説明

ポリオレフィン微多孔膜、非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池

【課題】耐熱性多孔質層と複合した時に、耐熱性やシャットダウン特性に加え、優れた耐短絡性を付与できるポリオレフィン微多孔膜を提供すること。
【解決手段】常温、1000サイクルにおけるゲルボフレックス試験後のピンホールが5個/m以下である事を特徴とするポリオレフィン微多孔膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン微多孔膜に関わるものであり、特に非水系二次電池の安全性を向上させる技術によるものである。
【背景技術】
【0002】
正極にコバルト酸リチウムに代表されるリチウム含有遷移金属酸化物、負極にリチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料を用いたリチウムイオン二次電池を代表とする非水系二次電池は、高エネルギー密度を有するという特徴から携帯電話に代表される携帯電子機器の電源として重要なものであり、これら携帯電子機器の急速な普及に伴いその需要は高まる一方である。
【0003】
また、ハイブリッド自動車など、環境対応を意識した自動車が数多く開発されているが、搭載される電源の一つとして、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が大きく注目されている。
【0004】
リチウムイオン二次電池の多くは、正極、電解液を含むセパレータ、負極の積層体から構成されている。セパレータは、主たる機能として正極と負極の短絡防止を担っているが、要求特性として、リチウムイオンの移動度、強度、耐久性などがある。
【0005】
現在、リチウムイオン二次電池セパレータ用途に適するフィルムとして各種のポリオレフィン微多孔膜が数多く提案されている。ポリオレフィン微多孔膜は、上述にある要求特性を満たし、かつ高温時の安全機能として、高温による孔の閉塞から電流を遮断する事による熱暴走防止機能、いわゆるシャットダウン機能を有している事もあり、リチウムイオン二次電池のセパレータとして幅広く使用されている。
【0006】
しかしながら、温度上昇により微多孔膜の孔が閉塞されて電流が一旦遮断されても、電池温度が微多孔膜を構成するポリエチレンの融点を超えて、ポリエチレンの耐熱性の限界を超えると、微多孔膜自体が溶融してシャットダウン機能が失われる。その結果、電極間の短絡をきっかけとして電池の熱暴走がおこり、リチウムイオン二次電池を組み込んだ装置の破壊や、発火による事故発生などを招くおそれがある。このため、さらなる安全性確保のために、高温時でもシャットダウン機能を維持できるセパレータが求められている。
【0007】
そこで、特許文献1には、ポリエチレン微多孔膜の表面に、全芳香族ポリアミド等の耐熱性ポリマーからなる耐熱性多孔質層を被覆した非水系二次電池用セパレータが提案されている。また、特許文献2には、耐熱性多孔質層中にアルミナ等の無機微粒子を含ませて、シャットダウン機能に加えて耐熱性の向上を図った構成が示されている。また、特許文献3には、耐熱性多孔質層中に水酸化アルミニウム等の金属水酸化物粒子を含ませて、シャットダウン機能および耐熱性に加えて難燃性の向上を図った構成が示されている。これらの構成はいずれも、シャットダウン機能と耐熱性を両立させた点において、電池の安全性という観点において優れた効果が期待できる。
【0008】
しかし、非水系二次電池用セパレータはポリオレフィン微多孔膜を耐熱性多孔質層でコーティングするという構造のため、セパレータのイオン移動度を良好に保つには、ポリオレフィン微多孔膜の厚みを薄くする必要があり、セパレータの突刺強度は低くなる傾向にあった。特に、非水系二次電池用セパレータを電極の間に挟み、捲回して電池を作成する時に、エッジとなる部分で短絡を引き起こす可能性があり、耐短絡性に優れる非水系二次電池用セパレータが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−209570号公報
【特許文献2】国際公開第2008/062727号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2008/156033号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、耐熱性多孔質層と複合した時に、耐熱性やシャットダウン特性に加え、優れた耐短絡性を付与できるポリオレフィン微多孔膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の構成により解決可能である事を見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、常温、1000サイクルにおけるゲルボフレックス試験後のピンホールが5個/m以下である事を特徴とするポリオレフィン微多孔膜である。
【0012】
また、本発明は前記ポリオレフィン微多孔膜を耐熱性多孔質層で被覆した非水系二次電池用セパレータである。また、本発明はリチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、前記非水系二次電池用セパレータを用いたことを特徴とする非水系二次電池である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、耐熱性多孔質層と複合した時に、耐熱性やシャットダウン特性に加え、優れた耐短絡性を付与できるポリオレフィン微多孔膜を提供することができる。このような本発明のポリオレフィン微多孔膜あるいはこれを用いた非水系二次電池用セパレータによれば、非水系二次電池の安全性を向上させる事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について順次説明する。なお、これらの説明及び実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0015】
