説明

ポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法

【課題】活性水素を含有しない有機溶剤を少量しか使用しなくても付加重合が行え、ポリオキシアルキレンポリオール等の収量が多く、廃溶剤の量が低減でき、生産効率の高いポリオキシアルキレンポリオール等の製造方法を提供する。
【解決手段】塩基性触媒(E)及び、夫々独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基又は炭素数1〜8のアルコキシ基を有するアルミニウム又はホウ素から選ばれる三価金属化合物(C)の存在下で、活性水素基含有化合物(A)にアルキレンオキサイド(B)を付加重合させる製造方法であって、(A)の活性水素含有基と(E)とのモル比が10〜50であり、10重量%以下の活性水素を含有しない有機溶媒(D)の存在下又は不存在下で(B)を付加重合させるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールは、ポリウレタン原料、化粧品原料、界面活性剤として使用されている。このポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールはアルコールやグリコール、多官能アルコールやアミン化合物などの活性水素基含有化合物にアルキレンオキサイドを付加して製造される。この付加反応において、通常、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属化合物が触媒として使用されている。
【0003】
一方、テトラアルキルアンモニウム化合物とトリアルキルアルミニウムとをアルキレンオキサイドの付加反応時の触媒として併用して使用すると触媒活性が向上し、速い反応速度でアルキレンオキサイドの重合が行えることが報告されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1の方法は大量のシクロヘキサン等の炭化水素系有機溶剤を投入しなければならない。付加させる原料である活性水素含有化合物のアルコールとトリアルキルアルミニウムとが接触すると、アルキルアルミニウムが分解反応し、触媒の効果がなくなるからである。また、トリアルキルアルミニウムは、水(大気中の湿気等)と激しく反応し、発火する危険があるため、活性水素を含有しない炭化水素系有機溶剤で保護することで、取り扱いを容易にできる。すなわち、トリアルキルアルミニウムは反応触媒として低濃度で使用される。したがって、特許文献1の方法では、反応時の濃度が低下し、得られるポリオキシアルキレンポリオール等の収量が少ない、反応後、大量の有機溶剤(廃溶剤)の除去、回収という処理作業を行わなければならないという問題があり、このため、生産効率とコスト面で工業化は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0173576号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、活性水素を含有しない有機溶剤を少量しか使用しなくても付加重合が行え、ポリオキシアルキレンポリオール等の収量が多く、反応後に発生する廃溶剤の量が低減でき、生産効率の高いポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に至った。
すなわち、本発明のポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法は、塩基性触媒(E)及び下記一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で、活性水素基含有化合物(A)にアルキレンオキサイド(B)を付加重合させるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法であって、活性水素基含有化合物(A)の活性水素含有基と塩基性触媒(E)とのモル比{(Aのモル数)/(Eのモル数)}が10〜50であり、(A)と(B)との合計重量に対して10重量%以下の活性水素を含有しない有機溶媒(D)の存在下又は(D)の不存在下で(B)を付加重合させることを要旨とする。
【化1】

(一般式(1)中、Mはアルミニウム原子又はホウ素原子を表す。R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基又は炭素数1〜8のアルコキシ基である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの収量が多く、反応後、大量の有機溶剤(廃溶剤)の除去、回収という処理作業を行う必要がなく、高い生産効率でポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
アルキレンオキサイド(B)の付加重合は、活性水素含有化合物(A)にアルキレンオキサイド(B)を付加する反応である。活性水素含有化合物(A)としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基及び酸アミド基を有する化合物が挙げられる。活性水素含有化合物(A)の具体的な例としては、次の(A1)〜(A7)が挙げられる。これらは1種類でもよいし2種類以上を併用してもよい。
【0009】
(A1) 水
(A2) アルコール
1価アルコールとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜40のアルコールが含まれ、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
2価アルコールとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数2〜40の2価アルコールが含まれ、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。
3価アルコールとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数3〜80の3価アルコールが含まれ、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物及びトリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
