説明

ポリオレフィン類の加工に用いる添加剤のコンセントレート

ポリプロピレンのドライ着色および紡糸加工用に特に好適な、ポリブテン-1とポリプロピレンの混合物および60重量%以下の1種またはそれ以上の添加剤を含むコンセントレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン類、好ましくはポリプロピレンのドライ着色(bulk colouring)に特に好適な、ポリブテン-1とポリプロピレンの混合物および1種またはそれ以上の添加剤を含むコンセントレート(concentrates)に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン類が受ける各種の加工は、射出成形またはブロー成形、および紡糸を含む。特に、主に連続的に行われるポリオレフィン樹脂類の繊維の製造においては、着色段階は、現在では予想以上に重要な段階である:これは、一方では、デニールまたは半径で定義される繊維の断面が繊維製造業者自身の要求により次第に小さくなっていることが理由であり、かつ他方では、今日の紡糸工程が早い速度になっていることが理由である。
【0003】
「マスターバッチ類」としてよく知られているコンセントレートは、添加剤の導入のために各種のポリオレフィン類に添加される製品である。したがって、一般にマスターバッチは、ポリマー性担体中に高濃度で分散および/または分布する、一種またはそれ以上の顔料/着色剤、充填剤またはその他の添加剤の混合物からなる。マスターバッチにおける顔料の分散の悪さ、およびそれ故に着色される樹脂物質におけるマスターバッチの分散の悪さは、結果として生じる着色の不均一性を引き起こし、そして繊維製造においては、良好に解離されていない顔料によって起こるフィラメントの頻繁な破断が原因で、低い製造歩留まりを引き起こす。
【0004】
上記の問題が存在しているポリプロピレンのドライ着色の特定の場合、商業的に入手可能な処方により、同じポリプロピレンまたは代わりにポリエチレンでもよい担体における、顔料の分散に、ステアリン酸エステル類またはパラフィン類のようなワックス類および分散剤類を使うことが考案されている。その非極性の性質のために、ポリオレフィン類は(極性の)有機顔料に対して非常に低い親和性であるとみなされるため、分散剤の使用が必要である。しかしながら、ワックス類(ステアリン酸エステル類および/またはパラフィン類)の使用は避けられないが、障害要因である。なぜなら、特定の用途(例えば、繊維の押出成形)においては、それらの存在が最終製品の品質に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
【0005】
担体中の顔料の分散に対する重要なパラメーターは、担体の結晶化度であることが知られている。実際、着色剤または顔料は、結晶領域のラメラの間に入ることはできず、担体の半結晶質領域により容易に挿入される。
【0006】
ポリオレフィン繊維の押出工程の特定の場合においては、さらにこの工程の間に伸長応力(elongation stress)が非晶質領域で緩和されることが知られており:結晶構造で剛性化されない領域における鎖の延伸が、ポリマーの結晶部分に比例する程度でポリマーの紡糸を可能にする。過剰の応力、すなわち非晶質領域が対応できない応力は、ポリマー自体の結晶部分において緩和され、このことは従って、特に現行の紡糸工程の重要な条件においては、物質の強度にとって基本的に重要である。
【0007】
例えば、文献JP2000178361号は、ポリプロピレン、顔料およびポリエチレン系ワックスを含む、プラスチック着色用マスターバッチ類を記載している。
文献JP5179009号は、ポリエチレンぺレット(glanules)のような熱可塑性樹脂、ポリブテンのような液状変性剤および低密度ポリエチレンのような第二の熱可塑性樹脂を含む、良好な分散性を有する変性熱可塑性樹脂マスターバッチの製法を記載している。
したがって、マスターバッチ用の担体の選択は、添加剤の効果的な分散を実現するために極めて重要なことは明らかである。
【0008】
上述のように、ポリプロピレンもまた担体として知られ、この場合は着色および紡糸工程での無視できない問題を避けるために、顔料が容易に溶融物質中に組み入れられるように充分に高度の高温流動性であるが、紡糸工程での高い延伸力に耐えられるような、半結晶質ポリプロピレンを使用する必要がある。
【0009】
担体として機能するポリマーの非晶質部分に対する結晶の比率は、ポリマー繊維類用のマスターバッチの処方において重要な要素であることは明らかである。紡糸の特定の場合には、さらに多くの因子が均一に着色される繊維の製造に寄与するということは明らかで、また加工要件およびフィラメント径(デニール)の要求が、製造業者が着色段階の条件を常に注意深く評価し決定しなければならないということを意味することも明らかである。