[ポリオレフィン微多孔膜]
本発明のポリオレフィン微多孔膜において、微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜を言う。
【0016】
本発明で用いられるポリオレフィン微多孔膜の原料としては、ポリオレフィン、すなわちポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン及びその共重合体が挙げられる。中でもポリエチレンが好ましく、より好ましくは高密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンの混合物が、強度、耐熱性等の観点から好ましい。なお、本発明で用いるポリオレフィン微多孔膜は、90重量%以上がポリオレフィンからなるものであればよく、10重量%以下の電池特性に影響を与えない他の成分を含んでいても構わない。
【0017】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、常温、1000サイクルにおけるゲルボフレックス試験後のピンホールが5個/m以下である。ゲルボフレックス試験の結果がこの範囲にある時、本発明のポリオレフィン微多孔膜を使用した非水系二次電池用セパレータの耐短絡性が優れたものとなる。5個/mを越える場合、電極、セパレータ積層体を捲回して電池を作成する際に、折り曲げた部分の機械強度が大幅に低下する事により、短絡が発生する可能性が高まる。なお、本発明においてゲルボフレックス試験における「常温」とは、15〜30℃の温度を示すが、測定の際には25℃とする。
【0018】
ゲルボフレックス試験の結果を制御する方法に特に限定は無いが、具体的にはポリオレフィン微多孔膜の、原料となるポリオレフィンの分子量、分岐構造の制御、空孔率の制御、延伸条件の制御、アニール条件の制御、膜厚の制御などを用いる事が挙げられる。基本的には、ポリオレフィン鎖の絡み合いが多く、ラメラ結晶を強く保持できる構造にするほど、耐短絡性は向上する。この場合、分子量が一定範囲にあり、分岐構造が長いほど、延伸条件を強くするほど、アニール温度を下げるほど、耐短絡性は向上する傾向にある。
【0019】
本発明のポリオレフィン微多孔膜の膜厚は、非水系二次電池のエネルギー密度、負荷特性、機械強度およびハンドリング性の観点から、5〜25μmであることが好ましい。
本発明のポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、透過性、機械強度およびハンドリング性の観点から、30〜60%であることが好ましい。更に好ましくは、40%〜60%である。
【0020】
本発明のポリオレフィン微多孔膜のガーレ値(JIS・P8117)は、機械強度と膜抵抗をバランス良く得るという観点から、50〜500sec/100ccであることが好ましい。
本発明のポリオレフィン微多孔膜の膜抵抗は、非水系二次電池の負荷特性の観点から、0.5〜5ohm・cmであることが好ましい。
【0021】
本発明のポリオレフィン微多孔膜の突刺強度は250g以上であることが好ましい。250gを下回ると、非水系二次電池を作成した場合、電極の凹凸や衝撃等でセパレータにピンホール等が発生し、非水系二次電池が短絡する可能性が高くなるため、好ましくない場合がある。
【0022】
本発明のポリオレフィン微多孔膜の引張強度は10N以上であることが好ましい。10Nを下回ると、非水系二次電池を作成する時にセパレータを捲回する際に、セパレータが破損する可能性が高くなるため、好ましくない場合がある。
【0023】
本発明のポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度は130〜150℃であることが好ましい。シャットダウン温度は、抵抗値が10ohm・cmとなった温度を差す。シャットダウン温度が130℃より小さい場合、シャットダウン現象が低温で発現するのと同じく、ポリオレフィン微多孔膜が完全溶融し短絡現象が発生するメルトダウンと呼ばれる現象も低温で発生する事になり、安全上好ましくない場合がある。また、シャットダウン温度が150℃より大きいと、高温時の十分な安全機能が期待できず、好ましくない場合がある。好ましくは135〜145℃である。
【0024】
本発明のポリオレフィン微多孔膜の105℃における熱収縮率は5〜40%以下であることが好ましい。熱収縮率がこの範囲にある時、ポリオレフィン微多孔膜を加工して得た非水系二次電池用セパレータの形状安定性とシャットダウン特性のバランスがとれたものとなる。
【0025】
[ポリオレフィン微多孔膜の製造法]
本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造法に、特に制限は無いが、具体的には下記(1)〜(6)の工程を経て製造することが好ましい。なお、原料に用いるポリオレフィンについては上述のとおりである。
【0026】
(1)ポリオレフィン溶液の調整
ポリオレフィンを溶剤に溶解させた溶液を調整する。この時、溶剤を混合して溶液を作成しても構わない。溶剤としては、例えばパラフィン、流動パラフィン、パラフィン油、鉱油、ひまし油、テトラリン、エチレングリコール、グリセリン、デカリン、トルエン、キシレン、ジエチルトリアミン、エチルジアミン、ジメチルスルホキシド、ヘキサン等が挙げられる。ポリオレフィン溶液の濃度は1〜35重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。ポリオレフィン溶液の濃度が1重量%未満では、冷却ゲル化して得られるゲル状成形物が溶媒で高度に膨潤されるため変形し易く、取扱いに支障をきたす場合がある。一方、35重量%を超えると押し出しの際の圧力が高くなるため吐出量が低くなり生産性が上げられない場合があり、また押し出し工程での配向が進み、延伸性や均一性が確保できなくなる場合がある。
