説明

ポリエステルモノフィラメントおよび工業用織物

【課題】極めて良好な耐加水分解性能を有し、板紙用抄紙に用いられる抄紙用織物のような、非常に高温且つ高湿度の環境下で使用される工業用織物に好適なポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物を提供する。
【解決手段】ポリエステル80重量%〜99.9重量%およびスチレン系ポリマ0.1重量%〜20重量%の合計100重量部に対し、未反応状態のモノカルボジイミド化合物0.05〜1.2重量部およびポリカルボジイミド化合物1.5重量部を超え3.5重量部未満の量をそれぞれ含有し、末端カルボキシル基濃度が10当量/10g以下、引張破断強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とするポリエステルモノフィラメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルモノフィラメントおよび工業用織物に関するものである。さらに詳しくは、従来のポリエステルモノフィラメントと比較し、極めて良好な耐加水分解性能を有し、板紙用抄紙に用いられる抄紙用織物のような、非常に高温且つ高湿度の環境下で使用される工業用織物に好適なポリエステルモノフィラメントおよびこれを用いた工業用織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは優れた機械的特性を有しているため、各種工業用部品、衣料用および工業用繊維材料、各種織物用途などに使用されてきている。
【0003】
例えばポリエステルからなる繊維のうち、ポリエチレンテレフタレートモノフィラメントは、抄紙ドライヤーカンバス、抄紙ワイヤー、各種ブラシ、筆毛、印刷スクリーン用紗、釣り糸、ゴム補強用繊維材料などに広く好適に用いられてきているが、特に抄紙工程に用いられる工業用織物の抄紙ワイヤーや抄紙ドライヤーカンバスなどに多く利用されている。
【0004】
特に、昨今の製紙業界では、抄紙機稼動時の生産性向上を目的として、抄紙機の大型化に加え、抄紙速度の飛躍的な高速化が進められており、これら抄紙製品の中でも、板紙を生産する抄紙工程における乾燥工程では、抄紙速度の高速化に伴い、乾燥効率の向上を目的として、従来と比較して150℃を越すような非常に高温な条件で乾燥を行うことが多くなり、これら工程で用いられるポリエステル製の工業用織物には、極めて高い耐加水分解性能が要求されるようになってきている。
【0005】
以上のような状況から、従来では製品寿命を問題視されることの無かった耐加水分解性能を改善した改質ポリエステルモノフィラメントであっても、抄紙設備の高速・大型化に伴い、これまでの耐加水分解性能でも不十分となり、工業用織物の製品寿命が短くなってしまうという問題が顕在化していることから、改質ポリエステルモノフィラメントよりもさらに耐加水分解性能の高いポリエステルモノフィラメントの実現がしきりに望まれるようになってきた。
【0006】
以上のような状況を鑑み、これまでにポリエステルモノフィラメントの耐加水分解性能を改良する技術が多く提案されている。
【0007】
例えば、カルボジイミドとの反応によりカルボキシル末端基がキャップされたポリエステル繊維及びフィラメントであり、これらのカルボキシル末端基が、モノ及び/又はビスカルボジイミドとの反応によってキャップされ、これら繊維及びフィラメント中に、ポリエステルの重量を基準として30〜200ppm存在し、ポリエステル中のフリーのカルボキシル末端基の含量が、3meq/kgより小さく、そしてこれら繊維及びフィラメントが、少なくとも1種のフリーのポリカルボジイミド基を含む反応性物質を、少なくとも0.02重量%付加的に含有する繊維およびフィラメント(例えば、特許文献1参照)、エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、重合度が5以上、かつ常温固体であるポリカルボジイミド化合物をポリエステルに対し、0.3〜5.0wt%含有しており、末端カルボキシル基濃度が20当量/10g以下であって、強度が6g/d以上、固有粘度が0.8以上であるポリエステル繊維(例えば、特許文献2参照)、さらには、末端封鎖剤と反応しない高分子キャリヤーを含有する末端封鎖剤マスターバッチを用いた加水分解抵抗性ポリエステルファイバー、マスターバッチ、フィラメントおよびその製造方法(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0008】
これらの技術は、いずれもポリエステルやポリエステルからなる繊維の加水分解性能を改善する技術として相応の効果を発揮するものではあるが、昨今の大型・高速抄紙機にて150℃を越すような極めて高い温度で紙シートを乾燥する工程において用いられるポリエステル繊維としては、耐加水分解性能が不足し、工業用織物の寿命が短くなると言う問題を包含していた。
【0009】
また、本発明者等も、ポリエステルとスチレン系ポリマからなるポリエステル混合物100重量部に対し、未反応の状態のポリカルボジイミド化合物を0.05〜1.5重量部を含有するカルボキシル末端基濃度が10当量/10g以下のポリエステル組成物(例えば、特許文献4参照)や、ポリマ成分が、末端カルボキシル基濃度が10当量/10g以下のポリエステル(A)99.8〜60重量%と、ポリオレフィン類,ポリスチレン類およびポリメタクリレート系重合体から選ばれた少なくとも一種である熱可塑性ポリマ(B)0.2〜40重量%からなり、該ポリマ成分が未反応の状態のカルボジイミド化合物(C)を0.005〜1.5重量%含有するポリエステル組成物(例えば、特許文献5参照)などを提案している。