4〜8価アルコールとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数5〜80の4〜8価アルコールが含まれ、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース、ショ糖、ペンタエリスリトールのプロピレンオキシド付加物及びショ糖のプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0010】
(A3)フェノール
1価フェノールとしては、炭素数6〜40の1価フェノールが含まれ、フェノール及びクレゾール等が挙げられる。多価フェノールとしては、炭素数1〜40の多価フェノールが含まれピロガロール、カテコール、ヒドロキノン及びビスフェノールA等が挙げられる。
【0011】
(A4) カルボン酸
1価カルボン酸としては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜40の1価カルボン酸が含まれ、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、ラウリン酸、オレイン酸及びリノール酸等が挙げられる。2価カルボン酸としては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数4〜40の2価カルボン酸が含まれ、マレイン酸、コハク産、アジピン酸及びフタル酸等が挙げられる。3〜8価カルボン酸としては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜40の3〜8価カルボン酸が含まれ、アクリル酸の3〜8量体等が挙げられる。
【0012】
(A5) アミン
1価アミンとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数2〜40の1価アミンが含まれ、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン及びジオレイルアミン等が挙げられる。2価アミンとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜40の2価アミンが含まれ、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン及びn−ブチルアミン等が挙げられる。3〜5価アミンとしては、アンモニア並びに直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数2〜40の3〜5価アミンが含まれ、アンモニア、N−メチルアミノエチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン及びジプロピレントリアミン等が挙げられる。
なお、アミンの価数は、アミンの有する活性水素の数を意味する。
【0013】
(A6) チオール
チオールとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜80の1価及び多価チオールが含まれ、上記(A2)の1〜5価アルコールとチオ尿素との反応により得られる1〜5官能のチオール、及びエピクロルヒドリン又はエピクロルヒドリンの2〜5量体と水硫化ナトリウムとの反応により得られる1〜5官能のチオール等が挙げられる。
(A7) 酸アミド
酸アミドとしては、直鎖、分岐、飽和、不飽和、脂環式及び芳香族からなる群より選ばれる炭素数1〜40の1価及び多価酸アミドが含まれ、オレイン酸アミド及び不飽和モノカルボン酸アミドの2〜5量体(モノカルボン酸アミドとしてはアクリルアミド及びメタクリルアミド等)等が挙げられる。
【0014】
活性水素含有化合物(A)のうち、入手しやすさの観点から、(A1)〜(A7)の化合物が好ましく、さらに好ましくは(A1)〜(A3)であり、特に好ましくは(A2)である。得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの粘度が高くなりすぎず取り扱いが容易である観点から、(A)の活性水素の数は1〜8が好ましく、さらに好ましくは1〜4である。
【0015】
アルキレンオキサイド(B)としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロルヒドリン及びグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのうち、反応性の観点から、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びこれらの混合物が好ましい。前記アルキレンオキサイド(B)は1種類でもよいし2種類以上を併用してもよい。付加反応は、ランダム付加でも、ブロック付加でも構わない。
【0016】
本発明の製造方法は、一般式(1)で表される化合物(C)を必須成分として使用する。塩基性触媒(E)と化合物(C)との併用は、塩基性触媒(E)の触媒活性を飛躍的に向上させる。
【0017】
【化2】

【0018】
一般式(1)において、Mはアルミニウム原子又はホウ素原子を表す。Mがこれら以外の原子であると、重合活性が向上せず好ましくない。また、アルミニウム及びホウ素は両性元素であるため、これらが中心元素(M)であると、(C)を加水分解した場合に加水分解物が中性化合物となるため、ポリオキシアルキレンモノオール又はポリオール中に残存しても品質への悪影響はない。
一般式(1)において、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜8の炭化水素基又は炭素数1〜8のアルコキシ基である。炭素数が9以上であると、立体障害のため重合活性が向上せず好ましくない。
【0019】
化合物(C)の具体的な例としては、次の(C1)〜(C4)が挙げられる。これらは1種類でもよいし2種類以上を併用してもよい。
【0020】
(C1)アルキルアルミニウム
例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、エチルジイソブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリへキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム及びトリオクチルアルミニウム等が挙げられる。
