ポリエチレングリコールおよび尿素による免疫反応増強方法
【課題】抗原と抗体との反応を増強し、これを適用した免疫測定等では測定感度を向上できる、抗原抗体反応の増強方法を提供する。
【解決手段】抗原と抗体とをポリエチレングリコール及び尿素の共存下で反応させる方法と、当該方法を実施するための、抗原又は抗体のいずれか、ポリエチレングリコール及び尿素を含む試薬により前記課題を解決する。
【解決手段】抗原と抗体とをポリエチレングリコール及び尿素の共存下で反応させる方法と、当該方法を実施するための、抗原又は抗体のいずれか、ポリエチレングリコール及び尿素を含む試薬により前記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原と抗体との反応を増強する方法に関するものである。本発明よれば、臨床診断の分野において常用されている抗体と抗原(当該抗体によって認識される物質)との反応を利用する免疫測定において、抗体と抗原との免疫反応を増強することで、高感度に検体(免疫測定の対象となる患者由来の血清、血漿等の血液由来成分や、尿等の、生体試料)中の抗原を検出する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
低濃度のポリエチレングリコールを共存させることにより、免疫反応を促進する技術は公知である(例えば特許文献1)。一方、尿素に関しては、難水溶性蛋白質の処理剤としての利用例や、感染症に関する自己抗体を検出するための免疫反応における非特異抗体結合低減剤としての利用例が報告されている(例えば非特許文献1から3)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−181182号公報
【非特許文献1】J.Virol.Methods 52、95−104、1995年
【非特許文献2】J.Clin.Lab.Anal.8、16−21、1994年
【非特許文献3】J.Med.Virol.33、100−105、1991年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の通り、特許文献1では、ポリエチレングリコールを共存させることにより、免疫反応を促進することが開示されている。しかし、特許文献1に開示されているのは、1%(重量/重量)に満たない、極めて低濃度のポリエチレングリコールを共存させる技術である。これは、高濃度のポリエチレングリコールの共存は蛋白質の沈殿を引き起こし、結果的に免疫反応を生じさせることが困難になり、測定結果の再現性が失われる可能性があり、また、高濃度のポリエチレングリコールの共存は抗原特異的反応と同時に非特異的反応の反応性をも上昇させるため、S/N比(抗原特異的反応によるシグナル/非特異的シグナルの比)で考えると、大きな性能(測定精度)向上は期待できない。
【0005】
一方、尿素については、非特許文献はいずれも尿素を非特異抗体結合低減剤として利用することしか開示していない。
【0006】
抗原と抗体との免疫反応を利用する免疫測定等では、測定感度は非常に重要な因子である。従って本発明は、抗原と抗体との反応を増強し、これを適用した免疫測定等では測定感度を向上できる、抗原抗体反応の増強方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
免疫測定等により、検体中に含まれる微量成分を定量することによる病気の診断がなされているが、検体中の微量成分をより高感度に検出するために様々な手法が行われている。本発明者は、かかる免疫測定における高感度化ついて鋭意研究を重ねた結果、免疫反応促進剤であるポリエチレングリコールを、単独ではなく、尿素と共に使用することで、抗原と抗体との免疫反応を増強し、免疫測定等における測定感度を向上し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、抗原抗体反応を増強する方法であって、抗原と抗体とをポリエチレングリコール及び尿素の共存下で反応させる方法である。また本発明は、抗原抗体反応を増強する試薬であって、抗原又は抗体のいずれか、ポリエチレングリコール及び尿素を含む試薬である。免疫測定に適用した場合を例として、以下、本発明の方法及び試薬を詳細に説明する。
【0008】
本発明では、抗原と抗体との反応を利用した免疫測定において、抗原と抗体とをポリエチレングリコール及び尿素の共存下で反応させる。いかなる順序により抗原、抗体、ポリエチレングリコール及び尿素を混合して共存せしめるかについて、本発明では特に制限はない。例えば、抗原と抗体とを混合して免疫反応を開始し、速やかにポリエチレングリコールと尿素を順次、又は予め混合しておくことで同時に、添加しても良い。抗原と抗体との反応は迅速に生じることから、本発明による免疫反応の増強効果(免疫測定に適用した場合の測定感度の向上)という効果を最大限引き出すためには、抗原と抗体との免疫反応が開始される瞬間からポリエチレングリコール及び尿素の両者を共存させておくことが好ましい。このためには、例えば、抗原又は抗体のいずれか一方に、ポリエチレングリコール及び尿素の両方を予め混合しておき、これを抗原又は抗体の他方と混合することが例示できる。この好ましい例では、ポリエチレングリコールと尿素の共存が、前記混合液の一定量を添加するという単一の操作によって実施できるという意味においても、特に好ましい。
【0009】
例えば免疫測定が、(1)対象サンプルと担体に固定した抗体との反応、(2)いわゆるB/F分離、(3)分離された担体と標識を結合した抗体の反応、の順で実施されるいわゆる2ステップサンドイッチ法である場合、ポリエチレングリコールと尿素は、(1)又は(3)のいずれかの反応の際に共存させれば一定の効果を得ることができるが、測定感度の向上等、本発明の効果を最大限引き出すためには(1)と(3)の両方の反応の際に共存させることが好ましい。そのような意味においては、対象サンプル、担体に固定した抗体及び標識を結合した抗体を1段階で反応させる1段階サンドイッチ法又はこれに類する測定法であれば、その反応の際にポリエチレングリコールと尿素を共存させるのみで発明の効果を最大限引き出すことができ、また操作に要するステップ数も減少できることから、特に好ましい。
【0010】
本発明は、従来から実施されている免疫測定に、特別の制限なしに適用することができる。本発明を適用し得る免疫測定として、例えば、酵素標識、アイソトープ標識、蛍光標識又は発光標識等を利用する、競合法、サンドイッチ法又は蛍光偏光法等による測定を例示することができる。またホモジニアス測定法や表面プラズモン共鳴分析法を利用した結合測定等に適用することも可能である。
【0011】
本発明における抗体とは、抗原性物質に対してヒト、マウス、ウサギ、ヤギその他が産生するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれでも良い。抗原は、当該抗体が特異的に識別し結合する相手方であり、特定の疾病に関連する生体蛋白、ホルモン等の他、環境ホルモン等であっても良い。また場合によっては抗体そのものも「抗原」として本発明の対象とすることができる。
【0012】
ポリエチレングリコールとしては平均分子量が種々のものが市販されているが、本発明では分子量に特別の制限はない。使用するポリエチレングリコールの量(共存させるポリエチレングリコールの濃度)についても特に制限はなく、抗原と抗体との反応を生じさせる溶液中における濃度(最終濃度)で1〜10%(重量/重量)とすれば良い。ポリエチレングリコールの終濃度については、その分子量により最適な範囲があるため、本発明の実施に先立って具体的な条件を設定して予備的実験を行って決定することが特に好ましい。一例を説明すると、本発明者の知見によれば、平均分子量が6000のポリエチレングリコールを使用する場合、最終濃度を3〜7%とすることにより、本発明の効果を最大限引き出すことが可能である。
【0013】
