説明

ポリエステル繊維布製生体組織修復材料及びその製造方法

【課題】生体組織に対する安全性、機械的強度、伸縮性及び柔軟性に優れたポリエステル繊維布製生体組織修復材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】低毒性金属系触媒を用いて合成されたポリエステルを含有する繊維布に対して、有機溶媒による脱脂、並びに温水及び/又は酸による上記触媒の除去を行うと、生体組織に対する安全性、機械的強度、伸縮性及び柔軟性に優れた生体組織修復材料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織に対する安全性、機械的強度、伸縮性及び柔軟性に優れたポリエステル繊維布製生体組織修復材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、骨の損傷部位を修復する材料として、リン酸カルシウム系化合物等の生体親和性セラミックス、チタン等の金属、ポリメタクリレート等の合成樹脂等が利用されている。これらは機械的強度に優れているので、特に高い曲げ強度や圧縮強度が求められる骨損傷部位の修復に適している。しかし靭帯、腱等を修復する場合、修復材料に高い柔軟性や伸縮性が求められる。
【0003】
そこで特公平5-20099号(特許文献1)は、ポリエチレンテレフタレートの繊維布を用いた靭帯及び腱用の修復材料を提案している。特公平5-53499号(特許文献2)は、ポリエステル織物を用いた人工靭帯を提案している。
【0004】
また骨損傷部位でも、修復材料に柔軟性や伸縮性が求められる場合がある。そこで、特表2002-531193号(特許文献3)は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルからなる多孔性シートと、骨形態発生タンパク等の組織鼓舞分子物質とからなる、骨組織を再生するキットを提案している。
【0005】
しかしポリエチレンテレフタレートを始めとする芳香族ポリエステルは、通常金属系触媒を用いて合成されるので、これを生体組織修復材料として用いるには、生体組織に対する安全性を高めるために、低毒性の金属系触媒を用いて合成し、かつその残留量を低減することが望まれる。
【0006】
【特許文献1】特公平5-20099号公報
【特許文献2】特公平5-53499号公報
【特許文献3】特表2002-531193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、生体組織に対する安全性、機械的強度、伸縮性及び柔軟性に優れたポリエステル繊維布製生体組織修復材料及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、低毒性金属系触媒を用いて合成されたポリエステルを含有する繊維布に対して、有機溶媒による脱脂、並びに温水及び/又は酸による前記触媒の除去を行うと、生体組織に対する安全性、機械的強度、伸縮性及び柔軟性に優れた生体組織修復材料が得られることを見出し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明のポリエステル繊維布製生体組織修復材料は、低毒性金属系触媒を用いて合成されたポリエステルを含有する繊維布からなり、前記ポリエステル1kg中の前記触媒に由来する低毒性金属残留量が30 mg以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明のポリエステル繊維布製生体組織修復材料の製造方法は、低毒性金属系触媒を用いて合成されたポリエステルを含有する繊維布に対して、有機溶媒による脱脂、並びに温水及び/又は酸による前記触媒の除去を行うことを特徴とする。前記有機溶媒としてエタノールを用いるのが好ましい。前記酸として濃度が0.01〜2mol/Lの塩酸を用いるのが好ましい。
【0011】
前記低毒性金属系触媒はゲルマニウム系触媒であるのが好ましい。本発明の好ましい実施例では、前記ポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。本発明の別の好ましい実施例では、前記ポリエステルを含有する繊維布は織物又は編物である。
【0012】
上記ポリエステル繊維布製生体組織修復材料は結合組織修復材料用途に好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリエステル繊維布製生体組織修復材料は、低毒性金属系触媒を用いて合成されたポリエステルを含有する繊維布からなり、かつポリエステル中の上記触媒に由来する低毒性金属残留量が低減されているので、生体組織に対する安全性、機械的強度、伸縮性及び柔軟性に優れている。上記ポリエステルを含有する繊維布に対して、有機溶媒による脱脂、並びに温水及び/又は酸による上記触媒の除去を行う本発明の方法によれば、上記ポリエステル繊維布製生体組織修復材料を効率良く安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[1] ポリエステル繊維布製生体組織修復材料
