説明

ポリウレタン組成物の製造方法

【課題】種々の天然油脂、例えば、水酸基の含有量が少ない天然油脂を原料として用いた場合でも、例えば、優れた成形性などの性質を示すポリウレタンフォームを簡便な操作で得ることができる、ポリウレタン組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)水酸基価が50以下である天然油脂と、少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを反応させて得られた反応生成物を含有したポリオール組成物と、
(B)イソシアネート化合物と、
を反応させることを特徴とする、ポリウレタン組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンフォームの原料であるポリオールには、石油由来物質であるポリエーテルポリオール、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが用いられている。
【0003】
一方、前記石油由来物質であるポリエーテルポリオールに代えて、再生産可能な植物由来原料から得られるポリオールを用いる方法が試みられている(例えば、特許文献1〜3を参照のこと)。前記特許文献1には、アルコールで開環したエポキシ化大豆油に、所定のエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド(モル比)となるようにアルキレンオキサイドを付加して得られたポリオールを用いて得られたポリウレタンフォームが開示されている。しかしながら、前記特許文献1に記載の発明では、物性の良好なポリウレタンフォームを得るために、大豆油由来のポリオールをエポキシ化および開環させる反応が行なわれているので、工程が複雑であるという欠点がある。また、前記特許文献2には、植物性油脂にアルキレンオキサイドが少なくとも1分子付加されたものであり、かつ分子鎖末端がヒドロキシエチル基であるポリオールを用いて得られたポリウレタンフォームが開示されている。さらに、前記特許文献3には、ひまし油に炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加したポリオールであり、水酸基の1級化率10モル%以上かつ水酸基価20〜350のひまし油系ポリオールを用いて得られたポリウレタンフォームが開示されている。しかしながら、前記特許文献2および3に記載の発明では、水酸基価の低い天然油脂を用いた場合、良好な反発弾性のポリウレタンフォームを得ることが困難であるため、ひまし油以外の天然油脂のように水酸基価の低い天然油脂を用いた場合には、ポリウレタン組成物、例えば、ポリウレタンフォームとして十分な材料特性を有するものを得ることが困難であるという欠点がある。
【特許文献1】特開2005−320431号公報
【特許文献2】特開2005−320437号公報
【特許文献3】特開2006−104404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来の技術に鑑みてなされたものであり、種々の天然油脂、例えば、水酸基の含有量が少ない天然油脂を原料として用いた場合でも、例えば、優れた成形性などの性質を示すポリウレタン組成物を簡便な操作で得ることができる、ポリウレタン組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の要旨は、(A)水酸基価が50以下である天然油脂と、少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを反応させて得られた反応生成物を含有したポリオール組成物と、
(B)イソシアネート化合物と、
を反応させることを特徴とする、ポリウレタン組成物の製造方法に関する。前記ポリオール組成物は、良好な反発弾性を得る観点から、好ましくは、水酸基価が50以下である天然油脂と少なくとも1個の活性水素基を有する化合物との混合物と炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを反応させて得られた反応生成物と、少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを反応させて得られた反応生成物とを含有したポリオール組成物である。また、少なくとも1個の活性水素基を有する化合物は、より良好な反発弾性を得る観点から、好ましくは、2個もしくは3個の活性水素基を有するアミン化合物、水、または1〜10個の活性水素基を有するアルコールである。前記ポリオール組成物中における反応生成物の含有量は、環境に配慮して天然油脂を使用する観点から、好ましくは、少なくとも10質量%である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリウレタン組成物の製造方法によれば、種々の天然油脂、例えば、水酸基の含有量が少ない天然油脂を原料として用いた場合でも、例えば、優れた成形性などの性質を示すポリウレタン組成物を簡便な操作で得ることができるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のポリウレタン組成物の製造方法は、(A)水酸基価が50以下である天然油脂と、少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを反応させて得られた反応生成物を含有したポリオール組成物〔以下、「ポリオール組成物(A)」ともいう〕と、
(B)イソシアネート化合物〔以下、「イソシアネート化合物(B)」ともいう〕と、
を反応させることを特徴とする方法である。
【0008】
なお、本明細書においては、前記ポリウレタン組成物とは、発泡性ポリウレタン組成物、すなわち、ポリウレタンフォーム、および非発泡性ポリウレタン組成物、例えば、エラストマーなどを意味する。
【0009】
本発明のポリウレタン組成物の製造方法によれば、前記発泡性ポリウレタン組成物および非発泡性ポリウレタン組成物のいずれをも製造することができる。本発明のポリウレタン組成物の製造方法は、好ましくは、発泡性ポリウレタン組成物、すなわち、ポリウレタンフォームの製造、より好ましくは、軟質発泡性ポリウレタン組成物の製造に際して実施されうる。なお、前記軟質発泡性ポリウレタン組成物とは、例えば、家具、自動車用シート、ヘッドレストなどに使用されうる、気泡が連通し柔らかくて復元性があるものをいう。
【0010】
本発明のポリウレタン組成物の製造方法においては、ポリウレタン組成物の形成に用いられるポリオール成分が、前記反応生成物を含有したものであるため、本発明のポリウレタン組成物の製造方法によれば、ポリウレタン組成物の形成に用いられるポリオール成分〔すなわち、前記ポリオール組成物(A)〕と、イソシアネート成分〔すなわち、前記イソシアネート化合物(B)〕とを、良好に混合させることができるという優れた効果を発揮する。また、本発明のポリウレタン組成物の製造方法によれば、前記反応生成物を含有したポリオール組成物(A)が用いられているため、優れた成形性などの性質を示すポリウレタン組成物を簡便な操作で製造することができるという優れた効果を発揮する。
【0011】