【0027】
(2)ポリオレフィン溶液の押出
調整した溶液を一軸押出機、もしくは二軸押出機で混練し、融点以上かつ融点+60℃以下の温度でTダイもしくはIダイで押し出す。好ましくは二軸押出機を用いる。そして、押し出した溶液をチルロールまたは冷却浴に通過させて、ゲル状組成物を形成する。この際、ゲル化温度以下に急冷しゲル化することが好ましい。
【0028】
(3)脱溶媒処理
次いで、ゲル状組成物から溶媒を除去する。揮発性溶剤を使用する場合、予熱工程も兼ねて加熱等により蒸発させゲル状組成物から溶媒を除くこともできる。また不揮発性溶媒の場合は圧力をかけて絞り出すなどして溶媒を除くことができる。なお溶媒は完全に除く必要はない。
【0029】
(4)ゲル状組成物の延伸
脱溶媒処理に次いで、ゲル状組成物を延伸する。ここで、延伸処理の前に弛緩処理を行っても良い。延伸処理は、ゲル状成形物を加熱し、通常のテンター法、ロール法、圧延法もしくはこれらの方法の組合せによって所定の倍率で2軸延伸する。2軸延伸は、同時または逐次のどちらであってもよい。また縦多段延伸や3、4段延伸とすることもできる。
延伸温度は、90℃〜ポリオレフィンの融点未満であることが好ましく、さらに好ましくは100〜120℃である。加熱温度が融点を越える場合は、ゲル状成形物が溶解するために延伸できない。又、加熱温度が90℃未満の場合は、ゲル状成形物の軟化が不十分で延伸において破膜し易く高倍率の延伸が困難となる場合がある。
また、延伸倍率は、原反の厚さによって異なるが、1軸方向で少なくとも2倍以上、好ましくは4〜20倍で行うことが好ましい。特に、結晶パラメータを制御するという観点では、延伸倍率が機械方向に4〜10倍、また機械垂直方向に6〜15倍であることが好ましい。
延伸後、必要に応じて熱固定を行い、熱寸法安定性を持たせる。
【0030】
(5)溶剤の抽出・除去
延伸後のゲル状組成物を抽出溶剤に浸漬して、溶媒を抽出する。抽出溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン、テトラリンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素、メチレンクロライドなどの塩素化炭化水素、三フッ化エタンなどのフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類など易揮発性のものを用いることができる。これらの溶剤はポリオレフィン組成物の溶解に用いた溶媒に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いることができる。溶媒の抽出は、微多孔膜中の溶媒を1重量%未満に迄除去する。
【0031】
(6)微多孔膜のアニール
微多孔膜をアニールにより熱セットする。アニールは80〜150℃で実施する。本発明においては、所定の熱収縮率を有するという観点から、アニール温度が115〜135℃であることが好ましい。
【0032】
[非水系二次電池用セパレータ]
本発明の非水系二次電池用セパレータは、上述したポリオレフィン微多孔膜と、耐熱性樹脂を含んで形成され前記ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に積層された耐熱性多孔質層とを備えた非水系二次電池用セパレータであることを特徴とする。
【0033】
このような本発明の非水系二次電池用セパレータによれば、ポリオレフィン微多孔膜によりシャットダウン機能が得られると共に、耐熱性多孔質層によりシャットダウン温度以上の温度においてもポリオレフィンが保持されるため、メルトダウンが生じ難く、高温時の安全性を確保できる。従って、本発明のセパレータによれば、安全性に優れた非水系二次電池を得ることができる。
【0034】
本発明の非水系二次電池用セパレータは、常温、1000サイクルにおけるゲルボフレックス試験の結果が、5個/m以下であることが好ましい。ゲルボフレックス試験の結果がこの範囲にある時、本発明の非水系二次電池用セパレータのイオン伝導度と耐短絡性のバランスがとれたものとなる。5個/mを越える場合、電極、セパレータ積層体を捲回して電池を作成する際に、折り曲げた部分の機械強度が大幅に低下する事により、短絡が発生する可能性が高まる。
【0035】
本発明の非水系二次電池用セパレータは、非水系二次電池のエネルギー密度の観点から、全体の膜厚が30μm以下であることが好ましい。
本発明の非水系二次電池用セパレータの空孔率は、透過性、機械強度およびハンドリング性の観点から、30〜70%であることが好ましい。更に好ましくは、40%〜60%である。
【0036】
本発明の非水系二次電池用セパレータのガーレ値(JIS・P8117)は、機械強度と膜抵抗のバランスが良くなるという観点から、100〜500sec/100ccであることが好ましい。
本発明の非水系二次電池用セパレータの膜抵抗は、非水系二次電池の負荷特性の観点から、1.5〜10ohm・cmであることが好ましい。
【0037】
本発明の非水系二次電池用セパレータの突刺強度は250〜1000gであることが好ましい。突刺強度が250g未満の場合、非水系二次電池を作成した場合、電極の凹凸や衝撃等でセパレータにピンホール等が発生し、非水系二次電池が短絡する可能性があり好ましくない場合がある。
【0038】
本発明の非水系二次電池用セパレータの引張強度は10N以上であることが好ましい。10N未満の場合、非水系二次電池を作成する時にセパレータを捲回する際に、セパレータが破損する可能性が高くなるため、好ましくない場合がある。
【0039】
本発明の非水系二次電池用セパレータのシャットダウン温度は130〜155℃であることが好ましい。シャットダウン温度が130℃未満の場合、メルトダウンが低温で発生する事になり、安全上好ましくない場合がある。また、シャットダウン温度が155℃より大きい場合、高温時の十分な安全機能が期待できず、好ましくない場合がある。好ましくは135〜150℃である。
