説明

ポリオキシメチレンの製造法

a)適当な主要モノマーおよびコモノマーならびに重合開始剤および場合によっては調節剤を含有する反応混合物を重合し、b)不活性剤を添加し、およびc)残留モノマーを除去することによってポリオキシメチレンコポリマー(POM)を製造する方法であって、この方法は、この方法のそれぞれの時点で反応混合物中で1013hPAでの融点が60℃未満である化合物の量が最大で0.1質量%であり、この場合POM、モノマー、コモノマー、重合開始剤、不活性剤および調節剤は、一緒に計算されないことによって特徴つけられる、ポリオキシメチレンコポリマー(POM)を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、a)適当な主要モノマーおよびコモノマーならびに重合開始剤および場合によっては調節剤を含有する反応混合物を重合し、b)不活性剤を添加し、およびc)残留モノマーを除去することによってポリオキシメチレンコポリマー(POM)を製造する方法に関し、この方法は、方法のそれぞれの時点で反応混合物中で1013hPAでの融点が60℃未満である化合物の量が最大で0.1質量%であり、この場合POM、モノマー、コモノマー、重合開始剤、不活性剤および調節剤は、一緒に計算されないことによって特徴付けられる。
【0002】
更に、本発明は、ポリオキシメチレンコポリマー(POM)の製造法に関し、この方法は、ポリマーを最初に記載された方法で製造し、その後にd)通常の添加剤を添加することによって特徴付けられる。
【0003】
更に、本発明は、双方の方法により得られるポリオキシメチレンコポリマーに関する。
【0004】
ポリオキシメチレンポリマー(POM、ポリアセタールとも呼ばれる)は、1,3,5−トリオキサン(略して:トリオキサン)または別のホルムアルデヒド源を重合させることによって得ることができ、この場合には、コポリマーの製造のためにコモノマー、例えば1,3−ジオキサン、1,3−ブタンジオールホルマールまたは酸化エチレンが共用される。重合は、通常、陽イオン性で実施され、そのために、強いプロトン酸、例えば過塩素酸、またはルイス酸、例えば四塩化錫または三弗化硼素が開始剤(触媒)として反応器中に計量供給される。引続き、この反応は、通常、アンモニア、アミン、アルカリ金属アルコラートまたは別の塩基性不活性剤の添加によって中断された。
【0005】
重合の際の反応は、通常では完全ではなく、むしろPOM−粗製重合体は40%までの反応されないモノマーをも含有する。このような残留モノマーは、例えばトリオキサンおよびホルムアルデヒド、ならびに場合によっては共用されるコモノマーである。残留モノマーは、脱ガス化装置中で分離される。残留モノマーが直接に他の精製操作なしに重合中に返送されることは、経済的に好ましいことであろう。
【0006】
通常、POMの製造の際に溶剤は、共用される。例えば、開始剤および不活性剤は、一般に希釈されて溶剤中に添加される。それというのも、さもなければ必要とされる微少量は、正確には計量供給ずおよび/または均一に反応器内容物中または反応混合物中に分配されないからである。
【0007】
溶剤または他の添加剤は、分離された残留モノマーの返送の際に含量が増加し、このレベルアップによって方法を損なうか、または完全にかまたは少なくとも残留量でポリマー中に留まり、そこから製造された成形部材は、移行、滲出またはかさぶたの形成によって妨害しうる。更に、重合は、副反応によって損なわれうる。
【0008】
ベルギー国特許第702357号明細書には、トリオキサンコポリマーの製造の際に環状ホルマール、例えば1,3−ジオキソラン中に溶解された開始剤の三フッ化ホウ素を、即ちコモノマーに添加することが提案されている。この触媒は、粗製ポリマーの引続く処理によって水または塩基性化合物で不活性化される。
【0009】
特許第11279245号に対するダーウェント(Derwent)アブストラクトNo.1999−629313/54の記載によれば、トリオキサンコポリマーは、1,3−ジオキソラン中の三フッ化ホウ素の混合物をトリオキサンに添加することによって製造され、開始剤は、POMをトリエチルアミン水溶液で処理することによって不活性化され、POMは、洗浄されかつ乾燥される。
【0010】
特許第11255853号に対するダーウェント(Derwent)アブストラクトNo.1999−585962/50および特許第11060663号に対するダーウェント(Derwent)アブストラクトNo.99−226243/19には、類似の方法が開示されているが、しかし、不活性化については詳細に記載されていない。