【0010】
しかしながら、これら技術もポリエステルを主成分とする樹脂組成物の耐加水分解性を一定のレベル以上で向上させる技術としては優れた効果を奏するが、150℃を越すような高温且つ多湿の環境下で使用される場合には、必要とされる極めて高い耐加水分解性能を有しているとは言えず、不十分なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−289221号公報
【特許文献2】特開10−168655号公報
【特許文献3】特開平9−195123号公報
【特許文献4】特開平10−168661号公報
【特許文献5】特開平7−258524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のような状況を鑑み、本発明は、従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、ポリエステルモノフィラメントの耐加水分解性を飛躍的に改善し、極めて高温且つ多湿の条件下で使用した場合においても長期に亘る優れた耐加水分解性をも兼ね備える工業用織物の構成素材として好適なポリエステルモノフィラメントならびに、これを使用した工業用織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため本発明によれば、ポリエステル80重量%〜99.5重量%およびスチレン系ポリマ0.5重量%〜20重量%の合計100重量部に対し、未反応状態のモノカルボジイミド化合物0.05〜1.2重量部およびポリカルボジイミド化合物1.5重量部を超え3.5重量部未満の量をそれぞれ含有し、末端カルボキシル基濃度が10当量/10g以下、引張破断強度が3.0cN/dtex以上であるポリエステルモノフィラメント提供される。
【0014】
ここで、本発明のポリエステルモノフィラメントにおいては、
前記ポリエステルモノフィラメントを蒸気圧2.5kg/cm、温度138℃の湿熱環境下において、96時間の連続湿熱処理を行った後、未処理のポリエステルモノフィラメントの引張強度に対する湿熱処理後のポリエステルモノフィラメントの強度保持率が60%以上であること、
前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであること、
前記スチレン系ポリマがシンジオタクチック構造を有するスチレン系ポリマであること
がさらに好ましい条件として挙げられ、これらの条件を満足することによって、より一層の優れた効果が期待でき、これらポリエステルモノフィラメントを経糸および/または緯糸の少なくとも一部に使用した本発明の工業用織物は、特に抄紙用織物において極めて優れた耐加水分解性能を発現するばかりか、工業用織物用途のポリエステルモノフィラメントとして必要十分な引張破断強度特性をも兼ね備えることから、極めて好適に利用し得る工業用織物の取得を可能とせしめる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下に説明する通り、従来から用いられているポリエステルモノフィラメントと比較し、より一層高く、優れた耐加水分解性能を備えることから、工業用織物の中でも、抄紙用織物の構成素材として好適であり、さらには、150℃を越すような極めて高温且つ高湿度となるような環境下においても利用可能なポリエステルモノフィラメントおよび工業用織物の取得を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明のポリエステルモノフィラメントを構成するポリエステルは、ジカルボン酸と、グリコールからなるポリエステルである。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0018】
これらのジカルボン酸成分とグリコール成分とを適宜組み合わせて使用することができる。また、上記のジカルボン酸成分の一部を、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、スルホン酸金属塩置換イソフタル酸などで置き換えてもよく、また、上記のグリコール成分の一部をジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリアルキレングリコールなどで置き換えてもよい。更に、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメリット酸、トリメシン酸、硼酸などの鎖分岐剤を少量併用することもできる。
【0019】
これらの中でも、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸からなり、グリコール成分の90モル%がエチレングリコールからなる、ポリエチレンテレフタレート(以降、PETという)が好適である。
【0020】
本発明の効果を効率よく発現させるために、ポリエステル中にリン化合物を、リン原子として50ppm 以下で、かつ一般式5×10−3≦P≦M+8×10−3(式中のPはポリエステルを構成する二塩基酸に対するリン原子のモル%であり、Mはポリエステル樹脂中の金属で、周期律表II族、VII 族、VIII族でかつ第3,4周期の内より選択された1種もしくは2種以上の金属原子のポリエステルを構成する二塩基酸に対するモル%である。また、M=0であってもよい)の範囲内の量を含有させることができる。
【0021】
