説明

ポリカ−ボネートポリオール及びその製造方法

【課題】 良好な物性を有し、着色の少ないポリカーボネートポリオールを提供すること。
【解決手段】 トリオール化合物(a1)と脂肪族ジオール化合物(a3)と炭酸エステル(a2)とを反応させて得られたポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)と、ポリカーボネートジオール(B)とのエステル交換反応によって得られるポリカーボネートポリオールとする。JIS−K−1557に規定されるハーゼン単位色数が60以下であるポリカーボネートジオールをも得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料の樹脂成分をはじめとして、種々の分野で使用されているポリウレタン樹脂やポリカーボネート樹脂等の原料として好適なポリカーボネートポリオール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートポリオールは、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールと同様に、ポリイソシアネート化合物と反応させて、ポリウレタン樹脂を製造する原料や、接着剤、塗料などの原料として有用であり、またポリエステルなどの改質剤としても使用される。しかしながら、ポリエステルポリオールはエステル結合を有するためこれを用いて製造したウレタン樹脂は耐加水分解性に劣るという欠点があり、ポリエーテルポリオールはエーテル結合を有するためこれを用いて製造したポリウレタン樹脂は耐候性、耐熱性に劣るという欠点がある。
これらの欠点を克服するために、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネートポリオールを用いることが提唱されている。このポリカーボネートポリオールを用いて製造されるポリウレタンは、耐加水分解性、耐候性、耐熱性などに優れ、工業的にも容易に製造できるという利点を有している
【0003】
【化1】

(式中、Rは二価の炭化水素基を表し、ウレタン化反応に関与しない置換基を有していてもよく、その炭素鎖中にヘテロ原子またはエステル結合を含有していてもよい。)
【0004】
さらに製造されるウレタン樹脂の機械強度を改善するため、特許文献1には、第一脂肪族トリオール(例えばトリメチロールプロパンなど)と脂肪族又は脂環式のジオールと芳香族カーボネートを用いてエステル交換反応を行なうことにより得られるポリカーボネートトリオールの製法が記載されている。
また特許文献2には、ポリカーボネートジオールとトリオール化合物および/またはテトラオール化合物とのエステル交換反応によって得られるポリカーボネートポリオールが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭57−39650号公報
【特許文献2】特許第3033778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ジオールとトリオールとの混合物と芳香族カーボネートとのエステル交換により製造されたポリカーボネートポリオール中には、芳香族アルコールが遊離又は結合した状態で存在しているため、これを用いてポリウレタン樹脂を製造した場合は、満足する物性が得られないことが指摘されている。
またポリカーボネートジオールとトリオール化合物とのエステル交換反応によって得られるポリカーボネートポリオールは、反応時間が5〜15時間と長いため工業的には好ましくはなく、さらにAPHAも70〜100と高いためこれを用いてポリウレタン樹脂を製造した場合は、ウレタン樹脂が着色することが指摘されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、具体的には、以下のような構成を有する。
(1)ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)と、ポリカーボネートジオール(B)とのエステル交換反応によって得られるポリカーボネートポリオールであり、前記ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)は少なくともトリオール化合物(a1)と炭酸エステル(a2)とを反応させて得られたものであるポリカーボネートポリオールである。
(2)ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)はトリオール化合物(a1)と炭酸エステル(a2)と脂肪族ジオール化合物(a3)とを反応させて得られたものである前記(1)に記載のポリカーボネートポリオールである。
(3)炭酸エステル(a2)が、脂肪族炭酸エステル又は脂環族炭酸エステルである前記(1)又は(2)に記載のポリカーボネートポリオールである。
(4)JIS−K−1557に規定されるハーゼン単位色数が60以下である前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のポリカーボネートポリオールである。
(5)トリオール化合物(a1)と炭酸エステル(a2)とを反応させてポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)を得る工程と、前記ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)とポリカーボネートジオール(B)とをエステル交換反応させてポリカーボネートポリオールを得る工程とを含むポリカーボネートポリオールの製造方法である。
(6)トリオール化合物(a1)と炭酸エステル(a2)と脂肪族ジオール化合物(a3)とを反応させてポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)を得る工程と、前記ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)とポリカーボネートジオール(B)とをエステル交換反応させてポリカーボネートポリオールを得る工程とを含むポリカーボネートポリオールの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートポリオ−ルが本来有する高耐加水分解性、高耐候性、高耐熱性という特性をそなえつつ、多官能ポリオールであるため良好な機械的強度を示すという優れた力学的性能をポリウレタンに与える。