前記ポリオール組成物(A)は、前記反応生成物を含有した組成物である。なお、本発明においては、前記ポリオール組成物(A)は、本発明の目的を妨げないものであれば、前記反応生成物に加えて、前記反応生成物に由来するポリオール以外のポリオールがさらに配合された組成物であってもよい。
【0012】
本明細書において、前記「天然油脂」とは、天然物から搾取することなどにより得られる油脂をいう。本発明の製造方法に用いられる天然油脂としては、当該油脂の水酸基価が50以下である油脂であればよく、特に限定されないが、例えば、ヤシ油、パーム油、オリーブ油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油などの植物油;豚脂、牛脂、骨油、獣脂などの動物油;魚油などが挙げられる。また、本発明のポリウレタン組成物の製造方法においては、本発明の目的を妨げないものであれば、天然油脂として、蒸熱、圧搾、脱酸などの油脂の精製工程で得られる精製油や回収油などであって、かつその水酸基価が50以下である油脂を用いてもよい。
【0013】
前記天然油脂の水酸基価は、活性水素基を有する化合物と併用することでポリウレタン組成物の製造効率およびポリウレタン組成物の品質向上効果を発揮させる観点から、50以下であり、好ましくは、40以下である。
【0014】
前記少なくとも1個の活性水素基を有する化合物は、具体的には、2個もしくは3個の活性水素基を有するアミン化合物、水、または1〜10個の活性水素基を有するアルコールである。
【0015】
2個または3個の活性水素基を有するアミン化合物としては、特に限定されないが、エタノールアミン化合物;イソプロパノールアミン化合物;ブタノールアミン化合物;2個または3個の活性水素基を有し、かつ炭素数1〜3のアルキルアミン化合物;オキシアルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0016】
前記エタノールアミン化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。前記エタノールアミン化合物は、アンモニアとエチレンオキサイドとを反応させることにより得られうる。
【0017】
前記イソプロパノールアミン化合物としては、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが挙げられる。前記イソプロパノールアミン化合物は、アンモニアとプロピレンオキサイドとを反応させることにより得られうる。
【0018】
前記ブタノールアミン化合物としては、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミンなどが挙げられる。前記ブタノールアミン化合物は、アンモニアとブチレンオキサイドとを反応させることにより得られうる。
【0019】
前記2個または3個の活性水素基を有し、かつ炭素数1〜3のアルキルアミンとしては、特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、オクチルアミン、ヤシ脂肪アミン、牛脂アミンなどが挙げられる。
【0020】
前記1〜10個の活性水素基を有するアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコールなどの1個の活性水素基を有するアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオールなどのジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトール,テトラメチロールシクロヘキサン,メチルグルコシドなどのテトラオール類;2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシルメチル)シクロヘキサノールなどのペンタノール類;ソルビトール,マンニトール,ズルシトールなどのヘキサノール類;スークロースなどのオクタノール類;グリセリンモノアルキルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル;モノグリセリンエステルなどの多価アルコールなどが挙げられる。
【0021】
前記炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。かかるアルキレンオキサイドは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
前記天然油脂へのオキシアルキレン基の付加量は、より良好な成形性を有するポリウレタン組成物を得る観点から、天然油脂1モルに対して、アルキレンオキサイドのモル数に換算して、好ましくは、1モル以上、より好ましくは、3モル以上であり、天然油脂を有効に利用する観点から、好ましくは、200モル以下、より好ましくは、160モル以下であることが望ましい。
【0023】
前記反応生成物の製造に際し、少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と天然油脂との混合割合は、その後、天然油脂へのアルキレンオキサイドの付加反応を良好に行なう観点から、少なくとも1個の活性水素基を有する化合物/天然油脂(モル比)として、好ましくは、0.01/1以上、より好ましくは、0.005/1以上であり、天然油脂を有効に利用する観点から、好ましくは、10/1以下、より好ましくは、7/1以下であることが望ましい。
【0024】
前記天然油脂と、前記少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と、前記炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとの反応に際して、反応温度は、アルキレンオキサイドの付加反応およびエステル交換反応が速やかに起こる温度であればよい。前記反応温度は、前記天然油脂と、前記少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と、前記炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとの反応を速やかに進行させる温度の観点から、好ましくは、120℃〜180℃であることが望ましい。
【0025】
また、前記天然油脂と、前記少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と、前記炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとの反応には、通常、アルキレンオキサイドの付加反応に使用されるアルカリ性物質、アルカリ金属の水酸化物、該アルカリ金属の炭酸塩、該アルカリ金属の有機酸塩などの触媒が用いられうる。前記触媒としては、具体的には、特に限定されないが、例えば、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、乳酸カリウムなどが挙げられる。前記触媒の量は、アルキレンオキサイドの反応性を高める観点から、好ましくは、反応生成物の全量中0.01〜0.3質量%となる量を使用することが望ましい。
【0026】
前記天然油脂と、前記少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と、前記炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとの反応に際する圧力は、1MPa以下であることが望ましい。
