説明

ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法

【課題】 ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生工程において、特殊な温度コントロールの実施や、特殊な装置を使用することなく、簡易な方法にて型内発泡成形後の変形、収縮問題を解決する。
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を、炭酸ガス濃度が調整された雰囲気下で養生することにより、型内発泡成形後の収縮、変形を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を金型内に充填し、水蒸気で加熱成形して得られるポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体は、型内発泡成形体の長所である形状の任意性、軽量性、断熱性などの特徴を持つ。ポリオレフィン系型内発泡成形体は、断熱材、緩衝包装材、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材など様々な用途に用いられている。
【0003】
従来からポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を製造する方法として、予めポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入し、型内発泡成形する方法(いわゆる内圧付与法)、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を圧縮状態で金型内に充填し型内発泡成形する方法(いわゆる圧縮充填法)等が行われている。
【0004】
しかしながら、内圧付与法では、大規模な加圧設備が必要であり、内圧付与に時間がかかるという問題がある。また、圧縮充填法では、予備発泡粒子を圧縮して充填するための装置が必要であり、既存の成型機の改造が必要となるという問題がある。
これらの問題があるために、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をそのまま前処理無しに内部圧力が大気圧とほぼ等しい状態で用いて型内発泡成形を行う方法もとられる場合がある。
【0005】
ところで、型内発泡成形法にて成形した成形体は、成形時に蒸気で発泡体内部が充満されていることから、成形後に常温放置すると蒸気が凝集し、急激に収縮、変形する場合がある。
【0006】
内圧付与法や圧縮充填法を用いた場合においても、成形体の密度や成形時の条件などにより成形後に大きく変形することもあるが、特にそのまま前処理無しに用いて型内発泡成形を行う場合には、成形後に変形しやすいために乾燥後もヒケや皺が残る、乾燥しても収縮が戻らないなど、表面美麗な成形体を得ることが難しいという問題点がある。
【0007】
これらの成形後の変形、収縮問題を解決するために、これまでにも種々のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を養生する方法が検討されてきている。
特許文献1では、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を取り出した後、成形体の体積が金型内容積の70〜110%の間に、基材樹脂の融点より25〜55℃低い温度雰囲気中に静置して養生する方法が開示されている。
特許文献2では、雰囲気温度90〜120℃の台車付養生装置で、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を養生させる方法が開示されている。
特許文献3では、養生初期温度を発泡成形体の溶融温度よりも15℃以下で、且つ、高温に保ち、それ以降は養生初期よりも10℃低く、且つ、75〜85℃の温度で養生する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60−166442号公報
【特許文献2】特開平2−130135号公報
【特許文献3】特開2000−212320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の乾燥には、通常60〜80℃の乾燥室が用いられており、一定の温度で保たれている。また、通常、成形体取り出し後から乾燥するまでの間、まとめて乾燥させるために、室温下で一定時間放置されることになる。
従って、特許文献1〜3の方法を実施するためには、成形後の一定時間内に乾燥室に入れる必要がある、特別な装置が必要であるといった問題点がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題点を有する養生工程において、特殊な温度コントロールの実施や、特殊な装置を使用することなく、簡易な方法にて型内発泡成形後の変形、収縮問題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子から変形や収縮が生じやすい条件にて成形されたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を、金型から取り出し後、大気分圧よりも高い炭酸ガス濃度の雰囲気下で、より好ましくは炭酸ガス濃度20体積%以上の雰囲気で、養生することにより、型内発泡成形体の収縮が小さく、表面美麗になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の構成よりなる。
