説明

ポリウレタン複合顔料粒子とその製造方法

【課題】塗料、インキ、粒子コーティング剤、高分子改質剤及び化粧料配合顔料粒子等に用いられる容易な方法で凝集のないポリウレタン複合顔料粒子とその製造方法を提供する。
【解決手段】顔料粒子を溶媒に分散させた分散液中においてポリウレタンを重合させることにより、ポリウレタンと顔料粒子とを複合させてなるポリウレタン複合顔料粒子を得る。従って、環境に大きな負荷を与えない方法で、凝集のないポリウレタン複合顔料粒子を得ることができる。こうして得られたポリウレタン複合顔料粒子は、塗料、インキ、粒子コーティング、高分子改質剤および化粧料配合顔料粒子等に用いて好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、インキ、粒子コーティング剤、高分子改質剤および化粧料配合顔料粒子等に用いられるポリウレタン複合顔料粒子とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンと顔料粒子とを複合させる方法としては、ポリウレタンを適当な溶媒に溶解させて顔料粒子と混合した後、溶媒を除去する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、上記従来の方法では、ポリウレタンを溶媒に溶解させたポリウレタン溶解液が高い粘性を有している上、得られたポリウレタン複合顔料粒子は凝集性が強く、細かな粒子にするために特殊な機械により粉砕を行う必要が生じたり、あるいは溶媒除去のために噴霧乾燥させなければならず、技術的に著しく困難であるとともに、製造コスト高が避けられないという問題点があった。このため、上記従来の複合方法は実用的であるとは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、容易な方法で凝集のないポリウレタン複合顔料粒子を得ることができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、顔料粒子を溶媒に分散させた分散液中においてポリウレタンを重合させることにより、ポリウレタン複合顔料粒子が容易に得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
要するに、本願発明によるポリウレタン複合顔料粒子は、
顔料粒子を溶媒に分散させた分散液中においてポリウレタンを重合させることにより、ポリウレタンと顔料粒子とを複合させてなることを特徴とするものである。
【0007】
本発明において、前記溶媒は水であるのが好ましい。
【0008】
また、本発明によるポリウレタン複合顔料粒子の製造方法は、
顔料粒子を溶媒に分散させた分散液中においてポリウレタンを重合させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環境に大きな負荷を与えない方法で、凝集のないポリウレタン複合顔料粒子を得ることができる。こうして得られたポリウレタン複合顔料粒子は、塗料、インキ、粒子コーティング、高分子改質剤および化粧料配合顔料粒子等に用いて好適であるので、工業的に極めて有用であると言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明によるポリウレタン複合顔料粒子とその製造方法の具体的な実施の形態について説明する。
【0011】
本発明において、ポリウレタン複合顔料粒子を得るには、顔料粒子を溶媒に分散させた分散液中においてポリウレタンを重合させ、得られた重合物をろ過して洗浄し、次いでろ過物を乾燥させて解砕するという工程が採られる。
【0012】
本発明において用いられる重合方法としては、種々の重合方法が考えられるが、懸濁重合が最も好適である。何故なら、溶液重合や乳化重合を用いた場合には、ポリウレタンを析出させるために、ポリウレタンの貧溶媒を用いなければならない上、析出物を特殊な粉砕機等で粉砕しなければならないため、製造コストが高くなり不向きであるからである。また、塊状重合を用いた場合には、粉砕がかなり困難になるため不向きである。
【0013】
具体的な重合方法としては次の方法が挙げられる。すなわち、塗料、インキ、高分子改質剤および化粧料配合等に用いられる顔料粒子を適当な溶剤に分散させた後、ジイソシアネート化合物とジオール化合物を加えて昇温し、イソシアネートとアルコールの付加反応を起こさせポリウレタンを得ることにより、顔料粒子と複合化させることができる。
【0014】
本発明に用いられるジイソシアネート化合物の例を挙げれば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルジイソシアネート、イソホロジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート、2,4'−および/または4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等と上記イソシアネートの変性物がある。また、これらのうちの2種以上を併用することも可能である。
【0015】
また、本発明に用いられるジオール化合物の例を挙げれば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−もしくは1,3−または2,3−ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、m−またはp−キシレングリコール、多価フェノール類等がある。また、これらのうちの2種以上を併用することも可能である。