尿素については、抗原と抗体との反応を生じさせる溶液中における濃度(最終濃度)で1〜4モル/リットルとすれば良いが、使用するポリエチレングリコールの使用濃度等を考慮して決定することが好ましい。例えば、本発明者の知見によれば、分子量6000のポリエチレングリコールを最終濃度5%で使用する場合、最終濃度を2〜4モル/リットル、特に好ましくは3モル/リットルとすることにより、本発明の効果を最大限引き出すことが可能である。
【0014】
前述したように、ポリエチレングリコールと尿素を予め混合しておき、これを検体等と混合する場合、当該混合液は、上述した最終濃度の2倍の濃度で調製しておき、検体と1:1で混合する等することが例示できる。ポリエチレングリコールと尿素の混合液は、10mM程度のTris−HCl等を添加して、抗原と抗体との反応に支障のないpH8程度のpH領域とし、更には非特異的反応を回避するため0.1%(重量/重量)程度の界面活性剤(例えばTween20等)を加えておくことが好ましい。
【0015】
本発明の方法を、例えば免疫測定に適用する際には、通常の免疫測定を実施するための各種試薬に加え、ポリエチレングリコールと尿素を含む試薬セットを用いる。ポリエチレングリコールと尿素は、それぞれ別個の容器に保持して前記試薬セットの構成物としても良いが、両者を共存させることによって変質等が生じることもないため、両者を混合した状態とすることが好ましい。具体的には、抗原抗体反応に関わる抗原又は抗体の一方、ポリエチレングリコール及び尿素を含む試薬が例示できる。また例えば、測定されるべき抗原以外の成分(例えば担体と結合した抗体及び酵素標識した抗体等)とともに、ポリエチレングリコールと尿素を単一の容器に凍結乾燥した状態にしておき、対象サンプルを添加するのみで本発明の実施を可能としておくことも例示できる。このような容器であれば、対象サンプルの当該容器への添加によって本発明を実施可能であるから、操作の容易性・簡便性を向上できるとともに、操作の再現性をも向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
ポリエチレングリコールと尿素の両者を共存させることにより、抗原と抗体との免疫反応を増強することが可能である。そして免疫反応を増強することによって、免疫測定における測定感度を飛躍的に向上させることが可能となる。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。
実施例1
免疫測定における対象抗原として、ヒト Staphylococcal Nuclease Domain containing 1(以下「SND1」とする)を選択し、その測定のための試薬を準備した。
【0018】
まず、RT−PCRを用い、常法に従ってSND1(Genbank accession number NM_014390.2)のcDNAをヒト前立腺癌細胞LnCapからクローニングした。クローニングしたcDNAから終止コドンを除去した後、ヒスチジン6残基をコードするコドンを追加して調製したポリヒスチジン−タッグSND1をバキュロウイルス用トランスファーベクターpFASTBac−1(インビトロジェン社製)に導入し、Bac−to−Bacシステム(インビトロジェン社製)を用いてプロトコールに従いバキュロウイルスを調製した。
【0019】
上記のように調製したバキュロウイルスを用い、常法に従って Sf21に感染させて培養を行い、ポリヒスチジン−タッグSND1含む発現培養上清を調製した。この培養上清をTBS(Tris buffer saline;10mM Tris−HCl、150mM NaCl、pH7.4)で透析後、HisTrap HP金属キレートカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス(株)製、Cat.NO.17−5248−01)を用いてプロトコールに従い精製操作を行った。
【0020】
図1は、精製操作により調整されたポリヒスチジン−タッグSND1精製品のSDS−PAGE像を示すものである。精製SND1をBCA蛋白定量キット(Pierce Bioctechnology社製、Cat.No.23225)により濃度測定し、SND1濃度とした。
【0021】
モノクローナル抗体は常法に従い調製した。まず、Balb/Cマウス(7週令のメス)に対し、SND1(50μg)をフロイントの完全アジュバントと共に腹腔に免疫した。次に、当該マウスから得たB細胞とマウスミエローマ細胞株PAIとを常法に従って融合し、モノクローナル抗体産生株を取得した。取得した細胞が産生するモノクローナル抗体の中から、SND1をサンドイッチELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)測定可能な2種のモノクローナル抗体を選択した。選択したモノクローナル抗体の、精製SND1又はヒト前立腺癌細胞LnCapとの反応性を図2に示す。
実施例2
水不溶性の球状担体(内部にフェライトを練り込んだ粒子径約1.5mmのEVA製)に、実施例1で選択したモノクローナル抗体の一方を100ng/担体となるよう物理的に吸着させた後、BSAでブロッキング処理を行った。
【0022】
磁力透過性の容器(容量1.2ml)に12個の担体を入れた後、0.2μg/mLのアルカリ性フォスファターゼ標識を施した、実施例1で選択したモノクローナル抗体の他方を含む緩衝液(3% BSA、5%水溶性ゼラチン、10mMトリス緩衝液、pH8.0)を加え、凍結乾燥した。
実施例3
実施例2で作製した試薬を用い、精製SND1を子牛血清(FBS)に添加したものを対象サンプルとして、尿素の測定値に及ぼす影響を検証した。尿素を含む10mM Tris−HCl、0.1% Tween20(pH8)を対象サンプルと1:1の割合で混合し、混合液150μLを容器に添加した。37℃で10分は40分間、免疫反応を生じさせた後、B/F分離操作を行って遊離の標識抗体を担体から分離除去し、アルカリ性フォスファターゼの基質である4メチルウンベリフェリルリン酸を加え、4メチルウンベリフェロンの生成速度Rate(nM/秒)を測定した。なお測定は、市販の免疫測定装置(東ソー(株)製、商品名AIA−600II)を用いて自動的に実施した。この装置では、磁力透過性の容器に対して対象サンプルを150μL加え、37℃で10分又は40分間、担体を磁石によって攪拌し、その状態で免疫反応させるものである。またこの装置は、アルカリ性フォスファターゼの基質である4メチルウンベリフェリルリン酸を加えた後20から295秒までの酵素反応分解物(4メチルウンベリフェロン)の単位時間あたりの生成速度(nM/秒)を測定するものである。
結果を図3に示す。
【0023】
図3に示した通り、尿素濃度1モル/リットル(M)共存の場合に、40分の免疫反応においてわずかな反応性上昇が見られた以外は、共存尿素濃度上昇により、非特異的結合とSND1特異的結合のいずれも低下した。40分の免疫反応における共存尿素濃度1Mでの反応性上昇も、非共存時に比較すると33%の上昇とわずかなものであり、反応性向上による高感度化は尿素のみでは達成できないことが分かる。
実施例4
実施例3同様の方法で、ポリエチレングリコールの測定値に及ぼす影響を検証した。ポリエチレングリコールはPEG6000(ナイアライテスク社製、平均分子量7400〜12000)を用いた。結果を図4に示す。
【0024】
図4に示した通り、10分又は40分いずれの免疫反応時間においても共存ポリエチレングリコール濃度上昇により、非特異的結合とSND1特異的結合いずれも上昇した。その上昇率は、SND1特異的結合において最大Rate値を示す10分反応での共存ポリエチレングリコール濃度5%時、40分反応での4%時において、ポリエチレングリコール非共存時に比較してそれぞれ、11.0倍、4.1倍であった。しかし、SND1を含まないゼロサンプルについてもそれぞれ、19.9倍、33.2倍と上昇してしまうため、抗原特異的シグナル/非特異的ノイズ比(S/N比)は向上せず、ポリエチレングリコールのみでは、反応性は向上できても高感度化は達成できないことが分かる。
実施例5
