説明

ポリエーテル分離用マトリックス及び分離方法

本発明は、表面にポリマー鎖が結合した担体からなる分離マトリックスであって、各ポリマー鎖が繰返しプロトン供与基を示し、担体の少なくとも表面が実質的に親水性である、分離マトリックスに関する。最も有利な実施形態においては、担体は多孔質架橋アガロースであり、ポリマーはポリ(アクリル酸)であり、プロトン供与基はカルボキシル基である。このマトリックスは、例えば液中のペグ化及び/又は未変性化合物からPEGを除去するのに有用である。したがって本発明はまた、本発明による分離マトリックスを用いる、例えば未反応PEG、ペグ化タンパク質及び未変性タンパク質を含む反応混合物の前処理のクロマトグラフィー法などの方法も包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー修飾タンパク薬などの高分子物質若しくはその他の化合物の分離及び/又は単離に特に有用な分離マトリックスに関する。本発明はまた、例えば分析又は生物医学的な用途に有用なポリマー結合表面も包含する。さらに本発明は、新規な分離マトリックスを使用する分離方法、及びこうした分離マトリックスの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤及び生物薬剤産業においては、新しい治療用タンパク質及び既存のFDA認可タンパク質を、溶解性、加水分解安定性及び凝集性などの物理的性質、並びに抗原性、タンパク質安定性、血清循環時間、及び送達の容易さなどの生物医学的特性を高める化合物で修飾することが多い。現在、一般にペグ化として知られている、ポリ(エチレングリコール)(PEG)を用いた修飾法が、治療用途で最も広く用いられている修飾法である。しかし、PEG誘導体及び中性親水性ポリマー、例えばデキストラン、などの他の化合物もこの目的に有用である。同様な修飾は、タンパク質以外の分子、例えば低分子量の有機薬剤及び薬剤候補にも適用される。
【0003】
PEG修飾したタンパク質及び低分子量薬剤は、重要な生物薬剤の種類であり、一般に予め精製した分子をペグ化することによって製造される。適切な条件下でPEGを予め精製した溶液と接触させると、こうして得られた反応混合物は、未反応PEG、未修飾分子及びペグ化分子を含有している筈である。したがって、モノペグ化又はポリペグ化分子などの標的を混合物の他の成分から単離する、その後の精製段階が必要である。未反応PEGはコロイドと界面活性剤の両方の性質を示し、溶液条件によっては沈殿したり又はタンパク質の沈殿を引き起こす恐れがあるので、その後の精製を干渉する危険があることがよく知られている。例えば、クロマトグラフィーを用いて標的を精製する場合、未反応PEGが分離マトリックスの汚れを促進する恐れがある。したがって、可能な限り速やかに未反応PEGを工程から効率的に除去できることが重要である。
【0004】
未反応PEGを除去するために、限外濾過が提案されている。しかし、これにはPEGとペグ化分子の間にかなりの寸法差が必要であるが、いつもそのようになるとは限らない。さらに、限外濾過はスケールアップするのが難しく費用がかかるので、大規模な処理には適切でない。
【0005】
クロマトグラフィーは、反応混合物などの液体の周知の精製方法である。クロマトグラフィーにおいては、互いに混合しない2つの相を接触させる。より詳細には、目標化合物を移動相に導入し、これを固定相と接触させる。次いで、目標化合物は、移動相によってシステム内を運ばれるに連れて、固定相と移動相の間の一連の相互作用を受ける。相互作用は、試料中の成分の物理的又は化学的性質の違いを利用する。液体クロマトグラフィーにおいては、適切な緩衝液を適宜混合した液体試料が移動相を構成し、これを分離マトリックスとして知られた固定相と接触させる。一般にマトリックスは、標的との相互作用が可能な基であるリガンドが結合した担体を含む。クロマトグラフィーの原理は周知であり、広範囲にわたって文献に記述されている。さらに、多くの特許文献には担体及びリガンドの技術の開発が記載されている。
【0006】
例えば、1974年に登録された米国特許第3793299号(Zimmerer、R.E.)には、セルロース系担体に基づく初期のイオン交換材料が開示されている。この特許は、水に対するセルロースの親和性によって引き起こされる問題への解決法を提供している。より具体的には、従来技術のセルロース系イオン交換材料は、水溶液と接触するとセルロース系材料が膨潤、ゼラチン化、又は分散する傾向を持つ結果として、使い勝手が悪いことが認められていた。これらの問題を避けるために、米国特許第3793299号は、加水分解するとカルボキシル化されるかカルボキシル化可能になる重合性ビニルモノマーをセルロースにグラフトし、その後グラフト化セルロースを約10〜30分間カセイアルコール又は水溶液と接触させ、これらの後でカセイ処理を停止することによって調製されるカチオン交換材料を提示している。得られた製品はカチオン交換体である。即ち、クロマトグラフィーで使用した場合、これはイオン性の相互作用を介してプラスに荷電した標的と相互作用することになる。
【0007】
より最近、ペグ化ウイルスを精製するためのイオン交換クロマトグラフィーが開示された。より具体的には、国際公開第98/39467号(Calydon Inc.)は、アニオン交換体Q Sepharose(商標)XL(Amersham Biosciences AB、ウプサラ、スウェーデン)を用いたペグ化アデノウイルスの精製を記載している。Q Sepharose(商標)XLは、デキストランが付加され、その官能基が第4級アミノである高度架橋アガロースからなる強力なアニオン交換体である。
【0008】