[1] ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を用いて型内発泡成形法により成形されてなるポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を、金型から取り出し後、大気分圧よりも高い炭酸ガス濃度の雰囲気下で養生することを特徴する、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法。
[2] 前記炭酸ガス濃度雰囲気下が、炭酸ガス濃度20体積%以上であることを特徴とする、[1]記載のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法。
[3] 型内発泡成形体を金型から取り出し後、前記炭酸ガス濃度雰囲気下の養生を開始する迄の時間が5分以下であることを特徴とする、[1]または[2]記載のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法。
[4] 型内発泡成形体の乾燥工程を始める直前まで、前記前記炭酸ガス濃度雰囲気下で養生することを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法。
[5] 型内発泡成形にて充填されるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の内部圧力が大気圧とほぼ等しいことを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を、炭酸ガス濃度が調整された雰囲気下で養生することにより、特殊な温度コントロールを実施しなくとも、型内発泡成形後の収縮、変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を示差走査熱量計(DSC)にて、40℃〜220℃まで10℃/分の速度で昇温したときに得られるDSC曲線の一例である。低温側の融解ピークと低温側ピークと高温側ピークの間の極大点からの融解開始ベースラインへの接線で囲まれる熱量である低温側の融解ピーク熱量がQl、DSC曲線の高温側の融解ピークと低温側ピークと高温側ピークの間の極大点からの融解終了ベースラインへの接線で囲まれる熱量である高温側融解ピーク熱量がQhである。
【図2】ヒケの状態を評価する為の測定方法を説明する図面である。(a)は、ヒケ状態を測定する位置である、板状型内発泡成形体の長さ方向の中点を示している。(b)は、該位置における断面図を示しており、発泡成形体の端部での厚みL1および、端部より5cm内側での厚みL2を、デジタルノギスを用いて測定する。本発明の評価では、端部と内部での厚みの差L1−L2を「ヒケ量」とした。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における型内発泡成形法とは、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を2つの金型よりなる閉鎖しうるが密閉し得ない成形空間内に充填し、水蒸気などを加熱媒体として0.10〜0.4MPa(G)程度の加熱水蒸気圧で3〜60秒程度の加熱時間で成形し、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子同士を融着させ、このあと金型を水冷により冷却した後、金型を開き、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を得る方法である。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形に用いる場合には、
(1)予めポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入し、型内発泡成形に用いる方法、
(2)ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を圧縮状態で金型内に充填し型内発泡成形する方法、
(3)ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をそのまま前処理無しに内部圧力が大気圧とほぼ等しい状態で用いる方法、など従来既知の方法が使用しうる。
特に、3)ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子をそのまま前処理無しに内部圧力が大気圧とほぼ等しい状態で用いる方法は、成形後の収縮、変形が大きいため、本発明の適用が有用である。
【0017】
本発明でのポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法は、型内発泡成形体を金型から取り出した後、大気分圧よりも高い炭酸ガス濃度の雰囲気下で養生することにより、特殊な温度コントロールを実施しなくとも、型内発泡成形体の対金型収縮性および変形を抑制することができる。
【0018】
本発明における養生時雰囲気の炭酸ガス濃度としては、20体積%以上がより好ましく、30体積%以上がさらに好ましく、50体積%以上が特に好ましい。
なお、養生時雰囲気の炭酸ガス濃度は、例えば、炭酸ガス用高濃度ガス検知器[新コスモス電機(株)製、XP−3140]を用いて、測定した値である。
【0019】
本発明において、炭酸ガス濃度を調整された雰囲気下で養生する方法については、特に限定は無いが、例えば、
予め炭酸ガス濃度に調整した密閉可能なコンテナ、容器、袋等に、型内発泡成形体を入れる、
型内発泡成形体を入れたコンテナ、容器、袋に炭酸ガスを注入して、炭酸ガス濃度を調整する、
などの方法が挙げられる。
【0020】
本発明の炭酸ガス濃度の調整された雰囲気下で型内発泡成形体を養生する方法は、炭酸ガスボンベ、ドライアイスなどを用いてコンテナ、容器、袋等に炭酸ガスを充填するだけでよいことから、特別な装置などは必要なく、非常に簡便な方法である。