平均分子量の異なるポリエチレングリコール、PEG4000(ナイアライテスク社製、平均分子量3000〜3700)、PEG6000(ナイアライテスク社製、平均分子量7400〜12000)、PEG20000(ナイアライテスク社製、平均分子量15000〜25000)を用い、実施例3同様の方法で、SND1を含まないゼロサンプル及び1μg/mL含む対象サンプルの測定を行った。結果を図5に示す。
【0025】
図5A及びBに示した通り、いずれのポリエチレングリコールにおいても反応性の向上が認められるが、ポリエチレングリコールの分子量によりその効果は異なることが明らかとなった。また、図Cに示す通りポリエチレングリコールのみの添加ではS/N比の向上は認められないことが分かる。
実施例6
実施例3において、10分間の免疫反応において最大のS/N比を示した共存尿素濃度2Mにおいて、更にポリエチレングリコール(PEG6000)を共存させた場合の反応性を検証した。測定方法は実施例3と同様である。結果を図6、図7に示す。
【0026】
図6A及びBに示した通り、ポリエチレングリコールの共存により、SND1特異的反応性及び非特異的反応性のいずれも上昇していることが分かる。しかし、図6Cに示した通り、ポリエチレングリコール2.5%の共存によりS/N比の向上は飛躍的となる。また図7に示した通り、尿素とポリエチレングリコールが非共存時の反応性と比較すると、尿素2Mのみの共存ではSND1を含まないゼロサンプル測定値がわずかに低減(0.6倍)するものの、SND1含有サンプル測定値は変動しない(0.9倍)。結果として若干のS/N比の上昇(1.6倍)が認められるだけであり、尿素の共存のみでの高感度化は達成できない。一方、尿素に加えポリエチレングリコールを共存させた場合には、SND1を含まないゼロサンプル測定値の低減は認められない(0.9倍)ものの、SND1含有サンプル測定値の上昇は大きく(4.0倍)、結果として4.2倍のS/N比上昇が認められ、高感度化が達成されていることが分かる。
実施例7
実施例4の10分間の免疫反応において抗原特異的反応性が最大値を示した共存ポリエチレングリコール(PEG6000)濃度5%において、更に尿素を共存させた場合の反応性を検証した。結果を図8、図9に示す。
【0027】
図8A、Bに示した通り、尿素共存により非特異的反応性は減少し、SND1特異的反応性は共存尿素濃度が2Mとなるまで上昇が認められる。そして図8Cから明らかなように、共存尿素濃度3Mの時にS/N比は飛躍的に向上する。また図9に示した通り、尿素及びポリエチレングリコール非共存時の反応性と比較して、ポリエチレングリコールのみの共存ではSND1含有サンプル測定値は飛躍的に向上する(10.7倍)ものの、SND1を含まないゼロサンプル測定値も上昇してしまい(20.9倍)、結果としてS/N比(0.5倍)の向上は認められない。これに対し、更に3M尿素を共存させた場合には、SND1含有サンプル測定値は飛躍的に向上し(8.4倍)、かつゼロサンプルの測定値の上昇を抑えられる(1.6倍)。ポリエチレングリコール及び尿素の共存により、結果として5.2倍のS/N比上昇が認められ、高感度化が達成されていることが分かる。
実施例8
実施例3の40分間の免疫反応においてS/N比が最大値を示した共存尿素濃度2Mにおいて、更にポリエチレングリコール(PEG6000)を共存させた場合の反応性を検証した。結果を図10、図11に示す。
【0028】
図10A、Bに示した通り、ポリエチレングリコール共存により非特異的反応性は4%ポリエチレングリコール共存時より急激に上昇し、SND1特異的反応性は5%共存時をピークに反応性向上が認められる。しかし、図10Cから明らかなように、ポリエチレングリコール1%共存によりS/N比は最大を示すものの、10分の免疫反応時に比較しその上昇率は低い。また図11に示した通り、尿素及びポリエチレングリコール非共存時の反応性に比較して、尿素2Mとポリエチレングリコール1%の共存時には、ゼロサンプル測定値の低減が大きく(0.13倍)、SND1含有サンプル測定値の上昇(1.57倍)とあいまって、結果として11.4倍のS/N比上昇が認められ、高感度化が達成されていることが分かる。
実施例9
実施例3の40分間の免疫反応において抗原特異的反応性が最大値を示した共存ポリエチレングリコール(PEG6000)濃度4%において、更に尿素を共存させた場合の反応性を検証した。結果を図12、13に示す。
【0029】
図12A、Bに示した通り、尿素共存により非特異的反応性は急激に減少し、SND1特異的反応性は1.5%共存時をピークに反応性向上が認められる。図12Cから明らかなように、3Mの尿素を共存させることによりS/N比は飛躍的に上昇した。図13に示した通り、尿素及びポリエチレングリコール非共存時の反応性と比較して、3M尿素及び4%ポリエチレングリコールを共存させた場合には、ゼロサンプル測定値を低減し(0.34倍)、SND1含有サンプル測定値の上昇(2.27倍)とあいまって、結果として6.6倍のS/N比上昇が認められ、高感度化が達成されていることが分かる。
実施例10
SND1の1000ng/mL溶液をベースとして1/2倍希釈系列サンプルを調製し、実施例3の方法に従って10分及び40分の免疫反応を実施した。免疫反応を増強するため、(1)ポリエチレングリコール及び尿素非共存、(2)2M尿素のみ共存、又は(3)4%ポリエチレングリコール(PEG6000)及び3M尿素共存、の各条件下で免疫測定を実施した。結果を図14に示す。
【0030】
図14A、Bに示した通り、10分、40分いずれの免疫反応時間においても、ポリエチレングリコール4%と尿素3Mを共存させると、グラフの傾きが大きくなる(反応性が高くなる)ことが分かる。尿素2Mのみを共存させた場合は、非共存の場合と比較してグラフの傾きが大きくなることはなく、むしろグラフは低値側へシフトし、反応性が全体的に低下していることが分かる。
実施例11
実施例10と同様に、SND1の50ng/mL溶液をベースとして1/2倍希釈系列サンプルを調製し、40分の免疫反応を実施した。免疫反応を増強するため、(1)ポリエチレングリコール及び尿素非共存、(2)2M尿素のみ共存、又は(3)4%ポリエチレングリコール(PEG6000)及び3M尿素共存、の各条件下で免疫測定を実施した。結果を図15、16に示す。
【0031】
図15に示した通り、ポリエチレングリコール4%と尿素3Mを共存させると、グラフの傾きが大きくなり(反応性が高くなり)、非共存の場合に比較して非特異的反応が低減されることが分かる。尿素2Mのみを共存させた場合は、非特異的反応の低減は認められるものの、非共存の場合と比較してグラフの傾きが大きくなることはなく、むしろグラフは低値側へシフトし、反応性が全体的に低下していることが分かる。
【0032】
図16A、B、Cは検出感度算出のための(測定値平均+2×標準偏差)が隣り合う測定値の(測定値平均−2×標準偏差)と重なり合わない最少測定点の(測定値平均+2×標準偏差)を破線で示したものである。そして表1は、測定値より算出した検出感度、測定値のCV(coefficint varaety)20%に相当する濃度を、測定値の累乗近似により作成したグラフから算出した実行感度、ゼロサンプル測定値平均+2×標準偏差の値に相当する濃度を10ng/mL以下の測定値を1次回帰式した際の相関式より算出した検出限界、の3種類の感度評価をまとめたものである。図16又は表1のいずれの感度評価方法においても、ポリエチレングリコールと尿素を共存させる免疫反応増強法により、10倍以上の感度向上が認められることが分かる。
【0033】
【表1】
実施例12
水不溶性の球状担体(内部にフェライトを練り込んだ粒子径約1.5mmのEVA製)に、実施例1で選択したモノクローナル抗体の一方を100ng/担体となるよう物理的に吸着させた後、BSAでブロッキング処理を行った。磁力透過性の容器(容量1.2ml)に12個の担体を入れた後、緩衝液(3% BSA、5%水溶性ゼラチン、10mMトリス緩衝液、pH8.0)を加え、凍結乾燥した。
【0034】
