説明

ポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法

【課題】ポリエチレンテレフタレート(PET)系ポリエステルは、絶対分子量および溶融粘度が小さく、分子量分布も狭いので、ポリオレフィンの様な汎用プラスチックスとして用途開発が制限されている。従来、低分子量液体のエポキシ樹脂と結合反応触媒から成る改質剤で高分子量化および高溶融粘度化を実施して来たが、長期間運転でゲルやフィッシュアイが副生した。
【解決手段】(a)PET系ポリエステル100重量部、(b)結合剤として高分子型多官能エポキシ樹脂の混合物0.01〜2重量部、(c)結合触媒として有機酸金属塩複合体0.01〜1重量部(d)副材の芳香族ポリエステル0〜100から構成される混合物を、反応押出法により巨大分子量を含有し拡大制御された分子量分布を持つPET系グラフト共重合樹脂とする製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主原料の比較的分子量の低いポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)系樹脂と副原料の芳香族ポリエステルに、高分子型多官能エポキシ系結合剤および有機酸系触媒から成る改質剤を添加して均一的に結合反応させることによって、分子量と溶融粘度を増大させ分子量分布を拡大制御して成形加工性と樹脂物性を画期的に改善させたポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法に関する。
さらに詳しくは、本発明は重縮合後の低分子量のPET系樹脂、固相重合後の中ないし高分子量のPET系樹脂、またはそれらが成形使用されて分子量と物性が低下して回収されたPET系樹脂成形品、更に芳香族核にカルボキシル基を含有する芳香族ポリエステルに、高分子型多官能エポキシ系結合剤および有機酸金属系触媒とから成る改質剤を添加して、反応押出法で長期間均一的に結合反応させることによって、ゲルやフィッシュアイの副生がなく、分子量と溶融粘度を増大させ分子量分布を拡大制御して従来のPETでは極めて困難な成形加工性や樹脂物性を画期的に改善させたポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の芳香族系飽和ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンー2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等の熱可塑性樹脂として優れた物性を有し、繊維、フィルム、プラスチック等として広範囲に使用されている。プラスチック分野では、成形品がボトル、シート、容器、日用品、自動車、機械部品、電気・電子材料、建材、各種工業用品等に広く活用されている。
【0003】
近年、省資源と環境保全の観点から、工場生産工程や一般消費市場から回収された使用済みのプラスチック製品について、再利用の必要性が世界的に認識され、特に、ポリエチレンテレフタレートについては、使用済みのボトル、フィルム等の回収再利用が積極的に進められている。ポリエチレンテレフタレートは、テレフタール酸の外に少量のイソフタール酸を含み、また近年はPETGのようなシクロヘキサンジメタノールを含むポリエステルも混合されているので、ここではそれらをPET系ポリエステルと総称する。このような結晶性PET系ポリエステルは、成形加工の熱履歴を経ると微量含有水による自己加水分解によって大幅な分子量低下を引き起こす。その際のエステル結合の解裂による分子末端の遊離カルボキシル基数の増大が実用上問題であり、ボトルやシートの回収品の再利用技術を開発する障害になっていた。使用済みの回収したPETボトルは、新品ペレットに比較して分子量が低下しているので、例えば大量に派生する回収ペットボトルのフレーク(破砕物)の分子量はほぼ半減されており、従ってこれを主原料樹脂として再利用すると成形加工性が悪く、元のペットボトルにはならず、低分子量でも成形できる単繊維や卵パック用シートにしかならず、再利用の用途は狭い範囲に限定されていた。
【0004】
これらの問題の解決方法としては、PET系ポリエステルの固層重合で分子量を回復させる方法、鎖延長剤とポリエステル末端基の水酸基またはカルボン酸基を反応させる方法、機械的特性を補うためエラストマー等の他の樹脂を添加するなどの方法が知られている。
鎖延長剤としてはイソシアナート、オキサゾリン、エポキシ、アジリジン、カルボジイミド等の官能基を有する化合物の活用が提案されている。しかしながら、反応性、耐熱性、安全性、安定性、等からの制約が強く、実用性があるものは限定される。
これらの中でもエポキシ化合物は、比較的有用であり、モノエポキシ化合物の配合〔特許文献1〕特開昭57−161124号公報等、ジエポキシ化合物の配合〔特許文献2〕特開平7−166419号公報、〔特許文献3〕特公昭48−25074号公報、〔特許文献4〕特公昭60−35944号公報等があるが、反応速度、ゲル副生、溶融粘度、相溶性、熱安定性、成型品の物性等に問題が多々あった。
【0005】
一方、回収されたPET系ポリエステルを2官能のエポキシ樹脂および立体障害性ヒドロキシフェニルアルキルホスホン酸エステルと溶融混合してポリエステルの分子量を増大させる方法〔特許文献5〕特表平8−508776号公報が提案されている。この方法は比較的反応速度が早いが、生成する樹脂が従来PETと同様な線状構造体のために溶融粘度の増加が小さく成形加工性の改善効果が小さい。また、使用する立体障害性セドロキシフェニルアルキルホスホン酸エステルが高価であり、低コストの回収循環費用が要求される業界においては実用性に問題がある。また、ポリエステルにゴム、エラストマーを配合する方法も提案されているが、それらの場合、相溶性、耐熱性、弾性率等に難点があった。
本発明者らは、先にPET系ポリエステルに2官能と3官能の混合エポキシ樹脂(低分子量液体)および有機酸金属系触媒を添加し、反応押出法により溶融混合して長鎖分岐構造体としてPET系ポリエステルの分子量を短時間に増大させる方法〔特許文献6〕3503952公報を提案した。しかしながら、数分間の高速度結合反応における不均一局所反応に起因するゲルやフィッシュアイ(FE)の副生問題が生じた。