【0040】
本発明の非水系二次電池用セパレータの105℃における熱収縮率は0.5〜10%であることが好ましい。熱収縮率がこの範囲にある時、非水系二次電池用セパレータの形状安定性とシャットダウン特性のバランスがとれたものとなる。更に好ましくは0.5〜5%である。
【0041】
[耐熱性多孔質層]
本発明において、耐熱性多孔質層としては、微多孔膜状、不織布状、紙状、その他三次元ネットーワーク状の多孔質構造を有した層を挙げることができるが、より優れた耐熱性が得られる点で、微多孔膜状の層であることが好ましい。ここで、微多孔膜状の層とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった層のことを言う。
【0042】
本発明で用いられる耐熱性樹脂は、融点200℃以上のポリマーあるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上のポリマーが適当であり、好ましくは、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドおよびセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である。特に、耐久性の観点から全芳香族ポリアミドが好適であり、多孔質層を形成しやすく耐酸化還元性に優れるという観点から、メタ型全芳香族ポリアミドであるポリメタフェニレンイソフタルアミドがさらに好適である。
【0043】
本発明において、耐熱性多孔質層はポリオレフィン微多孔膜の両面または片面に形成すればよいが、ハンドリング性、耐久性および熱収縮の抑制効果の観点から、基材の表裏両面に形成した方が好ましい。なお、耐熱性多孔質層を基材上に固定するためには、耐熱性多孔質層を塗工法により基材上に直接形成する手法が好ましいが、これに限らず、別途製造した耐熱性多孔質層のシートを基材上に接着剤等を用いて接着する手法や、熱融着や圧着などの手法も採用することができる。
【0044】
本発明において、耐熱性多孔質層の厚みについては、耐熱性多孔質層が基材の両面に形成されている場合は、耐熱性多孔質層の厚みの合計が3μm以上12μm以下であることが好ましく、耐熱性多孔質層が基材の片面にのみ形成されている場合は耐熱性多孔質層の厚みが3μm以上12μm以下であることが好ましい。耐熱性多孔質層の空孔率は60〜90%の範囲が好適である。
【0045】
[無機フィラー]
本発明において、耐熱性多孔質層には無機フィラーが含まれていることが好ましい。無機フィラーとしては、特に限定はないが、具体的にはアルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニアなどの金属酸化物、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、リン酸カルシウムなどの金属リン酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物などが好適に用いられる。このような無機フィラーは、不純物の溶出や耐久性の観点から結晶性の高いものが好ましい。
【0046】
中でも、無機フィラーとしては、200〜400℃において吸熱反応を生じるものであるものが好ましい。この様な特性を有する無機フィラーとして、特に限定されないが、金属水酸化物、硼素塩化合物または粘土鉱物等からなる無機フィラーであって、200〜400℃において吸熱反応を生じるものが挙げられる。具体的には、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム、ドーソナイト、硼酸亜鉛等が挙げられ、これらは単独若しくは2種以上を組合せて用いることができる。また、これらの難燃性の無機フィラーには、アルミナやジルコニア、シリカ、マグネシア、チタニア等の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属炭酸塩などの他の無機フィラーを適宜混合して用いることもできる。
【0047】
ここで、非水系二次電池では、正極の分解に伴う発熱が最も危険と考えられており、この分解は300℃近傍で起こる。このため、吸熱反応の発生温度が200℃〜400℃の範囲であれば、非水系二次電池の発熱を防ぐ上で有効である。例えば、水酸化アルミニウムやドーソナイト、アルミン酸カルシウムは200〜300℃の範囲において脱水反応が起こり、また、水酸化マグネシウムや硼酸亜鉛は300〜400℃の範囲において脱水反応が起こるため、これらの無機フィラーのうち少なくともいずれか一種を用いることが好ましい。
【0048】
特に本発明では、無機フィラーは難燃性の向上効果、ハンドリング性、除電効果、電池の耐久性の改善効果の観点から、金属水酸化物からなることが好ましい。中でも水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムであることが好ましい。
本発明において、無機フィラーの平均粒子径は、高温時の耐短絡性や成形性等の観点から、0.1〜2μmの範囲が好ましい。
【0049】
本発明において、耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量は、耐熱性向上効果、透過性およびハンドリング性の観点から、50〜95重量%であることが好ましい。
なお、耐熱性多孔質層中の無機フィラーは、耐熱性多孔質層が微多孔膜状である場合は耐熱性樹脂に捕捉された状態で存在しており、耐熱性多孔質層が不織布等の場合は構成繊維中に存在するか、樹脂などのバインダーにより不織布表面等に固定されていればよい。
【0050】
[耐熱性多孔質層の製造法]
本発明において、非水系二次電池用セパレータの製造法は、上述した構成の本発明のセパレータが製造できれば特に限定されないが、例えば下記(1)〜(5)の工程を経て製造することが可能である。
【0051】
(1)塗工用スラリーの作製