0.2μg/mLのアルカリ性フォスファターゼ標識抗SND1抗体(実施例1で選択したモノクローナル抗体の一方)を含む1%BSA、10mMトリス緩衝液、150mM NaCl、0.1% Tween−20、pH8.0を準備し、実施例3と同様の免疫測定装置を用いて測定を実施した。まず容器に対象サンプルを150μL添加して37℃で20分間反応させた後、未反応物質をB/F分離し、上述した標識抗SND1抗体の溶液100μL加えた。37℃で20分間反応させた後、B/F分離操作を行って遊離の標識抗SND1抗体を担体から分離除去し、4メチルウンベリフェリルリン酸を加え、基質添加後20から295秒までの酵素反応分解物(4メチルウンベリフェロン)の単位時間あたりの生成速度(nM/秒)を測定した。
【0035】
対象サンプルは、SND1の1000ng/mL溶液をベースとし調製した1/2倍希釈系列サンプルであり、(1)ポリエチレングリコール及び尿素を含む溶液、(2)2M尿素のみ含む溶液、又は(3)4%ポリエチレングリコール(PEG6000)及び3M尿素を含む溶液、のいずれかの溶液と対象サンプルを1:1で混合後、その150μLを容器に加えて測定を実施した。結果を図17に示す。
【0036】
図17A、Bに示した通り、ポリエチレングリコールと尿素が非共存の場合又は尿素のみ共存の場合は前述した実施例で述べたいわゆる「1ステップ測定」に比較して感度が大きく劣っていることが分かる。一方、図17Cに示した通り、ポリエチレングリコールと尿素が共存した場合、高感度化(検出感度 15.6ng/ml)が達成されているものの、いわゆる「1ステップ測定」における検出感度(1.56ng/ml)に比較して10倍ほど低い値となった。実施例11と同様に各感度の一覧を表2に示したが、検出感度はCV20%となる濃度がなく算出できなかった。
【0037】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、実施例で調製したSND1の電気泳動の結果を示す図である。蛋白質はクマシーブリリアントブルーで染色している。
【図2】図2は、実施例で調製したSND1(3ng/レーン)及びLnCap細胞(7000cells/レーン)を電気泳動し、ポリフッ化ビニリデン膜に転写後、アルカリ性フォスファターゼ標識抗SND1抗体(実施例にて選択したもの2種類)でウエスタンブロッティングを行った際の結果を示す図である。検出は、CDP−STAR(PerkinElmer社製)で行った。CBBはクマシ−ブリリアントブルーにて電気泳動した全蛋白質を染色した染色像を示す。
【図3】図3A、Bは免疫反応10分、C、Dは40分の各種尿素(Urea)濃度で測定した結果を示すものである。A、CはSND1を含まないFBS(zero sample)を、BはSND1を2μg/mL含むFBSを測定したものであり、DはSND1を1μg/mL含むFBSを測定したものである。なお各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図4】図4A、Bは免疫反応10分、C、Dは40分の各種ポリエチレングリコール濃度で測定した際の結果を示すものである。A、CはSND1を含まないFBS(zero sample)を、BはSND1を2μg/mL含むFBSを測定したものであり、DはSND1を1μg/mL含むFBSを測定したものである。なお各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図5】図5は、平均分子量の異なるポリエチレングリコール3種による反応性の違いを示す図である。Aはゼロサンプル、Bは1μg/mL SND1を含むサンプル、そしてCは1μg/mL SND1を含むサンプルの測定結果をゼロサンプル測定結果で除したS/N比を示す。
【図6】図6は、2M尿素とポリエチレングリコールが共存した場合の、免疫反応10分での反応性を検証した結果を示す図である。Aはゼロサンプルの測定結果、BはSND1を2μg/mL含むFBSの測定結果、そしてCはS/N比を示し、各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図7】図7は、尿素2Mの共存、尿素2M及びポリエチレングリコール2.5%の共存、尿素及びポリエチレングリコール非共存の場合の、ゼロサンプルの測定結果、SND1を2μg/mL含むサンプルの測定結果、そしてS/N比を示す。
【図8】図8は、5%ポリエチレングリコールと尿素が共存した場合の、免疫反応10分での反応性を検証した結果を示す図である。Aはゼロサンプルの測定結果、BはSND1を2μg/mL含むFBSの測定結果、そしてCはS/N比を示し、各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図9】図9は、ポリエチレングリコール5%の共存、ポリエチレングリコール5%及び尿素3Mの共存、尿素及びポリエチレングリコール非共存の場合の、ゼロサンプルの測定結果、SND1を2μg/mL含むサンプルの測定結果、そしてS/N比を示す。
【図10】図10は、2M尿素とポリエチレングリコールが共存した場合の、免疫反応40分での反応性を検証した結果を示す図である。Aはゼロサンプルの測定結果、BはSND1を2μg/mL含むFBSの測定結果、そしてCはS/N比を示し、各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図11】図11は、尿素2M及びポリエチレングリコール1%の共存、尿素及びポリエチレングリコール非共存の場合の、ゼロサンプルの測定結果、SND1を2μg/mL含むサンプルの測定結果、そしてS/N比を示す。
【図12】4%ポリエチレングリコールと尿素が共存した場合の、免疫反応40分での反応性を検証した結果を示す図である。Aはゼロサンプルの測定結果,はSND1を1μg/mL含むFBSの測定結果、そしてCはS/N比示し、各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図13】図13は、ポリエチレングリコール4%及び尿素3Mの共存、尿素及びポリエチレングリコール非共存の場合の、ゼロサンプルの測定結果、SND1を1μg/mL含むサンプルの測定結果、そしてS/N比を示す。
【図14】図14は、1000ng/mLをベースとして1/2希釈系列にて調製したSND1サンプルを、A;10分の免疫反応、B;40分の免疫反応で測定した場合の反応性を示す図である。測定は3重測定で行い、平均値±2×標準偏差値を示した。
【図15】図15は、50ng/mLをベースとして1/2希釈系列にて調製したSND1サンプルを40分の免疫反応で測定した際の反応性を示す図である。測定は5重測定で行い、平均値±2×標準偏差値を示した。
【図16】図16は、A;尿素及びポリエチレングリコール非共存、B;2M尿素共存、C;4%ポリエチレングリコール及び3M尿素共存の場合の測定結果において、測定値平均+2×標準偏差が、次のサンプルの測定値平均−2×標準偏差を超えない点の測定値平均+2×標準偏差値を破線で示したものである。
【図17】図17は、A;尿素及びポリエチレングリコール非共存、B;2M尿素共存、C;4%ポリエチレングリコール及び3M尿素共存を用いた、いわゆる2ステップ測定の結果において、測定値平均+2×標準偏差が、次のサンプルの測定値平均−2×標準偏差を超えない点の測定値平均+2×標準偏差値を破線で示したものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原と抗体との反応を増強する方法に関するものである。本発明よれば、臨床診断の分野において常用されている抗体と抗原(当該抗体によって認識される物質)との反応を利用する免疫測定において、抗体と抗原との免疫反応を増強することで、高感度に検体(免疫測定の対象となる患者由来の血清、血漿等の血液由来成分や、尿等の、生体試料)中の抗原を検出する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
低濃度のポリエチレングリコールを共存させることにより、免疫反応を促進する技術は公知である(例えば特許文献1)。一方、尿素に関しては、難水溶性蛋白質の処理剤としての利用例や、感染症に関する自己抗体を検出するための免疫反応における非特異抗体結合低減剤としての利用例が報告されている(例えば非特許文献1から3)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−181182号公報