【0027】
前記反応生成物の水酸基価は、十分な機械強度を有するポリウレタン組成物を得る観点から、好ましくは、20以上であり、十分な機械強度を有するポリウレタン組成物を得、かつ天然油脂を有効に利用する観点から、800以下、より好ましくは、350以下であることが望ましい。
【0028】
ポリオール組成物(A)は、前記反応生成物に加えて、該反応生成物に由来するポリオール以外のポリオール〔以下、「ポリオール(c)」ともいう〕がさらに配合されたものである場合、良好な成形性を有するポリウレタン組成物を得る観点から、反応生成物/ポリオール(c)〔質量比〕が、好ましくは、10/90以上、より好ましくは、15/85以上、さらに好ましくは、20/80であることが望ましい。
【0029】
本明細書において、前記ポリオール(c)とは、前記天然油脂を原料として得られる該天然油脂由来のポリオール以外のものをいう。前記ポリオール(c)は、好ましくは、平均官能基数2.0〜6.0かつ水酸基価20〜800のポリオールであることが望ましい。前記ポリオールの平均官能基数は、圧縮残留歪を低減させる観点から、好ましくは、2.0以上、より好ましくは、3.0以上であり、良好な伸びを示すポリウレタン組成物を得る観点から、好ましくは、6.0以下、より好ましくは、5.0以下であることが望ましい。また、前記ポリオールの水酸基価は、十分な機械強度のポリウレタン組成物を得る観点から、20以上であり、良好な反発弾性を有するポリウレタン組成物を得る観点から、800以下、より好ましくは、500以下であることが望ましい。
【0030】
なお、本発明において、前記ポリオール(c)が混合物であるときは、「平均官能基数2.0〜6.0かつ水酸基価20〜800のポリオール」の概念には、該混合物中のポリオール全てが、それぞれ、平均官能基数2.0〜6.0かつ水酸基価20〜800のポリオールである場合だけでなく、該混合物中に平均官能基数2.0〜6.0かつ水酸基価20〜800の範囲外のポリオールが含まれていても、該混合物に含まれるポリオール全体の平均として、平均官能基数2.0〜6.0かつ水酸基価20〜800を満たす場合を含む。
【0031】
前記ポリオール(c)としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、これらのコポリオール、これらの任意の2種以上の混合物などが挙げられる。本発明においては、低コストで、良好な物性を有するポリウレタン組成物を得る観点から、前記ポリオールのなかでは、ポリエーテルポリオールまたはポリマーポリオールが好ましい。
【0032】
前記ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸などのポリカルボン酸、該ポリカルボン酸の酸エステル、該ポリカルボン酸の酸無水物などの少なくとも1種と、
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAなどへのオキシエチレン基またはオキシプロピレン基の付加により得られた化合物(エチレンオキサイド付加物またはプロピレンオキサイド付加物);トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの低分子アルコール化合物;ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミンなどの低分子アミン化合物;および、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの低分子アミノアルコール化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種と、
の脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール;または当該脱水縮合反応で得られるポリエステルアミドポリオール;低分子アルコール化合物、低分子アミノアルコール化合物などを開始剤として用いて、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0033】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、前記低分子アルコール化合物とホスゲンとの脱塩酸反応、または前記低分子アルコール化合物とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどとのエステル交換反応で得られる化合物などが挙げられる。
【0034】
前記ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、前記低分子アルコール化合物、前記低分子アミン化合物、前記低分子アミノアルコール化合物、フェノール化合物などを開始剤として用い、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド、テトラヒドロフランなどを開環重合させて得られる化合物、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールなど;前記ポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオールを開始剤として用いて得られるポリエステルエーテルポリオールなどが挙げられる。前記ポリエーテルポリオールのなかでは、反応性が良好で、成型性が良好なポリウレタン組成物を得る観点から、好ましくは、アルキレンオキサイドとして、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドまたはブチレンオキサイドを用いて得られるポリエステルエーテルポリオールが望ましい。なお、アルキレンオキサイドを用いて得られる前記ポリエーテルポリオール中におけるオキシアルキレン基の付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、および該ランダム付加とブロック付加との組み合わせのいずれの付加形態であってもよい。
【0035】
前記ポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオール〔例えば、ポリオキシプロピレントリオールなど〕中でエチレン性不飽和モノマーを重合させる方法、別途製造したポリスチレン、ポリアクリロニトリルなどの重合体の微粒子をポリエーテルポリオールに混合する方法、エチレン性不飽和基を有するマクロモノマーとエチレン性不飽和モノマーとをポリエーテルポリオール中で重合させる方法などにより製造されうる。前記エチレン性不飽和モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。前記ポリマーポリオールのなかでは、好ましくは、ポリエーテルポリオール中でエチレン性不飽和モノマーを重合させて得られたポリマーポリオール、より好ましくは、ポリオキシプロピレントリオール中でエチレン性不飽和モノマーを重合させて得られたポリマーポリオールが望ましい。前記ポリマーポリオール中における前記重合体の微粒子の含有量は、ポリウレタン組成物の成型時における良好な作業性を得る観点から、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下が望ましい。
