説明

ポリオレフィン系樹脂組成物及び光拡散性シート

【課題】 軽量で、リサイクル可能で、かつ、光透過性、拡散性のバランスに優れ、光拡散性シート材料として有用なポリプロピレン系樹脂組成物及びそれよりなる光拡散性シートの提供。
【解決手段】 プロピレン系樹脂組成物(A)と、該プロピレン系樹脂組成物(A)と非相溶性の樹脂(B)とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物であって、相分離構造が、プロピレン系樹脂組成物(A)の海相と、樹脂(B)の島相とからなる海−島構造であり、かつプロピレン系樹脂組成物(A)の密度dと、樹脂(B)の密度dが、特定の式を満たすことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物及び光拡散性シートに関し、さらに詳しくは、軽量で、リサイクル可能で、かつ、光透過性、拡散性のバランスに優れ、光拡散性シート材料として有用なポリオレフィン系樹脂組成物及びそれよりなる光拡散性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明を保護するカバー等に用いる光拡散性のフィルム、シートとして、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などを主成分として用いた樹脂組成物が用いられてきた。照明を保護するカバー等として用いる場合には、照明の光を効率良く透過し、同時に部屋中を明るくするために効率良く光を拡散することが求められる。このために、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂を連続相に用い、その他の樹脂やフィラーなどを分散相に用いたものが報告されている(例えば、特許文献1〜3)。
特に、特許文献3においてはポリカーボネート樹脂を主として用いるものの中には、連続相としてポリカーボネート系樹脂を用い、分散相としてポリプロピレン系樹脂を用いるものが報告されている。
【0003】
一方、近年、経済性、リサイクル性、軽量化等の理由により、ポリカーボネート系樹脂に変わるものとして、連続相にプロピレン系樹脂を用いた発明が報告されている(例えば、特許文献4〜6)。
特許文献4〜6に記載されているプロピレン系樹脂を連続相などに用いた拡散板では全光線透過率や全ヘイズを測定することにより、透過性、拡散性を評価している。
【0004】
しかしながら、これらの特許文献に開示されているプロピレン系樹脂を使用したものは、透過性及び拡散性の両者を同時にバランスよく満たすものであるとはいえず、光拡散性のフィルムとした場合に、光拡散性が不十分であった。したがって、プロピレン系樹脂を使用した光拡散板においては、透過性、拡散性の両方において更なる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−003811号公報
【特許文献2】特開2001−031774号公報
【特許文献3】国際公開第09/016975号パンフレット
【特許文献4】特開2008−083660号公報
【特許文献5】特開2010−152230号公報
【特許文献6】特開2010−152229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、光透過性、拡散性のバランスに優れ、光拡散性シート材料として有用なポリオレフィン系樹脂組成物及びそれよりなる光拡散性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、プロピレン系樹脂組成物と、該プロピレン系樹脂組成物と非相容な樹脂とを用いた海−島構造を有するポリオレフィン系樹脂組成物であって、プロピレン系樹脂組成物の密度と、該プロピレン系樹脂組成物の密度と非相容な樹脂の密度との差が特定の範囲にあるときに上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、プロピレン系樹脂組成物(A)と、該プロピレン系樹脂組成物(A)と非相溶性の樹脂(B)とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物であって、
相分離構造が、プロピレン系樹脂組成物(A)の海相と、樹脂(B)の島相とからなる海−島構造であり、かつ
プロピレン系樹脂組成物(A)の密度dと樹脂(B)の密度dとが下記式(1)を満たすことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物が提供される。
0.015≦|d−d|≦0.050 (1)
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、プロピレン系樹脂組成物(A)と樹脂(B)との合計100重量部に対して、プロピレン系樹脂組成物(A)を50〜90重量部、樹脂(B)を10〜50重量部含有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物が提供される。
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、プロピレン系樹脂組成物(A)が、下記の(i)〜(v)の特性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体20〜100重量部と、プロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレン共重合体0〜80重量部とからなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物が提供される
(i)メタロセン系触媒を用いて、第1重合工程でプロピレン単独又はエチレン含量7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)を30〜95重量%、第2重合工程で成分(a)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)を70〜5重量%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(ii)メルトフローレート(MFR:230℃ 2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分の範囲にある。
(iii)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃の範囲にある。
(iv)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.0の範囲にある。
(v)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、樹脂(B)が、エチレン/α−オレフィン共重合体(B−1)及びスチレン系エラストマー(B−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、樹脂(B)が、エチレン/α−オレフィン共重合体(B−1)とスチレン系エラストマー(B−2)との両方を含むことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、エチレン/α―オレフィン共重合体(B−1)とスチレン系エラストマー(B−2)の重量比が、(B−1)/(B−2)=90/10〜10/90であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明のポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる光拡散性シートが提供される。
【0015】
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、厚さが1mmのとき、全光線透過率が50%以上、かつ、全ヘイズが50%以上であることを特徴とする光拡散性シートが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、軽量で、リサイクル可能で、かつ、透過性、拡散性のバランスに優れるため、光拡散性シートとして照明を保護するカバー等に用いた場合に直接高原の眩しさを感じないにも関わらず明るいという効果があり、光拡散性シート材料として有用なポリプロピレン系樹脂組成物である。したがって、該樹脂組成物を光拡散性シートとしたときに、透過性、拡散性の両方に優れ、軽量の光拡散性シートとすることができる。
また、一般にポリオレフィン系樹脂は環境負荷が低いことが知られているので本発明のポリオレフィン系樹脂組成物及び光拡散性シートは、従来のポリカーボネート樹脂組成物からなる光拡散性シートに比べて、環境負荷の懸念がより小さいものといえる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】温度昇温溶離分別(TREF)による溶出量及び溶出量積算を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、プロピレン系樹脂組成物(A)と、該プロピレン系樹脂組成物(A)と非相溶性の樹脂(B)とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物であって、相分離構造が、プロピレン系樹脂組成物(A)の海相と、樹脂(B)の島相とからなる海−島構造であり、かつプロピレン系樹脂組成物(A)の密度dと樹脂(B)の密度dとが、下記式(1)を満たすポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
0.015≦|d−d|≦0.050 (1)
また、本発明は、上記ポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる光拡散性シートに関する。
以下、ポリオレフィン系樹脂組成物の各成分及び光拡散性シートなどについて、詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」という表現を用いて前後に数値または物性値を挟んだ場合、その前後の数値または物性値を含む意味で用いることとする。また、本明細書においては、メルトフローレート、示差走査熱量測定、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、をそれぞれ、「MFR」、「DSC」、「GPC」と略記することがある。
【0019】
I.ポリオレフィン系樹脂組成物
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂組成物(A)と、該プロピレン系樹脂組成物(A)と非相溶性の樹脂(B)とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物であって、相分離構造が、プロピレン系樹脂組成物(A)の海相と、樹脂(B)の島相とからなる海−島構造であり、かつプロピレン系樹脂組成物(A)の密度dと、前記樹脂(B)の密度dとが下記式(1)を満たすことを特徴とする。
