説明

ポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法

【課題】長時間運転が可能で生産性に優れ、かつ品質の安定したポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】製造工程中でゲル生成の発生原因である有機過酸化物を使用することなく、ポリオレフィン、ポリアミド、アイオノマーを同時に2軸押出機1に投入して混練・抽出し、押出し物4を紡糸ノズル3から引き出して、ドラフトを掛けつつ引取り又は圧延することによって、ポリオレフィンマトリックス中に微細なポリアミド繊維が分散した組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィンとポリアミドからなる樹脂組成物であり、ゴムや樹脂の強化材料として使用できるポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムや樹脂の弾性率や強度などの機械的強度を向上させるために炭素繊維やガラス繊維或いは、弾性率の高い有機繊維、例えば、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維などのチョップドされた繊維を配合するのが一般的であった。しかしながら、繊維の分散性、繊維―マトリックス間の結合性の問題から必ずしも十分な性能が発現しなかったり、加工性の問題から成形品の生産性が悪かったり、外観が悪かったりし、工業的な利用は特定の分野に限定されている。
【0003】
特開平7−238189号公報、特開平9−59431号公報及び日本レオロジー学会誌vol.25 No.5 275〜282頁(1997)にはポリオレフィンとゴム状ポリマーをマトリックスとしてイン・シトウ・ファイバー・フォーメイション(in situ fiber formation)の技法を用いて、マトリックス中に微細なナイロン繊維を形成させた組成物が開示されている。この組成物をゴム、或いは樹脂と配合することによって優れた機械的性質を有する短繊維強化複合体を得ることが可能である。特開平11−106570号公報にはポリオレフィン−ポリアミド樹脂2成分において同様の技法を用いて、ポリオレフィンマトリックス中に微細なナイロン繊維を形成させた組成物が開示されている。
【0004】
これらの一連の発明は以下に示す3工程から構成されている。先ず、密閉型混練機でマトリックスを構成するポリマーとシランカップリング剤を有機過酸化物を介して反応させ、シラン変性する第1工程、次いで、第1工程でシラン変性されたマトリックスポリマーとポリアミド樹脂を2軸混練機で混練・反応させ、マトリックスポリマー中にポリアミド樹脂を微細に分散させる第2工程、その後、この混練・反応物を押出し、ドラフトを掛けつつ引取り、微細なナイロン繊維をマトリックス中に形成させる第3工程から成り立っている。この一連の工程において、第1工程で使用される有機過酸化物は必ずしも完全に消費されるものでなく微量に残存しており、この残存有機過酸化物が第2工程以下の工程においてポリマーのゲル化を生じせしめ、長時間連続運転を不可能とし、極めて生産性の低い製造方法であり、コストアップの大きな要因となると共に安定した品質の製品が製造しにくいという欠点を有していた。
【0005】
【特許文献1】特開平7−238189号公報
【特許文献2】特開平9−59431号公報
【特許文献3】特開平11−106570号公報
【非特許文献1】日本レオロジー学会誌 vol.25 No.5 275〜282頁(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題を解決して、生産性、経済性に優れ、且つ品質の安定したポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明はゲル発生の原因である有機過酸化を使用しないで、(a)ポリオレフィン、(b)ポリアミド及び、(c)アイオノマーを直接2軸押出機に投入し、混練・押出を行い、ドラフトを掛けつつ引取り又は圧延することによって、(a)ポリオレフィンマトリックス中に(b)ポリアミドを平均径1000nm以下の繊維状に分散させてペレット状に仕上げることを特徴とするポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
製造装置における長時間連続運転が可能となり、大幅なコストダウンが可能となったばかりでなく、品質面でも安定な製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法における構成成分を具体的に説明する。(a)成分はポリオレフィンであって、ペレット状で融点80〜250℃のものが好ましい。このような好適な例としては、炭素数2〜8のオレフィンの単独重合体や共重合体、炭素数2〜8のオレフィンとスチレンやクロロスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物との共重合体、炭素数2〜8のオレフィンと酢酸ビニルとの共重合体、炭素数2〜8のオレフィンとアクリル酸或いはそのエステルとの共重合体及び炭素数2〜8のオレフィンとビニルシラン化合物との共重合体が好ましく用いられるものとして挙げられる。
【0010】
具体例としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン・アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、エチレン・ビニルトリメトキシシラン、エチレン・ビニルトリエトキシシラン、エチレン・ビニルシラン共重合体、エチレン・スチレン共重合体及びプロピレン・スチレン共重合体などがある。
【0011】