本発明の生体組織修復材料は、低毒性金属系触媒を用いて合成されたポリエステルを含有する繊維布からなる。
【0015】
(1) ポリエステル
ポリエステルは、低毒性金属系触媒を用いて合成された芳香族ポリエステルからなるのが好ましい。ポリエステルは、芳香族ポリエステル以外に、必要に応じて、脂肪族ポリエステル、その他の熱可塑性樹脂、天然の有機高分子等を含有しても良い。
【0016】
(a) 芳香族ポリエステル
芳香族ポリエステルは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のポリオールと、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等のポリカルボン酸とを、低毒性金属系触媒を用いて重縮合させてなる。芳香族ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられるが、PET及びPBTが好ましく、PETがより好ましい。ただし、芳香族ポリエステルは、一種の芳香族ポリエステルからなるものに限定されず、二種以上の芳香族ポリエステルからなるものでもよい。
【0017】
PETは、基本的にエチレングリコールとテレフタル酸とからなる飽和ポリエステルである。但しPETの特性を損なわない範囲で、エチレングリコール以外のポリオール成分、又はテレフタル酸以外のポリカルボン酸成分を共重合成分として含んでいてもよい。そのようなポリオール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンメタノール等が挙げられ、またポリカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸等が挙げられる。
【0018】
PBTは、基本的に1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とからなる飽和ポリエステルである。但しPBTの特性を損なわない範囲で、1,4-ブタンジオール以外のポリオール成分、又はテレフタル酸以外のポリカルボン酸成分を共重合成分として含んでいてもよい。そのようなポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンメタノール等が挙げられる。またポリカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸等が挙げられる。
【0019】
ポリオールとポリカルボン酸とを重縮合させる方法としては、低毒性金属系触媒を用いる以外公知の方法を利用することができる。低毒性金属系触媒としてはゲルマニウム系触媒が好ましい。ゲルマニウム系触媒として、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム酸化物;ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトライソプロポキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド等のゲルマニウムアルコキシド;水酸化ゲルマニウム及びそのアルカリ金属塩;塩化ゲルマニウム;酢酸ゲルマニウム等が挙げられる。限定的ではないが、ゲルマニウム系触媒の使用量は、ポリエステルを100質量%として、好ましくは0.005〜1質量%であり、より好ましくは0.01〜0.8質量%である。ゲルマニウム系触媒は、重縮合反応開始前の任意の時点に添加すればよい。
【0020】
芳香族ポリエステルは、その1kgあたりにおける上記触媒に由来する低毒性金属残留量が30 mg以下であり、好ましくは15 mg以下であり、より好ましくは10 mg以下である。この低毒性金属残留量が30 mg以下であると、生体組織に対する安全性が高い。
【0021】
(b) その他の成分
ポリエステルは、芳香族ポリエステル以外に、必要に応じて、脂肪族ポリエステル、その他の熱可塑性樹脂、天然の有機高分子等を含有しても良い。脂肪族ポリエステルとして、ポリグリコール酸、ポリ乳酸等が挙げられる。その他の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。天然の有機高分子として、コラーゲン、セルロース等が挙げられる。
【0022】
(2) ポリエステル繊維
