して、共栄社化学製ライトアクリレートNP−4EA(ノニルフェニルテトラエチレンエーテルグリコールアクリレート)を810重量部を仕込み、80℃で7時間反応後、分子側鎖にノニルフェニル鎖を有するジオール(以下、ジオールLKG−1という)を得た。反応物の3級アミン価/全アミン価の商は0.98以上であった。
(2)イソシアネート末端水性ポリウレタンの合成
撹拌棒、窒素ガス吹き込み管、玉入れ冷却管付きのフラスコ中に、メチルエチルケトン400重量部に対して、ジメチロールブタン酸を60.4重量部[2.6モル比]、ひまし油変性ジオールHS−2G−160R(豊国製油社製)を96.1重量部[0.8モル比]、クラレポリエステルジオールP−2050(数平均分子量2066、株式会社クラレ製)を129.7重量部[0.4モル比]、上記(1)で得たジオールLKG-1を104.5重量部[1.2モル比]、イソホロンジイソシアネートを209.3重量部[6モル比]を加えて、65℃にて7時間反応させた。このときの反応溶液のイソシアネート基の重量%は1.35重量%、固形分酸価は38KOHmg/gであった。
【0109】
上記反応後、35℃まで冷却して、さらにトリエチルアミンを41.2重量部を加えて30分間攪拌することにより、不揮発分58重量%、ガードナー気泡粘度:J−K、GPC数平均分子量1790、重量平均分子量5550、NCO基のモル数に対するOH基のモル数の比(OH基のモル数/NCO基のモル数)が5/6であるイソシアネート末端水性ポリウレタン(以下、ポリウレタン樹脂1という)を得た。
【0110】
<顔料分散体の作製>
表面に酸性基を有するカーボンブラックであるAquaBlack(登録商標)162(東海カーボン社製、固型分濃度19.2重量%)1kgに対し、塩基性化合物であるピペラジン・6HO (Mw=194)の5%水溶液を51.6g添加し、常温で30分攪拌後、上記ポリウレタン樹脂1(固型分58.0重量%) を82.8g加え、常温で3時間攪拌し、更に40℃で1時間撹拌することにより、ポリマー付加顔料の水分散体(以下、水性顔料分散体1という)を得た。
【0111】
(実施例2)
<NCO基末端水性ポリウレタンの合成>
(1)側鎖ジオールの合成
実施例1(1)と同じ方法でジオール化合物LKG−1を得た。
(2)イソシアネート末端水性ポリウレタンの合成
撹拌棒、窒素ガス吹き込み管、玉入れ冷却管付きのフラスコにメチルエチルケトン400重量部に対して、ジメチロールブタン酸を60.7重量部[2.8モル比]、ひまし油変性ジオールHS−2G−150(豊国製油製 / 数平均分子量765.3)78.5重量部[0.7モル比]、クラレポリエステルジオールP−2050(数平均分子量2066、株式会社クラレ製)を151.4重量部[0.5モル比]、上記(1)で得たジオールLKG−1を56.9重量部[0.7モル比]、ポリエチレンエーテルグリコール#1000(日本油脂製/ 数平均分子量1002)44重量部[0.3モル比]、イソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン(株)製ディスモジュール)を114重量部[3.5モル比]、水添MDI(住化バイエルウレタン(株)製ディスモジュールW)を94.5重量部[2.5モル比]を65℃似て7時間反応させた。このときの反応溶液中のイソシアネート基の重量%は1.35重量%、固形分酸価は38KOHmg/gであった。上記反応後、35℃まで冷却して、さらにトリエチルアミンを41.2重量部加えて30分間攪拌することにより、不揮発分61.8重量%、ガードナー気泡粘度:K−L、GPC数平均分子量1790、重量平均分子量4050、NCO基のモル数に対するOH基のモル数の比(OH基のモル数/NCO基のモル数)が5/6であるイソシアネート末端水性ポリウレタン(以下、ポリウレタン樹脂2という)を得た。
【0112】
<顔料分散体の作製>
表面に酸性基を有するカーボンブラックであるAquaBlack(登録商標)162(東海カーボン社製、固型分濃度19.2重量%)1kgに対し、塩基性化合物であるピペラジン・6HO (Mw=194)の5%水溶液を1g添加し、常温で30分攪拌後、上記ポリウレタン樹脂2(固型分61.8重量%) を1.2g加え、常温で3時間攪拌することにより、ポリマー付加顔料の水分散体(以下、水性顔料分散体2という)を得た。
【0113】
(比較例1)
<NCO基末端水性ポリウレタンの合成>
実施例2と同じ方法でポリウレタン樹脂2を得た。