【0011】
2004年11月30日付けの未公開のドイツ連邦共和国特許出願第Az102004057867.2号、第10頁第27〜39行の記載によれば、トリオキサン、ジオキソランまたは別のモノマー中、または単体物質、例えばオリゴマーまたはポリマーのPOM中に溶解した不活性剤が添加される。しかし、触媒は、第6頁第9〜15行の記載によれば、溶剤中、例えばシクロヘキサンまたは1,4−ジオキサン中に溶解して添加される。
【0012】
2005年3月16日付けの未公開のドイツ連邦共和国特許出願第Az.102005012482.8号には、POMの製造方法が記載されており、この場合プロトン供与体の量は、5000ppm未満である。第6頁第5〜12行の記載によれば、開始剤は、溶剤で希釈して添加される。
【0013】
それによれば、記載された方法の場合、開始剤(触媒)または不活性剤は、溶剤を使用しながら添加される。完全に溶剤不含の方法は、記載されていない。
【0014】
前記の欠点を取り除くという課題が課された。殊に、POMを製造するための改善された方法が提供されなければならなかった。特に、前記方法の場合、分離された残留モノマーは、直接に後精製なしに重合に返送できなければならなかった。
【0015】
それに応じて、冒頭に定義された方法および冒頭に記載されたポリマーが見い出された。本発明の有利な実施態様は、従属請求項の記載から引用することができる。全ての圧力の記載は、絶対圧である。
【0016】
ポリオキシメチレンコポリマー
ポリオキシメチレンコポリマー(POM)それ自体は、公知であり、市販されている。このポリオキシメチレンコポリマーは、通常、主要モノマーとしてのトリオキサンを重合させることによって製造され、さらにコモノマーが共用される。好ましいのは、トリオキサンおよび別の環状または直鎖状のホルマールまたは他のホルムアルデヒド源から選択された主要モノマーである。
【0017】
主要モノマーの表現は、全モノマー量、即ち主要モノマーおよびコモノマーの総和に対して前記モノマーの含量が全モノマー量に対するコモノマーの含量よりも大きいことを表わす。
【0018】
特に一般的には、この種のPOMポリマーは、ポリマー主鎖中で繰返単位−CH2O−の少なくとも50mol%を有する。適当なポリオキシメチレンコポリマーは、繰返単位−CH2O−の他になお50mol%まで、特に0.01〜20mol%、殊に0.1〜10mol%、特に有利に0.5〜6mol%の次の繰返単位:
【化1】

〔式中、R1〜R4は、互いに無関係に、水素原子、C1〜C4−アルキル基またはハロゲン置換された1〜4個のC原子を有するアルキル基を表わし、およびR5は−CH2−、−CH2O−、C1〜C4−アルキルまたはC1〜C4−ハロアルキル置換されたメチレン基、または相応するオキシメチレン基を表わし、nは0〜3の範囲内の値を有する〕を有するのが有利である。有利に、前記基は環状エーテルの開環によりコポリマー中に導入することができる。好ましい環状エーテルは、式:
【化2】

〔式中、R1〜R5およびnは、上記の意味を有する〕で示されるものである。例えば、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ブチレンオキシド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソランおよび1,3−ジオキセパン(=ブタンジオールホルマール、BUFO)が環状エーテルとして挙げられ、ならびに直鎖状オリゴホルマールまたはポリホルマール、例えばポリジオキソランまたはポリジオキセパンがコモノマーとして挙げられる。1,3−ジオキソランは、特に好ましいコモノマーである。
【0019】
同様に、例えばトリオキサン、前記の環状エーテルの1つを第3のモノマー、特に式
【化3】

〔式中、Zは、化学結合、−O−、−ORO−(Rは、C1〜C8−アルキレンまたはC3〜C8−シクロアルキレンである)である〕で示される二官能価化合物と反応させることによって製造されるオキシメチレンターポリマーも適している。
【0020】