またその製法は短時間で製造可能で工業的にも有用なポリカーボネートポリオールを製造する方法であり、得られるポリカーボネートポリオールは、接着剤、塗料及び成形体等広い分野で使用可能なポリウレタン樹脂原料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のポリカーボネートポオール及びその製法に関して詳しく説明する。
【0010】
(トリオール化合物(a1))
本発明では、ポリカーボネートポリオールプレポリマーの原料として、トリオール化合物(a1)を用いる。
本発明で使用できるトリオール化合物としては、特に制限されないが、具体的には、トリメチロールエタン又はトリメチロールプロパンなどの第一脂肪族トリオール化合物、或いはグリセリンなどが挙げられる。中でも、入手のしやすさからトリメチロールプロパンが好ましい。
【0011】
(炭酸エステル(a2))
本発明で使用できる炭酸エステルとしては、特に制限されないが、炭酸ジアルキル(炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等)、炭酸アルキレン(炭酸エチレン等)などが挙げられるが、炭酸エステルに由来する副生アルコール類を効率よく抜き出すことができるものを適宜選択することが望ましい。
上記の中でも、副生成するアルコール類の抜き出しやすさの観点から、炭酸ジメチルが好ましい。
【0012】
(脂肪族ジオール化合物(a3))
本発明で使用される脂肪族ジオール化合物としては、特に制限されないが、炭素数3〜30のアルカンジオールが好ましい。
脂肪族ジオールのアルケニル基部分の炭素鎖は分岐していてもよく、脂環式構造、エーテル結合などを含んでも差し支えない。なお、脂肪族ジオール化合物は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0013】
脂肪族ジオール化合物としては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等や、1,3−ブタンジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2−エチルヘキサン−1,6−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等のアルケニル基部分の炭素鎖が分岐しているものや、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2‘−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のアルケニル基部分の炭素鎖が脂環式構造を含んでいるものや、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルケニル基部分の炭素鎖がエーテル結合を含んでいるものなどが具体的に挙げられる。
上記の中でも、取り扱い性及び入手のしやすさから、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0014】
(ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A))
本発明の一例として、最初に、トリオール化合物(a1)と炭酸エステル(a2)とを反応させて、ポリカーボネートポリオールプレポリマーを得ることができる。前記反応は、触媒存在下で行うことが好ましく、炭酸エステルに由来する副生アルコール類を蒸留等により抜き出しながら、エステル交換反応させることがより好ましい。
【0015】
また、本発明の他の例では、最初に、トリオール化合物(a1)と炭酸エステル(a2)と脂肪族ジオール化合物(a3)とを反応させて、ポリカーボネートポリオールプレポリマーを得ることができる。前記反応は、触媒存在下で行うことが好ましく、炭酸エステルに由来する副生アルコール類を蒸留等により抜き出しながら、エステル交換反応させることがより好ましい。
上記ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)の製造において、前記脂肪族ジオール化合物(a3)を用いる場合には、トリオール化合物(a1)に対する、前記脂肪族ジオール化合物(a3)との混合モル比は、0.5〜5が好ましく、さらに好ましくは1〜4である。前記混合モル比が低すぎるとトリオール化合物を用いた効果がほとんどなく、高すぎると分岐のないポリカーボネートポリオールプレポリマー分子が多くなる場合がある。
またポリオール成分(前記トリオール化合物と前記脂肪族ジオール化合物トータル)に対する前記炭酸エステルの混合モル比は、0.5〜1.5が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.3である。前記混合モル比が低すぎるとポリカーボネートポリオールプレポリマー内に未反応のトリオール化合物または脂肪族ジオール化合物が残留する場合があり、高すぎるとポリカーボネートポリオールプレポリマー内に未反応の炭酸エステルが残留する場合がある。
さらに触媒を用いる場合は、反応性の観点から、反応開始時における炭酸エステルと脂肪族ジヒドロキシル化合物の合計仕込み量に対して重量基準で1〜20000ppmが好ましく、さらに好ましくは10〜5000ppmである。
【0016】
前記ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)の製造に使用される触媒としては、通常のエステル交換反応で使用される触媒(エステル交換触媒)を使用することができる。