次いで、2官能と3官能の混合エポキシ樹脂(低分子量液体)および有機酸金属系触媒をPET系ポリエステルで約十分の一に希釈したマスターバッチを使用して均一反応をする方法〔特許文献7〕WO2001−94443号公報を提案した。これにより、反応押出法による数分間の高速度結合反応におけるゲルおよびフィッシュアイ(FE)の副生は、大幅に改善された。本マスターバッチ法においても、反応押出機中で高粘度樹脂に微量の低粘度液体のエポキシ樹脂を均一混合することは原理的にも困難であり、実用上は極めて特殊構造で高価な反応押出機を必要とした。また、数日以上の長期間運転では、反応の完塾性にむらがありペレットの溶融粘度(MFR)が変動し、かつスクリューの溝に改質剤が沈着・粘着する原因により微量のゲルやフィッシュアイ(FE)の副生が経時的に増大する傾向があった。
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0006】
本発明は、比較的分子量の低いPET系ポリエステル樹脂に結合剤および触媒とから成る改質剤を添加して、反応押出法により分子量および溶融粘度を増大させたPET系樹脂を製造するに際し、長期間均一的に結合反応させてもゲルおよびフィッシュアイ(FE)の副生が無く、かつ従来のPETよりも成形加工性と樹脂物性を画期的に改善させたPET系ポリエステル樹脂を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決しょうとするための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、主原料の比較的分子量の低いPET系ポリエステル樹脂に結合剤および触媒とから成る改質剤を添加して、反応押出法により分子量および溶融粘度を増大させてPET系樹脂を製造するに際し、従来法の低分子量液体の2〜3官能(最大6官能)混合エポキシ樹脂系結合剤に替えて、高分子量固体の多官能エポキシ系結合剤およびそれら混合物を使用することにより、長期間均一的に結合反応させてもゲルおよびフィッシュアイ(FE)の副生が無く、かつ従来の低分子量液体の2〜3官能(最大6官能)混合エポキシ樹脂系結合剤よりも成形加工性が画期的に改善され、かつ芳香族ポリエステルの併用により樹脂物性が飛躍的に改善されたPET系ポリエステル樹脂にする方法によって工業的に有利に前記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明の改質剤を微量使用するとPETの樹脂およびシートの結晶核剤として作用することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、第1に(A)ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部、(B)結合剤として骨格樹脂の分子量1,000〜300,000および該分子内に7〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物0.01〜2重量部、(C)結合反応触媒として有機酸の金属塩0.01〜1重量部および(D)芳香族核にカルボキシル其を含有する芳香族系ポリエステル0〜100重量部から構成される混合物を、250℃以上の温度で均一反応させて高溶融粘度化することを特教とするポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明は、第2に(A)ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部、(B)結合剤として骨格樹脂の分子量1,000〜300,000および該分子内に7〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物0.01〜2重量部、(C)結合反応触媒として有機酸の金属塩0.01〜1重量部および(D)芳香族咳にカルボキシル其を含有する芳香族系ポリエステル0〜100重量部から構成される混合物を、反応押出法により250℃以上の温度で均一反応させてJIS法で280℃、荷重2.16Kgにて50g/10分以下にすることを特教とするポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂ペレットの製造方法を提供するものである。
【0010】
本発明は、第3にポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(A)が、固有粘度0.60〜1.25dl/gのポリエチレンテレフタレートまたは回収されたポリエチレンテレフタレート成杉品の再循環物のいずれか一種類以上を含有することを特徴とするポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法を提供するものである。
【0011】
本発明は、第4に結合剤として骨格樹脂の分子量1,000〜300,000および該分子内に7〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物(B)を、2種類以上混合使用することにより分子量分布を拡大制御することを特教とするポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明は、第5に有機酸金属塩(C)が、アルカリ金属のカルボン酸塩およびアルカリ土類金属のカルボン酸塩からなる群のいずれか一種類以上を含有することを特徴とするポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法を提供するものである。
【0013】