【0021】
本発明の型内発泡成形体の養生方法において、金型から取り出した後、前記炭酸ガス濃度雰囲気下の養生を開始する迄の時間は、5分以下であることが望ましく、2分以下であることがより望ましい。
前記炭酸ガス濃度雰囲気下の養生を開始する迄の時間が5分を超える場合には、収縮、変形の抑制効果が小さくなる傾向がある。
【0022】
本発明の型内発泡成形体の養生方法においては、所定の炭酸ガス濃度雰囲気下での養生工程の後に、水分除去、形状回復などを目的として、室温で放置された型内発泡成形体を60℃〜80℃程度の温度で加熱(いわゆる、乾燥工程)しても良い。
乾燥時間に特に制限は無いが、望ましくは4時間以上48時間以下である。乾燥時間が4時間未満の場合には、目的の効果が乏しい傾向があり、48時間を越える場合には著しく生産性が低下するため望ましくない。
乾燥工程においては、炭酸ガス濃度が調整された雰囲気下である必要はないが、炭酸ガス濃度が調整された雰囲気下のままの状態で乾燥させてもよい。
【0023】
本発明を適用するポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の密度は、10kg/m以上300kg/m以下であることが好ましい。特に、密度が10kg/m以上45kg/m以下である発泡倍率の高い成形体においては、変形が生じやすいことから、本発明の適用が有効である。
【0024】
本発明における型内発泡成形体を構成する樹脂としてはポリオレフィン系樹脂が採用される。型内発泡成形にはポリスチレン系の樹脂なども利用されているが、ポリオレフィン系樹脂は剛性が低く、型内発泡成形後の収縮、変形が顕著であることから、本発明の養生方法の適用が有用である。
【0025】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂は、オレフィン系単量体75重量%以上含んでなる重合体である。
【0026】
オレフィン系単量体の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、3−メチル−ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、3,4−ジメチル−ブテン−1、へプテン−1、3−メチル−ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1などの炭素数2〜12のα−オレフィンなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記オレフィン系単量体と共重合性を有するその他の単量体の具体例としては、例えば、シクロペンテン、ノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,8,8a,6−オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエンなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂、プロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
これらのポリオレフィン系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂としては、単量体の主成分としてプロピレンを含んでいれば、特に限定はなく、例えば、プロピレンホモポリマー、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体、α−オレフィン−プロピレンブロック共重合体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
特に、α−オレフィンがエチレンである、エチレンを共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂が、入手が容易であり、加工成形性に優れていることから、型内発泡成形への使用が好まれる。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂としては、単量体の主成分としてプロピレンを含んでいれば、特に限定はなく、例えば、プロピレンホモポリマー、オレフィン−プロピレンランダム共重合体、オレフィン−プロピレンブロック共重合体などが挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明において用いられるポリエチレン系樹脂としては、エチレンホモポリマー、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられる。ここで言う、α−オレフィンとしては、炭素数3〜15のα−オレフィンなどが挙げられ、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのポリエチレン系樹脂の中でも、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体であってエチレン以外のコモノマー含量が1〜10重量%である場合、あるいは直鎖状低密度ポリエチレンである場合に良好な発泡性を示し、型内発泡成形に好適に使用し得る。
【0031】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂は、さらに必要に応じて、タルク等のセル造核剤を始め、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、滑剤、可塑剤、充填剤、強化剤、無機系顔料、有機系顔料、導電性改良剤、難燃性改良剤、界面活性剤型もしくは高分子型の帯電防止剤等の添加剤が添加されたポリオレフィン系樹脂組成物として使用されうる。