エステル交換触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のカルボン酸塩(酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等)、アルカリ金属アルコキシド(リチウムメトキシド、ネトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド等)などのアルカリ金属化合物や、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム等)、アルカリ土類金属アルコキシド(マグネシウムメトキシド等)などのアルカリ土類金属化合物や、アルミニウムアルコキシド(アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムs−ブトキシド等)、アルミニウムアセチルアセトナートなどのアルミニウム化合物や、亜鉛のカルボン酸塩(酢酸亜鉛等)、亜鉛アセチルアセトナートなどの亜鉛化合物や、マンガンのカルボン酸塩(酢酸マンガン等)、マンガンアセチルアセトナートなどのマンガン化合物や、ニッケルのカルボン酸塩(酢酸ニッケル等)、ニッケルアセチルアセトナートなどのニッケル化合物や、アンチモンのカルボン酸塩(酢酸アンチモン等)、アンチモンアルコキシドなどのアンチモン化合物や、ジルコニウムアルコキシド(ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド等)、ジルコニウムアセチルアセトナートなどのジルコニウム化合物や、チタンアルコキシド(テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等)などのチタン化合物や、有機スズ化合物(ジブチルチンオキシド、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート等)などが触媒として挙げられる。
なお各カルボン酸塩は炭素数2〜30のものが好ましく、各アルコキシドはアルコキシ基の炭素数1〜30のものが好ましい。
【0017】
このエステル交換反応において、反応温度及び反応圧力は、用いる炭酸エステルとトリオール化合物と脂肪族ジオール化合物の種類によって異なるが、トリオール化合物と脂肪族ジオール化合物が実質的に留出しない条件とすることが好ましい。
具体的な反応温度は80〜230℃であることが好ましく、反応圧力は常圧から30〜500mmHgの減圧とすることが好ましい。
なお反応は、空気、炭酸ガス、もしくは不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下または気流中で行なうことができるが、不活性ガス雰囲気下または気流中で行なうことが好ましい。
【0018】
前記ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)は、数平均分子量が200〜700であることが好ましい。数平均分子量が小さすぎるとモノマーが多量に残存している場合があり、大きすぎると得られるポリカーボネートポリオールの耐熱性や機械的物性が低下する傾向がある。

【0019】
(ポリカーボネートジオール(B))
本発明で使用されるポリカーボネートジオールは、特に制限されないが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、公知の方法(ホスゲン法、炭酸エステルを使用したエステル交換法など)により脂肪族ジオール化合物とホスゲンや炭酸エステル等とを反応して製造することで得ることができる。例えば特開2001−270938に記載されている製造法で製造されるポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0020】
【化2】

(式中、Rは二価の炭化水素基を表し、ウレタン化反応に関与しない置換基を有していてもよく、その炭素鎖中にヘテロ原子またはエステル結合を含有していてもよい。)
【0021】
ポリカーボネートジオール(B)の原料である前記脂肪族ジオール化合物としては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等や、1,3−ブタンジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2−エチルヘキサン−1,6−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等のアルキレン基部分の炭素鎖が分岐しているものや、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のアルキレン基部分の炭素鎖が脂環式構造を含んでいるものや、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルキレン基部分の炭素鎖がエーテル結合を含んでいるものなどが具体的に挙げられる。
上記の中でも、取り扱い性及び入手のしやすさの点から、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0022】
前記ポリカーボネートジオール(B)は、数平均分子量が1000〜3000であることが好ましい。数平均分子量が小さすぎると、得られるポリカーボネートポリオールの分子量が小さくなる傾向があり、大きすぎるとポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)との反応が遅くなる傾向がある。
【0023】
(ポリカーボネートポリオール)
本発明のポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)と、ポリカーボネートジオール(B)とをエステル交換反応させることにより得られる。
前記ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)と前記ポリカーボネートジオール(B)とのエステル交換反応においては、触媒を用いることが好ましい。
【0024】
ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)と、ポリカーボネートジオール(B)とをエステル交換反応させる際に使用される触媒としては、ポリカーボネートポリオールプレポリマーを製造する際に使用される触媒と同じ触媒が使用できる。