本発明は、第6に芳香族咳にカルボキシル其を含有する芳香族系ポリエステル(D)が、無定形エチレングリコール・シクロヘキサンジメタノール・テレフタール酸(PETG)、ポリエステル・エラストマーおよび結晶性ポリブチレンテレフタレートからなる群のいずれか一種類以上を含有することを特徴とするポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法を提供するものである。
【0014】
本発明は、第6に(A)ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部、(B)結合剤として骨格樹脂の分子量1,000〜300,000および該分子内に7〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物0.01〜0.3重量部、(C)結合反応触媒として有機酸の金属塩0.01〜0.3重量部から構成される混合物を、反応押出法で250℃以上の温度で均一反応させてポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂を製造して後に、該温度でキャスト法により高速度結晶性シートに成形することを特教とするポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、主原料の比較的分子量の低いPET系ポリエステル樹脂と副原料の芳香族系ポリエステル樹脂に高分子型多官能エポキシ系結合剤および触媒とから成る改質剤を添加して、反応押出法により分子量と溶融粘度を増大させてPET系樹脂を製造するに際し、従来法の低分子量液体の2〜3官能(最大6官能)混合エポキシ系結合剤とは異なって、高分子型固体の多官能(7〜100官能)エポキシ系結合剤およびそれら混合物を使用することにより、長期間均一的に結合反応させてもゲルおよびフィッシュアイ(FE)の副生が無く、かつ従来のPETでは極めて困難な成形加工性およびPET樹脂物性が画期的に改善されたPET系ポリエステル樹脂を製造することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
(ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル)
本発明において主原料として使用される(A)成分のポリエチレンテレフタレート系ポリエステルは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とから合成されるものである。ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の芳香族、脂環族ジカルボン酸等を挙げることができる。これらの中で、芳香族ジカルボン酸、特にテレフタル酸、イソフタール酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
これらの中で、エチレングリコールが好ましい。
本発明を適用することができるPET系ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、イソフタール酸を少量共重合した低融点PET、ポリエチレンー2,6−ナフタレート(PEN)等が挙げられるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
【0017】
本発明で使用するPET系ポリエステルは、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール(1:1)混合溶媒に溶解して25℃で測定した固有粘度が0.60dl/g以上であることが好ましく、0.70dl/g以上であることがより好ましい。固有粘度が0.60dl/g未満であると、本発明によっても高分化が困難であり、得られるポリエステル樹脂が必ずしも優れた機械的強度を得ることができないおそれがある。固有粘度の上限は、特に制限されないが、通常0.90dl/g以下、好ましくは比較的安価な0.80dl/g以下である。市販PETの入手可能の上限は、固有粘度が1.25dl/gであるが、単独使用では成形加工性が悪化するで、本発明では固有粘度が0.60−0.80dl/gのものと混合して使用することが好ましい。
PET系ポリエステル回収品を使用する場合には、通常その成形品が有している固有粘度より低下しており、一般的には0.60〜0.80dl/g、特に0.65〜0.75dl/g程度である。回収したPET系ポリエステル成形品を利用する場合、その成形品の形態は、繊維、フィルム、シート、ボトルあるいは他の成形物のいずれであっても良く、またポリエステル中には、他のポリマー、例えばポリオレフイン、ポリアクリル酸エステルなどを少割合含有していても反応押出法に差し支えない。また充填剤、顔料、染料などの添加剤を少量含有したものでも使用できる。特に、ペットボトルは、回収され再循環使用のための社会的環境が整備されつつあり、その上ボトルのポリエステルは再利用に適した組成であるので、本発明の原料のポリエステルとして好適である。
【0018】
(高分子型多官能結合剤)
本発明の(B)成分の結合剤は、骨格樹脂の分子量が1,000〜300,000であり、該分子内に7〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物を単独または2種類以上の混合体として使用することができる。高分子量樹脂にエポキシ環を含むグリシジル基をペンダント状に吊下げたものや分子内にエポキシ基を含むものの市販品、例えば日本油脂(株)の「モディパー」Aシリーズ、「ノフアロイ」IEシリーズ、「ブレンマー」、「ファルパック」、「マープルーフ」シリーズ、ダイセル化学工業(株)の「エポフレンド」シリーズ、住友化学工業(株)の「ボンドファースト」なども使用することができる。
骨格樹脂は、アクリル樹脂系がポリオレフィン系(PP、PS、PE)よりも好ましい。何故ならば、樹脂の溶解度パラメーターは、原料PET10.7、エポキシ樹脂10.8、ポリアクリル酸メチル10.2、ポリアクリル酸エチル9.4、ポリプロピレン(PP)9.3、ポリメタクリル酸エチル9.0、ポリスチレ(PS)8.9、ポリエチレン(PE)8.0であり、数値が近いほど混合性が良いからである。