【0036】
また、前記ポリオール組成物(A)は、低粘度で成型性良好なポリウレタン組成物が得られる観点から、水酸基価が50以下である天然油脂と少なくとも1個の活性水素基を有する化合物との混合物と炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを反応させて得られた反応生成物と、
少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを反応させて得られた反応生成物と
を含有したポリオール組成物が好ましい。
【0037】
前記イソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ポリメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。また、本発明においては、本発明の目的を妨げないものであれば、前記イソシアネート化合物に代えて、該イソシアネート化合物の変性物を用いてもよい。前記イソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールなどでイソシアネート化合物を変性させて得られた変性物、例えば、プレポリマー変性物、二量化変性物、三量化変性物、ウレア変性物、カルボジイミド変性物などが挙げられる。本発明のポリウレタン組成物の製造方法においては、前記イソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記イソシアネート化合物のなかでも、良好な成形性を有するポリウレタン組成物を得る発揮させる観点から、好ましくは、トルエンジイソシアネート単独、ジフェニルメタンジイソシアネート単独、および該トルエンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートとの組み合わせが望ましい。また、良好な成形性および良好な反発弾性を有するポリウレタン組成物を得る観点から、前記イソシアネート化合物は、好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネートをポリエーテルポリオールで変性させて得られたイソシアネート化合物が望ましい。
【0038】
前記イソシアネート成分の配合量は、イソシアネートインデックスとして、少なくとも90となる量であればよく、得られるポリウレタン組成物の湿熱永久歪をより小さくする観点から、好ましくは、90以上となる量であり、良好な反発弾性を有するポリウレタン組成物を得る観点から、好ましくは、150以下となる量、より好ましくは、120以下となる量であることが望ましい。
【0039】
本発明のポリウレタン組成物の製造方法においては、該ポリウレタン組成物が、発泡性ポリウレタン組成物、すなわち、ポリウレタンフォームである場合には、該発泡性ポリウレタン組成物は、スラブ法、ワンショット法、セミプレマー法、プレポリマー法などにより形成されうる。
【0040】
本発明のポリウレタン組成物の製造方法において、発泡性ポリウレタン組成物、すなわち、ポリウレタンフォームを製造する場合、発泡剤として、水、水素原子含有炭化水素、塩化メチレン、低沸点炭化水素、液化炭酸ガスなどを、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記水素原子含有ハロゲン化炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、ハイドロフルオロカーボン化合物(HFC)などが挙げられる。前記ハイドロフルオロカーボン化合物としては、特に限定されないが、例えば、HFC134a、HFC152a、HFC356mff、HFC236ea、HFC245ca、HFC365mfcなどが挙げられる。また、本明細書において、前記「低沸点炭化水素」とは、1.013×105Paの条件下における沸点が−5〜70℃の炭化水素をいう。前記低沸点炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、これらの混合物などが挙げられる。前記発泡剤のなかでも、環境への負荷を抑制する観点から、好ましくは、水が望ましい。
【0041】
本発明のポリウレタン組成物の製造方法においては、より良好な成型性を得、良好な物性のポリウレタン組成物を迅速に得る観点から、好ましくは、前記(A)のポリオール組成物と、前記(B)のイソシアネート化合物とに加え、必要に応じて、触媒、架橋剤などをさらに用いてもよい。また、前記ポリウレタン組成物が、発泡性のポリウレタン組成物、すなわち、ポリウレタンフォームである場合、本発明のポリウレタン組成物の製造方法では、整泡剤をさらに用いてもよい。
【0042】
前記触媒としては、ポリウレタン組成物の製造に通常使用される触媒、例えば、3級アミン、ジアザビシクロアルケン化合物およびこれらの塩、有機金属化合物などが挙げられる。前記3級アミンとしては、特に限定されないが、例えば、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−ジメチルイミダゾールなどが挙げられる。前記3級アミンは、単独で用いてもよく、2種以上を混合し用いてもよい。また、前記有機金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛、錫、鉛、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉄などの金属とオクテン酸、ナフテン酸などの有機酸との金属塩;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトン亜鉛などの金属キレート化合物などが挙げられる。前記有機金属化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記触媒のなかでは、環境への負荷を抑制する観点から、好ましくは、3級アミンが望ましい。なお、前記触媒の添加量は、適宜調整されうる。
【0043】
前記整泡剤としては、通常ポリウレタンフォームの製造に使用される整泡剤、例えば、ポリアルキルシロキサン−ポリオキシアルキレンブロックコポリマーなどが挙げられる。前記整泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記整泡剤の使用量は、ポリオール組成物100質量部に対して、効果的に製泡効果を得る観点から、5.0質量部以下、好ましくは、3.0質量部以下であることが望ましい。
【0044】
前記架橋剤としては、好ましくは、前記低分子アルコール化合物、前記低分子アミン化合物、前記低分子アミノアルコール化合物などの、数平均分子量500未満の低分子活性水素化合物などが挙げられる。前記架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記架橋剤の使用量は、圧縮永久歪を低減させる観点から、ポリオール組成物100質量部に対して、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下であることが望ましい。なお、かかる数平均分子量は、JIS K 0124に準拠して測定した値である。