0.015≦|d−d|≦0.050 (1)
【0020】
1.プロピレン系樹脂組成物(A)
本発明で用いられるプロピレン系樹脂組成物(A)(以下、「樹脂(A)」と略称することがある。)としては、モノマーの主成分としてプロピレンを使用して得られる樹脂であって、その密度dが、樹脂(B)の密度dと、上記式(1)で示される特定の関係を満たすものであれば特に限定されず、プロピレン単独重合体、プロピレンを主成分とするプロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体等のポリプロピレン系樹脂等が挙げられ、これらは単独で使用されても、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
(1)プロピレン−エチレンブロック共重合体
プロピレン系樹脂組成物(A)の好ましい一例としては、特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体及び/又はプロピレン単独重合体もしくはプロピレン−エチレン共重合体からなるプロピレン系樹脂組成物(A−1)が挙げられる。
プロピレン系樹脂組成物(A−1)は、好ましくは、下記の(i)〜(v)の特性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体20〜100重量部及び/又はプロピレン単独重合体もしくはプロピレン−エチレン共重合体0〜80重量部とからなるものが挙げられる。
(i)メタロセン系触媒を用いて、第1重合工程でプロピレン単独又はエチレン含量7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)を30〜95重量%、第2重合工程で成分(a)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)を70〜5重量%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(ii)メルトフローレート(MFR:230℃ 2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分の範囲にある。
(iii)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃の範囲にある。
(iv)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.0の範囲にある。
(v)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
【0022】
前記(i)〜(v)の特性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体は、第1重合工程で、プロピレン単独又はエチレン含量7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)を30〜95重量%重合した後、第2重合工程で、第1重合工程よりも3〜20重量%多いエチレン量を含むプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)を70〜5重量%逐次重合することで得られる。
なお、ここでいうプロピレン−エチレンブロック共重合体とは、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)(以下、成分(a)ともいう。)と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)(以下、成分(b)ともいう。)を逐次重合することより得られる、通称でのブロック共重合体であり、必ずしも成分(a)と成分(b)とが完全にブロック状に結合されたものでなくてもよい。
【0023】
(1−1)成分(a)中のエチレン含量:[E]
第1重合工程で製造される成分(a)は、プロピレンーエチレンブロック共重合体のべたつきを抑制し、耐熱性を発現するために、融点が比較的高く、結晶性を有する、プロピレン単独重合体、もしくはエチレン含量が7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体であり、本明細書においては「プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)」にはプロピレン単独重合体も含む表現として用いることとする。エチレン含量が7重量%を超えると融点が低くなりすぎ、製品の耐熱性を悪化させる恐れがある。エチレン含量は5重量%以下が好ましく、3重量%以下が更に好ましい。尚、ペレットがべたつくと、ペレットを袋に入れて保管する際に、ペレット同士がくっついてしまうことがある。成分(a)はプロピレンの単独重合体であってもよいので、エチレン含量[E]の下限値は0である。
【0024】
(1−2)成分(b)中のエチレン含量:[E]
第2重合工程で製造される成分(b)は、プロピレン−エチレンブロック共重合体中でゴム弾性成分の役割を有し、耐衝撃性を付与するために重要な成分である。
成分(b)のエチレン含量の範囲は、成分(a)のエチレン含量との差[E]−[E]([E]gap)によって定義される。ゴム成分として耐衝撃性を付与する効果を十分に発揮するために、[E]−[E]は3〜20重量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは6〜18重量%、特に好ましくは8〜16重量%である。
[E]gapを、3重量%以上とすることで、耐衝撃性の効果を十分に付与することができる。また、20重量%以下であることにより、第1重合工程で製造される成分(a)との相溶性が得られ、プロピレン系樹脂組成物(A)の透明性の観点で好ましい。
【0025】
(1−3)成分(a)の割合:W(a)および成分(b)の割合:W(b)
プロピレン−エチレンブロック共重合体を構成する成分(a)の割合であるW(a)および成分(b)の割合であるW(b)の含有量比は、W(a)が30〜95重量%でありW(b)が70〜5重量%の範囲にあることが好ましい。
W(a)の割合が30重量%未満であると、製品のべたつき発生、かつ耐熱性が低下する恐れがある。他方、W(a)の割合が95重量%を越えるとエチレンープロピレンブロック共重合体のゴム弾性が不十分となり耐衝撃性が不十分となる恐れがある。好ましくは、W(a)の割合が40〜90重量%、更に好ましくは50〜80重量%の範囲であると良い。即ち、W(b)の割合は好ましくは60〜10重量%、更に好ましくは50〜20重量%である。
【0026】
(1−4)[E]と[E]及び各成分量W(a)とW(b)の特定
成分(a)、(b)の各エチレン含量及び量は、製造時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、例えば、以下の分析を用いることによって、より正確にこれらを特定することができる。
【0027】
(1−4−1)温度昇温溶離分別(TREF)による各成分量W(a)とW(b)の特定
プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当該業者によく知られるものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
Polym.Sci.;98,1−47(1990)
Polymer;36,8,1639−1654(1995)
本発明におけるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、成分(a)と成分(b)との各々の結晶性には大きな違いがあり、また、メタロセン触媒を用いて製造されることで各々の分子量分布が狭くなっていることから双方の中間的な成分は極めて少なく、双方をTREFにより精度良く判別することが可能である。
具体的な方法を図1のTREFによる溶出量及び溶出量積算を示す図を用いて説明する。TREF溶出曲線(温度に対する溶出量のプロット)において、成分(a)と成分(b)とはこれらの結晶性の違いにより、成分(a)と成分(b)の各々のTREF溶出温度T(a)とT(b)にその溶出温度のピークを示し、その差は十分大きいため、中間の温度T(c)(={T(a)+T(b)}/2)においてほぼ分離が可能である。
【0028】
また、TREF測定温度の下限は、本明細書の実施例における測定に用いた装置では−15℃であるが、成分(b)の結晶性が非常に低いあるいは非晶性成分の場合には本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある。(この場合には、測定温度下限(すなわち−15℃)において溶媒に溶解した成分(b)の濃度は検出される。)
このとき、T(b)は測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することが出来ないため、このような場合にはT(b)を測定温度下限である−15℃と定義する。
ここで、T(c)までに溶出する成分の積算量をW(b)重量%、T(c)以上で溶出する部分の積算量をW(a)重量%と定義すると、W(b)は結晶性が低いあるいは非晶性の成分(b)の量とほとんど対応しており、T(c)以上で溶出する成分の積算量W(a)は結晶性が比較的高い成分(a)の量とほぼ対応している。TREFによって得られる溶出量曲線と、そこから求められる上記の各種の温度や量の算出の方法は図1に例示するように行う。
【0029】
(1−4−2)TREF測定方法
本願発明においては、TREFの測定は具体的には以下のように測定を行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
【0030】
(1−4−3)各成分中のエチレン含量[E]と[E]の特定
(イ)成分(a)と成分(b)の分離
先のTREF測定により求めたT(c)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(c)にける可溶成分(b)とT(c)における不溶成分(a)とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules、21 314〜319(1988)に開示されたような測定方法をいう。具体的には、本明細書の実施例においては以下の方法を用いた。
【0031】
(ロ)分別条件