(C2)アルミニウムアルコキシド
アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド及びアルミニウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
(C3)アルキルボラン
例えば、トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリイソブチルボラン、トリn−ブチルボラン、トリヘキシルボラン、トリシクロヘキシルボラン、トリオクチルボラン及びトリフェニルボラン等が挙げられる。
(C4)ホウ酸エステル
ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリn−ブチル、ホウ酸トリイソブチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリフェニル及び2−メトキシ−4,4,5,5−1,3,2−ジオキサボロラン等が挙げられる。
【0021】
化合物(C)のうち、重合活性の観点から(C1)又は(C3)の化合物が好ましく、さらに好ましくは(C1)の化合物である。
【0022】
塩基性触媒(E)としては、次の(E1)〜(E3)が含まれる。(E)は1種類でもよいし2種類以上を併用してもよい。
(E1)アルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
(E2)テトラアルキルアンモニウム水酸化物
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
(E3)有機アミン化合物
トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキシレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンー7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネンー5(DBN)、グアニジン等が挙げられる。
【0023】
これら(E)のうち、使いやすさと入手のしやすさの観点から、(E1)及び(E2)が好ましく、さらに好ましくは(E2)である。
【0024】
塩基性触媒(E)のうち、(E1)及び(E2)は、触媒活性の観点からアルコラートとして使用することが好ましい。アルコラートとするには、製造方法において、活性水素基含有化合物(A)と塩基性触媒(E)を混合した後、生成水を留去することで行うことができる。アルコラートの具体的な例としては、次の(e1)及び(e2)が挙げられる。これらは1種類でもよいし2種類以上を併用してもよい。
(e1)前記(A2)アルコールと(E1)アルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物(E1)とを反応させて得られるアルコラート
(e2)前記(A2)アルコールと(E2)テトラアルキルアンモニウム水酸化物とを反応させて得られるアルコラート
【0025】
活性水素を含有しない有機溶剤(D)としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリンなどの芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサンなどの脂肪族又は脂環式炭化水素が挙げられる。これらは1種類でもよいし2種類以上を併用してもよい。
【0026】
本発明の製造方法において、活性水素基含有化合物(A)の活性水素含有基と塩基性触媒(E)とのモル比{(Aのモル数)/(Eのモル数)}は、重合反応率と反応速度の観点から、10〜50であり、さらに好ましくは10〜35である。10未満であると、塩基性触媒(E)が多すぎるため、アルキレンオキサイド(B)の反応が急激に進行し温度が上昇するため安全性に問題がある。
一方、50を超えると、塩基性触媒(E)に対し活性水素基含有化合物が多すぎるため、化合物(C)が分解し、反応速度が遅く、反応率が低くなる。
【0027】
なお、塩基性触媒(E)が本願発明の様に(A)と(E)とのモル比が10〜50と少量の場合には、通常の塩基性触媒の量より少ないので、十分な重合反応触媒としての能力が不足するが、本願発明では化合物(C)との共同作用により、反応活性が高く、収率よくポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールが製造できる。
【0028】
本発明の製造方法において、有機溶剤(D)の存在下、又は(D)の不存在下で(B)を付加重合させる。活性水素を含有しない有機溶媒(D)の存在下で付加重合する場合、(D)の使用量は、活性水素含有化合物(A)とアルキレンオキサイド(B)との仕込み合計重量に対して、化合物(C)の生産効率及び反応後の有機溶剤の回収処理を容易にする観点から、10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下である。
【0029】
本発明の製造方法において、塩基性触媒(E)と化合物(C)とのモル比{塩基性触媒(E)のモル数)/(Cのモル数)}は、反応率と反応速度の観点から、0.1〜3が好ましく、さらに好ましくは0.2〜1である。この範囲であると、活性水素含有化合物(A)の存在下での(C)の分解反応が抑制でき、また、(C)により塩基性触媒(E)の触媒活性が向上するので、好ましい。
【0030】
本発明の製造方法において、活性水素基含有化合物(A)の活性水素含有基と化合物(C)とのモル比{(Aのモル数)/(Cのモル数)}は、触媒活性と化合物(C)の分解抑制の観点から、1〜50が好ましく、さらに好ましくは1〜30である。この範囲であると、活性水素含有化合物(A)の存在下での(C)の分解反応が抑制でき、触媒活性が低くならないので好ましい。
【0031】
本発明の製造方法としては、活性水素基含有化合物(A)と塩基性触媒(E)を混合した後、生成水を留去しアルコラートを調製する工程(工程1)、次いで化合物(C)、及びアルキレンオキサイド(B){並びに、必要により有機溶媒(D)}を加え付加重合させる工程(工程2)、必要により、次いでポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールを含有する混合物を処理し、塩基性触媒(E)を除去する、及び/又は溶剤及び低沸点物を熱分解及び減圧下で除去する工程(工程3)を経てポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールを製造する方法が好ましく例示できる。