なお、ポリオレフィン系は1−2%の混合でも、PET系樹脂のフィルム・シートを白濁させるので、成形品が透明性を必要とする場合には適さない。しかしながら、発泡体とパイプあるいは高耐熱容器などは白色であるので、それら透明性を必要としない用途には使用出来る。
【0019】
本発明者らは、従来法で分子内に2個ないし3個あるいは4ないし6個のエポキシ基を含有する化合物を使用して来た。例えば、分子内に2個のエポキシ基を有する化合物は、代表例として脂肪族系のエチレングリコール・ジグリシジルエーテル(分子量174、エポキシ等量135g/eq.、官能基数2個/分子)また芳香族系のビスフェノールA・ジグリシジルエーテル(分子量約1,000、エポキシ等量135g/eq.、官能基数2個/分子)等であった。
また、分子内に平均3個のエポキシ基を有する化合物は、代表例としてトリメチロールプロパン・トリグリシジルエーテル(分子量288、エポキシ等量150g/eq.、官能基数3個/分子)であった。更にまた、分子内に平均3個以上のエポキシ基を有する多官能化合物は、代表例としてエポキシ化大豆油(分子量約1,000、エポキシ等量232g/eq.、官能基数4個/分子)およびエポキシ化アマニ油(分子量約1,000、エポキシ等量176g/eq.、官能基数6個/分子)であった。
PETは、固有粘度(IV値)0.7dl/gのもので数平均分子量1.2万程度で絶対分子量がが小さく、分子量分布もMw/Mn2−3で極めて狭い。従って、従来法の結合反応による生成物の分子量は、2.4万(2官能)、3.6万(3官能)および高々7.2万(6官能)であった一方、ポリオレフィン系樹脂は、一般に数平均分子量10万―100万と大きく、分子量分布もMw/Mn5−20と極めて広い。例えて言えば、PETはエッフェル塔型で、ポリオレフィン系樹脂は富士山である。従って、成形加工性は、前者が困難で、後者が極めて容易である。
【0020】
本発明の最大の特徴は、高分子型多官能エポキシ化合物の単独物または2種類以上の混合物を使用することによって、ポリオレフィン系樹脂の様に数平均分子量10万―100万と大きく、分子量分布も極めて広い反応生成物を含むポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法を提供することにある。これによって、PET系ポリエステルの成形加工性をポリオレフィン系樹脂の様に極めて容易にすることである。
分子量分布の拡大制御方法は、高分子型多官能エポキシ化合物として、例えば、分子量1万の骨格樹脂の分子内に15個のエポキシ基を持つ物100%、分子内に30個のエポキシ基を持つ物50%、分子内に60個のエポキシ基を持つ物25%から成る混合物を使用することにより、分子量1.2万の原料PETから分子量19万、分子量37万、分子量73万のグラフト共重合体をそれらの仕込み比率および配合量にて生成させて実施することが出来る。但し、ポリオレフィン系樹脂は線状構造体であるが、本発明品はグラフト共重合体であるので、樹脂モデルは異なる。一般に、PET系ポリエステルは、通常両末端が水酸基となる様に合成されるが、実際には片末端が芳香族系カルボン酸基も有るので本発明のエポキシ化合物と触媒で結合反応をする。従って、本発明品のモデル的イメージは、分子量1.2万の原料PETの未反応物(両末端の水酸基は反応しない)の海に、例えば、分子量19万、分子量37万、分子量73万の栗のイガ状グラフト共重合体がそれぞれの仕込み比率で分散している状態である。
【0021】
(B)成分の高分子型多官能エポキシ化合物の配合量は、(A)成分のPET系ポリエステル100重量部に対して0.01〜2重量部である。主原料PETポリエステル(A)と副原料ポリエステル(D)の分子量と溶融粘度を増大させる必要のあるインフレーション法フィルム、発泡体およびパイプなどの用途には、0.1〜2重量部、特に0.4〜1重量部が好ましい。0.1重量部未満では分子量と溶融粘度の増加効果が不充分で、成形加工性が不充分で成形品の基本物性や機械的特性が劣ることになる。2重量部を越えると逆に成形加工性が悪化し、樹脂の黄変・着色とゲルやFEの副生したりする。
一方、(B)成分の高分子型多官能エポキシ化合物を特定用途であるシートおよびボードの「結晶化核剤」として使用する場合の配合量は、(A)ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部当たり(B)高分子型多官能エポキシ化合物0.01〜0.3重量部を(C)結合反応触媒0.01〜0.3重量部とともに使用する。0.01重量部以下では、シートおよびボードの結晶化速度が遅く、0.3重量部以上ではシートの透明度が低下する。0.05〜0.15重量部が好ましい。
本発明では、高分子型多官能エポキシ化合物の配合量が増大するほど、主原料PET系ポリエステル(A)と副原料ポリエステル(D)の溶融張力や伸張粘度が増大し、一般に、成形加工性が大幅に改良される。また、高分子型多官能エポキシ化合物およびカルボン酸金属塩系触媒が「分子サイズの結晶核形成剤」として作用するので、PET系ポリエステル樹脂の結晶化速度が増大する。成形加工における効果は、例えば射出成形のサイクルが短縮されて生産性が向上する。インフレーション・フイルム成形では、バブルが安定し、フィルムの偏肉が減少する。Tダイ・フイルム成形では、水平押出が可能となり、ネックインが減少し、フイルムの歩留まりが向上する。シート成形では、ドローダウン性が改善され、安定な成形が可能となる。特に、スウェルと溶融張力の大きいPET系ポリエステル樹脂では、発泡成形を容易に行うことができる。水平押出が可能なため、パイプや異型押出の成形ができる。
本発明の反応押出法による樹脂製造の大きな特徴は、原料PET(A)および(D)と高分子型多官能エポキシ「固体」との溶融粘度がほぼ同じなので押出機内の混合性が特に良くなり、従来法の低分子量エポキシ「液体」の使用での黄変・着色とゲルやFE副生の問題が起こらなくなったことである。
【0022】
(結合反応触媒)