直径4.3mm、高さ150mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(5mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(c)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(c)に保持したまま、T(c)のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(c)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次いで10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間保持後、140℃の溶媒(o−ジクロロベンゼン)を1mL/分の溶媒流速で800mL流すことにより、T(c)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーをろ過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
【0032】
(ハ)13C−NMRによるエチレン含量の測定
上記分別により得られた成分(a)と(b)それぞれについてのエチレン含有量はプロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。なお、実施例で使用した機器は炭素核共鳴周波数100MHz以上の機器であり、以下に記載の機器と同等のものを用いてもよい。
機種:日本電子(株)製 GSX−400
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules,17 1950 (1984)等を参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は表−1の通りである。表−1中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules,10 536(1977))の記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
【0033】
【表1】

【0034】
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules,15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の[1]〜[6]の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) [1]
[PPE]=k×I(Tβδ) [2]
[EPE]=k×I(Tδδ) [3]
[PEP]=k×I(Sββ) [4]
[PEE]=k×I(Sβδ) [5]
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} [6]
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。従って、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1[7]
である。また、k は定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
【0035】
上記[1]〜[7]の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本発明に使用することのできるプロピレンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/または1,3−結合)が含まれ、それにより、以下の微小なピークを生じる。
【0036】
【表2】

【0037】
正確なエチレン含有量を求めるにはこれら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、本願発明のエチレン含有量は実質的に異種結合を含まないチーグラー触媒で製造された共重合体の解析と同じく[1]〜[7]の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行うことができる。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここでXはモル%表示でのエチレン含有量である。
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量[E]は、上記より測定された成分(a)と(b)それぞれのエチレン含量[E]と[E]及びTREFより算出される各成分の重量比率W(a)とW(b)重量%から以下の式により算出される。
[E]={[E]×W(a)+[E]×W(b)/100 (重量%)
【0038】
(1−5)メルトフローレート(MFR)
本発明で使用することのできるプロピレン−エチレンブロック共重合のメルトフローレート(MFR)は、0.5〜100g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜35g/10分である。MFRが0.5g/10分未満では成形が困難となる場合があり、100g/10分を超えると耐衝撃性が期待できなくなる場合がある。
メルトフローレート(MFR)は、プロピレン−エチレンブロック共重合の重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、温度230℃、2.16kg荷重で測定する値である。
【0039】
(1−6)融解ピーク温度(Tm)
本発明で使用されるプロピレン−エチレンブロック共重合の示差走査熱量計(DSC)により測定された融解ピーク温度(Tm)は、110〜150℃の範囲であることが好ましく、120〜140℃であるのがより好ましい。Tmが110℃未満のものは溶融されたプロピレン系樹脂組成物(A)の冷却固化速度が遅く、成形性を悪化させる恐れがあるため好ましくなく、150℃を超えると耐衝撃性が悪くなる恐れがあるため好ましくない。Tmを調整するには重合反応系へ供給するα−オレフィンの量を制御することにより容易に調整することができる。
ここで、Tmの具体的測定は、示差走査熱量計(DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときに描かれる曲線のピーク位置を、融解ピーク温度Tm(℃)とする。
【0040】
(1−7)分子量分布(Mw/Mn)
本発明で使用されるプロピレン−エチレンブロック共重合のゲルパーミエーション(GPC)法により測定された分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜4.0の範囲であることが好ましく、1.8以上3.0未満であるのがより好ましい。Mw/Mnが1.5未満のものは現在の重合技術では工業的規模で製造することが難しいため、実用的ではなく、4.0を超えると製品(ペレット)がべたつく恐れがあるため好ましくない。プロピレン−エチレンブロック共重合の分子量分布を調整する方法は、狭くする場合は、後述のメタロセン系触媒を用いたり、プロピレン−エチレンブロック共重合を重合後、有機過酸化物を使用し溶融混練することにより調整することができる。広くする場合は、2種以上のメタロセン触媒成分を併用させた触媒系や2種以上のメタロセン錯体を併用した触媒系を用いて重合することにより調整することができる。
ここで、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)で求められ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定して得られるものとする。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
【0041】
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380,F288,F128,F80,F40,F20,F10,F4,F1,A5000,A2500,A1000
各々が0.5mg/mlとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2ml注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する、粘度式の[η]=K×Mα は以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4 α=0.7
PP:K=1.03×10−4 α=0.78
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:WATERS社製 GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製 MIRAN 1A IR検出器(測定波長 :3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)を用いて1mg/mlの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
【0042】
(1−8)tanδ曲線のピークによる規定
本発明においては、相溶性を良好に保ち、透明性に維持するために、使用するプロピレン−エチレンブロック共重合体を構成する成分(a)と成分(b)とが相分離していないことが必要である。相分離の条件は、エチレン含量のみならず、分子量や組成によっても影響を受けるため、上記のエチレン含量の条件に加えて、以下に詳述するように固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが好ましい。
プロピレン−エチレンブロック共重合体が相分離構造を取る場合には、成分(a)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(b)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。逆に相溶性である場合には、両成分は分子のオーダーで混合しており、両成分のガラス転移温度の中間的な温度に単一のピークを有する。すなわち、相分離構造を取っているかどうかは、固体粘弾性測定における温度−tanδ曲線において判別可能であり、プロピレンーエチレンブロック共重合体の透明性を維持するためには、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが好ましい。
固体粘弾性測定とは、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。ここでは、周波数は1Hzを用い測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると0℃以下の温度領域で鋭い単一のピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは非晶部のガラス転移を観測するものであり、ここでは本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