耐熱性樹脂を溶剤に溶かし、塗工用スラリーを作製する。溶剤は耐熱性樹脂を溶解するものであればよく、特に限定は無いが、具体的には極性溶剤が好ましく、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、当該溶剤はこれらの極性溶剤に加えて耐熱性樹脂に対して貧溶剤となる溶剤も加えることができる。このような貧溶剤を適用することでミクロ相分離構造が誘発され、耐熱性多孔質層を形成する上で多孔化が容易となる。貧溶剤としては、アルコールの類が好適であり、特にグリコールのような多価アルコールが好適である。塗工用スラリー中の耐熱性樹脂の濃度は4〜9重量%が好ましい。また必要に応じ、これに無機フィラーを分散させて塗工用スラリーとする。塗工用スラリー中に無機フィラーを分散させるに当たって、無機フィラーの分散性が好ましくないときは、無機フィラーをシランカップリング剤などで表面処理し、分散性を改善する手法も適用可能である。
【0052】
(2)スラリーの塗工
スラリーをポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に塗工する。ポリオレフィン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層を形成する場合は、基材の両面に同時に塗工することが、工程の短縮という観点で好ましい。塗工用スラリーを塗工する方法としては、ナイフコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法、マイヤーバー法、ダイコーター法、リバースロールコーター法、インクジェット法、スプレー法、ロールコーター法などが挙げられる。この中でも、塗膜を均一に形成するという観点において、リバースロールコーター法が好適である。基材の両面に同時に塗工する場合は、例えば、基材を一対のマイヤーバーの間に通すことで基材の両面に過剰な塗工用スラリーを塗布し、これを一対のリバースロールコーターの間に通して過剰なスラリーを掻き落すことで精密計量するという方法が挙げられる。
【0053】
(3)スラリーの凝固
スラリーが塗工された基材を、前記耐熱性樹脂を凝固させることが可能な凝固液で処理する。塗工用スラリーを塗工した基材を、当該耐熱性樹脂を凝固させることが可能な凝固液で処理することにより、耐熱性樹脂を凝固させて、耐熱性多孔質層を形成する。凝固液で処理する方法としては、塗工用スラリーを塗工した基材に対して凝固液をスプレーで吹き付ける方法や、当該基材を凝固液の入った浴(凝固浴)中に浸漬する方法などが挙げられる。ここで、凝固浴を設置する場合は、塗工装置の下方に設置することが好ましい。凝固液としては、当該耐熱性樹脂を凝固できるものであれば特に限定されないが、水、または、スラリーに用いた溶剤に水を適当量混合させたものが好ましい。ここで、水の混合量は凝固液に対して40〜80重量%が好適である。水の量が40重量%より少ないと、耐熱性樹脂を凝固するのに必要な時間が長くなったり、凝固が不十分になったりという問題が生じる。また、水の量が80重量%より多いと、溶剤回収においてコスト高となったり、凝固液と接触する表面の凝固が速くなりすぎて表面が十分に多孔化されなかったりという問題が生じる。
【0054】
(4)凝固液の除去
凝固液を水洗することによって除去する。
【0055】
(5)乾燥
シートから水を乾燥して除去する。乾燥方法は特に限定は無いが、乾燥温度は50〜80℃が好適であり、高い乾燥温度を適用する場合は熱収縮による寸法変化が起こらないようにするためにロールに接触させるような方法を適用することが好ましい。
【0056】
[非水系二次電池]
本発明の非水系二次電池は、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、上述した構成のポリオレフィン微多孔膜あるいは非水系二次電池用セパレータをセパレータとして用いたことを特徴とする。非水系二次電池は、負極と正極がセパレータを介して対向している電池要素に電解液が含浸され、これが外装に封入された構造となっている。
【0057】
負極は、負極活物質、導電助剤およびバインダーからなる負極合剤が、集電体上に成形された構造となっている。負極活物質としては、リチウムを電気化学的にドープすることが可能な材料が挙げられ、例えば炭素材料、シリコン、アルミニウム、スズ、ウッド合金などが挙げられる。導電助剤は、アセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダーは有機高分子からなり、例えばポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。集電体には銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔などを用いることが可能である。
【0058】
正極は、正極活物質、導電助剤およびバインダーからなる正極合剤が、集電体上に成形された構造となっている。正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物等が挙げられ、具体的にはLiCoO、LiNiO、LiMn0.5Ni0.5、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiMn、LiFePO等が挙げられる。導電助剤はアセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダーは有機高分子からなり、例えばポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。集電体にはアルミ箔、ステンレス箔、チタン箔などを用いることが可能である。
【0059】