本発明における(C)成分としての結合反応触媒は、(1)アルカリ金属の有機酸塩、炭酸塩および重炭酸塩、(2)アルカリ土類金属の有機酸酸塩、(3)アルミニウム、亜鉛またはマンガンの有機酸塩、からなる群から選ばれた少なくとも一種類以上を含有する触媒である。有機酸塩としては、カルボン酸塩、酢酸塩等が使用できるが、カルボン酸塩の中で特にステアリン酸塩が好ましい。カルボン酸の金属塩を形成する金属としては、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのようなアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムのようなアルカリ土類金属を使用できる。
この結合反応触媒としてのカルボン酸塩の配合量は(A)成分のPET系ポリエステル100重量部に対して0.01〜1重量部である。特に、0.1〜0.5重量部であることが好ましい。0.01重量部未満では触媒効果が小さく、反応が未達となって分子量が充分増大しないことがある。1重量部を超えると局部反応によるゲル生成や加水分解の促進による溶融粘度の急上昇による押出成形機内のトラブルなどを惹起させる。
【0023】
(芳香族核にカルボキシル其を含有する芳香族系ポリエステル)
本発明において副原料として使用される(D)成分の芳香族核にカルボキシル其を含有する芳香族系ポリエステルは、無定形エチレングリコール・シクロヘキサンジメタノール・テレフタール酸(PETG)、ポリエステル・エラストマーおよび結晶性ポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる群のいずれか一種類以上を含有する様に選択されるものである。改質されたPET樹脂は、ほぼ99%が原料PETであるので、市販PETとほぼ同様の物性であるため、新規用途、例えば、インフレーション法フィルム、接着性フィルム、溶断シュリンク・フィルム、発泡体およびパイプなどの用途の開発が困難である。
本発明の副原料との共重合により、新規用途の開拓が可能となる。PET樹脂の改善については、無定形エチレングリコール・シクロヘキサンジメタノール・テレフタール酸(PETG)は、例えばインフレーション法フィルムの成形加工性と透明性、溶断シュリンク・フィルムのシュリンク性などに寄与する。ポリエステル・エラストマーは、例えば接着性フィルムの接着性、容器、発泡体およびパイプの耐衝撃性、インフレーション法フィルムの柔軟性などに寄与する。結晶性ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、容器、発泡体およびパイプとうの成形時における再結晶化の促進に寄与する。
(D)成分の芳香族核にカルボキシル其を含有する芳香族系ポリエステルの配合量は、(A)成分のポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部に対し、0〜100重量部、好ましくは2〜80重量部である。それらの配合量は、用途によってそれぞれが選択される。後述の実施例にて実用例の一部を示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、前記(A)成分のポリエステル、(B)成分のエポヰシ基含有化合物、(C)成分の触媒および(D)成分の芳香族ポリエステル以外に、展着材、滑材、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、粘度調節剤、帯電防止剤、導電剤、流動性付与剤、離型材、また充填材としてタルク、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カオリン、アルミナ、水酸化アルミ等、補強材としてガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ウイスカー等、顔料としてカーボンブラック、酸化アンチモン、二硫化モリプデン、酸化チタン等を任意に配合してもよい。
【0025】
(配合方法、結合反応)
次に、本発明のポリエステル樹脂を配合する方法に付いて説明する。(A)成分のPET系ポリエステルは、通常のバージンチップ、回収したフレーク、粒状物、粉末、チップ等の任意形状のものが使用し得る。乾燥も任意である。一般的には、主成分のPET系ポリエステルを乾燥する方が好ましい。また、(D)成分の芳香族系ポリエステルについても同様である。各成分をタンブラーやヘンシェルミキサー等の混合機で混和させてから、押出装置に供給する。加熱溶融する温度は、ポリエステルの融点250℃以上で300℃以下であることが反応押出法の観点から望ましい。特に、280℃以下が好ましく、特に好ましくは265℃である。300℃を越えるとポリエステルの変色や熱分解が生じるおそれがある。各成分は同時に混合する方法以外に、(A)成分および/または(D)成分(B)成分を予め混合し、その後、任意の工程で(C)成分を添加することも可能である。また、(A)成分および/または(D)成分と(C)成分を先に混合し、その後、任意の工程で(B)成分を添加することも可能である。
【0026】
加熱溶融する反応装置としては、単軸押出機、二軸押出機、それらの組合せの二段押出機等を使用することができる。インフレーション法フィルム、接着性フィルム、溶断シュリンク・フィルム、発泡体成形、パイプ、シートやボード成形、中空成形および射出成形等をオフライン法で成形する場合には、予め反応押出装置で製造しておいたペレットを使用することが出来る。一方、上記の3〜4成分をドライブレンドした生の原料混合物を直接に反応押出装置のホッパーへ供給し、直ちにインライン法で成形することもできる。ただし、単軸押出機の場合は、混合性の良い特殊構造スクリューと樹脂がベントアップしない真空ラインを必要とする。スクリューの混練工程の段階数や加熱条件を考慮して、最適な配合組成を選定することが重要である。二軸押出機の場合は、混合性の良いスクリュー構造と樹脂がベントアップしない真空ラインを必要とする。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明を実施例および比較例により説明する。なお、物性測定に使用した分析機器および測定条件を下記に示す。