【0045】
本発明のポリウレタン組成物の製造方法では、前記発泡剤、触媒、整泡剤、架橋剤以外に、所望の添加剤を用いてもよい。前記添加剤としては、炭酸カリウム、硫酸バリウムなどの充填剤;乳化剤、フォーム安定化剤などの界面活性剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤などの老化防止剤;難燃剤、着色剤、抗カビ剤、消臭剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤、可塑剤、溶剤、造膜助剤、分散剤、香料などが挙げられる。
【0046】
本発明のポリウレタン組成物の製造方法は、具体的には、1つの実施態様では、
(I)水酸基価が50以下である天然油脂と、少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを反応させて、ポリオール組成物(A1)を得る工程、および
(II)前記工程(I)で得られたポリオール組成物(A1)とイソシアネート化合物(B)とを反応させて、ポリウレタン組成物を得る工程、
を含む方法である。また、前記ポリオール組成物(A1)には、さらに他のポリオールが配合されていてもよい。すなわち、本発明のポリウレタン組成物の製造方法の他の実施態様は、
前記工程(I)の後に、
(I’)前記工程(I)で得られたポリオール組成物(A1)にポリオールをさらに混合して、ポリオール組成物(A2)を得る工程、および
(II’)前記工程(I’)で得られたポリオール組成物(A2)とイソシアネート化合物とを反応させて、ポリウレタン組成物を得る工程、
を含む方法である。
【0047】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
(製造例1)
0.01m3容のオートクレーブに、大豆油 870g(1.0モル、和研薬株式会社製、商品名:大豆油)と、オキシアルキルアミン化合物〔トリエタノールアミン〕 75g(0.5モル)に48質量% 水酸化カリウム水溶液 25gを溶解させた溶液とを添加した。その後、得られた産物を、攪拌速度:450rpmで混合しながら、140℃まで昇温させた。さらに、得られた混合物に、アルキレンオキサイド〔プロピレンオキサイド〕 1980g(35モル)を添加した。ついで、得られた混合物を、温度:125〜140℃で、圧力:3.43×10-1MPaで3時間、付加反応を行なった。付加反応終了後、産物を、80℃に冷却し、塩酸にてpH6に調整した。得られた産物を、脱塩精製し、反応生成物(a−1)を得た。反応生成物(a−1)の収率は、98.0%であった。
【0049】
天然油脂の種類、オキシアルキルアミン化合物の種類および量、アルキレンオキサイドの種類、量および付加形態を変えたことを除き、前記反応生成物(a−1)と同様の方法で、反応生成物(a−2)〜(a−13)を得た。
【0050】
なお、アルキレンオキサイドをブロック付加させたものである反応生成物(a−12)の製造に際しては、大豆油とトリエタノールアミンとから得られた産物と、エチレンオキサイド1100g(25モル)とを、温度:125〜140℃、圧力:1.90133×10-1MPaで反応させた。その後、得られた産物に、プロピレンオキサイド870g(15モル)を添加し、温度:125〜140℃で、圧力:3.43×10-1MPaで3時間、該産物とプロピレンオキサイドとを反応させた。
【0051】
他のアルキレンオキサイドをランダム付加させる場合、天然油脂、オキシアルキルアミン化合物および水酸化カリウム水溶液を加熱し、混合し、その後、得られた産物に、アルキレンオキサイドの混合物(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの混合物、またはエチレンオキサイドとブチレンオキサイドとの混合物)を添加して、反応生成物を得た。
【0052】
得られた反応生成物(a−1)〜(a−16)の水酸基価を、JIS K 1557に準じて、測定した。
【0053】
天然油脂、オキシアルキルアミン化合物、アルキレンオキサイドの種類、量および付加形態、ならびに反応生成物(a−1)〜(a−16)それぞれの水酸基価を、表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
(比較例1)
トリエタノールアミンを用いないことを除き、反応生成物(a−1)の製造と同じ条件で、ポリオールの製造を試みた。しかしながら、同条件でエチレンオキサイドを少量反応機内に導入してみたが、20時間たっても反応圧が変わらず、エチレンオキサイドを付加反応させることはできなかった。
【0056】
(実施例1〜17および比較例2〜4)
表2に示される質量比となるように、前記製造例で得られた各反応生成物と、ポリオールとを混合し、ポリオール組成物を得た。さらに、表2に示される質量比となるように、前記ポリオール組成物と、水と、触媒と、整泡剤とを混合し、プレミックスを得た。前記プレミックスの粘度を、JIS K 7117に準拠して、BL型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて測定した。
【0057】
ついで、得られたプレミックスに、表2に示されるイソシアネートインデックスとなるように、イソシアネート化合物〔第一工業製薬株式会社製、商品名:DKシステムB−73E、遊離NCO:29.0%、ジフェニルメタンジイソシアネートに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールを反応させて得たジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネート〕をさらに混合し、ポリオール−イソシアネート混合物を得た。得られたポリオール−イソシアネート混合物を、金型温度:55℃、金型形状:325×155×50cm、ミキシング方法:ハンドミキシング、原料温度:22±1℃の発泡(モールド発泡)条件下で発泡させ、ポリウレタンフォーム(実施例1〜20)を形成させた。一方、前記ポリオール−イソシアネート混合物を、ミキシング方法:ハンドミキシング、原料温度:22±1℃の発泡(フリー発泡)条件下に発泡させ、ポリウレタンフォーム(実施例1〜20)を形成させた。
【0058】
また、表2に示される質量比となるように、天然油脂とポリオールと水と触媒と整泡剤とを混合し、プレミックスを得た。前記プレミックスの粘度を、前記と同様に測定した。ついで、得られた混合物に、表2に示されるイソシアネートインデックスとなるように、イソシアネート化合物をさらに混合した。ついで、前記実施例1〜20と同様の手法で、ポリウレタンフォーム(比較例2〜4)を形成させた。
【0059】
ポリウレタンフォームの形成をフリー発泡により行なう際に、反応速度(クリームタイム、ゲルタイム、ライズタイム)を測定した。なお、クリームタイムは、発泡が始まる時間、ゲルタイムは、糸引きが終わる時間、ライズタイムは、発泡が終了する時間とした。
【0060】