イオン交換体の別のグループは、担体から延在する大きな触手状の基によって、触手ゲルとして知られている。中性及び塩基性のタンパク質とペプチドの分離用に市販されている1種の入手可能な製品は、Fractogel(登録商標)EMD COO−(Merck)である。これは、官能基がカルボキシル基であり、固体担体がメタクリレート系コポリマーからなる弱酸性のカチオン交換体である。官能性カルボキシル基は高分子電解質鎖を介して結合しており、このイオン性基が標的との静電的相互作用に最適な配置をとることを可能にしている。したがって、Fractogel(登録商標)EMD COO−上のタンパク質の分離は、タンパク質表面の正に帯電した領域と担体の間の可逆的な静電的相互作用に基づくものである。結合の強さは、交換体の官能基のイオン化率、対イオンの濃度及び担体の電荷密度だけでなく、緩衝液系、タンパク質の表面電荷を決める緩衝液のpH値にも左右される。Fractogel(登録商標)EMD COO−からの溶出は、塩濃度を高くすることによって、又はpHの低下によって行われる。
【0009】
最後に、水溶液中でポリ(アクリル酸)がポリエチレングリコール(PEG)と複合体を形成することが知られている。Journal of Polymer Science (Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 32, 1385−1387 (1994))は、疎水性相互作用がこうした複合体の安定性に極めて重要でありうることを報告している。これは、ポリ(メタクリル酸)−PEG複合体の安定性が、ポリ(アクリル酸)−PEG複合体の安定性より高いことによって立証されている。この高い安定性は、ポリ(メタクリル酸)にCH基が存在することによって説明される。さらに、これに関連して、酸基の構造及び下にあるマトリックスのわずかな変化が重要な役割を果たしている可能性があるように見える。
【特許文献1】米国特許第3793299号明細書
【特許文献2】国際公開第98/39467号パンフレット
【非特許文献1】Journal of Polymer Science (Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 32, 1385−1387 (1994))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一態様において、本発明は、目的物質の結合及び放出がpHの変化によって容易に制御される分離マトリックスを提供する。これは、請求項1に記載の分離マトリックスによって実現することができる。この分離マトリックスは、1種以上の目的物質との水素結合相互作用を可能にする。こうした分離マトリックスは、例えば、液体クロマトグラフィーにおいて使用するためのクロマトグラフィーカラムの充填剤として有用である。
【0011】
本発明の別の態様は、目的物質の結合及び放出がpHの変化によって容易に制御される、他のポリマー結合表面を提供する。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、従来のイオン交換体よりも高い塩条件でのクロマトグラフィーを可能にする分離マトリックスを提供する。
【0013】
別の態様は、タンパク質などの高分子物質を、液中の他の成分から分離する方法を提供する。この高分子物質は、1種以上のポリエーテルで修飾されている。この方法は、制御された結合及び適宜放出を可能にする。これは、添付の特許請求の範囲に記載された方法によって実現することができる。この方法は、例えば所望の標的を液中の他の成分から分離するのに、又は特定の標的を所望の液から除去するのに有用である。
【0014】
本発明の特定の態様は、未反応ポリエチレングリコール(PEG)によって促進される汚れを回避しながら、製品の流れから1種以上のペグ化化合物を精製する方法を提供する。こうした製品の流れは、例えばクロマトグラフィー法で精製することができるが、この場合、汚れは分離マトリックスで、濾過工程で、或いは同様な表面を用いた他のどんな工程でも起こるであろう。これは、未反応PEGを本発明による分離マトリックスへの水素結合によって除去する前処理段階を導入し、その後任意の通常の分離方法を用いて精製された製品を得ることによって実現することができる。
【0015】
本発明のその他の態様及び利点は、以下に提供する詳細な説明から明らかになるであろう。
【0016】
定義
本発明出願においては、「ペグ化」という用語は、ポリエチレングリコールで修飾されていることを意味する。
【0017】
「水素結合」という用語は、部分的に陽性の水素原子と孤立電子対を有する陰性原子の間の結合を意味する。
【0018】
「分離マトリックス」という用語は、本明細書では、リガンドが結合している担体を意味する。
【0019】
本明細書で用いる分離マトリックスの「表面」には、担体の外面及び細孔表面の両方が含まれる。
【0020】
「K」という用語は、酸の解離定数について、その通常の意味で用いられ、したがって「pK値」は−logK値を表す。
【0021】
「官能基」という用語は、リガンドと標的の相互作用を可能にする基を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1の態様において、本発明は、多孔質若しくは非多孔質担体と、この担体に結合したポリマーの上に存在する繰返しプロトン供与基とからなる分離マトリックスに関する。より具体的には、本発明は、表面にポリマー鎖が結合した担体からなる分離マトリックスであって、各ポリマー鎖が繰返しプロトン供与基を示し、担体の少なくとも表面が実質的に親水性である、分離マトリックスに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