【0032】
工程1において、塩基性触媒(E)と活性水素基含有化合物(A)の混合方法は特に限定されず、例えば塩基性触媒(E)の溶剤溶液を(A)に添加し、溶剤及び生成水を減圧下で留去することによりアルコラートが調製される。溶剤及び生成水の留去する際の温度は、生成したアルコラートの熱安定性の観点から、120℃以下が好ましく、さらに好ましくは20〜100℃である。なお、塩基性触媒(E)として(E3)を使用する場合は、この工程は行わなくてよい。
【0033】
工程2において、化合物(C)や有機溶剤(D)の添加方法は特に限定されず、有機溶剤(D)を使用しない場合には化合物(C)単独を添加してもよいし、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの活性水素を含有しない有機溶剤(D)の溶液として加えてもよい。また、(C)をアルキレンオキサイド(B)と混合したのち加えてもよい。また、(C)や(D)は、一度に全量を加えてもよいし、複数回に分割して添加してもよい。アルキレンオキサイド(B)の添加方法は特に限定されず、一度に全量を加えてもよいし、複数回に分割して添加してもよい。異種のアルキレンオキサイド(B)を逐次的に添加し、添加するごとに重合反応を完結させることで、ブロック共重合体を得ることもできる。化合物(C)、有機溶剤(D)とアルキレンオキサイド(B)の添加順序は、特に制限は無く、いずれかを先に加えてもよいし、同時に加えてもよい。
【0034】
重合を行う条件は、特に限定されず、用いる活性水素基含有化合物(A)やアルキレンオキサイド(B)、化合物(C)、有機溶剤(D)の種類や塩基性触媒(E)の使用量、目的とする分子量などに応じて決定すればよい。重合時の圧力は、従来のアルキレンオキサイドの付加反応の条件で行うことができる。重合時の温度は、アルコラートの熱安定性の観点から−40〜140℃が好ましく、さらに好ましくは−20〜120℃である。重合時間は、反応温度や圧力にもよるが、5分から24時間であることが好ましい。
【0035】
所定のアルキレンオキサイド(B)を付加重合させた後、必要により工程3において次いでポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールを含有する混合物を処理し、塩基性触媒(E)を除去する、及び/又は溶剤及び低沸点物を熱分解及び減圧下で除去する。
例えば、(E1)アルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物からのアルコラートを使用した場合の処理方法は、公知の吸着剤{キョーワード600(協和化学製)等}を得られた反応混合物の合計重量に対し0.05〜1重量%使用し90〜100℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理で除去することができる。
【0036】
また、(E2)テトラアルキルアンモニウム水酸化物及び/又は(E3)有機アミン化合物を塩基性触媒(E)として使用した場合は、加熱により(E2)及び(E3)を分解させて除去することができる。
分解させる処理の温度は、100℃〜180℃であり、好ましくは120℃〜170℃である。処理温度が100℃より低いと、熱分解反応が十分な反応速度で進行しない。また、180℃を超えると、得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールが着色等の変質を起こす。
この処理において、少量の水を添加することで分解反応を加速することができる。水の添加量は、分解反応及び脱水の効率の観点から、反応に用いた活性水素基含有化合物(A)とアルキレンオキサイド(B)の合計重量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。水の添加方法は特に限定されず、一度に全量を加えてもよいし、複数回に分割して添加してもよい。
【0037】
(E2)及び/又は(E3)を使用する場合は、付加重合の塩基性触媒(E)が、上記の処理によって、不飽和基を含まない低沸点化合物に分解することができ、反応後に触媒を容易に除去できるので好ましい。
【0038】
(E2)及び/又は(E3)の熱分解物は減圧下にて除去されることが好ましい。除去する際の温度及び圧力は、上記の処理温度と同温度で、−0.1〜−0.01MPa(ゲージ圧)の減圧下で行うことが好ましい。減圧除去時間は、0.1〜5時間が好ましく、さらに好ましくは0.5〜2時間である。また、減圧除去は、前記処理を−0.1〜−0.01MPa(ゲージ圧)の減圧下で行うことで熱分解と同時に行うこともできる。さらに、減圧除去を効率化するため、水を添加することもできる。水の添加量は、反応に用いた活性水素基含有化合物(A)とアルキレンオキサイド(B)の合計重量に対して、熱分解物及び水の留去効率の観点から、0.1〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10%である。水の添加方法は特に限定されず、一度に全量を加えてもよいし、複数回に分割して添加してもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に規定しない限り、部は重量部を意味する。
【0040】
なお、得られたポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの分析は水酸基価と総不飽和度の測定により行った。それぞれの測定方法は以下の通りである。
水酸基価(mgKOH/g):JISK1557−1(無水フタル酸/ピリジン法)
総不飽和度(meq/g) :JISK1557−3(酢酸第二水銀法)
重合反応率(%):{(重合物の水酸基価からの分子量)−(活性水素基含有化合物分子量)}/{(仕込んだアルキレンオキサイドのモル数)×アルキレンオキサイドの分子量÷仕込んだ活性水素基含有化合物の活性水素のモル数)}×100
なお、重合物の水酸基価からの分子量の求め方は次の通りである。
分子量=(56100×活性水素基含有化合物の活性水素個数)/水酸基価
【0041】
<実施例1>