【0010】
したがって、ポリオレフィン類のドライ着色で使用するマスターバッチの製造に用いることのできるポリマー性担体は、解離および分散し難い着色剤および/または顔料を含む工程で必要とされ、特に繊維押出工程においては、それは上記のような重要な側面をもっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、その効果が製造条件の変動に大きく影響されない、ポリオレフィン類に添加剤を添加するための担体およびそれ故にマスターバッチを提供することである。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、担体およびそれ故に低デニールの連続ヤーンを製造するための紡糸工程で使用可能な、したがって顔料の「分散(dispersion)」と「分散性(dispersibility)」を促進するマスターバッチを提供することであり、第1の用語は、着色料および/または顔料が解離してミクロ粒子になり担体中に均一に分散する能力のことであり、第2の用語は、着色料および/または顔料を含むマスターバッチが、高濃度で取り込まれた場合に、着色される物質の中に均一に分散する能力のことであり、したがってこの物質の中に着色料および/または顔料を分散させる能力のことである。
【0013】
前記の目的は、請求項で定義されるように、1−ブテンのポリマー(短く「ポリブテン−1」と呼ばれる)およびプロピレンのポリマー(「ポリプロピレン」と呼ばれる)を含む組成物を使用することで達成された。
【0014】
文献US3455871号は、オレフィン系ポリマー類の着色工程中での添加剤の分散を促進するための担体として、1−ブテンのホモおよびコポリマーの使用を記載している。しかしながら、その文献の中にはポリプロピレンとのブレンドは言及されていない。
【0015】
さらに、特許文献US4960820号は、繊維類と同様に、良好な光学的性質と良好な加工性で特徴付けられるフィルム類の製造に用いられる、アイソタクチックポリブテン−1(100と1000の間のメルトインデックスを有し、10重量%以下の量が添加される)と、少なくとも90重量%に等しい量のポリプロピレン、および0.1と1重量%の間の濃度で存在する添加剤の混合物からなるポリマー組成物を記載している。しかしながら、その文献は添加剤を分散させるためのマスターバッチの調製および使用を記載していない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに出願人は、コンセントレート用担体として、ポリブテン−1が好ましくは10重量%に等しいかそれ以上の量が存在する、ポリブテン−1およびポリプロピレンを含む組成物を用いることで、ポリオレフィン類とのブレンド段階において添加剤の分散と分散性がさらに促進されることを見出した。
【発明の効果】
【0017】
特に、本発明は、ポリプロピレン繊維の押出工程中の着色段階を円滑にし、その結果、担体中に顔料が分散し損ない、それ故にポリマーの紡糸工程において押出機ヘッドの下流に位置するフィルターが詰まり、圧力の相当な増加を起こすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
どんな理論にも関連付けされることを望まないが、その二元系混合物を使用する可能性は、ポリブテン−1がポリプロピレンと類似した構造特性をもつという観察から生じた。
【0019】
担体混合物中の、ポリブテン−1とポリプロピレンの間のどのような比率も、後で示すように補足図面を参照すると、少なくとも顔料の軽度の分散性を与えることを見出した。
【0020】
さらに詳しくは、本発明は、10重量%〜35重量%のポリブテン−1と90重量%〜65重量%のポリプロピレンとを含む担体組成物の、顔料の分散および分散性のための使用に関する。さらにより詳しくは、本発明は、30〜35重量%のポリブテン−1と70〜65重量%のポリプロピレンとを含む担体組成物の使用に関する。
【0021】
ポリプロピレンの紡糸工程の場合、本発明は25〜35重量%のポリブテン−1と75〜65重量%のポリプロピレンを含む担体の使用に関する。なぜなら、ポリブテン−1の比率が25%以下の場合、得られるマスターバッチは繊維用には良好な製品と見なすことはできず、一方35重量%以上の濃度の場合、顔料の分散性の増加は極わずかで、何よりもポリブテン−1のコストに見合わないからである。
本発明は、それが属する化学的範疇に限定されない、あらゆる添加剤の分散と分散性のために好適である。
【0022】
