説明

ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂、及び製造方法

【課題】耐衝撃性、耐熱性、外観の優れたポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】特定構造のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂であり、n−ヘキサン抽出成分量、及びヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンのカーボネート化ヒドロキシアリール残基量と未反応ヒドロキシアリール残基量の比率が特定範囲であるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性、耐熱性、外観の優れたポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、優れた透明性、耐熱性、機械的強度等を有するため電気、機械、自動車、医療用途等に幅広く使用されている。しかしながら、用途の拡大に伴い更に性能の優れたポリカーボネート樹脂の開発が望まれている。一例を挙げると、コピー機やプリンターのハウジングのような難燃性の要求される大型薄肉成形品において、更なる薄肉化が望まれており、ポリカーボネート樹脂よりも耐衝撃性、流動性、耐熱性のトータルバランスに優れた樹脂材料が求められている。ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂がポリカーボネート樹脂よりも難燃性、耐衝撃性、流動性に優れていることは公知であり、上記問題を解決し得る樹脂材料として有望である。
【0003】
特許文献1には、耐衝撃性に優れたポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂が開示されている。かかる共重合樹脂は耐衝撃性に優れるものの、耐熱性がポリカーボネートと比較して大幅に低下しており、さらには成形品に真珠光沢が発生するため外観不良である問題点があった。
【0004】
特許文献2には、第1のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂と、第2のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を混合することによって得られる、ポリカーボネートポリマーのマトリックス中に平均ドメインサイズ20〜45nmのポリジオルガノシロキサンドメインが埋込まれた樹脂組成物が提案されている。この樹脂組成物は、耐衝撃性および一定の半透明性を有することが開示されている。より具体的にはこの樹脂組成物は、半透明性(約25〜約85%の光透過率および約104未満のヘイズを有することと定義される)を有し、視覚効果添加剤と組合せて美的視覚効果を得ることができ、かつ耐衝撃性、難燃性に優れており、ウェルドラインの視認性が低いことが開示されている。しかしながら、ポリジオルガノシロキサンドメインの凝集構造と耐熱性との関係については言及されていない。
【0005】
特許文献3には、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズが5〜40nm、規格化分散が40%以下あり、全光線透過率が88%以上であるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂が開示されている。このポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、特定の凝集構造を形成することにより透明性が抜群に優れ、成形品外観が良好であるが、低温における耐衝撃性が低い問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO91/00885号公報
【特許文献2】特表2006−523243号公報
【特許文献3】特開2011−46911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐衝撃性、耐熱性、外観の優れたポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定構造のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂であり、n−ヘキサン抽出成分量、及びヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンのカーボネート化ヒドロキシアリール残基量と未反応ヒドロキシアリール残基量の比率が特定範囲であるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂が格段に高い耐衝撃性、耐熱性を発現し、更には成形品外観が良好となることを見出し、かかる知見に基づき更に検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。本発明によれば、上記課題は下記構成により解決される。
【0009】
(構成1)
下記式[1]で表されるポリカーボネートブロックと、下記式[3]で表されるポリジオルガノシロキサンブロックからなり、n−ヘキサン抽出成分が0.4〜2.5wt%であり、且つn−ヘキサン抽出成分に含まれるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンのカーボネート化ヒドロキシアリール残基量Cとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンの未反応ヒドロキシアリール残基量Hとが下記式を満足する、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂。
1≦C/H≦50
【0010】
【化1】

[上記式[1]において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数1〜18のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜14のアリール基、炭素原子数3〜14のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、e及びfは夫々1〜4の整数であり、Wは単結合もしくは下記式[2]で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。
【0011】
【化2】

(上記式[2]においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数3〜14のアリール基及び炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜14のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、gは1〜10の整数、hは4〜7の整数である。)]
【0012】
【化3】

(上記式[3]において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは60〜300の自然数である。XはC〜Cの二価脂肪族基である。)
【0013】
(構成2)
ポリカーボネートポリマーのマトリックス中にポリジオルガノシロキサンドメインが分散した凝集構造であり、該ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズが10〜30nm、規格化分散が20%以上である、前記1記載のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂。
【0014】
(構成3)
前記1記載のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂からなる成形品。
【0015】
(構成4)
(A)あらかじめ水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中における式[4]で表わされる二価フェノール(I)とホスゲンとの反応により、二価フェノール(I)のクロロホーメートおよび/または末端クロロホーメート基を有する二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホーメート化合物の混合溶液を調製し、
(B)工程(A)の混合溶液を攪拌しながら式[5]で表わされるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)を加え、
(C)工程(B)の混合溶液を粘度が1,000cp以上である高乳化状態とせしめると同時、或いは然る後に第三級アミン触媒を添加して界面重縮合させることを特徴とするポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法。
【0016】
【化4】