この種の有利なモノマーは、若干の例を挙げれば、エチレンジグリシド、ジグリシジルエーテルおよびグリセリンとホルムアルデヒド、ジオキサンまたはトリオキサンとの2:1のモル比のジエーテル、ならびにグリシジル化合物2molと2〜8個のC原子を有する脂肪族ジオール1molとからなるジエーテル、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、シクロブタン−1,3−ジオール、1,2−プロパンジオールおよびシクロヘキサン−1,4−ジオールのジグリシジルエーテルである。
【0021】
鎖末端に主にC−C結合または−O−CH3−結合を有する、末端基が安定化されたポリオキシメチレン重合体は、特に有利である。
【0022】
好ましいポリオキシメチレンコポリマーは、少なくとも150℃の融点および5000〜300000、好ましくは7000〜250000の範囲内の分子量(質量平均)Mwを有する。殊に好ましいのは、2〜15、有利に2.5〜12、特に有利に3〜9の非均一性(Mw/Mn)を有するPOMである。測定は、一般にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)/SEC(ゲル濾過クロマトグラフィー)により行なわれ、Mn値(分子量の数平均)は、一般にGPC/SECにより測定される。
【0023】
調節剤および開始剤
前記ポリマーの分子量は、場合によりトリオキサン重合の際に通常の調節剤によって、ならびに反応温度および反応滞留時間によって目的の値に調節することができる。調節剤として、一価アルコールのアセタールもしくはホルマール、アルコール自体ならびに連鎖移動剤として機能する微少量の水(この存在は一般に完全には回避されない)が挙げられる。前記調節剤は、10〜10000ppm、有利に20〜5000ppmの量で使用される。メチラールおよびブチラールは、好ましい調節剤である。
【0024】
好ましくは、重合は、陽イオン性で開始される。開始剤として(同様に触媒とも呼ばれる)、トリオキサン重合の場合に通常のカチオン性開始剤が使用される。プロトン酸、例えばフッ素化または塩素化されたアルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸、例えば過塩素酸、トリフロロメタンスルホン酸またはルイス酸、例えば四塩化スズ、五フッ化ヒ素、リン酸五フッ化物および三フッ化ホウ素ならびににこれらの錯化合物および塩状の化合物、例えば三フッ化ホウ素−エーテラートおよびトリフェニルメチレンヘキサフルオロホスファートが好適である。好ましくは、プロトン酸が重合開始剤として使用される。特に好ましいのは、過塩素酸である。
【0025】
開始剤(触媒)は、使用されたモノマーに対して約0.01〜500ppmw(質量ppm)、特に0.01〜200ppmw、殊に0.01〜100ppmwの量で使用される。一般に、開始剤を希釈された形で添加することは、望ましく、記載された僅かな開始剤量を正確に計量供給することができかつ均一に分配することができる。
【0026】
1つの好ましい実施態様において、開始剤は、反応混合物に溶剤の共用なしに添加される。このような好ましい共用されない溶剤は、例えば脂肪族または脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、1,4−ジオキサン、ハロゲン化脂肪族炭化水素、グリコールエーテル、例えば取るグリム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、環状カーボネート、プロピレンカーボネートまたはラクトン、例えばγ−ブチロラクトンであろう。
【0027】
特に好ましくは、開始剤は、コモノマーの部分量またはコモノマーの全体量で溶解され、得られた開始剤溶液は、反応混合物に添加される。特に好ましくは、コモノマーの部分量が使用され、コモノマーの全体量は、使用されず、この場合この部分量は、特にコモノマー全体量の0.1〜80質量%、殊に0.5〜20質量%である。
【0028】
それに応じて、本発明による方法は、有利に重合開始剤がコモノマーの部分量または全体量で溶解された反応混合物に添加されることによって特徴付けられる。開始剤溶液中の開始剤の濃度は、一般に0.005〜5質量%である。
【0029】
溶液または溶解の概念は、劣悪な可溶性の開始剤に関連して懸濁液または懸濁を含む。
【0030】
主要モノマーおよびコモノマー、開始剤および場合により調節剤は、任意に予備混合してもよいし、互いに別個に重合反応器に添加してもよい。さらに、欧州特許出願公開第129369号明細書または欧州特許出願公開第128739号明細書に記載されているように、前記成分は、安定化のために立体障害フェノールを含有していてよい。