(1)分子量の測定はGPC法によった。
昭和電工社製SYSTEM−21、カラム(サンプル、リファレンス側とも)Shodex KF―606M(2本)、溶剤ヘキサフロロイソプロピルアルコール、カラム温度40℃、流量0.6ml/分、ポリマー濃度0.15重量%、検出器Shodex RI−74、分子量換算スタンダードPMMA(ShodexM―75)、注入量20μl
(2)メルトフローレート(MFR)は、JIS K6760に従い、温度 280℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(3)スウェルはMFR用のメルトインデクサーを用い、温度280℃、荷重2.16kggの条件で垂れ流し、サンプルが2.0cm垂れたところでカットし、下端から5.0mmのところの直径を測定し、下記の計算式により算出した。なお、実際には、上記直径は数回測定され、その平均値が採用された。また、下記式の数値「2.095」は、MFR用メルトインデクサーのノズル径である。
スウェル(%)=[(直径の平均値−2.095)/2.095]×100
(3)固有粘度(IV値)は、1,1,2,2ーテトラクロロエタンとフェノールの等重量の混合溶媒を使用し、25℃でキャノンフェンスケ式粘度計を使用して測定した。
【実施例1〜10】
【0028】
[回収ペット・ボトルフレ−クから高分子型多官能エポキシ単独による高溶融粘度の樹脂ペレットP1P10の製造方法]
PET系ポリエステル(A)として回収ペット・ボトルフレ−ク(よのペットボトルリサイクル(株)、固有粘度0.73dl/g、MFR56g/10分、末端カルボキシル基量30ミリ当量/kg)を120℃・12時間で熱風乾燥した100重量部(各例400g/回、水分含有率150ppm)に、高分子型エポキシ化合物としてB1(フアルパック200S、日本油脂(株)製、PS骨格MW6,000、エポキシ等量WPE148g/eq.、官能基41個/分子)、B2(ブレンマー℃P−30S、日本油脂(株)製、PS骨格MW9,000、WPE530g/eq.、官能基17個/分子)、B3(ブレンマーCP−50M、日本油脂(株)製、アクリル骨格MW10,000、WPE310g/eq.、官能基32個/分子)、B4(ブレンマーCP−50S、日本油脂(株)、PS骨格MW20,000、WPE310g/eq.、官能基65)、B5(マープルーフG−01100、日本油脂(株)、アクリル骨格MW12,000、WPE1,700g/eq.、官能基71個/分子)、B6(マープルーフG−2050M、日本油脂(株)、アクリル骨格MW250,000、WPE340g/eq.、官能基662個/分子)の夫々の所定重量部、結合反応触媒としてステアリン酸カルシウム/同ナトリウム/同リチウム(50/25/25重量比)複合物の0.2重量部、安定剤としてチバガイキー社IRGANOX B225の0.1重量部および展着剤の流動パラフィン0.1重量部をポリエチレン袋内で手動にて混合した。
【0029】
(株)テクノベル製の同方向2軸押出機(KZW15−30MG、スクリュ−径25mmΦ、L/D=30、回転数100rpm、1ベント式)を使用し、この押出機のスクリュ−とダイスの設定温度を240−280℃とし、ドライ方式ポンプで真空引きしながら、上記のフレ−ク混合物をホッパ−に投入し、フィーダーで所定速度にて供給することによって反応押出を行った。ストランドを口径3mmΦのノズルから約2m/分の速度にて水中に連続的に押出し、回転カッタ−で切断して透明な樹脂ペレット製造し、熱い樹脂ペレットを直ちに140℃・4時間熱風乾燥して後に、防湿袋または防湿容器に貯蔵した。
【0030】
反応条件と樹脂番号およびMFR(280℃、荷重2.16Kg)などを表1に示した。本発明の樹脂ペレットは、MFRが約0.2〜25g/10分と高溶融粘度に制御され、かつスウェルが約40〜200%と大きいことに特徴があった。ただし、原料PETの分子量約1.2万の海に、それぞれ巨大分子量約42万(P1−P2)が分散、巨大分子量約18万(P3)が分散、巨大分子量約33万(P4−P6)が分散、巨大分子量約66万(P7−P8)が分散、巨大分子量約72万(P9)が分散、巨大分子量約663万(P10)が分散しているので、分子分散性が良くなく、ストランドメルトフラクチャーを起こし、その表面が荒れていた。
【0031】
【表1】

【実施例11〜16】
【0032】
[回収ペット・ボトルフレ−クから高分子型多官能エポキシ混合物による分子量分布の拡大制御された高溶融粘度の樹脂ペレットP11〜P16の製造方法]
PET系ポリエステル(A)として回収ペット・ボトルフレ−ク(よのペットボトルリサイクル(株)、固有粘度0.73dl/g、MFR56g/10分、末端カルボキシル基量30ミリ当量/Kg)を120℃・12時間熱風乾燥した100重量部(各例400g、水分含有率150ppm)に、高分子型エポキシ化合物として表2に示した配合の混合物BM1(B2:B3:B5=4:2:1)、BM2(B2:B3:B5=10:3:1)、BM3(B2:B3:B5=20:5:1)、BM4(B2:B3:B5=100:10:1)の夫々の所定重量部、結合反応触媒としてステアリン酸カルシウム/同ナトリウム/同カリウム(50/25/25重量比)複合物の0.2重量部、安定剤としてチバガイキー社IRGANOX B225の0.1重量部および展着剤として流動パラフィンの0.1重量部をポリエチレン袋内で手動にて混合した。
【0033】
(株)テクノベル製の同方向2軸押出機(KZW15−3MG、スクリュ−径25mmΦ、L/D=30、回転数100rpm、1ベント式)を使用し、この押出機のスクリュ−とダイスの設定温度を240−280℃とし、ドライ方式ポンプで真空引きしながら、上記のフレ−ク混合物をホッパ−に投入し、フィーダーで所定速度にて供給することによって結合反応を行ったストランドを口径3mmΦのノズルから約2m/分の速度にて水中に連続的に押出し、回転カッタ−で切断して透明な樹脂ペレット製造し、熱い樹脂ペレットを直ちに140℃・4時間熱風乾燥して後に、防湿袋または防湿容器に貯蔵した。