(式中、R、R、e、f及びWは前記と同じである。)
【0017】
【化5】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R10、p、q及びXは前記と同じである。)
【0018】
(構成5)
前記4記載の製造方法により製造された、前記1記載のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂からなる成型品は、格段に高い耐衝撃性、耐熱性を発現し、その外観は良好であるため、その奏する工業的効果は絶大である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1で測定した3段型プレートの厚み1.0mm部における小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布のグラフである。
【図2】比較例3で測定した3段型プレートの厚み1.0mm部における小角エックス線散乱プロファイルと解析結果のグラフであり、(a)は、測定散乱プロファイル(測定データ)のグラフ、(b)は、それから解析した粒径分布のグラフである。
【図3】実施例2で製造した共重合樹脂のn−ヘキサン抽出成分のH−NMRスペクトルである。
【図4】比較例2で製造した共重合樹脂のn−ヘキサン抽出成分のH−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の詳細について説明する。
(ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂)
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、上記一般式[4]で表される二価フェノール(I)と上記一般式[5]で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)の界面重縮合反応により製造される。一般式[4]で表される二価フェノール(I)としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,3’−ビフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’−ジフェニル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’−(1,3−アダマンタンジイル)ジフェノール、および1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
【0022】
なかでも、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−スルホニルジフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、および1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンが好ましく、殊に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)、4,4’−スルホニルジフェノール、および9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記一般式[5]で表されるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)としては、例えば次に示すような化合物[6]が好適に用いられる。
【0024】
【化6】

【0025】
ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、オレフィン性の不飽和炭素−炭素結合を有するフェノール類、好適にはビニルフェノール、2−アリルフェノール、イソプロペニルフェノール、2−メトキシ−4−アリルフェノールを所定の重合度を有するポリジオルガノシロキサン鎖の末端に、ハイドロシリレーション反応させることにより容易に製造される。なかでも、(2−アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサン、(2−メトキシ−4−アリルフェノール)末端ポリジオルガノシロキサンが好ましく、殊に(2−アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサン、および(2−メトキシ−4−アリルフェノール)末端ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0026】
また、高度な耐衝撃性および耐熱性、外観特性を実現するためにヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)のジオルガノシロキサン重合度(p+q)は60〜300である。かかるジオルガノシロキサン重合度(p+q)は好ましくは80〜250、より好ましくは90〜200、特に好ましくは100〜148である。かかる好適な範囲の下限以上では、特に低温での耐衝撃性に優れ、耐熱性にも優れる。かかる好適な範囲の上限以下では、耐熱性に優れる。また、かかる好適な範囲内においては、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズと規格化分散を好適な範囲に調整しやすい。
【0027】
共重合樹脂全重量に占めるポリジオルガノシロキサン含有量は0.1〜20重量%が好ましい。かかるポリジオルガノシロキサン成分含有量はより好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。かかる好適な範囲の下限以上では、低温での耐衝撃性に優れ、かかる好適な範囲の上限以下では、常温での耐衝撃性が低下せず、成形品表面に真珠光沢やウェルドラインが発生することがなく外観が優れる。かかるジオルガノシロキサン重合度、ポリジオルガノシロキサン含有量は、H−NMR測定により算出することが可能である。
【0028】
本発明において、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、本発明の製造方法の妨げにならない範囲で、上記二価フェノール(I)、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)以外の他のコモノマーを共重合樹脂の全重量に対して10重量%以下の範囲で併用することもできる。
【0029】
(ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂における、n−ヘキサン抽出成分量とC/H値)
本発明において、n−ヘキサン抽出成分とは、実施例記載の方法でポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を処理することにより得られる抽出成分であり、以下に示すような化合物(一般式[7]で表わされるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)の未反応物、一般式[8]で表わされるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)のホスゲン縮合物、一般式[9]で表わされるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)の二価フェノール(I)縮合物、二価フェノール(I)の低分子量オリゴマー)が挙げられる。
【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
n−ヘキサン抽出成分重量比は樹脂総量に対して0.4〜2.5wt%である。n−ヘキサン抽出成分重量比は樹脂総量に対して好ましくは、1.0〜2.3wt%である。n−ヘキサン抽出成分として、低分子量オリゴマー成分も抽出されるため、その下限値は実質的に0.4wt%である。n−ヘキサン抽出成分重量比が2.5wt%より大きい場合、真珠光沢やウェルドラインなどの成形品外観不良が発生するため好ましくない。
【0034】
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂はそのn−ヘキサン抽出成分に含まれるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンのカーボネート化ヒドロキシアリール残基量Cとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンの未反応ヒドロキシアリール残基量Hとが下記式 (A)を満足する。
1≦C/H≦50 (A)
【0035】
ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)がホスゲン、二価フェノール(I)と縮合した場合、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)のヒドロキシアリール末端がカーボネート化したカーボネート化ヒドロキシアリール残基となる。一方、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)がホスゲン、二価フェノール(I)と縮合しない場合、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)のヒドロキシアリール末端は未反応ヒドロキシアリール残基として残存する。カーボネート化ヒドロキシアリール残基の一般式を式[10]、未反応ヒドロキシアリール残基の一般式を式[11]に示す。
【0036】
【化10】