【0032】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂組成物は、通常、予備発泡に利用されやすいように予め押出機、ニーダー、バンバリミキサー、ロール等を用いてポリオレフィン系樹脂を、必要に応じて前記添加剤と共に溶融混合し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状のポリオレフィン系樹脂粒子に成形加工される。
【0033】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造する方法には、特に限定はないが、密閉容器内にポリオレフィン系樹脂粒子を発泡剤存在下、分散剤等と共に分散媒中に分散させ、加圧下で所定の発泡温度まで加熱するとともに発泡剤を樹脂粒子に含浸させた後、容器内の温度、圧力を一定に保持しながら、密閉容器内の分散物を低圧域に放出・発泡させる方法、いわゆる除圧発泡が好ましい。
【0034】
密閉容器内の加熱温度は、好ましくはポリオレフィン系樹脂粒子の融点−25℃以上ポリオレフィン系樹脂粒子の融点+25℃以下、更に好ましくはポリオレフィン系樹脂粒子の融点−15℃以上ポリオレフィン系樹脂粒子の融点+15℃以下の範囲の温度である。当該温度に加熱し、加圧して、ポリオレフィン系樹脂粒子内に発泡剤を含浸させたのち、密閉容器の一端を開放してポリオレフィン系樹脂粒子を密閉容器内よりも低圧の雰囲気中に放出することによりポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造することができる。
【0035】
ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造するに当たり、発泡剤に特に制限はなく、例えば、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス;水等およびこれらの混合物を用いることができる。
【0036】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、示差走査熱量計法による測定において、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する際に得られるDSC曲線において2つの融解ピークを有していることが好ましい。
【0037】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、DSC比が7%以上60%以下であることが好ましい。特に、7%以上35%以下の低いDSC比である場合、変形が顕著になりやすいことから、本発明の適用が有効である。
なお、DSC比とは、図1に示すように、DSC曲線の2つの融解ピーク間で最も吸熱量が小さくなる点からDSC曲線に対しそれぞれ接線を引き、該接線とDSC曲線に囲まれた低温側部分を低温側の融解ピーク熱量Qとし、高温側部分を高温側の融解ピーク熱量Qとした際に、これらから算出される高温側の融解ピークの比率[Q/(Q+Q)×100]である。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例および比較例をあげて説明するが、これによって、本発明は制限されるものではない。
【0039】
実施例および比較例において、使用した物質は、以下のとおりであるが、特に精製等は行わずに使用した。
●ポリプロピレン系樹脂:エチレン−プロピレンランダム共重合体[エチレン含量2.8%、MFR=7.0g/10min、融点145℃]
●パウダー状塩基性第3リン酸カルシウム[太平化学産業(株)製]
●n−パラフィンスルホン酸ソーダ[花王(株)製、ラムテルPS]
【0040】
実施例および比較例における評価は、以下のように行った。
【0041】
(DSC比)
示差走査熱量計を用いて、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する際に得られるDSC曲線(図1に例示)において、2つのピークを有し、該融解ピークのうち低温側の融解ピーク熱量Qlと、高温側の融解ピーク熱量Qhから次式により算出した。
DSC比=Qh/(Ql+Qh)×100
【0042】
(発泡倍率)
ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の重量w(g)およびエタノール水没体積v(cm)を求め、発泡前のポリオレフィン系樹脂粒子の密度d(g/cm)から、次式により求めた。
発泡倍率=d×v/w
【0043】
(成形体密度)
得られた型内発泡成形体の寸法、重量W(kg)を測定し、寸法から体積V(kg/m)を計算し、次式により求めた。
成形体密度=V/W
【0044】
(表面皺)
得られた型内発泡成形体表面を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:表面に皺がほとんどない。
△:目立つほどではないが、表面に小さな皺が存在する。
×:表面に目立つような大きな皺が存在する。
【0045】
(体積収縮率)
養生後の型内発泡成形体の縦、横、厚みをデジタルノギス[ミツトヨ製]にて測定し、その値から体積を算出した。
体積収縮率は、得られた成形体体積の、金型寸法(長さ400mm×幅300mm×高さ50mm)より計算される体積に対する比率を求め、小数点以下第2位を四捨五入した。
【0046】
(ヒケ量)
図2に示すように、得られた成形体の長さ方向の中点での断面において、端部厚みL1と、端部から5cm内側での厚みL2をデジタルノギス[ミツトヨ製]を用いて測定した。
ヒケ量は、端部と内部での厚みの差L1−L2として、評価した。