【0034】
反応条件と樹脂番号とMFR(280℃、荷重2.16Kg)などを表2に示した。本発明の樹脂ペレットは、MFRが約12〜34g/10分と高溶融粘度に制御され、一般的にストランドがメルトフラクチャーを起こさずに成形が安定することに特徴があった。
なお、実施例13では、原料PETを回収ペット・ボトルフレ−クでなく、新品PETペレット(三菱化学、B2570、IV0.78dl/g、MFR45g/10分)を使用した生成ペレットP13は、原料の新品PETが末端カルボキシル基が少なくなる様に製造されているので、結合剤の効力がやや落ちてMFR23.7となり、回収原料PETを使用した実施例12の生成ペレットP12のMFR12.7より2倍大きくなってしまった。
一般的傾向として、官能基数の多い高分子型エポキシ化合物を多く含む混合物からの樹脂は、異型押出や発泡成形に適する。意外なことに、官能基数71と多い高分子型エポキシ化合物B5を一番高比率に含む混合物BM1が、ストランドの成形安定性が良く、プレス・フィルムにゲルやFEが発生していなかった。
【0035】
【表2】

【実施例17〜18】
【0036】
[回収ペット・ボトルフレ−ク等から高分子型多官能エポキシ混合物による分子量分布の拡大制御された高溶融粘度の樹脂P17〜P18のインライン式インフレーション法フィルム成形評価]
(実施例17):PET系ポリエステル(A)として回収ペット・ボトルフレ−ク(協栄産業(株)、固有粘度0.78dl/g、MFR45g/10分)を120℃・12時間熱風乾燥した50重量部(200g、水分含有率150ppm)、新品ペレット(三菱化学(株)、固有粘度0.80dl/g、BK2170)25重量部(200g)、高分子量新品ペレット(イタリヤM&G社、固有粘度1.25dl/g、MFR2.0g/10分、COBITECH、発泡用)25重量部(200g)に、高分子型エポキシ化合物として混合物BM5(B2:B3:B5=1:1:1)0.40重量部、結合反応触媒としてステアリン酸カルシウム/同ナトリウム/同リチウム(50/25/25重量比)複合物の0.2重量部、安定剤としてチバガイキー社IRGANOX B225の0.1重量部および展着剤の流動パラフィン0.1重量部をポリエチレン袋内で手動にて混合した。
(株)テクノベル製の同方向2軸押出機(KZW15−30MG、スクリュ−径25mmΦ、L/D=30、回転数150rpm)に丸ダイ(口径35mm、Lip Gap0.8mm)、エアーブロー機および口径200mmの外部空冷リングを設置した。この押出機のスクリュ−とダイスの設定温度を240−280℃とし、上記のフレ−ク混合物をホッパ−に投入し、フィーダーで所定速度にて供給することによって結合反応を行うと同時に、チューブ状フイルムを口径35mmの丸ダイから水平方向へ連続的に押出した。ブローアップ比を調節し、外部冷却しながら厚み30−70μmのインライン式インフレーション法フィルム成形を実施した。
フィルムは、透明均一であり、ゲル・FEが無く、本発明の樹脂製造法の優秀性を実証した。
【0037】
(実施例18):PET系ポリエステル(A)として回収ペット・ボトルフレ−ク(協栄産業(株)、固有粘度0.78dl/g、MFR45g/10分)を120℃・12時間熱風乾燥した100重量部(300g、水分含有率150ppm)、PETGの新品ペレット(イーストマン社)の乾燥品40重量部(120g)、ポリエステル・エラストマーの新品ペレット(帝人化成(株)、ヌーベラン、TRB−ELA)の乾燥品20重量部(60g)に、高分子型エポキシ化合物として混合物BM5(B2:B3:B5=1:1:1)0.90重量部、結合反応触媒としてステアリン酸カルシウム/同ナトリウム/同リチウム(50/25/25重量比)複合物の0.2重量部、安定剤としてチバガイキー社IRGANOX B225の0.1重量部および展着剤の流動パラフィン0.1重量部をポリエチレン袋内で手動にて混合した。
実施例17と同様にして、厚み30−70μmのインライン式インフレーション法フィルム成形を実施した。フィルムは、透明均一であり、ゲル・FEが無く、本発明の樹脂製造法の優秀性を更に実証した。
【比較例1】
PET系ポリエステル(A)として回収ペット・ボトルフレ−ク(協栄産業(株)、固有粘度0.78dl/g、MFR45g/10分)のみを同様条件で成形したが、溶融粘度が低くて、フィルム成形が極めて困難であった。
【実施例19】
【0038】
[回収ペット・ボトルフレ−ク等から高分子型多官能エポキシ混合物による分子量分布の拡大制御された高溶融粘度の樹脂P19の量産例]
回収ペットボトル・パリソン(A成分、共栄産業(株)、固有粘度0.738dl/g、MFR45g/10分)を120℃・12時間熱風乾燥した100重量部(水分含有率150ppm)、PETG(D成分、イーストマン社、MFR110g/10分)を70℃・4時間熱風乾燥した10重量部(水分含有率100ppm)、ポリエステル・エラストマー(D成分、帝人化成、PET系赤褐色ゴムTRB−ELA)を120℃・4時間熱風乾燥した5重量部(水分含有率120ppm))に、高分子型エポキシ化合物の混合物BM50.80重量部(B成分、日本油脂(株)、ブレンマーCP30S:分子量9,000、エポキシ基数17個/分子、ブレンマCP50M:同10,000、同32、マープループG01100:同12,000、同71、それら重量比BM5(B2:B3:B5=1:1:1)、反応触媒としてステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム混合粉0.30重量部(それら重量比1:1:2)、安定剤としてIRGANOX B225の0.1重量部および展着剤として流動パラフィン0.05重量部をタンブラーで10分間混合した。
【0039】