これら(a)成分のポリオレフィンの中でも特に好ましいものとしては、高密度ポリエチレン<HDPE>、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン<LLDPE>、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体<EVA>、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)が挙げられ、中でもメルトフローインデックス(MI)が0.2〜50g/10分の範囲で、ペレット状に成形できるものが最も好ましいものとして挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を組合せても良い。
【0012】
(b)成分は、主鎖中にアミド基を有する熱可塑性ポリアミド(以下ポリアミドと略す)であり、融点135〜350℃の範囲のものが用いられ、しかも(a)成分のポリオレフィンの融点よりも高いものであり、中でも融点160〜265℃の範囲のものが好ましい。かかる(b)成分としては、押出し及び延伸によって強靭な繊維を与えるポリアミドが好ましいものとして挙げられる。
【0013】
ポリアミドの具体例としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−ナイロン66共重合体、ナイロン610、ナイロン612ナイロン46、ナイロン11ナイロン12、ナイロンMXD6、キシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとピメリン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとスペリン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとアゼライン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとテレフタル酸との重縮合体、オクタメチレンジアミンとテレフタル酸との重縮合体、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との重縮合体、デカメチレンジアミンとテレフタル酸との重縮合体、ウンデカメチレンジアミンとテレフタル酸との重縮合体、ドデカメチレンジアミンとテレフタル酸との重縮合体、テトラメチレンジアミンとイソフタル酸の重縮合体、オクタメチレンジアミンとイソフタル酸の重縮合体、トリメチルヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との重縮合体、デカメチレンジアミンとイソフタル酸との重縮合体、ウンデカメチレンジアミンとイソフタル酸との重縮合体及びドデカメチレンジアミンとイソフタル酸との重縮合体などが挙げられる。
【0014】
これらのポリアミドの内、特に好ましい具体例としては、ナイロン6<PA6>、ナイロン66<PA66>、ナイロン12<PA12>、ナイロン6−ナイロン66共重合体などが挙げられる。これらの1種又は2種以上でもよい。これらのポリアミドは10,000〜200,000の範囲の分子量を有していることが好ましい。(b)成分は(a)成分100重量部に対して、2〜100重量部、好ましくは5〜75重量部、特に好ましくは、10〜50重量部である。(b)成分が2重量部より少ないと、微細粒子が形成され、補強性が得られない。一方、100重量部より多いと微細繊維が形成しにくくなり、リボン状のものが形成しやすくなり、強度、伸びが大きく低下する。(b)成分の融点は(a)成分の融点より少なくとも20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上高くなければならない。(b)成分の融点と(a)成分の融点の差が20℃以下であれば(b)成分の繊維形成が達成されず、良好な繊維が得られない。また、組成物の成形時において(b)成分の繊維が溶融し、繊維の形態が維持できないで補強性の低い成形物しか得られない。
【0015】
(c)成分は高分子鎖に少量のイオン基を導入したイオン性高分子であり、一般的にはアイオノマーと呼ばれている。典型的なアイオノマーとしてはホスト疎水性高分子、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、テトラフルオロエチレン等に側鎖として少量のカルボキシル基、スルホン基を導入したイオン性高分子を、金属イオン、或いはアンモニウムイオンで中和ものである。対イオンとしてはアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、有機アンモニウムイオン、遷移金属−有機アルミ錯イオン、陰イオン等が挙げられる。
【0016】
アイオノマーの具体例は、
エチレン系アイオノマーとして、
エチレン−メタクリル酸共重合体
(化1)
−(CH2−CH2m−(CH2−CH(CH3)(COO+))n
エチレン−アクリル酸共重合体
(化2)
−(CH2−CH2m−(CH2−CH2(COO+))n
【0017】
スチレン系アイオノマーとして、
スチレン−メタクリル酸共重合体
(化3)
−(CH2−CH2(C66))m−(CH2−CH2(CH3)(COO+))n
スチレン−スチレンスルフォン酸共重合体
(化4)
−(CH2−CH2(C66))m−(CH2−CH2(C65SO3-+))n
スチレン−スチレンカルボン酸共重合体
(化5)
−(CH2−CH2(C66))m−(CH2−CH2(COO+))n
【0018】
パーフルオロカーボン系アイオノマーとして、
(化6)
−<CF2−CF2>m−<CF<−O−CF2−CF2-SO3-+>−CF2n
【0019】
テレケリックアイオノマーとして、
(化7)
−OOC−<CH2−CH=CH−CH2>n-COO−M+
【0020】
ポリウレタンアイオノマーとして、
(化8)
−R1OOCNHR2NHCONH−R1−N<CH2CH2SO3−M+>CONH−R2
などが挙げられる。
【0021】