【0043】
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法
(2−1)メタロセン系触媒
本発明に好適に用いることのできるプロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する方法は、メタロセン系触媒の使用を必須とするものである。
プロピレン−エチレンランダム共重合体において分子量及び結晶性分布が広いとベタツキやブリードアウトが悪化することは当該業者に広く知られるところであるが、本願発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体においても、ベタツキ及びブリードアウトを抑制するために、分子量及び結晶性分布が狭くなるメタロセン系触媒を用いて重合されることが必要である。
【0044】
メタロセン系触媒の種類は、本願発明の性能を有する共重合体を生成できる限りは、特に限定はされるものではないが、本願発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような成分(ア)、(イ)、及び必要に応じて使用する成分(ウ)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(ア):下記の式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(イ):下記(イ−1)〜(イ−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(イ−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体、
(イ−2)成分(ア)と反応して成分(ア)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(イ−3)固体酸微粒子
(イ−4)イオン交換性層状珪酸塩、
成分(ウ):有機アルミニウム化合物。
【0045】
(2−2)成分(ア)
成分(ア)としては、下記式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C4−a)(C4−b)MeXY
[ここで、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meはチタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。R、Rは水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を示す。a及びbは置換基の数である。]
【0046】
詳しくは、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基あるいはオリゴシリレン基、又は炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基などが例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基と炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
とRは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したRとRは、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
【0047】
以上において記載した成分(ア)の中で、本願発明に用いられるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基あるいはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、あるいはゲルミレン基で架橋された2,4−位置換インデニル基、2,4−位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
非限定的な具体例としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−イソプロピル−4−(3,5−ジイソプロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル−4−フェナントリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロビフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリドなどがあげられる。これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も好適な化合物として例示される。なお、触媒成分は本願発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本願発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
【0048】
(2−3)成分(イ)
成分(イ)としては、上述した成分(イ−1)〜成分(イ−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
ここで、成分(イ−1)、成分(イ−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
また、成分(イ)の非限定的な具体例としては、成分(イ−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(イ−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(イ−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウムなどを、成分(イ−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(イ)の中で特に好ましいものは、成分(イ−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
【0049】
(2−4)成分(ウ)
必要に応じて成分(ウ)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、
式 AlRaP3−a
(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Pは水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0050】
(2−5)触媒の形成
成分(ア)と成分(イ)および必要に応じて成分(ウ)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
1)成分(ア)と成分(イ)を接触させる。
2)成分(ア)と成分(イ)を接触させた後に成分(ウ)を添加する。
3)成分(ア)と成分(ウ)を接触させた後に成分(イ)を添加する。
4)成分(イ)と成分(ウ)を接触させた後に成分(ア)を添加する。
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
【0051】
本願発明で使用する成分(ア)と(イ)及び(ウ)の使用量は任意である。例えば、成分(イ)に対する成分(ア)の使用量は、成分(イ)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。成分(イ)に対する成分(ウ)の使用量は、成分(イ)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001〜100μmol、特に好ましくは0.005〜50μmolの範囲である。したがって、成分(ア)に対する成分(ウ)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは10−5〜50、特に好ましくは10−4〜5の範囲内である。
【0052】
本発明に好適に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体で使用される触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(イ)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0053】
(2−6)重合方法
(2−6−1)逐次重合
本発明に好適に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体を製造実施するに際しては、成分(a)と成分(b)を逐次重合することが必要である。
プロピレン−エチレン共重合体が単にプロピレンにエチレンを共重合させたランダム共重合体のときには、エチレン含量が少ない場合には柔軟性・耐衝撃性と透明性が十分でなく、柔軟性・耐衝撃性と透明性を向上させるためにエチレン含量を増加させると耐熱性が悪化し、これらの全てを満たすことは困難である。
そこで、本発明においてプロピレン−エチレンブロック共重合体は、第1重合工程と第2重合工程でエチレン含量が異なる成分を逐次重合したブロック共重合体であることが透明性と柔軟性・耐衝撃性、耐熱性全てをバランスさせるために必要である。
また、本発明では、成分(b)として分子量が低く単独ではべたつきやすい共重合体を用いる場合があるので、反応器への付着等の問題を防止するために、成分(a)を重合した後で成分(b)を重合する方法を用いることが必要である。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
【0054】
バッチ法の場合には時間と共に重合条件を変化させることにより単一の反応器を用いて成分(a)と成分(b)を個別に重合することが可能である。本願発明の効果を阻害しない限り、複数の反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には成分(a)と成分(b)を個別に重合する必要から2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要があるが、本願発明の効果を阻害しない限り成分(a)と成分(b)のそれぞれについて複数の反応器を直列及び/又は並列に接続して用いてもよい。
【0055】
(2−6−2)重合プロセス
重合プロセスは、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
成分(b)は炭化水素等の有機溶媒や液化プロピレンに溶けやすいため、成分(b)の製造に際しては気相法を用いることが望ましい。