【非特許文献1】J.Virol.Methods 52、95−104、1995年
【非特許文献2】J.Clin.Lab.Anal.8、16−21、1994年
【非特許文献3】J.Med.Virol.33、100−105、1991年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の通り、特許文献1では、ポリエチレングリコールを共存させることにより、免疫反応を促進することが開示されている。しかし、特許文献1に開示されているのは、1%(重量/重量)に満たない、極めて低濃度のポリエチレングリコールを共存させる技術である。これは、高濃度のポリエチレングリコールの共存は蛋白質の沈殿を引き起こし、結果的に免疫反応を生じさせることが困難になり、測定結果の再現性が失われる可能性があり、また、高濃度のポリエチレングリコールの共存は抗原特異的反応と同時に非特異的反応の反応性をも上昇させるため、S/N比(抗原特異的反応によるシグナル/非特異的シグナルの比)で考えると、大きな性能(測定精度)向上は期待できない。
【0005】
一方、尿素については、非特許文献はいずれも尿素を非特異抗体結合低減剤として利用することしか開示していない。
【0006】
抗原と抗体との免疫反応を利用する免疫測定等では、測定感度は非常に重要な因子である。従って本発明は、抗原と抗体との反応を増強し、これを適用した免疫測定等では測定感度を向上できる、抗原抗体反応の増強方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
免疫測定等により、検体中に含まれる微量成分を定量することによる病気の診断がなされているが、検体中の微量成分をより高感度に検出するために様々な手法が行われている。本発明者は、かかる免疫測定における高感度化ついて鋭意研究を重ねた結果、免疫反応促進剤であるポリエチレングリコールを、単独ではなく、尿素と共に使用することで、抗原と抗体との免疫反応を増強し、免疫測定等における測定感度を向上し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、抗原抗体反応を増強する方法であって、抗原と抗体とをポリエチレングリコール及び尿素の共存下で反応させる方法である。また本発明は、抗原抗体反応を増強する試薬であって、抗原又は抗体のいずれか、ポリエチレングリコール及び尿素を含む試薬である。免疫測定に適用した場合を例として、以下、本発明の方法及び試薬を詳細に説明する。
【0008】
本発明では、抗原と抗体との反応を利用した免疫測定において、抗原と抗体とをポリエチレングリコール及び尿素の共存下で反応させる。いかなる順序により抗原、抗体、ポリエチレングリコール及び尿素を混合して共存せしめるかについて、本発明では特に制限はない。例えば、抗原と抗体とを混合して免疫反応を開始し、速やかにポリエチレングリコールと尿素を順次、又は予め混合しておくことで同時に、添加しても良い。抗原と抗体との反応は迅速に生じることから、本発明による免疫反応の増強効果(免疫測定に適用した場合の測定感度の向上)という効果を最大限引き出すためには、抗原と抗体との免疫反応が開始される瞬間からポリエチレングリコール及び尿素の両者を共存させておくことが好ましい。このためには、例えば、抗原又は抗体のいずれか一方に、ポリエチレングリコール及び尿素の両方を予め混合しておき、これを抗原又は抗体の他方と混合することが例示できる。この好ましい例では、ポリエチレングリコールと尿素の共存が、前記混合液の一定量を添加するという単一の操作によって実施できるという意味においても、特に好ましい。
【0009】
例えば免疫測定が、(1)対象サンプルと担体に固定した抗体との反応、(2)いわゆるB/F分離、(3)分離された担体と標識を結合した抗体の反応、の順で実施されるいわゆる2ステップサンドイッチ法である場合、ポリエチレングリコールと尿素は、(1)又は(3)のいずれかの反応の際に共存させれば一定の効果を得ることができるが、測定感度の向上等、本発明の効果を最大限引き出すためには(1)と(3)の両方の反応の際に共存させることが好ましい。そのような意味においては、対象サンプル、担体に固定した抗体及び標識を結合した抗体を1段階で反応させる1段階サンドイッチ法又はこれに類する測定法であれば、その反応の際にポリエチレングリコールと尿素を共存させるのみで発明の効果を最大限引き出すことができ、また操作に要するステップ数も減少できることから、特に好ましい。
【0010】
本発明は、従来から実施されている免疫測定に、特別の制限なしに適用することができる。本発明を適用し得る免疫測定として、例えば、酵素標識、アイソトープ標識、蛍光標識又は発光標識等を利用する、競合法、サンドイッチ法又は蛍光偏光法等による測定を例示することができる。またホモジニアス測定法や表面プラズモン共鳴分析法を利用した結合測定等に適用することも可能である。
【0011】
本発明における抗体とは、抗原性物質に対してヒト、マウス、ウサギ、ヤギその他が産生するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれでも良い。抗原は、当該抗体が特異的に識別し結合する相手方であり、特定の疾病に関連する生体蛋白、ホルモン等の他、環境ホルモン等であっても良い。また場合によっては抗体そのものも「抗原」として本発明の対象とすることができる。
【0012】
ポリエチレングリコールとしては平均分子量が種々のものが市販されているが、本発明では分子量に特別の制限はない。使用するポリエチレングリコールの量(共存させるポリエチレングリコールの濃度)についても特に制限はなく、抗原と抗体との反応を生じさせる溶液中における濃度(最終濃度)で1〜10%(重量/重量)とすれば良い。ポリエチレングリコールの終濃度については、その分子量により最適な範囲があるため、本発明の実施に先立って具体的な条件を設定して予備的実験を行って決定することが特に好ましい。一例を説明すると、本発明者の知見によれば、平均分子量が6000のポリエチレングリコールを使用する場合、最終濃度を3〜7%とすることにより、本発明の効果を最大限引き出すことが可能である。
【0013】
尿素については、抗原と抗体との反応を生じさせる溶液中における濃度(最終濃度)で1〜4モル/リットルとすれば良いが、使用するポリエチレングリコールの使用濃度等を考慮して決定することが好ましい。例えば、本発明者の知見によれば、分子量6000のポリエチレングリコールを最終濃度5%で使用する場合、最終濃度を2〜4モル/リットル、特に好ましくは3モル/リットルとすることにより、本発明の効果を最大限引き出すことが可能である。
【0014】
前述したように、ポリエチレングリコールと尿素を予め混合しておき、これを検体等と混合する場合、当該混合液は、上述した最終濃度の2倍の濃度で調製しておき、検体と1:1で混合する等することが例示できる。ポリエチレングリコールと尿素の混合液は、10mM程度のTris−HCl等を添加して、抗原と抗体との反応に支障のないpH8程度のpH領域とし、更には非特異的反応を回避するため0.1%(重量/重量)程度の界面活性剤(例えばTween20等)を加えておくことが好ましい。
【0015】
本発明の方法を、例えば免疫測定に適用する際には、通常の免疫測定を実施するための各種試薬に加え、ポリエチレングリコールと尿素を含む試薬セットを用いる。ポリエチレングリコールと尿素は、それぞれ別個の容器に保持して前記試薬セットの構成物としても良いが、両者を共存させることによって変質等が生じることもないため、両者を混合した状態とすることが好ましい。具体的には、抗原抗体反応に関わる抗原又は抗体の一方、ポリエチレングリコール及び尿素を含む試薬が例示できる。また例えば、測定されるべき抗原以外の成分(例えば担体と結合した抗体及び酵素標識した抗体等)とともに、ポリエチレングリコールと尿素を単一の容器に凍結乾燥した状態にしておき、対象サンプルを添加するのみで本発明の実施を可能としておくことも例示できる。このような容器であれば、対象サンプルの当該容器への添加によって本発明を実施可能であるから、操作の容易性・簡便性を向上できるとともに、操作の再現性をも向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