【化11】

(上記式[10]、式[11]において、X、Yは原子、若しくは連続する分子鎖である。)
【0037】
n−ヘキサン抽出成分に含まれるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンのカーボネート化ヒドロキシアリール残基量Cとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンの未反応ヒドロキシアリール残基量Hの相対比は、n−ヘキサン抽出成分のH−NMR測定により算出する。内部標準物質としてテトラクロロエタン(5.95ppm)を使用し、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンのカーボネート化ヒドロキシアリール残基由来のシグナル(2.73ppm−2.63ppm)とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンの未反応ヒドロキシアリール残基由来のシグナル(2.68ppm−2.58ppm)の積分比よりC/Hを算出する。
【0038】
C/H値は1以上であり、好ましくは2以上、更に好ましくは3以上である。また、C/H値は50以下であり、好ましくは40以下、更に好ましくは35以下である。C/H値が好適な範囲であれば真珠光沢やウェルドラインなどの成形品外観不良の発生が抑制される。
【0039】
(ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂における、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズと規格化分散)
本発明における熱可塑性樹脂組成物成形品のポリジオルガノシロキサンドメインの平均ドメインサイズ、規格化分散は、小角エックス線散乱法(Small Angle X−ray Scattering:SAXS)により評価される。小角エックス線散乱法とは、散乱角(2θ)が10°未満の範囲の小角領域で生じる散漫な散乱・回折を測定する方法である。この小角エックス線散乱法では、物質中に電子密度の異なる1〜100nm程度の大きさの領域があると、その電子密度差によりエックス線の散漫散乱が計測される。この散乱角と散乱強度に基づいて測定対象物の粒子径を求める。ポリカーボネートポリマーのマトリックス中にポリジオルガノシロキサンドメインが分散した凝集構造となるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の場合、ポリカーボネートマトリックスとポリジオルガノシロキサンドメインの電子密度差により、エックス線の散漫散乱が生じる。散乱角(2θ)が10°未満の範囲の各散乱角(2θ)における散乱強度I を測定して、小角エックス線散乱プロファイルを測定し、ポリジオルガノシロキサンドメインが球状ドメインであり、粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の粒径と仮の粒径分布モデルから、市販の解析ソフトウェアを用いてシミュレーションを行い、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズと粒径分布(規格化分散)を求める。小角エックス線散乱法によれば、透過型電子顕微鏡による観察では正確に測定できない、ポリカーボネートポリマーのマトリックス中に分散したポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズと粒径分布を、精度よく、簡便に、かつ再現性良く測定することができる。
【0040】
平均ドメインサイズとは個々のドメインサイズの数平均を意味する。規格化分散とは、粒径分布の広がりを平均サイズで規格化したパラメータを意味する。具体的には、ポリジオルガノシロキサンドメインサイズの分散を平均ドメインサイズで規格化した値であり、下記式(1)で表される。
【0041】
【数1】

