説明

ポリオキサジアゾール複合繊維

本発明は、ポリオキサジアゾールおよびポリオキサジアゾールポリマーでない軟質鎖状ポリマーを含む複合繊維の調製とそれから製造された物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明はポリオキサジアゾール複合繊維の調製およびそれから製造された物品に関する。
【0002】
染色性と改良されたUV安定性を示すポリオキサジアゾールを含む複合繊維が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ポリオキサジアゾールポリマーおよび軟質(flexible)鎖状非ポリオキサジアゾールポリマーを含む複合繊維に関する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明は、ポリオキサジアゾールおよび軟質鎖状ポリマーの複合繊維とそれの調製に関する。
【0005】
本明細書で用いる「繊維」という用語は、本明細書において「フィラメント」と同義で用いられており、長さとその長さに対して垂直なその断面積の幅との比率が高く、比較的に柔軟で巨視的に見て均質な物体を意味する。繊維の横断面は、いずれの形状でもよいが、どちらかというと円形であることが多い。パッケージ状にボビンに巻き取った繊維を、長繊維という。繊維を、短繊維と呼ばれる短い長さに切ってもよい。繊維を、フロックと呼ばれるさらに短い長さに切ってもよい。マルチフィラメント糸を、合わせてコードとしてもよい。糸を、交絡し、かつ/または撚ってもよい。
【0006】
本明細書で用いる「紡糸する」という用語は、口金を通してポリマー溶液を押出することをいう。
【0007】
本発明に有用なポリオキサジアゾールには、第2のポリマーが同様に繊維として溶液紡糸できる溶媒から繊維にすることを可能にする好適な特性を備えた任意のポリオキサジアゾールポリマーが含まれる。好ましくは、ポリオキサジアゾールポリマーは、1,3,4−ポリオキサジアゾールポリマーまたはコポリマーである。より好ましくは、コポリマーを含むポリオキサジアゾールポリマーとしては、下記の繰り返し単位を含むポリオキサジアゾールが挙げられるが、それらに限定されない。
【化1】