成分(a)の製造に対してはどのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(a)を製造する場合には、付着等の問題を避けるために気相法を用いることが望ましい。
従って、連続法を用いて、まず成分(a)をバルク法もしくは気相法にて重合し、引き続き成分(b)を気相法にて重合することが最も望ましい。
【0056】
(2−6−3)その他の重合条件
重合温度は通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、大気圧に対する相対圧力で、0MPaより大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
第1重合工程で成分(a)、第二重合工程で成分(b)の逐次重合を行う場合、第二重量重合工程にて系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する場合には、第二重合工程のエチレン−プロピレンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については各種技術検討がなされており、一例として特公昭63−54296号、特開平7−25960号、特開2003−2939号などを例示することができる。本発明にも当該手法を適用することが望ましい。
【0057】
(3)プロピレン−エチレンブロック共重合体の構成要素の制御方法
本願発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体の各要素は以下のように制御され、本発明に好ましい構成要件を満たすよう製造することができる。
【0058】
(3−1)成分(a)
成分(a)については、エチレン含量[E]とTREFによる溶出温度T(a)を制御することが好ましい。
本発明では、[E]を所定の範囲に制御するためには、第1重合工程における重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比を、適宜調整すればよい。供給比率と得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含量の関係は、用いるメタロセン触媒の種類によって異なるが、供給比率の調整により必要とするエチレン含量[E]を有する成分(a)を製造することができる。
例えば、[E]を7重量%未満に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.3以下の範囲、好ましくは0.2以下の範囲とすればよい。
このとき、成分(a)は分子量分布が狭く、成分(a)のTREFによる溶出温度T(a)は[E]の増加に伴い低下する。
【0059】
(3−2)成分(b)
成分(b)については、エチレン含量[E]とTREFによる溶出温度T(b)と[η]cxsを制御することが好ましい。
本願発明では、[E]を所定の範囲に制御するためには、[E]と同様に、第二工程におけるプロピレンに対するエチレンの供給量比を制御すればよい。例えば、[E]を3〜27重量%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.005〜6の範囲、好ましくは0.01〜3の範囲とすればよい。
このとき、成分(b)もエチレン含量の増加に伴い若干結晶性分布の増加が見られるものの、成分(a)と同様に、T(b)は[E]の増加に伴い低下する。
【0060】
(3−3)W(a)とW(b)
成分(a)の量W(a)と成分(b)の量W(b)は、成分(a)を製造する第1重合工程の製造量と成分(b)の製造量の比を変化させることにより制御することができる。例えば、W(a)を増やしてW(b)を減らすためには、第1重合工程の製造量を維持したまま第二工程の製造量を減らせばよく、それは、第二重合工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたり、重合抑制剤の量を増やしたりすることにより容易に制御することができる。その逆も又同様である。
実際に条件を設定する際には、活性減衰を考慮する必要がある。すなわち、本願発明にて実施するエチレン含有量[E]及び[E]の範囲においては、一般にエチレン含有量を高くするためにプロピレンに対するエチレン供給量比を高くすると重合活性が高くなり、同時に活性減衰が大きくなる傾向にある。したがって、第二重合工程の活性を維持するために第1重合工程の重合活性を抑制する必要があり、具体的には、第1重合工程にてエチレン含有量[E]aを下げ、生産量W(a)を下げ、必要に応じて、重合温度を下げる及び/又は重合時間(滞留時間)を短くする、あるいは第二重合工程にてエチレン含有量[E]を上げ、生産量W(b)を上げ、必要に応じて、重合温度を上げる及び/又は重合時間(滞留時間)を長くするような方法で条件を設定すればよい。
【0061】
(3−4)ガラス転移温度Tg
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において求められるtanδ曲線がピークを示す温度であるガラス転移温度Tgが、0℃以下で単一のピークを持つことが好ましい。Tgが単一のピークを持つためには、成分(a)中のエチレン含有量[E]と成分(B)中のエチレン含有量[E]の差の[E]gap(=[E]−[E])を20重量%以下、好ましくは16重量%以下にし、実際の測定においてTgが単一のピークとなる範囲まで[E]gapを小さくすればよい。
成分(a)中のエチレン含有量[E]に応じて、成分(b)中のエチレン含量[E]を適正範囲に入るよう、成分(b)の重合時のプロピレンに対するエチレンの供給重量比を設定することで、所定の[E]gapを有するプロピレン−エチレンブロック共重合体を得ることができる。
また、本発明に用いられるような相分離構造を取らないプロピレン−エチレンブロック共重合体のTgは、成分(a)中のエチレン含有量[E]と成分(b)中のエチレン含有量[E]、及び両成分の量比の影響を受ける。本発明においては、成分(b)の量は5〜70重量%であるが、この範囲においてTgは成分(b)中のエチレン含有量[E]の影響をより強く受ける。
すなわち、Tgは非晶部のガラス転移を反映するものであるが、本願発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体において、成分(a)は結晶性を持ち比較的非晶部が少ないのに対し、成分(b)は低結晶性あるいは非晶性であり、そのほとんどが非晶部であるためである。したがって、Tgの値は、ほぼ[E]によって制御され、[E]の制御法は前述したとおりである。
【0062】
(4)プロピレン単独重合体もしくはプロピレン−エチレン共重合体
プロピレン系樹脂組成物(A−1)に用いられるプロピレン単独重合体もしくはプロピレン−エチレン共重合体としては、特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体としては密度0.90〜0.93のものを、プロピレン−エチレン共重合体としては0.88〜0.91のものを用いることができる。
【0063】
(5)プロピレン系樹脂組成物(A)の製造方法
プロピレン系樹脂組成物(A)の製造方法としては、特に限定されず、例えば、上記のプロピレン−エチレンブロック共重合体やプロピレン単独重合体と、場合により、プロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレン共重合体とを、場合によっては添加剤とともに、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等の通常用いられる手段に投入して混合した後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で180〜280°の温度範囲で溶融混練することにより製造することができる。
混練する順序は、特に限定されないが、一度に混練する方が分散性の理由により、好ましい。
本発明においては、上記のプロピレン−エチレンブロック共重合体を20〜100重量部、プロピレン単独重合体もしくはプロピレン−エチレン共重合体を0〜80重量部の割合で用いることが好ましい。上記範囲を超えると、全ヘイズが小さくとなるおそれがある。
【0064】
2.樹脂(B)
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂組成物(A)と非相溶性の樹脂(B)を含有する。本明細書において、「ポリプロピレン樹脂と非相溶性の樹脂(B)」とは、ポリプロピレン樹脂と相容性が低く、プロピレン系樹脂組成物(A)と配合したときに海−島構造を形成しうるものであれば種類は特に限定されるものではない。
ただし、プロピレン系樹脂組成物(A)の密度dと非相溶性の樹脂(B)の密度dとは、下記式(1)を満たすことが必要である。
0.015≦|d−d|≦0.050 (1)
プロピレン系樹脂組成物(A)の密度dと非相溶性の樹脂(B)の密度dとが、上記式(1)を満たさず、密度差の絶対値が0.015未満の場合は、全ヘイズが小さくなるおそれがあり好ましくない。一方、密度差の絶対値が0.050を超えると、全光線透過率が小さくなるおそれがあり好ましくない。
なお、密度は、JIS K7112に準拠し、23℃で測定した値であり、単位はg/cmである。
【0065】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物に用いられる樹脂(B)はプロピレン含量が20モル%以下であることが好ましい。より好ましくは10モル%以下、更に好ましくはプロピレンを含まない樹脂である。上記範囲を超えると、プロピレン系樹脂組成物(A)と配合したときに海−島構造を形成しなくなる場合があるため好ましくない。
【0066】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物に用いられる樹脂(B)は、プロピレン系樹脂組成物(A)に対して、前記式(1)を満たす樹脂を適宜選択して用いればよい。即ち、JIS K7112に基づいてプロピレン系樹脂組成物(A)の密度を測定し、それに合うような密度の樹脂(B)を選択すればよい。
例えば、プロピレン系樹脂組成物(A)の好適な例として挙げた、前記プロピレン系樹脂組成物(A−1)を用いる場合、その密度は通常、0.880≦d≦0.910の範囲におさまるため、樹脂(B)としてはその密度dが、0.830≦d≦0.863または0.893≦d≦0.960の範囲にあるものを選択すればよい。
また、樹脂(B)を決めてJIS K7112に基づく密度を測定し、前記式(1)を満たすようにプロピレン系樹脂組成物(A)を選択してもよい。
【0067】
また、一般的に透明性の樹脂において、密度差と屈折率の差との間には相関関係があることが知られている。ゆえに本願において規定している密度差は屈折率の差に置き換えて表示することが可能である。例えば前記した密度差の絶対値に関する式(1)を屈折率の差の絶対値で表すと、以下の式(2)となる。