また、モールド発泡により形成させたポリウレタンフォームを、20℃で24時間放置後、得られたポリウレタンフォームについて、オーバーオール密度、25%ILD硬度、反発弾性および成型性を評価した。なお、ポリウレタンフォームの密度の測定は、JIS K 7222に準じて行なった。また、ポリウレタンフォームの25%ILD硬度の測定は、JIS K 6400−2に準じて、インストロン ジャパン カンパニィ リミティッド製 5581型を用いて行なった。さらに、ポリウレタンフォームの反発弾性の測定は、JIS K 6400−3に準じて行なった。ポリウレタンフォームの成型性は、コラップスの発生の有無、モールドからの表面スキンの剥がれの有無、ボイドの有無を指標として評価した。結果を表2に示す。
【0061】
なお、表2に示される各成分の詳細は、以下の通りである。
【0062】
〔ポリオール〕
・ ポリオール(c−1)〔第一工業製薬株式会社製、商品名:DKSプロピラン353、官能基数:3.0、水酸基価:34、末端にエチレンオキサイドチップポリオール〕
・ ポリオール(c−2)〔第一工業製薬株式会社製、商品名:ハイフレックス445、官能基数:3.0、水酸基価:34、末端にエチレンオキサイドチップポリオール〕
・ ポリオール(c−3)〔第一工業製薬株式会社製、商品名:ハイフレックスND825C、平均官能基数:3.0、水酸基価:28、グリセリンにオキシプロピレン基を付加重合させ、更にスチレンモノマーを重合させて得られたポリオール〕
【0063】
〔触媒〕
・ 触媒a〔第一工業製薬株式会社製、商品名:プロパミンA、ジメチルエタノールアミン〕
・ 触媒b〔東ソー株式会社製、商品名:TEDA L−33、トリエチレンジアミンの33質量% ジプロピレングリコール溶液〕
【0064】
〔整泡剤〕
整泡剤〔東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:SZ−1313〕、シリコーン系整泡剤〕
【0065】
〔イソシアネート化合物〕
・ イソシアネート化合物〔第一工業製薬株式会社製、商品名:DKシステムB−73E、遊離NCO:29.0%、ジフェニルメタンジイソシアネートに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールを反応させて得たジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネート〕
【0066】
〔天然油脂〕
・ 天然油脂(b−2)(和光純薬株式会社製、大豆油)
【0067】
【表2】

【0068】
その結果、表2に示されるように、前記製造例1で得られた反応生成物を用いた実施例1〜20では、いずれも成型性の良好なポリウレタンフォームを得ることができた。また、前記製造例1で得られた反応生成物の反応性も、石油系ポリオールの反応性と同等であり、石油系ポリオールの代替物として用いることができることがわかる。さらに、前記製造例1で得られた反応生成物の種類および量を変えることで、種々の所望の物性のポリウレタンフォームが得られることがわかる。
【0069】
一方、アルキレンオキサイドを付加していない天然油脂のみを用いた比較例2および3では、反応性が著しく低く、発泡中にフォームが崩壊(コラップス)してしまい、ポリウレタンフォームを得ることはできなかった。
【0070】
また、実施例1〜20の結果と、比較例4の結果から、前記製造例1で得られた反応生成物を用いることにより、石油系ポリオールのみを用いた場合と比べて、プレミックス(反応生成物および/またはポリオールと、水と、触媒と、整泡剤との混合物)の粘度を下げることができることがわかる。かかる粘度は、前記製造例1で得られた反応生成物の使用量をさらに高めることにより、大きく低減させることができることがわかる。
【0071】
(製造例2)
0.01m3容のオートクレーブに、大豆油 870g(1.0モル、和研薬株式会社製、商品名:大豆油)と、水 9g(0.5モル)に48質量% 水酸化カリウム水溶液 25gを溶解させた溶液とを入れた。その後、得られた産物を、攪拌速度:450rpmで混合しながら、140℃まで昇温させた。さらに、得られた混合物に、アルキレンオキサイド〔プロピレンオキサイド〕 1980g(35モル)を添加した。ついで、得られた混合物を、温度:125〜140℃で、圧力:3.43×10-1MPaの条件下に維持して、付加反応を行なった。付加反応終了後、産物を、80℃に冷却し、塩酸にてpH6に調整した。得られた産物を、脱塩精製し、反応生成物(a−17)を得た。反応生成物(a−17)の収率は、98.0%であった。
【0072】
天然油脂の種類、水の量、アルキレンオキサイドの種類、量および付加形態を変えたことを除き、前記反応生成物(a−17)と同様の方法で、反応生成物(a−18)〜(a−28)を得た。
【0073】
なお、アルキレンオキサイドをブロック付加させたものである反応生成物(a−24)の製造に際しては、大豆油と水とから得られた産物と、エチレンオキサイド 885g(20モル)とを、温度:125〜140℃、圧力:1.90133×10-1MPaで反応させた。その後、得られた産物に、プロピレンオキサイド 1120g(19モル)を添加し、温度:125〜140℃で、圧力:3.43×10-1MPaで3時間、該産物とプロピレンオキサイドとを反応させた。
【0074】
他のアルキレンオキサイドをランダム付加させる場合、天然油脂、オキシアルキルアミン化合物および水酸化カリウム水溶液を加熱し、混合し、その後、得られた産物に、アルキレンオキサイドの混合物(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの混合物、またはエチレンオキサイドとブチレンオキサイドとの混合物)を添加して、反応生成物を得た。
【0075】
得られた反応生成物(a−17)〜(a−28)の水酸基価を、JIS K 1557に準じて、測定した。
【0076】
天然油脂、オキシアルキルアミン化合物、アルキレンオキサイドの種類、量および付加形態、ならびに反応生成物(a−17)〜(a−28)それぞれの水酸基価を、表3に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
(比較例5)
水を用いないことを除き、反応生成物(a−17)の製造と同じ条件で、ポリオールの製造を試みた。しかしながら、前記と同じ条件で、少量のエチレンオキサイドを反応機内に導入した結果、20時間経過しても反応圧が変わらず、エチレンオキサイドを付加させることができなかった。
【0079】
(実施例21〜40および比較例6〜8)
表4に示される質量比となるように、前記製造例で得られた各反応生成物と、ポリオールとを混合し、ポリオール組成物を得た。さらに、表4に示される質量比となるように、前記ポリオール組成物と、水と、触媒と、整泡剤とを混合し、プレミックスを得た。前記プレミックスの粘度を、JIS K 7117に準拠して、BL型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて測定した。
【0080】