ここで、上述の化学式中のM+はイオン性高分子を中和するための対イオンであって、Na,Li,Ca,Al,Mg,Zn,Mn,Co,Ni,Cu,Fe等のイオンが挙げられる。
これらのアイオノマーのうち、特に好ましい具体例としてはエチレンーメタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体のNa+、Zn+2の金属塩が上げられ、これらの1種、又は2種を使用してもよい。
【0022】
(c)成分の割合は(a)成分のポリオレフィン100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部である。(c)成分が1重量部より少ないと、良好な微細繊維が生成されず、組成物の強度、伸びが低い値を示し、50重量部より多いとポリアミドは微細粒子を形成し、組成物の弾性率が低い値を示す。
【0023】
次に、本発明のポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法について説明する。以下の工程から製造される。
【0024】
先ず、混練・反応工程について説明する。(a)成分のポリオレフィン、(b)成分のポリアミドと(c)成分のアイオノマーの三種を混練機の供給口から供給し、ポリアミドの融点よりも20℃以上高い混温度で混練する。混練機としてはバンバリー型ミキサー、ニーダーなどの密閉型混練機、1軸混練機、2軸混練機などの連続式混練機が用いられるが、これらの装置の中でも連続的に混練が行え、短時間で混練能に優れ、かつ、次工程の繊維化工程が連続的に行える2軸混練機が技術的にも経済的にも最も好ましい。この3成分の混練によって、(b)成分のポリアミドのアミド基と(c)成分のエチレンーメタクリル酸共重合体の金属塩のカルボン酸塩が反応し、(b)成分と(c)成分のグラフト共重合体が生成し、このグラフト共重合体が相溶化剤として作用し、ミクロ相分離の原理により、(a)成分のポリオレフィン中に(b)成分のポリアミドが微細、かつ均一に分散する。
【0025】
次いで、ポリアミドの繊維化工程について、図1を参照して説明する。上記の混練・反応工程で得られた混練物(ポリオレフィン、ポリアミド、アイオノマーの混練物)は、2軸押出機1に供給され、紡糸ノズル3から押し出される。押出し温度は(b)成分の融点より20℃以上高い温度で実施するのが好ましい。(b)成分の融点より低い温度で押出しを行っても、(b)成分は微細な繊維にはならない。この押出し物4はノズル3の直下で冷却しながら張力を懸けつつ、ロール5を介して引き取られる。引取り速度、即ちドラフト比(引き取り速度/ノズル出口での速度)は1.5〜100の範囲とすることが好ましく、更に好ましくは2〜50の範囲、特に好ましくは3〜30である。この引取り操作により、押出し物中のポリアミド粒子が変形し、繊維状に変換する。引き取られた押出し物ストランドは、巻き取って紐状にしてもよく、又は図1に示すようにペレタイザー7に供給し、切断してペレット状にしてもよい。
【0026】
上記各工程を混練・反応工程、繊維化工程と分離して説明したが、1軸混練機、或いは2軸混練機の先端に複数個のノズルを有する紡糸ノズルを設置し、連続的なプロセスとして実施することが可能である。そうすることにより省力化、省エネルギー化が達成されると共に、品質的にも安定した製品が得られる。
【0027】
本発明のポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物にはこのほかカーボンブラック、ホワイトカーボン、活性炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウム、ハイスチレン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂、クマロンインデン樹脂、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、クレー、亜鉛華、珪藻土、再生ゴム、粉末ゴム、エボナイト粉などの充填材、アミン・アルデヒド類、アミン・ケトン類、フェノール類、イミダゾール類、含イオウ酸化防止剤、含燐系酸化防止剤などの安定剤及び各種顔料を含んでもよい。
【0028】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明についてより具体的に説明するが本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。実施例及び比較例において、ポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造法の特性及び物性は以下のようにして測定した。
【0029】
(吐出量)
運転開始から2時間毎、押出し物ストランドを切断するペレタイザーのホッパーシュート口でペレットを1分間採取し秤量する。この操作を3回行いその平均を吐出量として計算した。
【0030】
(連続運転時間)
2軸押出機に(a)、(b)及び(c)各成分を投入した時点(運転開始)から押出し物ストランドの切断が多発状態になりペレットの採取が不可能になるまでの時間を連続運転時間とした。
【0031】
(ストランドの均一性)
運転開始から2時間毎に押出し物ストランドの一部を採取し、マイクロメータにて測定した。
【0032】
(目脂の発生)
運転時間開始から0.5時間毎の紡糸口金に発生する目脂の大きさを目視で観察した。
【0033】
(歩留まり)
連続運転開始から終了までに至る((a)成分+(b)成分+(c)成分の総仕込量)に対する(ポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製品)の百分率を歩留まりとして計算した。
【0034】
(押出し機内のヤケ)
連続運転終了後、2軸押出機を分解し、バレル内及びスクリューのヤケ状態を目視により確認した。
【0035】
(繊維の形状)