ポリブテン−1のメルトフローレートが添加剤の良好な分散を与えることを促進し得る要因であることが見出され、メルトフローレートの高い値は、担体中の添加剤のより良好な分散を与えるとみなされる。ポリブテン−1については、好ましくは、約100〜1000g/10分、より好ましくは100〜400g/10分のメルトフローレートが、有利であることが分かった(ASTM D1238の条件Eにより、190℃/2.16kgで測定)。
【0023】
本発明のコンセントレートに好ましく用いられるポリブテン−1は、立体特異触媒によるブテン−1の重合で得られた、半結晶質で高度にアイソタクチックな(特にNMRを使ったmmmmペンタド/全ペンタドおよび0℃におけるキシレン可溶分重量分量によって測定されたアイソタクチシティが96〜99%を有する)直鎖状ホモポリマーであり、またポリプロピレンとの二元系混合物は、既に言及したように、文献に記載されている。ブテン−1のコポリマーが用いられる場合、やはり0℃におけるキシレンに不溶な成分で表わされる、アイソタクチシティ指数は好ましくは60%に等しいかそれ以上である。好ましくは、本発明の担体に用いるポリブテン−1は、結晶2型(最初に形成され、動力学的に有利な)の融点が81〜109℃である。
【0024】
ブテン−1の好適なポリマー類は、ホモポリマー、および好ましくは30モル%以下のオレフィン系コモノマー類(特にエチレンと、5〜8個の炭素原子を含むアルファ−オレフィン類)を含むコポリマー類の両方である。これらのポリマー類は、例えばブテン−1の低圧チーグラー−ナッタ重合、例えば塩化マグネシウム上に担持されたTiCl3またはチタンのハロゲン化化合物および好適な助触媒(特にアルミニウムのアルキル化合物類)をベースとした触媒でのブテン−1(およびあらゆるコモノマー類)の重合により得ることができる。高い値のメルトフローレートは、過酸化物類によるポリマーの後処理によって得られる。本発明の担体の中で用いられるブテン−1のポリマー類は、室温において固体のポリマーである。
【0025】
PB0800ポリブテン−1(Basellにより販売)が、本発明のコンセントレートの中で特に好適に用いられる。これは、190℃/2.16kgにおけるメルトフローレートが200g/10分の値をもつホモポリマーである。
【0026】
このポリマーの代表的な物理的性質が次の表に示される。
【表1】

【0027】
本発明のコンセントレートの中で使用できるプロピレンポリマー類は、区別なく、プロピレンのアイソタクチック結晶性ホモポリマー類またはコポリマー類とすることができる。コポリマー類の中では、85重量%以上のプロピレンを含む、プロピレンとエチレンおよび/またはCH2=CHRアルファ−オレフィン類[式中、Rは2〜8個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1)である]とのアイソタクチック結晶性コポリマー類が特に好ましい。前記のプロピレンのポリマー類のアイソタクチシティ指数は、沸騰ヘプタンあるいは室温(約25℃)におけるキシレンに不溶な画分として測定される、好ましくは90以上かまたはそれに等しい。
【0028】
用語「添加剤」、「顔料」および「充填剤」という用語は、一般にこの分野では、工程中にポリマー類に添加される物質を示すために用いられる。
特に、用語「顔料」は、カーボンブラック、二酸化チタン(TiO2)、酸化クロム類およびフタロシアニン類のような有機および無機物質を包含する。
用語「充填剤」は、タルク、炭酸塩類およびマイカのような物質を包含する。
顔料および充填剤は共に、一般的な添加剤の定義の中に包含される特定の例である。
【0029】
顔料および充填剤に加えて、用語「添加剤」はまた、一般に以下に挙げられる物質の範疇を包含する。
1)安定剤
安定剤の例は:
A)抗酸化剤、例えばステアリン酸塩類、炭酸塩類および合成ハイドロタルサイト;
B)光安定剤、例えば、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、カーボンブラックのようなUV吸収剤;一般にニッケルの有機錯体類から選択される「消光剤」;HALS(ヒンダードアミン系光安定剤);
C)酸化防止剤、例えばフェノール類、亜リン酸塩類、ホスホナイト類およびチオエステル類やチオエーテル類のような酸化防止剤に対して相乗作用のある化合物類
である。
【0030】
2)加工補助剤および変成剤
前記の添加剤の例は:
D)核剤、例えばジベンジリデンソルビトール、アジピン酸、安息香酸、安息香酸ナトリウムおよびアジピン酸ナトリウムのような有機カルボン酸類およびその塩類;
E)スリップ剤、例えばエルクアミド、オレアミド;
F)粘着防止剤剤、例えば二酸化シリコン(SiO2)、合成ゼオライト類;
G)滑剤および帯電防止剤、例えばグリセロールモノステアレート、ワックス類およびパラフィンオイル類、ポリオキシエチレンアミン類;