ついで、得られたプレミックスに、表4に示されるイソシアネートインデックスとなるように、イソシアネート化合物〔第一工業製薬株式会社製、商品名:DKシステムB−73E、遊離NCO:29.0%、ジフェニルメタンジイソシアネートに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールを反応させて得たジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネート〕をさらに混合し、ポリオール−イソシアネート混合物を得た。得られたポリオール−イソシアネート混合物を、金型温度:55℃、金型形状:325×155×50cm、ミキシング方法:ハンドミキシング、原料温度:22±1℃の発泡(モールド発泡)条件下で発泡させ、ポリウレタンフォーム(実施例21〜40)を形成させた。一方、前記ポリオール−イソシアネート混合物を、ミキシング方法:ハンドミキシング、原料温度:22±1℃の発泡(フリー発泡)条件下に発泡させ、ポリウレタンフォーム(実施例21〜40)を形成させた。
【0081】
また、表4に示される質量比となるように、天然油脂とポリオールと水と触媒と整泡剤とを混合し、プレミックスを得た。前記プレミックスの粘度を、前記と同様に測定した。ついで、得られた混合物に、表4に示されるイソシアネートインデックスとなるように、イソシアネート化合物をさらに混合した。ついで、前記実施例21〜40と同様の手法で、ポリウレタンフォーム(比較例6〜8)を形成させた。
【0082】
ポリウレタンフォームの形成の反応速度(クリームタイム、ゲルタイム、ライズタイム)bの評価、ならびにオーバーオール密度、25%ILD硬度、反発弾性および成型性の評価は、前記実施例1〜20および前記比較例2〜4と同様の手法により行なった。結果を表4に示す。
【0083】
なお、表4に示されるポリオール(c−1)、ポリオール(c−2)、ポリオール(c−3)、触媒a、触媒b、イソシアネート化合物、および天然油脂(b−2)(和光純薬株式会社製、大豆油)は、前記表2の場合と同様である。
【0084】
【表4】

【0085】
その結果、表4に示されるように、前記製造例2で得られた反応生成物を用いた実施例21〜40では、いずれも成型性の良好なポリウレタンフォームを得ることができた。また、前記製造例2で得られた反応生成物の反応性も、石油系ポリオールの反応性と同等であり、石油系ポリオールの代替物として用いることができることがわかる。さらに、前記製造例2で得られた反応生成物の種類および量を変えることで、種々の所望の物性のポリウレタンフォームが得られることがわかる。
【0086】
一方、アルキレンオキサイドを付加していない天然油脂のみを用いた比較例6および7では、反応性が著しく低く、発泡中にフォームが崩壊(コラップス発生)してしまい、ポリウレタンフォームを得ることはできなかった。
【0087】
また、実施例21〜40の結果と、比較例8の結果から、前記製造例2で得られた反応生成物を用いることにより、石油系ポリオールのみを用いた場合と比べて、プレミックス(反応生成物および/またはポリオールと、水と、触媒と、整泡剤との混合物)の粘度を下げることができることがわかる。かかる粘度は、前記製造例2で得られた反応生成物の使用量をさらに高めることにより、大きく低減させることができることがわかる。
【0088】
(製造例3)
0.01m3容のオートクレーブに、大豆油 870g(1.0モル、和研薬株式会社製、商品名:大豆油)と、グリセリン 46g(0.5モル)に48質量% 水酸化カリウム水溶液 25gを溶解させた溶液とを入れた。その後、得られた産物を、攪拌速度:450rpmで混合しながら、140℃まで昇温させた。さらに、得られた混合物に、アルキレンオキサイド〔プロピレンオキサイド〕 1980g(35モル)を添加した。ついで、得られた混合物を、温度:125〜140℃で、圧力:3.43×10-1MPaの条件下に維持して、付加反応を行なった。付加反応終了後、産物を、80℃に冷却し、塩酸にてpH6に調整した。得られた産物を、脱塩精製し、反応生成物(a−29)を得た。反応生成物(a−29)の収率は、98.0%であった。
【0089】
天然油脂の種類、水の量、アルキレンオキサイドの種類、量および付加形態を変えたことを除き、前記反応生成物(a−29)と同様の方法で、反応生成物(a−30)〜(a−46)を得た。
【0090】
なお、アルキレンオキサイドをブロック付加させたものである反応生成物(a−40)の製造に際しては、大豆油と水とから得られた産物と、エチレンオキサイド 885g(20モル)とを、温度:125〜140℃、圧力:1.90133×10-1MPaで反応させた。その後、得られた産物に、プロピレンオキサイド 1120g(19モル)を添加し、温度:125〜140℃で、圧力:3.43×10-1MPaで3時間、該産物とプロピレンオキサイドとを反応させた。
【0091】
他のアルキレンオキサイドをランダム付加させる場合、天然油脂、オキシアルキルアミン化合物および水酸化カリウム水溶液を加熱し、混合し、その後、得られた産物に、アルキレンオキサイドの混合物(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの混合物、またはエチレンオキサイドとブチレンオキサイドとの混合物)を添加して、反応生成物を得た。
【0092】
得られた反応生成物(a−29)〜(a−46)の水酸基価を、JIS K 1557に準じて、測定した。
【0093】
天然油脂、オキシアルキルアミン化合物、アルキレンオキサイドの種類、量および付加形態、ならびに反応生成物(a−29)〜(a−46)それぞれの水酸基価を、表5に示す。
【0094】
【表5】

【0095】
(比較例9)
アルコールを用いないことを除き、反応生成物(a−29)の製造と同じ条件で、ポリオールの製造を試みた。しかしながら、前記と同じ条件で、少量のエチレンオキサイドを反応機内に導入した結果、20時間経過しても反応圧が変わらず、エチレンオキサイドを付加させることができなかった。
【0096】
(実施例41〜65および比較例10〜13)
表6に示される質量比となるように、前記製造例で得られた各反応生成物と、ポリオールとを混合し、ポリオール組成物を得た。さらに、表6に示される質量比となるように、前記ポリオール組成物と、水と、触媒と、整泡剤とを混合し、プレミックスを得た。前記プレミックスの粘度を、JIS K 7117に準拠して、BL型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて測定した。
【0097】
ついで、得られたプレミックスに、表6に示されるイソシアネートインデックスとなるように、イソシアネート化合物〔第一工業製薬株式会社製、商品名:DKシステムB−73E、遊離NCO:29.0%、ジフェニルメタンジイソシアネートに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールを反応させて得たジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネート〕をさらに混合し、ポリオール−イソシアネート混合物を得た。得られたポリオール−イソシアネート混合物を、金型温度:55℃、金型形状:325×155×50cm、ミキシング方法:ハンドミキシング、原料温度:22±1℃の発泡(モールド発泡)条件下で発泡させ、ポリウレタンフォーム(実施例41〜65)を形成させた。一方、前記ポリオール−イソシアネート混合物を、ミキシング方法:ハンドミキシング、原料温度:22±1℃の発泡(フリー発泡)条件下に発泡させ、ポリウレタンフォーム(実施例41〜65)を形成させた。
【0098】