【0008】
ポリオキサジアゾールポリマーの製造方法は、当該技術分野で周知である。ポリオキサジアゾール(POD)ポリマーの製造方法の例は、Journal of Polymer Science:Part A,3,45〜54(1965年)、Journal of Polymer Science:Part A−1,6,3357〜3370(1968年)、Advanced Materials,9(8),601〜613,(1997年)および米国特許出願第11/415026号明細書に見出すことができる。米国特許出願第11/415026号明細書において開示される方法によって生産されるような高いインヘレント粘度を有するポリオキサジアゾールポリマーを得ることが好ましい。
【0009】
第2のポリマーは、コポリマーを含む周知の軟質鎖状ポリマーから選択されるいずれのポリマーでもよい。しかし、好適なポリマーは、クロロスルホン酸およびフルオロスルホン酸、特に硫酸を含む鉱酸中で等方性溶液を形成するものである。等方性溶液に用いられる非常に好適なポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。適切なポリマーの例としては、脂肪族ポリアミド類(たとえば6−ナイロン、6,6−ナイロンおよび6,12−ナイロン)、ポリアニリン、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、芳香族ポリアミド類(MPD−I、MPD−I/T)およびPVP/VA(ビニルアセテート)等のPVPのコポリマーがある。
【0010】
ポリオキサジアゾールポリマーおよび軟質鎖状ポリマーを、溶液から繊維を紡糸することを可能にする任意の比率で組み合わせることができる。通常、軟質鎖状ポリマーに対するポリオキサジアゾールポリマーの任意の比率で、繊維を紡糸することができる。当業者は、通常、複合則を用いて所望の特性を有する繊維を生産するポリマーの比率を決定する。通常、それぞれのポリマーは、生成する複合繊維の特性の測定可能な変化をもたらすために少なくとも2重量パーセントの量で存在する。
【0011】
本発明の複合繊維は、ポリオキサジアゾールポリマーの等方性ポリマー溶液と第2のポリマーの等方性溶液を連続的に組み合わせて複合ポリマー溶液を形成し、複合ポリマー溶液を少なくとも1台のスタティックミキサに通すことによって紡糸原液を形成し、紡糸原液を口金から押し出して複合繊維を形成する方法により紡糸することができる。さらに、その方法は複合繊維を、エアギャップを通過させることと、複合原液繊維を急冷溶液と接触させて凝固複合繊維を形成することと、凝固複合繊維を洗浄溶液と接触させることと、洗浄された複合繊維を中和溶液と接触させて中和され洗浄された複合繊維を形成させることと、中和され洗浄された複合繊維を乾燥させることと、乾燥した複合繊維を巻き取ることとを更に含むことができる。乾燥させた複合繊維は、巻き取り装置上のボビンに巻き取ることができる。本発明の範囲内で複合繊維を製造するのに用いるために好適な押出方法は、米国特許第4,340,559号明細書、米国特許第4,298,565号明細書および米国特許第4,965,033号明細書に開示されている。
【0012】
ポリオキサジアゾール複合繊維は、ポリオキサジアゾールポリマー単独の繊維に比べて改良された染色性を示す。複合繊維は、塩基性染料および酸性染料を使用して原液着色することができる。塩基性染料(すなわちカチオン染料)を、複合繊維の染色性を検査するために用いる。Basacryl Red GL (カラーインデックスのベーシックレッド29)等のカチオン染料が、それが生成する色の深みのために多用される。染料は通常大部分の有機溶媒および、水性媒体に溶解するが、染色性は水性媒体において試験した。微酸性(pH4〜6)が、塩基性染料の均染性を達成するのに必要である。
【0013】
いずれの理論にも制約されることなく、複合繊維の改良された染色性は、軟質鎖状ポリマーの鎖の易動性によって形成された拡散流路によると考えられている。
【0014】
ポリオキサジアゾール複合繊維のUV安定性は、ポリオキサジアゾール単独の繊維に比べて通常は改善される。ポリオキサジアゾール繊維を単独でキセノンランプに20時間曝露した場合、通常は測定可能な強力を示さない。第2のポリマーを少なくとも2重量パーセント有するポリオキサジアゾールの複合繊維を、キセノンランプを用いた紫外線に20時間曝露した場合、測定可能な強力を保持することが可能となる。好ましくは、ポリオキサジアゾール複合繊維は、キセノンランプ曝露20時間後で、複合繊維の強力の20パーセント超を保持するのに十分な量の第2のポリマーを含む。より好ましくは、ポリオキサジアゾール複合繊維は、キセノンランプ曝露20時間後で、複合繊維の強力の35パーセント超を保持するのに十分な量の第2のポリマーを含む。最も好ましくは、ポリオキサジアゾール複合繊維は、キセノンランプ曝露20時間後で、複合繊維の強力の50パーセント超を保持するのに十分な量の第2のポリマーを含む。
【0015】
それぞれのポリマー溶液および/または複合流れは、一般に導入されている酸化防止剤等の添加剤、潤滑剤、UV遮断剤、着色剤などを含んでもよい。
【0016】
特に指定しない限り、百分率はすべて重量当たりを示す。
【実施例】
【0017】
実施例1
ポリオキサジアゾールコポリマーを、86.885g(0.668モル)の固体のヒドラジン硫酸塩、88.74g(0.534モル)の固体のテレフタル酸および22.18g(0.133モル)の固体のイソフタル酸をミキサーで30分間混合し配合することによって調製した。固体のこの配合混合物に最初の30%発煙硫酸添加として25℃で534g(SO32.001モル)の発煙硫酸を加えた。
【0018】
混合物を、25℃で15分間、機械的に撹拌して固体を溶解し、溶液を形成した。次に、溶液を、撹拌機により一定のトルク(一定の粘度)が観察されるまで、機械的に撹拌しつつ120℃まで加熱した(60分間)。
【0019】
この溶液に第2回目の30%発煙硫酸添加として130℃で611g(SO32.290モル)の発煙硫酸を加えた。溶液の粘度が横這いとなるまで、温度を2時間130℃に維持した。溶液を、次いで室温に冷却した。
【0020】
少量のサンプルを、冷却した溶液から取り、0℃で、水に加えてポリマーを沈殿させた。中性のpHに達するまで、ポリマーを水洗した。ポリマーを真空下に乾燥した、インヘレント粘度は2.60であった。溶液に、581gの濃硫酸を加えて5.0%の固形分まで希釈した。
【0021】
調製した上記のポリマー溶液の残りに、重量平均分子量が約90,000である5.06gのK−90ポリビニルピロリドン粉末を室温で添加し、添加した固形物が溶解するまで撹拌した。溶液は、若干透き通った乳白色で絹様の外観を示した。この溶液を、室温で7%の硫酸溶液の凝固浴中にエアギャップ紡糸して繊維とし、続いて水洗し、重炭酸ナトリウム中で中和した。生成した繊維を、120℃のオーブンで一晩乾燥した。繊維の染色性は、酸性のpH4〜5の0.5%のBasacryl Red GL(塩基性染料)溶液により試験した。繊維は濃色に染色されたが、PVPを添加せずに調製した繊維は染色されなかった。
【0022】
実施例2
K−90の代わりに低分子量のPVP(約60,000の重量平均分子量を有するK−30)であることを除いて、同じ方法で調製した繊維サンプルも、Basacryl Red GL(塩基性染料)によって濃色に染色された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合繊維であって
少なくとも1つのポリオキサジアゾールポリマーと、
少なくとも1つの軟質鎖状ポリマーとを含み、前記軟質鎖状ポリマーがポリオキサジアゾールポリマーでない複合繊維。
【請求項2】
前記ポリオキサジアゾールポリマーが、
【化1】