したがって、本マトリックスにおいては、このプロトン供与基がリガンドを構成しており、利用可能なプロトン受容基を示す任意の標的と、水素結合を介して相互作用することができる。相互作用するプロトン供与基はポリマー鎖の反復単位、即ち繰返し単位として現れる。さらに、本明細書では「ポリマー鎖上において」繰返すという表現を用いて、プロトン供与基がポリマー鎖に結合していること、又はその一部であることを明らかにしている。そしてこのポリマー鎖が担体の表面に結合している。その結果、通常プロトン供与基は担体への直接の接触点を持っていない。したがって、プロトン供与基は、ポリマー鎖上の、担体からある程度距離を置いた位置に存在しており、ポリマー鎖の形状及び性質によっては担体から延在しているものもある。当業者なら容易に分かるように、この官能基は、線状及び/又は枝分れポリマー、或いはその他どんな高分子網目にも付加させることができる。
【0024】
この担体は、任意の有機又は無機材料から作ることができる。担体は、例えば流動床吸着で使用する場合などは中実でもよく、或いは液体クロマトグラフィーでしばしば使用されるように多孔質でもよい。有利な実施形態においては、担体は多孔質である。多孔質担体に関連して、「表面」という用語は、担体の外面及び細孔表面の両方を意味することに留意されたい。したがって、担体は、実質的に球形の粒子などの粒子、モノリス、メンブラン、チップ、及び面の形態とすることができる。
【0025】
したがって、第1の実施形態においては、担体は炭水化物担体であり、クロマトグラフィー又は濾過などの分離方法において担体として通常用いられるような任意の炭水化物材料とすることができる。一実施形態においては、担体は、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラギナン、ジェラン、及びアルギナートなどの架橋炭水化物材料からなる。最も好ましい実施形態においては、マトリックスは多孔質架橋アガロースである。本発明の炭水化物担体は、逆懸濁ゲル化(S Hjerten: Biochim Biophys Acta 79(2), 393−398 (1964)などの標準的方法に従って当業者によって容易に調製される。或いは、担体は、Sepharose(商標)FF(Amersham Biosciences AB、ウプサラ、スウェーデン製の多孔質架橋アガロースゲル)などの市販の製品をベースとする。次いで、標準的方法に従ってこの製品を修飾してプロトン供与基を付加する。この最後に言及した実施形態は、以下により詳細に論じる。
【0026】
したがって、この実施形態においては、本発明による分離マトリックスは上記のFractogel(登録商標)EMD COO−とは異なり、本発明の担体が天然のポリマーから作られるのに対して、Fractogel(登録商標)EMD COO−は合成コポリマーの担体を含む。さらに、クロマトグラフィーにおいて使用すると、Fractogel(登録商標)EMD COO−は、リガンドが脱プロトン化即ち帯電すると陽性荷電の標的と結合し、リガンドがプロトン化すると標的を放出する。これは本発明の機能と正反対である。本発明では、リガンドがプロトン化すると、帯電していない標的分子との水素結合を介した結合が発生し、リガンドが脱プロトン化即ち帯電すると放出が発生して、もはやプロトン供与体としての役割を果たすことはない。
【0027】
本発明の別の実施形態においては、マトリックスの担体は、表面修飾合成ポリマー担体であり、この表面は水酸基を示す。こうした合成ポリマー担体は、任意の適切なポリマーとすることができ、以下により詳細に論じるように、好ましくは、スチレン又はスチレン誘導体、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルアミドなどの架橋合成ポリマーであり、当業者によって容易に調製される。有利な実施形態においては、本発明の表面修飾合成ポリマーは、架橋スチレン及び/又はジビニルベンゼンである。さらに、特定の実施形態においては、以下により詳細に論じるように、本発明のポリマー鎖は、二重結合及びエポキシドを介して担体に結合している。
【0028】
上記から分かるように、一実施形態においては、本発明の分離マトリックスの担体は多孔質である。この文脈においては、表面という用語は、担体の外面のみならず細孔表面をも意味する。
【0029】
本発明による担体に結合したポリマー鎖上に存在するプロトン供与基、即ち本発明の分離マトリックスの官能基に関しては、高pH値においてポリマー鎖はプロトン化した基をできるだけ多く持つことが望ましいことが、当業者には分かるであろう。したがって分離マトリックスに存在する場合には、そこに存在する官能基の大部分は、得られるpK値が約4.0超、例えば6超であることが望ましく、好ましくは約7超、例えば8超である。別の実施形態においては、前記pK値は、約4.0〜10.0の範囲内であり、且つこの間の任意の部分範囲、例えば4.0〜6.0、6.0〜7.0、7.0〜8.0又は8.0〜10.0である。有利な実施形態においては、分離マトリックスの官能基は主に水素結合に関与することができるカルボキシル基である。カルボキシル基はまた、容易に脱プロトン化してカルボキシレートイオンになる。これは、単に当該カルボキシル基のpK値を超える値にpHを上昇させることによって、水素結合の切断を可能にする。これにより、目的物質を、本発明の分離マトリックスから回収することができる。この文脈においては、「主に」という用語は、官能基の大半、例えば約80%以上、例えば80〜100%、具体的には約90%以上、例えば90〜100%、より具体的には約95%以上、例えば95〜100%がカルボキシル基であることを意味している。しかし当業者なら分かるように、アミドなどのその他のプロトン供与基もまた、1種以上の目的物質の水素結合に関与することができる。さらに特定の実施形態においては、小数のイオン交換基及び疎水性相互作用を行うことができる基など、他の相互作用を行うことができる基も少量存在する。
【0030】