【0031】
不活性剤
この重合に引き続いて、重合混合物は、特に相変化を行なうことなしに失活される。開始剤残分(触媒残分)の不活性化は、反応混合物への不活性剤(連鎖停止剤)の添加によって行なわれる。
【0032】
適当な失活剤は、例えばアンモニアならびに第1級、第2級または第3級の脂肪族アミンおよび芳香族アミン、例えばトリアルキルアミン、例えばトリエチルアミン、またはトリアセトンジアミンである。同様に、塩基性に反応する塩、例えばソーダおよびボラックス、さらにアルカリ金属およびアルカリ土類金属のカルボン酸塩および水酸化物が適している。更に、不活性剤としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の有機化合物が適している。
【0033】
このような有機化合物は、殊に有利に30個までのC原子および有利に1〜4個のカルボキシル基を有する脂肪族、脂環式、芳香脂肪族または芳香族カルボン酸の塩である。好適なのは、例えば酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、蓚酸ナトリウム、マロン酸ナトリウムまたはコハク酸ナトリウムである。更に、アルキル基中で2〜30個のC原子を有するアルカリ金属−もしくはアルカリ土類金属アルキルが不活性剤として有利である。特に有利な金属として、Li、MgおよびNaが挙げられ、その際、n−ブチルリチウムが特に有利である。
【0034】
同様に、好ましい不活性剤は、アルカリ金属−またはアルカリ土類金属アルコラート、殊に1〜15個、殊に1〜8個のC原子を有するアルカリ金属−またはアルカリ土類金属アルコラートである。ナトリウムアルコラートは、好ましく;特にナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラートまたはナトリウムグリコネートが使用される。
【0035】
不活性剤は、通常、ポリマーに例えば0.01ppmw〜2質量%、有利に0.05ppmw〜0.5質量%、殊に0.1ppmw〜0.1質量%の量で添加される。一般に、不活性剤を希釈された形で添加することは、望ましく、記載された僅かな不活性剤量を正確に計量供給することができかつ均一に分配することができる。
【0036】
1つの好ましい実施態様において、不活性剤は、反応混合物に溶剤の共用なしに添加される。このような好ましい共用されない溶剤は、例えば水、メタノール、別のアルコールまたは他の有機溶剤であろう。
【0037】
特に好ましくは、不活性剤は、エーテル構造単位を有する担体物質中に溶解され、得られた不活性剤溶液は、反応混合物に添加される。好ましくは、それぞれ製造されるべきPOM重合体中に存在する構造単位と同じ構造単位を有する担体物質が好適である。適当な担体物質は、殊に前記された主要モノマーまたはコモノマーならびにオリゴマーないしポリマーのポリオキシメチレン、または別のポリアセタールである。
【0038】
溶液または溶解の概念は、劣悪な可溶性の不活性剤に関連して懸濁液または懸濁を含む。溶液は、オリゴマー溶融物またはポリマー溶融物とも理解すべきである。
【0039】
主要モノマーを不活性剤溶液の製造の使用する場合には、そのために全体的に本方法で使用される主要モノマーの部分量が使用され、この分量は、通常、主要モノマーの全体量の0.01〜10質量%、有利に0.1〜5質量%である。コモノマーを不活性剤溶液に使用する場合には、同様にコモノマーの全体量の部分量が使用され、この分量は、一般に0.01〜95質量%、有利に0.1〜50質量%である。
【0040】
オリゴマーまたはポリマーのPOMを不活性剤の製造に使用する場合には、例えばオリゴマーまたはポリマーのPOMを基礎とする所謂マスターバッチを使用することができ、このマスターバッチは、通常、不活性剤の0.01ppmw〜5質量%、有利に0.1ppmw〜1質量%を含有する。
【0041】
不活性剤の特に液状での添加は、例えば140〜220℃の温度で行なわれる。担体物質としてオリゴマーまたはポリマーのポリオキシメチレンを使用する場合には、160〜220℃の温度で液状の形での添加が同様に好ましい。この種の担体物質として機能するポリオキシメチレンは、場合によっては通常の添加剤を含有することができる。不活性剤を含有する担体物質のこの種の溶融物の計量供給のために、好ましくは、クロスヘッド押出機(Seitenextruder)、プラグスクリュー(Stopfschnecke)、溶融ポンプ(Schmelzepumpe)、混合ポンプなどのような装置が使用される。