【0016】
また、溶剤としては、ハロゲン化溶剤や一般有機溶剤は環境に大きな負荷を与えることから、水を用いるのが好適である。また、他の溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トリクロロフルオロエタン、テトラクロロフルオロエタン、パーフルオロエーテル等のフッ素化油、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロデカリン、パーフルオロ−n−ブチルアミン、パーフロオロポリエーテル、ジメチルシトキサン等が挙げられる。また、これらのうちの2種以上の混合液を用いることも可能である。これら溶剤の沸点は40℃〜150℃の範囲が適当であるが、重合により得られたポリウレタン複合顔料粒子の分離後の乾燥工程における作業性の面や溶剤除去効率の面から、好ましくは40℃〜100℃の範囲が良い。
【0017】
本発明において、重合温度は、用いる溶媒によって異なり特に限定されないが、好ましくは40℃〜120℃とするのが適当である。また、本発明で用いられる乾燥装置としては、スプレードライヤー、真空乾燥機、棚式乾燥機等の公知のものが使用できる。また、本発明で用いられる解砕装置としては、アトマイザー、ピンミル、ジェットミル等の公知の解砕装置を使用することができる。
【実施例】
【0018】
次に、本発明によるポリウレタン複合顔料粒子とその製造方法の実施例を示すが、これらの実施例は本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
(実施例1)
加熱撹拌反応装置にイオン交換水1Lを入れ、撹拌しながら無機顔料粒子としてセリサイト100gを入れ、40℃まで加温する。このセリサイト分散濁液に、ヘキサメチレンジイソシアネート2.94gと1,6−ヘキサンジオール2.06gとを予め40℃で均一に溶かして投入する。しばらくそのまま撹拌した後、温度を75℃に上げて90分間撹拌してポリウレタンを生成する。重合終了後、ろ過洗浄を行い100℃で乾燥させる。この後、乾燥物をアトマイザー粉砕することにより、平均粒子径約10μmのポリウレタン複合セリサイト粒子を得た。
【0020】
(実施例2)
実施例1において、ヘキサメチレンジイソシアネート3.75gと1,6−ヘキサンジオール1.25gに変更した以外は、実施例1と同様にして平均粒子径約10μmのポリウレタン複合セリサイト粒子を得た。
【0021】
(実施例3)
実施例1において、ヘキサメチレンジイソシアネート7.50gと1,6−ヘキサンジオール2.50gに変更した以外は、実施例1と同様にして平均粒子径約10μmのポリウレタン複合セリサイト粒子を得た。
【0022】
(実施例4)
実施例1において、ヘキサメチレンジイソシアネート11.25gと1,6−ヘキサンジオール3.75gに変更した以外は、実施例1と同様にして平均粒子径約12μmのポリウレタン複合セリサイト粒子を得た。
【0023】
(実施例5)
実施例3において顔料粒子をセリサイトからタルクに変更した以外は、実施例3と同様にして平均粒子径約12μmのポリウレタン複合タルク粒子を得た。
【0024】
(実施例6)
実施例3において顔料粒子をセリサイトからマイカに変更した以外は、実施例3と同様にして平均粒子径約23μmのポリウレタン複合マイカ粒子を得た。
【0025】
(実施例7)
加熱撹拌反応装置にn−ヘキサンを1L入れ、撹拌しながら無機顔料粒子としてセリサイト100gを入れ、40℃まで加温する。このセリサイト分散濁液に、ヘキサメチレンジイソシアネート7.50gと1,6−ヘキサンジオール2.50gとを予め40℃で均一に溶かして投入する。しばらくそのまま撹拌した後、温度を65℃に上げて90分間撹拌してポリウレタンを生成する。重合終了後、ろ過洗浄を行い100℃で乾燥させる。この後、乾燥物をアトマイザー粉砕することにより、平均粒子径約11μmのポリウレタン複合セリサイト粒子を得た。
【0026】
上記実施例2,3,5により得られたポリウレタン複合顔料粒子のシリコン吸収量と、それぞれの顔料粒子(セリサイトおよびタルク)のみのシリコン吸収量とを、フロンテックス社製吸収量測定装置S410Dを用いて測定した結果が表1に示されている。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から明らかなように、本発明によって得られたポリウレタン複合粒子のシリコン吸収量は、複合化されていない顔料粒子のシリコン吸収量よりも多いことがわかる。これはポリウレタンとの複合化による効果であることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料粒子を溶媒に分散させた分散液中においてポリウレタンを重合させることにより、ポリウレタンと顔料粒子とを複合させてなることを特徴とするポリウレタン複合顔料粒子。
【請求項2】
前記溶媒が水である請求項1に記載のポリウレタン複合顔料粒子。
【請求項3】
顔料粒子を溶媒に分散させた分散液中においてポリウレタンを重合させることを特徴とするポリウレタン複合顔料粒子の製造方法。

【公開番号】特開2008−291045(P2008−291045A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134935(P2007−134935)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】