上記の官能基を持つポリマー鎖は、炭素鎖又はヘテロ原子が割り込んだ炭素鎖などの任意の適切なポリマーとすることができ、未置換であっても、例えばメチル、エチル又はその他のアルキル基、アリール基などによって置換されていてもよい。したがって一実施形態においては、ポリマーはポリエチレンイミンである。さらに官能基は、アルキル又はアリール基などの他の基を介して炭素鎖に結合することができる。したがって、官能基を持つポリマー鎖の本発明による具体的な例としては、ポリ(アクリル)酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(アリール)酸、ポリ(マレイン酸)、ポリ(マロン酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリフェノール含有ポリマー、ポリアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。本発明の分離マトリックスの有利な実施形態においては、ポリマー鎖は主にポリ(アクリル酸)鎖である。
【0031】
ポリマー鎖は、1種以上の目的物質が申し分なく結合できるのに十分なサイズであることが望ましい。したがって、目標物質がポリマーなどの細長い分子である場合は、ポリマー鎖の長さは、両者の間に多数の付加ポイントが可能になるように、目標物質のプロトン受容基の数に適合させることが望ましい。一実施形態においては、各ポリマー鎖は約5〜1000個からなり、本発明はこの間のすべての部分範囲、例えば約50〜500個、例えば約100〜500個のモノマー単位を包含する。当業者は、例えば長いポリマー鎖がより小さなサイズの目標分子に巻き付くリスクなどを考慮して、それぞれの場合について適切なサイズのポリマー鎖を選択することができる。したがってポリマー鎖の長さは、目標分子のサイズに合理的に適合させることが望ましい。当業者なら分かるように、多孔質担体の場合は、ポリマー鎖のサイズは孔のサイズにも左右される。密度、即ち担体上の単位面積当りのポリマー鎖の数は、目標分子との最適な相互作用が可能になるように適合させることが望ましい。
【0032】
有利な実施形態においては、分離マトリックスは、炭水化物にグラフトしたポリマー鎖を含む。この分野においては、グラフトとは、担体の表面においてモノマーがその部位で重合することを意味する。グラフトを行うことにより、密度の高い高分子表面のコーティングを形成することができる。重合は、担体上に存在する二重結合などの反応性基において開始される。担体の性質に応じて、反応性基は、例えば合成担体上の未反応ビニル基などのように既に存在するか、又は例えば炭水化物担体の水酸基を変形することによって容易に設けられる。(グラフトの様々な原理の概要については、例えば、P F Rempp, P J Lutz: Comprehensive Polymer Science vol. 6, pp 403−421, Eds. G Allen et al, Oxford 1989を参照されたい。グラフトによる合成クロマトグラフィー担体については、Amersham Biosciences AB(Ihre等)の国際公開第03/046063号を参照されたい。)別の実施形態においては、本発明のポリマーは、通常の技術を用いて別々に調製され、担体に結合される。ポリマーを担体に結合する別の方法のさらに具体的な例としては、例えばシランなどの反応性化合物を結合させること、ポリエチレンイミンなどのポリマーを用いて担体表面を前処理し次いで酸基をアミンの反応性層上にグラフトすること、ポリシロキサンがその部位で形成されるコーティングを使用することなどが挙げられる。当業者は、目的の用途に対してプロトン供与基が十分な高密度で表面を被覆するように条件を適合させることができる。本発明の分離マトリックスの調製についての更なる詳細は、本発明の第4の態様に関連して以下に提供する。
【0033】
一実施形態においては、本発明による分離マトリックスは、好ましくは液体クロマトグラフィーにおいて、酸素に富んだ基を含むことにより水素結合相互作用においてプロトン受容体として関与することができる高分子目的物質を、液の他の成分から分離することができる。したがって、こうした目標物質は、好ましい実施形態においてはポリエーテルである。ポリエーテルは、こうしたプロトン受容体を繰返して提示し、その結果同時に複数の部位で分離マトリックスとの相互作用が可能になる。こうしたポリエーテルの例としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、PEG−PPGブロックコポリマー、PEG−PPGコポリマー、Pluronic(商標)(BASF)及びその他のPEG−PPG−PEGトリブロックポリマー、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)及び類似のポリマー、重合アリルグリシジルエーテル、重合フェニルグリシジルエーテル、これらに様々な界面活性剤を加えたもの、並びに上記のポリエーテルを利用した他の化合物が挙げられる。最も有利な実施形態においては、本発明の分離マトリックスは、液中のペグ化化合物及び/又は非修飾化合物からPEGを分離することができる。有利な実施形態においては、これらの化合物は、タンパク薬又は抗体などのタンパク質である。この文脈における化合物の他の例には、容易にペグ化できるウイルス及び任意の他の化合物がある。したがって、本発明の分離法は、PEG及び/又は任意の類似のエトキシ化物質を液体から単離することができる。時にペグ化されることもあるので、本発明の分離マトリックスを用いて単離できる化合物の他の例には、リポソーム、粒子、及び細胞がある。
【0034】