上記式(1)において、σはポリジオルガノシロキサンドメインサイズの標準偏差、Davは平均ドメインサイズである。
【0042】
本発明に関連して用いる用語「平均ドメインサイズ」、「規格化分散」は、射出成形により形成される厚み1.0mmの成形品を用いて、小角エックス線散乱法により測定することにより得られる測定値を示す。具体的には、射出成形により成形した3段型プレート(幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3.0mm(長さ20mm)、2.0mm(長さ45mm)、1.0mm(長さ25mm)、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.03μm)を用いて、厚み1.0mm部の端部より5mm、側部より5mmの交点におけるポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズと粒径分布(規格化分散)を小角エックス線散乱法により測定したものである。
【0043】
本発明においてポリジオルガノシロキサンドメインとは、ポリカーボネートのマトリックス中に分散したポリジオルガノシロキサンを主成分とするドメインをいい、他の成分を含んでもよい。上述の如く、ポリジオルガノシロキサンドメインは、マトリックスたるポリカーボネートとの相分離により構造が形成されることから、必ずしも単一の成分から構成されない。
【0044】
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂において、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズは、10〜30nmの範囲が好ましい。かかる平均サイズは、より好ましくは12〜26nm、さらに好ましくは14〜22nm、より特に好ましくは15〜19nmである。かかる範囲の下限以上では、低温での耐衝撃性が格別に高く、耐熱性にも優れる。かかる範囲の上限以下では、成形品表面に真珠光沢やウェルドラインが発生することがなく外観が優れる。
【0045】
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂において、ポリジオルガノシロキサンドメインの規格化分散は20〜50%が好ましい。かかる規格化分散は、より好ましくは22〜45%、さらに好ましくは24〜40%、より特に好ましくは26〜38%である。ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズが好適な範囲であっても、かかる好適な範囲の下限より小さい場合では良好な衝撃強度が発揮されず、かかる好適な範囲の上限より大きい場合では真珠光沢などの成形品外観不良が発生しやすい。かかる適切なドメインの平均サイズと、その規格化分散を有することにより、さらなる低温耐衝撃性、耐熱性、成形品外観のバランスに優れたポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂が得られる。
【0046】
(全光線透過率)
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、射出成形により形成される厚み2.0mmの成形品において、その全光線透過率は88%以下が好ましい。かかる全光線透過率は、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは82%以下、特に好ましくは80%以下である。また、本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂からなる厚み2.0mmの成形品において、そのヘイズは2〜80%が好ましい。かかるヘイズは、より好ましくは3〜75%、さらに好ましくは4〜70%である。
【0047】
(ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の粘度平均分子量)
ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の粘度平均分子量は5.0×10〜5.0×10の範囲が好ましい。かかる粘度平均分子量はより好ましくは1.0×10〜4.0×10、更に好ましくは1.5×10〜3.5×10、特に好ましくは1.7×10〜2.5×10である。ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の粘度平均分子量が5.0×10未満では、多くの分野において実用上の機械的強度が得られにくく、5.0×10を超えると、溶融粘度が高く、概して高い成形加工温度を必要とするため、樹脂の熱劣化などの不具合を生じやすい。
【0048】
(製造方法)
(二価フェノール(I)からのクロロホルメート化合物を生成する工程)
本発明の一実施態様においては、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は以下のようにして製造し得る。すなわち、まず水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(I)と、ホスゲンや二価フェノール(I)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(I)のクロロホルメートおよび/または末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホルメート化合物の混合溶液を調製する。クロロホルメート形成性化合物としてはホスゲンが好適である。
【0049】
二価フェノール(I)からのクロロホルメート化合物を生成するにあたり、二価フェノール(I)の全量を一度にクロロホルメート化合物としてもよく、又は、その一部を後添加モノマーとして後段の界面重縮合反応に反応原料として添加してもよい。後添加モノマーとは、後段の重縮合反応を速やかに進行させるために加えるものであり、必要のない場合には敢えて加える必要はない。
【0050】
このクロロホルメート化合物生成反応の方法は特に限定はされないが、通常、酸結合剤の存在下、溶媒中で行う方式が好適である。更に、所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、およびハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよく、添加することが好ましい。
【0051】
クロロホルメート形成性化合物としてはホスゲンが好適である。また、好適なクロロホルメート形成性化合物であるホスゲンを使用する場合、ガス化したホスゲンを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。クロロホルメート形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。具体的には、二価フェノール(I)1モルあたり1モル若しくはこれより若干過剰量のホスゲンを用いることが好ましい。より具体的には、二価フェノール(I)1モルあたり1〜1.4モル、より好ましくは1〜1.3モル、特に好ましくは1〜1.2モルのホスゲンを用いることが好ましい。かかる好適な範囲の下限以下では、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)の未反応物が発生しやすく、好適な範囲の上限以上においてはn−ヘキサン抽出成分量が多くなる。その結果、真珠光沢やウェルドラインなどの成形品外観不良が発生するため好ましくない。
【0052】
前記酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにピリジンの如き有機塩基、あるいはこれらの混合物などが用いられる。
【0053】
酸結合剤の使用割合も、上記同様に、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜定めればよい。具体的には、二価フェノール(I)のクロロホルメート化合物の形成に使用する二価フェノール(I)1モルあたり(通常1モルは2当量に相当)、2当量若しくはこれより若干過剰量の酸結合剤を用いることが好ましい。
【0054】
前記溶媒としては、公知のポリカーボネートの製造に使用されるものなど各種の反応に不活性な溶媒を1種単独であるいは混合溶媒として使用すればよい。代表的な例としては、例えば、キシレンの如き炭化水素溶媒、並びに、塩化メチレンおよびクロロベンゼンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。特に塩化メチレンの如きハロゲン化炭化水素溶媒が好適に用いられる。二価フェノール(I)の濃度は、好ましくは400g/L以下、より好ましくは300g/L以下、更に好ましくは250g/L以下である。
【0055】
水に不溶性の有機溶媒のモル比は二価フェノール(I)1モルあたり、好ましくは8モル以上、より好ましくは10モル以上、さらに好ましくは12モル以上、特に好ましくは14モル以上である。上限は特に制限されないが、装置の大きさや製造コストの面から50モル以下で充分である。二価フェノール(I)に対する有機溶媒のモル比をかかる範囲内とすることにより、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズおよび規格化分散を、より適正値に制御しやすくなる。