【0047】
(実施例1〜8)
[樹脂粒子の作製]
ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、造核剤としてタルク0.03重量部を添加・混合し、50mmφ単軸押出機で混練した後、造粒し、粒子重量約1.8mg/粒のポリプロピレン系樹脂粒子を製造した。
[予備発泡粒子の作製]
得られた樹脂粒子100重量部およびイソブタン14重量部を、水300重量部、パウダー状塩基性第3リン酸カルシウム1.6重量部およびn−パラフィンスルホン酸ソーダ0.03重量部と共に、10L密閉容器に仕込み、該容器内部を142.5℃に加熱した。
次いで、温度を保持させながら、イソブタンを圧入して、容器内圧力を1.85MPaとなるように調整した。その後、容器内圧力を窒素で保持しつつ、密閉容器下部のバルブを開いて、水分散物を開孔径4.0mmφのオリフィス板を通して大気圧下に放出することにより、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子のDSC比は25%、発泡倍率は20倍であった。
[型内成形発泡体の作製]
得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を、内圧付与および圧縮充填の前処理を行うことなく、長さ400mm×幅300mm×高さ50mmの金型に充填した。その後、18秒間かけて水蒸気圧力0.30MPa(G)まで昇圧し、そのまま5秒間加熱、該予備発泡粒子同士を融着させ、50秒間水冷した後、金型から取り出し、型内発泡成形体を得た。得られた成形体密度は、32kg/mであった。
【0048】
[成形発泡体の養生]
得られた型内発泡成形体を、炭酸ガス濃度雰囲気に調整されたポリエチレン製袋へ入れ、室温(23℃)にて1時間放置した。この際、成形体の取り出しから袋へ入れるまでの放置時間、および、袋内の炭酸ガス濃度を表1に示す。
なお、炭酸ガス雰囲気の調整方法は、ポリエチレン製袋中に、炭酸ガスボンベ[エアウォーター製]から炭酸ガスを注入し、袋の口を紐で縛ることにより密閉し、炭酸ガスで充満した袋とした。その後、炭酸ガス用高濃度ガス検知器[新コスモス電機社製、XP−3140]を用いて、炭酸ガス濃度を測定しながら、炭酸ガスで充満した袋に空気を入れることにより、所定の炭酸ガス濃度に調整した。
[成形発泡体の乾燥]
該成形体をビニル袋から取り出し、乾燥室にて75℃の乾燥室にて18時間乾燥させた。得られた成形体を23℃で4時間放置して状態調整した後、表面皺、体積収縮率、ヒケ量の評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0049】
(実施例9)
乾燥室にて75℃の乾燥室にて18時間乾燥させた際も、型内発泡成形体を炭酸ガス雰囲気に調整された袋に入れたままとした以外は、実施例1と同様にして、成形体を得た。得られた成形体を23℃で4時間放置して状態調整した後、表面皺、体積収縮率、ヒケ量の評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0050】
(比較例1)
得られた型内発泡成形体を室温にて1時間放置した後、75℃の乾燥室にて18時間乾燥させた。乾燥室から取出し後、23℃で4時間放置した後に、表面皺、体積収縮率、ヒケ量の評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1より明らかなように、一定濃度以上の炭酸ガス雰囲気で養生することにより、皺が改善し、収縮も小さくなっていることがわかる。また、変形の指標となるヒケ量も半分以下にすることも可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を用いて型内発泡成形法により成形されてなるポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を、金型から取り出し後、大気分圧よりも高い炭酸ガス濃度の雰囲気下で養生することを特徴する、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法。
【請求項2】
前記養生時雰囲気の炭酸ガス濃度が、炭酸ガス濃度20体積%以上であることを特徴とする、請求項1記載のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法。
【請求項3】
成形体を金型から取り出し後、前記炭酸ガス濃度雰囲気下の養生を開始する迄の時間が5分以下であることを特徴とする、請求項1または2記載のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法。
【請求項4】
型内発泡成形体を乾燥温度に上昇させ始める直前まで、前記炭酸ガス濃度雰囲気下で養生することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法。
【請求項5】
型内発泡成形にて充填されるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の内部圧力が大気圧とほぼ等しい、請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の養生方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−255082(P2012−255082A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128717(P2011−128717)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】