背景技術のところで述べたように、水溶液中でポリ(アクリル酸)がPEGと複合体を形成すること、及びポリ(アクリル酸)をポリ(メタクリル酸)で置換すると複合体の安定性が上昇することが、Journal of Polymer Science (Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 32, 1385−1387 (1994))によって示されている。したがって、ポリ(アクリル酸)−PEG相互作用の安定性が比較的弱かったことが想定されていたと思われる。しかし、上記から分かるように、本発明は、予期しないことに、こうした複合化がクロマトグラフィーなどの分離方法で用いるのに十分強いことを示している。
【0035】
本発明の分離マトリックス若しくは表面がポリエーテル目標物質を結合する能力は、医療若しくは分析用途又は製造プロセスなどの様々な場面において利用することができる。
【0036】
したがって、第2の態様においては、本発明は、ペグ化化合物の精製において上記の分離マトリックスを使用することに関する。最良の実施形態においては、マトリックスはポリ(アクリル酸)とカルボキシル基を含む多孔質炭水化物担体であり、これを用いてPEGを液中のペグ化された未変性タンパク質から分離する。
【0037】
第3の態様においては、本発明は、1種以上のポリエーテル目標物質を液の他の成分から分離する方法に関する。この方法は、
(a)表面にポリマー鎖が結合した担体からなり、各ポリマー鎖が繰返しプロトン供与基を示し、上記担体の少なくとも表面が実質的に親水性である、分離マトリックスを提供する段階と、
(b)約6未満のpHで、前記液を前記分離マトリックスと接触させて、前記分離マトリックスのプロトン供与基と前記1種以上の目標物質のプロトン受容エーテル酸素との間の水素結合を可能にする段階と、適宜、
(c)前記分離マトリックスを溶出液と接触させることによって、1種以上の目標物質を前記マトリックスから回収する段階とを含む。
【0038】
例示の実施形態においては、本発明の方法は、広く用いられており周知の分離技術であるクロマトグラフィーの一方法である。基本的には、段階(a)において、周知の方法に従って適切な分離マトリックスが調製され、カラムに提供される。段階(b)においては、例えば流動床において、マトリックスに対する1種以上の目標物質の水素結合を促進する条件下で、重力又はポンプを利用して液をカラムに通す。周知のように、マトリックスの吸着能力を超えないような注意が必要である。即ち、満足しうる結合が可能になるように流れを十分遅くすることが望ましい。この段階においては、液の他の成分は基本的には妨げられずに通過することになる。必要に応じて、段階(b)と(c)の間で、好ましくは水溶液又は緩衝液でマトリックスを洗浄して、残留した及び/又は弱く結合した物質を除去する。段階(c)においては、溶出液は、官能基の脱プロトン化を引き起こす任意の液又は溶液である。言い換えると、段階(c)の目的は、プロトン供与及び水素結合を阻止することであり、これにより1種以上の目標物質の脱離、即ち放出が起こる。
【0039】
本発明の方法の利点は、塩濃度が、イオン的相互作用には高すぎるような条件でも、疎水性相互作用には低すぎるような条件下でも使用することができることである。さらに、次の段階の前に効率を低下させる、或いは追加の緩衝液変更段階を加えなければならないなどの犠牲を払ってこの方法の工程条件を最適化しなくてもよい。したがって、本発明の方法は単純であり、経済性に優れ、且つ多くの特別な配慮なしにスケールアップが可能である。これは、PEGの処理に関して従来提案された限外濾過と比べて有利な点である。
【0040】
より具体的には、有利な一実施形態においては、分離マトリックスは、本発明の第1の態様に関して上述したように、炭水化物担体を含む。
【0041】
別の実施形態においては、分離マトリックスは、例えばスチレン又はスチレン誘導体、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルエステル、ビニルアミドなどの架橋合成ポリマーから作られた合成担体を含む。こうしたポリマーは、標準的な方法に従って容易に製造される。例えば、”Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization” (R Arshady: Chimica e L’Industria 70(9), 70−75 (1988))を参照されたい。或いは、本発明による分離マトリックスに関して述べたように、市販の製品を表面修飾して、プロトン供与官能基がポリマー鎖上に繰返して付加されている状態にする。
【0042】
段階(b)の水素結合のための条件は、分離マトリックスの官能基の性質、具体的には得られるpK値の範囲に応じて選択される。やはり上述したように、接触時の液のpHを、前記pK値の範囲に対して、プロトン供与基が脱プロトン化することはないが、確実に水素結合を形成することができるように適合させることが望ましい。本発明の方法の一実施形態においては、段階(b)は、約5未満、好ましくは3〜4の範囲のpHで行われる。特定の実施形態においては、段階(b)は約3のpHで行われる。
【0043】
段階(c)の回収のための条件は、上記に従って、分離マトリックスの官能基が確実に脱プロトン化し、したがって先に結合していた1種以上の目標物質を確実に放出するように選択される。したがって、段階(c)においては、1種以上の目標物質が、官能基のpK値を超えるpHで分離マトリックスから放出される。有利な実施形態においては、段階(c)の溶出液は、pHが上昇するグラジエントを含む。このpHグラジエントは、連続グラジエントでも段階的グラジエントでもよく、2種以上の異なる目標物質を選択的に溶出すること、したがってこれらを個別に回収することが可能である。別の実施形態においては、段階(c)の溶出液は塩グラジエントを含む。さらに別の実施形態においては、段階(c)は、競合的な結合剤を加えることによって、又はマトリックス上の1種以上の目標物質を置換する化合物を加えることによって行われる。当業者は、官能基の性質に応じて適切な溶出液及び段階(c)の条件を容易に選択することができる。