電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した構成である。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClOなどが挙げられる。非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネートなどが挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0060】
外装材は、金属缶またはアルミラミネートパック等が挙げられる。電池の形状は角型、円筒型、コイン型などがあるが、本発明のセパレータはいずれの形状においても好適に適用することが可能である。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
[測定方法]
本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
(1)ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータの膜厚は、接触式の膜厚計(ミツトヨ社製)にて20点測定し、これを平均することで求めた。ここで接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状のものを用いた。
【0062】
(2)ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータの目付は、サンプルを10cm×10cmに切り出し重量を測定する。この重量を面積で割ることで1m当たりの重量である目付を求めた。
【0063】
(3)ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータの空孔率は、下記式から求めた。
ε={1−Ws/(ds・t)}×100
ここで、ε:空隙率(%)、Ws:目付(g/m)、ds:真密度(g/cm)、t:膜厚(μm)である。
【0064】
(4)ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータのガーレ値はJIS P8117に従って求めた。
【0065】
(5)ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータの膜抵抗は、以下の方法で求めた。
サンプルを2.6cm×2.0cmのサイズに切り出す。非イオン性界面活性剤(花王社製エマルゲン210P)を3重量%溶解したメタノール溶液(メタノール:和光純薬社製)に切り出したサンプルを浸漬し、風乾する。厚さ20μmのアルミ箔を2.0cm×1.4cmに切り出しリードタブを付ける。このアルミ箔を2枚用意して、アルミ箔間に切り出したサンプルをアルミ箔が短絡しないように挟む。サンプルに電解液である1MのLiBFプロピレンカーボネート/エチレンカーボネート(1/1重量比)を含浸させる。これをアルミラミネートパック中にタブがアルミパックの外に出るようにして減圧封入する。このようなセルをアルミ箔中にセパレータが1枚、2枚、3枚となるようにそれぞれ作製する。該セルを20℃の恒温槽中に入れ、交流インピーダンス法で振幅10mV、周波数100kHzにて該セルの抵抗を測定する。測定されたセルの抵抗値をセパレータの枚数に対してプロットし、このプロットを線形近似し傾きを求める。この傾きに電極面積である2.0cm×1.4cmを乗じてセパレータ1枚当たりの膜抵抗(ohm・cm)を求めた。
【0066】
(6)ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータの突刺強度は、カトーテック社製KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行い、最大突刺荷重を突刺強度とした。ここでサンプルは直径11.3mmの穴があいた金枠(試料ホルダー)にシリコンゴム製のパッキンも一緒に挟み固定した。
【0067】
(7)ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータの引張強度は、10×100mmに調整したサンプルを引張試験機(A&D製、RTC−1225A)を用い、ロードセル荷重5kgf、チャック間距離50mmの条件で測定した。
【0068】
(8)ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータのシャットダウン温度は、以下の方法で求めた。
サンプルを直径19mmに打ち抜き、非イオン性界面活性剤(花王社製エマルゲン210P)を3重量%溶解したメタノール溶液(メタノール:和光純薬社製)に切り出したサンプルを浸漬し、風乾した。サンプルを直径15.5mmのSUS板に挟んだ。サンプルに電解液である1MのLiBFプロピレンカーボネート/エチレンカーボネート(1/1重量比)(キシダ化学社製)を含浸させた。これを2032型コインセルに封入した。コインセルからリード線をとり、熱電対を付けてオーブンの中に入れた。昇温速度1.6℃/分で昇温させ、同時に交流インピーダンス法で振幅10mV、周波数100kHzにて該セルの抵抗を測定した。抵抗値が10ohm・cm以上となった温度をシャットダウン温度とした。
【0069】
(9)ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータの熱収縮率は、サンプルを105℃で1時間加熱することによって測定した。
【0070】
(10)非水系二次電池の放電性評価を、以下の方法で実施した。
1.6mA、4.2Vで8時間定電流・定電圧充電、1.6mA、2.75Vで定電流放電の充放電サイクルを10サイクル実施し、10サイクル目に得られた放電容量をこの電池の放電容量とした。次に、1.6mA、4.2Vで8時間定電流・定電圧充電、16mA、2.75Vで定電流放電を行った。このとき得られた容量を10サイクル目の電池の放電容量で割り、得られた数値を負荷特性の指標とした。
【0071】