【0056】
クロロホルメート化合物の生成反応における圧力は特に制限はなく、常圧、加圧、もしくは減圧のいずれでもよいが、通常常圧下で反応を行うことが有利である。反応温度は−20〜50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、反応に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は他の条件に左右され一概に規定できないが、通常、0.2〜10時間で行われる。
クロロホルメート化合物の生成反応におけるpH範囲は、公知の界面反応条件が利用でき、pHは通常10以上に調製される。
【0057】
本発明においては、このようにして二価フェノール(I)のクロロホルメートおよび末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホルメート化合物の混合溶液を調整した後、該混合溶液を攪拌しながら一般式[5]で表わされるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)を加え、該ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)と該クロロホーメート化合物とを界面重縮合させることにより、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を得る。
【0058】
均一分散性を高めるため、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)は、溶媒と混合して溶液状態で、末端クロロホルメート化合物を含有する混合溶液中に投入することが望ましい。該溶液の濃度は、反応を阻害しない範囲内で希薄であることが望ましく、好ましくは、1〜50wt%の範囲、より好ましくは5〜40wt%の範囲、特に好ましくは10〜30wt%の範囲である。尚、かかる溶媒は特に限定されないものの、上述のクロロホルメート化合物の生成反応に使用する溶媒と同一が好ましく、特に塩化メチレンが好ましい。
【0059】
界面重縮合反応を行うにあたり、酸結合剤を反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜追加してもよい。酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにピリジンの如き有機塩基、あるいはこれらの混合物などが用いられる。具体的には、使用するヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)、又は上記の如く二価フェノール(I)の一部を後添加モノマーとしてこの反応段階に添加する場合には、後添加分の二価フェノール(I)とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との合計モル数(通常1モルは2当量に相当)に対して2当量若しくはこれより過剰量のアルカリを用いることが好ましい。
【0060】
かかる重縮合反応においては、末端停止剤或いは分子量調節剤が通常使用される。末端停止剤としては一価のフェノール性水酸基を有する化合物が挙げられ、通常のフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、トリブロモフェノールなどの他に、長鎖アルキルフェノール、脂肪族カルボン酸クロライド、脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、ヒドロキシフェニルアルキル酸エステル、アルキルエーテルフェノールなどが例示される。その使用量は用いる全ての二価フェノール系化合物100モルに対して、100〜0.5モル、好ましくは50〜2モルの範囲であり、二種以上の化合物を併用することも当然に可能である。
【0061】
二価フェノール(I)のオリゴマーとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)との界面重縮合反応は、上記混合液を高乳化状態とせしめると同時、或いは然る後に第三級アミン触媒を添加して界面重縮合させることにより行われる。
【0062】
(高乳化による重縮合反応の工程)
反応混合物を高乳化状態にする方法としては、任意の方法が採用される。例えばホモミキサー、攪拌翼付タンク、スタティックミキサー等を用いる方法が挙げられ、特にホモミキサーを用いる方法は乳化液滴を微小化できるため好ましい。なお、高乳化に際し、反応混合物の温度を25〜35℃に調整することは、高乳化後の重縮合反応が容易に進行し、反応終了後の精製も容易になるため好ましい。
【0063】
高乳化状態における乳液粘度は1,000cp以上が好ましい。より好ましくは1,500cp以上、さらに好ましくは2,000cp以上である。かかる乳液粘度の上限は実用上20,000cp以下である。かかる好適な乳液粘度の下限以上では、乳化液滴の微小化により界面積が大きいため界面重縮合反応が効率的に進行し、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)の未反応ヒドロキシアリール残基量が極めて少なくなる。すなわち、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)のヒドロキシアリール残基の大部分がカーボネート結合を介して縮合したカーボネート化ヒドロキシアリール残基となる。つまり、未反応、若しくは片末端のみがカーボネート化ヒドロキシアリール残基となったヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンが実質的に消失する。これにより、好適な凝集構造が形成されるため成形品表面に真珠光沢が発生することがなく外観が優れるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂が提供される。かかる乳液粘度は、第三級アミン触媒を添加しなくとも重合反応の進行とともに徐々に増大し、反応条件によっては5,000cpを超える粘度となりうる。
【0064】
高乳化状態とした反応混合物を激しく攪拌しながら、第三級アミン触媒を添加することにより界面重縮合反応を行う。攪拌は攪拌翼の回転による方式は勿論のこと、スタティックミキサー、オリフィスミキサー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波等のような装置を使用することによっても実施され得る。第三級アミン触媒の添加により乳液粘度は徐々に増加し、反応条件によっては5,000cpを超える粘度となる。
【0065】
第三級アミン触媒としては、特にトリエチルミンが好適に利用される。
所望に応じ、第四級アンモニウム塩を始めとする相間移動触媒を使用することができる。相間移動触媒は水溶性反応体を界面越しに有機相中に移行させる機能をもち、有機相中で均質反応が速やかに起こり得る。したがって、水溶性求核剤の関与する反応では、相間移動触媒を添加すれば求核剤はイオン対として有機相中に移行し、そこで有機試薬(ホスゲン)と反応する。陽イオン触媒が水性相に移動して戻ることでサイクルが完成する。相間移動触媒は一般にそれらの製造方法と同様に当技術分野において周知であり、窒素、リン、ヒ素、ビスマス、アンチモンなどを中心原子とする第四塩及び第四樹脂;アミン塩、アンモニウム塩、クラウンエーテル、ポリエーテル、クリプタンド、ホスホニウム塩、アルソニウム塩、アンチモニウム塩、ビスマソニウム塩、α−ホスホリルスルホキシド、スルホン、スルフィドなどが挙げられる。
【0066】
かかる重合反応の反応時間は、未反応モノマーの発生を防止するためには比較的長くする必要がある。好ましくは30分以上、更に好ましくは50分以上であり、製造効率の点からその上限は好ましくは2時間以下、より好ましくは1.5時間以下である。
【0067】
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、分岐化剤を上記の二価フェノール系化合物と併用して分岐化ポリカーボネート共重合樹脂とすることができる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0068】
かかる分岐化ポリカーボネート共重合樹脂の製造方法は、クロロホルメート化合物の生成反応時にその混合溶液中に分岐化剤が含まれる方法であっても、該生成反応終了後の界面重縮合反応時に分岐化剤が添加される方法であってもよい。分岐化剤由来のカーボネート構成単位の割合は、該共重合樹脂を構成するカーボネート構成単位全量中、好ましくは0.005〜1.5モル%、より好ましくは0.01〜1.2モル%、特に好ましくは0.05〜1.0モル%である。なお、かかる分岐構造量についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
【0069】
重縮合反応における系内の圧力は、減圧、常圧、もしくは加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応温度は−20〜50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は反応温度等の他の条件によって異なるので一概に規定はできないが、通常、0.5〜10時間で行われる。