H)分子量および流動学的性質の変成剤、例えば過酸化物類
である。
【0031】
特に、本発明のコンセントレートは、ポリオレフィン類の中での固体物質の分散に特に好適であることがわかる。したがって、添加剤が室温で固体であるコンセントレートが好適である。
【0032】
本発明のコンセントレート中の添加剤は、コンセントレートの全重量に対して、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%、特に20〜40重量%の量で存在する。したがって、コンセントレートは:
A)40重量%〜95重量%、好ましくは50重量%〜95重量%、特に60重量%〜80重量%の、
1)A)の全重量に対して、10重量%〜35重量%、好ましくは25重量%〜35重量%、より好ましくは30重量%〜35重量%のポリブテン−1;
2)A)の全重量に対して、90重量%〜65重量%、好ましくは75重量%〜65重量%、より好ましくは70重量%〜65重量%のポリプロピレン
を含む組成物:
B)5重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜50重量%、特に20重量%〜40重量%の1種またはそれ以上の添加剤
を含み、得られる。
前記のA)およびB)の比率は、もちろんコンセントレート全重量に対してである。
【0033】
本発明のコンセントレートは、オレフィン系ポリマー類の加工分野で従来公知の方法と装置を用いて、前記の成分を混合することにより調製することができる。特に、ポリオレフィンベースのマスターバッチの製造で最もよく用いられる、本質的に二種類の方法:
1)ドライブレンド法(dry blend);
2)押出法。
がある。
【0034】
1)ドライブレンド法は、本質的に、ブレンド中の成分のドライ混合(dry mixing)(必要であれば粉砕の後の混合)からなり、
a)微粉砕器(切断機付きまたはディスク付き、極低温装置付きまたは室温で);
b)スクリーン;
c)ミキサー(連続またはターボミキサー)
ような装置の使用が考えられる。
【0035】
2)押出法は、ブレンド中の成分の流動相での均質化からなる、この方法は、後に続く加工が粉末としてであるか、ぺレットとしてであるかによって、それぞれ適切な押出工程の前にドライブレンド段階を考えても考えなくてもよい。この工程の多くの段階および装置は、以下のようである:
a)必要であればドライブレンド;
b)供給(重量または容量供給を使用);
c)押出(単軸スクリューあるいは二軸スクリュー押出機を使用;後者は低速または高速の同方向回転または異方向回転である);
d)冷却(水中または冷却ベルト上で);
e)ぺレット化(切断装置によって、または押出機ヘッドでの切断で);
f)均質化(均質化サイロ中で)および梱包。
【0036】
本発明のコンセントレートは、プロピレンの結晶性ホモポリマー類およびコポリマー類と、有利にブレンドできる。特に、本発明のコンセントレートとブレンドし得る、好ましいオレフィン系ポリマー類の例は:
−プロピレンの結晶性ホモポリマー類、特に好ましくは93%以上のアイソタクチシティ指数を有するアイソタクチックホモポリマー類;
−コモノマー類(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテン)の全含量がコポリマーの重量に対して0.05〜20重量%である、プロピレンとエチレンおよび/またはC4−C10アルファ−オレフィン類との結晶性ポリマー類;
−LDPE、HDPE、LLDPEのような、エチレンのポリマー類およびコポリマー類;
【0037】
−限定された量(好ましくは1〜10重量%)の、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエンおよびエチリデン−1−ノルボルネンのようなジエン類を含んでもよい、エチレンとプロピレンおよび/またはC4−C10アルファ−オレフィン類との弾性コポリマー類;
−一般に公知の方法にしたがって溶融状態で成分を混合するかあるいは逐次重合によって製造され、一般に前記の弾性部分の量を5〜80重量%含む、上記のプロピレンの結晶性ホモポリマーまたはコポリマーおよび上記のエチレンの弾性コポリマーを含む弾性部分からなる弾性熱可塑性組成物類;
−上記の弾性熱可塑性組成物とブレンドされてもよい、本発明のコンセントレートの担体に関連して既に記載したブテン−1のホモポリマー類およびコポリマー類
である。
【0038】
このようにして、コンセントレート中にもともと存在する添加物を含むポリオレフィン系組成物が得られ、仕上げられた(製造された)製品を得るのに必要な加工のための準備が整っている。
ブレンドの方法は、既に記載した本発明のコンセントレートの成分のブレンドのものと同様である。