【0042】
それに応じて、本方法は、有利に不活性剤が主要モノマーまたはコモノマーの部分量中に溶解されたかまたはオリゴマーまたはポリマーのPOM中に溶解された反応混合物に供給されることによって特徴付けられる。この不活性剤溶液(担体物質)中の不活性剤の濃度は、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、特に0.05〜2質量%、殊に好ましくは0.08〜1質量%である。
【0043】
重合の実施態様
ホルムアルデヒドからなるPOMは、通常では気相中、溶液中での重合、沈殿重合または塊状(Substanz)重合により製造することができる。トリオキサンからのPOMは、一般に塊状重合により得られ、そのために高い混合作用を有する全ての反応器を使用することができる。この場合、前記反応の実施は、均一系、例えば溶融物中で行なうことができるか、または不均一系、例えば固体または固体顆粒への重合として行なうことができる。例えば、シェル型反応器、鋤刃混合器、管型反応器、リスト型反応器、ニーダー(例えば、バスニーダー)、例えば一軸または二軸スクリューを備えた押出機、および撹拌機付き反応器が適しており、その際、前記反応器はスタティックミキサまたはダイナミックミキサを有していてもよい。
【0044】
例えば押出機中での、塊状重合の場合には、溶融したポリマーによって所謂溶融物シーリングが押出機入口に向かって生じ、それにより揮発性成分は押出機中に留まる。主要モノマーおよびコモノマーは、押出機中に存在するポリマー溶融物中に、開始剤(触媒)と一緒にかまたは開始剤(触媒)とは別個に62〜114℃の反応混合物の好ましい温度で計量供給される。また、好ましくは、モノマー(トリオキサン)は、溶融された状態で、例えば60〜120℃で計量供給される。
【0045】
溶融重合は、一般に1.5〜500バールおよび130〜300℃で行なわれ、反応器中での重合混合物の滞留時間は、通常、0.1〜20分間、有利に0.4〜5分間である。特に、重合は、30%、例えば60〜90%を上廻る変換率になるまで実施される。
【0046】
全ての場合に、前記したように著しい含量の、例えば40%までの反応されない残留モノマー、特にトリオキサンとホルムアルデヒドを含有する粗製−POMが得られる。この場合には、モノマーとしてトリオキサンだけを使用した場合でも、ホルムアルデヒドは、粗製−POM中にも存在することができる、それというのもトリオキサンの分解生成物としてホルムアルデヒドが生じることができるからである。さらに、ホルムアルデヒドの他のオリゴマー、例えばテトラマーのテトロキサンも存在することができる。
【0047】
好ましくは、POMの製造のためにトリオキサンがモノマーとして使用され、そのために、残留モノマーもトリオキサンを含有し、さらに通常ではテトロキサン0.5〜10質量%およびホルムアルデヒド0.1〜75質量%を含有する。
【0048】
粗製POMから、残留モノマーは、除去される。これは、通常、脱気装置中で行なわれ;この脱気装置は、例えば脱気ポット(Entgasungstoepfe(フラッシュポット(Flash-Toepfe)))、1本又は数本のスクリューを備えた脱気押出機、フィルムトゥルーダー(Filmtruder)、薄層蒸発器、噴霧乾燥機、ストランド脱気装置および他の通常の脱気装置が適している。
【0049】
有利に脱気押出機または脱気ポットが使用される。後者の脱気ポットは、特に有利である。
【0050】
脱気は、一工程で(唯一の脱気装置中で)行なうことができる。同様に、脱気は、多工程、例えば2工程で複数の脱気装置中で行なうことができる。多工程の脱気の場合に、前記の複数の脱気装置の種類およびサイズは、同じでも異なっていてもよい。好ましくは、2つの異なる脱気ポットが直列に使用され、その際に第2のポットは、よりいっそう小さな容積を有する。
【0051】
1工程の脱気の場合、脱気装置中での圧力は、通常、0.1ミリバール〜10バール、有利に1ミリバール〜2バール、特に有利に5ミリバール〜800ミリバールであり、温度は、一般に100〜260℃、特に115〜230℃、殊に150〜210℃である。2工程の脱気の場合には、圧力は、第1の工程で有利に0.1ミリバール〜10バール、殊に0.5ミリバール〜8バール、特に有利に1ミリバール〜7バールであり、第2の工程で有利に0.1ミリバール〜5バール、殊に0.5ミリバール〜2バール、特に有利に1ミリバール〜1.5バールである。この温度は、2工程での脱気の場合に一般に、1工程での脱気について挙げられた温度と本質的に異ならない。