オートクレーブに活性水素基含有化合物としてグリセリンのPO8.8モル付加物200部、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25重量%水溶液6部を仕込み、混合後、60℃減圧下で脱水した。次いで、トリイソブチルアルミニウムの25重量%トルエン溶液25部を投入し、70℃でプロピレンオキサイド800部を2時間かけて連続的に導入した後、同温度で2時間熟成させた。水を30部投入した後、150℃で2時間、−0.03MPa(ゲージ圧)の減圧下で揮発成分を留去した。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は57mgKOH/g、総不飽和度は0.006meq/g、重合反応率は97%であった。
【0042】
<実施例2>
実施例1と同じ操作を行い、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25重量%水溶液6部に代えて10部を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は66mgKOH/g、総不飽和度は0.006meq/g、重合反応率は80%であった。
【0043】
<実施例3>
実施例1と同じ操作を行い、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25重量%水溶液6部に代えて3部を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は62mgKOH/g、総不飽和度は0.008meq/g、重合反応率は87%であった。
【0044】
<実施例4>
実施例1と同じ操作を行い、トリイソブチルアルミニウムの25重量%トルエン溶液25部に代えて87部を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は70mgKOH/g、総不飽和度は0.008meq/g、重合反応率は74%であった。
【0045】
<実施例5>
実施例1と同じ操作を行い、トリイソブチルアルミニウムの25重量%トルエン溶液25部に代えて6部を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は68mgKOH/g、総不飽和度は0.008meq/g、重合反応率は77%であった。
【0046】
<実施例6>
実施例1と同じ操作を行い、プロピレンオキサイドを導入した後、70℃で2時間熟成させた。その後、70℃でエチレンオキサイド170部を1時間かけて導入し、同温度で2時間熟成させた。水を30部投入した後、150℃で2時間、−0.03MPa(ゲージ圧)の減圧下で揮発成分を留去した。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は48mgKOH/g、総不飽和度は0.006meq/g、重合反応率は98%であった。
【0047】
<実施例7>
実施例1において、グリセリンのPO8.8モル付加物200部に代えてジエチレングリコール50部を、プロピレンオキサイド800部に代えて同950部を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は56mgKOH/g、総不飽和度は0.007meq/g、重合反応率は94%であった。
【0048】
<実施例8>
実施例1において、グリセリンのPO8.8モル付加物200部に代えてトリプロピレングリコールモノメチルエーテル200部を用いる以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンモノオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は56mgKOH/g、総不飽和度は0.006meq/g、重合反応率は96%であった。
【0049】
<実施例9>
実施例1において、トリイソブチルアルミニウムの25重量%トルエン溶液25部に代えてアルミニウムイソプロポキシド6部を用い、熟成時間を2時間から8時間に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は59mgKOH/g、総不飽和度は0.011meq/g、重合反応率は93%であった。
【0050】
<実施例10>
実施例1において、トリイソブチルアルミニウムの25重量%トルエン溶液25部に代えてトリn−ブチルボランの18重量%テトラヒドロフラン溶液32部を用い、熟成時間を2時間から6時間に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は58mgKOH/g、総不飽和度は0.008meq/g、重合反応率は95%であった。
【0051】
<実施例11>
実施例1において、トリイソブチルアルミニウムの25重量%トルエン溶液25部に代えてホウ酸トリブチル7部を用い、熟成時間を2時間から10時間に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は60mgKOH/g、総不飽和度は0.011meq/g、重合反応率は91%であった。
【0052】
<実施例12>
実施例1において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25重量%水溶液6部に代えて水酸化カリウム0.9部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。次に、減圧下で揮発成分を留去した物に、キョーワード600(協和化学製)5部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は59mgKOH/g、総不飽和度は0.009meq/g、重合反応率は93%であった。
【0053】
<実施例13>
実施例1において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25重量%水溶液6部に代えて1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンー7(DBU)2.4部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は59mgKOH/g、総不飽和度は0.008meq/g、重合反応率は93%であった。