【0070】
場合により、得られたポリカーボネート共重合樹脂に適宜物理的処理(混合、分画など)及び/又は化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理など)を施して所望の還元粘度[ηSP/c]のポリカーボネート共重合樹脂として取得することもできる。
得られた反応生成物(粗生成物)は公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として回収することができる。
【0071】
(成形品)
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、単軸押出機、二軸押出機の如き押出機を用いて、溶融混練することによりペレット化することができる。かかるペレットを作製するにあたり、ポリカーボネート樹脂に配合され得る各種難燃剤、強化充填剤、添加剤を配合することもできる。
【0072】
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、通常前記の如く製造されたペレットの射出成形により各種成形品となる。更にペレットを経由することなく、押出機で溶融混練された樹脂を直接シート、フィルム、異型押出成形品、ダイレクトブロー成形品、および射出成形品にすることも可能である。
【0073】
かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0074】
また本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、およびフィルムなどの形で利用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の熱可塑性樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
【0075】
これにより優れた耐衝撃性、耐熱性、外観を有する成形品が提供される。
更に本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂からなる成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。ここでいう表面処理とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常のポリカーボネート樹脂に用いられる方法が適用できる。表面処理としては、具体的には、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理が例示される。
【実施例】
【0076】
以下に本発明を実施例を挙げてさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。特記しない限り、実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。なお、評価は下記の方法に従った。
【0077】
(1)粘度平均分子量(Mv)
次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出した。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c (但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4 Mv0.83
c=0.7
【0078】
(2)ポリジオルガノシロキサン成分含有量
日本電子株式会社製 JNM−AL400を用い、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂のH−NMRスペクトルを測定し、二価フェノール(I)由来のピークの積分比とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)由来のピークの積分比を比較することにより算出した。
【0079】
(3)乳液粘度
JIS K 7117−1に準拠し、東機産業株式会社製TVB型粘度計(TVB−10M)を用い、M2のローターを使用して測定した。粘度は、23℃において十分に長時間ローターを回転させ、応力(粘度)が一定となった時点での値を測定した。測定はローター回転速度6rpmで実施した。
【0080】
(4)ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズと規格化分散
ペレットを120℃で5時間熱風乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所(株)製, JSW J−75EIII)を用いて、成形温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3.0mm(長さ20mm)、2.0mm(長さ45mm)、1.0mm(長さ25mm)であり、算術平均粗さ(Ra)が0.03μmである3段型プレートを成形した。
かかる3段型プレートの厚み1.0mm部の端部より5mm、側部より5mmの交点におけるポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズと粒径分布(規格化分散)を、X線回折装置((株)リガク社製 RINT−TTRII)を用いて測定した。X線源として、CuKα特性エックス線(波長0.1541841nm)、管電圧50kV、管電流300mAで行った。小角散乱光学系は、Slit:1st 0.03mm、HS 10mm、SS 0.2mm、RS 0.1mmとした。測定は、非対称走査法(2θスキャン)により、FT 0.01°ステップ、4sec/step、走査範囲 0.06−3°として実施した。カーブフィッティングの解析には、(株)リガク社製 小角散乱解析ソフトウェア NANO−Solver(Ver.3.3)を使用した。解析はポリカーボネートポリマーのマトリックス中にポリジオルガノシロキサンの球状ドメインが分散した凝集構造であり、粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、ポリカーボネートマトリックスの密度を1.2g/cm、ポリジオルガノシロキサンドメインの密度を1.1g/cmとし、粒子間相互作用(粒子間干渉)を考慮しない孤立粒子モデルにて実施した。
【0081】
(5)n−ヘキサン抽出成分のヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンのカーボネート化ヒドロキシアリール残基量Cとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンの未反応ヒドロキシアリール残基量Hの相対比(C/H)
塩化メチレン30mlにポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂3.0gを溶解し、攪拌しながらアセトン50ml、n−ヘキサン200mlを滴下した。エバポレーターにて溶液容量100mlになるまで濃縮し、沈殿物を濾過して濾過液を採取した。沈殿物をビーカーに移し、ヘキサン200mlを加え攪拌してリンスして、沈殿物を濾過して濾過液を採取した。濾過液を混合し、エバポレーターで濃縮、乾固して抽出成分の重量を測定した。日本電子株式会社製 JNM−AL400を用い、抽出成分のH−NMRスペクトルを測定した(重溶媒:クロロホルム,20℃)。内部標準物質としてテトラクロロエタン(5.95ppm)を使用し、ヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンのカーボネート化ヒドロキシアリール残基由来のシグナル(2.73ppm−2.63ppm)とヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンの未反応ヒドロキシアリール残基由来のシグナル(2.68ppm−2.58ppm)の積分比よりC/Hを算出した。
【0082】
(6)耐衝撃性評価(ノッチ付シャルピー衝撃強度)
ISO179に準拠して−30℃に冷却した試験片のノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した。試験片厚み4mm。
【0083】
(7)耐熱性評価(荷重たわみ温度)
ISO75−1および2に準拠して、荷重たわみ温度を測定した。荷重:1.80MPa。
【0084】
(8)成形品外観評価
(3)で作成した3段型プレートの表面を目視観察し、真珠光沢が著しく不均一な色調を呈する場合を×、均一な色調を呈する場合を○とした。
【0085】
実施例、及び比較例で使用したヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンは以下の通りである。
(II)−1:信越化学工業(株)製 X−22−1822E
(II)−2:信越化学工業(株)製 X−22−1966
(II)−3:信越化学工業(株)製 X−22−1061
(II)−4:信越化学工業(株)製 X−22−1821
【0086】
【化12】