<顔料分散体の作製>
表面に酸性基を有するカーボンブラックであるAquaBlack(登録商標)164(東海カーボン(株)製、固型分濃度19.2重量%)1kgに対し、塩基性化合物であるモルホリン (Mw=87.1)の5%水溶液を1g添加し、常温で30分攪拌後、上記ポリウレタン樹脂2(固型分61.8重量%) を3.1g加え、常温で3時間攪拌することにより、ポリマー添加顔料の水分散体(以下、比較水性顔料分散体1という)を得た。
【0114】
(比較例2)
表面に酸性基を有するカーボンブラックであるAquaBlack(登録商標)164(東海カーボン(株)製、固型分濃度19.2重量%)1kgに対し、アニオン型ポリウレタンディスバージョンW−6010(三井化学ポリウレタン社製)[NV30%、平均粒径60nm、pH7.8]32gを加え、常温で3時間攪拌することにより、ポリマー添加顔料の水分散体(以下、比較水性顔料分散体2という)を得た。
【0115】
<画像濃度評価>
(1)実施例1〜実施例2および比較例1〜比較例2で得た各水性顔料分散体を、顔料濃度でそれぞれ15重量%になるように調製した上で、下記インク処方でインクジェット記録用インク組成物を作製した。
【0116】
水性顔料分散体 [顔料濃度15.0重量%] 40.0重量%
グリセリン 20.0重量%
界面活性剤 0.2重量%
アミン化合物 0.2重量%
脱イオン水 38.4重量%
【0117】
(2)(1)で得られた各インク組成物をインクカートリッジに充填し、インクジェットプリンターEM−930C(セイコーエプソン社製)で印字を行い、普通紙画像サンプルをX−Riteで測定したO.D.平均値を下記基準で評価することにより、画像濃度評価を行った。結果を表1に示す。
○:O.D.値:1.4以上
△:O.D.値:1.3以上1.4未満
×:O.D.値:1.3未満
【0118】
【表1】

<保存安定性評価>
実施例1〜実施例2および比較例1〜比較例2で得た各水性顔料分散体を、密閉式ガラス瓶に入れインキュベーターおいて70℃で4週間保存して、試験前後における粘度(mPa・s)および粒径(nm)をそれぞれ測定し、以下の基準により、保存安定性評価を行った。結果を表2に示す。
○ : 変化率が全て±5%以内である。
△: 変化率が±5−10%以内である。
× : 変化率が10%以上である。
【0119】
【表2】

表1および表2の結果より、実施例1〜実施例2で得られた水性顔料分散体は、優れた画像濃度、分散性および保存安定性を発揮するものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明によれば、優れた画像濃度、分散性および保存安定性を発揮する水性顔料分散体を製造する方法、水性顔料分散体およびインク組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを、水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)と接触、反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体の製造方法。
【請求項2】
顔料がカーボンブラックである請求項1に記載のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体の製造方法。
【請求項3】
表面に酸性基を有する顔料(I)と、一級アミノ基および二級アミノ基から選ばれるアミノ基を分子中に2以上有する塩基性化合物(II)とを、水性媒体中で接触させて、表面に未反応アミノ基を有する顔料を作製した後、さらに、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(III)と接触、反応させてなることを特徴とするポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体。
【請求項4】
顔料がカーボンブラックである請求項3に記載のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体。
【請求項5】
請求項1もしくは請求項2に記載の方法で得られたポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体または請求項3もしくは請求項4に記載のポリウレタン樹脂付加顔料の水性分散体を含むことを特徴とするインク組成物。