さらに、本発明で用いるポリエステルには、上記のポリエステルの2種類以上のブレンドポリマーも含まれ、更には上記のポリエステル以外の樹脂、例えばポリアミド、ポリエステルアミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン樹脂、ポリアクリレート、およびフッ素樹脂などを本発明の特性を疎外しない範囲で必要に応じてブレンドしたものでもよい。
【0022】
ここで、本発明で用いるポリエステルの極限粘度は、通常は0.6以上であればよいが、0.7以上の場合には、強度に優れるため特に好ましい。ここで、極限粘度はオルソクロロフェノール溶液中25℃で測定した粘度より求めた極限粘度であり、〔η〕で表わされる。これらのポリエステルの製造は、公知の溶融重縮合方法あるいは溶融重縮合と固相重縮合を組み合わせて行なうことができる。
【0023】
本発明で用いられるスチレン系ポリマとしては、アタクチック構造ポリスチレン、アイソタクチック構造ポリスチレン、シンジオタクチック構造ポリスチレン(以降、SPSという)、ポリ−p−メチルスチレン、スチレンとp−メチルスチレンとの共重合体などを挙げることができる。また、好ましくは、これらスチレン系ポリマの中でも、ポリマの50重量%以上がシンジオタクチック構造を有するスチレン系ポリマを用いることが、製造時の工程通過性が良好になるため好ましく、ポリマの90重量%以上がシンジオタクチック構造を有するSPSである場合には、より優れた効果を期待することができる。
【0024】
上述したこれらスチレン系ポリマのポリエステルへの配合率は、本発明の範囲内であれば所望とする効果を発揮することができる。
【0025】
ここで、本発明のポリエステルモノフィラメントを構成するポリエステルに含有させるスチレン系ポリマの量は、これら熱可塑性樹脂の合計100重量部中、0.5重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜15重量%であり、スチレン系ポリマの含有量が、0.5重量%未満では、十分な耐加水分解性能を有するポリエステルモノフィラメントの取得ができないため好適でない。
【0026】
また、スチレン系ポリマの含有量が20重量%を超える場合は、得られるポリエステルモノフィラメントの強度が不足するばかりか、製糸性に悪影響を及ぼすなどの結果に繋がるため好ましくない。
【0027】
また、本発明のポリエステルモノフィラメントは、末端カルボキシル基濃度が10当量/10g以下であることを特徴とし、さらに末端カルボキシル基濃度が5当量/10g以下である場合より好ましい効果の発現が期待でき、ポリエステルモノフィラメントの末端カルボキシル基濃度が10当量/10gを超える場合は、耐加水分解性が不十分となるため好ましくない。
【0028】
前記した、本発明の末端カルボキシル基濃度が10当量/10g以下のポリエステルモノフィラメントは、末端カルボキシル基濃度が10当量/10gより多いポリエステル組成物に対し、ポリエステル組成物の溶融状態で原料となるポリエステルの末端カルボキシル基濃度および反応条件などから、末端カルボキシル基濃度が10当量/10g以下になるようにカルボジイミド化合物を反応させることで得られる。
【0029】
なお、本発明のポリエステルモノフィラメントの末端カルボキシル基濃度の測定は、PohlによりANALYTICAL CHEMISTRY 第26巻、1614頁に記載された方法で測定したものであり、本発明のポリエステルモノフィラメントからポリエステルだけを分析前に分離することなく、本発明のポリエステルモノフィラメントそのものを分析に供して測定することができる。
【0030】
また、本発明のポリエステルモノフィラメントは、未反応状態のモノカルボジイミド化合物を0.05〜1.2重量部含有することを特徴とするが、さらには0.1〜1.0重量部であることが好ましい。
【0031】
ここで、未反応状態のモノカルボジイミド化合物の含有量が0.05重量部未満では、所望とする耐加水分解性能が得られず、逆に1.2重量部より多くした場合では、ポリエステルモノフィラメントの強度特性が著しく損なわれるばかりか、本発明の範囲内に未反応状態のモノカルボジイミド化合物を含有させようとした場合、モノフィラメントを製造する工程に於いて、ポリエステル中に多量のモノカルボジイミド化合物を添加する必要がある。
【0032】
この場合、モノフィラメントを製造する紡糸機内で、ポリエステル樹脂を溶融するための熱によってモノカルボジイミドが液状に溶解し、ポリエステルを主体とする溶融状態のポリエステル組成物との混練性が不安定になるばかりか、さらには液状のモノカルボジイミド化合物が紡糸機内に多量に滞留する状態を招き、紡糸機からのポリエステル混合樹脂組成物の押出し性能が極めて悪化するなどの不具合が生じるため好ましくない。
【0033】
なお、本発明のポリエステルモノフィラメント中の未反応の状態のカルボジイミド化合物の含有量は次の方法で測定したものである。
(1)100mlメスフラスコに試料約200mgを秤取する、
(2)ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム(容量比1/1)2mlを加えて試料を溶解させる、
(3)試料が溶解したら、クロロホルム8mlを加える、
(4)アセトニトリル/クロロホルム(容量比9/1)を徐々に加えポリマを析出させながら100mlとする、
(5)試料溶液を目開き0.45μmのディスクフィルターで濾過し、HPLCで定量分析する。HPLC分析条件は次の通り。
カラム:Inertsil ODS−2 4.6mm×250mm
移動相:アセトニトリル/水(容量比94/6)
流 量:1.5ml/min.