ポリエステル繊維は上記ポリエステルからなる。ポリエステル繊維の作製には湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法等公知の紡糸技術が適用できる。ポリエステル繊維は、これにより形成された布に柔軟性が必要であるので、サイジング剤で接合されたマルチフィラメントであるのが好ましい。マルチフィラメントは必要により撚りがかかっていてもよい。ポリエステル繊維の繊度は0.5〜5,000デシテックスが好ましく、10〜1,000デシテックスがより好ましい。この繊度が0.5デシテックス未満であると、ポリエステル繊維布の機械的強度が低い。一方5,000デシテックス超であると、ポリエステル繊維布の柔軟性が低い。ポリエステル繊維の引張強度は1cN/デシテックス以上が好ましく、3cN/デシテックス以上がより好ましい。
【0023】
(3) ポリエステル繊維布
ポリエステル繊維布は上記ポリエステル繊維からなる。ポリエステル繊維布の三次元繊維組織の種類は特に制限されないが、織物、編物及び不織布が好ましく、生体組織の進入性の観点から織物がより好ましい。
【0024】
織物としては、例えば、模紗織り(模紗組織織物)、絡み織り(もじり織り)、平織り、多軸織り等が挙げられる。使用部位に応じた織物を選択するのが望ましい。例えば、模紗組織織物は、長軸方向の引張に対して織組織の目崩れが少なく、生体組織に近い伸縮性及び柔軟性を有し、生体組織が進入しやすいため、骨組織の修復に適している。
【0025】
ポリエステル繊維布の繊維密度(例えば織物の経密度や緯密度等)は特に限定されず、用途に応じて選択すればよい。
【0026】
(4) 生体組織修復材料
生体組織修復材料は、以上のようなポリエステル繊維布からなり、これに生体組織が進入し、成長する三次元構造を有し、生体組織に包み込まれることにより生体内で固定化される。本発明の生体組織修復材料は、低毒性金属残留量が低減されているので、生体組織に対する安全性が高い。生体組織修復材料は、生体組織を部分的又は全体的に置換するのに用いることができる。生体組織修復材料は、修復する部位に応じて、扁平状、湾曲状、円筒状等の種々の形状で使用することができる。生体組織修復材料により修復できる生体組織として、例えば骨、軟骨、靭帯、腱等の結合組織;上皮組織等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。生体組織修復材料は、特に結合組織の修復用途に好適である。
【0027】
[2] ポリエステル繊維布製生体組織修復材料の製造方法
(1) ポリエステル繊維布の形成
上記ポリエステル繊維を用いて布を形成する。ポリエステル繊維布は、織物、編物及び不織布のいずれであっても、公知の方法により形成できる。
【0028】
(2) 脱脂
ポリエステル繊維布は、紡糸時、織物形成時等に油が付着するので、脱脂(洗浄)する。洗浄には有機溶媒を用いる。有機溶媒として、例えば(a) メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール、(b) メチルエーテル、エチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジオキサン等のエーテル、(c) アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン、(d) 酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、(e) ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素、(f) クロロホルム、四塩化炭素、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素、(g) 三フッ化エタン,C6F14,C7F16等の鎖状フルオロカーボン、(h) C5H3F7等の環状ハイドロフルオロカーボン、(i) C4F9OCH3,C4F9OC2H5等のハイドロフルオロエーテル、(j) C4F9OCF3,C4F9OC2F5等のパーフルオロエーテル等が挙げられる。
【0029】
ポリエステル繊維布の洗浄は、有機溶媒の蒸気に接触させる方法、有機溶媒に浸漬する方法、有機溶媒をシャワーする方法、又はこれらの組合せにより行うことができる。有機溶媒による処理温度は、室温〜ポリエステルのガラス転移温度(Tg)の範囲内が好ましく、40℃〜Tgの範囲内がより好ましい。PETは、一般に約70〜80℃のガラス転移温度を有する。ガラス転移温度はJIS K7121により測定することができる(以下同じ)。処理時間は処理温度に応じて、1分〜5日の範囲で適宜選択すればよいが、好ましくは5分〜1日である。有機溶媒は、ポリエステル繊維布1質量部に対し、10〜2,000質量部使用するのが好ましい。