【0052】
脱気装置中でのポリマーの滞留時間は、一般に0.1秒〜30分間、有利に0.1秒〜20分間である。多工程での脱気の場合には、この時間は、それぞれ個々の工程に関連する。
【0053】
脱気の際に遊離する残留モノマーは、蒸気流として分離される。脱気の実施態様(一工程または多工程の脱気ポット、または脱気押出機等)とは無関係に、残留モノマーは、通常、トリオキサン、ホルムアルデヒド、テトロキサン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキセパン、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドのオリゴマーである。
【0054】
分離された残留モノマー(蒸気流)は、常法で取り出される。この残留モノマーは、例えば落下膜蒸発器または別の常用の凝縮器中で凝縮されることができ、重合に返送されることができる。蒸気流中でのトリオキサンとホルムアルデヒドとの量比は、相応する圧力および温度の調節により変化させることができる。
【0055】
本発明による方法は、本方法の全ての時点で反応混合物中で、融点が1013hPaで60℃未満である化合物の量が最大で0.1質量%であることによって特徴付けられる。好ましくは、記載された量は、最大で0.05質量%である。同様に、前記化合物の融点は、1013hPaで25℃未満である。
【0056】
この量を算出する場合、POM、モノマー、コモノマー、重合開始剤、不活性剤および調節剤は、一緒に計算されないが、しかし、おそらくこれらを添加した際には、場合によっては使用される溶剤または他の添加剤は、一緒に計算される。
【0057】
処理の概念は、モノマーバッチ量の全ての処理工程(即ち、重合が開始される前)は、残留モノマーの除去(脱気)が終結するまでであると考えられる。しかし、残留モノマーの除去後にPOMに添加剤を添加する場合には、この添加剤の添加は、請求項1から10までの範囲内の処理の概念に含まれず、即ちこの添加剤の添加の場合には、融点が1013hPaで60℃未満である化合物が0.1質量%を超えて完全に添加されうる。添加剤の添加を含む方法は、請求項11の対象である。
【0058】
特に有利には、請求項1から10までの範囲内の処理、即ち添加を考慮せずに、溶剤の共用なしに実施され、これは、"溶剤不含"である。
【0059】
特に有利には、開始剤および不活性剤の添加の際に、モノマー、コモノマーまたはPOMだけが希釈剤または担体物質として、即ちいずれにせよ反応混合物中に存在する化合物として使用される。
【0060】
POMの添加および混合
また、本発明の対象は、ポリオキシメチレンコポリマー(POM)の製造法であり、この方法は、ポリマーを請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法で製造し、その後にd)通常の添加剤を添加することによって特徴付けられる。それに応じて、この方法は、POMを製造するための最初に記載された方法および引続く添加剤の添加と一緒に使用される。
【0061】
添加剤の添加は、溶剤の共用下または溶剤なしに行なうことができる。適当な添加剤は、例えば
タルク、
ポリアミド、殊に混合ポリアミド、
アルカリ土類金属珪酸塩およびアルカリ土類金属グリセロホスフェート、
飽和脂肪族カルボン酸のエステルまたはアミド、
アルコールおよび酸化エチレンに由来するエーテル、
非極性ポリプロピレンワックス、
求核剤、
充填剤、
耐衝撃変性ポリマー、殊にエチレン−プロピレン(EPM)またはエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムを基礎とするポリマー、
難燃剤、
可塑剤、
付着助剤、
染料および顔料、
ホルムアルデヒド捕捉剤、殊にアミン置換トリアジン化合物、ゼオライトまたはポリエチレンイミン、
酸化防止剤、殊にフェノール系構造を有する酸化防止剤、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、アクリレート、ベンゾエート、オキサニトリドおよび立体障害アミン(HALS=hindered amine light stabilizers ヒンダードアミン光安定剤)である。
【0062】