試料量:20μl検出器:UV(280nm)。
【0034】
本発明のポリエステルモノフィラメントが含有する未反応のモノカルボジイミド化合物としては、1分子中に1個または2個以上のカルボジイミド基を有する化合物であればいかなるものでもよく、例えば、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トリイルカルボジイミドなどが挙げられる。
【0035】
本発明では、これらのモノカルボジイミド化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択してポリエステルに含有させればよいが、添加後のポリエステル組成物の安定性の観点から、芳香族骨格を有する化合物が有利な傾向にあり、中でもN,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミドなどが好適であり、特にN,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(以下、TICという)が反応性に優れていることから最も好適である。
【0036】
本発明のポリエステルモノフィラメントは、未反応状態のモノカルボジイミド化合物に加え、さらに1.5重量部を超え3.5重量部未満の量のポリカルボジイミド化合物を含有することを特徴とし、さらに好ましい含有量は1.7〜2.5重量部である。
【0037】
本発明で言うポリカルボジイミド化合物は、該カルボジイミド化合物中の未反応のカルボジイミド基(P1)とポリエステルのカルボキシル末端基および/またはヒドロキシル末端基と一部反応しているカルボジイミド基(P2)との合計((P1)+(P2))で1分子中に5〜50個のカルボジイミド基を含有するアルキル置換芳香族ポリカルボジイミド化合物である。
【0038】
ここで、前記ポリカルボジイミド化合物の含有量が1.5重量部未満では、150℃を越すような極めて高温且つ高湿度となるような環境下に曝された場合に、必要とされる十分な耐加水分解性能が得られないばかりか、耐熱性も低下してしまうため、高温・高湿条件下での使用に耐え得るモノフィラメントを得ることができなくなる。
【0039】
一方、前記ポリカルボジイミド化合物の含有量が3.5重量部以上では、エクストルダーなどの紡糸機などでポリエステルと溶融混練する際に、ポリエステルと架橋反応することで著しい粘度増加を起こし、これら紡糸機の先端に配置した口金ノズルなどからの溶融ポリマの押出し性が低下し、吐出不良を来たしたり、ポリエステルモノフィラメントの物性低下を招いたりする原因となるため好ましくない。
【0040】
本発明のポリカルボジイミド化合物としては、アルキル置換フェニルカルボジイミドを繰り返し単位とするポリカルボジイミド化合物であり、カルボジイミド基に対して、フェニル基のオルトの位置がメチル基、エチル基、イソプロピル基またはt−ブチル基等のアルキル基、特に好ましくはイソプロピル基で置換されたもの、すなわち2,6−および/または2,4,6−位および/または2,3−位および/または2,5−位がイソプロピル基で置換されたフェニルカルボジイミドを繰り返し単位の主体とするポリカルボジイミド化合物が挙げられる。
【0041】
また、本発明のポリカルボジイミド化合物1分子は、ポリエステルモノフィラメント中で、該ポリカルボジイミド化合物中の未反応のカルボジイミド基(P1)とポリエステルのカルボキシル末端基および/またはヒドロキシル末端基と一部反応しているカルボジイミド基(P2)との合計((P1)+(P2))で5〜50個のカルボジイミド基を有するものであり、これらポリカルボジイミド化合物の平均分子量としては2,000 〜16,000であり、好ましくは2,500 〜12,000の平均分子量を有するもが挙げられる。
【0042】
本発明のポリカルボジイミド化合物(以下、PCDという)は市販品として、平均分子量3,000 のStabaxol(登録商標)P(ラインケミー社製品)、平均分子量10,000のStabaxol(登録商標)P100(ラインケミー社製品)を入手することができる。
【0043】
本発明では、PCDをポリエステルまたはスチレン系ポリマに予め高濃度に含有させたマスターバッチ(以降、MBという)として用いることができ、これらMBにポリエチレンを1〜8重量%含有したものの場合、得られるポリエステルモノフィラメントの耐加水分解性能が一層良好となるため好ましく用いることができる。
【0044】