【0044】
本発明による分離マトリックスの使用に関して上述したように、好ましい実施形態においては、1種以上の目標物質はポリエーテルである。ポリエーテルは、プロトン受容体を繰返して示しているので、複数の部位において同時に分離マトリックスと相互作用することが可能である。こうしたポリエーテルの例としては、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコール(PPG)が挙げられる。したがって、特定の実施形態においては、第1の目標物質をペグ化タンパク質若しくはペプチドとすることができ、第2の目標物質を未変性のPEGとすることができる。こうしたペグ化タンパク質若しくはペプチドは、背景技術において上述したように、好ましくは薬剤産業において使用される酵素や抗体などの任意のタンパク質とすることができる。その他の可能な目標物質は、ペグ化ウイルス又は薬剤又は薬剤候補などのペグ化有機化合物である。本発明の方法は、クロマトグラフィーカラムの汚れなどの問題を回避するために未反応PEGを製品流から除去することに関して特に有利である。
【0045】
特定の実施形態においては、本発明は、ペグ化化合物、未反応PEG並びにペプチド及び/又はタンパク質などの未変性化合物を含む反応混合物からペグ化化合物を精製する方法である。この方法は、未反応PEGの除去について上記した方法を含み、その後、精製された状態のペグ化化合物を単離するためにカチオン交換などのクロマトグラフィーの段階を含む。この方法は、前処理によりカチオン交換体が詰まるリスクが低減するので、例えば上記の国際公開第98/39467号(Calydon Inc.)において提案されたペグ化アデノウイルスの精製方法と比べて有利である。しかし、本明細書から分かるように、こうした方法のすべての段階は、本発明による分離マトリックスを用いて別法によって行うこともできる。
【0046】
別の実施形態においては、本発明の方法を用いて、ペプチド及び/又はタンパク質などのペグ化化合物を結合させることもできる。塩濃度及び緩衝液pHを適切に調節することによって、当業者は、ペグ化化合物よりもPEGを優先的に結合させることができる。例えば、モノペグ化化合物の場合は、本発明の分離マトリックスと反応混合物の各成分との相互作用力は、おそらくPEG>モノペグ化化合物>未変性化合物である。この実施形態においては、段階(c)でグラジエント方式の溶出を用いることが有利である。
【0047】
別の実施形態においては、本発明を用いて、製品流からポリエーテル若しくはペグ化物質などのポリエーテル修飾物質を除去する。この実施形態においては、有利な分離形態はフィルターである。
【0048】
本発明はまた、この第3の態様の特定の実施形態も包含する。ここでは、目標物質はプロトン供与基を含むポリマー鎖で修飾されており、一方担体マトリックスは多孔質若しくは非多孔質担体と、前記担体に結合したポリマー鎖上の反復したエーテル基とからなる。したがって、この実施形態においては、プロトン供与基とプロトン受容基は、上述したものと比べて立場が変わっている。しかし、プロトン供与基とプロトン受容基の性質、担体の性質、使用条件などに関する他の細部は、上記並びに以下の開示に見出すことができる。
【0049】
第4の態様に置いては、本発明は、上記の分離マトリックスを調製する方法に関する。この方法は、その表面をポリ(アクリル酸)基で修飾することによって、イオン交換マトリックスを水素結合マトリックスに変換することを含む。こうした修飾を行う方法は当業者には周知である。簡単に言えば、第1の段階は、例えば適切な温度及び反応時間でアリル官能性を持つエポキシドによって処理することにより、適切な担体の表面上に、例えばSepharose(商標)(Amersham Biosciences、ウプサラ、スウェーデン)の表面に存在する水酸基を介して、二重結合を導入することが有利である。こうした通常用いられるアリル官能性エポキシドの一例はアリルグリシジルエーテル(AGE)である。その後、エポキシ活性化若しくはラジカル付加などの任意の周知の方法によってポリマー鎖をアリル基に結合する。別の実施形態においては、例えばビニルエーテルを用いて、グラフトによってモノマーをその部位でアリル基に重合させる。したがって、特定の実施形態においては、グラフトによってアリル化マトリックスの表面にアクリル酸モノマーを付加する。ビニルエーテルのグラフトに関する詳細については、参照により本明細書に組み込んだPCT/SE02/02159(Ihre等)を参照されたい。
【0050】
したがって、一実施形態においては、本発明の分離マトリックスのポリマー鎖は、反応性二重結合を介して担体に結合されていることを特徴とする。特に好ましい実施形態においては、分離マトリックスのポリマー鎖は、リンカーを介して担体に結合されていることを特徴とする。このリンカーは、臭化アリル又は好ましくはアリルグリシジルエーテルなどの、任意の通常用いられる化合物とすることができる。したがってこれらのケースでは、担体をポリマー鎖と接続するリンカーは、それぞれアリルエーテル又はアリルヒドロキシプロピルである。
【0051】
最後に、本発明は、本発明による分離マトリックスを充填した容器、好ましくはゲル状の分離マトリックスを充填したクロマトグラフィーカラムを含むシステムも包含する。適宜クロマトグラフィーカラム内に存在する本発明による分離マトリックス、分離マトリックスに結合した目標物質を放出させる溶出液、及びこれらを使用するための使用説明書を含むキットもまた包含する。キットの前記構成要素は個別に区画された部分に詰められる。
【0052】
図面の詳細な説明
図1は、担体に結合したポリマー鎖の上に存在するプロトン供与基が、ポリエーテル目的物質の酸素原子とどのように相互作用するかを模式的に図示することによって、本発明において用いる水素結合の原理を示す。したがって、この図は、例えばPEGが本発明の分離マトリックスにどのように吸着しているかを示す。