0.009≦|D−D|≦0.030 (2)
(Dはプロピレン系樹脂組成物(A)の屈折率であり、Dは樹脂(B)の屈折率である。)
この場合も、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物に用いられる樹脂(B)は、プロピレン系樹脂組成物(A)に対して、前記式(2)を満たす樹脂を適宜選択して用いればよい。即ち、JIS K7105に基づいてプロピレン系樹脂組成物(A)の屈折率を測定し、それに合うような屈折率の樹脂(B)を選択すればよい。
【0068】
本発明において、樹脂(B)としては、エチレン/α―オレフィン共重合体(B−1)及びスチレン系エラストマー(B−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明において、樹脂(B)は1種類のみでも2種類以上を組み合わせて用いることもできるが、樹脂(B)として、エチレン/α―オレフィン共重合体(B−1)とスチレン系エラストマー(B−2)との両方を含むものが拡散率向上の理由から好ましい。エチレン/α―オレフィン共重合体(B−1)とスチレン系エラストマー(B−2)との両方を含む場合、エチレン/α―オレフィン共重合体(B−1)とスチレン系エラストマー(B−2)との重量比(B−1)/(B−2)は=90/10〜10/90であることが好ましく、85/15〜50/50であることがより好ましい。上記範囲を超えると、拡散率が低下するおそれがある。
【0069】
3.ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されず、一般に用いられる方法を使用することができる。
一例としては、上記プロピレン系樹脂組成物(A)の製造方法と同様の方法を用いることができ、上記のプロピレン系樹脂組成物(A)と、プロピレン系樹脂組成物(A)と非相溶性の樹脂(B)とを、場合によっては添加剤とともに、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等の通常用いられる手段に投入して混合した後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で180〜280°の温度範囲で溶融混練することにより製造することができる。
混練する順序は、特に限定されないが、一度に混練する方が分散性の理由により、好ましい。
また、樹脂(B)の形状としては、平均粒径0.1〜20μmの粒状のものが、光透過性と拡散性のバランスに優れるために好ましい。なお、前記平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
本発明においては、プロピレン系樹脂組成物(A)と樹脂(B)との合計100重量部に対して、プロピレン系樹脂組成物(A)を50〜90重量部、樹脂(B)を10〜50重量部の割合で用いることが好ましく、より好ましくはプロピレン系樹脂組成物(A)を55〜85重量部、樹脂(B)を15〜45重量部の割合で用いることがより好ましい。プロピレン系樹脂組成物(A)の割合が90重量部超えると、全ヘイズが低下するおそれがあり、プロピレン系樹脂組成物が50重量部以下だと耐熱性が低下するとおそれがある。
【0070】
4.ポリオレフィン系樹脂組成物の相分離構造
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、相分離構造が、プロピレン系樹脂組成物(A)の海相と、樹脂(B)の島相とからなる海−島構造を有する。
この形態は、例えば以下のようにして観察することができる。
ダイヤモンドナイフを装着したウルトラミクロトーム(例えば、ライカUC6)とクライオシステムを用いて、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を−120℃に冷却して切削し、その切削鏡面をイオンエッチングする。ポリマー種によりエッチング速度が異なるために、微細構造に対応した凹凸が形成され相構造の観察が可能になる。このように処理した試料を走査型電子顕微鏡(例えば、日立S800)で分散相構造が観察することができる。
【0071】
上記の相分離構造を持つ本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、前述した工程から得ることができる。しかし、混練する順序や、押出し温度を変更した場合には、例えば、低温で押出しした場合、分散性に問題があり、一方、高温で押出しした場合、樹脂が分解することにより、海−島構造が得られなくなったり、光透過・拡散性の物性バランスの優れた樹脂組成物を得ることが難しくなるおそれがある。
より簡便には本発明のポリオレフィン系樹脂組成物においては、樹脂(A)と樹脂(B)との合計で樹脂(A)が50重量%以上使用していれば、海−島構造からなるものとみなすこととする。即ち、樹脂(A)と樹脂(B)との合計で樹脂(A)が50重量%以上使用していれば、樹脂(A)を海相、樹脂(B)を島相を形成しているとみなされる。
【0072】
5.光拡散性シート
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、シートとしたときに全光線透過率が高く、光拡散性に優れるものである。したがって、光拡散性シートとして好適である。本明細書において、拡散性シートとは本発明のポリオレフィン系樹脂組成物からなるシートであって、その厚みが0.1〜5.0mmであるものを意味する。したがって、本発明のシートには、いわゆる一般にフィルムと呼ばれているものも含まれる。
本発明の光拡散性シートは、厚さが1mmのとき、全光線透過率が、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、85%以上であることが特に好ましい。また、本発明の光拡散性シートは、厚さが1mmのとき、全へイズが、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。全光線透過率と全ヘイズが、「全光線透過率が50%以上60%未満かつ全へイズが50%以上」又は「全光線透過率60%以上かつ全へイズ50%以上70%未満」であると、光透過性及び拡散性のバランス優れるものである。
なお、全光線透過率および全ヘイズは、成形シート片を用い、JIS K7105に準拠し測定した値である。
以上のとおり、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物及びこれを用いた光拡散性シートは、軽量で、ポリオレフィンによりリサイクル可能で、かつ、光透過・拡散性のバランスに優れ、光拡散性シート材料として有用である。
したがって、LED照明カバー、バックライト型液晶パネル、リアプロジェクタースクリーン等に好ましく適用することができる。
【実施例】
【0073】
以下において、本発明をより具体的にかつ明確に説明するために、本発明を実施例及び比較例との対照において説明し、本発明の構成の要件の合理性と有意性を実証するが、以下に示す実施例は本発明の実施態様の一例であり、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
各実施例及び比較例において、用いた物性測定は以下の方法で行い、プロピレン系樹脂組成物(A)、及びプロピレン系樹脂組成物(A)と非相溶性の樹脂(B)としては以下のものを使用した。
【0074】
1.測定法
(TREF測定)
TREF測定方法は前述した通りである。
[装置]
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ × 150mmステンレスカラム
カラム充填材 :100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式 :アルミヒートブロック
冷却方式 :ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布 :±0.5℃
温調器 :(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式 :空気浴式オーブン
測定時温度 :140℃
温度分布 :±1℃
バルブ :6方バルブ 4方バルブ
(試料注入部)
注入方式 :ループ注入方式
注入量 :ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度 :140℃
(検出部)
検出器 :波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長 :3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度 :140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ :センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
[測定条件]
溶媒 :o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度 :5mg/mL
試料注入量 :0.1mL
溶媒流速 :1mL/分
【0075】
(各成分量の算出)
TREFを用いて、前述した方法によって算出した。
【0076】
(エチレン含有量の算出)
前述の方法に従い、13C−NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンランダムコポリマーを基準物質として733cm−1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、ランダムコポリマー中のエチレン含量を測定した。ペレットをプレス成形により約500ミクロンの厚さのフィルムとしたものを用いた。
【0077】
(分子量分布)
前述の方法で測定した。
【0078】
(MFR測定)
MFR:
JIS K 7210に準拠し、2.16kg荷重にて230℃の温度で測定した。
【0079】
(DSC測定)
融解ピーク温度Tm:
セイコーインスツルメンツ社製示差走査熱量計(DSC装置)(製品名:RDC220U)を用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度を測定した。
【0080】
(2)試験片の作製
東芝機械製EC−100射出成形機により、成形温度200℃、金型温度40℃において、JISファミリー金型を用いて、各種試験片を成形した。各種試験片の厚みは、表−4〜表−6に記載した通りである。
【0081】
(固体粘弾性測定によるtanδピーク)