前記したPCDを含有するPET MBとしては、平均分子量10,000のStabaxol(登録商標)P100を15重量%含有するStabaxol(登録商標)KE7646(ラインケミー社製品)、およびStabaxol(登録商標)P100を15重量%とポリエチレン4重量%とを含有するStabaxol(登録商標)KE9291(ラインケミー社製品)および平均分子量3,000 のStabaxol(登録商標)Pを8重量%と平均分子量10,000のStabaxol(登録商標)P100を7重量%含有するStabaxol(登録商標)KE8059(ラインケミー社製)等を市販品として入手することができる。
【0045】
なお、上述した本発明のポリエステルモノフィラメントには、耐加水分解性以外の機能の付与として防汚性(撥水・撥油性)を発現させる目的で公知の各種フッ素樹脂を含有することもでき、また耐乾熱性付与の目的のため公知の酸化防止剤を含有させることも可能である。
【0046】
上記特性を有する本発明のポリエステルモノフィラメントは、優れた耐加水分解性能を発揮するが、これらポリエステルモノフィラメントを蒸気圧2.5kg/cm、温度138℃の湿熱環境下において、96時間の連続湿熱処理を行った後、未処理のポリエステルモノフィラメントの引張強度に対する湿熱処理後のポリエステルモノフィラメントの強度保持率が60%以上である場合、さらに優れた効果の発現が期待でき好適である。
【0047】
即ち、本発明のポリエステルモノフィラメントは、JIS2008 L1013 8.5項に準じて測定した引張破断強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とするが、ここで、引張破断強度が3.0cN/dtex以下のモノフィラメントの場合、単に強度の低いモノフィラメントを経糸および/または緯糸に用いて工業用織物を製織し使用することは可能である。しかし、本発明のポリエステルモノフィラメントの効果が最も顕著に発揮される高温・高湿環境化で使用された場合、モノフィラメントが加水分解劣化や熱劣化によって強度低下を来たすと、これらポリエステルモノフィラメントを構成素材とする工業用織物の有する強度が低くなりすぎ、寿命低下や使用時の破網などの諸問題を招く結果に繋がってしまう。
【0048】
然るに、本発明のポリエステルモノフィラメントが、蒸気圧2.5kg/cm、温度138℃の湿熱環境下において、96時間の連続湿熱処理を行った後、未処理のポリエステルモノフィラメントの引張強度に対する湿熱処理後のポリエステルモノフィラメントの強度保持率が60%以上の特性を有していると、極めて長期間に亘り、高温高湿条件下での工業用織物の使用を可能とせしめるため好ましい。
【0049】
上記特性を有する本発明のポリエステルモノフィラメントは、極めて高温且つ高湿の条件となる抄紙工程で用いられる織物を構成するポリエステルモノフィラメントに求められる極めて優れた耐加水分解性能を有すると共に、十分な引張強度特性をも有し、各種工業用繊維材料や織物に好適に利用できるものであり、このポリエステルモノフィラメントを用いた工業用織物は、本発明のモノフィラメントの優れた耐加水分解性能から抄紙ドライヤーカンバス、抄紙ワイヤー、サーマルボンド法不織布熱接着工程用ネットコンベア、乾燥機および熱処理機内搬送用ベルトさらにはフィルターなどとして非常に好ましいものである。
【0050】
なお、本発明でいう工業用織物とは、本発明のポリエステルモノフィラメントを織物の経糸および/または緯糸の少なくとも一部に用いた織物のことを意味する。
【0051】
本発明のポリエステルモノフィラメントは、その用途や特性を満足させるため、繊維軸方向に垂直な断面の形状を円形、楕円形、扁平、正多角形および不定形な形状を含む多角形といかなる形状をも取り得るものであり、必要に応じて複合繊維であってもよい。なお、ここでいう扁平とは楕円もしくは長方形のことを意味するが、数学的に定義される正確な楕円、長方形以外に概ね楕円、長方形またはこれに類似した形状を含み、正多角形とは数学的に定義される正多角形以外に、概ねこれに類似した形状を含むものである。
【0052】
また、本発明のポリエステルモノフィラメントの直径は、その用途に合わせ適宜選択することができるが、通常は0.05〜5mm程度の範囲のものが好適に使用される。
【0053】
次に、本発明のポリエステルモノフィラメントの好ましい製造方法について説明するが、本発明のポリエステルモノフィラメントは、従来公知の方法にて製造が可能である。
【0054】
例えば、本発明のポリエステル、スチレン系ポリマ、PCDおよびモノカルボジイミド化合物を所望の混合比率で事前に計量混合したポリエステル混合組成物を用いてエクストルダーなどの紡糸機にて溶融し、紡糸機内で溶融状態のポリエステルにカルボジイミド化合物を溶融混練・反応させた後に、紡糸機先端に設置された口金ノズルから押出し、公知の方法で冷却、延伸する方法などで得ることが可能である。