【0030】
(3) 触媒除去
脱脂したポリエステル繊維布から上記低毒性金属系触媒を除去する。触媒の除去には、温水及び/又は酸を用いる。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ピロリン酸等の無機酸や、蟻酸、酢酸、しゅう酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸等が挙げられるが、無機酸が好ましい。酸は0.01〜2mol/Lの濃度の溶液としたものを用いるのが好ましい。この濃度が0.01 mol/L未満だと触媒の除去が不十分である。一方2mol/L超だと、ポリエステル繊維布が劣化する恐れがある。
【0031】
ポリエステル繊維布からの触媒除去は、温水及び/又は酸溶液に浸漬する方法、温水及び/又は酸溶液をシャワーする方法、あるいはこれらの組合せにより行うことができる。
【0032】
温水及び酸溶液による処理温度は、いずれを使用する場合でも、(ポリエステルのTg−20℃)〜(Tg+80℃)の範囲内が好ましく、(Tg−15℃)〜(Tg+75℃)の範囲内がより好ましく、(Tg−10℃)〜(Tg+70℃)の範囲内が最も好ましい。温水及び酸溶液の温度を100℃超とする場合、加圧すればよい。例えばポリエステル繊維布を温水及び/又は酸溶液に浸漬して100℃超で処理する場合、オートクレーブ等を使用して加圧すればよい。圧力は、所望の処理温度に応じて適宜設定すればよい。PET繊維布を温水及び/又は酸溶液で処理する場合の具体的な処理温度は、50〜150℃が好ましく、55〜145℃がより好ましく、60〜140℃が最も好ましい。
【0033】
処理時間は、処理温度に応じて、5分〜10日の範囲で適宜選択すればよいが、好ましくは10分〜5日である。温水及び酸溶液は、ポリエステル繊維布1質量部に対し、それぞれ10〜2,000質量部使用するのが好ましい。
【0034】
(4) 乾燥
温水及び/又は酸溶液で処理したポリエステル繊維布を、加熱乾燥法、風乾法等により乾燥する。乾燥温度は、ポリエステルのTg以下であるのが好ましく、Tgより5℃以上低いのがより好ましい。
【0035】
(5) 滅菌
乾燥後のポリエステル繊維布を滅菌するのが好ましい。限定的ではないが、滅菌は、ポリエステル繊維布を、オートクレーブ中、121〜135℃の温度で10〜60分間加熱処理することにより行うことができる。
【0036】
以上のような製造方法により、生体組織に対する安全性、機械的強度、伸縮性及び柔軟性に優れたポリエステル繊維布製生体組織修復材料を効率良く安価に製造することができる。
【0037】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1
二酸化ゲルマニウム触媒を用いて合成したPET繊維(繊維径25μm、繊度280デシテックス)を経糸及び緯糸として用い、経密度及び緯密度をそれぞれ30本/インチとして、幅1cmの6本模紗織を作製した。この模紗織100 cm2をソックスレー抽出装置にセットし、沸点に加熱したエタノール500 gを用いて、15分の抽出による洗浄を10回繰り返し、脱脂した。次いでオートクレーブに入れ、純水500 mL中、121℃で20分間処理して触媒を除去した後、60℃で乾燥することにより、PET繊維の模紗織からなる生体組織修復材料を作製した。
【0039】
実施例2
脱脂したPET繊維の模紗織を、純水500 mL中、常圧下80℃で72時間処理した以外実施例1と同様にして、生体組織修復材料を作製した。
【0040】
実施例3
脱脂したPET繊維の模紗織を、濃度0.1 mol/Lの塩酸500 mL中、常圧下80℃で24時間処理し、常温の純水で洗浄した以外実施例1と同様にして、生体組織修復材料を作製した。
【0041】
実施例4
脱脂したPET繊維の模紗織を、濃度0.1 mol/Lの塩酸500 mL中、常圧下80℃で72時間処理し、常温の純水で洗浄した以外実施例1と同様にして、生体組織修復材料を作製した。
【0042】
実施例1〜4で得られた生体組織修復材料について、ゲルマニウム残留量及び引張強度を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0043】
(1) ゲルマニウム残留量
約50 mgの生体組織修復材料サンプルに、硝酸、フッ酸及び過酸化水素水を加え、マイクロウェーブ分解装置を用いてサンプルを溶解した。得られた試験液に純水を加えて20 mLとし、ICP質量分析装置でゲルマニウム濃度を測定した。この試験を3回行い、平均値を求めた。サンプルを溶解していない溶液(硝酸+フッ酸+過酸化水素水+純水)のゲルマニウム濃度を測定して空試験濃度とし、式:ゲルマニウム残留量(mg/kg)=[試験液のゲルマニウム濃度平均値(ng/mL)−空試験濃度(ng/mL)]×20(mL)/サンプル量(mg)に従い、生体組織修復材料1kg当たりのゲルマニウム残留量を求めた。