樹脂組成物のペレットをホットキシレンに溶解し、繊維分を取り出し洗浄した後、走査型電子顕微鏡で観察した。微細な繊維状として観察される場合は○、微細な繊維状と微細な粒子状が混在している場合は△、それ以外の繊維状とリボン状が混在している場合とか、微細な粒子のみの場合などは×で評価した。
【0036】
(平均繊維径)
上記走査型電子顕微鏡写真より繊維径を測定し、その平均を求めて平均径とした。なお、粒子状の場合は粒子の径を、また、フィルム状(リボン状)の場合はフィルムの幅を繊維径として計算した。
【0037】
(引張弾性率、引張強さ、伸び)
ポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物のペレットを150℃にセットした3インチロールに巻きつけ、ロール間隔2mmでロール出しを行い、ロール出し方向にナイロン繊維が十分に配向したシートを作成し、更に、これを120℃のプレスで2mm厚に成形し、平滑な面を有するシートを作成し、JISK6760に準じて温度23℃、引張速度200mm/minで測定した。
【0038】
[実施例1](a)成分として低密度ポリエチレン(丸善宇部社製、F120N、融点110℃)100重量部、(b)成分としてナイロン6(宇部興産社製、1024B、融点215〜225℃)50重量部、(c)成分としてアイオノマー(三井デュポン社製、ハイミラン1706、融点88℃)15重量部を同時に2軸押出機に投入し、240℃で混練・反応させて、2軸押出機の先端に設置したダイス(ノズル径2mm、ノズル数50)よりストランド状に押出し、空冷しつつ引取りロールによりドラフト10で引取り、5インチロール間で1.5倍に延伸して、引き続きにペレタイザーに供給し、ペレタイズした。
運転開始時の押出し量は50Kg/hrになるように運転条件を固定し、電流値、樹脂圧を連続的に記録し、その経時変化を観察した。48時間運転中、電流値、樹脂圧、押出し量に全く変化がなく、安定した運転状況であった。運転中にノズル周りに若干の目脂の発生が見られたが、運転には全く支障がない程度のものであったが、念のために2時間毎に目脂を除去した。運転は48時間で終了し、直ちに、押出機を分解し、スクリュー部、ダイス部のヤケの発生状況を観察したが、ほとんど見られなかった。これらの運転状況の結果を表1に示す。
【0039】
得られたペレットの形状は径0.7mm、長さ3mmであった。得られたペレットをホットキシレンでポリエチレン及び未反応のアイオノマーを溶出した。不溶部はキシレン中に懸濁した。不溶部を走査型電子顕微鏡で観察すると、平均径約300nmの微細繊維状であった。これらのナイロンの形態と共に、諸特性値を表1に示す。また、走査型電子顕微鏡で観察した画像を撮影したので、その電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0040】
[実施例2〜6]低密度ポリエチレン、ナイロン6、アイオノマーを表1のように配合して、実施例1と同様に処理を行った。その結果を表1に示す。この表1から明らかなように、実施例2〜6においても、実施例1と略同様な結果を得ることができた。尚、実施例6では、ナイロンの形状において、微細繊維と微細粒子とが混在したが、諸特性については実施例1と同様な結果を得ることができた。
【0041】
[比較例1〜2] 低密度ポリエチレン、ナイロン6、アイオノマーを表1のように配合して、実施例1と同様に処理を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
[実施例7及び8]ドラフト比を換えた以外は実施例1と同様に行った。ドラフト比を上げても、ストランドの切断は全く起こらず、良好な曳糸性を示した。
【0043】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施の形態に係るポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物製造装置の概略構成図である。
【図2】実施例1で得たペレットの溶媒抽出残分(不溶部媒)を撮影した電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0045】
1 2軸押出機
3 紡糸ノズル
4 押出し物
5 ロール
7 ペレタイザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオレフィン100重量部、(b)ポリアミド2〜100重量部、(c)アイオノマー1〜50重量部からなる組成物であって、(b)成分と(c)成分のグラフ共重合体を生成することにより、(b)成分が(a)成分中に微細な繊維として分散した構造を有しているポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
繊維状に分散したポリアミドの平均径が1000nm以下であり、アスペクト比が2以上1000以下であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
(a)ポリオレフィン、(b)ポリアミド及び(c)アイオノマーを溶融・混練して押出し、ドラフトを懸けつつ引取り、延伸、又は圧延することにより(a)ポリオレフィン中に(b)ポリアミドを平均径1000nm以下の繊維状に分散させてペレット状に仕上げることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−285564(P2008−285564A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130934(P2007−130934)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(502392434)大丸産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】