【0053】
図2は、本発明によるポリ(アクリル酸)アガロース分離マトリックスの滴定曲線を示す。より具体的には、滴定は0.1M NaOHでpH11.5まで行った。x軸はNaOHの体積をmlで示し、一方y軸はpHを示す。曲線の勾配は、広い範囲のpK値を有するカルボキシル基があることを示している。
【0054】
図3は、実施例2の記載に従って得られたクロマトグラムを示す。流速は1ml/分であり、溶出液は20mM HCOOH−NaOH、pH3の緩衝液であった。
【0055】
図4は、例3の記載に従って、即ち、実施例2で用いた条件下でカルボキシメチルカチオン交換体(CM Sepharose(商標)FF、(Amersham Biosciences、ウプサラ、スウェーデン)を用いて、得られた参照クロマトグラムを示す。したがって、流速及び溶出液は上記の通りであった。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。しかし、実施例が本発明を限定すると解釈すべきではなく、本発明は添付の特許請求の範囲によって規定される。以下及び本明細書のその他で提供されるすべての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
実施例1:本発明による分離媒体の合成
50mLの架橋多孔質アガロースゲル(Sepharose FF)を、水酸化ナトリウムとアリルグリシジルエーテルを含有する水溶液中で、標準的な手順に従って、アリル濃度0.30ミリモル/mlまでアリル化した。次いでアリル化ゲルを、ガラスフィルターで蒸留水500mlを用いて洗浄し、真空乾燥した。洗浄した材料を、プロペラ式撹拌機を備えた三つ口丸底フラスコに移した。その後、水100ml、アクリル酸20ml、及び4,4’−アゾ−ビス(4−シアノペンタン酸)0.25gを加えた。70℃で撹拌しながら一晩反応を行った。30分後、反応混合物は粘稠になった。反応後、粒子を過剰(約1.5L)の水、エタノール及び23%エタノールで洗浄した。
【0058】
実施例2:本発明による分離媒体へのPEG4000の吸着
実施例1の記載に従って調製したポリ(アクリル酸)グラフトSepharose(商標)6FF(Amersham Biosciences、ウプサラ、スウェーデン)1mlを、HR5/5カラム(Amersham Biosciences、ウプサラ、スウェーデン)に充填した。次いでこのカラムを、Amersham BiosciencesのAKTA(商標)Explorerクロマトグラフィーシステムに接続した。屈折率検出器を用いてクロマトグラフィーの運転を監視した。
【0059】
カラムをpH3で平衡させた後、20mM HCOOH−NaOH、pH3の緩衝液に溶解したPEG4000(Merck)5%を含有する試料50μlを1ml/分の流速で注入した。水酸化ナトリウムでpH3に調整した20mMギ酸をカラム体積の15倍超用いて1ml/分で溶出したが、吸着したPEG4000はまったく脱離しなかった。図3から分かるように、クロマトグラム上にピークは一つも現れなかった。このことは、PEG4000が本発明による分離マトリックスに容易に吸着することを示すものである。
【0060】
例3(比較例):PEG4000を従来のイオン交換体に吸着させる試み
弱いカルボキシメチルカチオン交換基を有する架橋アガロース担体である、CM Sepharose(商標)FF(Amersham Biosciences、ウプサラ、スウェーデン)1mlを、HR5/5カラム(Amersham Biosciences、ウプサラ、スウェーデン)に充填し、Amersham BiosciencesのAKTA(商標)Explorerクロマトグラフィーシステムに接続した。屈折率検出器を用いてクロマトグラフィーの運転を監視した。水酸化ナトリウムでpH3に調整した20mMギ酸を溶出液として用いた。
【0061】
カラムをpH3で平衡させた後、20mM HCOOH−NaOH、pH3の緩衝液に溶解したPEG4000を5%含有する試料50μlを1ml/分の流速で注入した。水酸化ナトリウムでpH3に調整した20mMギ酸を1ml/分でカラムに注入したところ、PEG4000は速やかに溶出した。図4から分かるように、1つのピークがクロマトグラムの初期に現れた。これは、実施例2で用いられた条件と同等の条件では、PEG4000が従来の分離マトリックスに吸着しないことを示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】担体に結合したポリマー鎖の上に存在するプロトン供与基が、ポリエーテル目的物質の酸素原子とどのように相互作用するかを模式的に図示することによって、本発明において用いる水素結合の原理を示す図である。
【図2】実施例1に従って調製されたポリ(アクリル酸)アガロース分離マトリックスの滴定曲線を示す図である。
【図3】実施例2の記載に従って得られたクロマトグラムを示す図である。
【図4】例3の記載に従って、即ち、実施例2で用いた条件下で従来のカルボキシメチルカチオン交換体(CM Sepharose(商標)FF、(Amersham Biosciences、ウプサラ、スウェーデン)を用いて、得られた参照クロマトグラムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にポリマー鎖が結合した担体からなる分離マトリックスであって、各ポリマー鎖が繰返しプロトン供与基を示し、上記担体の少なくとも表面が実質的に親水性である、分離マトリックス。
【請求項2】
前記高分子担体が架橋炭水化物担体である、請求項1記載の分離マトリックス。
【請求項3】
前記担体が、表面が水酸基を示す表面修飾多孔質合成ポリマー担体である、請求項1記載の分離マトリックス。