【0055】
また、カルボジイミド化合物とポリエステルとの混合・反応では、重縮合反応終了直後の溶融状態のポリエステルにカルボジイミド化合物を添加し、撹拌・反応させる方法、ポリエステルチップにカルボジイミド化合物を添加・混合した後に反応缶やエクストルダーなどの紡糸機で混練・反応させる方法、および紡糸機でポリエステルにカルボジイミド化合物を連続的に添加し、混練・反応させる方法などにより行なうことができる。
【0056】
これらの中でも、原料の取り扱いや生産効率の観点からは、ポリエステルとスチレン系ポリマを所定の比率で事前に配合させたポリエステル/スチレン系ポリマ混合MBと、ポリエステルとPCDを所定の比率で混合したポリエステル/PCD混合MBとを紡糸機に供給する際に、所望の比率となるようにエクストルダーなどの紡糸機へ自動計量供給、その後、エクストルダーの入り口やバレル部から液状にしたモノカルボジイミド化合物を計量添加する方法、ポリエステル、スチレン系ポリマおよびポリエステル/PCD混合MBを紡糸機に供給する際に、所望の比率となるようにエクストルダーなどの紡糸機へ自動計量供給、その後、エクストルダーの入り口やバレル部から液状にしたモノカルボジイミド化合物を計量添加する方法など、本発明の規定する範囲内となるように、各々の樹脂およびカルボジイミド化合物を紡糸機で溶融混練し、カルボジイミド化合物との反応後の溶融ポリエステルポリマを紡糸機先端に設けられた口金ノズルから押し出し、公知の方法で冷却、延伸、熱セットを行なうことが好ましく、これら製造方法によって本発明のポリエステルモノフィラメントを効率よく製造することができる。
【0057】
かくしてなる本発明のポリエステルモノフィラメントは、従来のポリエステルモノフィラメントにはない、優れた耐加水分解性と工業用織物として十分な強度特性をも具備し、工業用織物用の構成素材として好適に利用することができ、中でも極めて優れた耐加水分解性能を有することから、抄紙ドライヤーカンバス、抄紙ワイヤー、サーマルボンド法不織布接着工程用ネットコンベア、乾燥機および熱処理機内搬送用ベルトさらにはフィルターなどとして特に好ましい効果を発揮するものであるといえる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明のポリエステルモノフィラメントの実施例に関しさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
また、上記および下記に記載の本発明のポリエステルモノフィラメントにおける、引張強度、製糸性、耐加水分解性試験などの評価は以下の方法により測定、評価したものである。
【0060】
(1)モノフィラメントの引張強度(cN/dtex)
JIS2008 L1013 8.5項に準じて測定した。すなわち、ポリエステルモノフィラメント50mを綛状に取り、試料長50cmにカット(100本)したサンプルから任意に10本を取りだし、これを20℃、65%RHの温湿度調整室内で、(株)オリエンテック社製”テンシロン”UTM−4−100型引張試験機を用い、試長:250mm、引張速度:300mm/分の条件で、引張強力(N)の平均値を測定し、引張強度(cN/dtex)を算出した。
【0061】
(2)耐加水分解性試験
ポリエステルモノフィラメントを株式会社スギモトステンレス工業製200リットル高圧蒸気処理釜に入れ、蒸気圧力2.5kg/cm、138℃の湿熱環境下で96時間連続処理した後、処理後のモノフィラメントおよび非処理(処理前)のモノフィラメントの強力を上記の引張強力と同一の測定により求め、処理前後のモノフィラメントの強力保持率を算出し、耐加水分解性の尺度とした。なお、算式は強力保持率(%)=(処理後モノフィラメントの強力÷処理前モノフィラメントの強力)×100であり、強力保持率が高いほど耐加水分解性が優れることを示す。
【0062】
(3)製糸性(操業性)
24時間の連続紡糸を行ない、以下の基準で判定した。
○(良好)…原料の噛込み不良による製糸不能状態や製糸中の糸切れが全くない、また、モノフィラメント平均直径に対して、+10%を超えるような、繊維軸方向の極短い長さの直径増大変動異常部(以下、コブ糸という)の発生が10回/トン未満であった。なお、コブ糸の回数は、紡糸押出し総ポリマ重量(kg)/1000kg×コブ糸回数にて算出した。
×(不良)…原料の噛込み不良などによる製糸不能状態になる、または、製糸中に糸切れが発生する、またコブ糸が10回/トン以上発生した、の2基準で評価した。
【0063】