(11)ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータのゲルボフレックス試験は、ゲルボフレックステスター(テスター工業製)を用い、常温(25℃)、1000サイクルの条件で実施した。
【0072】
(12)非水系二次電池用セパレータの耐短絡性を、以下の方法で実施した。
電池を4.2Vまで充電した後、電池をオーブンに入れ、5kgの錘をのせた。この状態で電池温度が2℃/分で昇温するようにオーブンを設定し電池を200℃まで加熱した。そのとき150℃近傍で急激な電池電圧の低下が確認されたものについては耐短絡性が不良(×)と評価し、150℃においても電池電圧に大きな変化がなかったものについては耐短絡性が良好(〇)と評価した。
【0073】
[実施例1]
ポリエチレンパウダーとしてTicona社製GUR2126(重量平均分子量415万、融点141℃)とGURX143(重量平均分子量56万、融点135℃)を用いた。GUR2126とGURX143を2:8(重量比)となる様にして、ポリエチレン濃度が30重量%となるように流動パラフィン(松村石油研究所社製スモイルP−350:沸点480℃)とデカリン(和光純薬社製、沸点193℃)の混合溶媒中に溶解させ、ポリエチレン溶液を作製した。該ポリエチレン溶液の組成はポリエチレン:流動パラフィン:デカリン=30:67.5:2.5(重量比)である。
このポリエチレン溶液を148℃でダイから押し出し、水浴中で冷却してゲル状テープ(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で8分、95℃で15分乾燥し、該ベーステープを縦延伸、横延伸を逐次行う2軸延伸にて延伸した。ここで、縦延伸6倍、延伸温度は90℃、横延伸は延伸倍率9倍、延伸温度は105℃とした。横延伸の後に130℃で熱固定を行った。次にこれを塩化メチレン浴に浸漬し、流動パラフィンとデカリンを抽出した。その後、50℃で乾燥し、120℃でアニール処理することでポリオレフィン微多孔膜を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜はフィブリル状ポリオレフィンが網目状に交絡し、細孔を構成する構造を有するものであった。
得られたポリオレフィン微多孔膜の特性(膜厚、目付、ガーレ値、空孔率、膜抵抗、突刺強度、引張強度、シャットダウン(SD)温度、熱収縮率、ゲルボフレックス試験)の測定結果を表1に示す。なお、以下の比較例1,2についても同様に表1に示す。
【0074】
[比較例1]
ポリエチレン溶液の組成をポリエチレン:流動パラフィン:デカリン=15:60:25(重量比)とした以外、実施例1と同様にポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0075】
[比較例2]
ポリエチレン溶液の組成をポリエチレン:流動パラフィン:デカリン=30:30:40(重量比)とした以外、実施例1と同様にポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0076】
【表1】

【0077】
[実施例2]
実施例1で得られたポリオレフィン微多孔膜を用い、この両面に耐熱性樹脂からなる耐熱性多孔質層を積層させて、本発明の非水系二次電池用セパレータを製造した。
具体的に、耐熱性樹脂として、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(帝人テクノプロダクツ社製、コーネックス)を用いた。この耐熱性樹脂を、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)が重量比50:50となっている混合溶媒に溶解させて、塗工用スラリーを作製した。なお、塗工用スラリーにおけるポリメタフェニレンイソフタルアミドの濃度は5.5重量%となるように調整した。そして、マイヤーバーを2本対峙させ、その間に塗工液を適量のせた。この後、ポリオレフィン微多孔膜を、塗工液がのっているマイヤーバー間を通過させて、ポリオレフィン微多孔膜の表裏面に塗工液を塗工した。ここで、マイヤーバー間のクリアランスは20μmに設定し、マイヤーバーの番手は2本とも#6を用いた。これを重量比で水:DMAc:TPG=50:25:25で40℃となっている凝固液中に浸漬し、次いで水洗・乾燥を行った。これにより、ポリオレフィン微多孔膜の表裏両面に耐熱性多孔質層が形成された非水系二次電池用セパレータを得た。
得られた非水系二次電池用セパレータの特性(膜厚、目付、ガーレ値、空孔率、膜抵抗、突刺強度、引張強度、シャットダウン温度、熱収縮率、耐短絡性)の測定結果を表2に示す。なお、以下の実施例3,4および比較例3,4についても同様に表2に示す。
【0078】
[実施例3]
実施例1で得られたポリオレフィン微多孔膜を用い、これに耐熱性樹脂と無機フィラーからなる耐熱性多孔質層を積層させて、本発明の非水系二次電池用セパレータを製造した。
具体的に、耐熱性樹脂として、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(帝人テクノプロダクツ社製、コーネックス)を用いた。この耐熱性樹脂を、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)が重量比50:50となっている混合溶媒に溶解させた。このポリマー溶液に、無機フィラーとしてのα−アルミナ(岩谷化学工業社製、SA−1、平均粒子径0.8μm)を分散させて、塗工用スラリーを作製した。なお、塗工用スラリーにおけるポリメタフェニレンイソフタルアミドの濃度は5.5重量%となるようにし、かつ、ポリメタフェニレンイソフタルアミドと無機フィラーの重量比は25:75となるように調整した。そして、マイヤーバーを2本対峙させ、その間に塗工液を適量のせた。この後、ポリオレフィン微多孔膜を、塗工液がのっているマイヤーバー間を通過させて、ポリオレフィン微多孔膜の表裏面に塗工液を塗工した。ここで、マイヤーバー間のクリアランスは20μmに設定し、マイヤーバーの番手は2本とも#6を用いた。これを重量比で水:DMAc:TPG=50:25:25で40℃となっている凝固液中に浸漬し、次いで水洗・乾燥を行った。これにより、ポリオレフィン微多孔膜の表裏両面に耐熱性多孔質層が形成された非水系二次電池用セパレータを得た。