ポリエチレングリコールと尿素の両者を共存させることにより、抗原と抗体との免疫反応を増強することが可能である。そして免疫反応を増強することによって、免疫測定における測定感度を飛躍的に向上させることが可能となる。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。
実施例1
免疫測定における対象抗原として、ヒト Staphylococcal Nuclease Domain containing 1(以下「SND1」とする)を選択し、その測定のための試薬を準備した。
【0018】
まず、RT−PCRを用い、常法に従ってSND1(Genbank accession number NM_014390.2)のcDNAをヒト前立腺癌細胞LnCapからクローニングした。クローニングしたcDNAから終止コドンを除去した後、ヒスチジン6残基をコードするコドンを追加して調製したポリヒスチジン−タッグSND1をバキュロウイルス用トランスファーベクターpFASTBac−1(インビトロジェン社製)に導入し、Bac−to−Bacシステム(インビトロジェン社製)を用いてプロトコールに従いバキュロウイルスを調製した。
【0019】
上記のように調製したバキュロウイルスを用い、常法に従って Sf21に感染させて培養を行い、ポリヒスチジン−タッグSND1含む発現培養上清を調製した。この培養上清をTBS(Tris buffer saline;10mM Tris−HCl、150mM NaCl、pH7.4)で透析後、HisTrap HP金属キレートカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス(株)製、Cat.NO.17−5248−01)を用いてプロトコールに従い精製操作を行った。
【0020】
図1は、精製操作により調整されたポリヒスチジン−タッグSND1精製品のSDS−PAGE像を示すものである。精製SND1をBCA蛋白定量キット(Pierce Bioctechnology社製、Cat.No.23225)により濃度測定し、SND1濃度とした。
【0021】
モノクローナル抗体は常法に従い調製した。まず、Balb/Cマウス(7週令のメス)に対し、SND1(50μg)をフロイントの完全アジュバントと共に腹腔に免疫した。次に、当該マウスから得たB細胞とマウスミエローマ細胞株PAIとを常法に従って融合し、モノクローナル抗体産生株を取得した。取得した細胞が産生するモノクローナル抗体の中から、SND1をサンドイッチELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)測定可能な2種のモノクローナル抗体を選択した。選択したモノクローナル抗体の、精製SND1又はヒト前立腺癌細胞LnCapとの反応性を図2に示す。
実施例2
水不溶性の球状担体(内部にフェライトを練り込んだ粒子径約1.5mmのEVA製)に、実施例1で選択したモノクローナル抗体の一方を100ng/担体となるよう物理的に吸着させた後、BSAでブロッキング処理を行った。
【0022】
磁力透過性の容器(容量1.2ml)に12個の担体を入れた後、0.2μg/mLのアルカリ性フォスファターゼ標識を施した、実施例1で選択したモノクローナル抗体の他方を含む緩衝液(3% BSA、5%水溶性ゼラチン、10mMトリス緩衝液、pH8.0)を加え、凍結乾燥した。
実施例3
実施例2で作製した試薬を用い、精製SND1を子牛血清(FBS)に添加したものを対象サンプルとして、尿素の測定値に及ぼす影響を検証した。尿素を含む10mM Tris−HCl、0.1% Tween20(pH8)を対象サンプルと1:1の割合で混合し、混合液150μLを容器に添加した。37℃で10分は40分間、免疫反応を生じさせた後、B/F分離操作を行って遊離の標識抗体を担体から分離除去し、アルカリ性フォスファターゼの基質である4メチルウンベリフェリルリン酸を加え、4メチルウンベリフェロンの生成速度Rate(nM/秒)を測定した。なお測定は、市販の免疫測定装置(東ソー(株)製、商品名AIA−600II)を用いて自動的に実施した。この装置では、磁力透過性の容器に対して対象サンプルを150μL加え、37℃で10分又は40分間、担体を磁石によって攪拌し、その状態で免疫反応させるものである。またこの装置は、アルカリ性フォスファターゼの基質である4メチルウンベリフェリルリン酸を加えた後20から295秒までの酵素反応分解物(4メチルウンベリフェロン)の単位時間あたりの生成速度(nM/秒)を測定するものである。
結果を図3に示す。
【0023】
図3に示した通り、尿素濃度1モル/リットル(M)共存の場合に、40分の免疫反応においてわずかな反応性上昇が見られた以外は、共存尿素濃度上昇により、非特異的結合とSND1特異的結合のいずれも低下した。40分の免疫反応における共存尿素濃度1Mでの反応性上昇も、非共存時に比較すると33%の上昇とわずかなものであり、反応性向上による高感度化は尿素のみでは達成できないことが分かる。
実施例4
実施例3同様の方法で、ポリエチレングリコールの測定値に及ぼす影響を検証した。ポリエチレングリコールはPEG6000(ナイアライテスク社製、平均分子量7400〜12000)を用いた。結果を図4に示す。
【0024】
図4に示した通り、10分又は40分いずれの免疫反応時間においても共存ポリエチレングリコール濃度上昇により、非特異的結合とSND1特異的結合いずれも上昇した。その上昇率は、SND1特異的結合において最大Rate値を示す10分反応での共存ポリエチレングリコール濃度5%時、40分反応での4%時において、ポリエチレングリコール非共存時に比較してそれぞれ、11.0倍、4.1倍であった。しかし、SND1を含まないゼロサンプルについてもそれぞれ、19.9倍、33.2倍と上昇してしまうため、抗原特異的シグナル/非特異的ノイズ比(S/N比)は向上せず、ポリエチレングリコールのみでは、反応性は向上できても高感度化は達成できないことが分かる。
実施例5
平均分子量の異なるポリエチレングリコール、PEG4000(ナイアライテスク社製、平均分子量3000〜3700)、PEG6000(ナイアライテスク社製、平均分子量7400〜12000)、PEG20000(ナイアライテスク社製、平均分子量15000〜25000)を用い、実施例3同様の方法で、SND1を含まないゼロサンプル及び1μg/mL含む対象サンプルの測定を行った。結果を図5に示す。
【0025】
図5A及びBに示した通り、いずれのポリエチレングリコールにおいても反応性の向上が認められるが、ポリエチレングリコールの分子量によりその効果は異なることが明らかとなった。また、図Cに示す通りポリエチレングリコールのみの添加ではS/N比の向上は認められないことが分かる。
実施例6
実施例3において、10分間の免疫反応において最大のS/N比を示した共存尿素濃度2Mにおいて、更にポリエチレングリコール(PEG6000)を共存させた場合の反応性を検証した。測定方法は実施例3と同様である。結果を図6、図7に示す。
【0026】
図6A及びBに示した通り、ポリエチレングリコールの共存により、SND1特異的反応性及び非特異的反応性のいずれも上昇していることが分かる。しかし、図6Cに示した通り、ポリエチレングリコール2.5%の共存によりS/N比の向上は飛躍的となる。また図7に示した通り、尿素とポリエチレングリコールが非共存時の反応性と比較すると、尿素2Mのみの共存ではSND1を含まないゼロサンプル測定値がわずかに低減(0.6倍)するものの、SND1含有サンプル測定値は変動しない(0.9倍)。結果として若干のS/N比の上昇(1.6倍)が認められるだけであり、尿素の共存のみでの高感度化は達成できない。一方、尿素に加えポリエチレングリコールを共存させた場合には、SND1を含まないゼロサンプル測定値の低減は認められない(0.9倍)ものの、SND1含有サンプル測定値の上昇は大きく(4.0倍)、結果として4.2倍のS/N比上昇が認められ、高感度化が達成されていることが分かる。