からなる群から選択される繰り返し単位を含む請求項1に記載の複合繊維。
【請求項3】
前記ポリオキサジアゾールポリマーが、
【化2】

からなる群から選択される少なくとも2個の繰り返し単位を含む請求項2に記載の複合繊維。
【請求項4】
前記軟質鎖状ポリマーが、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,12−ナイロン、ポリアニリン、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、芳香族ポリアミド類、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルピロリドン(PVP)のコポリマーからなる群から選択される請求項1に記載の複合繊維。
【請求項5】
前記軟質鎖状ポリマーが、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルピロリドンのコポリマーである請求項4に記載の複合繊維。
【請求項6】
前記ポリオキサジアゾールポリマーが、コポリマーである請求項1に記載の複合繊維。
【請求項7】
前記ポリオキサジアゾールコポリマーが、
【化3】

からなる群から選択される少なくとも2つの芳香環系を含む請求項6に記載の複合繊維。
【請求項8】
前記複合繊維が、キセノンランプに20時間曝露した後にその強力の少なくとも15パーセントを保持する請求項1に記載の複合繊維。
【請求項9】
前記複合繊維が、染色可能である請求項1に記載の複合繊維。
【請求項10】
前記軟質鎖状ポリマーが、約2〜98重量パーセントの量で存在する請求項1に記載の複合繊維。
【請求項11】
前記軟質鎖状ポリマーが、約5〜98重量パーセントの量で存在する請求項10に記載の複合繊維。
【請求項12】
前記複合繊維は、キセノンランプに20時間曝露した後にその強力の少なくとも15パーセントを保持する請求項10に記載の複合繊維。
【請求項13】
前記複合繊維が、キセノンランプに20時間曝露した後にその強力の少なくとも35パーセントを保持する請求項10に記載の複合繊維。
【請求項14】
請求項1に記載の複合繊維を含む物品。

【公表番号】特表2009−542935(P2009−542935A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519446(P2009−519446)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/014973
【国際公開番号】WO2008/008185
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】