前記の添加剤は、公知であり、例えばGaechter/Mueller, Plastics Additeves Handbook, Hanser Verlag Muenchen, 第4版 1993, Reprint 1996に記載されている。
【0063】
添加剤の量は、使用される添加剤および望ましい作用に依存する。当業者には、通常の量が公知である。添加剤は、共用の場合には、常法で、例えば個々にかまたは一緒に、それ自体として、溶液または懸濁液としてかまたは有利にマスターバッチとして添加される。
【0064】
完成したPOM成形材料は、唯一の工程で、例えばPOMおよび添加剤を押出機、混練機、混合機または別の適当な混合装置中でPOMの溶融下に混合し、この混合物を搬出し、引続き常法で造粒することにより製造することができる。しかし、幾らかのかまたは全ての成分を最初に乾式混合機または別の混合装置中で"冷時に"予め混合し、得られた混合物を第2の工程でPOMの溶融下に、場合によっては他の成分を添加しながら押出機または他の混合装置中で均質化することは、有利であることが証明された。殊に、少なくともPOMおよび酸化防止剤(共用の場合)を予め混合することは、好ましい。
【0065】
押出機または混合装置は、脱気装置を備えていてよく、例えば残留モノマーまたは他の揮発性成分が簡単に除去される。均質化混合物は、常法と同様に搬出され、有利には造粒される。
【0066】
添加剤の添加は、特に注意深く、脱気装置からの搬出と、添加剤が添加される混合装置への搬入との間の滞留時間を最少にすることにより行なうことができる。そのために、例えば脱気頭頂部は、直接に押出機の入口上に取り付けることができ、この入口は、添加剤との混合のために使用される。
【0067】
POMを製造するための本発明による方法(請求項1から10まで)またはPOMを製造するための本発明による方法および添加剤の添加(請求項11)により得られるポリオキシメチレンコポリマーは、同様に本発明の対象である。このコポリマーから、全ての種類の成形部材を製造することができる。
【0068】
本発明による方法を60℃未満の融点(1013hPa)を有する化合物最大で0.01質量%を用いて有利に溶剤不含で実施することにより、脱気の際に分離された残留モノマーを直接に後精製なしに重合に返送することが可能である。残留モノマーを返送する際の含量の増加またはレベルアップは、完成した成形部材からの添加剤の滲出と全く同様に回避される。重合を妨害しうる副反応は、減少される。
【0069】
実施例
次に記載された重合のための開始剤として、過塩素酸を、実際に1,3−ジオキソラン中の70質量%の過塩素酸水溶液の0.01質量%の溶液の形で使用した。
【0070】
不活性剤としてナトリウムメタノラートをマスターバッチの形で使用した。このマスターバッチは、トリオキサンおよびブタンジオールホルマール3.5質量%(BASF社の市販製品Ultraform(登録商標)N2320)およびナトリウムメタノラート0.0021質量%からのポリマーのPOMコポリマーを含有していた。
【0071】
トリオキサン96.995質量%、ジオキソラン3質量%およびメチラール0.005質量%からなるモノマー混合物を、5kg/時間の体積流で連続的に重合反応器中に計量供給した。この反応器は、静的混合機を備えた管状反応器であり、150℃および30バールで運転された。
【0072】
開始剤として、1,3−ジオキソラン中の溶液としての過塩素酸0.1ppmw(上記参照)をモノマー流中に混入した。2分間の重合時間(滞留時間)後に、不活性剤としてナトリウムメタノラート(マスターバッチとして、上記参照)をポリマー溶融物中に計量供給し、混入し、したがってこのナトリウムメタノラートは、開始剤に対して10倍のモル過剰量で存在した。不活性化帯域中での滞留時間は、3分間であった。
【0073】
ポリマー溶融物を管路を通じて取り出し、190℃および3バールで運転される第1の脱気頭頂部中の調節弁により放圧した。蒸気を頭頂部から管路を介して落下膜蒸発器中に取り出し、そこで118℃および3,5バールでトリオキサン供給原料と接触させた。この場合、蒸気の一部分を沈殿させ、得られたモノマーを反応器中に返送させる。沈殿しなかった蒸気含量を圧力保持弁を介して排気管に供給した。
【0074】
第1の脱気頭頂部から、溶融物を管路を通じて取り出し、調節弁を介して排気管が備えられている第2の脱気頭頂部中で放圧した。脱気頭頂部の温度は、190℃であり、圧力は、周囲圧力であった。頭頂部は、床を有さず、Werner & Pfleiderer社の二軸押出機ZSK 30の供給ドーム上に直接に取り付けられており、したがって脱気されたポリマーは、頭頂部から直接に押出機軸上に落下した。