実施例7
実施例4の10分間の免疫反応において抗原特異的反応性が最大値を示した共存ポリエチレングリコール(PEG6000)濃度5%において、更に尿素を共存させた場合の反応性を検証した。結果を図8、図9に示す。
【0027】
図8A、Bに示した通り、尿素共存により非特異的反応性は減少し、SND1特異的反応性は共存尿素濃度が2Mとなるまで上昇が認められる。そして図8Cから明らかなように、共存尿素濃度3Mの時にS/N比は飛躍的に向上する。また図9に示した通り、尿素及びポリエチレングリコール非共存時の反応性と比較して、ポリエチレングリコールのみの共存ではSND1含有サンプル測定値は飛躍的に向上する(10.7倍)ものの、SND1を含まないゼロサンプル測定値も上昇してしまい(20.9倍)、結果としてS/N比(0.5倍)の向上は認められない。これに対し、更に3M尿素を共存させた場合には、SND1含有サンプル測定値は飛躍的に向上し(8.4倍)、かつゼロサンプルの測定値の上昇を抑えられる(1.6倍)。ポリエチレングリコール及び尿素の共存により、結果として5.2倍のS/N比上昇が認められ、高感度化が達成されていることが分かる。
実施例8
実施例3の40分間の免疫反応においてS/N比が最大値を示した共存尿素濃度2Mにおいて、更にポリエチレングリコール(PEG6000)を共存させた場合の反応性を検証した。結果を図10、図11に示す。
【0028】
図10A、Bに示した通り、ポリエチレングリコール共存により非特異的反応性は4%ポリエチレングリコール共存時より急激に上昇し、SND1特異的反応性は5%共存時をピークに反応性向上が認められる。しかし、図10Cから明らかなように、ポリエチレングリコール1%共存によりS/N比は最大を示すものの、10分の免疫反応時に比較しその上昇率は低い。また図11に示した通り、尿素及びポリエチレングリコール非共存時の反応性に比較して、尿素2Mとポリエチレングリコール1%の共存時には、ゼロサンプル測定値の低減が大きく(0.13倍)、SND1含有サンプル測定値の上昇(1.57倍)とあいまって、結果として11.4倍のS/N比上昇が認められ、高感度化が達成されていることが分かる。
実施例9
実施例3の40分間の免疫反応において抗原特異的反応性が最大値を示した共存ポリエチレングリコール(PEG6000)濃度4%において、更に尿素を共存させた場合の反応性を検証した。結果を図12、13に示す。
【0029】
図12A、Bに示した通り、尿素共存により非特異的反応性は急激に減少し、SND1特異的反応性は1.5%共存時をピークに反応性向上が認められる。図12Cから明らかなように、3Mの尿素を共存させることによりS/N比は飛躍的に上昇した。図13に示した通り、尿素及びポリエチレングリコール非共存時の反応性と比較して、3M尿素及び4%ポリエチレングリコールを共存させた場合には、ゼロサンプル測定値を低減し(0.34倍)、SND1含有サンプル測定値の上昇(2.27倍)とあいまって、結果として6.6倍のS/N比上昇が認められ、高感度化が達成されていることが分かる。
実施例10
SND1の1000ng/mL溶液をベースとして1/2倍希釈系列サンプルを調製し、実施例3の方法に従って10分及び40分の免疫反応を実施した。免疫反応を増強するため、(1)ポリエチレングリコール及び尿素非共存、(2)2M尿素のみ共存、又は(3)4%ポリエチレングリコール(PEG6000)及び3M尿素共存、の各条件下で免疫測定を実施した。結果を図14に示す。
【0030】
図14A、Bに示した通り、10分、40分いずれの免疫反応時間においても、ポリエチレングリコール4%と尿素3Mを共存させると、グラフの傾きが大きくなる(反応性が高くなる)ことが分かる。尿素2Mのみを共存させた場合は、非共存の場合と比較してグラフの傾きが大きくなることはなく、むしろグラフは低値側へシフトし、反応性が全体的に低下していることが分かる。
実施例11
実施例10と同様に、SND1の50ng/mL溶液をベースとして1/2倍希釈系列サンプルを調製し、40分の免疫反応を実施した。免疫反応を増強するため、(1)ポリエチレングリコール及び尿素非共存、(2)2M尿素のみ共存、又は(3)4%ポリエチレングリコール(PEG6000)及び3M尿素共存、の各条件下で免疫測定を実施した。結果を図15、16に示す。
【0031】
図15に示した通り、ポリエチレングリコール4%と尿素3Mを共存させると、グラフの傾きが大きくなり(反応性が高くなり)、非共存の場合に比較して非特異的反応が低減されることが分かる。尿素2Mのみを共存させた場合は、非特異的反応の低減は認められるものの、非共存の場合と比較してグラフの傾きが大きくなることはなく、むしろグラフは低値側へシフトし、反応性が全体的に低下していることが分かる。
【0032】
図16A、B、Cは検出感度算出のための(測定値平均+2×標準偏差)が隣り合う測定値の(測定値平均−2×標準偏差)と重なり合わない最少測定点の(測定値平均+2×標準偏差)を破線で示したものである。そして表1は、測定値より算出した検出感度、測定値のCV(coefficint varaety)20%に相当する濃度を、測定値の累乗近似により作成したグラフから算出した実行感度、ゼロサンプル測定値平均+2×標準偏差の値に相当する濃度を10ng/mL以下の測定値を1次回帰式した際の相関式より算出した検出限界、の3種類の感度評価をまとめたものである。図16又は表1のいずれの感度評価方法においても、ポリエチレングリコールと尿素を共存させる免疫反応増強法により、10倍以上の感度向上が認められることが分かる。
【0033】
【表1】
実施例12
水不溶性の球状担体(内部にフェライトを練り込んだ粒子径約1.5mmのEVA製)に、実施例1で選択したモノクローナル抗体の一方を100ng/担体となるよう物理的に吸着させた後、BSAでブロッキング処理を行った。磁力透過性の容器(容量1.2ml)に12個の担体を入れた後、緩衝液(3% BSA、5%水溶性ゼラチン、10mMトリス緩衝液、pH8.0)を加え、凍結乾燥した。
【0034】
0.2μg/mLのアルカリ性フォスファターゼ標識抗SND1抗体(実施例1で選択したモノクローナル抗体の一方)を含む1%BSA、10mMトリス緩衝液、150mM NaCl、0.1% Tween−20、pH8.0を準備し、実施例3と同様の免疫測定装置を用いて測定を実施した。まず容器に対象サンプルを150μL添加して37℃で20分間反応させた後、未反応物質をB/F分離し、上述した標識抗SND1抗体の溶液100μL加えた。37℃で20分間反応させた後、B/F分離操作を行って遊離の標識抗SND1抗体を担体から分離除去し、4メチルウンベリフェリルリン酸を加え、基質添加後20から295秒までの酵素反応分解物(4メチルウンベリフェロン)の単位時間あたりの生成速度(nM/秒)を測定した。
【0035】
対象サンプルは、SND1の1000ng/mL溶液をベースとし調製した1/2倍希釈系列サンプルであり、(1)ポリエチレングリコール及び尿素を含む溶液、(2)2M尿素のみ含む溶液、又は(3)4%ポリエチレングリコール(PEG6000)及び3M尿素を含む溶液、のいずれかの溶液と対象サンプルを1:1で混合後、その150μLを容器に加えて測定を実施した。結果を図17に示す。
【0036】
図17A、Bに示した通り、ポリエチレングリコールと尿素が非共存の場合又は尿素のみ共存の場合は前述した実施例で述べたいわゆる「1ステップ測定」に比較して感度が大きく劣っていることが分かる。一方、図17Cに示した通り、ポリエチレングリコールと尿素が共存した場合、高感度化(検出感度 15.6ng/ml)が達成されているものの、いわゆる「1ステップ測定」における検出感度(1.56ng/ml)に比較して10倍ほど低い値となった。実施例11と同様に各感度の一覧を表2に示したが、検出感度はCV20%となる濃度がなく算出できなかった。