また、表6に示される質量比となるように、天然油脂とポリオールと水と触媒と整泡剤とを混合し、プレミックスを得た。前記プレミックスの粘度を、前記と同様に測定した。ついで、得られた混合物に、表6に示されるイソシアネートインデックスとなるように、イソシアネート化合物をさらに混合した。ついで、前記実施例21〜65と同様の手法で、ポリウレタンフォーム(比較例10〜13)を形成させた。
【0099】
ポリウレタンフォームの形成の反応速度(クリームタイム、ゲルタイム、ライズタイム)bの評価、ならびにオーバーオール密度、25%ILD硬度、反発弾性および成型性の評価は、前記実施例1〜20および前記比較例2〜4と同様の手法により行なった。結果を表6に示す。
【0100】
なお、表6に示されるポリオール(c−1)、ポリオール(c−2)、ポリオール(c−3)、触媒a、触媒b、イソシアネート化合物、および天然油脂(b−2)(和光純薬株式会社製、大豆油)は、前記表2の場合と同様である。
【0101】
【表6】

【0102】
その結果、表6に示されるように、前記製造例3で得られた反応生成物を用いた実施例41〜65では、いずれも成型性の良好なポリウレタンフォームを得ることができた。また、前記製造例3で得られた反応生成物の反応性も、石油系ポリオールの反応性と同等であり、石油系ポリオールの代替物として用いることができることがわかる。さらに、前記製造例3で得られた反応生成物の種類および量を変えることで、種々の所望の物性のポリウレタンフォームが得られることがわかる。
【0103】
一方、アルキレンオキサイドを付加していない天然油脂のみを用いた比較例10および11では、反応性が著しく低く、発泡中にフォームが崩壊(コラップス発生)してしまい、ポリウレタンフォームを得ることはできなかった。
【0104】
また、実施例41〜60の結果と、比較例12の結果から、前記製造例3で得られた反応生成物を用いることにより、石油系ポリオールのみを用いた場合と比べて、プレミックス(反応生成物および/またはポリオールと、水と、触媒と、整泡剤との混合物)の粘度を下げることができることがわかる。かかる粘度は、前記製造例3で得られた反応生成物の使用量をさらに高めることにより、大きく低減させることができることがわかる。
【0105】
さらに、比較例13に示されるように、水酸基価の高いヒマシ油を用いた場合、プレミックスの粘度が高くなり、混合不良により、ボイドが発生し、成型性不良となることがわかる。
【0106】
(実施例66〜68)
表7に示される質量比となるように、前記製造例1で得られた反応生成物(a−1)、製造例2で得られた反応生成物(a−17)または製造例3で得られた反応生成物(a−29)と、ポリオールとを混合し、ポリオール組成物を得た。さらに、表7に示される質量比となるように、前記ポリオール組成物と、水と、触媒と、整泡剤とを混合し、プレミックスを得た。前記プレミックスの粘度を、JIS K 7117に準拠して、BL型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて測定した。
【0107】
ついで、得られたプレミックスに、表7に示されるイソシアネートインデックスとなるように、イソシアネート化合物〔第一工業製薬株式会社製、商品名:DKシステムB−73E、遊離NCO:29.0%、ジフェニルメタンジイソシアネートに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールを反応させて得たジフェニルメタンジイソシアネート系イソシアネート〕をさらに混合し、ポリオール−イソシアネート混合物を得た。得られたポリオール−イソシアネート混合物を、金型温度:55℃、金型形状:325×155×50cm、ミキシング方法:ハンドミキシング、原料温度:22±1℃の発泡(モールド発泡)条件下で発泡させ、ポリウレタンフォーム(実施例66〜68)を形成させた。一方、前記ポリオール−イソシアネート混合物を、ミキシング方法:ハンドミキシング、原料温度:22±1℃の発泡(フリー発泡)条件下に発泡させ、ポリウレタンフォーム(実施例66〜68)を形成させた。
【0108】
ポリウレタンフォームの形成の反応速度(クリームタイム、ゲルタイム、ライズタイム)の評価、ならびにオーバーオール密度、25%ILD硬度、反発弾性および成型性の評価は、前記実施例1〜20および前記比較例2〜4と同様の手法により行なった。結果を表7に示す。
【0109】
なお、表7に示されるポリオール(c−1)、ポリオール(c−2)、ポリオール(c−3)、触媒a、触媒b、イソシアネート化合物、および天然油脂(b−2)(和光純薬株式会社製、大豆油)は、前記表2の場合と同様である。
【0110】
【表7】

【0111】
その結果、製造例1、2および3それぞれで得られた反応生成物を用いた実施例66〜68では、いずれも成型性の良好なポリウレタンフォームを得ることができた。また、前記製造例で得られた反応生成物の種類および量を変えることで、種々の所望の物性のポリウレタンフォームが得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、優れた成型性、反発弾性などの性質を有するポリウレタン組成物を簡便な操作で得ることができる。本発明のポリウレタン組成物の製造方法により得られたポリウレタンフォームは、通常ポリウレタンフォームが使用される用途、例えば、家具、自動車用シート、ヘッドレストなどの用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水酸基価が50以下である天然油脂と、少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを反応させて得られた反応生成物を含有したポリオール組成物と、
(B)イソシアネート化合物と、
を反応させることを特徴とする、ポリウレタン組成物の製造方法。
【請求項2】
該ポリオール組成物が、水酸基価が50以下である天然油脂と少なくとも1個の活性水素基を有する化合物との混合物と炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを反応させて得られた反応生成物と、
少なくとも1個の活性水素基を有する化合物と炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを反応させて得られた反応生成物と
を含有したポリオール組成物である、請求項1記載のポリウレタン組成物の製造方法。
【請求項3】
該少なくとも1個の活性水素基を有する化合物が、2個もしくは3個の活性水素基を有するアミン化合物、水、または1〜10個の活性水素基を有するアルコールである、請求項1または2記載のポリウレタン組成物の製造方法。
【請求項4】
該ポリオール組成物中における反応生成物の含有量が、少なくとも10質量%である、請求項1〜3いずれか1項に記載のポリウレタン組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−214364(P2008−214364A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49167(P2007−49167)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】