【0075】
押出機は、190℃で150rpmの軸回転数で運転され、250ミリバールで運転される脱気開口を備えていた。更に、この押出機は、添加剤のための供給開口を有しており、この供給開口を通じて酸化防止剤エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−第三ブチル−4−ヒドロキシーm−トリル)プロピオネート](Ciba Specialty Chemicals社の市販製品Irganox(登録商標)245)は供給された。この生成物を常法で搬送し、冷却し、かつ造粒した。
【0076】
この例は、開始剤の計量供給のために1,3−ジオキソラン、即ちコモノマーが使用されたことを示す。不活性剤をPOM中に溶解して供給した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)適当な主要モノマーおよびコモノマーならびに重合開始剤および場合によっては調節剤を含有する反応混合物を重合し、b)不活性剤を添加し、およびc)残留モノマーを除去することによってポリオキシメチレンコポリマー(POM)を製造する方法において、この方法のそれぞれの時点で反応混合物中で1013hPaでの融点が60℃未満である化合物の量が最大で0.1質量%であり、この場合POM、モノマー、コモノマー、重合開始剤、不活性剤および調節剤は、一緒に計算されないことを特徴とする、ポリオキシメチレンコポリマー(POM)を製造する方法。
【請求項2】
前記化合物の融点は、1013hPaで25℃未満である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
重合は、陽イオン性で開始される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
重合開始剤としてプロトン酸を使用する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
主要モノマーをトリオキサンおよび別の環状または直鎖状ホルマールから選択する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
重合開始剤を反応混合物に溶剤の共用なしに添加する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
不活性剤を反応混合物に溶剤の共用なしに添加する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
重合開始剤をコモノマーの部分量または全体量中に溶解された反応混合物に添加する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
不活性剤を主要モノマーまたはコモノマーの部分量中に溶解されたかまたはオリゴマーまたはポリマーのPOM中に溶解された反応混合物に添加する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
方法を溶剤の共用なしに実施する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ポリオキシメチレンコポリマー(POM)の製造法において、ポリマーを請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法で製造し、その後にd)通常の添加剤を添加することを特徴とする、ポリオキシメチレンコポリマー(POM)の製造法。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法または請求項11記載の方法により得られるポリオキシメチレンコポリマー。

【公表番号】特表2009−501821(P2009−501821A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521943(P2008−521943)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064175
【国際公開番号】WO2007/009925
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】