【0025】
ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)と、ポリカーボネートジオール(B)とのエステル交換反応の反応温度は、反応速度の観点から、100〜230℃が好ましく、さらには120〜220℃であることが好ましい。前記エステル交換反応の反応時間は、2〜4時間が好ましく、さらには2〜3時間であることが好ましい。前記エステル交換反応の反応圧力は、常圧から30〜500mmHgの減圧とすることが好ましい。なお、前記エステル交換反応は、空気、炭酸ガス、もしくは不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下または気流中で行なうことができるが、不活性ガス雰囲気下または気流中で行なうことが好ましい。
【0026】
反応終了後、そのまま反応液を冷却して、着色が少ない(特にJIS−K−1557によるAPHAが60以下の)ポリカーボネートポリオールを得ることができる。
【0027】
本発明のポリカーボネートポリオールの平均分子量は、炭酸エステルとトリオール化合物と脂肪族ジオール化合物とを反応させて得られるポリカーボネートポリオールプレポリマーの反応モル比や原料の変更、使用するポリカーボネートジオールの平均分子量、さらには得られるポリカーボネートポリオールプレポリマーとポリカーボネートジオールの反応モル比の変更などによって調製することができる。
【0028】
ハーゼン単位色数(APHA)の測定
(標準液の調製)
塩化白金酸カリウム1.245g、塩化コバルト・6水塩1.000g、水500ml及び塩酸100mlを1Lのメスフラスコに入れ、完全に溶解したのち、水を標線まで加えた溶液を準備する。この溶液はAPHA標準液No.500に相当し、各種標準液はこのNo.500標準液を水で希釈して調製する。例えばAPHA標準液No.100は、No.500標準液20.0mlを水80.0mlで希釈して調製する。
(測定方法)
無色透明で底の肉厚が等しく内径約23mmの同質同径の共栓付平底ガラス管で、液量が約100mlになるように底部から同じ高さのところに標線を刻んだ比色管に、泡の入らないように注意して標線までサンプルを入れる。ついで白色板上に適当なAPHA標準液と並べて上方から見て比較し、試料に最も近似した濃度の標準液を求め、その標準液No.をAPHAとする。
【実施例】
【0029】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なおポリカーボネートポリオールプレポリマー及びポリカーボネートポリオールのAPHA、水酸基価、酸価はJIS−K1577に準拠した方法で測定を行ない、水分はカールフィッシャー水分計を使用した電量滴定法で、融点、ガラス転移温度は示差走査熱量分析法で(測定温度範囲:−100〜150℃)、粘度はE型粘度計で測定を行なった。
【0030】
[実施例1]
精留塔、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた500mlのガラス製丸底フラスコに、ジメチルカーボネート91.2g(1.01mol)、トリメチロールプロパン134.2g(1.00mol)、炭酸カリウム0.14gを仕込み、常圧、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、エステル交換反応を3時間行なった。この間、反応温度は85℃から110℃まで徐々に昇温させ、留出物の組成はメタノールとジメチルカーボネートの共沸組成ないしはその近傍となるように調節した。
【0031】
この後徐々に30mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、120℃でエステル交換反応をさらに2時間行なった。反応終了後(メタノールとジメチルカーボネートの留去終了後)、反応液を室温まで冷却し、ポリカーボネートポリオールプレポリマー156gを得た。なおエステル交換反応は窒素気流中で行なった。得られたポリカーボネートポリオールプレポリマーは、数平均分子量が500、APHAが30、水酸基価が531mgkOH/g、酸価が0.02mgKOH/g、水分が123ppm、ガラス転移点が−27℃、粘度が12500cp/75℃であった。また、得られたポリカーボネートポリオールプレポリマーは、25℃で液体であった。
【0032】
次に攪拌機、温度計、窒素導入管、コンデンサーを備えた1000mlのガラス製丸底フラスコに、得られたポリカーボネートポリオールプレポリマー100g、ポリカーボネートジオール(宇部興産株式会社製、商品名:UH−200、分子量2000、水酸基価56.1mgKOH/g、APHA15)200gを仕込み、50mmHgの減圧下で攪拌し、反応温度125℃に到達後4時間125℃で反応を行なった。反応の途中でサンプリングを行ない、GPC測定よりエステル交換反応が平衡に至ったことを確認した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、酢酸エチル540gに溶解した。水100gを添加して30分攪拌したのち、分液により水層を除去した。この操作をさらにもう1回行なって酢酸エチル溶液を得た。この酢酸エチル溶液に硫酸マグネシウム50gを添加して30分攪拌した後ろ過して硫酸マグネシウムを除去し、その後酢酸エチルを蒸留留去してポリカーボネートポリオール268gを得た。得られたポリカーボネートポリオールは、数平均分子量が約1000、APHAが45、水酸基価が193mgkOH/g、酸価が0.02mgKOH/g、水分が98ppm、ガラス転移点が−43℃、粘度が3240cp/75℃であった。また、得られたポリカーボネートポリオールは、25℃で液体であった。
【0033】
[実施例2]