[実施例1]
ポリエステルとして、特開昭56−85704公報に記載の方法に準じて得た極限粘度0.93、末端カルボキシル濃度15当量/10gのPET乾燥チップ、スチレン系ポリマとしてポリマを構成するモノマの99重量%以上がスチレンでポリマの99重量%以上がシンジオタクチック構造を有するSPSチップ(出光石油化学(株)ザレック(登録商標))およびPCDとして、平均分子量10,000のStabaxol(登録商標)P100をPET樹脂中に15重量%含有するStabaxol(登録商標)KE7646(ラインケミー社製品)(以降、KE7646という)を準備した。
【0064】
上記、PET、SPSおよびKE7646を用い、PET:84.8重量部、SPS:5.0重量部およびKE7646:12.0重量部(PETを10.2重量部含有)の割合で自動計量混合しながら、ポリエステル混合原料をエクストルダー紡糸機へ供給した。
【0065】
次いで、モノカルボジイミド化合物としてTIC(ラインケミー社製Stabaxol(登録商標)I)を撹拌装置付き加熱溶解槽で80℃にて溶解し、このTIC溶液を上記ポリエステル混合原料と同時にエクストルダー紡糸機供給口から1.30%供給し、紡糸機温度290℃にて混練溶融し、溶融ポリエステル組成物を口金ノズルから押し出した後、ただちに温度80℃の温水中で冷却固化させた未延伸糸を得た。
【0066】
引き続き、上記未延伸糸を常法に従って、トータル倍率5.5倍に延伸、熱セットを行ない、ポリエステル:95重量%、スチレン系ポリマ:5重量%、PCD:1.8重量部および未反応TIC:0.386重量部を含有する末端カルボキシル基濃度が2eq/10gの直径0.60mmのポリエステルモノフィラメントを得た。
【0067】
得られたポリエステルモノフィラメントの引張強度、製糸性、耐加水分解性試験後強力保持率などを評価した結果を表1に示す。
【0068】
[実施例2〜4および比較例3〜4]
実施例1と同一のポリエステル、スチレン系ポリマ、TICおよびPCDを用い、PCD添加量を表1〜表3に示すように変更し、直径0.60mmのポリエステルモノフィラメントを得た。
【0069】
得られた各ポリエステルモノフィラメント中の末端カルボキシル基濃度および未反応TIC含有量、得られたモノフィラメントの引張強度、耐加水分解性試験後強力保持率および製糸性などを評価した結果を表1〜3に示す。
【0070】
[比較例1]
実施例1と同一のポリエステル、TICおよびPCDを用い、スチレン系ポリマを非添加として、直径0.60mmのポリエステルモノフィラメントを得た。
【0071】
得られた各ポリエステルモノフィラメント中の末端カルボキシル基濃度および未反応TIC含有量、得られたモノフィラメントの引張強度、耐加水分解性試験後強力保持率および製糸性などを評価した結果を表1〜3に示す。
【0072】
[実施例5〜6および比較例2]
実施例1と同一のポリエステル、スチレン系ポリマ、TICおよびPCDを用い、ポリエステルとスチレン系ポリマの含有量を表1および表2に示すように変更し、直径0.60mmのポリエステルモノフィラメントを得た。
【0073】
得られた各ポリエステルモノフィラメント中の末端カルボキシル基濃度および未反応TIC含有量、得られたモノフィラメントの引張強度、耐加水分解性試験後強力保持率および製糸性などを評価した結果を表1および表2に示す。
【0074】
[実施例7〜8、比較例5および6]
実施例1と同一のポリエステル、スチレン系ポリマ、TICおよびPCDを用い、TIC添加量を表1および表2に示すように変更し、直径0.60mmのポリエステルモノフィラメントを得た。
【0075】
得られた各ポリエステルモノフィラメント中の末端カルボキシル基濃度および未反応TIC含有量、得られたモノフィラメントの引張強度、耐加水分解性試験後強力保持率および製糸性などを評価した結果を表2および3に示す。
【0076】
[実施例9]
実施例1と同一のポリエステル、TICおよびPCDを用い、スチレン系ポリマをアタクチック構造ポリスチレン(PSジャパン(株)製 HF77))に変更し、直径0.60mmのポリエステルモノフィラメントを得た。
【0077】
得られた各ポリエステルモノフィラメント中の末端カルボキシル基濃度および未反応TIC含有量、得られたモノフィラメントの引張強度、耐加水分解性試験後強力保持率および製糸性などを評価した結果を表1〜3に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
表1および表2の結果から明らかなように、本発明によるポリエステルモノフィラメント(実施例1〜9)は、いずれも極めて優れた耐加水分解性能を有し、かつ工業用織物として求められる十分な引張強度を有していることがわかる。