【0039】
ここで、本発明を、具体的な限定されない実施例および添付図(図1)を参照しながら詳細に記載する。添付図(図1)は、二元系混合物中のポリブテン−1の割合が増加することによるポリマー物質中の顔料の分散指数の変化のグラフである。
【0040】
本発明は、次いで最終のマスターバッチ(担体と添加された顔料)がポリプロピレンの繊維への二次加工(conversion)中にその着色に用いられるときに常の担体中の顔料の分散を評価するための試験を参照して詳細に記載する。実際、早くから気づかれているようにポリプロピレンの加工法の中で、繊維への二次加工に関連するものが着色段階に関して最も重要であることがわかっているので、この試験にはマスターバッチに入っているポリプロピレンの紡糸を含める。
【0041】
200g/10分(189℃/2.16kgで測定)に等しいメルトフローレート(MFR)および124〜125℃の融点(MP)を有するポリブテン−1を使用して、二元系混合物を調製した。ポリブテン−1を0〜35%の間の量で、25g/10分のMFR(ASTM D1238Lに従って測定)および3.5重量%の室温におけるキシレン可溶分画分の含量を有するポリプロピレンホモポリマーに添加し、得られた二元系混合物はその都度マスターバッチの80%を構成し、残りは顔料とした。
使用する顔料は、CINQUASIA Red B RT−790Dで、非常に解離し難くかつ分散し難いことで知られているキナクリドン着色料類の顔料である。
【0042】
次いで、得られた二元系混合物中での顔料の分散と分散性を、いわゆる「フィルターテスト」で評価した。これは、ポリマー紡糸工程において押出ヘッドの下流に位置するフィルター上で流動物質によって作られる圧力の変動の監視に基づいている。特に、参照として測定する中性の樹脂に対する、マスターバッチによって、あるいはさらによくはフィルター上に堆積する分散していない顔料によって作られる圧力の増加を測定する。
実際には、中性の参照樹脂(neutral reference resin)が押出紡糸装置中を通過する間に、マスターバッチが同じところを通過する前と後でのフィルター近傍の圧力を測定する。
【0043】
このテストを用いて、次のような指数:
I=(Pfinal−Pinitial)/g
(式中、Pinitialは中性の参照樹脂の通過の最後であるが、マスターバッチの導入前に測定した圧力を表し、Pfinalは次の中性の参照樹脂の通過の間に測定される、マスターバッチの通過後の圧力を表し、gは濾取した顔料のグラム数を表し、Iは分散の指数であり、
−指数I≦0.25 紡糸用に最適な製品
−指数0.25<I≦0.35 紡糸用に良好な製品
−指数0.35<I≦0.5 評価を受けて使用される紡糸用製品
−指数>0.5 紡糸用には推奨されない製品
である)
を計算することで担体を評価することができる。
【0044】
担体中のポリブテン−1の量を変化させて、多種のマスターバッチ類を調製した:担体の合計量を基準にして、それぞれ0、10、15、20、25、35%である。
したがって、ポリブテン−1の量が次第に増加する(前の段落で述べたように)担体を含む多種のマスターバッチ類に対応して、これから記載する段階と測定を6回達成し、その都度Iの値を計算した。
【0045】
このように、予め押出され、ペレット化され、かつ140gの顔料を含むマスターバッチ(担体プラス顔料)700gをホッパーに充填した。次いで、中性の参照として使用するのと同じ樹脂からなる支持樹脂を、1kgの材料が得られるまで、つまり300gの量を添加した。この樹脂はマスターバッチを希釈する機能を有する。そうでなければマスターバッチは、特にマスターバッチにおける他の顔料の濃度で、フィルター上に過剰な負荷を作る。このようにして得られたポリマー組成物を、押出機で45rpmで、種々の押出しゾーンが240℃、270℃、280℃の温度を適用して押出した。次いで、押出機の下流から排出された樹脂を、20μmのフィルターに通した。この場合、中性の参照樹脂は、ASTM 1238の条件Eにより測定された2g/10分のメルトフローレートを有する低密度ポリエチレン(LDPE)からなっていた。
【0046】
次の表に示す結果が得られた。
【表2】

【0047】
結果から明らかなように、担体中に100%ポリプロピレンを含むマスターバッチは繊維の着色用には適切ではなく:顔料は担体中に分散せず、フィルターを詰まらせ、かなりの圧力上昇を起こす。
担体中へたとえ少ない比率でさえポリブテン−1を導入することで(15%)、フィルター上の圧力をかなり減少させ、良好な品質と見なされる製品をもたらす。
【0048】