【0037】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、実施例で調製したSND1の電気泳動の結果を示す図である。蛋白質はクマシーブリリアントブルーで染色している。
【図2】図2は、実施例で調製したSND1(3ng/レーン)及びLnCap細胞(7000cells/レーン)を電気泳動し、ポリフッ化ビニリデン膜に転写後、アルカリ性フォスファターゼ標識抗SND1抗体(実施例にて選択したもの2種類)でウエスタンブロッティングを行った際の結果を示す図である。検出は、CDP−STAR(PerkinElmer社製)で行った。CBBはクマシ−ブリリアントブルーにて電気泳動した全蛋白質を染色した染色像を示す。
【図3】図3A、Bは免疫反応10分、C、Dは40分の各種尿素(Urea)濃度で測定した結果を示すものである。A、CはSND1を含まないFBS(zero sample)を、BはSND1を2μg/mL含むFBSを測定したものであり、DはSND1を1μg/mL含むFBSを測定したものである。なお各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図4】図4A、Bは免疫反応10分、C、Dは40分の各種ポリエチレングリコール濃度で測定した際の結果を示すものである。A、CはSND1を含まないFBS(zero sample)を、BはSND1を2μg/mL含むFBSを測定したものであり、DはSND1を1μg/mL含むFBSを測定したものである。なお各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図5】図5は、平均分子量の異なるポリエチレングリコール3種による反応性の違いを示す図である。Aはゼロサンプル、Bは1μg/mL SND1を含むサンプル、そしてCは1μg/mL SND1を含むサンプルの測定結果をゼロサンプル測定結果で除したS/N比を示す。
【図6】図6は、2M尿素とポリエチレングリコールが共存した場合の、免疫反応10分での反応性を検証した結果を示す図である。Aはゼロサンプルの測定結果、BはSND1を2μg/mL含むFBSの測定結果、そしてCはS/N比を示し、各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図7】図7は、尿素2Mの共存、尿素2M及びポリエチレングリコール2.5%の共存、尿素及びポリエチレングリコール非共存の場合の、ゼロサンプルの測定結果、SND1を2μg/mL含むサンプルの測定結果、そしてS/N比を示す。
【図8】図8は、5%ポリエチレングリコールと尿素が共存した場合の、免疫反応10分での反応性を検証した結果を示す図である。Aはゼロサンプルの測定結果、BはSND1を2μg/mL含むFBSの測定結果、そしてCはS/N比を示し、各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図9】図9は、ポリエチレングリコール5%の共存、ポリエチレングリコール5%及び尿素3Mの共存、尿素及びポリエチレングリコール非共存の場合の、ゼロサンプルの測定結果、SND1を2μg/mL含むサンプルの測定結果、そしてS/N比を示す。
【図10】図10は、2M尿素とポリエチレングリコールが共存した場合の、免疫反応40分での反応性を検証した結果を示す図である。Aはゼロサンプルの測定結果、BはSND1を2μg/mL含むFBSの測定結果、そしてCはS/N比を示し、各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図11】図11は、尿素2M及びポリエチレングリコール1%の共存、尿素及びポリエチレングリコール非共存の場合の、ゼロサンプルの測定結果、SND1を2μg/mL含むサンプルの測定結果、そしてS/N比を示す。
【図12】4%ポリエチレングリコールと尿素が共存した場合の、免疫反応40分での反応性を検証した結果を示す図である。Aはゼロサンプルの測定結果,はSND1を1μg/mL含むFBSの測定結果、そしてCはS/N比示し、各点は測定値平均±2×標準偏差を示す。
【図13】図13は、ポリエチレングリコール4%及び尿素3Mの共存、尿素及びポリエチレングリコール非共存の場合の、ゼロサンプルの測定結果、SND1を1μg/mL含むサンプルの測定結果、そしてS/N比を示す。
【図14】図14は、1000ng/mLをベースとして1/2希釈系列にて調製したSND1サンプルを、A;10分の免疫反応、B;40分の免疫反応で測定した場合の反応性を示す図である。測定は3重測定で行い、平均値±2×標準偏差値を示した。
【図15】図15は、50ng/mLをベースとして1/2希釈系列にて調製したSND1サンプルを40分の免疫反応で測定した際の反応性を示す図である。測定は5重測定で行い、平均値±2×標準偏差値を示した。
【図16】図16は、A;尿素及びポリエチレングリコール非共存、B;2M尿素共存、C;4%ポリエチレングリコール及び3M尿素共存の場合の測定結果において、測定値平均+2×標準偏差が、次のサンプルの測定値平均−2×標準偏差を超えない点の測定値平均+2×標準偏差値を破線で示したものである。
【図17】図17は、A;尿素及びポリエチレングリコール非共存、B;2M尿素共存、C;4%ポリエチレングリコール及び3M尿素共存を用いた、いわゆる2ステップ測定の結果において、測定値平均+2×標準偏差が、次のサンプルの測定値平均−2×標準偏差を超えない点の測定値平均+2×標準偏差値を破線で示したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原抗体反応を増強する方法であって、抗原と抗体とをポリエチレングリコール及び尿素の共存下で反応させる方法。
【請求項2】
抗原又は抗体をポリエチレングリコール及び尿素と混合し、次いで抗体又は抗原と反応させることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
抗原と抗体との反応を生じさせる溶液中におけるポリエチレングリコールの濃度が1〜10%(重量/重量)であることを特徴とする、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
抗原と抗体との反応を生じさせる溶液中における尿素の濃度が1〜4モル/リットルであることを特徴とする、請求項1又は2の方法。
【請求項5】
抗原抗体反応を増強する試薬であって、抗原又は抗体のいずれか、ポリエチレングリコール及び尿素を含む試薬。
【請求項1】
抗原抗体反応を増強する方法であって、抗原と抗体とをポリエチレングリコール及び尿素の共存下で反応させる方法。
【請求項2】
抗原又は抗体をポリエチレングリコール及び尿素と混合し、次いで抗体又は抗原と反応させることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
抗原と抗体との反応を生じさせる溶液中におけるポリエチレングリコールの濃度が1〜10%(重量/重量)であることを特徴とする、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
抗原と抗体との反応を生じさせる溶液中における尿素の濃度が1〜4モル/リットルであることを特徴とする、請求項1又は2の方法。
【請求項5】
抗原抗体反応を増強する試薬であって、抗原又は抗体のいずれか、ポリエチレングリコール及び尿素を含む試薬。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−145202(P2010−145202A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321977(P2008−321977)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
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