【0087】
実施例1〜4、比較例1〜2
温度計、撹拌機及び還流冷却器付き反応器にイオン交換水9.25部、48%水酸化ナトリウム水溶液1.83部を仕込み、これに式[4]で表される二価フェノール(I)として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.95部およびハイドロサルファイト0.004部を加えて10分間で溶解した後、塩化メチレン7.28部を加え、撹拌下15〜25℃でホスゲンA部を70分要して吹込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液0.35部、塩化メチレンB部、およびp−tert−ブチルフェノール(PTBP)の塩化メチレン溶液(PTBP0.055部を塩化メチレン0.50部で溶解した溶液)を加え、式[5]で表される二価フェノール(II)として(II)−1をE部、塩化メチレン0.2部に溶解した溶液として加え、低速攪拌により乳化状態として10分間攪拌を継続した。ホモミキサー(TOKUSHU KIKA KOGYO CO.LTD.製、T.K. HOMO MIXER MARKII)を用いて2,000rpmで30秒、4,000rpmで30秒、8,000rpmで1分間処理することにより高乳化状態とした後、攪拌状態でトリエチルアミン0.002部を加え、さらに28〜33℃で50分間撹拌して反応を終了した。ホモミキサー処理直後の高乳化状態における乳液粘度はVcpであった。反応終了後、生成物に塩化メチレン10.0部を加え混合した後攪拌を停止し、水相と有機相を分離してポリカーボネート樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を純水で洗浄した後、0.2モル/Lの塩酸で洗浄し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで純水で洗浄を繰り返した。洗浄した樹脂溶液を温水を張ったニーダーに投入して、攪拌しながら塩化メチレンを蒸発し、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の粒状体を得た。脱水後、熱風循環式乾燥機により120℃で12時間乾燥した。乾燥したパウダーをn−ヘキサン抽出し、n−ヘキサン抽出成分のC/Hを測定した。乾燥したパウダーにトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製:イルガフォス168)を300ppmとなるように混合した後、ベント式二軸押出機(テクノベル(株)製,KZW15−25MG)によって溶融混錬してペレットを得た。押出条件は、吐出量2.5kg/h、スクリュー回転数250rpmであり、押出温度は第1供給口からダイス部分まで260℃とした。得られたペレットを使用して射出成形品を作成し、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズ、ポリジオルガノシロキサンドメインサイズの規格化分散を測定し、成形品外観、耐熱性、耐衝撃性を評価した。
【0088】
実施例1〜4及び比較例1〜2で使用したヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)の種類、ジオルガノシロキサン重合度、ポリジオルガノシロキサン成分含有量、ホスゲン量Aの値、塩化メチレン量Bの値、二価フェノール(II)量Eの値、高乳化時の乳液粘度Vの値を表1に示す。
【0089】
比較例3
ホモミキサー処理せずに、攪拌状態でトリエチルアミン0.06部を加えた以外は実施例2と同様にした。
【0090】
比較例4
ビスフェノールA及び末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノール、並びにホスゲンから界面重縮合法で合成した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製:パンライトL−1225L(商品名)、粘度平均分子量 19,900)
実施例1〜4及び比較例1〜4のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の粘度平均分子量、C/H値、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズ、ポリジオルガノシロキサンドメインサイズの規格化分散と、成形品外観評価結果、耐熱性評価結果、耐衝撃性評価結果を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1の結果から明らかな通り、本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、耐衝撃性、耐熱性に優れており、真珠光沢の発生しない良好な外観である。すなわち、本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は芳香族ポリカーボネート樹脂と比較して抜群の耐衝撃性を発揮するとともに、ポリジオルガノシロキサン成分の導入による耐熱性の低下を抑制し、真珠光沢による外観不良を克服している。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂からなる成形品は、優れた耐衝撃性、耐熱性を発揮し、且つ成形品外観が良好である。かかる特性を活かし幅広い用途展開が可能である。具体例としては、電気・電子機器分野、自動車分野において幅広く使用することができる。さらに具体的には、電気電子機器筐体、電池ハウジングなどの各種ハウジング成形品、鏡筒、メモリーカード、スピーカーコーン、ディスクカートリッジ、面発光体、マイクロマシン用機構部品、ヒンジ付き成形品またはヒンジ用成形品などが例示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]で表されるポリカーボネートブロックと、下記式[3]で表されるポリジオルガノシロキサンブロックからなり、n−ヘキサン抽出成分が0.4〜2.5wt%であり、且つn−ヘキサン抽出成分に含まれるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンのカーボネート化ヒドロキシアリール残基量Cとヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンの未反応ヒドロキシアリール残基量Hとが下記式を満足する、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂。
1≦C/H≦50
【化1】