分散指数Iの変化を添付図(図1)に示す。このグラフは、担体中のポリブテン−1の比率を増加させることが、ポリマー繊維の着色用に最良であると見なされる製品に達する(25〜35%の比率)までに、マスターバッチ中の顔料の分散をどのように改善するかを明確に示している。
【0049】
添付図に示された曲線の推移に基づくと、35%以上では分散指数はほぼ一定の値になる傾向にあると推察され、そのことは担体混合物中のポリブテン−1の量を増加することを正当化しない。
したがって、ポリプロピレンの紡糸における、本発明の好ましい形式は、担体中のポリブテン−1の使用比率が25〜35%に等しく、好ましくは30%に等しいと考えられる。
【0050】
どんな理論にも関連付けることは望まないが、この驚くべき結果は、一方ではポリブテン−1の流動学的特性のためとみなされ、その高い流動性が担体中の顔料の分散に有利に働く。結果は、また他方では、ポリプロピレンの結晶化プロセスへの影響のため(ポリブテン−1は、それと完全に流動学的におよび結晶的に混和性を示す)とみなされ、このことは非晶質画分の増加、したがって顔料の組み込み部位の増加をもたらす。顔料はこうして流動物質の中により良好に組み込まれる。
【0051】
したがって、この二元系混合物の使用は、顔料の最良の分散と分散性を可能にする。さらに、二元系混合物中のポリブテン−1の耐クリープ特性からみて、この物質は類似の粘度を有するが、そのことが繊維の延伸工程において破断の原因となるかもしれない、他のポリオレフィン類に対して有利である。
【0052】
上記の与えられた実施例は、ポリプロピレンの紡糸工程での、そのドライ着色を対象としたマスターバッチの評価のためである。しかし、本発明のコンセントレートはもちろん、その技術に精通した当業者に公知の加工操作において、他のポリオレフィン類への添加剤の添加のためにも有利に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】二元系混合物中のポリブテン−1の割合が増加することによるポリマー物質中の顔料の分散指数の変化のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリブテン-1;
b)ポリプロピレン;
c)60重量%以下の1種またはそれ以上の添加剤
を含むコンセントレート。
【請求項2】
A)40重量%〜95重量%、好ましくは50重量%〜95重量%、より好ましくは60重量%〜80重量%の、
1)A)の全重量に対して、10重量%〜35重量%、好ましくは25重量%〜35重量%、より好ましくは30重量%〜35重量%のポリブテン-1;
2)A)の全重量に対して、90重量%〜65重量%、好ましくは75重量%〜65重量%、より好ましくは70重量%〜65重量%のポリプロピレン
を含む組成物;
B)5重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜50重量%、より好ましくは20重量%〜40重量%の1種またはそれ以上の添加剤
を含む請求項1によるコンセントレート。
【請求項3】
ポリブテン-1が、線状の半結晶質(semicrystalline)で、かつ高いアイソタクチックホモポリマーである請求項1によるコンセントレート。
【請求項4】
ポリプロピレンが、90以上かまたはそれに等しいアイソタクチック指数を有するアイソタクチックポリプロピレンである請求項1によるコンセントレート。
【請求項5】
ポリオレフィン類中における添加剤の分散のための請求項1〜4のいずれか1つのコンセントレートの使用。
【請求項6】
ポリオレフィン類を請求項1〜4のいずれか1つによるコンセントレートとブレンドし、引き続く加工によって製造されるポリオレフィン製品。
【請求項7】
ポリオレフィン類を請求項1〜4のいずれか1つによるコンセントレートとブレンドし、引き続く紡糸によって製造される有色のポリプロピレン繊維。
【請求項8】
a)10重量%〜35重量%、好ましくは25重量%〜35重量%、より好ましくは30重量%〜35重量%のポリブテン-1;
b)90重量%〜65重量%、好ましくは75重量%〜65重量%、より好ましくは70重量%〜65重量%のポリプロピレン
を含む添加剤のコンセントレートの製造用ポリオレフィン組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−500761(P2007−500761A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521540(P2006−521540)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008555
【国際公開番号】WO2005/014714
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】