【0054】
<実施例14>
実施例1において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25重量%水溶液6部に代えてトリエチルアミン(TEA)1.6部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリオキシアルキレンポリオールは無臭の無色透明液状で、水酸基価は60mgKOH/g、総不飽和度は0.008meq/g、重合反応率は91%であった。
【0055】
<比較例1>
実施例1において、トリイソブチルアルミニウムの25重量%トルエン溶液25部を254部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。重合反応率は低く、未反応のPOが回収された。得られたポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は225mgKOH/gであり、重合反応率は6%であった。
【0056】
<比較例2>
実施例1において、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの25重量%水溶液6部を120部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。重合反応率は低く、未反応のPOが回収された。得られたポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は205mgKOH/gであり、重合反応率は9%であった。
【0057】
<比較例3>
実施例1において、活性水素基含有化合物としてグリセリンのPO8.8モル付加物200部を990部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。重合反応率は低く、未反応のPOが回収された。得られたポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は
259mgKOH/gであり、重合反応率は10%であった。
【0058】
<比較例4>
実施例1において、活性水素基含有化合物としてグリセリンのPO8.8モル付加物200部を2部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。重合反応率は低く、未反応のPOが回収された。得られたポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は110mgKOH/gであり、重合反応率は2%であった。
【0059】
実施例1〜14及び比較例1〜4で得たポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールについて、結果を表1に示す。
【0060】
なお、表1で用いた化合物の略号は下記の通りである。
(1)アルキレンオキサイド(B)
PO:プロピレンオキサイド
EO:エチレンオキサイド
(2)塩基性触媒(E)
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンー7
TEA:トリエチルアミン
(3)化合物(C)
Al(i−C493:トリイソブチルアルミニウム
Al(O−i−C373:アルミニウムイソプロポキシド
B(n−C493:トリn−ブチルボラン
B(O−n−C493:ホウ酸トリn−ブチル
【0061】
【表1】

【0062】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜14で得られたポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールは、比較例1〜4との比較において、重合反応率が高く、高い分子量のポリマーが製造できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の製造方法によれば、得られるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの収量が多く、反応後、大量の有機溶剤(廃溶剤)の除去、回収という処理作業を行う必要がなく、高い生産効率でポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールを製造することができる。したがって、ウレタン用原料及び化粧品原料、界面活性剤などに使用するポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性触媒(E)及び下記一般式(1)で表される化合物(C)の存在下で、活性水素基含有化合物(A)にアルキレンオキサイド(B)を付加重合させるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法であって、活性水素基含有化合物(A)の活性水素含有基と塩基性触媒(E)とのモル比{(Aのモル数)/(Eのモル数)}が10〜50であり、(A)と(B)との合計重量に対して10重量%以下の活性水素を含有しない有機溶媒(D)の存在下又は(D)の不存在下で(B)を付加重合させるポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法。
【化1】

(一般式(1)中、Mはアルミニウム原子又はホウ素原子を表す。R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基又は炭素数1〜8のアルコキシ基である。)
【請求項2】
塩基性触媒(E)と化合物(C)とのモル比{(塩基性触媒(E)のモル数)/(Cのモル数)}が0.1〜3である請求項1に記載のポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法。
【請求項3】
活性水素基含有化合物(A)の活性水素含有基と化合物(C)とのモル比{(Aのモル数)/(Cのモル数)}が1〜50である請求項1又は2に記載のポリオキシアルキレンモノオール又はポリオールの製造方法。
【請求項4】
前記(B)がプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド又はこれらの混合物である請求項1〜3のいずれかに記載のポリオキシアルキレンモノール又はポリオールの製造方法。