射出成形により得られた成形シートから10mm×18mm×2mmtの短冊状に切り出したものを試験片として用いた。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
【0082】
(密度)
JIS K7112に準拠し、23℃において測定した。単位はg/cmである。
【0083】
全光線透過率、全へイズ:
上記成形シート片を用い、JIS K7105に準拠し測定した。
【0084】
光学特性評価:
作製した厚さ1mmのシートをJIS K7105に準拠して、全光線透過率及び全へイズを測定した。なお、光学特性の評価は、測定値により、全光線透過率50%以上かつ全ヘイズ50%以上のものを合格、それ以外のものを不合格とした。更に合格のものについては、以下に示す通り、「◎」、「○」、「△」の3段階で評価した。この3段階評価の中でも「◎」が最も良好なものと評価した。
◎:「全光線透過率85%以上かつ全ヘイズ90%以上」
○:「全光線透過率60%以上85%未満かつ全へイズ70%以上」又は「全光線透過率85%以上かつ全へイズ70%以上90%未満」
△:「全光線透過率50%以上60%未満かつ全へイズ50%以上」又は「全光線透過率60%以上かつ全へイズ50%以上70%未満」
×:「全光線透過率50%未満」又は「全へイズ50%未満」
【0085】
拡散率の測定:
変角光度計GC5000L(日本電色工業社製)により、試料(厚さ:1.0mm)の透過光に対し受光部を1°間隔で自動変角させながら±85°範囲で各角度の透過強度を測定し、下記式によって、拡散率を算出した。尚、拡散率は大きいほど良好な拡散性を意味し、0.20以上であれば良好であり、0.30以上であると特に良好である。
(拡散率)=〔L(20)+L(70)〕/[2×L(5)]
=[T(20)/cos(20)+T(70)/cos(70)]/[2T(5)/cos(5)]
※但し、L:輝度、T:透過率 ()の値は角度(ラジアン)
【0086】
2.使用樹脂
(PP1)プロピレン−エチレンブロック共重合体
プロピレン系樹脂組成物(A)として使用するプロピレン−エチレンブロック共重合体(PP1)は、以下に従って製造した。
【0087】
(i)予備重合触媒の調製
(珪酸塩の化学処理)
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm、粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
【0088】
(珪酸塩の乾燥)
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様及び乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状、内径50mm、加温帯550mm(電気炉)
かき上げ翼付き回転数:2rpm
傾斜角:20/520
珪酸塩の供給速度:2.5g/分
ガス流速:窒素、96リットル/時間
向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
【0089】
(触媒の調製)
撹拌装置および温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。乾燥珪酸塩200gを導入し、n−ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、不純物、副生物を除去するために試料をn−ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調製した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。(r)−ジクロロ[1,1'−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)とn−ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、前記珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、n−ヘプタンを追加して5,000mlに調製した。
【0090】
(予備重合/洗浄)
続いて、槽内温度を40℃に昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みをデカンテーションにより2,400ml得た。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらにn−ヘプタンを5,600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5,600ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mM/L、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレンブロック共重合体の製造を行った。
【0091】
(ii)第一重合工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)を十分に乾燥し、内部を窒素ガスで十分に置換した。ポリプロピレン粉体床の存在下、回転数30rpmで攪拌しながら、反応器の上流部に上記の方法で調整した予備重合触媒を(予備重合パウダーを除いた固体触媒量として)0.568g/hr、トリイソブチルアルミニウムを15.0mmol/hrで連続的に供給した。反応器の温度を65℃、圧力を2.1MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.07、水素濃度が100ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、定常状態になった際の重合体抜き出し量は10.0kg/hrであった。
第一重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(成分(K1))を分析したところ、MFRは6.0g/10分、エチレン含有量は2.2重量%であった。
【0092】
(iii)第二重合工程
攪拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)に、第一重合工程より抜き出したプロピレン−エチレン共重合体を連続的に供給した。回転数25rpmで攪拌しながら、反応器の温度を70℃、圧力を2.0MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.453、水素濃度が330ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、重合体抜き出し量が17.9kg/hrになるように活性抑制剤として酸素を供給し、第二重合工程での重合反応量を制御した。活性は31.429kg/g−触媒であった。なお、第二重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体成分は、「成分(K2)」とした。
こうして得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体(PP1、成分(K))の各種分析結果を、表−3に示す。
なお、PP1の密度は0.886g/cmであり、また、PP1について固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線は、0℃以下の−14℃に単一のピークを有していた。
【0093】
【表3】

【0094】
PP1以外の樹脂としては、以下のものを使用した。
(PP2)プロピレン単独重合体
ノバテック(登録商標)PP MA3(日本ポリプロ社製、チーグラー触媒、MFR(JIS K7210,230℃、2.16kg荷重):11g/10分)
【0095】
プロピレン系樹脂組成物(A)と比相溶性の樹脂(B)として、以下のものを使用した。
(TPO1)エチレン・ブテン共重合体
タフマー(登録商標)A4050S(三井化学社製、密度:0.866、MFR(JIS K7210,230℃、2.16kg荷重):6.7g/10分)
(TPO2)エチレン・ブテン共重合体
タフマー(登録商標)A4085(三井化学社製、密度:0.887、MFR(JIS K7210,230℃、2.16kg荷重):6.8g/10分)
(TPO3)エチレン・プロピレン共重合体
EP07P(JSR社製、密度:0.859、MFR(JIS K7210,230℃、2.16kg荷重):0.6g/10分)
【0096】
(PE1)メタロセン系低密度ポリエチレン1:
カーネル(登録商標)KF380(日本ポリエチレン社製、密度:0.918、MFR(JIS K7210,190℃、2.16kg荷重):4.0g/10分)
(PE2)メタロセン系低密度ポリエチレン2:
カーネル(登録商標)KS260(日本ポリエチレン社製、密度:0.902、MFR(JIS K7210,190℃、2.16kg荷重):2.2g/10分)
(PE3)気相法リニア低密度ポリエチレン:
ノバテック(登録商標)PP UH411(日本ポリエチレン社製、密度:0.920、MFR(JIS K7210,190℃、2.16kg荷重):0.3g/10分)
(PE4)高密度ポリエチレン:
ノバテック(登録商標)PP HB432E(日本ポリエチレン社製、密度:0.957、MFR(JIS K7210,190℃、2.16kg荷重):0.3g/10分)
【0097】
(S−1)スチレン系エラストマー
ダイナロン(登録商標)4600P(JSR社製、密度:0.910、MFR(JIS K7210,230℃、2.16kg荷重):5.5g/10分)
【0098】
ポリオレフィン樹脂組成物の調製
実施例1〜4、比較例1〜2のポリオレフィン樹脂組成物においては、以下に記載した割合で配合した材料をドライブレンドした。ブレンドした樹脂を口径30mmΦのPMS30−32押出機(IKG社製)から、樹脂温度200℃、幅300mmのシート状に溶融押出しした。次いで、溶融シートをポリシング法の冷却ロール(ロール温度:60℃)に導いて冷却固化し、厚みが1.0mm、幅300mmのシートを作製した。作製したシートを用い、光学特性の評価をした。なお、いずれの場合もプロピレン系樹脂組成物(A)の方が、プロピレン系樹脂組成物(A)と比相溶性の樹脂(B)よりも多く使用されており、プロピレン系樹脂組成物(A)が海相を、プロピレン系樹脂組成物(A)と比相溶性の樹脂(B)が島相を形成していた。結果を表−4に示す。
【0099】
3.実施例及び比較例
(実施例1)
樹脂(A) PP1) 60重量% 密度0.886(PP1は以下同様)
樹脂(B) TPO1) 40重量% 密度0.866(TPO1は以下同様)
樹脂(A)中に分散した樹脂(B)(平均粒径0.4μm)
(実施例2)
樹脂(A) PP1) 60重量%
樹脂(B) TPO3) 40重量% 密度0.859(TPO3は以下同様)
(実施例3)
樹脂(A) PP1) 50重量% 樹脂(A)の密度0.899