【0082】
一方、本発明の規定から外れたポリエステルモノフィラメントは、製糸性、耐加水分解性能および引張強度などが不十分であり、工業用織物を構成するポリエステルモノフィラメントしては、いずれも好ましくないものとなることが明らかである。
【0083】
すなわち、スチレン系ポリマを非添加とした比較例1では、耐加水分解性能が低く、極めて高温且つ高湿度の環境下で使用する、工業用織物用途のポリエステルモノフィラメントとしては不十分なものとなった。
【0084】
また、スチレン系ポリマの含有量が規定よりも高い比較例2では、得られたモノフィラメントの加水分解性能は好ましいものとなったが、引張強度が低く、また、モノフィラメントを製造する際、多量に添加しすぎたスチレン系ポリマの影響から、紡糸機先端に設置した口金ノズルから押出される溶融ポリマが太細状態となり、延伸切れやコブ糸が多発する状況となり、製糸性が極めて悪くなる結果を招いた。
【0085】
さらに、PCD添加量が本発明の規定から外れた比較例3および比較例4の場合、PCD添加量が多量すぎた比較例3では、多量に添加したPCDの影響で、溶融ポリエステル混合ポリマが増粘する結果を招き、紡糸押出し特性が悪化し、紡糸不能の状況になった。一方、PCDの含有量が本発明より低い比較例4の場合、得られたポリエステルモノフィラメントの耐加水分解性が低いものとなってしまった。
【0086】
得られたポリエステルモノフィラメント中の未反応状態のTIC含有量が本発明の規定から外れた比較例5および比較例6では、未反応TIC含有量が低い比較例5では耐加水分解性が低く、逆に、未反応TIC含有量が本発明の範囲より高い比較例6では、得られるモノフィラメントの耐加水分解性能や引張強度は好ましい特性を有するが、紡糸工程にて多量のTICを添加することにより、エクストルダー紡糸機からの溶融ポリエステル混合樹脂の紡糸押出し状況が悪化し、紡糸機への原料噛み込み特性が悪化し、吐出不能になる状況が頻発し、生産性が得られない結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明のポリエステルモノフィラメントは、従来のポリエステルモノフィラメントにはない、極めて高い耐加水分解性能を有するとともに、工業用織物用途として用いるポリエステルモノフィラメントとしての十分な強度を兼ね備えていることから、特に抄紙ドライヤーキャンバス、抄紙ワイヤー、サーマルボンド法不織布熱接着用ネットコンベア、乾燥機および熱処理機内搬送用ベルトもしくはフィルターとして好適に利用することがきる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル80重量%〜99.5重量%およびスチレン系ポリマ0.5重量%〜20重量%の合計100重量部に対し、未反応状態のモノカルボジイミド化合物0.05〜1.2重量部およびポリカルボジイミド化合物1.5重量部を超え3.5重量部未満の量をそれぞれ含有し、末端カルボキシル基濃度が10当量/10g以下、引張破断強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とするポリエステルモノフィラメント。
【請求項2】
前記ポリエステルモノフィラメントを蒸気圧2.5kg/cm、温度138℃の湿熱環境下において、96時間の連続湿熱処理を行った後、未処理のポリエステルモノフィラメントの引張強度に対する湿熱処理後のポリエステルモノフィラメントの強度保持率が60%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルモノフィラメント。
【請求項3】
前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルモノフィラメント。
【請求項4】
前記スチレン系ポリマがシンジオタクチック構造を有するスチレン系ポリマであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステルモノフィラメント。
【請求項5】
前記ポリエステルモノフィラメントを経糸および/または緯糸の少なくとも一部に用いたことを特徴とする工業用織物。

【公開番号】特開2012−102415(P2012−102415A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249665(P2010−249665)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】