精留塔、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1000mlのガラス製丸底フラスコに、ジメチルカーボネート109.9g(1.22mol)、1,6−ヘキサンジオール106.4g(0.9mol)、トリメチロールプロパン40.3g(0.3mol)、炭酸カリウム0.17gを仕込み、常圧、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、エステル交換反応を3時間行なった。この間、反応温度は95℃から110℃まで徐々に昇温させ、留出物の組成はメタノールとジメチルカーボネートの共沸組成ないしはその近傍となるように調節した。
【0034】
この後徐々に30mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、120℃でエステル交換反応をさらに2時間行なった。反応終了後(メタノールとジメチルカーボネートの留去終了後)、反応液を室温まで冷却し、酢酸エチル270gに溶解した。水100gを添加して30分攪拌したのち、分液により水層を除去した。この操作をさらにもう1回行なって酢酸エチル溶液を得た。この酢酸エチル溶液に硫酸マグネシウム30gを添加して30分攪拌した後ろ過して硫酸マグネシウムを除去し、その後酢酸エチルを蒸留留去してポリカーボネートポリオールプレポリマー160gを得た。なおエステル交換反応は窒素気流中で行なった。得られたポリカーボネートポリオールプレポリマーは、数平均分子量が512、APHAが30、水酸基価が329mgkOH/g、酸価が0.03mgKOH/g、水分が102ppm、ガラス転移点が−64℃、粘度106cp/75℃の液状品であった。また、得られたポリカーボネートポリオールプレポリマーは、25℃で液体であった。
【0035】
次に攪拌機、温度計、窒素導入管、コンデンサーを備えた500mlのガラス製丸底フラスコに、得られたポリカーボネートポリオールプレポリマー105g、ポリカーボネートジオール(宇部興産株式会社製、商品名:UH−200、分子量2000、水酸基価56.1mgKOH/g、APHA15)200g、テトラブトキシチタン0.02gを仕込み、50mmHgの減圧下で攪拌し、反応温度190℃に到達後3時間190℃で反応を行なった。反応の途中でサンプリングを行ない、GPC測定よりエステル交換反応が平衡に至ったことを確認した。得られたポリカーボネートポリオール304gは、数平均分子量が約1000、APHAが20、水酸基価が147mgkOH/g、酸価が0.02mgKOH/g、水分が99ppm、融点が35℃、ガラス転移点が−64℃、粘度が582cp/75℃であった。また、得られたポリカーボネートポリオールは、25℃で液体であった。
【0036】
[比較例1]
攪拌機、温度計、窒素導入管、コンデンサーを備えた500mlのガラス製丸底フラスコに、ポリカーボネートジオール(宇部興産株式会社製、商品名:UH−200、分子量2007、水酸基価55.9mgKOH/g、APHA15)200g、トリメチロールプロパン15.6g、テトラブトキシチタン0.02gを仕込み、常圧下で攪拌し、反応温度220℃に到達後15時間220℃で反応を行なった。反応の途中でサンプリングを行ない、GPC測定よりエステル交換反応が平衡に至ったことを確認した。得られたポリカーボネートポリオール215gは、APHAが100、水酸基価が140mgkOH/g、酸価が0.03mgKOH/g、水分が83ppm、融点が33℃、ガラス転位点が−66℃、粘度が490cp/75℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明で得られるポリカーボネートポリオールは、接着剤、塗料及び成形体等広い分野で使用可能なポリウレタン樹脂原料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)と、ポリカーボネートジオール(B)とのエステル交換反応によって得られるポリカーボネートポリオールであり、前記ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)は少なくともトリオール化合物(a1)と炭酸エステル(a2)とを反応させて得られたものであるポリカーボネートポリオール。
【請求項2】
ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)はトリオール化合物(a1)と炭酸エステル(a2)と脂肪族ジオール化合物(a3)とを反応させて得られたものである請求項1に記載のポリカーボネートポリオール。
【請求項3】
炭酸エステル(a2)が、脂肪族炭酸エステル又は脂環族炭酸エステルである請求項1又は2に記載のポリカーボネートポリオール。
【請求項4】
JIS−K−1557に規定されるハーゼン単位色数が60以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリカーボネートポリオール。
【請求項5】
トリオール化合物(a1)と炭酸エステル(a2)とを反応させてポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)を得る工程と、前記ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)とポリカーボネートジオール(B)とをエステル交換反応させてポリカーボネートポリオールを得る工程とを含むポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項6】
トリオール化合物(a1)と炭酸エステル(a2)と脂肪族ジオール化合物(a3)とを反応させてポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)を得る工程と、前記ポリカーボネートポリオールプレポリマー(A)とポリカーボネートジオール(B)とをエステル交換反応させてポリカーボネートポリオールを得る工程とを含むポリカーボネートポリオールの製造方法。

【公開番号】特開2009−235291(P2009−235291A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85129(P2008−85129)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】