[上記式[1]において、R及びRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数1〜18のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜14のアリール基、炭素原子数3〜14のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、e及びfは夫々1〜4の整数であり、Wは単結合もしくは下記式[2]で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。
【化2】

(上記式[2]においてR11,R12,R13,R14,R15,R16,R17及びR18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数3〜14のアリール基及び炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R19及びR20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数3〜14のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合はそれらは同一でも異なっていても良く、gは1〜10の整数、hは4〜7の整数である。)]
【化3】

(上記式[3]において、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R及びR10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは60〜300の自然数である。XはC〜Cの二価脂肪族基である。)
【請求項2】
ポリカーボネートポリマーのマトリックス中にポリジオルガノシロキサンドメインが分散した凝集構造であり、該ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズが10〜30nm、規格化分散が20%以上である、請求項1記載のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂。
【請求項3】
請求項1記載のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂からなる成形品。
【請求項4】
(A)あらかじめ水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中における式[4]で表わされる二価フェノール(I)とホスゲンとの反応により、二価フェノール(I)のクロロホーメートおよび/または末端クロロホーメート基を有する二価フェノール(I)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホーメート化合物の混合溶液を調製し、
(B)工程(A)の混合溶液を攪拌しながら式[5]で表わされるヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(II)を加え、
(C)工程(B)の混合溶液を粘度が1,000cp以上である高乳化状態とせしめると同時、或いは然る後に第三級アミン触媒を添加して界面重縮合させることを特徴とするポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法。
【化4】

(式中、R、R、e、f及びWは前記と同じである。)
【化5】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R10、p、q及びXは前記と同じである。)
【請求項5】
請求項4記載の製造方法により製造された、請求項1記載のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246390(P2012−246390A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119111(P2011−119111)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】