【0044】
(2) 引張強度
幅1cmの短冊状試験片を、引張試験機のチャックの間に保持し(チャック間距離100 mm)、室温下、引張速度0.1 mm/秒で引張試験を行い、破断したときの荷重(最大引張強度)を10回測定し、平均値を求めて引張強度(kN)とした。
【0045】
【表1】

【0046】
表1(続き)

【0047】
注:(1) ソックスレー抽出法。0.25時間×10回。
(2) 0.01 mol/L。
(3) EtOHはエタノールを表す。
(4) 脱脂したPET繊維製模紗織をオートクレーブに入れて空気雰囲気下121℃で20分間処理。
【0048】
比較例1
実施例1と同じPET繊維の模紗織を脱脂処理及び触媒除去せずに、ゲルマニウム残留量及び引張強度を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
比較例2
実施例1と同じPET繊維の模紗織に対して、上記と同様にして脱脂処理のみを行った後、ゲルマニウム残留量及び引張強度を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
比較例3
実施例1と同じPET繊維の模紗織に対して、上記と同様にして脱脂処理を行い、オートクレーブに入れて空気雰囲気下121℃で20分間処理し、60℃で乾燥した後、ゲルマニウム残留量及び引張強度を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
表1から、実施例1〜4の生体組織修復材料は、いずれもゲルマニウム残留量が10 mg/kg以下であり、触媒除去処理をしていない比較例1〜3の材料と比較して明らかに減少していた。また実施例1〜4の生体組織修復材料は、いずれも比較例1〜3の材料と同等の引張強度であった。これから触媒除去処理によりPET繊維強度が劣化しなかったことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低毒性金属系触媒を用いて合成されたポリエステルを含有する繊維布からなる生体組織修復材料であって、前記ポリエステル1kg中の前記触媒に由来する低毒性金属残留量が30 mg以下であることを特徴とするポリエステル繊維布製生体組織修復材料。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエステル繊維布製生体組織修復材料において、前記低毒性金属系触媒がゲルマニウム系触媒であることを特徴とするポリエステル繊維布製生体組織修復材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリエステル繊維布製生体組織修復材料において、前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とするポリエステル繊維布製生体組織修復材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル繊維布製生体組織修復材料において、前記ポリエステルを含有する繊維布が織物又は編物であることを特徴とするポリエステル繊維布製生体組織修復材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル繊維布製生体組織修復材料からなることを特徴とする結合組織修復材料。
【請求項6】
低毒性金属系触媒を用いて合成されたポリエステルを含有する繊維布に対して、有機溶媒による脱脂、並びに温水及び/又は酸による前記触媒の除去を行うことを特徴とするポリエステル繊維布製生体組織修復材料の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のポリエステル繊維布製生体組織修復材料の製造方法において、前記低毒性金属系触媒がゲルマニウム系触媒であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のポリエステル繊維布製生体組織修復材料の製造方法において、前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載のポリエステル繊維布製生体組織修復材料の製造方法において、前記ポリエステルを含有する繊維布として織物又は編物を形成することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかに記載のポリエステル繊維布製生体組織修復材料の製造方法において、前記有機溶媒としてエタノールを用い、前記酸として濃度が0.01〜2mol/Lの塩酸を用いることを特徴とする方法。