(株)星プラスチック製の単軸押出機(スクリュ−径65mmΦ、圧縮型スクリュー、混合帯付き、L/D=50、回転数100rpm、1ベント式)を使用し、この押出機のスクリュ−とダイスの設定温度を240−280℃とし、ドライ方式ポンプで真空引きしながら、上記のパリソン混合物をホッパ−に投入し、フィーダーで所定速度にて供給することによって反応押出を行った。ダイスからストランド5本を水中に連続的に押出して冷却し、回転カッタ−で切断して透明な樹脂ペレットを80Kg/時間の速度で造粒した。かくして得られた耐熱性熱融着樹脂ペレットP19(MFR25g/10分)約500Kgを、120℃・12時間の熱風乾燥して後に、防湿袋または防湿容器に貯蔵した。
ポリエチレン用インフレーション法フィルム成形装置にて安定的に厚み25〜40μmおよび折径400mmのフィルムを安定的に成形できたフィルムは、透明均一であり、ゲル・FEが無く、本発明の樹脂製造法の優秀性を更に実証できた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
一般消費市場から回収されるPET系ポリエステル樹脂を主原料として再利用する場合、不可避的な分子量の低下により利用分野が制限されていたのを、本発明の方法により容易に所望の分子量、成形加工性、物性のポリマーに復元することができ、再生資源の有効利用に大きく寄与する。また、新品のPET系ポリエステル樹脂にも同様に適用でき、かつ本発明により巨大分子量と拡大制御された分子量分布を持つので、従来のPET系ポリエステル樹脂では困難だったインフレーション法フイルム、水平押出法シート・ボード、発泡体、パイプおよび異型押出品などの成形加工品の製造が可能となった一方、副原料に芳香族核にカルボキシル其を含有する芳香族系ポリエステルを共重合させることにより、従来のPET系ポリエステル樹脂では不可能だった溶断シュリンク・フィルム、接着性フィルム、耐衝撃性発泡体、容器およびパイプなどの実用化が可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部、(B)結合剤として骨格樹脂の分子量1,000〜300,000および該分子内に7〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物0.01〜2重量部、(C)結合反応触媒として有機酸の金属頃0.01〜1重量部および(D)芳香族咳にカルボキシル其を含有する芳香族系ポリエステル0〜100重量部から構成される混合物を、250℃以上の温度で均一反応させて高溶融粘度化することを特教とするポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法。
【請求項2】
(A)ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部、(B)結合剤として骨格樹脂の分子量1,000〜300,000および該分子内に7〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物0.01〜2重量部、(C)結合反応触媒として有機酸の金属塩0.01〜1重量部および(D)芳香族核にカルボキシル其を含有する芳香族系ポリエステル0〜100重量部から構成される混合物を、反応押出法により250℃以上の温度で均一反応させてJIS法で280℃、荷重2.16Kgにて50g/10分以下にすることを特教とするポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂ペレットの製造方法。
【請求項3】
ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル(A)が、固有粘度0.60〜1.25dl/gのポリエチレンテレフタレートまたは回収されたポリエチレンテレフタレート成杉品の再循環物のいずれか一種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法。
【請求項4】
結合剤として骨格樹脂の分子量1,000〜300,000および該分子内に7〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物(B)を、2種類以上混合使用することにより分子量分布を拡大制御することを特教とする請求項1または2に記載のポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法。
【請求項5】
有機酸金属塩(C)が、アルカリ金属のカルボン酸塩およびアルカリ土類金属のカルボン酸塩からなる群のいずれか一種類以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法。
【請求項6】
芳香族核にカルボキシル其を含有する芳香族系ポリエステル(D)が、無定形エチレングリコール・シクロヘキサンジメタノール・テレフタール酸(PETG)、ポリエステル・エラストマーおよび結晶性ポリブチレンテレフタレートからなる群のいずれか一種類以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂の製造方法。
【請求項7】
(A)ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル100重量部、(B)結合剤として骨格樹脂の分子量1,000〜300,000および該分子内に7〜100個のエポキシ基を含有する高分子型多官能エポキシ化合物0.01〜0.3重量部、(C)結合反応触媒として有機酸の金属塩0.01〜0.3重量部から構成される混合物を、反応押出法で250℃以上の温度で均一反応させてポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂を製造して後に、該温度でキャスト法により高速度結晶性シートに成形することを特教とするポリエチレンテレフタレート系グラフト共重合樹脂シートの製造方法。

【公開番号】特開2008−31482(P2008−31482A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198120(P2007−198120)
【出願日】平成19年7月1日(2007.7.1)
【出願人】(599168257)エフテックス有限会社 (4)
【Fターム(参考)】