PP2) 30重量%
樹脂(B) TPO1) 20重量%
(実施例4)
樹脂(A) PP1) 50重量% 樹脂(A)の密度0.899
PP2) 30重量%
樹脂(B) TPO3) 20重量%
【0100】
(比較例1)
樹脂(A) PP1) 60重量%
樹脂(B) TPO2) 40重量% 密度0.887(TPO2は以下同様)
(比較例2)
樹脂(A) PP1) 50重量% 樹脂(A)の密度0.899
PP2) 30重量%
樹脂(B) TPO2) 20重量%
【0101】
【表4】

【0102】
表−4より明らかなように、実施例1〜4は、プロピレン系組成物(A)と、最適な密度差のポリプロピレン樹脂と非相溶性の樹脂(B)を配合したもので、プロピレン系樹脂組成物(A)と、ポリプロピレン樹脂と非相溶性の樹脂(B)との密度差が本発明の規定範囲外である比較例1〜2に対して、全光線透過率はほぼ同等でありながら、全へイズが高く、光透過性、拡散性のバランスに優れた光拡散性シートであることが分かる。
【0103】
(実施例5〜10、比較例3、4)
以下に記載した割合で配合した材料をドライブレンドした。ブレンドした樹脂を口径30mmΦのPMS30−32押出機(IKG社製)から、樹脂温度200℃、幅300mmのシート状に溶融押出しした。次いで、溶融シートをポリシング法の冷却ロール(ロール温度:60℃)に導いて冷却固化し、厚みが1.0mm、幅300mmのシートを作製した。作製したシートを用い、光学特性の評価をした。なお、いずれの場合もプロピレン系樹脂組成物(A)の方が、プロピレン系樹脂組成物(A)と比相溶性の樹脂(B)よりも多く使用されており、プロピレン系樹脂組成物(A)が海相を、プロピレン系樹脂組成物(A)と比相溶性の樹脂(B)が島相を形成していた。結果を表−5に示す。
【0104】
(実施例5)
樹脂(A) PP1) 60重量%
樹脂(B) PE1) 40重量% 密度0.918(PE1は以下同様)
(実施例6)
樹脂(A) PP1) 60重量%
樹脂(B) PE3) 40重量% 密度0.920(PE3は以下同様)
(実施例7)
樹脂(A) PP1) 50重量% 樹脂(A)の密度0.899
PP2) 30重量%
樹脂(B) PE1) 20重量%
(実施例8)
樹脂(A) PP1) 50重量% 樹脂(A)の密度0.899
PP2) 30重量%
樹脂(B) PE3) 20重量%
樹脂(A)中に分散した樹脂(B)(平均粒径1.8μm)
(実施例9)
樹脂(A) PP1) 45重量% 樹脂(A)の密度0.900
PP2) 30重量%
S−1) 5重量%
樹脂(B) PE3) 20重量%
(実施例10)
樹脂(A) PP2) 80重量% 密度0.900(PP2は以下同様)
樹脂(B) PE3) 20重量%
【0105】
(実施例11)
樹脂(A) PP1) 60重量%
樹脂(B) PE2) 40重量%
(比較例3)
樹脂(A) PP1) 50重量%
PP2) 30重量%
樹脂(B) PE2) 20重量%
(比較例4)
樹脂(A) PP2) 80重量%
樹脂(B) PE4) 20重量%
【0106】
【表5】

【0107】
表−5より明らかなように、実施例5〜11は、プロピレン系組成物(A)と、最適な密度差の非相溶性の樹脂(B)とを配合したもので、プロピレン系樹脂組成物(A)と、ポリプロピレン樹脂と非相溶性の樹脂(B)との密度差が本発明の規定範囲外である比較例3、4に対して、全光線透過率、全へイズが共に高く、光透過性、拡散性のバランスに優れた光拡散性シートであることが分かる。
【0108】
(実施例12〜14)
以下に記載した割合で配合した材料をドライブレンドした。ブレンドした樹脂を口径40mmΦのT台式単軸シート成形機(プラ技研社製)から、樹脂温度230℃、幅400mmのシート状に溶融押出しした。次いで、溶融シートをポリシング法の冷却ロール(ロール温度:上50℃、中80℃、下50℃)に導いて冷却固化し、厚みが2.0mm、幅400mmのシートを作製した。作製したシートを用い、全光線透過率、全へイズ及び拡散率の測定を行った。結果を表−6に示す。
【0109】
(実施例12)
樹脂(A) PP1) 60重量%
樹脂(B) PE3) 40重量%
*実施例6と同処方
(実施例13)
樹脂(A) PP1) 50重量%
PP2) 30重量%
樹脂(B) PE3) 20重量%
樹脂(A)中に分散した樹脂(B)(平均粒径1.8μm)
*実施例8と同処方
(実施例14)
樹脂(A) PP1) 45重量%
PP2) 30重量%
S−1) 5重量%
樹脂(B) TPO3) 20重量%
*実施例9と同処方
【0110】
【表6】

【0111】
表−6より明らかなように、実施例12〜14は拡散率、光透過性、拡散性のバランスに優れた光拡散性シートであり、これらの中でも実施例14は拡散率、光透過性、拡散性のバランスが特に優れたものであった。
【0112】
以上のとおり、表−4〜表−6に示す結果から、実施例1〜14と比較例1〜4とを対比すると、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の特定事項である「プロピレン系樹脂組成物(A)と、該プロピレン系樹脂組成物(A)と非相溶性の樹脂(B)とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物にであって、相分離構造が、プロピレン系樹脂組成物(A)の海相と、前記樹脂(B)の島相とからなる海−島構造であり、かつプロピレン系樹脂組成物(A)の密度dと前記樹脂(B)の密度dとが前記式(1)を満たすポリオレフィン系樹脂組成物」との要件を満たさない方法による比較例1〜4に示す組成物は、全光線透過率と全ヘイズとのバランスが良いとは言えず、光学特性評価が実施例1〜14の組成物に対して見劣りしている。
これらの比較例に比べて、本発明によるポリオレフィン系樹脂組成物は、実施例1〜14に示すとおり、何れも光学特性評価が好ましく、また、拡散率も良好であることが確認された。
そのため、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物及びこれを用いた光拡散シートは、拡散率が大きく、光透過・拡散性のバランスに優れた光拡散性シートであることが確認され、LED照明カバーなどの点光源を拡散させる用途に好適に用いることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明おポリオレフィン系樹脂組成物は、光透過性、拡散性のバランスに優れ、光拡散性シートとして有用であるので、LED照明カバーなどの点光源を拡散させる用途に好適に用いることができる。また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物及び光拡散性シートは、プロピレン系樹脂組成物を用いているため、軽量で、リサイクル可能である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系樹脂組成物(A)と、該プロピレン系樹脂組成物(A)と非相溶性の樹脂(B)とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物であって、
相分離構造が、プロピレン系樹脂組成物(A)の海相と、樹脂(B)の島相とからなる海−島構造であり、かつ
プロピレン系樹脂組成物(A)の密度dと樹脂(B)の密度dとが下記式(1)を満たすことを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
0.015≦|d−d|≦0.050 (1)
【請求項2】
プロピレン系樹脂組成物(A)と樹脂(B)との合計100重量部に対して、プロピレン系樹脂組成物(A)を50〜90重量部、樹脂(B)を10〜50重量部含有することを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
プロピレン系樹脂組成物(A)が、下記の(i)〜(v)の特性を有するプロピレン−エチレンブロック共重合体20〜100重量部と、プロピレン単独重合体又はプロピレン−エチレン共重合体0〜80重量部とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
(i)メタロセン系触媒を用いて、第1重合工程でプロピレン単独又はエチレン含量7重量%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(a)を30〜95重量%、第2重合工程で成分(a)よりも3〜20重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(b)を70〜5重量%逐次重合することで得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
(ii)メルトフローレート(MFR:230℃ 2.16kg荷重)が0.5〜100g/10分の範囲にある。
(iii)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度(Tm)が110〜150℃の範囲にある。
(iv)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜4.0の範囲にある。
(v)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
【請求項4】
樹脂(B)が、エチレン/α−オレフィン共重合体(B−1)及びスチレン系エラストマー(B−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂(B)が、エチレン/α−オレフィン共重合体(B−1)とスチレン系エラストマー(B−2)との両方を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項6】
エチレン/α―オレフィン共重合体(B−1)とスチレン系エラストマー(B−2)の重量比が、(B−1)/(B−2)=90/10〜10/90であることを特徴とする請求項5に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる光拡散性シート。
【請求項8】
厚さが1mmのとき、全光線透過率が50%以上、かつ、全ヘイズが50%以上であることを特徴とする請求項7に記載の光拡散性シート。

【図1】
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【公開番号】特開2013−60559(P2013−60559A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201345(P2011−201345)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】