【請求項4】
前記表面修飾多孔質合成ポリマーが架橋スチレン及び/又はジビニルベンゼンである、請求項3記載の分離マトリックス。
【請求項5】
前記担体が多孔質である、前記請求項のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項6】
前記プロトン供与基が主にカルボキシル基である、前記請求項のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項7】
前記ポリマー鎖が主にポリ(アクリル酸)鎖である、前記請求項のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項8】
各ポリマー鎖が約100〜500個のモノマー単位からなる、前記請求項のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項9】
液体クロマトグラフィー法において、ポリエーテル目標物質を他の成分から分離することができる、前記請求項のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項10】
液体クロマトグラフィー法において、ポリ(エチレングリコール)(PEG)をペグ化タンパク質及び/又は未変性タンパク質から分離することができる、請求項9記載の分離マトリックス。
【請求項11】
クロマトグラフィーカラムに、前記請求項のいずれか1項記載の分離マトリックスを含むシステム。
【請求項12】
PEGを液中のペグ化及び/又は未変性化合物から除去するための、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の分離マトリックスの使用又は請求項11記載のシステムの使用。
【請求項13】
ペグ化化合物を液中のPEG及び/又は未変性化合物から単離するための、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の分離マトリックスの使用又は請求項11記載のシステムの使用。
【請求項14】
前記化合物がタンパク質である、請求項12又は請求項13記載の使用。
【請求項15】
1種以上のポリエーテル目標物質を液の他の成分から分離する方法であって、
(a)表面にポリマー鎖が結合した担体からなる分離マトリックスであって、各ポリマー鎖が繰返しプロトン供与基を示し、上記担体の少なくとも表面が実質的に親水性である、分離マトリックスを提供する段階と、
(b)約6未満のpHで、前記液を前記分離マトリックスと接触させて、前記分離マトリックスのプロトン供与基と前記1種以上のポリエーテル目標物質のプロトン受容エーテル酸素との間の水素結合を可能にする段階と、適宜、
(c)前記分離マトリックスを溶出液と接触させることによって、1種以上の目標物質を前記マトリックスから回収する段階と
を含む方法。
【請求項16】
前記分離マトリックスの前記プロトン供与基が主にカルボキシル基である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記分離マトリックスの前記ポリマー鎖が主にポリ(アクリル酸)鎖である、請求項15又は請求項16記載の方法。
【請求項18】
段階(b)において、pHが約4未満、好ましくは約3未満である、請求項15乃至請求項17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
段階(c)の前記溶出液が上昇pHグラジエントを含む、請求項15乃至請求項18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記ポリエーテル目標物質がPEG又はタンパク質などのペグ化化合物である、請求項15乃至請求項19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
反応混合物からペグ化化合物を精製する方法であって、PEGを除去する前処理段階と、1種以上のペグ化化合物を単離する後段階とを含み、前記前処理が段階15乃至段階19のいずれか1項記載の方法である精製方法。
【請求項22】
前記化合物がタンパク質である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
1種以上のペグ化化合物を単離する前記後段階が液体クロマトグラフィー段階である、請求項21又は請求項22記載の方法。
【請求項24】
イオン交換マトリックスを、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の分離マトリックスに変換する方法であって、前記イオン交換マトリックスの担体表面をポリ(アクリル酸)基で修飾する段階を含む方法。
【請求項25】
イオン交換マトリックスを、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の分離マトリックスに変換する方法であって、前記イオン交換マトリックスの担体表面上にビニルエーテルをグラフトする段階を含む方法。
【請求項26】
前記イオン交換マトリックスの担体表面にビニルエーテルモノマーをグラフトする、請求項25記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−506095(P2007−506095A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526851(P2006−526851)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001273
【国際公開番号】WO2005/029065
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)