【0079】
[実施例4]
無機フィラーとして水酸化マグネシウム(協和化学工業製、キスマ−5P、平均粒子径1・0μm)を使用した以外は、実施例3と同様に非水系二次電池用セパレータを得た。
【0080】
[比較例3]
ポリオレフィン微多孔膜として比較例1で得られたものを使用し、マイヤーバーのクリアランスを22μmにした以外は、実施例4と同様に非水系二次電池用セパレータを得た。
【0081】
[比較例4]
ポリオレフィン微多孔膜として比較例2で得られたものを使用し、マイヤーバーのクリアランスを17μmにした以外は、実施例4と同様に非水系二次電池用セパレータを得た。
【0082】
【表2】

【0083】
[実施例5]
コバルト酸リチウム(LiCoO:日本化学工業社製)89.5重量部、アセチレンブラック(電気化学工業社製デンカブラック)4.5重量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ化学社製)6重量部となるように、N−メチル−ピロリドンを用いてこれらを混練し、スラリーを作製した。得られたスラリーを厚さが20μmのアルミ箔上に塗布乾燥後プレスし、100μmの正極を得た。
メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB:大阪瓦斯化学社製)87重量部、アセチレンブラック(電気化学工業社製商品名デンカブラック)3重量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ化学社製)10重量部となるようにN−メチル−2ピロリドンを用いてこれらを混練し、スラリーを作製した。得られたスラリーを厚さが18μmの銅箔上に塗布乾燥後プレスし、90μmの負極を得た。
上記正極及び負極を、実施例2で作製した非水系二次電池用セパレータを介して対向させた。これに電解液を含浸させアルミラミネートフィルムからなる外装に封入して非水系二次電池を作製した。ここで、電解液には1M LiPF エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(3/7重量比)(キシダ化学社製)を用いた。
ここで、この試作電池は正極面積が2×1.4cm、負極面積は2.2×1.6cmで、設定容量は8mAh(4.2V−2.75Vの範囲)である。
得られた非水系二次電池の特性(放電容量、負荷特性)の測定結果を表3に示す。なお、以下の実施例6,7および比較例5,6についても同様に表3に示す。
【0084】
[実施例6]
非水系二次電池用セパレータとして実施例3で得られたものを使用した以外は、実施例5と同様に非水系二次電池を得た。
【0085】
[実施例7]
非水系二次電池用セパレータとして実施例4で得られたものを使用した以外は、実施例5と同様に非水系二次電池を得た。
【0086】
[比較例5]
非水系二次電池用セパレータとして比較例3で得られたものを使用した以外は、実施例5と同様に非水系二次電池を得た。
【0087】
[比較例6]
非水系二次電池用セパレータとして比較例4で得られたものを使用した以外は、実施例5と同様に非水系二次電池を得た。
【0088】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、ゲルボフレックス試験における面積あたりのピンホール数を制御する事で、これと耐熱性樹脂からなる耐熱性多孔質層と複合した非水系二次電池用セパレータのシャットダウン特性、耐熱性に加え、耐短絡性が優れたものとなる。これにより、該非水系二次電池用セパレータを用いた非水系二次電池の安全性を確かなものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温、1000サイクルにおけるゲルボフレックス試験後のピンホールが5個/m以下である事を特徴とするポリオレフィン微多孔膜。
【請求項2】
請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜と、耐熱性樹脂を含んで形成され前記ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に積層された耐熱性多孔質層とを、備えたことを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記耐熱性樹脂が、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドおよびセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記耐熱性多孔質層には無機フィラーが含まれていることを特徴とする請求項2〜3のいずれかに記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記無機フィラーは水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項4に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項6】
リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜あるいは非水系二次電池用セパレータを、セパレータとして用いたことを特徴とする非水系二次電池。

【公開番号】特開2011−210437(P2011−210437A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75115(P2010−75115)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】